アフィリエイト広告を利用しています

広告

この広告は30日以上更新がないブログに表示されております。
新規記事の投稿を行うことで、非表示にすることが可能です。
posted by fanblog

2016年11月09日

扉シリーズ第五章  『狂都』第十四話  「魔象3」

象という獣のアイデンティティたる長い鼻を掴んだ武市は、そのままそれを引き千切った。
すると、またその傷口から、黒い影が漏れ出す。
黒い影は、空中に漂いながらも武市を目指して浮遊していく。

「年代も、性別も関係ない…よくこれだけの怨念が集まったものね…」

翔子が呟く。
それを耳にした志村が翔子の言葉に答えた。

「集まったんじゃなくて、集めたんすよ…どうやら、あの魔星の奴等は各々で『領域』ってやつを持ってるらしくてね…その『領域』ってのは、平たく言えば『地獄』っすわ…つまり、今オレ達は、ゼオンの『地獄』にいるわけだ…」

志村の言葉に、翔子は激しい憤りをおぼえた…
翔子は、師匠である甲田福子から『地獄』というモノについて講釈を受けた事がある。
それによると地獄とは、苦しみの中に光明、つまり希望を見出せない霊魂が集合し、形成される。
そこに集合した霊魂に、生死の別はない。
今、生命があり生きている人間でも、日々の生活の中で希望を見出せぬ者は、生きたまま霊的には地獄に落ちている…
また、その苦しみに囚われたまま生命を無くした場合も、変わりなく地獄に落ちたままであると…

ゼオンは…いや、魔星は、そういう苦しみ続ける霊魂達を意のままにし、道具として用いる慈悲の心等微塵もない輩なのだ…!

「許せない!!」

翔子は、心底からそう思った。
それを聞いた志村は、

「同感っす…」

と一言答えた。
その一言に、翔子は自分と同じく、苦しむ霊魂達を弄ぶ魔星への激しい憤りを感じた。
何故急にこの場に現れたのか、翔子はそれに対して何らかの陰謀ありと疑念を抱いていたが、少なくとも、敵ではないと認識できた事に安堵した。
短い期間であったが、同門の後輩を疑いたくなかったのだ…
翔子は久々に自分の表情が緩むのを感じていた…

武市を目指して浮遊する影は黒い霧のようになり武市の周囲にまとわりつく。
しかし、武市から放たれる輝きに触れると、その輝きに溶け込むように、次々と消滅していく…
翔子はその様を見ながら、あの黒い霧のようなモノは、おそらく念…怨念である。
その念が、まるで光に集まる羽虫のように、武市に集まり、消滅しているのだ。

あれは『救済』なのだろうか…?

そうでなければ、あれはどういう現象なのだろう?

翔子は、『救済』であって欲しいと、心底思いながら、両手を合わせて祈りを捧げる。

それを横目で見ていた伊田は、その現象の正体を知っている。

その現象は、『救済』なんて生易しいものではない…
あれは、食っているのだ…
神格は、人の『思い』をその力の糧にしている。

自身を信仰している者の祈り、また怨念…

『思い』の傾向に『味』があるのは謎だが、それに関して、神格は雑食であり、貪欲だ…
今、翔子が武市に対して何を祈っているのかはわからないが、その『思い』さえ、今の武市には贄であり、供物となるのだ…

魔星であろうが、梳名の祖神であろうが、それに関して神格に差異はないのだ…

伊田は心の中でそう思いながら、口の端から笑気を漏らした。

伊田の心中の声に応えたのか、武市はまた驚くべき行動をとった。

引き千切った鼻を口元に持っていくと、それに歯を立て、かぶりついたのである。
肉…いや、それも怨念の塊なのだろうが、それを食いちぎると、それを咀嚼して、ゴクリと飲み込む。
武市が食い千切った部分から、鮮血が迸るように、怨念が溢れ出す…
それもまた、武市の中に吸収されていくのだ…

「あ、あ〜ん武市…野生的なんも程々にしとくべきなんよ〜!」

木林は口から笑気を漏らしながらも、目は笑えていない事を自覚していた…

象は体制を整えると、鼻を食う武市めがけて右足を振り下ろすが、武市は右手に持つ鼻にかぶりつきながらも、片手で象の右足を受け止めると、それを跳ね返す。

ドズゥゥウン!

象は轟音と共に、また地面に倒れた。

武市は食べかけの鼻を投げ捨てると、ノシノシと倒れた象に近づくと、止めと言わんばかりに、象のこめかみに右手を打ち込んだ。

少しバタバタと暴れた後、象の動きが停止した。

武市が右手を引き抜くと、そこから大量の怨念が勢いよく吹き出す!
それを浴びながら、武市は右、左と次々にパンチを繰り出し、象の頭に無数の穴が穿たれていく…

「うぇっ」

武市が繰り広げる光景は木林にとってはスプラッター映画のワンシーンに見えた。

武市はパンチをやめると、次に、少し体制を後退させる。
そして、まるで弓のように身体を後ろしならせると、次の瞬間、全身を、まるで放たれた矢のように
して、象の体内へと飛び込んだ。
武市が飛び込んだと同時に、象の体内から何かの圧力が加わっているように、象の身体が風船のように膨らんでいく。
そして、張り詰めた象の体皮をつき破り、一筋、二筋と、閃光が走る。

次々と無数に増えていく閃光…
そしてついに、象の身体が膨張の臨界点に達し、

ドパァァァァァァァン!!

という轟音を立てて、象は爆散した。
象の中に詰まっていた怨念が血しぶきの如く飛散し、身構える木林達だったが、それが木林達に降り注ぐ前に、それらは光の粒子になり、消滅していく…

そして、それら怨念の霧の中に、武市が立っている…

怨念を吸収した為か、身長180センチに満たない武市の身長が明らかに2メートルを越えているのを、そこにいた全ての者が見た。

フゥオオオオオ〜!!

先ほどよりも遥かに音量をました雄叫びが辺りにこだまする…

その姿が、木林の目にはゼオン等問題にならない禍々しい怪物に見えた…

続く





ファン
検索
最新コメント
<< 2016年11月 >>
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      
最新記事
タグクラウド
ホラー小説
プロフィール
さんの画像

私木林と冨田武市で当ブログを運営していきます。 2人とも大のホラー好きですのでホラー好きの方々仲良くして下さい。記事に関するコメントも遠慮なく頂ければ幸いです。
ブログ
プロフィール
写真ギャラリー

オカルト・ホラー小説 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ ホラー・怪奇小説へ
にほんブログ村
カテゴリーアーカイブ
関連サイト
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。