アフィリエイト広告を利用しています

広告

posted by fanblog

2016年10月25日

扉シリーズ第五章  『狂都』第五話  「異界3」

武市の視界に現れた、ドアの覗き窓程の極々小さな世界…

その小さな世界に、武市は見た…

宇宙…

星々が輝く宇宙空間が映し出されている…

その宇宙空間を細長く、巨大な何かが、彗星のように光を放ちながら切り裂いて飛んでいる…

龍?

その物体は武市の目には龍のように見えた…

武市は更に目を凝らす。

すると、ドアの覗き窓程だったその映像が一気に広がり、武市はそこに映し出された宇宙空間へと飲み込まれた。

武市の眼前に、龍の姿が現れた。

数多輝く星々が小石程度に見える程巨大な身体を波打つようにくねらせながら、太陽の輝きよりも更に鮮烈な光を放つ巨龍…

今、自分が何を見ているのか…
何故コレを見ているのか…
武市には全く理解できない…

しかし、その姿を見て、武市は自分という存在…
いや、地球の支配者を気どっている人類そのものが余りにもちっぽけな存在であり、この宇宙にこんな巨大な生物が実在するなら、戯れの一撃で人類はその住処を無くす事になるだろうと漠然と思った…

『貴方の考えは正しい…』

聞き覚えのあるしわがれた男性の声が武市の頭に響いてきた。

『ゼオンか?』

武市は声に尋ねた。

『貴方と通じるのはこれで三度目…見えたのですね、アレが?』

おそらくゼオンに間違いない…
しかし、その声には何故か温かみを感じる…

『貴方方が明王眼と呼ぶその目で無ければ見る事に叶わぬ尊い御姿…アレこそ我等の神…いや、我等の崇めし真なる神のその一柱…』

神…

また『神』か…

今も目に映る輝く巨龍…神と言われれば、そうであろうという説得力に満ち満ちている…
しかも、今ゼオンは『神々の一柱』だと言った…
神を数として現す単位は『柱』だ…
あんな巨大なモノが、何柱も存在すると言うのか?
武市は余りに巨大な存在を前にして、ただただ自我を保つ事で精一杯であった。

『貴方は何故、狂都へ…土雲晴明の元へ行かれるのか?』

ゼオンの問いが頭に響いた。

そう言われれば、そうである…
自分は何故、狂都へ行くのか…?

AYAさんが受けた呪詛を解く為の手助けか?

そうだ、それが理由だ…

『AYAさんに呪詛を送ってるのは、アンタ等なんか?』

武市は、それを確認しておきたかった。
今の所、ゼオンが明確な敵であるかどうかは漠然としている。
それに、何故かはわからないが、ゼオンの声にはやはり温かみを感じるのだ…

『呪詛…いや、違いますな…アレは狭間の王たる者の現世に残したる残穢にして、永久に死毒を撒き散らす徒花…我等の他にアレを摘み取る事のできる者の存在はありません…』

不可解だ…
狭間の王…?
その言葉には異常な言霊を感じる…
それに…

『もしかして、アンタはその徒花とやらを摘んで回っているのか?』

わからない事はどうでもいい、今確認しておくべきは、ゼオンが敵かどうかだ…

『そうだと言えばそうであり、違うと言えばそうである…』

この爺さんは何故こんな謎めいた喋り方をするのか?
武市は少しイラツキながらも、一番確認したい事を尋ねた。

『アンタはオレ等の敵なんか?』

武市の問いに、ゼオンは温かみのある声で応えた。

『敵…先にも申し上げた通り、我々に敵意はありません…』

やはりそう来たか!

『じゃあ、何でオレ等をこんなトコに引きずり込んだんや!?』

武市は声なき声で、ゼオンに問うた。

『これは慈悲…貴方が彼の者と見えれば、必ずや我々に対して敵意を抱く事になる…天に唾する者は吐いた唾をその身に受ける事となるのです…ならば永久に我が領域を彷徨うか、彼の者と会う事を諦めるか…最良は後者…今までと変わらぬ営みに帰る事こそ、貴方方にとっては至福と言えるのです…』

諦めるれば、ここから脱出できると言う事か?
しかし、土雲晴明と会う事によってゼオン達…つまり魔星と敵対する事になる?
そんな事、わからんだろう?
少なくとも、オレは土雲晴明にいい印象を持っているわけじゃないのだ…
しかし、問題は魔星の存在意義だ…
それだけは確かめておきたい…

『アンタ等魔星は…何をしようとしてるんや?』

武市の問いに、ゼオンは答えた。

『我等の崇めし神々の意思の執行…我等の存在意義はそのほかにはありません…』

武市は、ゼオンが神と呼ぶ巨龍を指差し、更に問うた!

『その神は、一体何を望んでるんや!?』

ゼオンは答えた!

『神々の望みはただ一つ…破壊されし秩序の回復…』

秩序の回復…?
普通、漫画やゲームの世界でそんな言葉が出ると、罪深き人類を滅ぼすとか、全てを無に帰すとか、人類の滅びに結びつく事が多い。
しかし、現実…今の状況を現実と呼んでいいのかはわからないが、現実の中でそんな言葉を聞くと、何故か笑いが込み上げる。

『人類を滅ぼすって意味か?もしそうやったら、今すぐに敵意持つ事になるで?』

武市は状況に構わず、口から笑気を漏らしながらそう尋ねた。

『神はそれを望んではいません…いや、そのような事を望む存在はいかなる世界にも存在しないでしょう…明確に言葉にしておきましょう…我々は貴方方の敵ではありません…彼の者との会見を止め、健やかな生活に戻られる事を、私は渇望します…』

武市は、よくわからなくなってきた…
このままゼオンの言う事を聞けば、何事もなく家に帰る事ができるのではないか…?
土雲晴明と会わなくても、ゼオンに頼めばAYAさんの呪詛も何とかしてくれるのではないだろうか?
今自分達は、無駄な事をしているのではなかろうか…?

武市がそんな事を考えいると、突如、

ガガーン!!!

落雷の様な轟音が轟き、武市の眼前に広がっていた宇宙空間が砕け散った!

「何揺らいでんだ…この甘ちゃんゴリラはよぉ…」

低音で、よく練られた通る声が武市の背後から聞こえた。
武市が振り返ると、そこには男が立っている…
暗闇の中、身長は軽く180センチを超え、痩せて手足の長い体躯を
黒革のジャケットとパンツに包み、真っ赤に染めたモヒカン頭が目を引く、明らかなパンクファッションで身を固めた男が立っている…
口にタバコを咥え、その隙間から紫煙を漏らしながら、不敵な表情をし、服で隠されていない男の身体からは、まるで宝石の輝きの様な光が発っせられている…

「退がっとけ甘ちゃんゴリラ…お喋りジジイの臭ぇ口、今すぐ止めてやっからよお…!」

男の身体から発っせられている光が一層その輝きを増した…

続く





この記事へのコメント
コメントを書く

お名前:

メールアドレス:


ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/5563968
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
ファン
検索
最新コメント
<< 2016年12月 >>
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新記事
タグクラウド
ホラー小説
プロフィール
さんの画像

私木林と冨田武市で当ブログを運営していきます。 2人とも大のホラー好きですのでホラー好きの方々仲良くして下さい。記事に関するコメントも遠慮なく頂ければ幸いです。
ブログ
プロフィール
写真ギャラリー

オカルト・ホラー小説 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ ホラー・怪奇小説へ
にほんブログ村
カテゴリーアーカイブ
関連サイト
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。