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2015年12月26日

書評3:川島芳子生存説

(藤原作弥著『東北への眼差し』愛育社、2012年出版、p88〜p90からの転載)
元日本銀行副総裁 藤原作弥

清朝粛親王の王女・愛新覚羅顕子(王へんに子)は、父の盟友である川島浪速の養女・川島芳子と名乗り、清朝腹壁の夢を果たすため日本軍に協力、満州国建設に際しラストエンペラー・溥儀の王妃・婉容を拉致するなど多くの諜報活動に挺身、終戦後、漢奸罪に(祖国反逆罪)により北京軍事法廷で裁かれた結果、昭和二十三年三月、銃殺刑に処された。

「東洋のマタ・ハリ」といわれた川島芳子の運命を要約すると右の一文に収まる。私は『李香蘭 私の半生』(新潮社)執筆に当たって、川島芳子の伝記を書いた上坂冬子さんや、芳子の日本の故郷・松本市の記念館にあらゆる資料・文物を集めた川島芳子の研究者で実業家の穂苅甲子男さんに取材したが、それでも数奇な運命を辿った有名人の常として、さまざまな伝説的異聞や余聞が流布されていた。

処刑は銃殺で非公開、遺体は顔面がメチャクチャに崩れて本人との見分けがつかなかったことから、別の女囚と入れ替わり「本物の川島芳子は、金の延べ棒を賄賂に使い、刑務所を脱出して秘かに生きている」という生存伝説が生まれた。眉唾だったが、そのエピソードは拙著にも一・二行付け加えておいた。

ところが約六十年後、にわかにその生存説がクローズアップされたのである。数年前、長春の地元紙に記事が掲載されたことを時事通信社特派員からの電話で知って以来、私や李香蘭こと山口淑子女史にコメントを求めるマスコミ攻勢が強まった。ついには中国から調査団が日本に派遣された。その経緯はテレビ朝日等でも特集放映されたので、ご存知の方もいらっしゃるだろう。

川島芳子の身近にいた長春市の女流画家・張玉さんがその証人。
幼少のころ、長春郊外に住む「方おばさん」の家に毎夏遊びに行っていた張さんは、日本人残留孤児の母を養女として育ててくれた祖父・段連祥氏から死の間際に「おまえを可愛がってくれて亡くなったあの方おばさんは、実は川島芳子という人だった」と打ち明けられた。「方おばさん」こと川島芳子は死刑を免れ、仏門に入り、一九七八年まで三十年間生き延びていたという。

張さんにも「そういえば」と思い当たる節も多くあり、親友の山口淑子さんの歌のレコードや、川島芳子が秘書で恋人的存在だった小方八郎へ宛てた遺品の数々などの証拠品も出てきた。そこから、長春の吉林省社会科学院も科学的歴史研究として本格的な調査活動を開始した。

それらの生存説調査結果を一冊の本にまとめたのが『川島芳子生死之謎新証』(李剛・何景方、吉林文史)である。私はその初版原書を、昨年長春を訪れ、溥儀の旧皇居「偽満皇宮博物院」を見学した際に求めたが、その後、日本語版も星雲社から翻訳出版された。同書の詳細綿密な調査は説得力がある。山口淑子女史もこの調査結果を読んで、生存説の信ぴょう性の格付けを従来の<50%>から<80%>へランクアップさせたほどだ。

2015年10月12日

書評2:元日銀副総裁 藤原作弥氏

『川島芳子 生死の謎』
元日本銀行副総裁 藤原作弥

昨年、中国東北地方を旅行した際、長春の歴史博物館(偽満皇宮博物館)を訪れた。これまで何度か見学したが、皇帝溥儀の寝室や宅、遊戯室のある同徳殿まで全館を公開していたので丹念に見て回った。

同徳殿2階の回廊から1階の大ホールを見下ろした時ある既視感にとらわれた。映画「ラストエンペラー」の中の、密会中の満映理事長・甘粕正彦と宮廷女官長・川島芳子が1階下の溥儀を皇后・婉容の様子をのぞき見るシーンを思い出したから(もっともこの場面は監督ベルトリッチの創作)である。

川島芳子と言えば、同博物館の売店で『川島芳子生死之謎解密』(李剛・何景方著、吉林文史出版)が眼に入ったので早速購入した。
 
折から日本では「昭和二十三年、祖国反逆罪の罪名で死刑になったはずの川島芳子は実は替え玉で本人は昭和五十四年まで生きていた」という説が話題になっていた。本書はそれを科学的に裏付ける歴史研究書だった。
 
私は山口淑子さんとの共著『李香蘭・私の半生』(新潮社)を取材・執筆する過程で、川島芳子のことはかなり調べたつもりである。日本人でありながら中国人と出自を詐称して満映女優として国策に利用された山口淑子。清朝・粛親王の王女でありながら日本人・川島浪速の養女となり満州国建設に協力した川島芳子。2人のヨシコは戦後、祖国反逆罪に問われるが、一人は無罪、もう一人は死刑と明暗を異にした。
 
実は川島芳子は金の延べ棒十本で看守を買収し、北京刑務所を脱出、死の迫った病人の女囚がその身代わりになって銃殺刑を受けたのが真相と本書は明かし、芳子は長春郊外に身をやつし、長春と浙江省の国清寺という寺院の間を往復していたと主張する。生存説を立証したのは、義理の孫娘に相当する長春在住の女流画家張玉さんで「方おばさん」の遺品として数々の証拠品も所有している。

張玉女史と面談した松本市の川島芳子記念館館長、穂刈甲子男氏や山口淑子さんによれば同説の信ぴょう性は「フィフティー・フィフティー」。いずれにせよ川島芳子の生存には蒋介石や周恩来もかかわっていたとの説もあり、このミステリーまさに「事実は小説より奇なり」の面白さがある。

(雑誌『経済界』2011.5.10より転載)

――――――――――
藤原作弥:1942年言語学者の父に従って朝鮮の清津に移住する。1944年満洲の興安街に転居するが、1945年ソ連軍の侵攻により脱出、1946年帰国。1962年に東京外国語大学を卒業し、時事通信社に入社。大蔵省や日本銀行の担当記者、解説委員などを経た後、1998年に日本銀行副総裁に就任。2003年に副総裁退職後、日立総合研究所取締役社長などを歴任。

書評1:国際教養大学学長 中嶋嶺雄氏

川島芳子は生きていた 
国際教養大学学長 中嶋嶺雄

 去る五月下旬から六月上旬にかけて、久しぶりに中国の長春を訪問した。私が学長を務める国際教養大学と中国東北部で最大最高位の吉林大学との交流協定締結のためであった。「熱烈歓迎日本国際教養大学中嶋嶺雄校長来訪」のネオンサインも掲げられていて、中国側のホスピタリティにあらためて感心した。
 
 その一方、私が松本市出身であることも知っている長春市の文化人の方々が私の訪問を待っていてくれて、彼らが最近新たに調査し検証したという川島芳子の生存説を一生懸命に説明しようと私を囲んでくれた。その新しい調査記録は、この五月末に吉林文史出版社から李剛・何景方共著の『川島芳子生死の謎』というタイトルで出版されたばかりであり、私の教え子で現在吉林農業大学で教鞭を執る野崎晃市君が日本語に訳して、この六月初旬に東京の星雲社から日中同時出版されている。
 
 私たちの松本市にゆかりの深い川島芳子が当時の国民政府当局発表のように昭和二十三年(一九四八)年三月に「漢奸」として北京で銃殺されたのではなく、実は長春郊外の新立城で昭和五十四(一九七九)年正月に七十二歳で死去するまで三十年以上も生きていたという事実は、長春ではすでに新聞やテレビでも報道されている。右の本も早速書店に並んでいた。
 
 私が今回驚いたのは、川島芳子が身分を隠して「方おばあさん」として生きていた時に可愛がられ、沢山のことを教えられたという張玉さんとその実母で「方おばあさん」の養女だったという段霊雲さんと私の会見であった。張玉さんは一九六七年生まれの女流画家であるが、「方おばあさん」と過ごした十二歳までの幼少期のことを実によく覚えていて、とても上品で物知りの「方おばあさん」は松本に住んでいた時の思い出を克明に語っていたと詳しく話してくれた。美しいアルプスの山々、松本城のスケッチ、浅間温泉、馬に乗って通った女学校時代、さらには信州に伝わる「姥捨て」伝説のことなどを、「方おばあさん」が故郷を懐かしみながら、時には涙ながらに語ってくれたというのである。張玉さんは「方おばあさん」に習ったという「蘇州の夜」や「蘇州夜曲」など戦前に李香蘭が歌った曲や「赤とんぼ」など小学唱歌を私に歌って聞かせてくれた。

 言うまでもなく「東洋のマタハリ」とか「男装の麗人」とも呼ばれた川島芳子は、清朝の粛親王の第十四王女として生まれ、郷里松本が生んだ国士川島浪速の養女となって、松本には15歳から6年間住んだとされている。その生存説が確認されたとなると、松本市蟻ケ先木沢の正麟寺にある川島浪速の墓に分骨されたのは芳子の遺骨ではなく、実際は浙江省天台県の国清寺に葬られたのだという。

 昨年3月に松本を訪れた張玉さんは川島浪速と芳子の墓を詣でたというが、そのときに彼女は「私はここに埋葬されているのは川島芳子ではないと知っています。私の方おばあさんが本物の川島芳子だからです。私が哀悼をささげたのは「替え玉」になった可哀想な人のためです」と述べたという。

(長野県松本市の新聞『市民タイムス』2010年6月15日より転載)


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