アフィリエイト広告を利用しています

広告

この広告は30日以上更新がないブログに表示されております。
新規記事の投稿を行うことで、非表示にすることが可能です。
posted by fanblog

2018年11月08日

集落【田舎の怖い話】






もう20年以上前、少年時代の話である



俺は名は寅、友達は雄二と弘樹と仮名をつけておく



あれは小学校六年生の夏休み

俺達は近所の公園で毎日のように集まり、遊んでいた



夕焼け空が真っ赤に染まりだした頃



「そろそろ帰ろうか」と弘樹が言い出す



片親で家に帰っても一人ぼっちの雄二は

「もう少し遊ぼうや」と俺達2人を引き止める



門限に厳しい弘樹は

「ごめんな、また明日遊ぼうや!」と言い帰って行く



弘樹の姿が見えなくなると、決まって雄二は

「あいつ毎回付き合い悪いのー」と愚痴りだす



すっかり暗くなった公園には俺と雄二の2人きり



雄二の話に適当に相槌を打つも、
早く帰らねば俺も親に叱られる



そんな俺の挙動が伝わったのか、
雄二は少しイラついた顔をして


「寅も帰りたいんやろ?かえればいいやんか」

と言い放つ



少しムッとしたが、
何時ものことだと自転車にまたがろうとすると



「俺、こないだ廃屋みつけつたんよねぇ」

雄二が言う



どうせまた引き止めようと
興味を引こうとしてるんだと思い


俺はあえて聞こえないふりをし、
自転車を走らせようとすると



「俺今夜、廃屋に探検しに行ってくるわ〜」

とさっきよりも大きな声で言った




廃屋、探検、興味はあったが、
親に怒られたくなかったので



「雄二、お前もはよ家帰れよ〜」

と言って、家へ帰った



どうせ一人で行く勇気もない癖にとその時は思ってた



家へ帰り、風呂に入り、晩飯を済ませた頃だった、
ジリリリリンと電話がなる


もしもし、と電話に出ると
雄二の母親からであった



「あんたんとこにうちの雄二いっとらんかね!?」



乱暴な言い方に軽くムカッときたが


「雄二君ならまだ公園であそんでるかも」

と言うとガチャっと電話を切られた




雄二の母親にはムッときたが、
雄二が帰宅してないと聞き少し心配だった



雄二は少し悪ガキで、夜遅くまで遊んでいる事が多く、
悪い連中と付き合いがあると噂されていた





夜も十時をまわり、床に就くと遊び疲れか、
すぐに眠ってしまった





翌朝早朝、母親が血相を変えてたたき起こしに来た



「雄二のお母さんから電話がかかって、
 昨日から家に帰ってないってさ!
 ここにいるんじゃないかって怒鳴り散らすんよ〜」



またかよ、と思ったが
一晩も家に帰らないのは初めてだし


本当に昨日言っていた廃屋へ探検しにいって
何かあったんじゃないかと心配になってきた





弘樹に電話をして、事の経緯を話すと、
弘樹の家にも同じ様な電話がかかったらしい



取り合えずいつもの公園で待ち合わせをして、落ち合った



「雄二とはもう付き合うなって母ちゃんに言われて大変だったよ」



弘樹が疲れた顔で言う



「あいつの母ちゃん変わってるよな」

と俺が言うと



弘樹が


「まあ、それも解る気がするわ・・」

と意味深な事を言った



「???解る気がるって??」

俺が聞くと





「あ。なんでもないよ、それより雄二の行きそうな場所探さんと」





そして俺達はよく三人で遊んだ場所を
ぐるぐる回ったが雄二は見つからなかった



一旦公園へ戻り、水を飲み休憩していると

公園の横を雄二の母親が車で通りかかった



俺達に気がついたのか
車のスピードを落としゆっくり通り過ぎていく



雄二が帰ってこなかったせいか、



充血した眼でギロっと俺達を睨みつけ去っていった



心なしか口元がぶつぶつ何かを言っているようにも見えた





「おっかねぇな・・」

弘樹が言った



「・・・・はは・・」





「そういえば寅さぁ昨日俺が先に帰った後、
 雄二なんか言ってなかったんか?」





「ああああああ!!」



アホな俺は廃屋の話を弘樹に言われ思い出した





昨日の会話を弘樹に伝えると



「廃屋かぁ・・多分あそこにあるやつやないかなぁ・・」





弘樹は何か知っている風だった



「弘樹、場所わかるんか?わかるんなら行って見ようや」

そう俺が言うと



「う〜ん・・あんまし行きたくない〜・・」


と弘樹がごねる



煮え切らない弘樹に業を煮やして



「お前、雄二が心配やないんか?はよ行くぞ!」





嫌がる弘樹に案内させ、自転車を漕ぐ事1時間

道路も途中から舗装されてなく、砂利道に変わった





「この集落の先にあるんやけど・・・」



たどり着いた場所は川沿いの小さな集落だった





「ここって・・・もしかして○○地区ってとこ??」





「・・・そうそう」





弘樹が嫌がった理由がわかった



ここは絶対に近づいてはいけないと
親達にいつも言われている地区だった





集落の家屋は半分以上朽ち果てたようなものばかり

歩いている人の身なりも煤け汚れていた





数人の老人がこちらに気がつくと
足を止めてこちらを凝視してくる





その眼はどれも荒んで、
憎しみさえ感じられるほど強い視線





よく見ると、日本の物ではない
小さくボロボロな国旗が風に揺れていた





「弘樹・・例の廃屋ってのはこの地区の中にあるんか?」





「いや、確かこの地区の少し先の山の中だったはず」

と小さく答えた





「そこへ行くにはこの集落の中通らんと行けんのか?」







「・・・・うん」





50メートル先では数人の住民が俺達の事をじっと見ている





恐ろしかったが、友達も心配だ


俺達は腹を決め、
怪しまれない程度の速度で自転車を走らせる





なるべく視線をあわせないよう進んでいく


少し進んでいくと、数人の老人が地べたに横になっていた



自転車で進む俺達に気がつくと、
上体をむくっと起こして、俺達の事を見ている



見ない振りをしながら先へ進む



集落を抜けた辺りで、弘樹の自転車が急に止まった



そして転がり落ちるように道の端へ走りだした



「おい、弘樹どうしたんか!?何してるん!?」



声をかけると弘樹は急に道の端でげーげーと嘔吐した




「大丈夫か??具合が悪くなったんか??」

背中をさすりながら声をかける



すると弘樹が


「寅・・・あそこ・・」



弘樹が涙目で指を差す




弘樹の指差した場所には、
たくさんの頭のない鶏が木に吊るされていた



食べる為に血抜きをしているのか、
地面には真っ赤な血の水溜りが出来ていた



それを見た俺も思わず嘔吐してしまった





慌ててその場を離れ、
少し休憩しようと山に入り人目につかない木陰に
自転車を隠し腰を下ろした





「弘樹よぉ・・廃屋がここにあったとしてもよ、
 雄二の奴一人でこんな場所これるかな?」

と言うと



弘樹は少し俯き、小さな声で


「これるよ」

と言った





「う〜ん、俺なら絶対無理やな。うん、無理だ」





「寅よぉ、お前、知らんのか?」

不意に弘樹が言う





「ん?何を?」

そう聞き返した時だった





数人の男が集落のあった方向から山へ入ってくるのが見えた





「やばい、寅、隠れよう!」





俺達は木陰に身を低くし、様子を伺った





大きなズタ袋を老人が数人で担ぎ、山を上がっていく



老人達はニヤニヤしながら
俺達にはわからない言葉で会話している





「あいつらなんて言ってるんだ??」





「それより寅、あいつら廃屋の方へ行っとるかも・・・」





仕方なく俺達はびくびくしつつも

老人達と距離をとって後をつけた





しばらく進むとバラック小屋のような建物が見えてきた





「寅、あれが例の廃屋だよ」

弘樹が言う





「そういえばずっと気になっとったんやけどさ

 弘樹はなんでここ知ってるん?」

俺がそう聞くと



「ん?ああ、

 お前とは六年になってから仲良うなったよな

 俺は雄二とは三年の頃から友達での

 いっぺんだけ来た事があるんよ」





「はは、お前等俺の知らんとこで色々冒険しとるねぇ」





「冒険っちゅうかの、雄二のだな・・・・・
 う〜ん、やっぱやめとくわ」







「何々??気になるやんか、教えれよ!」





「そのうちわかる事やけん、気にすんな」





そんな会話をしていると、男達は廃屋の中へ入っていった





弘樹に促されゆっくりと廃屋へ近づいていく



物音を立てないように廃屋の裏手にまわった





裏手にまわると、廃屋の中からの声が聞こえてくる



日本語ではない言葉で

大勢の男達が怒号のような声を上げ騒がしい





「寅、こっちに窓がある」



先に進んだ弘樹が手招きしている



近づき煤けたガラス越しに中の様子が少しだけ見える



さっき見かけた老人がいる



部屋の中央へ向き拳を振り上げ何か言っている





「くそぉ、弘樹、肝心な所が見えん・・・」





「う〜ん、何をしとるんやろうか・・

 もうちょっと中の様子が見える場所探すけん、
 寅はここにおってくれ」





そう言って弘樹は身をかがめ廃屋の別の窓を探しに進んだ





時折廃屋の中から大きな声がドッと上がるたびにドキっとする





しばらく覗いていると





「あっ!」

と弘樹の声が聞こえた



一瞬廃屋の中が静かになったが

気付かれなかったのか、またざわざと騒ぎ出した





俺は弘樹の声がした場所へゆっくりと近づく



弘樹は尻餅をつきガクガクと振るえており、涙を流していた



中にいる連中に気付かれない様に小さな声で



「弘樹、どうしたんか?大丈夫か?」


と尋ねると





弘樹はぶんぶんと首を横に振り声を殺し泣いている



震える弘樹の肩をぽんと叩き、廃屋を覗いてみる



先程と同じ様に煤けた硝子窓があり

中を覗いてみると何かを取り囲むように男達が座っていた



どの男達も部屋の中央を見て騒いでいる



ゲラゲラ笑っているものもいれば、
怒鳴り散らすように怒号を上げているものもいる



不気味な光景に鳥肌がぶわっと立った





男達の視線の先には、丸くか困れた柵があり

その中から、羽毛の様なものが舞い上がっている



柵の中がよく見えなかったので

足元にあった切株に乗り背伸びをしてみると

そこには雄二がいた





衣服は脱がされ、口と両腕両足を縛られ

顔には殴られた後があった


木の杭のようなものにくくられており

身動きがとれない状況になっていて
雄二の周りには鶏のようだが鶏より遥かに大きな
鳥が暴れていた





よくみると大きな鳥は脚に短い刃物が縛ってあり

雄二は脇腹の辺りから出血し、痙攣していた





あまりのショックと恐怖に身動きが取れずガタガタ震えていると



正気を取り戻したのか弘樹が俺の手をぐっと引っ張った



「逃げよう」





弘樹に促され、
震える身体を奮い立たせその場から離れた



自転車を隠してある場所まで戻り

少しでも早くこの場を去ろうと俺達は突走った





途中、例の集落を通ったが

皆廃屋へ行っているのかもぬけの殻だった様子





地元まではどんなに飛ばしても1時間近くかかるが

田舎の為、駐在所も少なく、俺達は必死に自転車を走らせた





やっとの思いで地元へ帰り、
俺達は見てきた事をぐしゃぐしゃに泣きながら親達に話した


母親は

「あんた達、あそこへ行ったんか!?
 あんた達死にたいんか!?」

と涙を流しながら怒鳴った





父親が警察へ通報し、少しすると、
数台のパトカーが家の前を走っていく

その中の一台に雄二の母親が乗っているのが見えた



通り過ぎる瞬間、
雄二の母親は俺と弘樹をじっと睨みつけていた



氷の様に冷たい眼で



目の前を通り過ぎても振り返り睨み続けていた



その目は、あの集落で見た目つきにそっくりだった





弘樹を父親の車で送り


「また明日な」

と声をかけると弘樹は少しだけ笑って見せた




弘樹を無事に送り届け家へ帰ると

親戚やばあちゃんまで来て俺は叱られた





そして父親が俺に言った



「寅、お前はまだ子供で難しい事はわからんと思うが聞いてくれ」



俺は黙って頷いた



「今日お前達が言った場所はな、
 日本であって日本じゃねーんだ



 道路も舗装されとらん、電柱も立ってねぇ



 住んどるもんをみたか?

 みんなまともな格好はしとらんかったやろう?



 そんな土地に頑なにいつまでん住んじょる


 そして”こっち側”の人間を遠ざけとるんや



 あの地区にはわしらとは全く違う文化や風習があるんよ



 あの地区の連中からすりゃ、わしらは敵に見えるようや



 わしらはいつだって”こっち側”へ迎え入れる準備はしとる



 学校へもちゃんと通えるし、仕事だってある



 あの地区から”こっち側”へ来て
 普通に生活しとるもんもたくさんおるんよ



 お前の友達の雄二んとこもそうや



 ただ中には出て行ったもんは裏切り者なんて
 捻くれた感情をもつもんもあそこにはおる



 きっと雄二は小さい頃から遊んどった場所やけん



 安心して遊んでたつもりなんやろうけど



 一部の捻くれもんに眼をつけられてしもうたんやろうな





 んで今回、雄二が酷い目にあったのは



 お前達のせいだと雄二の母ちゃんは言いよる



 お前達が遊んでやらんから、余所者扱いするから

 あそこへ行ってしまったと思い込んどるんよ



 考え方が変わっとるっちゅうか、被害妄想っちゅうかの



 捻くれとるんじゃのまぁ寅も弘樹も気にせんでもいい事や



 ただ、子供だけであの土地へ行くことはもう許さんぞ」



それだけ言うと父親は仏間で横になり寝てしまった





俺も昼間の疲れからか布団に入った瞬間寝てしまった





翌日、弘樹といつもの公園で待ち合わせた



昨日の事はお互い言わず、なんとなく一日公園にいた





夕焼け空が真っ赤に染まる頃、俺達は帰路へついた



そして夏休みが終り新学期になり、雄二が転校した事を知った



先生に行き先を聞いたが、家庭の事情だからと教えてもらえなかった





そして、いつの間にか十年の時が経ち

大人になった俺達はあの土地へ行ってみた





そこにはあの朽ち果てた集落はなく県道が走り、
廃屋のあった山にはトンネルが通り街へ出る
主要道路として使われている





あの集落の住人達は、一体何処へいったのだろう


あの日見た荒んだ目は今でもどこかで

”こっち側”を睨みつけているのだろうか・・・








2018年11月07日

分からないほうがいいこともある【田舎の怖い話】






わたしの弟から聞いた本当の話です。

弟の友達のA君の実体験だそうです。


A君が子供の頃、

A君のお兄さんとお母さんの田舎へ

遊びに行きました。

外は晴れていて、

田んぼが緑に生い茂っている頃でした。



せっかくの良い天気なのに、

なぜか2人は外で遊ぶ気がしなくて、

家の中で遊んでいました。


ふと、お兄さんが立ち上がり、

窓のところへ行きました。

A君も続いて窓へ進みました。



お兄さんの視線の方向を追いかけてみると、

人が見えました。

真っ白な服を着た人が1人立っています。

(男なのか女なのか、その窓からの距離では

 よく分からなかったそうです)

あんな所で何をしているのかなと思い、

続けて見ると、

その白い服の人は、

くねくねと動き始めました。


踊りかな?

そう思ったのもつかの間、

その白い人は不自然な方向に体を曲げるのです。


とても人間とは思えない

間接の曲げ方をするそうです。

くねくねくねくねと。

A君は気味が悪くなり、

お兄さんに話しかけました。


「ねえ。あれ、何だろ?お兄ちゃん、見える?」

すると、お兄さんも

「分からない」

と答えたそうです。

ですが答えた直後、

お兄さんはあの白い人が

何なのか分かったようです。


「お兄ちゃん、分かったの?教えて?」

とA君が、聞いたのですが、


お兄さんは

「分かった。でも、分からない方がいい」

と、答えてくれませんでした。


あれは一体なんだったのでしょうか?

今でもA君は分からないそうです。


「お兄さんにもう一度聞けばいいじゃない?」

と、私は弟に言ってみました。


これだけでは私も何だか消化不良ですから。

すると弟がこう言ったのです。

「A君のお兄さん、

 今、知的障害になっちゃってるんだよ」







2018年11月02日

森守りさま「どうにもならん。可哀相だが諦めておくれ」【山・森・田舎・集落】【怖い話】





2ヶ月ほど前の出来事なのだが、

数年後が心配になる話。



俺の田舎は四国。


詳しくは言えないが、高知県の山深い小さな集落だ。



田舎と言っても祖母の故郷であって、

親父の代からはずっと関西暮らし。


親類縁者もほとんどが村を出ていた為、

長らく疎遠。



俺が小さい頃に一度行ったっきりで、

足の悪い祖母は20年は帰ってもいないし、

取り立てて連絡を取り合うわけでもなし。



全くと言っていいほど関わりがなかった。



成長した俺は車の免許を取り、

ボロいデミオで大阪の街を乗り回していたのだが、

ある日どこぞの営業バンが横っ腹に突っ込んで来て、

あえなく廃車となってしまった。



貧乏な俺は泣く泣く車生活を断念しようとしていたところに、

田舎から連絡が入った。



本当に偶然で、

近況報告のような形で電話をしてきたらしい。



電話に出たのは親父だが、

俺が事故で車を失った話をしたところ、


「車を一台 処分するところだった。

なんならタダでやるけど 要らないか?」

と言ってきたんだそうだ。



勝手に話を進めて、俺が帰宅した時に

「新しい車が来るぞ!」

と親父が言うもんだからビックリした。



元々の所有者の大叔父が歳食って、

狭い山道の運転は危なっかしいとの理由で、

後日に陸送で車が届けられた。



デミオより遥かにこちらの方がボロい。

やって来たのは古い71マークUだった。


それでも車好きな俺は逆に大喜びし、

ホイールを入れたり、程良く車高を落としたりして、

自分の赴くままに遊んだ。



俺はこのマークUをとても気に入り、

通勤も遊びも全てこれで行った。


その状態で2年が過ぎた。



本題はここからである。


元々の所有者だった大叔父が死んだ。



連絡は来たのだが、


「一応連絡は寄越しました」


という雰囲気で、死因を話そうともしないし、

お通夜やお葬式のことを聞いても終始茶を濁す感じで、

そのまま電話は切れたそう。



久々に帰ろうかと話も出たのだが、

前述の通り祖母は足も悪いし、

両親も専門職でなかなか都合もつかない。



もとより深い関わりもなかったし電話も変だったので、

その場はお流れになったのだが、

ちょうど俺が色々あって退職するかしないかの時期で

暇があったので、これも何かのタイミングかと、

俺が一人で高知に帰る運びとなった。



早速、愛車のマークUに乗り込み、高速を飛ばす。



夜明けぐらいには着けそうだったが、

村に続く山道で深い霧に囲まれ、

にっちもさっちもいかなくなってしまった。


多少の霧どころではない。


かなりの濃霧で、前も横も全く見えない。



ライトがキラキラ反射して、とても眩しい。


仕方なく車を停め、タバコに火をつけ窓を少し開ける。



鬱蒼と茂る森の中、離合も出来ない狭い道で、

暗闇と霧に巻かれているのがふっと怖くなった。


カーステレオの音量を絞る。

何の音も聞こえない。


いつも人と車で溢れる大阪とは違い、ここは本当に静かだ。


マークUのエンジン音のみが響く。



「ア・・・・・」


何か聞こえる。


なんだ?



「ア・・・・・アム・・・・・」


なんだ、何の音だ?


急に不可解な、

子供のような高い声がどこからともなく聞こえてきた。



カーステレオの音量をさらに絞り、

少しだけ開いた窓に耳をそばだてる。



「ア・・・モ・・・ア・・・」


声が近付いて来ている。

尚も霧は深い。


急激に怖くなり、窓を閉めようとした。



「みつけた」


一瞬、身体が強張った。


なんだ、今の声?!


左の耳元で聞こえた。


外ではない。車内に何かいる。



「ア・・ア・・・ア・・・・」


子供の声色だ。

はっきりと聞こえる。

左だ。車の中だ。



「アモ・・アム・・アモ・・」


なんだ、何を言っているんだ。


前を向いたまま、前方の霧から目を逸らせない。



曲面のワイドミラーを覗けば、

間違いなく声の主は見える。


見えてしまう。


ヤバイ。見たくない。


「・・・アモ」


左耳のすぐそばで聞こえ、俺は気を失った。



「おーい、大丈夫かー」


車外から、

知らないおっさんに呼び掛けられて目を覚ました。


時計を見ると朝8時半。



とうに夜は明け、霧も嘘のように晴れていた。


どうやら、俺の車が邪魔で後続車が通れないようだった。



「大丈夫です、すぐ行きますので・・・ すみません」


そう言って、アクセルを踏み込む。


明るい車内には、もちろん何もいない。


夢でも見たのかな。


何を言っていたのかさっぱり意味が分からなかったし・・・。



ただ、根元まで燃え尽きた吸殻が

フロアに転がっているのを見ると、

夢とは思えなかった。



到着した俺を、大叔母たちは快く出迎えてくれた。


電話で聞いていた雰囲気とはうってかわってよく喋る。


大叔父の葬式が済んだばかりとは思えない元気っぷりだった。


とりあえず線香をあげ、

茶をいれていただき会話に華を咲かせる。



「道、狭かったでしょう。

 朝には着くって聞いてて全然来ないもんだから

 崖から落ちちゃったかと 思ったわ」


「いやぁ、それがですねぇ、変な体験しちゃいまして」


今朝の出来事を話してみたが、

途中から不安になってきた。


ニコニコしていた大叔母たちの表情が、

目に見えるように曇っていったからだ。



「モリモリさまだ・・・」


「まさか・・・ じいさんが死んで終わったはずじゃ・・・」


モリモリ?なんじゃそりゃ、ギャグか?



「・・・あんた、もう帰り。

 帰ったらすぐ車は 処分しなさい」


何だって?


このあいだ車高調整を入れたばっかりなのに

何を言っているんだ!


それに来たばっかりで帰れだなんて・・・。


どういうことか理由を問いただすと、

大叔母たちは青白い顔で色々と説明してくれた。



どうやら、俺はモリモリさまに目をつけられたらしい。


モリモリとは、森守りと書く。


モリモリさまはその名の通り、

その集落一帯の森の守り神で、

モリモリさまのおかげで山の恵みには事欠かず、

山肌にへばり付くこの集落にも大きな災害は

起こらずに済んでいる。



但し、その分よく祟るそうで、

目をつけられたら最後、魂を抜かれるそうだ。



魂は未来永劫モリモリさまに囚われ、

森の肥やしとして消費される。



そういったサイクルで、

不定期だが大体20〜30年に一人は、

地元の者が被害に遭うらしい。


・・・と言っても、


無差別に生贄のようなことになるわけではない。



モリモリさまは森を荒らす不浄なものを嫌うらしく、

それに対して呪いをかける。



その対象は獣であったり人であったりと様々だが、

余計なことをした者に姿を見せ、

子供のような声で呪詛の言葉をかける。



そして、姿を見た者は3年と経たずに

取り殺されてしまう。


(おそらく、アムアモと唸っていたのが呪詛の言葉だろう)


流れとしては、

山に対し不利益なものをもたらす人間に目をつけ、

呪いという名の魂の受け取り予約をする。



じわじわと魂を吸い出していき、

完全に魂を手に入れた後は、

それを燃料として森の育成に力を注ぐ。


そういう存在なのだそうだ。



今回の場合、

大叔父が2年前に目をつけられたらしい。


それも、あのマークUに乗っている時に。



モリモリさまを迷信としか思っていなかった大叔父は、

山に不法投棄している最中に姿を見たそうだ。


慌てて車を走らせ逃げたそうだが、

ここ最近は毎晩のようにモリモリさまが

夢枕に立つと言っており、

ある日に大叔母が朝起こしに行くと

心臓発作で死んでいた。



だが、大叔父だけでなく、おそらく車も対象になっていて、

それに乗って山を通った俺も祟られてしまった。



・・・というのが

大叔母たちの説明と見解である。



そんな荒唐無稽な話を信じられるはずもなかったが、

今朝の出来事を考えると、

自然と身体が震え出すのが分かった。



何より、大叔母たちの顔が真剣そのものだったのだ。



大叔母がどこかに電話をかけ、白い服を着た老婆が現れた。



聞くところ、その老婆は村一番の年長者で事情通らしいが、

その老婆も大叔母たちと同じような見解だった。



「どうにもならん。 可哀相だが諦めておくれ」


そう言い残し、さっさと帰って行った。



俺が来た時の明るい雰囲気はどこへやら、

すっかり重苦しい空気が漂っていた。



「すまない。お父さんが 連れていかれたから

 しばらくは 大丈夫やと 思ってたんやが・・・」


すまない、すまないと、

みんながしきりに謝っていた。


勝手に来たのは俺だし、

怖いからそんなに頭を下げるのはやめて欲しかった。



大叔父が車を手放したのは歳がうんぬんではなく、

単純に怖かったのであろう。



そんな車を寄越した大叔父にムカっとしたが、

もう死んでいるのでどうしようもない。



急にこんな話を捲くし立てられても

頭が混乱してほとほと困ったが、

呪詛の言葉をかけられた以上は

どうしようもないそうなので、

俺は日の明るいうちに帰ることになった。



何せ、よそ者が出会ってしまった話は

聞いたことがないそうで、

姿を見ていない今のうちに関西へ帰り、

車を捨ててしまえばモリモリさまも手が出せないのでは、

という淡い期待もあった。



どうやら、姿を見ていないというのは幸いしているらしい。


大叔母の車に先導されて市内まで出ると、

そこで別れて俺は一目散に関西へ帰った。



「二度と来ちゃいかん。

 そしてこの事は早う忘れなさい」


大叔母は真顔でそう言った。



帰った後、すぐに71マークUは処分し、

最近になって新しく100系マークUを購入した。


俺はマークUが好きなんだな、きっと。


この出来事、信じているかと言われたら、

7割ぐらいは信じていない。


家族にも話してみたし、

親父は直接あちらと電話もしたそうだが、

それでも信じていないというのか、

イマイチ理解できない様子だ。



肝心の祖母はボケてきて、どうにもこうにも・・・。


ただ気がかりなのは、村を出る道すがら、

山道で前を走る大叔母の車の上に乗っかり、

ずっと俺を見ていた子供の存在だ。



あれが多分、モリモリさまなんだろう。







2018年10月15日

田舎の村の求人【集落・田舎の怖い話】





この間就活で山間の村に行ってきたんだが
そこは基地〇村だったんだ。

まず、なぜわざわざそんな田舎に行ったかというと
条件の割に応募者が0で余裕そうだったから。

事務 高卒の条件なんだが 
給与25万 土日祝日休み 賞与6か月分 寮費光熱費無料 
かなり良い条件だと思った俺は電車に乗って面接に行った。


朝一で出発し半日後、その村についた。

電車で3時間、
そのあとバスを2時間待ってバスでさらに1時間の距離
携帯の電波が3Gすら途切れ途切れの受信だった

正直不便だなぁと思いつつ
面接の時間までまだ2時間あったので村を徘徊することにした。







歩いているだけで村人が声をかけてくるんだ。

最初は気さくな人が多いんだなぁと微笑ましかった。

しかしすぐにそれが間違いということに気が付く。

何人かの村人が後をつけてきているんだ。

振り向くと数人が白々しく立ち話や草むしりをしている。


しばらく村を歩いていると個人商店があったから、
そこにに入ってやり過ごそうとしていたら 
ババアが店に入ってきた。

店主が 来てるよ と囁いていたので怖くなって店から飛び出した。

そのあと高校生くらいの男数人が
チャリで捜索しているのを見かけ身震いした。

いたか?あっちで見たってよ! 
と大声で会話をしている。

高確率で自分を探しているんだろう。


なぜか今日自分がそこの村に行くことが
村中に知れ渡っているみたいだった。

俺は怖くなって、
少し時間は早いけど面接の場所に行くことにした。


施設についた俺は、
受付の人にあいさつを済ませ
少し早くついてしまったことを告げた。

すると、予定を早めて面接してくれることになった。

融通が利いていいなぁなどと
のんきに考えていたがこの後もひどかった。

村がおかしけりゃこの施設も相当おかしかった。

面接の内容はこんな感じ。

志望動機や同じ業種の中からどうしてうちを選んだのか?

この村のことは聞いたことがあるのか?

永住するのか?

最初はある程度まともな事を質問してきたから
用意しておいた回答を述べた。

すると、受けが良かったのか
採用を前提にした話に切り替わった。

ここからが本当にひどい。


まず、

村のジジババの介護を村人と協力してやること

両親も村に引っ越させること

財産はどれくらいあるのか?

彼女はいるのか?
いるなら別れろ(当然いませんがw)

都会の友達とは縁を切れ

村人で共有できるものは進んで差し出せ

親戚や知り合いに医者はいるか?

などなど


一番ドン引きしたのが 

○○さんって家の娘がいるからそいつと結婚しろ、
後で会せてやる子供はたくさん作れ。

みんなで面倒見るから安心しろ

っての

もう頭おかしいとしか言いようがない。


ちなみに娘さんの写真を見せられたんだが
イモトの眉毛を細くしたような女だった。

もちろんノーセンキュー

女のことは適当に保留して
とりあえず良い顔だけして面接を終えた。

帰りに襲撃されたら困るからな。

バスを待っているときに
ババアとかが話しかけてきたんだが、
もう面接の話を知っていて寒気がした。

村の話を色々してくれて根はいい人なんだろうが
その時は恐怖でしかなかった。


家に帰ったのが11時過ぎ。

疲れて昼過ぎまで寝てから辞退の電話を掛けたんだ。

やっぱりというか、断ったら発狂してね


こんないい村は他にない!

都会だからって馬鹿にしているのか!

結婚するって話の娘に失礼だ!

村に来てみんなに謝罪しろ!

安心して外を歩けると思うな!

など一方的にののしられた。

他に仕事決まったのでって断り方がまずかったのかな?




2018年10月02日

巨頭オ【地図にない村の怖い話】




数年前、ふとある村の事を思い出した。

一人で旅行した時に行った小さな旅館のある村。

心のこもったもてなしが印象的だったが、
なぜか急に行きたくなった。

連休に一人で車を走らせた。

記憶力には自信があるほうなので、道は覚えている。

村に近付くと、場所を示す看板があるはずなのだが、
その看板を見つけたときあれっと思った。

「この先○○km」となっていた(と思う)のが、
「巨頭オ」になっていた。

変な予感と行ってみたい気持ちが交錯したが、行ってみる事にした。

車で入ってみると村は廃村になっており、
建物にも草が巻きついていた。

車を降りようとすると、20mくらい先の草むらから、
頭がやたら大きい人間?が出てきた。

え?え?とか思っていると、周りにもいっぱいいる!

しかもキモい動きで追いかけてきた・・・。

両手をピッタリと足につけ、デカイ頭を左右に振りながら。

車から降りないでよかった。

恐ろしい勢いで車をバックさせ、とんでもない勢いで国道まで飛ばした。

帰って地図を見ても、数年前に言った村と、
その日行った場所は間違っていなかった。

だが、もう一度行こうとは思わない。



2018年07月19日

木の杭 「そうなった者を二度と元に戻すことは決して出来ない。」【怖い話】





俺はド田舎で兼業農家をやってるんだが、
農作業やってる時にふと気になったことがあって、
それをウチの爺さんに訊ねてみたんだ。
その時に聞いた話が個人的に怖かった。



農作業でビニールシートを固定したりすると時等に、
木の杭を使用することがあるんだが、ウチで使ってる
木の杭には、全てある一文字の漢字が彫りこんである。

今まで、特に気にしていなかったんだが、
近所の農家で使ってる杭を見てみたところそんな文字は書いてない。

ウチの杭と余所の杭を見分けるための目印かとも思ったのだが、
彫ってある漢字は、ウチの苗字と何の関係も
無い字だったので不思議に思い、ウチの爺さんにその理由を聞いてみた。


爺さんの父親(俺の曾爺さんにあたる)から聞いた話で、
自分が直接体験したことではないから、
真偽の程はわからんがとの前置きをした後、
爺さんはその理由を話してくれた。


大正時代の初め、爺さんが生まれる前、
曾爺さんが若かりし頃の話。

事の発端は、曾爺さんの村に住む若者二人(A、B)が、
薪を求めて山に入ったことから始まる。

二人は山に入り、お互いの姿が確認できる距離で薪集めに勤しんでいた。

正午に近くになり、
Aが「そろそろメシにするか」と
もう一人にと声をかけようとした時だった。

突然、Bが
「ああああアアアああアあアアァァァああぁぁぁ
アアアァァァァアあああああああああああああアアアア」
人間にかくも大きな叫び声が上げられるのかと思うほどの絶叫を上げた。

突然の出来事にAが呆然としている中、
Bは肺の中空気を出し切るまで絶叫を続け、
その後、ガクリと地面に崩れ落ちた。

Aは慌ててBに駆け寄ると、
Bは焦点の定まらない虚ろな目で虚空を見つめている。

体を揺すったり、頬を張ったりしてみても、
全く正気を取り戻す様子がない。

そこでAは慌ててBを背負うようにして山を降りた。
その後、1日経っても、Bは正気に戻らなかった。

家族のものは山の物怪にでも憑かれたのだと思い、
近所の寺に連れて行きお祓いを受けさせた。
しかし、Bが正気に戻ることはなかった。

そんな出来事があってから1週間ほど経った頃
昼下がりののどかな農村に、身の毛もよだつ絶叫が響き渡った。
「ああああアアアああアあアアァァァああぁぁぁ
アアアァァァァアあああああああああああああアアアア」

何事かと近くに居た村のものが向かってみると、
たった今まで畑仕事をしていた思しき壮年の男が
虚空を見つめ放心状態で立ち竦んでいた。

駆けつけたものが肩を強くつかんで揺さぶっても全く反応がない。
先のBの時と同じだった。

その後、
家族のものが医者に見せても、
心身喪失状態であること以外はわからず、
近所の、寺や神社に行ってお祓いを受けさせても状況は変わらなかった。

迷信深い年寄り達は山の物の怪が里に下りてきたのだと震え上がった。

しばらくすると、曾爺さんの村だけでなく近隣の村々でも、
人外のものとも思える絶叫の後に心身喪失状態に陥る者が現れ始めた。

しかもそれは、起こる時間帯もマチマチで、被害にあう人物にも
共通するものが何も無く、まさしく無差別と言った様相だった。





曾爺さんが怪異に出くわしたのはそんな時だった。
その日、曾爺さんは弟と二人して田んぼ仕事に精を出していた。

夕方になり仕事を終えて帰ろうとした時、
自分が耕していた場所に
木の杭が立てられているのが目に入った。

つい先程まではそんなものは全くなく
それは、忽然と眼前に現れたとしか言い様がなかった。

突如として現れた木の杭を不思議に思い、
まじまじと見つめていた曾爺さんだったが、

「誰だ?こんなふざけた事をしたのは。」
とわずかな怒りを覚え、
「こんな邪魔なものを他人んちの田んぼにブッ刺しやがって・・・」

そのうち
「邪魔だ。邪魔だ。ジャマダ、ジャマダ、ジャマ、
ジャマジャマジャマジャマジャマジャマジャマ」

杭を今すぐにでも引き抜きたい衝動で
頭が埋め尽くされたようになり、

その衝動に任せて、力一杯その杭を引き抜こうとしたその時、
弟に肩を掴まれ我に返ったという。

落ち着いて辺りを見渡してもると
先程の杭は何処にも見当たらなかった。

弟に問い質してみたところ、
弟はそんな木の杭は全く見ていないという。

一緒に帰ろうとしていた兄(曾爺さん)が
ふと何かに目を留めた素振りを見せ、

何も無い虚空を見つめていたかと思うと、何も無いところで、
何かを引き抜く時するような腰を屈めて力を溜める
姿勢を とったので、
何をしているのかと肩を叩いたのだと言う。


その時、曾爺さんは、
昨今村を騒がせている出来事を思い出し、

もし弟に止められることなく木の杭を抜いてしまっていれば、
自分も廃人同様になっていたに違いに無いという事に思い至り、
肝を潰したのだそうだ。


そんなことがあってからしばらくして、
曾爺さんの住む村での犠牲者が10人を越えた頃、
村長と村役達によって村人が集められた。





村長は、昨今の出来事に触れ、
それがこの村だけでなく近隣の村でも起きており、

現在、近隣の村々と協議し、
怪異への対策を進めている最中である事を村人達に伝えた。

解決するまでには今しばらく時間がかかるとのことで、
それまでの怪異に対する当面の対処として伝えられた ことは

「見慣れない木の杭を見かけても決してソレを引き抜かない。」

ということだった。
曾爺さんの予想は当たっていた。

さらに村長は、

「農作業で使用する杭には、
自分達が打ち込んだものであることが
明確にわかるように何らかの目印を彫り込むように」

と続けた。

これは自分が打ち込んだ杭の中に、
例の杭が紛れ込んでいた時に、
誤って引き抜いてしまう事への防御策だった。


一頻りの説明を聞いて、
今の事態を引き起こしているのは何者なのかを問う者がいたが。

村長は、

「人の怨霊、動物霊や物の怪といったものの類でではないこと以外は、
良くわからない。 影響範囲が広範なことから、
非常に力を持った何かだとしか言えないのだ。」

と答えるのみだった。


仮に被害に遭ってしまった場合は
なんとかなるのかと言う問いに対しては

「二度と元に戻すことは決して出来ない。
そうなった者をお祓いをしてもらいに行った時に、
とある神社の 神主に言われたのだ。
『彼には祓うべきものは何も憑いていない』と」

と村長は答えた。


神主が言うには、
あれは狐に憑かれたりしたせいで
あのような状態になっているのではなく、

今の事態を引き起こしている何かの力の一端に触れたせいで、
心が壊れてしまった結果、この状態になっているのだそうだ。

つまり、何かの影響下にあって
心身喪失状態に陥っているのではなく、

何かの影響を受けた結果が心身喪失状態であるため、
寺だろうが神社だろうが、
どうすることもできないということらしい。


最後に村長は、

「杭さえ、引き抜かなければ何も恐れることは無い。」

と締めくくり、
冷静に対処する事を村人たちに求め、解散となった。


村人達が去った後、
曾爺さんは自分がその体験をしたこともあってか、
村長のところに行って、その何かについて、
なおも食い下がって問い質すと

「幽霊や物の怪や人の祀る神様と人との間には、
曖昧ながらもお約束というべきものがある。

 相手の領域に無闇に立ち入らないことだったり、
定期的に祈りを捧げたりとな。

 彼らはそれを破ったものには祟りをなすが、
約束事を守る限りは問題は無い。

 しかし、今回の事態を引き起こしている何かに、
それは当てはまらない。

 聞いた話では その何かは、自らがが在るがままに、
ただそこに在ると言うだけで、 人を正常でいられなくし、
発狂させるほどの影響与えるのだそうだ。

 わしもそこまでしか聞かされていない。
呪ってやるだとか祟ってやるだとか
そういう意図も持たないにもかかわらず、
存在そのものが人を狂わせる。

そういうものに対しては、
人は必要以上に知らない方が いいのかも知れん。」

と言い残し、村長は去って行ったそうだ。


それから暫くして、
曾爺さんの住む村で神社の建立が始まった。

怪異による犠牲者は、近隣の村々を含めて出続けていたが、
その数は収束に向かっていき、
神社が完成した頃には全く起きなくなったという。


今にして思えば、木の杭は、
何かを封じた霊的な呪い(まじない)の類で、

それを引き抜いてしまったことで、何かの力の一部が解放され、
それに触れた人間が狂ってしまうということだったのかも知れん。

神社が立てられたことで、その何かは再び強固に封印され、
怪異が起きなくなったということなのだろうと
曾爺さんは、爺さんに話してくれたそうだ。


そんな経緯で、ウチで使う木の杭には、
ウチのものである事を示す目印を
今でも彫り込んでいるんだそうだ。

近所ではそんなのを見たことがないことを指摘してみたら、

「人ってのは喉もと過ぎるとなんとやらで、
今ではあんまりやってる家を見かけないが、
この近所だと、どこそこのSさんとことか、
Mさんとこは今でもやってるから見てくると良いぞ。」

と爺さん言われた。


見てきてみると、
確かにSさんちとMさんちで使ってる木の杭には
漢字一文字の彫りこみがあった。

「今でもやってる家ってのは、だいたいが犠牲者を出した家か、
その親族の家だろうな」

とは爺さんの談




2016年09月22日

これから伺います「何言ってるの?その電話はどこにも繋がってないよ」 【田舎にまつわる怖い話】




死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?239
725: 本当にあった怖い名無し 2010/04/09(金) 20:34:30 ID:s+FrQ3Tt0
ずっと入院していた義母が他界したので、
義弟夫婦と夫の四人で義実家の整理に行った。

隣の家まで歩いて10分と言う土田舎。

電気も水道も止めて貰ってたので、色々手続きが面倒だった。

私と義妹で家の片付け、夫と義弟がご近所さんへの挨拶回り。

昔庄屋だった義実家は、
戦前は何人も奉公人が住み込んでいただけあり部屋数も多く、
とにかく広い。

「うちでは管理しきれないわ」
「うちも無理だわ、遠いし」
「処分するしかないわね」
「でも主人達にとっては生家だし、なんて言うかしら」
「そうね〜」

等と言いながら、
とにかく家中の雨戸と窓を開けていると電話がなった。

昔ながらの黒電話だ。

出てみると聞き覚えの無い声で
「お戻りだったのですね。お待ちしておりました。これから伺います」
と言われた。

どなた様でしょう?と聞いたのですが
相手は答えず電話を切ってしまった。

夜には帰るつもりだったので、
義妹と慌てていると夫達が帰ってきた。

電話の事を話して、心当たりを尋ねると義弟が笑って言った

「義姉さん。真面目な顔で何言ってるの?
 その電話はどこにも繋がってないよ」

10年前に子機付きの新しい電話機に換えた時に、
線も引き直したんだよ、ほら、と

黒電話のコードをたぐり寄せた。

電話線は途中で切れていた。

凍り付く義妹と私の前で、その黒電話が鳴り出した。
今度は四人とも凍り付く。

「来るって言ったのか?」

と夫が言った。

義妹が泣き出し、四人で戸締まりもそこそこに車に飛び乗った。

それ以来、義実家には帰っていない。処分は業者に頼んだ。


検索
最新記事
カテゴリーアーカイブ
リンク集
タグクラウド
日別アーカイブ
写真ギャラリー
QRコード
<< 2023年10月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。