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2016年10月14日

 山




島根県のある地方で。
現在二十歳の自分はほとんど山の中に住んでいる。
普通山の麓や悪くても道の通った中腹に住むのが一般的だ。
何故か我が家は寺や林業に従事している訳でもないのに頂上付近の山中に家が構えてある。
幼い頃からだったので特別不思議はなかったし、逆に見晴らしのいい場所で嬉しかったもんだ。

幼い頃よく山で遊んだ。山全部が自分のものみたいで嬉しかった。
誰も来ないし、辺鄙な場所なのに秘密基地があった。
そんな場所必要ないはずだが、子供とはそんなもんだ。
秘密と名がつく自分だけの場所ってのは存在するだけで楽しいもんだ。

その場所は神社。
しかも完全な正方形で左右対称。木の位置や庭石みたいなものの数まで。
さらに凄いのは前後も鏡みたいに対象なんだ。
奇妙なんだけど、鳥居も東西南北にあり、社も四面にある。

勿論狛犬も八体いる。

そんな奇天烈な神社で人も来ないもんだからちょくちょく一人で来てた。
一人しかいなかった訳じゃない。
1キロ下には幼なじみがいたから行けば良かったんだけど、この神社には連れて行けなかった。
祖父に他人を連れて行っては行けないとキツく言われていた。
さらにキツく約束させらるていた事は、

「この神社は西から入って南から出なければいけない。
10月だけは北から入って出口は東さらに夜は行っては行けない。
もし行ったら鳥居じゃない場所から出る事」

という約束。
なんか本当に秘密基地みたいで嬉しくて自分は暗号みたいなもんだったし、
祖父が大好きで守っていた約束だった。

そして先日大学に通っていて久しぶりに帰る事になった。
そして今夏の盆に祖父と久しぶりにその神社の話をしたんだ。

酒を飲むようになった自分に喜んで祖父はどんどん勧めてくれるから二人して多いに飲んだ。
翌日二日酔いの早朝に祖父が自分を起こす。
早朝どころかまだ夜中の3時。
祖父は真っ白な服を来て白い徳利に日本酒を持っていた。
さらには肩には朱色のしめ縄。

「夕べは楽しかったな。朝早くて済まないな。これから大事な用がある。
夕べ話した神社に着いて来てくれ」
眠くて冗談じゃないと断ろうか迷ったが、祖父は深刻な顔をしている。
いつも優しい笑顔で微笑みを浮かべる仏様みたいな顔の祖父。
その顔がイーストウッドのような渋い険しい顔になっている。

何かあると思い。着いて行く事になった。

夜だが、朝に近い。
秘密基地の約束からするとこの場合どこから入るのだろうか?と思案していると

「北から入り、西の空より風を追い。東の光に雨を掛け、また北より出でる。
南にあるは死の国ぞ。
根の国ぞ。世見の囲いにはりたもう。はいりたもう。天下りし神の園。スサの大神、御神石。
はらいたまえ、きよめたまえ

四神の封じに参りたるかな。氏の繋ぎたるをかしき、申す、申す、申す、申す。
地の蛇、草蛇、黒の蛇、八つ首蛇。スサの大神剣を巻いて」

こんな感じで唱え出した。後に自分も暗記させられた。
実はまだ続きもあるし、実際少し改変してあります。
完全な言葉は言ってはいけない決まりらしいので

その長い祝詞のような呪文のような言葉が終わり、ちょっと変わった方法で神社にやっと入った。

そして自分は南の鳥居で待たされ祖父は1人で南側だけを閉めて、残りを開け放ち社にいた。
こちらからは何をしているのか見えない。

しばらくすると左右の御神木から真っ白な人が神主が持ってるヒラヒラを背中に
何枚もはためかせ出てきた。
で、目が三つあるんだよね。背中の方光ってるし。

自分は無論ブルブルマックス。生まれて初めて失禁した。
人間びびると尿を漏らすのは本当だと実感した。

時間の感覚がなくなるというか、止まったと思った瞬間だった。
南の社の扉が大きく、強く開いた。当然祖父だと思った。
祖父は祖父だけどなんか違和感があった。
「そいつらから離れろ!」って言うんだ。
でも自分は左右にいる2人の白いのは神様って分かってたから、
信心深い祖父が神様をそいつらと表現するのに疑問と違和感を覚えた。

感は正しかった。
祖父は、いや祖父みたいなもんの首がいきなり転がって首のあった場所から
真っ黒な蛇が何匹か出てきた。
自分は霊感はあんまりないはずだけど、この黒蛇だけはヤバイって感じた。
幽霊とか、悪霊とかってレベルじゃないと直感的に悟った。
すると
左右の神様?が剣を持ってるのに気付いた。
助かるぞって期待した。
そしたらそれぞれ左右の、東西の鳥居の方へ離れた。
神様も初めて見たから怖かったけど、黒い邪悪な蛇ははるかに怖かった。
害意と殺意はハッキリ伝わってたから。
頭が黒蛇の祖父の偽物みたいなのが、一歩、二歩とこちらに近づく。
あぁぁこりゃ、死んだな。神様もじいちゃんも助けてくんねーかなって思ってた。

常人の自分はこういう話しの定番で気絶してたみたい。

気付いた時は四方を開け放った社にいた。
ど真ん中に剥き出しの御神体。剣なんだけど、かなり錆びてるやつ。
いつもの仏様みたいな優しい祖父の笑顔。

「良かった。説明は短めにするから聞いてくれ。
我が家は何代前かは分からない位昔からあの神社の護りをしてきた。
分かってるとは思うが、あれは普通の神社じゃない。
参拝客が来ないとか神主がいないとか、賽銭箱がないとかじゃない。
そしてさっきお前が見た神様も蛇も夢じゃない。
あれはな、もっと偉い神様の記憶なんじゃ。
そして、お前に役目を引き継ぐ儀式だ。
ワシも昔祖父から引き継いだ。
しかし、お前の両親は知らない。代々孫に引き継ぐ決まりなんじゃよ。
怖かったろうなぁ、すまんなぁ。でも運命なんじゃ、これだけは。
別に何かこれからしなければならないとか、神主になれとかは一切ない。
とりあえず管理や掃除はワシが死ぬまではやる。

しかし、死んだらお前がやるんだよ。
そしてお前もまた孫にワシがした事と同じ事をするんじゃ。
儀式と言葉を覚えて、あとは掃除や管理をしておけば良い。あの約束を守ってな。」

涙を流しながら祖父がそう言った。

「大学を出たらこっちで暮らせよ。ここでの暮らしが怖くなったろうけど、
本当に普段何もしなくてもいいし、
お前がまた神社に行っても何も起こらないから安心しなさい。」

今二十歳。あと2年で京都の大学を卒業し、ここで暮らす事は確定してしまった。
現代人である自分はこんなオカルトな事には関わりたくないが、
起こってしまった事は否定しない。
しかし結婚はしても子孫を残すかどうかは迷っている。

しかし、こんな不気味で恐ろしい儀式というか習わしがよく今まで家が断絶もせず、
今の時代まで続いたなぁと感心している。
そしてその理由が最近分かった。

こないだある神社に彼女とおみくじを買いに行った。
彼女はおみくじが大好き。

手を打って目を閉じたらブワッっと風が吹いた。
彼女はまだ手を合わせて祈っている。
振り向いたら例の白いヒラヒラ付きの神様二人が狛犬の場所にいる。

多分死ぬまでこの神様がついてるんだと思った。
アレしてる時もいると思うと不愉快でならない。

長い長い信じられないような駄文を書かせて頂きました
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いざない 「ず〜っとお前は、”あいつ等”に呼ばれてたんだよ」【怖い話】




死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?129

237 :工程1:2006/05/13(土) 17:31:18 ID:zGoyC87h0
その頃、私は海岸近くの住宅工事を請け負ってました。
季節は7月初旬で、昼休みには海岸で弁当を食うのが日課でした。
初めは一人で食べに行ってましたが、
途中から、仲良くなった同年代の下請け職人も誘って、一緒に食べに行くようになりました。

いつものように海岸に行くと、普段は人気の無い海岸ですが、
その日は10〜12歳位の子供が4人程、波打ち際で遊んでました。
ちなみにココの海は遊泳禁止となってはいましたが、
私も子供の頃は、ココで仲間と泳いだりした事もあったので、特に気にもしませんでした。
その日も海岸で弁当を食おうかと思っていたら、
A君が「今日は日差しが強くて暑いから、現場内の日陰で食おうぜ」と言って来たので、
まぁ確かにその日は特に陽射しが強くて、外で食うには暑すぎると思って、その場を去りました。

現場内の日陰で弁当を食べていると、何やら外が騒がしい。
パトカーやヘリが飛んでる音も聞こえる。
何だろか?と思って、外を見に行こうとAを誘いました。
「あ〜俺は辞めとく」
私は外が気になって仕方が無いので、Aは置いて、他の職人さん達と一緒に野次馬に行きました。


238 :工程2:2006/05/13(土) 17:34:38 ID:zGoyC87h0
どうやら人だかりが出来ているのは、いつも私がAと飯を食っていた海岸でした。
既に集まっていた野次馬に話しを聞いてみると、海で遊んでいた子供が一人、
波に飲まれて行方不明だと。

確かに、さっきまで海岸で遊んでいた子供の数が、一人減っていました。
私は後悔しました。
何時も通りこの海岸で弁当を食べていれば、波に飲まれた子供をいち早く発見できたし、
泳ぎにも自信がありましたので、もしかしたら助ける事も出来たのではないかと。

少し後ろめたい気分になって、Aの所まで戻り、Aに海岸での事を話しました。
「今日もあそこで飯食ってたら、俺らが何か出来たかもしれないよな」と私が言うと、
Aが「ははは、無理だって。だから俺は、今日あそこで飯食うの嫌だったんよ」。


239 :工程3:2006/05/13(土) 17:36:04 ID:zGoyC87h0
私は意味が解らなかったので、Aに詳しく話を聞いてみると、
「あそこって遊泳禁止なだけあって、色々とある訳で、
 こんな事言うからって変な目で見ないで欲しいんだけど、色々とある訳よ。
 お前はソッチ系には疎いみたいだから、言わないでおいたんだけど、
 現場の中で弁当喰った方が涼しいのに、何でお前は毎日海岸で弁当食べたがったの?」
「そりゃ、海見ながら外で飯喰った方が美味いと思って・・・」
「その割にはお前は、毎日暑い暑い言いながら弁当喰って、
弁当喰い終わったらスグに事務所戻って涼んでただろ?」

そう言われると確かに、海岸で弁当喰い始めたキッカケは、
海見ながら食べた方が気持ち良いと思ったのですが、
2日目以降は、何であんなに日陰も無いクソ暑い場所で、弁当を食い続けてたのか、
我ながら不思議に思いました。

「”あいつ等”の狙いは初めからお前で、ず〜っとお前は、”あいつ等”に呼ばれてたんだよ」
「???」


240 :工程4:2006/05/13(土) 17:37:04 ID:zGoyC87h0
Aは初めて現場で私に会った時も、
私が海にいる”あいつ等”から誘われてるのを感じていたらしい。

とは言っても、そんな事を初対面、しかも元請の監督に真顔で話しても馬鹿にされるし、
下手したら追い出されるだけなので、毎日弁当に付き合って監視してたらしい。

Aは私が”あいつ等”に誘われてるのは分かっていたけど、
中々その”あいつ等”の姿をAも見ることは出来なかった。

どうやら霊?の方は、一方的に私に意識チャンネルみたいな物を合わせ、
もっと波際まで引き寄せたがっているらしかったのですが、
肝心の私が鈍すぎて手こずってたらしい。

「だから”あいつ等”は、お前の目の前で、子供を海に引き込もうとした訳だ。
 ”あいつ等”からしたら、子供の方が頭が固いお前と違って誘い易いしな。
 そうすれば、お前が子供を助けに、海に入ってくる事を知ってたんだなぁ。”あいつ等”は。
 まぁ俺が邪魔したから、子供が身代わりになっちゃった訳だけど・・・。
 今日は、”あいつ等”とピッタリ波長が合う子供が遊びに来たせいか、
 今日は俺の目にも、ハッキリ”あいつ等”が見えたよ。
 俺がお前を海岸から連れ戻した時の奴らの雰囲気は、俺もちょっと怖かったよ。
 本命のお前を連れ戻されて怒ったのかなw」
と、Aが笑いながら話してくれました。


241 :工程5:2006/05/13(土) 17:38:41 ID:zGoyC87h0
って・・・そこまで分かってて、何で遊んでた子供を放置したのかとAに問いただすと、
「お前は誘われてるクセに何も感じないから、そんな事言えるんだよ。
 子供等が遊んでた場所は、完全に”あいつ等”の領域入ってたし、
 お前だってアレが見えるなら絶対近づけないし、関わり持とうなんて思えないって。
 お前を海岸から現場内に連れ戻しただけでも、俺って勇気あるな、エライな〜て思ったよ。
 本当凄かったよ、奴らの恨めしいそうな顔」

Aが言うには、見えない感じない人は、無意識に誘われてる事があると言ってました。
また、誘われてる事にも気が付かないらしい。
だから逆に、見える感じる人は、危ない場所には下手に近づかないらしい。

「お前だって、道路で子供が、刃物持ってる男に追いかけられてたら、身を挺して阻止できるか?
 普通出来ないよな。
 それは、関わった後の面倒を知ってるからだ。
 それと一緒で、俺も見えたからって、人助けするほどお人良しじゃ無い。
 相手が人間なら通報する事はできるだろうけど、相手がこの世の者じゃなかったら、
K察も相手してくれないし。
 まぁ面倒事に巻き込まれるのは御免だよ。
 でも〇〇君(私の名前)とは気が合ったし、知らん顔して何かあっても気分悪いからね」

この水難事故は、夕方のニュースでもチラッと流れました。

私は夜中に気になって、海岸まで車で見に行きました。
まだヘリは海岸沿いを飛び回り、沢山の人が灯りを持って海岸を捜索してました。

自分では「お人良しじゃない」と言っていたAでしたが、
彼は去年の秋に、川で溺れてる子供を助けて、自分だけ逝ってしまいました。
2度目は見て見ぬフリは出来なかったのかな・・・。
タグ:怖い話
posted by kowaihanashi6515 at 11:30 | TrackBack(0) | 洒落怖

2016年10月04日

スイカ




秋になると登山シーズンです。
よく墜落が登山シーズンには起きるそうです。

そのご遺体は頭が割れている為スイカと呼ばれるそうです。
しかし秋に墜落事故をして逝かれても、ご遺体は雪のため春まで放置されるようなのです。

中には発見されることなく、忘れ去られているご遺体もあるそうです。

万年雪の中にもあるときがときたまあるようなのですが・・・

その登山シーズンの秋、登山部では
「スイカを見たら振り向くな。振り向いたら自分もスイカになる。」
ということがよく言われるそうです。

そしてこれは実際に体験した方の話なのですが・・・

山の尾根を歩いていると向こうから数人の集団が歩いてきました。
先頭の人間が「スイカだ!」と叫んだそうで、皆がその集団に向かって会釈をしました。

大学のサークルの1年だったその方は訳も分からず会釈をしました。
会釈をし終わってその集団が横を通り抜けようとすると、
頭がクシャクシャに潰れていたそうです。

驚いたその方は慌てて振り向こうとしましたが、後ろの先輩が

「振り向くな!」
と大声で怒鳴るので何かあると感じたその方は
興味を抑えて無事に山頂の宿舎にたどり着けました。

その方はスイカのことについては後から聞いたようです。
もしもあのまま振り返っていたら・・・

前後を登山経験者の長い方で真ん中を経験の浅い方という並び方で登るのは、
スイカのためでもあるようです。

先頭の方がスイカであることを知らせ、最後尾の方が振り向かないように監視をする為に。

タグ:墜落 登山
posted by kowaihanashi6515 at 21:41 | TrackBack(0) | 洒落怖

ざわつき声




高校を卒業し、進学して一人暮らしを始めたばかりの頃の話。

ある夜部屋で1人ゲームをしていると、
下の方から大勢の人がザワザワと騒ぐような声が聞こえてきた。

俺は「下の階の人のところに客が一杯来ているのかな?」とも思ったが、
耳を澄まして良く聞いてみると、声の感じから数人という事はなさそうだ。

もっと大勢の人の声のように聞こえる。
気のせいかもしれないが、まるで大きな駅とかなどの雑踏のざわつきのような感じだ。

その時は「そういう映画かテレビ番組でも見ているのかな?」と考えながら、
それ以上気にせずにいた。

が、寝る頃になっても一向に「ざわつき声」がなくなることは無く、
そこまで大きな音では無いのだが深夜3時頃まで聞こえていたせいで、
結局気になってその日は殆ど寝る事ができなかった。

それから数日間、毎日ではないが夜10時頃から深夜3時頃まで、
頻繁に「ざわつき声」が聞こえてくるので俺はろくに眠る事ができず、
いい加減苦情を言おうと階下の人のところへ行く事にした。

呼び鈴を押して暫らくすると住人が出てきた、歳は俺より2つか3つ上くらいだろうか、
見た感じ学生っぽく見える。

俺が上の階の住人である事を話し苦情を言おうとすると、その人はいきなり不機嫌になり
「あんた毎日毎日真夜中に何やってんだ、煩くて仕方が無いんだが」
と逆に言われてしまった。

(ややこしくなるので、ここからは下の階の人を仮にサトウさんとしておきます)

意味が解らない俺は、事情を最初から話して下のほうから殆ど毎日のように
大勢の人のざわつき声のようなものが聞こえてくると話すと、
サトウさんは「ざわつき声」が夜になると「上から」聞こえてきて、
そろそろ大家か不動産屋に苦情を言おうと思っていたと話し出した。

その話を聞いて、俺は理由は良く解らないが何かいやな感じがしてきた。

あれは明らかに人の声だ、何度も聞いているから聞き間違いは無い、
それにサトウさんも「大勢の人のざわめき」である事は間違いないという。

暫らくの沈黙の後
「…天井裏に何かあるのかな?」
とサトウさんが言ってきた。

「天井裏行ってみる?」
サトウさんがそう切り出してきて、俺の返事も待たずに懐中電灯を持ち出してきた。
が、俺は勝手に解決しようとして万が一にも天井踏み抜いたり、
そうでなくとも何か壊してしまったら後々色々問題になるかもしれない、
ここは管理している不動産屋に事情を話して来てもらったほうが
良いんじゃないかと提案し、行く気満々のサトウさんを説得した。

そして俺は
「ざわつき声がする」と言うと不信に思われるので、その辺りははぐらかし
「床下から何か異音がする」と不動産屋に白々しく電話を入れた。

すると不動産屋はどうやら天井裏にネズミか何かが入り込んだと思ったのだろうか、
数日以内に業者を連れてそちらに向かうと言ってきた。

俺はなにか結果的に騙しているような感じになってしまってちょっと引け目を感じたが、
その事をサトウさんに話すと

「まあ、異音がするのは事実だしとにかく来てもらおうよという事で、特に問題ないだろう」
との事だった。

当日、結構早い時間にサトウさんが俺の部屋にやってきた、
不動産屋と約束した時間にはまだかなり余裕がある。

彼が言うには、どうも急な用事が入ってしまって今日は立ち会えないとの事で、
不動産屋が来たら問題ないから合鍵で勝手に部屋に入ってしまって
かまわないと伝えてほしいとの事だった。

「そんな事自分で電話しろよ…」
俺はそう思ったが、まあ仕方が無いので了解し、
不動産屋との待ち合わせの時間まで待機する事にした。

昼少し前くらいに不動産屋が駆除業者と一緒にやってきた。
不動産屋がサトウさんと連絡が取れないが何か聞いていないかと言うので、
今日の早朝にあったことを話すと、少し困った顔をしたが一応サトウさんの部屋へ行く事にした。

話を聞くと、1階と2階の間を調べるにはサトウさんの部屋のバスルームの天井から
入るしか無いらしい。

サトウさんの部屋に行くと、合鍵で開けてほしいとの事だったが、
なぜか部屋のカギは開いていた。

流石に俺が入るのは問題があると思うので、業者と不動産屋に任せて外で待っていると、
突然中から

「うわ!大丈夫ですか!?」

という声が聞こえてきた、

何事かと玄関のドアを開けてみると、
不動産屋と業者が真っ青な顔をして出てきて「警察に電話を…」と言ってきた。

その間色々あったのだが長くなるので結論から書くと、
サトウさんがバスルームで死んでいたらしい。
それから色々大変だった。

パトカーや救急車がやってきて大騒ぎになり、俺も警察から色々と事情を聞かれた。

朝にサトウさんと話したときは、不信な様子は少なくとも俺の見た感じでは一切なかった事をはなし、
一応天井裏の事を警察に話すとそれも含めて調べていたようだが、
何か見付かったのかとかそういう事はなにも教えてもらえなかった。

結局俺としては天井裏の「ざわめき声」も含め、
サトウさんの死因も何もかもあやふやなままになってしまった。

その日の夜。
色々ありすぎたので疲れてしまい、さっさと寝てしまおうと早めに布団に入ると、
「例のざわめき声」がいきなり聞こえてきた。

が、何かがいつもと様子が違う、良く解らないが違和感を感じる…

暫らくして違和感が何なのかに気がついた、今までは下から聞こえてきていた声が、
明らかに横から聞こえる。

しかも今までは床越しに聞いていたので多少くぐもって聞こえていたのだが、
今回はまるで「同じ部屋の中」から聞こえてくるように鮮明だ、
そう考えたとたんに急に背筋が寒くなってきた。

目を開けて声のほうを見てみたい気持ちもあるがぶっちゃけ怖い。
そうは言ってもやはり声の正体は気になる。

俺は意を決してベッドから起き上がり、声のする方向を見た。

とんでもないものをみた。
そこにはスーツ姿の男が1人立っていた。
ただ、厳密には「立っていた」というのとは少し状態が違う。

まるで水面から上半身だけを出しているかのように、
床から人の上半身が生えているような状態だ。

それだけでもかなり異様な状況なのだが、
そのスーツ姿の男は眼球を上下左右に激しく動かし、
口もまるで早口言葉を喋っているかのように激しく動いている。

そして、その口から例の大勢の人のざわめき声が聞こえてきていた。

俺はあまりの事に体が動かせず、訳も解らずそのスーツ姿の男を凝視していると、
暗がりに目が慣れてきてもう一つ異様なものをみつけた。

サトウさんだ。

サトウさんが床から顔だけを出し、めいっぱい目を見開いて天井を見つめ、
まるで魚のようにゆっくりと口をパクパクさせている。

それをみた時、なぜか直感的に「あれは何かとてつもなくヤバイものだ」と感じた。
俺は完全に思考が停止してしまい、わけも解らないまま着の身着のままで
携帯と財布だけを持って部屋から逃げ出した。

その夜はひとまずマンガ喫茶で夜を明かすと、朝一番で不動産屋へと向かった。
あんな場所にはもう住んでいられないので、引越し手続きをするためだ。

不動産屋につくと、担当の人を出してもらいすぐに引越しの話を切り出したのだが、
突然の事にしてもやけに担当の人の様子がおかしい、
なぜかどうしても引越しをさせたくないように見える。

不信に思ってしつこく追求してみると、
どうも俺はサトウさんの死に関係があるのではと疑われているらしい。

だから安易な引越しはさせれないようだった。
言われてみれば当たり前の事だ。

サトウさんと最後に会っていたのは俺だし何より「騒音トラブル」もあった、
朝の出来事も俺がそう言っているだけで客観的な証明など何一つない。

何よりサトウさんの死因はまだ不明のままだ。俺が殺したと疑われても仕方が無い状況だ。
そこに来ていきなり俺が引越しをしたいと言って来れば、不動産屋としても当然疑うだろうし、
当然不動産屋だけではなく警察も疑っているだろう。

かと言って、あの部屋に戻るのだけは絶対にいやだ。
あんな得体の知れない不気味な物が現れた場所でまた過ごすなどありえない。

そもそもあのスーツ姿の男がサトウさんの死に何らかの形で関わっているのは明白だ。
もしかしたら次のターゲットは自分かもしれない。

そんな事情が事情だけに、俺としても絶対あの場所に戻るのはいやだ。
そこで信じてもらえるかどうかは解らないが、
今までの経緯や昨晩の事を正直に不動産屋に話した。

すると、不動産屋はこの話を信じたのかどうなのか解らなかったが、
とりあえず自分の裁量ではどうにも判断できないので、警察と相談してほしいと言って来た。

仕方が無く、俺は昨日警察から貰った名刺の番号に電話をして、警察署で事情を話すことにした。

警察署につき、担当の人に不動産屋で話したことと同じ事を話したのだが、
当たり前といえば当たり前だが当然話は信じてもらえなかった。

むしろ「こいつは何を言っているんだ」みたいな態度を取られ、
連日の寝不足の事もありイライラしていた俺は、発作的に

「だったらてめーもあそこで一晩いてみろよ!」
と、大声で怒鳴って担当の警察官に自分の部屋のカギを投げつけた。

後から考えれば、理不尽で無茶な要求をしていたのは俺のほうなのだが、
警官は俺を落ち着かせると、引越し先はあまり遠くにしない事と、
引越し先の住所を報告し警察からの電話には必ず出る事を約束すると、
引越しを許可してくれた。

その後俺はなんとか別の場所に引っ越す事が出来、
事件の方はどうやらサトウさんの自殺のようだという事も解り、俺への疑いもなんとか晴れた。

自殺である事が判明してから暫らくして、俺はまた警察に呼ばれた。

どうもサトウさんのPCから日記が見つかっていたのだが、
そこに書かれている内容の一部に俺が警察で話した例のスーツ姿の男と
酷似した人物のことが書かれていたそうで、
その辺りの事情をもう一度詳しく聞きたいということだった。

結局あのスーツ姿の男の正体は今でも不明のままだが、
警察から聞いた話でいくつかわかったこともある。

日記の内容から、どうも俺が最初にサトウさんの所へ苦情に行った時点より前に彼は
「スーツ姿の男」に出会っており、「ざわつき声」の正体がその男である事も知っていたようだった。

そして、日記にはスーツ姿の男が明らかに悪意のある相手である事が繰り返し書かれていて、
サトウさんは身の危険を感じていたらしい。

なぜそこまでわかっていたにも関わらず、
彼はあんなさも何も知らないかのような態度を取ったのだろうか。

警察は何も言っていなかったが、もしかしたら天井裏には何かがあったのではないだろうか。
サトウさんはそこまで知っていて、何らかの理由で俺を巻き込もうとしていたのではないだろうか…
今となっては何も解らない。
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渓流釣り



129 渓流釣り 1/4 sage 2006/12/01(金) 02:15:54 ID:JMo2loL4O

大学時代に友人から聞いた話。
釣りが大好きだった友人はその日も朝から釣りに出かけていた。

場所は川の上流域で、かなりの山奥である。
ここから先は、友人の語り口調で書かせていただきます。

「車で行ったんだけど、途中からは獣道すらなくてな。
仕方なく歩いたんだよ。かなりの悪路だったな。
崖も越えたし、途中クマが木をひっかいた痕もあったな。
で、やっと釣れそうなポイントにたどり着いてな。
早速、そこらへんの石をひっくり返して川虫を集めたのよ。」
俺「餌ぐらい買えばいいのに。」

131 渓流釣り 2/4 sage 2006/12/01(金) 02:23:31 ID:JMo2loL4O

「いや、現地でとった餌は食いつきが違うんだよ。何よりとるのも楽しいしな。」

俺も現地で餌を調達したことがあるが、あの作業は虫が嫌いな人間にとって地獄である。
それ以来、俺はもっぱらイクラ派だ。

そんなわけで不本意ながら同意し、話の続きを催促した。

「虫を確保して、早速釣り始めたんだ。
そしたら面白いぐらい釣れてな。ものの3時間で十五、六匹は釣れたんだ。
でも朝まずめが終われば流石に途絶えるだろうなって思ってたのよ。」

知ってる人も多いと思うが、釣りは朝と夕方の「まずめ時」が最も釣れる。

132 渓流釣り 3/4 sage 2006/12/01(金) 02:30:54 ID:JMo2loL4O

けど爆釣モードは昼を過ぎても全く終わる気配がない。
生涯で最高の一時だったね。時がたつのも忘れて夢中になったよ。

気付いたら辺りは薄暗くてな。もう夕方になってたんだ。
身の危険を感じて、帰り支度を始めたんだよ。

ふと背後に気配を感じて振り返ったら、小さい女の子が背を向けて立ってる。
少し近づいて

「こんなとこで何してんだい?」
って聞いてみたんだよ。

振り向いた顔を見てギョッとしたね。
顔がお婆さんだったんだよ。
しかも、顔がひきつるぐらい満面の笑顔だったんだ。

俺もギョッとした。

133 渓流釣り 4/5 sage 2006/12/01(金) 02:42:35 ID:JMo2loL4O

でも病気か何かだと思って、同じ質問を繰り返したんだ。
今度は丁寧語でな。

そしたら笑顔を崩さないまま、

「いつまで」

ってつぶやいたんだよ。何回も。

キチ〇イだったんかなあと思って、軽く会釈して帰ろうとしたんだ」

134 渓流釣り 5/5 sage 2006/12/01(金) 02:46:02 ID:JMo2loL4O

「そしたら、急に婆さんの声が合成音声みたいになって、

「いつまで生きる?」

って言ったんだよ。背筋がゾクッとして、こいつはこの世の人間じゃないと思ってな。

凄い勢いで下山したんだよ。途中、婆さんのつぶやく声が何度も聞こえた。

薄暗い山奥でだせ?発狂寸前だったよ。あ〜あ、最高のポイントだったのにもう行けねえなぁ…。」

俺は自分の膝がガクガク震えているのを感じた。
話の途中から友人は気持ち悪いほど満面の笑顔だったのだ。

それからしばらくして友人は自殺した。
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診療所での宿直バイト



数年前、大学生だった俺は先輩の紹介で小さな診療所で宿直のバイトをしていた。
業務は見回り一回と電話番。あとは何をしても自由という、夢のようなバイトだった。

診療所は三階建てで、一階に受付・待合室・診察室兼処置室、
二階に事務室・会議室・炊事場、三階に宿直室があった。

宿直室は和室で、襖がドア代わり。階段はひとつ。
小さいとは言っても患者のカルテやなんかは扱ってるわけで、診療所はALS●Kで警備されていた。
宿直の大まかな流れは以下の通り。

夜9時に診療所に着き、裏玄関(表玄関は7時半には完全に施錠される)の外から
ALS●Kの警備モードを解除する。

入って見回りをして、三階の宿直室に入る。
宿直室にもALS●Kの管理パネルがあるので、入ったら再びALS●Kを警備モードにする。

警備のセンサーは一階、二階はほぼ隈なく網羅しているが、
宿直室にはないため、宿直室内では自由に動ける。

管理パネルにはランプがついており、異常がないときは緑が点灯している。

センサーが何かを感知するとランプが赤く変わり、
ALS●Kと責任者である所長に連絡がいくことになっている。

ドアや窓が開けられると警報が鳴る。

部屋に着いて警備モードに切り替えれば、あとは電話がない限り何をしてもいい。
電話も、夜中にかかってくることなんて一年に一回あるかないかくらいだった。

だからいつもテレビ見たり勉強したり、好き勝手に過ごしていた。
ある日の夜。いつものように見回りをして部屋に入って警備モードをつけてまったりしてた。

ドラマを見て、コンビニで買ってきた弁当を食べて、本を読んで、肘を枕にうつらうつらしていた。
テレビはブロードキャスターが終わって、チューボーですよのフラッシュCMが入ったところだった。

何気なく目をやった管理パネルを見て、目を疑った。ランプが、赤い。

今まで、ランプが赤かったことなんて一度もない。
え?なんで?と思ってパネルを見てると、赤が消えて緑が点灯した。

まともに考えて、診療所の中に人がいるはずがない。
所長や医師が急用で来所するなら、まず裏玄関の外からALS●Kの警備を解除するはずだ。
また外部からの侵入者なら、窓なりドアなりが開いた瞬間に警報が鳴るはずだ。

故障だ。
俺はそう思うことにした。だいたい、もし本当に赤ランプがついたなら、
所長とALS●Kに連絡がいって、この宿直室に電話がかかってこないとおかしい。

それがないということは、故障だということだ。

そう思いながらも、俺はパネルから目を離せずにいた。緑が心強く点灯している。
しかし次の瞬間、俺は再び凍りついた。また、赤が点灯した。
今度は消えない。誰かが、何かが、診療所内にいる。
俺は、わけのわからないものが次第にこの宿直室に向かっているような妄想に取りつかれた。

慌てて携帯を探して、所長に電話した。数コールで所長が出た。

所「どうした?」
俺「ランプが!赤ランプがついてます!」
所「本当か?こっちには何も連絡ないぞ」
俺「だけど、今もついてて、さっきはすぐ消えたんだけど、今回はずっとついてます!」
所「わかった。ALS●Kに確認するから、しばらく待機していてくれ。また連絡する」

所長の声を聞いて少し安心したが、相変わらず赤が点灯していて、恐怖心は拭い去れない。
2分ほどして、所長から折り返しの電話があった。

所「ALS●Kに確認したが、異常は報告されてないそうだ」
俺「そんな!だって現に赤ランプが点灯してるんですよ!どうしたらいいですか?」
所「わかった。故障なら故障で見てもらわなきゃいけないし、今から向かう。待ってろ」

何という頼りになる所長だ。俺は感激した。
赤ランプはそのままだが、特に物音が聞こえるとか気配を感じるということもないので、
俺は少しずつ安心してきた。

赤ランプがついただけで所長呼び出してたら、バイトの意味ねえなwとか思って自嘲してた。

しばらくすると車の音が聞こえて、診療所の下を歩く足音が聞こえてきた。

三階の窓からは表玄関と裏玄関そのものは見えないが、
表から裏に通じる壁際の道が見下ろせるようになっている。

見ると、電気を煌々とつけて所長が裏玄関に向かっている。

見えなくなるまで所長を目で追ってから数秒後、
「ピーーーーーッ」という音とともにALS●Kの電源が落ちた。

所長が裏玄関の外から警備モードを解除したのだ。
俺は早く所長と合流したい一心で、襖を開けて廊下へ出た。廊下へ出た瞬間、
俺は違和感を感じた。

生臭いのだ。何とも言えない、イヤな匂いがたちこめていた。
また恐怖が頭をもたげてきたが、さっき確かにこちらへ向かう所長を見たし、
1階に所長が来てるのは間違いないので、俺は廊下の電気をつけて、階段へ向かった。

診療所の階段は各階に踊り場があって、
3階から見下ろすと1階の一番下まで見える構造になっている。

階段の上まで来て、1階を見降ろした。

1階はまだ電気がついておらず、俺がつけた3階の電気が1階をうす暗く照らし出している。
生臭さが強くなった。1階の電気のスイッチは裏玄関を入ってすぐのところにある。

所長は、なんで電気をつけない?早く電気をつけて、姿を見せてくれ!
さらに生臭くなった時、不意に一階の廊下の奥から音?声?が聞こえてきた。

それは無理やり文字化すれば
「ん゛ん゛〜ん゛〜〜う゛う゛う゛〜゛ん゛」
という感じで、唄とも、お経とも取れるような声だった。

ここに来て俺は確信した。1階にいるのは、所長じゃない。

頭が混乱して、全身から冷たい汗が噴き出してきた。しかし、1階から目が離せない。
生臭さがさらに強まり、「ん゛ん゛〜ん゛〜」という唄も大きくなってきた。
何かが、確実に階段の方へ向ってきている。

見たくない見たくない見たくない!!
頭は必死に逃げろと命令を出しているのに、体がまったく動かない。

ついに、ソイツが姿を現した。
身長は2メートル近くありそうで、全身肌色、というか白に近い。
毛がなく、手足が異常に長い、全身の関節を動かしながら,踊るようにゆっくりと動いている。

ソイツは「ん゛〜ん゛〜〜う゛う゛〜」と唄いながら階段の下まで来ると、上り始めた。
こっちへ来る!!逃げなきゃいけない!逃げなきゃいけない!と思うが、体が動かない。
ソイツが1階から2階への階段の半分くらいまで来たとき、
宿直室に置いてあった俺の携帯が鳴った。

俺は「まずい!!」と思ったが遅かった。
ソイツは一瞬動きを止めた後、体中の関節を動かしてぐるんと全身をこちらに向けた。

まともに目が合った。濁った眼玉が目の中で動いているのがわかった。
ソイツは口を大きくゆがませて「ヒェ〜〜ヒェ〜〜〜」と音を出した。

不気味に笑っているように見えた。

次の瞬間、ソイツはこっちを見たまま、すごい勢いで階段を上りはじめた!
俺は弾かれたように動けるようになった。とは言え逃げる場所などない。
俺はとにかく宿直室に飛び込んで襖を閉めて、押さえつけた。

しばらくすると階段の方から「ん゛〜〜ん゛〜う゛〜」という唄が聞こえてきて、生臭さが強烈になった。
来た!来た!来た!俺は泣きながら襖を押さえつける。頭がおかしくなりそうだった。

「ん゛〜〜ん゛〜ん゛〜〜」
もう、襖の向こう側までソイツは来ていた。

「ドンッ!」

襖の上の方に何かがぶつかった。俺は、
ソイツのつるつるの頭が襖にぶつかっている様子がありありと頭に浮かんだ。

「ドンッ!」

今度は俺の腰のあたり。ソイツの膝だ。

「ややややめろーーー!!!!」

俺は思い切り叫んだ。泣き叫んだと言ってもいい。
すると、ピタリと衝撃がなくなった。「ん゛〜ん゛〜」という唄も聞こえなくなった。

俺は腰を落として、襖から目を離すことなく後ずさった。
後ろの壁まで後ずさると、俺は壁を頼りに立ち上がった。窓がある。
衝撃がやみ、唄も聞こえなくなったが、俺はソイツが襖の真後ろにいるのを確信していた。
生臭さは、先ほどよりもさらに強烈になっているのだ。

俺はソイツが、次の衝撃で襖をぶち破るつもりだということが、なぜかはっきりとわかった。
俺は襖をにらみつけながら、後ろ手で窓を開けた。

「バターーン!!」

襖が破られる音とほぼ同時に俺は窓から身を躍らせた。
窓から下へ落ちる瞬間部屋の方を見ると、俺の目と鼻の先に、ソイツの大きく歪んだ口があった。

気がついたときは、病院だった。
俺は両手足を骨折して、頭蓋骨にもひびが入って生死の境をさまよっていたらしい。
家族は大層喜んでくれたが、担当の看護師の態度がおかしいことに俺は気づいた。
なんというか、俺を怖がっているように見えた。

怪我が回復して転院(完全退院はもっと先)するとき、俺はその看護師に聞いた。
すると看護師は言った。

「だってあなた、怪我してうなされてる日が続いていたのに、深夜になると、
目を開けて、口を開けて、楽しそうに唄を歌うんだから。

『ん゛ん゛〜ん゛〜〜う゛う゛う゛〜ん゛』て。」
posted by kowaihanashi6515 at 21:09 | TrackBack(0) | 洒落怖
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