アフィリエイト広告を利用しています

広告

この広告は30日以上更新がないブログに表示されております。
新規記事の投稿を行うことで、非表示にすることが可能です。
posted by fanblog

2016年11月02日

扉シリーズ第五章  『狂都』第十話  「紫の空の下2」

伊田が『霊能者』を諦めた理由…

それは非常に気になる所だ。
武市から見れば、伊田は『霊能者』を名乗ってもよいほどの知識と実力を兼ね備えているように見えるのだが、それでも自分を『霊能者』ではなく『霊具職人』と呼び、一線を引いている…
巷には、そんな力を持たずに『霊能者』を名乗る輩も少なくないと言うのに、伊田は何故、一線を引いているのだろうか…?

「冨ちゃん…キバちゃんもよく聞きなよ…霊能者って連中はね、自覚がある、無いに関わらず、必ず何らかの神格ないし、神格に近い力のある霊体の神威によって霊力を得て、除霊や浄霊を行っているもんなのさ…
甲田福子然り、三角綾然り、翔子だってそうさ…ほとんどがそれぞれの一族の祖神を信仰し、その力を分けてもらってるのさ…でも、たまにね、そこの志村さとしみたいに、神格に見込まれる奴もいる…ある日突然神のお告げを受けて、なんて話聞いた事あるだろ?コイツはそのタイプに当てはまると思う…何を基準に選んでるのかわからないし、コイツにも自覚なんか無かったろうけどね…で、オレはそのどちらでもなく、信仰すべき神を持たない…だからオレは、霊具職人としてサポート役に回る事にしたのさ…」

神を持たない…

それは今までの自分にも言えるし、木林だってそうだろう…

しかし、自分は確実に神と通じた。
それも、梳名家の祖神に…
甲田の血を引いているのだ、甲田家に祖神がいるなら、それと通じて然るべきだが、何故梳名家の神が…?
翔子を救う為の事だったのか…それとも、偶然自分が見込まれただけなのだろうか…

武市がそんな事を考えていると、

「私はそうは思いません…」

翔子が伊田の言葉に噛み付くように声を発した。

「どういう意味だよ?」

伊田は飄々とした態度で翔子に尋ね返した。

「源さん…私は昔から思っていました…貴方は師匠と互角以上の霊力を持っている…」

翔子は明らかな疑惑の目を伊田に向けている。

「えっ?何言ってんだよお前は…霊力ってのは神格起因の力だろ?そんなもん、オレにあるわけないだろ?確かにオレは常人より鋭い霊感と、準神格クラスの霊体から力を拝借して霊具を作る事はできる…でも、お前等みたいに祖神を持ってるような連中とは根本的に差があるんだよ…」

伊田は笑気を含んではいるが、ハッキリと翔子の言葉を否定した。
しかし、伊田がかなり高度な霊能者の技を使うのには、武市も疑問を覚えた。
呪詛の進行を遅らせる儀式、念話、ただ霊感が鋭いというだけで、そんな事が簡単にできるとは思えない…
自分には神格が宿っているのだ、念話に対応できたのはそれで説明がつく。
しかし、伊田が神を持たないというなら、どう説明をつけるのか…?

「どうして嘘をつくんですか?だから貴方を信用できないんです…!」

翔子は疑惑の眼差しと怒気を含んだ威圧的な声をあげた。

「嘘なんかついてないよ…それにな、オレはお前に信用してくれなんてお願いした覚えもないよ…」

伊田の声にも怒気が含まれだした…少しゆるんでいた両者間の緊張が再び張り詰め、険悪なムードが漂う…
しかし、

「伊田さん、伊田さん儀式とか念話とかできますよね?あれって霊力とは違うんですか?」

と、武市は純粋な疑問を伊田にぶつけてみた。
武市自身、そのわけを知りたくもあり、翔子も知りたいはずだし、木林も気になっているはずだ。

伊田は少し表情をゆるめると、

「はははっ、冨ちゃんあれはね…模倣だよ…」

と、笑って答えた。

「模倣?」

武市はおもわず復唱した。
思いもよらない解答だ。
そもそも、あんな事を模倣できるものなのか?

「方法さえわかれば、ある程度の事は模倣できる…人間は肉体的にも精神的にも基本的には同じ造りだからね…どこをどう使えば、それができるのかわかれば、できるだろ?…例えば、走るという行為…走り方はわかるよね?でも、走ってみて、差が出る。誰でもできる事だけど、誰でもオリンピックに出られるわけじゃない…つまりはそう言う事さ…でも、念話や儀式の方法を理解するのには、かなり鋭い霊感を持ってないとできない…幸い、感じる力は常人より鋭かったからね…これで答えになるかな?」

納得したような、しないような、不思議な心持ちだ…
自分を言いくるめたのか、はたまた、それが真実なのか…
よくわからないが、用意していたような、淀みない伊田の口調にいささか引っかかりを感じた。

「それで誤魔化したつもりですか?」

翔子は疑惑を超えた敵意に似た眼差しを伊田に向けた。

「誤魔化したつもりはねぇよ…で?結局お前は何が言いてぇんだ?」

伊田は面倒くさそうに吐きすてるように翔子に尋ねた。

「源さん…貴方が何故嘘をつくのかは正直どうでもいい…大事なのは、貴方が何をしようとしているか…そこです。」

翔子は真っ直ぐな目で伊田を見つめる。
伊田ははっと笑気を吐き出すと、翔子と同じような真っ直ぐな目で、

「お前はオレが何をしようとしてると思ってるんだ?」

と、乾いた声で尋ね返す。

翔子は、それを受けて初めて気圧されたような表情を見せた。
いや、気圧されているのは伊田にではなく、翔子が考えている事、それ自体にかも知れない…
武市の目には、そんな風に見えた。

「どうした?言ってみろよ?」

威圧的ではない、伊田には受け止める覚悟があるように見える。
しかし、やはり翔子にはそれを口に出す踏ん切りがつかないようだ…

「翔子…一度口にしたんだ、それを話すのは責任ってやつだぜ?安心しろ、オレ達ゃ同門の兄妹だ…兄弟子としてちゃんと受け止めてやるよ…」

今のは伊田の本心であろうと、武市は感じた。
伊田が優れた人格の持ち主である事は間違いない。
それは付き合いの長い翔子の方がよく知っているだろう。
それだけに翔子は自分の中でわだかまる疑惑を晴らしたいのだろう…

「源さん…美弓ちゃんは元気ですか?」

翔子が口を開いた。
伊田はそれに対し、少し拍子抜けしたような表情を見せながら、

「あ?ああ…あいつ今、そんなメジャーじゃないけど劇団で女優やってるよ…まあ元気…」

と、そこまで言うと一瞬眉間にシワを寄せ、すぐにまた表情を緩めると笑気を吐き出した。

「はははっ、大丈夫だよ翔子…もうあんな事は起こらない…それにあれは、悪い夢だ…その証拠に、オレはちゃんと生きてるだろ?」

話が要領を得ない…
どういう意味だ?

それを聞いた翔子は俯いた。

「あ?どうしたんだ翔子?」

伊田は心配そうな表情で翔子を包むような声でそう尋ねた。

「やっぱりそうなんだ…源さん、私達は同じです…」

ますます要領を得ない。

「えっ?お前何を………あっ…」

伊田は翔子の言葉を意味を理解したようだ。

「そうです源さん…私も一度、死にました…」

何がなんだかわからない…
しかし、武市の目に再びあの光景が飛び込んできた。

翔子の全身に現れたあの紫色の紋様…
あれがまた翔子の全身に現れ、この世ならざる神秘的かつ不気味な輝きを周囲に撒き散らしていた…

続く






ファン
検索
最新コメント
<< 2016年11月 >>
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      
最新記事
タグクラウド
ホラー小説
プロフィール
さんの画像

私木林と冨田武市で当ブログを運営していきます。 2人とも大のホラー好きですのでホラー好きの方々仲良くして下さい。記事に関するコメントも遠慮なく頂ければ幸いです。
ブログ
プロフィール
写真ギャラリー

オカルト・ホラー小説 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ ホラー・怪奇小説へ
にほんブログ村
カテゴリーアーカイブ
関連サイト
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。