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2016年11月06日

扉シリーズ第五章  『狂都』第十三話  「魔象」

どうせ異界だ、問題ないだろが、狂都の街を破壊しながら、真っ黒な『山』が近づいてくる…

「な、何なアレよ〜!」

木林が迫り来る山を指差し、悲鳴にも似た叫び声を上げた。
近くにつれ、その巨大さがわかる…

「デカけりゃええってもんちゃうやろ〜!もうちょっと控えるべきなんよ〜!!」

木林の叫びは最もである。
巨大なそれは、目測ではあるが全高50メートル以上はあろう…
その様は、言うなれば血を這う鯨…いや違う…

象だ!!

全高50メートルを超える巨大な真っ黒い象が、狂都の街を破壊しながらこちらに迫ってきているのだ。

この霊圧はその巨体の重さに比例しているのか、地響きで足が地からうきあがりそうだ。

「ゼオンの置き土産か?」

伊田が呟いた。

「あんなデカイ土産置いていくとは、常識疑いますわ!」

木林がそれに答えて軽口を叩く。
しかし、やはり木林である、その目には闘志の炎が燃えている。
そういえば、何故かコイツは巨大なモノに対しては異様な対抗心があった…
それに、その闘志を爆発させる為の術を、コイツは持ったのだ…
あの夜、八龍に行った後に現れたズタ男達を撃退した、あの足技…あれが意のままに使えるのなら…と、武市は心強く感じた。

そうだ、今から、この明らかに殺気を放つ巨大な象を相手にせねばならないのだ…

しかし、手本を見せたとは言われたが、どうやればあの神格…梳名火明高彦命と通じる事ができるのか…?

ん?

武市は、そういえば、こんな長い名前をちゃんと覚えている自分に気づいた…
そういえば、我が名を唱えよとかなんとか言っていたような…

「そうだよ!名前を呼んだら出てきやがるよ!勿体ぶってねぇで、早く通じろや!ほら、もうそこまで来てっぞ!」

志村が檄を飛ばした。
武市とて男…檄を飛ばされれば心に火がつかないわけがない!

「やったるわ、このデカブツ!」

武市がそう叫んだ時には、もう目前に巨大な象の巨体がそびえ立っていた…

「冨ちゃん!」

「武市君!」

伊田と翔子が武市の名を叫ぶ!
しかし、その時、武市は巨大な影に覆われた…
巨大な象の巨大な足が、武市の頭上に振り下ろされる…

しかし、

「おのりゃ〜ボケカス!!」

木林の雄叫びと共に光が閃き、巨大な象はバランスを崩し、その巨体が横に倒れた!

ズシィィ〜ン!!

轟音と、足が宙から離れる程の衝撃の後、

「効いたかデカブツ!!」

再び木林の雄叫びが響いた。
木林は、右足に赤と銀の、まるで遺伝子のような螺旋を描いたオーラを纏っている…
あの夜見た時より、それはよりハッキリと武市の目に写り込んだ。

「へぇ…あの黒いの、見た事ねぇけど、ありゃ何の力だ?」

志村が誰にでもなくそう言って、カカカッと笑う。

「キバちゃん…そんな力が…」

伊田が惚けたようにそう呟くと、それに答えるように翔子が口を開く。

「木林君…SCの才能はあると思ってたけど…何なのアレ…SCとは少し違うような…」

木林は武市に振り下ろされた足と同方向の後ろ足に、その尋常ならざるミドルキックをお見舞いしたのだ。

しかし、象はまたその巨体を起こしにかかり始めた。

「嘘やろ?効いてないってか!?」

そう言いながら、木林は下半身を深く落とし、跳躍体制に入る。

『さっきは何もできんかったけど…こんな得体の知れん奴にビビッてたまるか〜よ!あづま!もっとや!もっと力を分けてくれ!』

木林が心の中でそう叫ぶと、右足の螺旋がまるでドリルのように回転を始め、その回転が早くなるにつれ、オーラの輝きが増していく…

それを察したのか、象が雄叫びをあげる!
鼓膜が破れそうな程の雄叫びに一瞬意識が飛びかけた木林だったが、ぐっと気合いを入れると、右足で跳躍する!
すでに身体を起こした象の頭部まで達した跳躍は、少なくとも40メートル以上には達している!
その跳躍力は人類の範疇を遥かに越えていた…

素早い体捌きをもって、空中で体制を整えた木林は、象の顔面に再度強烈なミドルキックをお見舞いした!

しかし、そのキックはまるで水の詰まった皮袋のように、ドプンと音を立てて震えたに過ぎなかった。

「どないなっとんねん、コイツの肉体よ〜!」

木林はそう叫びながら、また体制を立て直して蹴りを入れた。

飛んでいる…?

木林の身体が、空中を自由に飛んでいるように、武市には見えた。

「顔〜!顔顔顔顔顔、顔〜!!」

木林はそう叫びながら、象の顔面に蹴りを連発している。

その姿が、再び武市の心に火をつけた!

『木林が必死に戦ってるのに何もできぬとはゴリラとしては面目丸つぶれ…頼む、梳名火明高彦命…この冨田武市…いや、ゴリラに相応しい力を与えてくれっ!!』

武市が心の中でそう叫ぶと、

ギィ…

と、武市の中で木製のドアが開いたような音が響いた…

その直後、

『その渇望に、我応えん…!』

聞き覚えのある、神々しい声が響き、武市の身体が燃えるように熱くなる!
心臓でまた核爆発が起こったような感覚を覚え、また、全ての血液が変異し、それが光の粒子となり、武市の全身を駆け巡る…
その輝きが武市の身体の内部から皮膚を透過して溢れ出し、武市の全身がまるで宝石のような輝きを放っている…!
全身の毛が逆立ち、武市の全身に古代文字のような紋様が浮かび始めた…さらに、その形相が憤怒相へと変じ…その瞳は、金色に輝いていた…

続く










扉シリーズ第五章  『狂都』第十二話  「生命3」

大聖別日御火回天明妃(たいせいことのひみほかいてんみょうき)…
明妃、とは明王の女性型。
明王、明妃は仏尊。つまり仏の化身である。
しかし、仏尊でありながら日本神話の神格を思わせるその名は、伊田の記憶にはない。
しかし、目の前にある存在から感じる神々しさは紛い物ではなく、明らかに神性を持っている。
伊田は己の娘の中にいるもう一つの霊体については、もっと禍々しいものであるように思っていた…
それとは真逆の慈愛に満ちたその顔立ちには、母性すら感じるのた…

「アンタは…神か?」

伊田は目の前の存在に尋ねてみた。
答えは一目瞭然だが、確認の為にである。

『そう呼びたければそう呼べばよい…我は汝の娘を抑える為、汝の娘の身体に宿りし者…しかし、その戒めも破られ、今やこの娘は秘めたる力に飲まれてしまった…その上、この娘とこの世を繋ぐ鎖たる汝そのものをなくしては、もはやその力、止まる事を知らぬだろう…』

どういう意味だ…?

美弓の秘めた力…?

フタナリである美弓に宿っていたもう一つの霊体が目の前の神格であり、それが美弓を抑えていた…?
フタナリとは、そういうモノだったのか?

それに、自分の娘は、一体何者だと言うのだ…?

「美弓は…一体何なんだ?」

伊田はその答えを聞くのが空恐ろしく思ったが、尋ねずにはいられなかった。

『この世には時として生まれくるのだ…悠久の時を経、星々が定められた位置に整う時、その者、星々を砕き、その欠片すら塵へと還す破壊者がな…』

破壊者…?

使命…?

「使命って…誰から与えられた使命なんだ?」

神格は、静かに答えた。

『コトアマツガミ…』

コトアマツガミ…

アマツガミとは、日本神話における高天原起因の神格だと知っている…
コトアマツガミ…
それは国造神よりも前の世代の神格を指す。
その正体は謎に包まれているらしいが…

『汝にも使命はある…』

神格の静かながら重みのある声が響いた。

『この娘の霊、この世の理に囚われた中であれば抑えは効く…しかし、一度解き放たれたなら、それを抑える術はない…汝は娘をこの世に繋ぐ鎖…親子の絆とはそれほど深き縁だと知るがよい…しかさそ、この娘は今、我の戒めを破り、更に鎖たる汝を失い、この世の理から解き放たれた…見よ、時は動き始め、破壊の力が動き出している…』

伊田の目には、コマ送りのように、生雲大社が崩れゆく様が見える…
傍に美弓がいる…
大地に足をつけ、その小さな身体から禍々しい輝きを放ちながら、泣いている…
その足元には、胸から上が吹き飛ばされた己の肉体が転がっている…

『時間がない…汝伊田源二よ、汝に我が生命を分け与えよう…それにより汝は蘇る…しかし、それは仮初めの生命…伊田源二の生命ではない…我が眷属として、我の与えし名が、今より汝の真名となる…その名は何人にも教える事なかれ…そして、我が命は絶対である…汝の真名は生雲火魂鎖命(イククモホタマクサリノミコト)…ゆめゆめ忘るる事なかれ…』

再び光に包まれ、伊田はその光に溶けるような感覚の中、また記憶が途切れた。
そして、目をさますと娘の鳴き声が聞こえた。
地面が激しく振動している。
地震だ。
伊田が倒れたまま辺りを見渡すと、時間が正常に動き出したのか、風景は一変し、世界遺産認定直前だった生雲大社は見る影もなく崩れ去っている。
伊田は倒れていた地面から起き上がり、娘を抱きしめた。

「美弓!大丈夫だ!お父さんここにいる!ここにいるぞ!」

地震が止まった。
それと同時に美弓の身体から力が抜けた。
ぐったりとする娘の身体を抱きしめながら、改めて周りを見渡すと、どうやら被害はかなり広範囲に渡っている事を感じた。
生雲大社を後にし、町に出ると、風景はもはや戦場であった。
あちらこちらで火の手があがり、悲鳴や怒号が飛び交う。
瓦礫の下には何人の人が助けを待っているのか…
破壊とは、こういう事なのだ…
この破壊の力が、今腕の中にいる娘に宿っている…
何故、娘なのか?
こんな重すぎる業を、何故自分の娘が背負わされているのか?
答えの出ない疑問を抱えたまま、伊田は、何とか横浜にたどり着いた。
この震災は『西日本大震災』と名付けられ、被害は中国地方から近畿地方、北九州に及び、死者九千人超となる未曾有の大惨事となった。
しかし、美弓には生雲大社に着いてからの記憶が完全に抜け落ちていた。
おそらくはあの大聖別日御火回天明妃が、あの記憶を封印ないし抜きとってくれたのであろう。
伊田も肉体的には何ら変わりはなかった。
しかし、時折あの明妃の声が聞こえるようになった。
また、分けられた生命から新たな感じた事のない力が湧いてくる。
その力も徐々に理解し、コントロールできるようになった。
しかし、この生命が仮初めのモノである事もわかる。
すでに寿命は尽きている。
使命を終えれば、自然に失われるモノなのだろう…
それまでは、娘を繋ぎとめ、守らねばならない。
しかし、それを脅かす存在がある事も、明妃から教えられた。
また同時に、美弓の『破壊の力』を相殺する術がある事も教えられた。

「しかしね…申し訳ないけど、そいつは話せないわけがあるんだ…まあ、話した通り、今のオレの生命は使命を全うする為に与えられたものだ…翔子、お前も生命を与えられたんなら、お前にも使命があるんだよな?」

語り終えた伊田は、翔子にそう尋ねた。
翔子は一つうなづくと、

「はい…でも、源さんと同じく、それは明かせませんけど…」

と、少し表情を緩めた。

あの美弓さんにそんな力が…

何やら重い業を背負わされているような自分と重ね合わせ、武市は言葉が出なかった。

「う、う〜ん」

志村が目を覚ましたようだ。
一同が志村に目をやると、志村は気だるそうに身体を起こして、周囲を見渡す。

「やれやれ…何だよ…吹き飛ばしたと思ったら、まだ異界のど真ん中かよ…あ、アンタ等無事だったんだな…」

志村が立ち上がりながらそう口にする。
しかし、その直後…

ゾォン

圧倒的な霊圧を、武市は感じた。

ゾォン

ゾォン

ゾォン

まるで巨大な何かが大地を踏みしめるように、霊圧が強くなる。
巨大な何かが、こちらに近づいてくるのを感じる。

「あ〜あ…オレ今は力出せねぇぞ…おい甘ちゃんゴリラ!」

志村が頭を掻きながら、武市に声をかけた。

「手本は見せたろ?次、テメーでやれや…」

志村の一言に、武市は霊圧ではない、嫌な圧力を腹部に感じた…

続く










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