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2016年10月26日

扉シリーズ第五章  『狂都』第六話  「異界の雷神」

甘ちゃんゴリラ…

『甘ちゃん』とは、精神的に自他に対して甘えを許す人間を指す。

『ゴリラ』とは、筋骨隆々たる類人猿の名詞であるが、この場合は明らかに武市を指す意味で用いられている。

武市は、たった二つの言葉を繋げるだけで、己の本質を見事に現しているその言葉を発したパンク男に対して、座布団をニ、三枚贈呈したいと思いに駆られるのと同時に、

『あ、あの…どちら様ですか?』

と、パンク男に対して心中にて突っ込みを入れた。

パンク男は暗黒の虚空を睨みながら咥えたタバコを吐き捨て、蹴られたらただでは済まなそうな先の尖ったブーツでそれを踏み消すと、ジャケットからタバコを取り出し、それをまた口に咥えると、タバコの先端を親指と人差し指でつまみ、ゆるく先端を捻ると、
タバコに火がついた。

手品なようなタバコの点火方法に少しの格好良さを感じた武市であったが、

『また吸うんかい!』

という突っ込みが頭をよぎった。

「おいジジイ…さっきから聞いてりゃ耳障りのいい事並び立てて臭ぇ息撒き散らしてんじゃねえよ…お陰でこの辺り一体臭くて臭くて仕方ねぇや…その口塞いでやっから、姿ぁ現しやがれ!」

パンク男が吠えた。
素人とは思えない、本当によく通る声だ。
見た目から、バンドのボーカルでもやっているのだろうか…
楽器は何一つマトモに演奏できないが、音楽活動に憧れを持つ武市はその声に心奪われる。

「やれやれ…また口の御悪い御仁が現れましたね…」

武市の耳にしわがれた肉声が聞こえたと思ったら、闇が形を成すようにして、車内で見た燕尾服の老人が姿を現した。

「口臭には気を使っているつもりですが、そんなに臭いますかな、志村殿?」

老人はパンク男を『志村』と呼んだ…

「だから言ってんだろ…その口開けるなっての!」

志村がそう言いながら右手をあげ、人差し指で老人の口を指差すと、その指先から青い電光がほとばしる!
その電光が老人の口を直撃し、老人は志村が臭いという口臭を吐き出す口を失った。
しかし、血の一滴流す事なく、老人はビックリしたように目をパチクリさせる。
しかし、老人の失われた口周りに周囲の闇が収束し、その闇が老人の口を再生させた。
志村はその様を冷たい眼差しで見届けていた。

「いやはや…貴方は口が御悪いだけでなく、老人に対する労わりと慈しみの心もお持ちではないようだ…」

しわがれた声、くたびれた口調だが、その響きには『敵意』が感じられる…
しかも、この二人は以前からの知り合いのようだ…
武市はこの二人の間には入れぬと、一歩後ずさる。

しかし、武市は気づいた。

『寝てる皆は、この状況の中、起きたりしてこないのか…?』

武市は周りを見渡すが、木林も、翔子も、伊田もいない…
ランタンや荷物も見当たらない…
ここは、異界の中のまた異界…
おそらくいつの間にかゼオンが作り出したのだろうが、その異界に当たり前のように現れた、この志村という男は何者なのだ?
身体から放つあの光は、あの梳名火明高彦と通じた時に武市が体験したのと同質のものである事はわかるが…
あの時、武市は意識を保てているかもよくわからないような曖昧な状態にあったが、志村は明確に自分の意識を保っているように見える。
しかも、つまんで捻るだけでタバコに点火し、指先からは電光がほとばしる…
比べて武市は、緩やかながらも生命の危機に瀕していながら、自分の中にいるはずの明高彦の存在すら感じられない…
この志村という男も神格を宿しているのだろうが、それを意のままにする方法があるのだろうか…?

「そりゃ再生するわな…どのみちオメー等にゃ口なんてもん必要ねぇだろうが?」

志村はまたタバコを投げ捨て、それを踏み消すと、またタバコを取り出し、さっきと同じように点火した。

『まだ吸うんかい!?』

武市はまた心の中でそう突っ込みながらも、おそらくヘビースモーカーであろう志村の健康を心配する。

「何を言いますか…我々にも口は必要不可欠…ほれ、このように…」

ゼオンはそう言いと、口からドロドロとした白い煙のようなモノを吐き出した。
武市は、それがエクトプラズムという現象であると、瞬時に理解した。
エクトプラズムとは、霊体が物質化した者である。
現象を起こした本人の霊体である場合もあれば、その人間に憑いている、もしくは呼び寄せたモノである場合もある…
ゼオンが吐き出したエクトプラズムに、人間の顔のパーツ、目、鼻、口等が現れ、それが細胞分裂のように凄まじい速さで増殖していく…
そして、その無数の口々から

『神、神、神、神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神…』

と、頭がおかしくなりそうな合唱が繰り出される。
武市はその声から発っせられる霊圧に耐え切れず、片膝をついた。
胃の辺りが圧迫され、胃液が逆流してくる。
しかし、志村は涼しい顔で、

「神神神神うるせぇよ…」

と呟くと、今までより身体の輝きを増した。
おそらく、意図的にそれができるのだ。
その光からは圧倒的な霊圧を感じるが、不快ではない。
その光りがエクトプラズムから発っせられる不快な霊圧をかき消しているようだ…

『神、神、神、神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神様〜!!!』

エクトプラズムは無数の人面に分散し、まるで光に群がる羽虫のように一斉に志村に向かって殺到した!
武市が自宅で体験したあの出来事に酷似している…

志村は、無数のエクトプラズムに覆い尽くされた!
しかし、武市には何をどうしたらいいのかもわらない…ただ呆然とそれを見ているしかできないのだ…
ゼオンは微笑みをたたえ、武市にウインクを飛ばしてきた。
志村はエクトプラズムに覆い尽くされたまま身動き一つしない…いや、できないように武市には見えた。

しかし、

エクトプラズムの一部が、まるで内側から跳ね飛ばされるように志村から剥離した。
そこから凄まじい閃光が煌めく!
引き剥がされたエクトプラズムはその光りに当てられ、光の粒子に変わり、闇の中へと散華していく…

それが一部、また一部と徐々に引き剥がされては散華していき、ついには、激しい閃光の中、全てが爆発したように引き剥がれて、散華していく…

目を開けていられない…いや、目を閉じたとて瞼を通して感じるほどの眩い光の中、タバコを咥えた志村が平然と立っている…

「神か…そんなもんにすがってるから、永久に成仏できねぇんだよ、オメー等はよ…」

志村は、口から紫煙を吐き出しながら、そう呟いた…

続く






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