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2018年10月14日

見知らぬ女【怖い話】




大学で実際にあった洒落にならない話。

俺の通っている大学は、山のてっぺんにある。

町から相当隔離された場所にあり、
最寄のコンビニですら、
ジグザグの山道を通って車で片道10分は掛かってしまう。

そんな環境であるため、
サークル活動や研究室などの特殊な用事でもない限り、
遅くまで大学に居残る学生はほとんどいない。

しかし、10棟程度に分かれている大学校舎の中の一つに、
『音楽棟』という建物があり、
そこでは夜遅くまで学生
(大半は音楽関係の学科生かサークルの人間)が、
ヴァイオリンやピアノ等の楽器を練習している。


音楽棟には、
50以上の個室の全てにピアノが一台ずつ入っているのだが、
学生はそれぞれ自分なりにお気に入りの個室があるようで、

例えば練習室の24番には○○専攻のA子がいるから、
23番の練習室をお気に入りに使っているアホな輩もいる、
といった具合だ。


その日の夜、俺は音楽棟で楽器の練習をしていた。

時刻は9時半頃だった。

終バスが10時なので、
そのくらいの時間になると学生の数はかなり減っている。

山中であるため、終バスに乗り遅れると下山は困難を極めるのだ。

俺もそろそろ帰るかと思ったその時。

やや離れた場所から

「ドカッ!!」と、

何かがぶつかるような音がした。

誰かが楽器でも落としたのだろうかと思ったが、
あまり気にせず個室を出ようとすると、

またもや

「ドカンッ!!」

という音がした。


さてはアレだなと思った。

音楽棟はだいぶ老朽化しているため、
壊れているドアがいくつかある。

ある程度ちゃんとした校舎をもつ学校に通う学生には、
信じ難いかもしれないが、この大学では運が悪いと、
自力で個室の中から出られなくなることもしばしば起こるのだ。

部屋の中からドアを開けようとしている音に違いない・・・。

前にも閉じ込められた友人を救出した経験があったからこそ、
確信があった。

すぐさま音のした個室の方へ行って、
個室にある窓から中を覗いてみると、
案の定、ドアを何とか開けようとしている、
学生らしき姿があった。

「今開けますよ」

と一声掛けてから、ドアノブをやや強引に捻って開けた。

「ありがとうございます、
 出ようとしたらドアが開かなくなっちゃって・・・」


初めて見る顔だった。

音楽棟に夜遅くまで残って練習している人間は、
大体把握できているつもりだったが、
目の前にいるのは全く知らない女の子だった。

他大生だろうか・・・?

原則として学外の人間は、
個室を使っていけない事になっているが、
まぁいいかと思い、

「練習お疲れ様です」

と言った。

その時。本当に、本当に一瞬の事だった。

その女の子の表情が歪み、恐ろしい顔つきになったのだ。

そして、嘘だったように一瞬で元の表情に戻った。

「ここ、私のお気に入りの部屋なんです」

「え、そうなんですか」

俺は喋りながら、変な違和感と緊張を感じていた。

何かこの女、おかしい。今の顔は何だったんだ?
いや、それ以前にもっとおかしな事がある。

「ずっと使っていたんですけど、
いきなり開かなくなったからびっくりして・・・」

んな事聞いてない。お気に入り?誰の・・・?

「ほんとうにありがとうございました」

そう言ってその女は、スタスタと歩いていってしまった。


俺は結局、何も聞けなかった。

この個室の番号は31。

俺のよく知る先輩がいつも練習している部屋だった。

いつも夜遅くまで練習している、努力家で熱心な先輩。

その先輩がいなくて、知らない女がいた。


俺はどうしても気になって、
すぐに携帯電話で先輩に聞いてみることにした。

意外にもすぐに繋がった。

どうやら、今までずっと学外で過ごしていたとの事だった。

授業は1コマから入っていたそうだが、
どうも気が進まなくて・・・と曖昧な返事だった。

そこで練習室の女のことを言ってみた。

先輩はしばらく絶句していたが、重い口調で話してくれた。

「誰にも言うなよ・・・昨日、脅迫を受けたんだ」

話によると、昨日の夜、
アパートで一人暮らしの先輩が家に帰宅すると、
郵便受けに大量の紙が詰まっていた。

何十枚もの紙の全てに、

『学校に来るな』

と一言、印刷されていた。

気味が悪くなって学校には行かず、
一日中、町に下りて過ごしていたそうだ。

警察に届けようと思ったが、思いとどまっていたらしい。

「その女って、誰なんですか?心当たりなどは・・・?」

「いや、あるわけない。
 ないけど、お前の話を聞いて余計に怖くなった。
 とりあえず、何とかしようと思う」

その会話を最後に、俺は今に至るまで先輩と会っていない。

アパートは空っぽ、
実家への連絡すら1年以上もない状態らしい。

完全に失踪してしまった。

勿論、あの女ともあれ以来、会っていない。







posted by kowaihanashi6515 at 00:24 | TrackBack(0) | 人怖

ある競輪選手の不思議な話 「たぶんこの世の人じゃないよね。彼がね、アンタに伝えて欲しいって。」 【不思議】【感動】【心霊系イイ話】





今はサラリーマンしてますが、
2年前まで競輪選手として勝負の世界で生きてました。
現役時代の話です。

静岡の伊東競輪の最終日に、
私は見事一着を取りました。

それは連携した前走の後輩選手(K.T君)が
勝とうと頑張った結果、
自分にもチャンスが来たからでした。

そのK選手が一着でゴールするところを、
私がゴール直前で後から抜いた形です。


レースが終わり、昼食を食べに食堂へ行くと、
ちょうどK君も食べに来ました。

一着を取って上機嫌だった私は

「K君一人なら一緒に食べようよ。」

と誘い同じテーブルで食事を始めました。


「4コーナーでは勝ったと思ったでしょ」

と私が言うと、

「はい、いただき!と思いました!」

とK君は二着になってしまったにもかかわらず、
屈託のない笑顔で言いました。

お互い力を出し切った満足感と、
レースの緊張から解放されたことですぐに打ち解けました。

彼とはその開催が初めての出会いでした。 


しかしその二ヶ月後、

K君は凍った路面で運転していた車がスリップし、
亡くなってしまいました。

かなりショックでしたが、
彼との思い出は伊東競輪のワンツーだけだった事もあり、
薄情なもので年月と共に忘れていきました。


何年か経った12月、
家で昼ご飯を食べながらテレビのニュースを見てると、
北海道の大雪の映像が流れてました。

「そういえばTが事故ったのもこんな日だったんかなぁ。
 あれ、Tって苗字何だったっけ。」

本当に私は薄情な奴です。

久々に甦った記憶でしたが、
Kという苗字がどうしても思い出せなかったんです。

その晩、突然妻が言いました。

「ねえ、K君って知ってる?。K君が私のとこに来たよ。」

あまりの驚きに声が出ませんでした。

「そうだ、Kだった…」

昼の記憶も、私の胸の中だけのものでした。

妻は恐ろしい程の霊感の持ち主でした。


妻は更に続けました。

「たぶんこの世の人じゃないよね。
 彼がね、アンタに伝えて欲しいって言った事をそのまま言うね。」

「思い出してくれてありがとうございます。
 僕はもっと走りたかったけど出来ませんでした。

 Mさん(私)には僕の分も走って欲しい。
 僕はもう生まれ変わっています。

 またスポーツを仕事に出きるように頑張ります。

 明日からの仕事、
 黄色かオレンジ色のユニフォームになったら怪我に気を付けて下さい。」

冷静に話す妻とは逆に私は声を上げて泣いてしまいました。

余りの驚きと嬉しさで泣きながら

「たった1回一緒に走っただけなのに」

と堪らず言いました。

短い時間でも絆に思っている。

事故の瞬間は、
頭の中で火花が散った感じがしただけで苦しまなかった。

ということも言ってたそうです。


その翌日から私は、千葉県の松戸競輪の出場でした。

松戸では夕べのことをK君の先輩に言うかかなり迷いました。

「うさん臭い。ふざけるな」

って言われるんじゃないかと。

迷ったあげく、夕べのことをその先輩に話しました。

何も足さず、何も変えず心を込めて。

「仲間が集まってコーヒーを飲む時にでも
 彼の思い出話をしてあげて下さい」

とだけ最後に加えました。


その夕方、

私の話を真剣に聞いてくれた
K君の先輩が興奮して私の所に来て言いました。

「M(私)!Kの命日、今日だった」

その日の宿舎での夕食は、
K君と同じ県の選手のテーブルに空席を設けて、
彼が好きだったビールのグラスを置いて彼の話で盛り上がったそうです。

「死んでも仲間の心の中で生き続ける」

なんて臭いセリフを耳にしますが、嘘じゃないと思いました。


水子の霊とか、人は死者を恐れますが、
彼らは自分の大切な人にいつまでも覚えていて欲しいと
願っているだけです。


死んでしまって肉体がなくなっただけで、必ず存在してます。

お墓に行っても亡くなった人は居ません。

想いを馳(は)せるだけで安らぎ、見守ってくれるのだと妻は言います。

松戸競輪では私は黄色(5番車)とオレンジ色(7番車)のユニフォームを
着る事もなく無事に3日間走り終えたのは、K君のお陰だと信じています。

私はそれから引退するまで、
K君に恥じないレースを心掛けて必死に走りました。

「うそくせぇ。読んで損した。」

と思われても仕方ないとわかります。

しかし本当の出来事だから仕方ないんです。

妻にはこういう話を他言をしないよう固く言われます。

しかし大切な人を亡くし、
立ち直れずにいる人への勇気や癒しになればと思い、
妻を裏切って投稿させていただきました。





「神様・・・お前もか・・・」幽霊のイタズラに悩んで神社へ参拝に行くと・・・【笑える怖い話】





俺は子供の頃から変わった体験をしている。


例えば、見えない何者かに触られたり、
誰もいない自分の部屋で腹にパンチを何度もされたり。

一番酷い時には、頭を掴まれて壁に叩き付けられたこともあった。

だが残念なことに、
その肝心の幽霊と思しき何者かを一度も見たことがない。

これらの体験を友人に話してみると、

「ベタだけど神社かどこかにお参りしに行ったら?」

と言われ、早速行ってきた。

俺自身はこういった参拝行為にご利益があるとか全く信じていなかったし、
その時はあいにく小銭が一枚も無かったので、
厚かましく“お願いだけ”してさっさと帰ろうと思った。

参拝を済ませて振り返り、来た道を歩き出すと、
後ろから

「カ・・・ネ・・・」

という声が聞こえた。

しかし、振り返っても誰もいない。

気のせいかと無視して歩き続けると、
その声が徐々に大きくなっていき、

「カ・・・ネ・・・、カネ、金!金!!」

とはっきり聞こえてきた。

これはマズイと思った俺は、
コンビニかどこかでお札を両替しようとやや早足で歩くと、

凍った焼き鳥でブッ叩かれるような痛みを頭に感じ、
直後に後ろから

「走れ!」

という怒号が聞こえた。

怖くなった俺はすぐさま走り出し、
急いで両替してお賽銭を済ました。


「神様・・・お前もか・・・」

と思いながら、その日は布団の中で泣いた。



霊感の強い友人【怖い話】





実際に自分が体験した話。

10年来の友人に、
Eちゃんというものすごく霊感の強い子がいる。


どのくらい強いかというと、
幼い頃から予言めいたことを口にしていて、

それが口コミで広がり、
わざわざ遠方からEちゃんを訪ねてくる人がいたくらい。


その人達の用件は主に、
行方不明になった我が子を探してくれてというもの。


Eちゃんは写真を見ただけで、
その人物がどこにいるのかがわかる。

そして実際に当たっている。

ただし、その人物が
亡くなっている場合のみだけど。


幼かったEちゃんは深く考えずに、

「コンクリートの下に埋まってるよ〜」

なんて答えていたらしい。


やがて成長すると、
自分がどれだけ残酷な回答をしていたか気付き、
人探しは断るようにした。

それから周りには能力が消えたフリをし続けてきたらしい。


本当はいつもうじゃうじゃ霊の存在を感じていたけれど。


そんなEちゃんと私は、中学で出会った。

最初はすげー美少女がいるなーという印象だった。

ちなみにEちゃんはイギリスとのクオーターで、

佐々木希と北川景子を足して2で割ったような顔をしている。


あんまりに美少女だったから高校の時、
芸能界入りを勧めたら、

某大手プロダクションのオーディションに
あっさり受かりやがった(笑)


だけど本人にやる気がなかったせいか、
半年くらいで辞めてしまった。


それからは普通の高校生として、
Eちゃんはよく私と遊んでくれた。

学校帰りにはいつも2人で買い食いしてた。


ある時、

どこかの施設の外階段に座って
2人でお菓子食べてたら、

上から降りてきたおばあさんに
話しかけられたことがあった。

おばあさんは足が悪そうだった。


「人がいっぱいおるけど、今日何かあるんですか?」

おばあさんが言った。

下の道路はたくさんの人で溢れている。

お祭があるのだ。

こういう時、
人見知りの私はいつもEちゃんに話を任せてしまう。

しかしその時のEちゃんは違った。


そっぽを向いて、
おばあさんと話す気などまるでなし。

仕方なく私が答えることにした。

祭があることを教えると、おばあさんは納得した。


「だからこんなに人がおるんだね〜」

おばあさんはにこにこしていて、
足を引きずりながらゆっくり階段を下りていった。

その間、Eちゃんはずっと黙っていた。

そしておばあさんの姿が視界から消えると、
ようやく口を開いたEちゃん。


「…今の人、とっくに亡くなってるよ」

驚いた。

だってしっかり姿見えていたし、
私は会話までしている。

「嘘でしょ?」

私は半笑いで訊いた。
しかしEちゃんは真顔だった。

「嘘だと思うなら階段下りていってみなよ。
 もう姿消えてるはずだから」

半信半疑で階段を下りるも、
すでにおばあさんの姿はなかった。


1階まで下りて探してみたけど、どこにもいない。

その階段というのが螺旋階段に近い作りになっていて、

確か階段を使うためには、
1階、5階、7階から入るしかないはずだった。


5階から1階までの間に
建物の中に入ることもできない作り。

そして私達が座っていたのが、5階辺り。

そこから1階まで、
足をひきずっていたおばあさんが
短時間で下りられるわけないのだった。


Eちゃんのもとへ戻ると、
彼女はやっぱりねという顔をして
ポッキーを食べていた。


「たぶん大丈夫だよ。
 人が多いから気になって
 出てきただけみたいだから。
 害のない霊だよ」

「じゃあなんでEちゃんは
 おばあさんと話さなかったの?」

「あたしに能力があると知ったら、
 害のない霊でも憑いて来ちゃうことあるから」

「私、普通におばあさんと会話しちゃってたんだけど…」

「平気平気」

これが私が初めて霊を見た瞬間だった。


霊ってもっと怖くて、
怨念深い感じで出てくるとものだと思っていたから、
なんだか拍子抜けした。

すごくナチュラルに出てくるものなんだ…。


「亡くなって霊の姿になっても足をひきずってるなんて、
 可哀想だね」

「いやいや実際あたしが普段見てる奴らは
 あんなもんじゃないから。もっとぐろいよ」

あんな優しそうな
おばあさんの霊を見ただけでも、

やっぱりちょっと怖いなと
思っていた自分が恥ずかしくなった。

そして改めて、
Eちゃんが置かれている環境の特殊性を知った。


その後の私は霊を見ることなく、
無事に高校を卒業した。


卒業後、Eちゃんは事務職に就き、
私は実家に住みながらフリーターをしていた。

お互い仕事とアルバイトに追われ、
Eちゃんとはあまり会えなくなった。


しかし、
たまにメールや電話でやりとりは続いていた。


Eちゃんが仕事を辞め、
夜の仕事を始めたと聞いたのは、
高校を卒業してから1年程経った頃だった。


夜の仕事を始めたきっかけは、
父親のリストラだったそうだ。

さらにEちゃんの家には
早くに結婚して出戻って来た妹さんと、

Eちゃん似でイケメンなのに、
なぜかひきこもりの弟さんがいた。


Eちゃんは家族を支えるため、必死に働いていた。

なんだか実家に寄生して
ふらふらアルバイトをしている
自分が恥ずかしくなった。


就職活動を始めた私は、
しかしなかなか面接に
受かることが出来ず、

最終的に販売系の仕事で、
準社員として働くことになった。


仕事場となった店舗は、
数年前に殺人事件があった現場。


この事件、
当時は結構ニュースとして話題になった。


仕事は販売系と書いたけれど、
実際はちょっと違う。

今でも検索すればすぐ事件を特定されてしまうので、
実は職種ははっきりとは書けない。


曰くつきの職場ということで、
いざ働き始めてみると色々な話を耳にした。

前の店長が失踪したとか、
社員がみんな病気になるとか。


しかし私は特に何の変化もなかったので、
気にせず働いていた。


そして働き始めて1年が経った頃のこと……。


その日は朝から雨が降り続いていた。


客は数人しか来ず、開店休業状態。

午後には完全に客足が途絶えた。

店長と社員さんは配達に出てしまったため、
店番は私1人。


雨のせいか辺りは薄暗く、
なんだか気味が悪かった。


レジで手仕事をしながら時間を潰していると、
足音が聞こえた。


気付かぬうちに客が入ってきたのかと思い、

とりあえずブックオフ風に店全体に響き渡るよう、

「いらっしゃいませー」

と声をかけた。


それから客の相手をしようと
店内を探したのだが、誰もいない。

気のせいだったのかと思ってレジに戻り、
仕事を始めるとまた足音。

だがやはり客の姿はない。


こんなことを何度か繰り返していると、
さすがに怖くなってきた。


そして何度目かの足音。

今度ははっきりと背後から聞こえた。

始めはヒタヒタヒタ…くらいだったのが、
次第に小走りになり、

すぐにダダダダダッという
足音が近づいてくるのがわかった。


やばいやばいやばい……

恐怖に硬直していると、
視界に見慣れたジャンパーの色が入った。

店長が配達から帰って来たのだ。

ほっとした瞬間、足音が消えた。

おそるおそる振り返ってみる。

誰もいなかった。

「どうかした?」

何も知らない店長が、
不思議そうな顔をして訊く。

私は平静を装って、

「なんでもありません」

と言った。

しかし声を震えていたと思う。


その後、

店長は何か問題を起こしたとかで左遷され、

社員さんも次々と辞めていき、
店のメンツは様変わりした。

わたしは店舗で一番の古株になった。


新しい店長は大学出たてで
まだ右も左もわからない状態。

その店長とほぼ同時に入って来たのが、
アルバイトのKくんだった。


Kくんは最近までニートで
ひきこもりに近い生活をしていたとかで、
なんだか挙動不審。


店に出して客の相手をさせることは
まず無理だろうということで、

Kくんの仕事は主に、
配達の助手や事務的なことが中心だった。


しかしいざ働いてみると、
Kくんは案外面白い人だった。

私の知らないアニメや漫画をよく教えてくれた。


やがてみんなと打ち解け明るくなったKくんは、
レジ操作なんかも覚えて接客も出来るようになった。


ある時、

配達でみんな出払ってしまい、
店には私とKくんの2人きりということがあった。


Kくんは事務所の中にこもって、何かやっている。

その日は客が多く、レジが混雑してきた。

私1人では回すのが難しくなってきたので、
Kくんに応援を頼もうと、

客が途絶えた瞬間を見計らって
事務所のドアの外から呼びかけた。


「Kくーん、ちょっと出てきてもらっていいー?」

事務所の中からは返事がない。

事務所のドアは上1/3くらいが曇りガラスになっていて、
外から中の様子がぼんやりと窺える。


スタッフジャンパーを着た人影が中で動いていたので、
Kくんが確実に中にいることはわかった。


聞こえてないのかと思い、
ドアを開けて直接話すことにした。

ガチャガチャ……。

Kくん、内側から鍵かけてやがる。

この忙しい時に何やってるんだか…

怒りに任せてしばらく
ドアノブをガチャガチャやりながら、
大声で中のKくんに呼びかけていた。


「Kくん?何やってるの?
 ちょっとレジ手伝ってほしいんだけど」

その時、背後から声がした。

「あのぉ〜Mさん?何やってんすか?」

Kくんだった。

あれ?事務所の中にいるはずじゃ……。

Kくんは店の裏で掃除をしていたのだという。

じゃあ今、事務所の中にいる人は誰?

そう思った時、
いくらやっても開かなかったドアが、
あっさりと開いた。

中には……誰もいなかった。


確かにスタッフジャンパーを
着た人影が動くのを私は見た。


だからKくんが中にいると思ったのだ。

しかしKくんはずっと店の裏にいた。


事務所には窓がなく、
出入りするにはこのドアを使うしかない。


じゃあ私が見た事務所の中の、
スタッフジャンパーを着た人は
どこへ行ってしまったのだろう。

背筋に冷たいものが走った。


その後は客の相手に忙しく、
真相を突き止める暇が無かったので、

このことはうやむやになってしまった。


Kくんが何か嘘をついているようには
見えなかったし、

深く考えると怖いので考えないようにした。


それから数日後、

出勤すると店の裏口に花が供えられていた。

数年前に起こった事件…
その日は被害者の命日だった。


毎年この日になると、
遺族が夜のうちにひっそりと
花を供えに来ている。


事務所の中には小さな仏壇がある。

毎年、花はその仏壇に挙げていた。


それからしばらくして花は枯れてしまうが、

スタッフの誰もその枯れた花を始末しない。


なんとなく、触れたくないと
みんな思っているようだ。

仕方なく私が手を伸ばした。

その時だった。

「捨てるな!!!」

Kくんが怒鳴った。

いつもボソボソと話すKくんの、
初めて聞いた怒鳴り声。


驚いた私は、咄嗟に花から手を引っ込めた。

何か気に入らないことでもしただろうか…

あの挙動不審なKくんが、
こんなにも怒りを露にするなんて。

「え…ごめんね。どうしたの?」

私はKくんに謝った。

しかし、

「ん?何のことっすか?」。

Kくんはきょとんとしている。

「今、怒鳴ったよね?」

「いえ、何も言ってないですけど」

Kくんは自分が怒鳴ったことを
忘れているようだった。

それとも私の聞き間違いだったのか…。


念のため花はもうしばらく
そのままにしておくことにした。


そんな出来事があってからも、
私は変わらずその店で働き続けた。

店長と付き合い始め、
職場恋愛に浮かれていたのだ。


いつもスタッフが帰った後、
店長と2人残ってレジ閉めしたり、
店のことを話したり、楽しかった。


ある日、

閉店時間になっても配達から
店長がなかなか帰ってこず、

閉店後も私は1人、
仕事をしながら彼の帰りを待っていた。


そういうことは今まで何度かあった。

彼が戻ってくるまで、1人は怖いので、
大抵は店の電話を使って
友達と話ながら待つことにしていた。


その日は久しぶりに
Eちゃんに電話を掛けて
みることにした。


「今、まだ職場にいて1人で暇なんだよー。
 話付き合ってよ」

Eちゃんは快くOKしてくれ、

しばらくは高校時代の話などして
盛りあがっていた。


しかし、次第にEちゃんの口数が少なくなり、
声のトーンも暗くなった。


心配になった私が訊いてみると、

『Mちゃん、今、職場にいるんだよね……?』

「うん、そうだよ」

『今すぐそこから離れて!早く!』

Eちゃんはもうすごい剣幕で、
私にすぐ帰るよう言ってきた。


幸い、店の鍵は任されていたので、
私はさっさと身支度をして店を後にした。


何が何だかわからぬまま家に帰りつき、
彼には用事があるので
先に帰ったことを伝えた。


そしてEちゃんに理由を聞こうと
電話に手を伸ばした時、
Eちゃんのほうから着信があった。

「さっきはどうしたの?」

私が何か言おうとするとのを遮り、
Eちゃんが言った。


『あんたの職場やばいよ。

 店で電話してた時、すごいノイズが入ってたし、

 Mちゃんの声も変な風に聞こえた。
 別人みたいな声になってた』

それからEちゃんは、
このままその職場で働いていると
良くないことが起こるから、

すぐに仕事を辞めたほうがいいと言ってきた。

私は迷った。

Eちゃんの言うことなら信じられる。

だけど、すぐに辞めたら周りに迷惑がかかるし、
次の仕事を探すのもこんな田舎では難しい。


迷った末、どうにも決めかねて、
次の日も仕事に行くことにした。


翌朝、家を出ると目の前にEちゃんがいた。

久しぶりの再会だった。

だけど、なぜこんな朝っぱらから訪ねて来る?

Eちゃんは会って早々、玄関の前で土下座をしてきた。


「お願いだからもうあそこへは行かないで」

Eちゃんは泣いていた。

思えば、Eちゃんが泣いたところを
見たのはその時が初めてだった。


私はまずそのことに驚き、かなりうろたえた。


結局、私はEちゃんの剣幕に負け、
その日は仕事を休むことにした。


そして結局一日中、Eちゃんに説得され、
そのまま仕事を辞めることになった。


Eちゃんの紹介で新しい職場もすんなり決まり、
仕事に慣れて来た頃、

私はあの店で一緒に働いていた人と
偶然再会した。

その人も、もうあの店は辞めたらしい。


話を聞くと、私が仕事を辞めてからも、
やはり色々とあったらしい。


みんな体を壊したり、ノイローゼになったり、
事故に遭っていたり……。

Eちゃんは私がこんな目に遭わないように、
仕事を辞めるよう説得してきたのだった。


そんなことがあってから数年が経ち、
現在、私は職場の先輩に紹介された人と結婚し、
新居に移った。


先日、その新居にEちゃんが遊びに来てくれた。

夫となった人に会わせると、
Eちゃんはとても喜んでくれた。


「もう大丈夫だね、Mちゃん。
 これからはこの人がMちゃんを守ってくれるよ」

私はこの時にはもう悟っていた。

なぜ可愛くて男子からも人気のあるEちゃんが、

私のような地味な子と一緒にいるのか。


なぜ頭の良いEちゃんが、
わざわざレベルを落としてまで
私と同じ高校に進学したのか。

なぜモデルになりたいと言っていたくせに、
せっかく入れた芸能事務所を辞めたのか。


昔から、私が1人で出かけようとすると、
Eちゃんはよくついて来たがった。


ビジュアル系なんて興味ないくせに、
ライブにまでついて来たし、

買い物だって美容院だって、
わざわざ私の趣味に合わせて
くっついて来ていた。


全部、私を守るためだったのだ。

中学で初めて会った時、
Eちゃんは私の背後に憑いている
者の存在を気にしていた。


そして、その者が引き寄せる
数々の悪い者から、Eちゃんは
ずっと私を守ってくれていたのだ。


Eちゃん曰く、今の旦那と一緒にいれば、
私はもう大丈夫らしい。

肩の荷が下りたように、
Eちゃんは晴れ晴れとした顔をしていた。


そして今、Eちゃんは変わらず
夜の仕事を続けながら、

きちんとした指導者について
除霊の勉強をしている。

1人でも多くの人を救うために。

その勉強はものすごく辛いものらしい。


今まで無意識だった能力を意識して使おうとすると、
よく分からないのだが、力が暴走するらしい。


そのせいで、
見たくないものが部屋に横たわっていたり、
色々な者が寄ってくる影響で、
体を壊して何度も病院に運ばれたりしている。

それでも彼女は頑張り続けている。

私はもう一生、
彼女には頭が上がらないだろう。

Eちゃんと出会わせてくれたことを、
神様に感謝したい。


以上、

嘘っぽいところもあると思いますが、
すべて実際に起こったことです。





タグ:友人 霊感 除霊
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