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2018年10月14日

見知らぬ女【怖い話】




大学で実際にあった洒落にならない話。

俺の通っている大学は、山のてっぺんにある。

町から相当隔離された場所にあり、
最寄のコンビニですら、
ジグザグの山道を通って車で片道10分は掛かってしまう。

そんな環境であるため、
サークル活動や研究室などの特殊な用事でもない限り、
遅くまで大学に居残る学生はほとんどいない。

しかし、10棟程度に分かれている大学校舎の中の一つに、
『音楽棟』という建物があり、
そこでは夜遅くまで学生
(大半は音楽関係の学科生かサークルの人間)が、
ヴァイオリンやピアノ等の楽器を練習している。


音楽棟には、
50以上の個室の全てにピアノが一台ずつ入っているのだが、
学生はそれぞれ自分なりにお気に入りの個室があるようで、

例えば練習室の24番には○○専攻のA子がいるから、
23番の練習室をお気に入りに使っているアホな輩もいる、
といった具合だ。


その日の夜、俺は音楽棟で楽器の練習をしていた。

時刻は9時半頃だった。

終バスが10時なので、
そのくらいの時間になると学生の数はかなり減っている。

山中であるため、終バスに乗り遅れると下山は困難を極めるのだ。

俺もそろそろ帰るかと思ったその時。

やや離れた場所から

「ドカッ!!」と、

何かがぶつかるような音がした。

誰かが楽器でも落としたのだろうかと思ったが、
あまり気にせず個室を出ようとすると、

またもや

「ドカンッ!!」

という音がした。


さてはアレだなと思った。

音楽棟はだいぶ老朽化しているため、
壊れているドアがいくつかある。

ある程度ちゃんとした校舎をもつ学校に通う学生には、
信じ難いかもしれないが、この大学では運が悪いと、
自力で個室の中から出られなくなることもしばしば起こるのだ。

部屋の中からドアを開けようとしている音に違いない・・・。

前にも閉じ込められた友人を救出した経験があったからこそ、
確信があった。

すぐさま音のした個室の方へ行って、
個室にある窓から中を覗いてみると、
案の定、ドアを何とか開けようとしている、
学生らしき姿があった。

「今開けますよ」

と一声掛けてから、ドアノブをやや強引に捻って開けた。

「ありがとうございます、
 出ようとしたらドアが開かなくなっちゃって・・・」


初めて見る顔だった。

音楽棟に夜遅くまで残って練習している人間は、
大体把握できているつもりだったが、
目の前にいるのは全く知らない女の子だった。

他大生だろうか・・・?

原則として学外の人間は、
個室を使っていけない事になっているが、
まぁいいかと思い、

「練習お疲れ様です」

と言った。

その時。本当に、本当に一瞬の事だった。

その女の子の表情が歪み、恐ろしい顔つきになったのだ。

そして、嘘だったように一瞬で元の表情に戻った。

「ここ、私のお気に入りの部屋なんです」

「え、そうなんですか」

俺は喋りながら、変な違和感と緊張を感じていた。

何かこの女、おかしい。今の顔は何だったんだ?
いや、それ以前にもっとおかしな事がある。

「ずっと使っていたんですけど、
いきなり開かなくなったからびっくりして・・・」

んな事聞いてない。お気に入り?誰の・・・?

「ほんとうにありがとうございました」

そう言ってその女は、スタスタと歩いていってしまった。


俺は結局、何も聞けなかった。

この個室の番号は31。

俺のよく知る先輩がいつも練習している部屋だった。

いつも夜遅くまで練習している、努力家で熱心な先輩。

その先輩がいなくて、知らない女がいた。


俺はどうしても気になって、
すぐに携帯電話で先輩に聞いてみることにした。

意外にもすぐに繋がった。

どうやら、今までずっと学外で過ごしていたとの事だった。

授業は1コマから入っていたそうだが、
どうも気が進まなくて・・・と曖昧な返事だった。

そこで練習室の女のことを言ってみた。

先輩はしばらく絶句していたが、重い口調で話してくれた。

「誰にも言うなよ・・・昨日、脅迫を受けたんだ」

話によると、昨日の夜、
アパートで一人暮らしの先輩が家に帰宅すると、
郵便受けに大量の紙が詰まっていた。

何十枚もの紙の全てに、

『学校に来るな』

と一言、印刷されていた。

気味が悪くなって学校には行かず、
一日中、町に下りて過ごしていたそうだ。

警察に届けようと思ったが、思いとどまっていたらしい。

「その女って、誰なんですか?心当たりなどは・・・?」

「いや、あるわけない。
 ないけど、お前の話を聞いて余計に怖くなった。
 とりあえず、何とかしようと思う」

その会話を最後に、俺は今に至るまで先輩と会っていない。

アパートは空っぽ、
実家への連絡すら1年以上もない状態らしい。

完全に失踪してしまった。

勿論、あの女ともあれ以来、会っていない。







posted by kowaihanashi6515 at 00:24 | TrackBack(0) | 人怖

2018年10月10日

福島の保育所「だってうぢのばーちゃが!食べろって言っでだ〜」【怖い話】





福島から5月頃、関東に避難してきた。

それまでの地元は、

避難制定地域よりもわずか数キロ離れているってだけ。


数キロ先は『もと人里』で誰もいない。


でも自分達の場所は衣食住していいよ、の地域。


目に見えない恐ろしいものと戦い続けるくらいなら、

と転居を決意。



転居に伴い、子どもは4月末まで保育所に預けていたんだけれど、

その保育所の登所最終日に起こったことを今から書こうと思う。


その最後の日も、変わらず朝から預けにいった。


「寂しくなります、お世話になりました」


と先生方へ挨拶し、園児達へのささやかなものを渡し、

いつものように子どものクラスでおむつなどを準備していた。


そこへおじいちゃん(見た目判断だが)と一緒にAくんが登所してきた。

4才クラスに4月から入所した子で、何度か


「おはよー」


と声かけしたことがある。


その時もいつものように


「Aくんおはよう」


と声をかけた。


するとAくんは私のところにまっすぐ歩いてきて、

両手でおにぎりのようにしている手を差し出してくる。


なんだろう、泥だんご?折り紙のなにか?

など色々考えていると、

Aくんは無表情のまま、三角にしているおにぎり型の手、

指と指の間からその中身を見せてきた。


知っているだろうか、カマドウマという虫を。

うさぎ虫とか、ぴょんぴょん虫とか、そんな呼び名もある。



鳴きもせず、音も出さず、

個人的に生命力の強い虫だと思っている。


ティッシュ箱で思い切り


「べし!!」

と上から潰し、

死骸が気持ち悪いので旦那にとってもらおうと呼んできて、

ティッシュをそっとどけると既にいない。



え!?どこ行った!?と見回すと、

天井に張りついていたり。


前に飛ぶかと思いきや、真横ジャンプもしてくるというキモさ。


私はこの、はちきれんばかりの腹をした

グロテスクで跳躍力の高いカマドウマが大嫌いだった。


Aくんの手の中には、

カマドウマの中でも特大クラスに入るようなものが入っていた。



多分私の顔が物凄いことになっていたんだろうと思う、

先生が


「どうしました?」


と駆け寄ってきた。 まさに、その時。


はがしょっ


というような音がしたと思う。




言葉に書くとうまく伝わらないけれど。


Aくんは物凄い速さで、私の目の前でカマドウマを食べた。


「ぎゃあああああああ!!!!」


と先生の声。


Aくんの口から4本くらいはみ出ているカマドウマの足。


私、頭真っ白。


でも次の瞬間、私はAくんの口に左手を突っ込んでいた。



焦点はAくんに定まっておらず、

ずっと床のシミみたいなものを見つめていた記憶がある。


だけど、どこかで冷静な思考の自分がいて


『なんとかしなくては』


とも思っていた。



直視しないように視界のはじっこに見えるAくんを捉えながら、


右手でAくんの頭を押さえ、

左手の指でAくんの口の中身をかき出していた。



そのうちAくんが


「うえっ、ぐぇっ」


と言ったと思うと、大量に嘔吐。



私の左手から肘にかけて、ゲロまみれ。


「おめぇAさ何してんだ!!」


と、Aくんのおじいちゃんが私を引き離し、突き飛ばされた。


そこでようやく先生方数人が間に入ってくれた。


はーっ、はーっ、と半ば放心しながら必死に呼吸して、

手を洗いに行ったのだが、


「だってうぢのばーちゃが!食べろって言っでだ〜うあ〜」


と泣いているAくんの声が聞こえた。


その後は当時の状況など話すべきことを話し、

先生達にお礼?を言われ保育所をあとにした。



足が地に着かず、

脳内ヒューズ飛んだみたいなまま車に乗って・・色々考えた。


こんなことがあってもその場の処置は3分とかからず、

次見た瞬間には、主任先生の呼びかけで

みんなが楽しそうに歌を歌っていたので、


さすが長年の保育士はすごいなあとか、

おじいちゃんに突き飛ばされてひっくり返った私の

格好ダサッとか。


でも、それでも忘れられない。


Aくんが無表情でカマドウマを食べた、

あの瞬間の音。はみ出た足。


その一件を含む最近の園児について、

所長先生からお話されたことも。


「震災から1ヶ月・・・Aくんだけじゃない、


たくさんの子が不安定になっている。



切り刻んだ人形を持ってきた子もいた。


友達の首を絞めて「苦しい?」と聞いている子も。


 子ども達もギリギリのところなんだと思う」


そのお話が頭から離れず、

自分の子達の顔を思い出しては切なくなるばかりだった。



一変した環境、生活、ピリピリした街の雰囲気、

屋内遊びしか出来ないもどかしさ。



コントロールできる範囲では笑えている子ども達でも、

その奥には深い傷を負っている。


そんなストレスをどうにかできる術や思考を、

子ども達は持っていない。



だからAくんのようにいきなり虫を食べてしまったり・・・ん?


と、ここでようやく所長先生の最後のお話が気にかかった。



お話のあと、



「余計なお世話かとは思うんですが」



と私が切り出した話。



私「Aくんのおばあちゃんには、


ちょっとお話したほうがいいかと思いますが・・・」



先生「うん、Aくんちね、おばあちゃんは居ないんですよ」


なんだろね、と苦笑いされていた。




posted by kowaihanashi6515 at 00:50 | TrackBack(0) | 人怖

2018年10月07日

30年近くも部屋に閉じこもっていた弟【怖い話】



10年程前のことです。

富山県のとある介護タクシー事務所へ所属しており、
今は都内で別の仕事をしている知人Aの話です。

当時勤めていた介護タクシーの事務所では、
家族からの依頼により、
精神障害などで手に負えなくなった方を
自宅から数人がかりで連れ出して、
力ずくで病院へ運送する仕事をしていました。

メインとなる大部分の仕事は、
通常の介護患者の運送をしているので
普段はそんな事まではやらないのですが、
身内を世間に大っぴらにしたくないという

地域性のためか、
そのような強制的な運送の依頼が
ぽつぽつと来ていたそうです。

そんなある日、
市内で何店舗も手広く経営しているような有力者から、

「私の弟を連れ出して欲しい」

との依頼があり、
早速、指定された家に向かいました。

依頼者からの説明によれば、
弟さんはイジメか何かで高校を中退して以降、
30年近くも仕事へ就いておらず、

40代後半の今に至るまで、
ずっと部屋に閉じこもっているそうです。

両親はもう30年以上前に離婚しており、
依頼者も奨学制度で大学に入って以降は独立。

弟さんは70歳前後の母親と二人で暮らしており、
母親は年齢を誤魔化しながらパートなどをして
生計を立てていたそうです。

依頼者は独立して家を出て以降も、時々実家に出向いては、
弟さんを働くよう諭すことに挑戦してきましたが、
会うことすら難しく、母親は母親で、

「本人が辛いと思っているなら無理をさせない方がいい」

と、逆に依頼者へ言う始末。

埒が明かないまま今に至っておりました。

年老いた母親一人だけでは、
二人の生活を養っていくのには
難しいのが目に見えているため、

依頼者は数ヶ月に一度の仕送りをして、
生活の足しにしてもらっていました。

しかし・・・

半年ほど前から母親がパートを
休みがちになっていると耳にしました。

心配になって実家に行くと、
家へ入れてすらもらえず、
何度行っても門前払いばかり。

やむなく最終手段として、
介護タクシー事務所へ依頼してきたそうです。

連絡を受けた知人Aは、
同僚二人と依頼者の計4人で実家へ向かいました。

説明にあった通り、

「おーい!開けろよ!」

「何かあったのか?心配してるんだぞ!」

と、玄関で依頼者が声を張り上げてドアをバンバン叩いても、
ほとんど聞き取れない位のか細い声で、

「入って来ないで・・・

 うちらは心配しなくても大丈夫だから・・・」

と、母親らしき年老いた女性が玄関越しに返答するばかり。

それが最後通告だったようで、

「こりゃ、もうダメだ。

 裏から入って力ずくで連れ出して欲しい」

と、依頼者は知人Aらへ決心を伝えてきました。

依頼者の案内で庭に回り、
腐りかけて弱くなった雨戸を外して中に踏み込みました。

入ってみると、一階はしばらく掃除していなかったようで、
あちこちにゴミが散乱し、異臭すら放っていました。

台所には汚い食器がそのままシンクの流しに放置されており、
ハエが何匹も飛んでいました。

一階の各部屋を回りましたが、
さっきまで呼び掛けに返答していた母親の姿も見えず。

どうやら二階へ行ったのだろうということで、
4人は階段から二階へ上りました。

依頼者によれば、

「二階の手前は倉庫代わりに使っているので、
 恐らくそこには居ない。
 弟が昔から閉じこもっているのは奥の部屋」

ということだったので、
奥の部屋の襖に手を掛けました。

中から何か引っ掛けられているようで、
なかなか開きませんでした。

やむを得ないので依頼者の承諾の元、
襖を持ち上げて外してみました。

その時・・・

中からカビ臭いような生臭いような異臭が漂ってきて、
知人Aは吐き気すらしたそうです。

部屋の中には布団が敷かれており、
母親と一緒に40代の弟が、
まるで子供のように添い寝をしていました。

無理矢理に二人を引き離した時、
弟は子供のように泣きじゃくって抵抗し、
取り押さえるのに難儀したそうです。

母親が、「やめて!乱暴はやめて!!」

と泣きながら必死で止めようとしてきましたが、
それを依頼者が制止しました。

知人Aは弟を介護タクシーへ乗せるのを同僚達に任せ、
取り乱す母親と依頼者のやり取りを見つつ、
部屋の中を見回しました。

まるで昭和50年代あたりから
時が止まっているような部屋で、
子供の読むような漫画やプラモデルなどが大量に置かれ、
テレビも無く、ましてゲーム機や電話も無く、
現代を象徴するような物や、外界との接点を持つ物が、
何一つない異質な部屋でした。

それより異様だったのは、
シミだらけで黄色を通り越して
黒ずみでペラペラになった布団と、
半裸になっている母親の姿。

依頼者には黙っていましたが、複数の状況を見るに、
長年に渡って母親と弟は近親相姦をしていたのでは・・・
と感じたそうです。

30年近くも部屋に閉じこもっていた弟と、
無責任に溺愛していた母親。

地方の片隅にはまだこのような異空間がひっそりとあったのです。
posted by kowaihanashi6515 at 19:29 | TrackBack(0) | 人怖

2018年10月06日

戸締りはしっかりして下さい【怖い話】




これは俺がまだ、学生だった頃だから
もう、5年も前の話になる。古い話で悪いんだが・・・


当時、俺は八王子にある学校の
近くのアパートで独り暮らしをしていた。
その日は、俺の部屋で友人と酒を飲んでいた。


いつもならクダラナイ話で何時間も盛り上がって
いたのだが、その時は少し酒を飲み過ぎた為、
俺も友人も11時過ぎには寝入ってしまっていた。


何時間位経ったのだろ う?

突然、玄関で呼び鈴の音が聞こえた。
時計を見ると0時30分 をまわっていたが、
俺は寝ぼけていたこともあり、

飛び上がる ように起きると、
すぐに玄関の扉を開けてしまった・・・。


すると、そこには25〜6歳位の
グレーのトレーナーを着た男が立っていた。

「なんですか?」

俺は訝しげに男に尋ねた。


「○○さんですね?(俺の苗字)」

男が尋ね返す。


「えぇ、そうですが?」

なおも怪訝そうに答える俺にその男は、
ユックリと落ち着いた口調で話はじめた。

「僕はこの地域の町内会長をしているものです。
 実は、今しがたこの地区で殺人事件が起きました。
 犯人は逃走中でまだ捕まっていません。

 危ないですから 戸締りをキチンとして、
 今日は出歩くのを控えて下さい。 」

俺は、寝ぼけたままで

「はぁ、解りました・・・。」

と言うと玄関を閉めた。


そして、酒の酔いもまだ残っていたのでまた眠ってしまった 。


翌朝、新聞でもニュースでも確認したが
近所で殺人事件など起きた話は載っていなかった。


友達は、「あんなに若い町内会長なんているかよ。」

と不審げに言っていたが、そう言われてみれば、
夜中に警察でもない男が、
近所にその様な注意をして廻る事、
自体 が妙な話だった。

「なんだったんだよ、あいつは?」

その時は少し気味が悪かったが、
しばらくして、そのこと事態を忘れ てしまっていた。


ところが・・・

その2ケ月後に俺は、
その時の男を再度、目撃することになった。

ヤハリ、夜中の0時30分を過ぎたころだった

呼び鈴がなったのだ。

しかし、それは俺の部屋ではない隣りの部屋だった。
1回、そして、2回、どうやら隣は留守 らしい。

だが、呼び鈴は再度、立て続けに鳴った。

「うるせぇなぁ。」

こんな夜中にそれだけならして出てこなければ留守だろ!


俺は少し不機嫌になって、玄関の扉を半分開けた

そこには、先日の男がヤハリ、
グレーのトレーナーを着てたっていた。


俺の扉を開けた音に気が付くいて男が振り向き、
俺と眼があった。


俺は、少し気味が悪かったが、
それ以上に腹も立っていたの で

「隣、留守なんじゃないですか?なんすか?」

と不機嫌に言 った。 


「あぁ、○○さん。

いえこの間の犯人なんですが、
まだ、捕まって居ないんですよ。

だから、捕まるまでは近所の皆さんに、
夜中は出歩かないように注意して廻って るんです。」

俺はムッとして

「この間の朝、新聞もニュースも確認したけど
 そんな事件起こってないじゃないっすか!あんた誰だよ? 」

俺は語尾を荒げながら、その男に言ったのだが、
男はひるぐ 様子もなく

「いえ、そんなことはありません。

 それに、犯人はまだ捕まっていないのです。

 とても危険です。いいですか、
夜中は出歩いてはいけませ んよ。」

と逆に強く諭すように俺に言った。


男の眼が据わっていたこともあり
俺は少し背筋も寒くなり、

「そうっすか。」

と愛想なく言って、
玄関の扉をオモイッキリ閉めて鍵をカケ タ。

腹立たしい思いと、気持ち悪い気分が入り混じった

なんとも奇妙な心持でその夜、俺は寝床についた。


そして、翌日に俺は背筋が凍る思いをしたのだ・・・

その日の朝のワイドショーでは
独身OLの殺人事件が取り上げられていた。
場所は、俺の住むすぐ傍のマンションだった。

寝込んでいたOLの家に空き巣に入った犯人が
物音に気づいたOLを殺してしまったのだと言う。

走り去る犯人の姿を
目撃者した人が語った犯人の特徴は

20代後半の若い男で
グレーのトレーナーを着ていたと・・・・・・

前の晩に俺の見た男の特徴。
そして話の内容に妙に重なって いたのだ。

俺が背筋が凍る思いをしたのは、
その夜になってからだった。


ヤハリ、夜中の0時過ぎに玄関のベルが鳴ったのだ。

俺は、怖くて扉を開ける気にはなれなかった。
が、ベルは、1回、2回、3回となっている 。

扉を開けずに俺が、玄関先で

「誰ですか?」

とたずねると
先日の男の声がした。


「○○さんですか? ホラ、言ったでしょ。
 犯人はまだ逃走中ですよ。戸締りはシッカリして下さいね 。」

その声で、俺は

「ハッとした。窓、鍵を閉めてない・・・。」

急いで、部屋の窓の
鍵を閉めようとカーテンを開けると
玄関に居た筈の男が、窓の前に立っていたんだ。

グレーのトレーナーを着て・・・。

息を呑むという表現が、どんなものなのか、
俺はその時はじ めてしった・・・。

鍵を閉めようと、腕を伸ばした瞬間、男が窓を開けた。

「だめじゃないですか、窓の鍵もしっかり閉めてください。
でないと、僕みたいのが、入って来てしまいますよ。」

そう言って、男は不気味な笑みを浮かべた。

次の瞬間には、俺は悲鳴をあげて、玄関へとダッシュした。

玄関のカギを開け、アパートの廊下に飛び出し、
ドアも閉め ずに一心不乱に走ったんだ。

だけど、背後から、男の声が聞こえて来たんだ。

「○○さん、玄関を開けっ放しにするなんて、とても不用心 ですよ。
それに夜中に出歩くのはとても危険です。
今すぐに引き返してください。」

俺は半泣きの状態だったが逃げ続けた。


だが、男は俺の背後をぴったりとマークして、
全くふりきる 事ができなかった。

それどころか、だんだん男との距離が、縮まりつつあった。

男は相変わらず、

「危険です。」や、「早く戻ってください 」などを、

大声で言い続けていた。


マジでもうだめかと思いはじめた時、
希望の光が俺を照らしたよ。

そう、交番を見つけたんだ。

俺は最後の力を振り絞って、交番に飛び込んだ。

中には、驚いた表情の中年警察官がいて、
それを見て安心した俺は、その場に倒れ、
そのまま気を失った・・・。

目を覚ますと、
メガネをかけた若い警察官が俺を覗きこんで いたよ。

俺が目を覚ました事に気がついた若い警察官は、
さっきの中年警察官を連れて来た。

俺の体調が大丈夫だと分かると、
なぜ急に飛び込んで来て、急に気絶したのかと、
聞いて来たから、俺は事の経緯を話すと、
一緒にアパートに来てくれる事になったんだ。

それから、俺は警察官と言う、
たのもしい護衛を二人連れて アパートに戻った。

警察官達のおかげで、恐怖心はあまり無かったんだと思う。


ようやく、アパートに到着し、
二階の自分の部屋に向かった 。

部屋に向かう時の並びは…

先頭は、若警官 次に俺 最後に中警官だ。
(これが一番、 安全だと思ったんだ。)

部屋の玄関のドアも、若警官に開けてもらった。
(来た時は 、ドアは閉まっていたから。)

若警官が中を覗いたが、部屋には誰もいなかった。

中警官「どこか様子がおかしいところはあるかね?」

部屋を見回したが、いつも通りの俺の部屋で、
特におかしい ところはなかった。

窓も確認したが、カーテンは閉められ、鍵も閉まっていた・ ・・。

中警官「まあ、もうここは大丈夫だと思うから、心配するな 。
後はこいつに任せる事にして、
悪いが俺は先に帰らせてもら うわ。

何かあると困るから、いつでも来てかまわないからな。
それじゃあ、気いつけてな。」

そう言ったかと思うと、
中警官は、若警官を置いて、さっさ と帰ってしまったよ。


それから、若警官と少し業務的な話をしてから、
若警官も帰 る事になったんだ。

若警官「それでは、私もそろそろ帰らせていただきますね。

何かありましたら、先ほどお渡しした名紙の番号まで、
ご連 絡下さい。」

わかりましたと言い、若警官を送り出そうとした時、
急に若 警官の笑顔が無表情に変わった・・・。

若警官「殺人犯はまだ捕まっていませんので、
くれぐれも夜 道を歩く際は気をつけて下さい。

それと、戸締りもしっかりして下さいね・・・。

鍵が無かったので、やむなく
ドアを閉めただけだったんです から・・・。

それでは、お気をつけて、○○さん・・・。」

そして、若警官は今までの笑顔では無く、
気味の悪い笑顔を 見せ、帰って行った・・・。

俺はそれから部屋の全ての鍵を閉め、
玄関にはチェーンをし 、テレビと電気をつけっぱにして、
布団をかぶって、朝までガ クブルしていた。

その後・・・。

夜にグレーのトレーナーを着た男はもう来なくなったが、
俺 は二週間後ににはこのアパートを引っ越した。

学校も転校した。

そうして、今になるが、
グレーのトレーナーを着た男が捕まったと言う話は聞かない・・・。
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2018年10月02日

老婆【怖い話】




あれは僕が小学5年生のころ。

当時、悪がきで悪戯ばかりだった僕と、
友人のKは、しょっちゅう怒られてばかりでした。

夏休みのある日、
こっぴどく叱られたKは、僕に家出を持ちかけてきました。

そんな楽しそうなこと、 僕に異論があるはずもありません。


僕たちは、遠足用の大きなリュックに
お菓子やジュース、マンガ本など
ガキの考えうる大切なものを詰め込み、
夕食が終わってから、近所の公園で落ち合いました。


確か、午後8時ごろだったと思います。
とはいっても、そこは浅はかなガキんちょ。

行く当てもあろうはずがありません。


「どうする?」

話し合いの結果、畑の中の小屋に決まりました。

僕の住んでいるとこは、長野の片田舎なので、
集落から出ると、周りは田畑、野原が広がっています。

畑の中には、農作業の器具や、
藁束などが置かれた小屋が点在していました。

その中の、人の来なさそうなぼろ小屋に潜り込みました。

中には、使わなくなったような手押しの耕運機?があり、
後は、ベッドに良さそうな藁の山があるだけでした。

僕たちは、持ってきた電池式のランタンをつけ、
お菓子を食べたり、ジュースを飲んだり、
お互いの持ってきたマンガを読んだりと、 自由を満喫していました。

どのくらい時間がたったでしょうか。

外で物音がしました。

僕とKは飛び上がり、 慌ててランタンの明かりを消しました。

探しに来た親か、小屋の持ち主かと思ったのです。

二人で藁の中にもぐりこむと、 息を潜めていました。

「ザリザリ・・・・ザリザリ・・・」

何か、妙な音がしました。 砂利の上を、何かを引きずるような音です。

「ザリザリ・・・ザリザリ・・・」

音は、小屋の周りをまわっているようでした。

「・・・なんだろ?」

「・・・様子、見てみるか?」

僕とKは、そおっと藁から出ると、
ガラス窓の近くに寄ってみました。

「・・・・・!!」

そこには、一人の老婆がいました。

腰が曲がって、骨と皮だけのように痩せています。
髪の毛は、白髪の長い髪をぼさぼさに伸ばしていました。

「・・・なんだよ、あれ!・・・」

Kが小声で僕に聞きましたが、僕だってわかりません。

老婆は何か袋のようなものを引きずっていました。

大きな麻袋のような感じで、口がしばってあり、
長い紐の先を老婆が持っていました。

さっきからの音は、これを引きずる音のようでした。

「・・・やばいよ、あれ。山姥ってやつじゃねえの?」

僕らは恐ろしくなり、ゆっくり窓から離れようとしました。

ガシャーーーン!!

その時、Kの馬鹿が立てかけてあった鍬だか鋤を倒しました。
僕は慌てて窓から外を覗くと、
老婆がすごい勢いで こちらに向かって来ます!

僕はKを引っ張って藁の山に飛び込みました。

バタン!!

僕らが藁に飛び込むのと、 老婆が入り口のドアを開けるのと、
ほとんど同時でした。

僕らは、口に手を当てて、 悲鳴を上げるのをこらえました。

「だあれえぞ・・・いるのかええ・・・」

老婆はしゃがれた声でいいました。 妙に光る目を細くし、
小屋の中を見回しています。

「・・・何もせんからあ、出ておいでえ・・・」

僕は、藁の隙間から、老婆の行動を凝視していました。

僕は、老婆の引きずる麻袋に目を止めました。

何か、もぞもぞ動いています。と、

中からズボっと何かが飛び出ました。

(・・・・・!)

僕は目を疑いました。

それは、どうみても人間の手でした。 それも、子どものようです。

「おとなしくはいっとれ!」

老婆はそれに気付くと、 足で袋を蹴り上げ、
手を掴んで袋の中に突っ込みました。

それを見た僕たちは、もう生きた心地がしませんでした。

「ここかあ・・・」

老婆は立てかけてあった、フォークの大きいような農具を手に、
僕たちの隠れている藁山に寄ってきました。

そして、それをザクッザクッ!と山に突き立て始めたのです。

僕らは、半泣きになりながら、 フォークから身を避けていました。

大きな藁の山でなければ、今ごろ串刺しです。

藁が崩れる動きに合わせ、
僕とKは一番奥の壁際まで潜っていきました。

さすがにここまではフォークは届きません。

どのくらい、耐えたでしょうか・・・。

「ん〜、気のせいかあ・・・」

老婆は、フォークを投げ捨てると、 また麻袋を担ぎ、
小屋から出て行きました。

「ザリザリ・・・・ザリザリ・・・・」

音が遠ざかっていきました。

僕とKは、音がしなくなってからも、
しばらく藁の中で動けませんでした。

「・・・行った・・・かな?」

Kが、ようやく話し掛けてきました。

「多分・・・」

しかし、まだ藁から出る気にはなれずに、
そこでボーっとしていました。

ふと気が付くと、背中の壁から空気が入ってきます。

(だから息苦しくなかったのか・・・)

僕は壁に5センチほどの穴が開いてるのを発見しました。
外の様子を伺おうと、顔を近づけた瞬間。

「うまそうな・・・子だああ・・・・!!」

老婆の声とともに、 しわくちゃの手が突っ込まれました!!

僕は顔をがっしりと掴まれ、穴の方に引っ張られました。

「うわああ!!!」

あまりの血生臭さと恐怖に、 僕は気を失ってしまいました。

気が付くと、そこは近所の消防団の詰め所でした。

僕とKは、例の小屋で気を失っているのを
親からの要請で出動した地元の消防団によって
発見されたそうです。

こっぴどく怒られながらも、
僕とKは安心して泣いてしまいました。

昨晩の出来事を両方の親に話すと、
夢だといってまた叱られましたが、
そんなわけがありません。

だって、僕の顔にはいまだに、
老婆の指の跡が痣のようにくっきり残っているのですから。








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2018年03月12日

変わり果てた姉【怖い話】






友人らと宅飲みをしていた時の話

オカルト好きな伊藤(仮名)が「怪談大会をしようぜ」と言って、
それぞれが知っている話をしていた時に伊藤から聞いた話だ。


伊藤は話をする前置きとして、

「これは俺の知り合いから聞いた作り話なんだが……」

と言って話し始めた。


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とある県のさらに田舎の集落に住んでいた男の子の話だ。


その子には祖父、父、母、姉の四人の家族がおり、
それ以外に家には女中が三人と、寝泊まりしているわけでは無いが
隣に住んでいる分家の男二人、つまり親戚がいつも祖父についていたそうだ。


ここまで聞くとわかると思うが、男の子の家はその辺りでは
知らない人がいない名家だった。


名家にはよくある事なのかもしれないが、
その家では家長である祖父が絶対だった。


母はよそから嫁いできた人間だからかそれ程ではないが、
父や分家の人間は誰も祖父に口答えせず、話す時も敬語だった。


そんな家で育った男の子が十五歳になった時、
いつもは学校が終わってすぐ帰るはずの姉が、
夕飯の時間になっても帰って来なかった。


その家では夕飯の時間は決まっており祖父が席につく前には
皆が先に席について待っていなくてはならなかった。


しかし姉は一向に帰って来ず、
横にいた母は心配なのかとてもオロオロとしていた。


そしてついには、分家の男を連れた祖父が来てしまった。


空席を見た祖父は入り口で立ち止まり、
父に向かってどういう事だと冷たい声で言った。


父は緊張した面持ちで、姉が帰って来ていない事、連絡もつかない事を告げた。


すると祖父はしばらく考え込んだのちに分家の男達に何事か伝えると

「お前達はここで待て」と言って出て行った。


待てと言われた残りの家族は言われた通り待っていた。

母は相変わらずオロオロとしており、父に何か話していた。


二時間程経っただろうか、

玄関の方から父の名を呼ぶ分家の男の声がした。


その声が怒鳴り声に近かった事もあり、何事かと家族全員で玄関に向かった。


そこには祖父と分家の男二人と分家の人間が数名、そして変わり果てた姉が居た。


姉は顔面を酷く殴られたように変色しており、服は破かれ、表情は虚ろだった。


母はそれを見て卒倒し、父は驚いた顔をし、
卒倒した母を支えながら姉の名前を呼んだ。


男の子はほぼ裸に近い姉がどういう目にあったのか察していたが、
信じられずに唖然としていた。


祖父は女中に姉を預け、何事かつげると父を呼び、
分家の男達を連れて奥の間へ消えて行った。


男の子は倒れた母に付き添いしばらく茫然としていたが、
女中に促され自室へと戻った。







その後、

女中が食事を持って来たが食べる気にはならず、
眠る事もできず、朝が来るまで考え事をしていた。


姉と男の子は一つの部屋だったが、その日に姉は戻って来なかった。


朝になり、男の子は母の部屋へ向かった。

部屋へ入ると母は姉を寝かせており、声を殺して泣いていた。


部屋に来た男の子に気づいた母は男の子を抱きしめ、姉が辛い目に遭い、
おかしくなってしまったと言った。


その声に気づいたのか姉が起きて男の子と母を見た。


その目は虚ろで、普段しっかりしていた姉とは思えないもので、
男の子が姉を呼んだ

が返答もせず、ブツブツと何か言って再び横になった。


母はそれを見て泣き崩れてしまい、
男の子はそこにいるのが苦痛になり部屋へ戻った。

しばらくして父が来た。

そして、
姉の事は誰にも言うなと告げると出て行った。


その後も姉はよくならなかった。


家族の呼び掛けにも返答せず、ただ虚ろで時折何か言っていた。


そんな状態で一週間近くが経とうとしていた。


男の子が夜に奥の間のそばを通ると、母の怒ったような声が聞こえた。

何事かと思ったが、奥の間には普段より祖父と父、
分家の男二人以外は入るなと言われていたので、
男の子は入れずに、その場で聞き耳を立てていた。


しかし、奥の間へは渡り廊下のようなものを挟んでおり、
母の怒鳴り声が微かに聞こえるのみだった。








次の日の夜中、布団に横になっていると父が来た。

父は姉を呼んだが姉は返答せず、
父は姉の体を起こしどこかへ連れて行った。


朝になり、戻って来なかった

姉を気にしていると父から呼ばれた。

ついて行くと祖父が待っていた。

男の子が席につくと祖父が話を始めた。



そこで聞かされた話は、
男の子にとってあまりにもショックだった。

母が姉を連れて出て行った。
二人の事は忘れろというのだ。


男の子はあまりのショックにその後の事はよく覚えていないが、
あんなに優しかった母が姉だけを連れ、自分を置いて出て行った事を知り、
裏切られた気分になった。


後で女中から内緒で預かったという母の連絡先を渡されたが、
裏切られたと思っていたので連絡しなかった。


それから男の子はグレた。


今まで祖父や父からやるなと言われた事をあえてやった。

父からは殴られたが一向にきかず、完全にやけになっていた。


それから一ヶ月程経ち、部屋から外を見ていると、
庭先で袋を持った分家の男が蔵に入って行くのが目に入った。


蔵は子供の頃から近づいてはだめだと言われていた。

グレていた男の子は、蔵を荒らしてやろうと考えた。

蔵には鍵がかかっているが、
幸い男の子は鍵が仏間にある事を知っていた。


夜になり、仏間から栓抜きのような鍵を持ち出すと、
家の者に気づかれないよう蔵へ向かった。


蔵の鍵を開け、中へ入ると埃っぽかった。


暗かったが、タバコに手を出していた男の子は

ライターを取り出し周りを確認した。



中には農具と思われるものや、謎の道具が沢山あった。

奥へ行くと、床にそこだけ埃が少なく、よく見ると取っ手がついた扉があった。

男の子はなにも考えずに開けたが、そこには下に続く階段があった。

男の子は降りてみる事にした。


降りるとそこは想像以上に広く、上とは違い物がほとんど無く、
ランプのようなものが壁についており明るかった。

前へ進むと途中から道が狭くなっていた。

その狭くなった道に差し掛かった所で男の子は固まった。

そこには座敷牢があり、中には人がいた。
それはまさしく姉だった。

男の子は姉を見て驚いた。


姉の名を呼んだが、姉はこちらを見て怯えている様子だった。

男の子がしばらく姉に呼び掛けていると、

ドアアアアアアアアア!!

ヒャアアアアアアアアア!!

といった叫び声がすぐそばで聞こえた。

男の子は腰が抜けそうになりへたり込んだ。


声の主はすぐにわかった。
隣にも座敷牢があり、そこに髪がぼうぼうで毛だらけの男がいた。


毛だらけ男は男の子のほうをじっと見ており、ウオオオオオと騒いでいた。


怖くなった男の子は蔵を飛び出し家へ向かったが、
家の者にバレるのも恐れていたため、鍵の事を思い出し、
戻って鍵を閉め、仏間に鍵を戻し、自分の部屋へ戻った。


蔵の地下にあんな場所があった事、姉がいた事、毛だらけの男の事、
分家の男は二人の世話をしに行っていたのか等を考えていたが、
答えは出なかった。


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ふと母親の連絡先の事を思い出した。


母なら何か知っているだろうかと思い、
連絡先が書かれた紙を持って家を飛び出した。


家から十分ほど離れた公衆電話まで来た。
そこで書かれた連絡先に電話をした。


夜遅い事もありなかなか出なかったが、
しばらくして『もしもし』という不機嫌そうな声がした。

それは母がたの祖母だった。

男の子が自分の名を告げると、祖母は驚いたようだったがとても喜んでくれた。

男の子は祖母の話を適当に切り上げ、母はいるかと聞いた。


祖母が少し待てといって、しばらくすると母が出た。
母は嬉しそうで涙声だった。

男の子は母に、先程見た光景について話した。

すると母は険しい声になり、

『それを家の者に言ったか?』

と聞いた。

言っていないと言うと、絶対言ってはならないと言われた。


それから、母は

『見てしまった限りは教えたほうがいいね』

と言ったが、

その場では長くなるからと話さなかった。



そして母は、あの家は異常だから男の子も危ない、
母親と一緒に暮らそうと提案してきた。

男の子は嬉しかった。



すぐに提案を受け入れると、母はその後の段取りについて説明した。


母は自分の実家へおり、そこへ男の子を呼びたいが、
跡取りを連れて行かれたら祖父は必死に探し連れ戻しに来るだろうから、
二人で別の所に住もう。



住む所の準備に少しかかるが、こちらから連絡しても取り次いでくれないから、
一週間後に家から少し離れた寺で待ち合わせよう、との事だった。


男の子が分かったと伝えると、母は気をつけてねと言って電話を切った。


男の子は戻りたくなかったが、
母との計画を前に問題を起こしたく無かったため、仕方なく家に戻った。


その日から男の子は部屋へ閉じ籠った。

学校にも行かなかったが、父や祖父はもはや何も言わなかった。


そして、母との約束の日が二日後に控えた時だった。

夜中に父がやってきたのだ。


父は男の子の名前を呼んだが、男の子はそれどころでは無かった。

父は子供にあまり興味の無い人で、部屋へ来る事はほとんど無く、
それも夜中に来たのは、前回姉が連れて行かれた時だけだった。


男の子は自分もあそこへ入れられるのだと直感した。


今まで自分は跡取りだから馬鹿をやっても大丈夫だろうと思っていたが、
そんな考えは今の状況では完全に頭から消えていた。


父は返事の無い男の子に近づいて来た為、男の子はあわてて返事をした。
そうすると父は来いとだけ言った。

焦った男の子は考えた。トイレから逃げよう。


男の子はトイレに行きたいから先にトイレへ行かせてくれと言った。


父は渋っていたが、何度も言うと了承した。


男の子はトイレに行くと鍵を閉め、音がでないようそっと窓を開けた。

幸いな事にトイレの窓はかなり大きかった為、すんなり抜け出せた。

外に出ると男の子は正門へ向かった。


しかし、そこに人の気配がし、陰から覗き込むと分家の男たちがいた。

男の子はゾッとした。


分家の男たちが、おそらく父と男の子を玄関前で待っていたのだ。

男の子は正門を諦め、裏門へ向かった。


途中裏門にも人がいたらと思い泣きそうになったが、幸い人はいなかった。

裏門を出た男の子は走った。

とにかく家から離れなくてはと無我夢中だった。


途中にある田んぼ道は障害物が何も無く、
遠くからでも丸見えだった為、見つかる事を想像して気が狂いそうだった。



夢中でしばらくの間走り、隣町まで来た所で男の子は母親へ電話した。
紙はあの時から肌身離さず持っていた。


母が電話に出て、男の子が息を切らしているの聞き、
我が子の緊急事態を察したのか、

『どこにいる?すぐに迎えに行く!』

と言って場所を聞いて切った。







しばらくして母が車で来て、男の子を車に乗せるとすぐに発車した。

車には運転をしている母の兄(叔父)と母の父(祖父)も乗っていた。


男の子は安心し、母に抱きしめられたまま眠ってしまった。


気がつくと母の顔が見えた。
布団が掛けられ寝ていたようだ。

起き上がり当たりを見ると、どこかのマンションかアパートのようだった。


母は、

「これからはここで暮らすのよ。ここは今までの家がある所とは
 かなり離れている所だから、祖父達に見つかる事はないから 安心して」

と言った。



その後、
母は父から色々と聞いていたようで、姉や毛だらけの男について話してくれた。


あの場所は、あの辺を仕切っていた先祖が、
犯罪者や時には自分に従わない者を閉じ込めていた場所である事。



姉は恐らく祖父に怨みを持った人間から、暴行を受けて精神を病み、
それをよしとしない祖父があそこへ閉じ込めた。


母は姉を助けようと祖父に詰め寄り、家を追い出されたとの事。


毛だらけの男については母は存在を知らなかったようだが、
考え込んだ後、分家に行方不明になった人がいたと聞いた事があるので、
その人じゃないかとの事だった。


また、母は姉を助けたいが、祖父達はそれを絶対に許さず、
警察にも繋がりがある祖父なので、警察に訴えても動いてくれないばかりか
立場が悪くなるであろう事を話し、男の子を抱きしめて泣いた。


それから十年程が経った。


母と暮らし始めた当初は、
母の実家にも祖父の使いが押しかけてきたりしたが、
今では諦めたのか何事もない。


あれからずっと男の子は、姉をあんな状態で放って
自分は母と幸せに暮らしている事に負い目を感じていたが、
最近になって母の実家から(父がたの)祖父が亡くなったらしいとの連絡を受けた。

「それを聞いた男の子は どうしたと思う?」

と言った所で伊藤の話は終わった。







俺達は姉を助けに行ったんじゃとか言った後、
伊藤に顛末を聞こうとしたが、知らないと言って笑っていた。

なんだよーと当時は二人でブーブー言っていたが、
最近になって伊藤の家に遊びに行った時に、伊藤の家が母子家庭である事を、
ちらりと伊藤のお母さんが言っているのを聞いた。


そしてあの時の話を思い出し、
あの男の子は実は伊藤なんじゃないのかと思った。

考えているともう一つ気になる事があった。


伊藤は自分で、今の家があるX県の出身だと昔から言っていた。


しかし、驚いた時に「あきゃっ」と言ったり、酔っぱらった時のイントネーションが、
X県地方では聞いた事がないようなものだった。


酔っ払った勢いで一度だけ聞いたが、笑って否定された。


それ以降はその話は一切聞けないでいるが、
俺は今でも伊藤があの男の子だったんだと信じている……











タグ:田舎 集落 人怖
posted by kowaihanashi6515 at 19:22 | TrackBack(0) | 人怖

2017年01月20日

悪行の果て



俺は、五年前に結婚してすぐにアパートを借りて嫁と2人で暮らし始めた。

すぐに町内会に入会して、二年目には早くも班長の役が回って来た。
回覧板や広報誌などの配布と町内会費の集金などが基本的な毎月の仕事。

厄介なのは集金業務で、いつ伺っても留守の家が数軒あって、
中でも一番面倒な家は、Kさん宅だと聞いていた。


80過ぎの爺さんが一人で暮らしている。Kさんは足腰が悪く耳も遠いらしい。
近所付き合いは無く、どちらかと言うと嫌われ者の部類だと聞かされた。

班長の引き継ぎの時には、Kさんはいつも居留守を使って
町内会費を払いたがらないから根気よく通って、毎月必ず集金して下さい。
あの爺さんは確信犯で、耳が聞こえないフリをしているだけ。全く人を馬鹿にしている。
…と少し興奮気味にアドバイスされた程だった。

班長になって9ヶ月目。Kさん宅へ集金に伺い、
靴があることを確認した後いつもの様に大声で『Kさーん!
町内会費をお願いしまーす!』と叫ぶ。

いつもと同じで反応は無い。そして、いつもの様にもう一度叫ぶ。
これを3回繰り返すと奥の部屋からKさんが『おう。今行く…』と返してくる。
俺は、話に聞いていた程厄介な爺さんではないと思っていた。

しかし、今月は5回繰り返しても反応が無い。仕方なく出直す事にして、
2時間後に再びKさん宅へ伺った。さっきと同じように叫ぶが反応は無い。
3回目の叫びに、ようやくKさんが反応して『お前は来るな…』と言ったように聞こえた。

その言葉に少し腹が立った俺は、もう一度『Kさん!お願いしますよ!』
と叫んだけど反応はなかった。

仕方なく明日改めて伺う事にしたが、さっきのKさんの言葉が気になって、
その足で前年の班長宅へ相談に行った。
前班長は、明日私が君の代わりに集金に行ってやると言ってくれた。





翌日の夕方、前班長はKさん宅へ伺っていつものように何度も叫んでみたようだが、
反応は無く、しびれを切らした前班長は家に上がって奥の部屋に向かったらしい。
Kさんが居るであろう部屋の襖を開けると、暖房も入っていない身震いするような
寒い部屋の布団の中に、Kさんが横になっていたという。

前班長は近づいて『Kさん!Kさん!』と呼び掛けてみたが反応は無いので、
思い切ってKさんの身体を揺らしながら、顔を覗き込んだその瞬間、
前班長は固まった。Kさんはすでに死んでいたらしい。

警察の調べに寄るとKさんの死因は脳卒中。しかしそれとは別に重大な問題があった。

それは、身体の至る所に煙草で焼きを入れられた痕や
爪で引っかかれた傷が見つかったという。

警察の捜査が進む中。Kさんが亡くなって半月後、
前班長は突然精神障害を患って入院した。

聞くところによると前班長の状態は、
夜な夜な『助けてくれ〜!許してくれ〜!俺が悪かった!』と
病室のベッドの上で叫びながら怯えているらしい。

警察は捜査の末、Kさんに暴行を加えた犯人は前班長と断定した。

班長だった当時、Kさんの対応に業を煮やした末、
集金の度に弱っているKさんの身体に熱い煙草で焼きを入れたり、
爪で引っ掻くなどの陰湿な暴行を繰り返していたようだ。


亡くなったKさんの怨念が、前班長の精神を狂わせているのか…。
それとも自責の念に駆られた前班長が、Kさんの幻を見て狂ってしまったのか…。

Kさんが俺に言った『お前は来るな…』には、
Kさんの様々な思いが込められていたような気がする。
おそらくKさんは自分の死期が近い事を悟って、最後の気力を振り絞って、
その言葉を発したんだと思う。上手く言えないが、そんな気がする。


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…最近、病院に行き前班長の様子を見て来た人の話では、
とても正視出来ない程に変わり果てた姿だったという。

家族には見捨てられ、親戚にも見捨てられ、友達にも見捨てられ、
病室のベッドに縛り付けられ、日々壊れ続けて行く前班長を見捨て無いのは、
ただ一人。Kさんだけ。





タグ:町内会 怨念
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