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2014年09月25日

食事しながらなんとなくクローズアップ現代

観てて、いろんな意味でげっそりしました。本日放送分は、「緊急調査・子供の貧困 食費329円の現実」っていうもので、相対的貧困状態にある子供の割合が16%以上となり、過去最高となった、という直近の厚生労働省調査をもとに、番組が構成されています。その要因として、ここ二十年くらいで割合が急増した非正規労働者が家庭を持つようになっている事情を挙げていますが、いくらなんでもそれくらいはプロスポーツ観戦中毒患者でもない限り、普通に報道に接していればわかることでしょう。ただ、この番組は、そうした課題に対して、その構造的問題にスポット照射するコンセプトではないようなのでそれはそれで取り敢えず良しとしますが、こうした、世帯貧困問題への社会的対策の議論として、いつも、税の再分配方法の妥当論や善意の支援活動の応援要請としてしか取り上げない傾向にあるのを、いつも辛気臭く感じながら眺めています(番組見てない人用、NHKオンライン→こちら)。

ある課題についての対処法を検討する際、予測される効果の程度からの行動優先度をあまり深く考えず、「取り敢えず出来ることから始めましょう。」的な論理構成は、管理人の場合、よく拒絶反応が出ます。「大きな事はできませんが、小さな事からコツコツと。」っていうのも、「より効果が期待出来る”大きな事”も検討してみたが、それによって予想される派生リスクや、要請されるであろう資源等勘案した結果、現時点では”小さな事”から開始した方が有益と判断しました。」と説明されるのならまだしも、単に前者のような主張をメディアで多量に露出されると、あたかも”大きな事”は出来っこない、という暗黙の前提が植えつけられてしまうような気がします。これは、一歩間違えば、課題解決に対して”小さな事”をする事によって本質的な意味での不作為を完成させてしまう危険性があり、全く何もしない完全なる不作為と比べ、自分の出来る(とある意味思い込まさせられている)範囲内であっても、一応、”小さい”ながらも事を成しているという満足感がある分、よりタチが悪いと思うほどです。総合自分研究所webサイトでは、自己満足をテーマにしている以上、こうした低品質の自己満足に陥ることは絶対に避けたいので、洞察力を鍛える事を標榜しております。そうすると避けて通れないのは、メディアとの関わりあいとなり、当ブログでも「報道」カテゴリー記事が多くなっている理由でもあります。

話を元に戻しますが、同番組でも取り上げられていた母子家庭の貧困問題も、非正規雇用の貧困問題も、構造的な主要原因は単純に一つであり、それは、日本の賃金体系が一国二制度であることに尽きます。賃金形態の分類方法は様々ですが、賃金決定の実質的な主要素の違いという、最も根本的なところで分類した場合、属性基準賃金と職務基準賃金に分けられ、前者は正規雇用、後者は非正規雇用での採用率が高くなります。欧米においては、前者の賃金形態は極めて稀であり、単に、格差問題といっても、欧米で指摘されるそれとは日本の場合根本的なところで原因が異なっていると考えた方が理解しやすいように思います。欧米では、労働者習得スキルに見合った雇用が社会から用意されておらず、見合わない職務に従事せざる負えない労働者が、その職務基準賃金しか得られず問題となっているケースが多い(エリートインフレ)のに比べ、日本の場合、それ以前の問題として、賃金原資の内、職務基準以外の物差しで大半を支給するため、残りは職務基準賃金とはいっても、全体的にみると正確に職務内容を反映したものとなっていないという根本的な問題があります。一般的には、属性基準賃金が賃金原資を圧迫しているように言われますが、話は簡単ではなく、属性基準賃金中、年功要素が強くなるほど、同じ属性基準賃金内においても雇用年数によって職務⇔賃金の公正さには大きな開きができます。このあたりの政策批判についてメディアでよく見かける方といえば城繁幸さんが有名ですが、意見がストレートで辛辣ですネ、この方は。賃金の決め方について興味を持った方は、明治大学の遠藤公嗣教授の著書で「賃金の決め方」が分かりやすいです。この本では日本固有ともいえる属性基準賃金の生まれた背景が紹介されており、その思想の根っこに「生活給思想」があること、しかもそれは国家の想定するモデル家庭に照準を合わせたものであり、この設計時点で既に母子家庭などは排除されている事実に触れる事が出来ると思います。管理人の解説はこの程度にしておきます。詳しく知りたい方は同書を・・・。

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さて、母子家庭や、非正規雇用の貧困格差問題についての構造原因を超簡単にまとめると、片方は生活給思想で設計されてているのに対して、もう片方はそうでないため生活出来ない程度の人も出てくるというわけです。それじゃ、日本共産党的に全部生活給思想で設計しろよ、となりますが、現代は発展途上国含めた他国の労働市場とも競争しており、経営持続性を考えると、そのための賃金原資を容易には確保できません。結局、他の構造的社会問題にも共通する解決法に行き当たります。すなわち、社会全体で甘受すべき不利益を、如何に公正に負担分配するか?となります。この問題の場合、所得の段階で不公正と考えられるのに、その後の税再分配で公正さを取り戻そうとしても無理がありますし、だいいち、税財源からみても不効率で、それによって生み出された負の遺産は後世まかせにするという、社会全体が甘受すべき不利益をある一定のカテゴリーに押し付けるという毎度お馴染みの失敗パターンを再生します。問題の根本は所得の段階ですから、これに公正さを与えれば再分配政策の役目は本来のレアケースに集中でき、フルタイムで働いているのに子供が栄養失調になるといったような問題に関わる必要もなくなるのではないかと思います。労働者全体を職務基準賃金にすれば解決するわけです。こうした変化は、社会的要請もあり散発的には起こりつつあります。巨額赤字決算から抜け出せないSONYが、大規模リストラ中ですが、来年度から職務を基準とした賃金体系への改変を発表しています。こうした、既得権が関わる改革は、存続の瀬戸際まで追い詰められないと起動しないというのは人間の社会的特徴なのかもしれませんが、構造的課題への理解の共有がなされさえすれば、そう思い込まさせれている程でもないのでは?と人間のもつ可能性に少し期待したいところです。こうした、問題は散発的に改善されていくと、過渡期に置いてきぼりにされた世代に不利益が集中してしまうからで、ロストジェネレーション世代を人柱にするっていうのは何か嫌な感じしますネ。

なんでそれで解決するの?って方は、派生的な問題がごっちゃに絡まっている可能性があると思います。もちろん、職務スキルと職務ミスマッチの問題等もありますが、一般的に、ロスジェネ世代にこれが多いといわれる原因自体も、属性基準賃金体系と表裏一体ともいえる終身雇用制度とOJTシステムや、それに期待する政策という派生要素が輻輳して作用しており、根本は賃金決定システムに起因しています。ただし、発展途上国とのいわゆる”race to the bottom"の問題は、もっと世界的な課題ですからまた話は変わってきます。これについては、また機会があれば・・・。

性差別賃金や、職務基準賃金の実践例について興味のある方は、森 ますみ著書紹介しておきます。

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(追記)人間のもつ可能性に期待したいと本文中述べましたが、これにはこういう経緯があります。
OECDの2008年リポートだったと思うのですが、日本政府に対する要請-勧告として、「もっと公正さのある賃金体系に変えていきなさい。現状の、特に若者に対する雇用政策は不公正で看過できない。」といった内容のものがあり、管理人も少し気になったので、OECDに直接メールで質問したりネットで調べている内に知ったのですが、特に欧州で確立されている同一価値労働同一賃金が受け入れられるまでの紆余曲折です。当然、一定のカテゴリーの既得権を侵害していくことになるわけですから、そうした変革が、焼け野原にでもなっていないのに許容された背景を不思議に思っていました。分析、意見は色々あるのですが、管理人が感じた説得性のあるものは二つ。一つは、日本と違い産業別労働組合が組織されており、ここが労使交渉の実権を保持していて、企業内労組のように自分の会社さえ良ければ社会的公正さなど二の次的な動機に支配されにくいこと。そしてもう一つは、宗教が浸透しており、個人にとっては不利益になったとしても社会の不公正さを看過できないというコンセンサスがあるというものです。後者は少し堪えました。JAPは無宗教で動物に近いから、焼け野原にでもならないとそんな芸当できないだろ、って言われているみたいで。
話変わりますが、今日のクローズアップ現代では、貧困の連鎖問題として、食べていけるかどうかといった次元での話で終始していましたが、正直なところ「オーイ、未だその次元かよ。ここは先進国か?」という感想です。フランスでは、高等教育まで実質無料に近いのですが、それでも、社会階層の世代間連鎖は起きます。学費が補助されているのにもかかわらずです。その原因を親からの象徴遺産という概念で研究した社会学の本があり、物凄く面白いです。フランス高等社会学研究所所長を務めた故ピエール・ブルデュー氏の著書で、かなり難解かもしれません。挑戦者はどうぞ読んで下さい。世の中の見方が変わるかもしれません。

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