アフィリエイト広告を利用しています

広告

この広告は30日以上更新がないブログに表示されております。
新規記事の投稿を行うことで、非表示にすることが可能です。
posted by fanblog

2016年05月07日

事例研究行政法第2版 第1部問題10 自然公園の開発不許可をめぐる紛争

設問1−1
 自然公園法上の特別地域の指定(同法20条1項)が「処分」(行訴法3条2項)に当たるかが問題となる。
 処分とは、国又は公共団体の行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。この定義から、ある行政行為が処分であることの要件は@公権力性、A法効果性、B個別具体性(紛争の成熟性)と解される。
 本件は@Aは認められるが、問題はBである。特別地域に指定されると、その地域に土地を所有する者は20条3項各号の行為を行うのに、国定公園にあっては都道府県知事の許可が必要になる。このような制限は特別地域内に権利を有する者すべてに科せられる不利益であり、個別性がないといえる。また、許可を受ければ20条3項各号の行為ができるのであるから、不許可処分が出た場合に初めて不利益が具体化するものであり、具体性がないと言える。
 したがって、Bの要件を満たさず、処分に当たらないため、Xは本件指定の取消訴訟を提起できない。
設問1−2
1 Xは、Dが20条3項本文の許可処分をすることの義務付訴訟(行訴法3条6項2号)と、不許可処分の取消訴訟(同3条2項)を併合提起(同37条の3第3項2号)すべきである。
2(1)違法性の主張としては、一般的に取消訴訟ではすべての違法を主張できるのが原則である(例外は行訴法10条1項、2項)。そのため、Xは本件不許可処分の違法性のみならず、環境大臣が行った国定公園の指定(自然公園法5条2項)の違法性を主張することができる。具体的には、国定公園の指定が関係者の所有権尊重義務(自然公園法4条)に違反するものであることや、財産権(憲法29条)を侵害するものであることを主張しうる。
(2)また、不許可処分自体の違法性として、Xが行おうとしている約80haの区域の立木の皆伐は、自然公園法20条3項2号の「木竹を伐採すること」に当たるが、同法施行規則11条14項基準に適合するため、不許可処分は裁量権濫用であることを主張しうる。
設問1−3
1 損失補償制度は、公益の実現のため個人の特別の犠牲によって生じた損失を平等原則(憲法14条)及び財産権(憲法29条)の趣旨に基づいて国民全体の負担とするための制度である。損失補償の要否は、@規制の対象が一般的か個別的か、A規制の程度が重大か、B規制の目的が消極的か積極的か、C規制の態様が財産権に内在する制約と言えるかという観点を総合的に考慮して決められる。
 本件はXを対象としているから個別的である。そして、規制の程度は所有する土地の木を利用することができないのだからある程度の重要性はある。そして、規制の目的は自然保護、生物多様性の確保(自然公園法1条)という積極目的である。そして、侵害態様は所有する土地の木を換金することを禁止するものであり、財産権に内在する制約とは言えない。
 したがって、Xの損失補償請求は認められる。
設問2
 自然保護団体A及び地元の自然愛好家で「甲山の自然を守る会」会長Eに原告適格(行訴法9条1項)が認められるかが問題となる。
 原告適格は処分によって法律上保護された利益を侵害され、または必然的に侵害されるおそれのある者に認められ、法律上保護された利益があると言えるためには、法が当該利益を個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含むことが必要である。そのような趣旨を含むか否かは9条2項の事由を考慮して個別法規を判断する。
 自然公園法は自然保護等を目的とし(1条)これ自体は個々人の利益を保護していないが、関係法令である同施行令11条14項4号は、「学術研究」「地域住民」と定めているから、学術研究者や地域住民の利益をも保護しているという議論も可能性はある。しかし、「学術研究」「地域住民」という文言はなお広範すぎる。しかし、ある私人への処分によって不特定多数の第三者が不利益を受ける場合に、その第三者のなかで誰も原告適格が認められないということになると、行政庁の処分を司法の場で争う機械がなくなってしまうから、法の目的と同じ目的を追求するために活動する団体には、政策的に原告適格を認めるべきという議論がある。
 しかし、前述した現行法の原告適格の判断枠組みはそのような団体の原告適格を想定したものではなく、これを認めると、個別具体的な事例において原告適格を認められる団体と認められない団体の線引きが直ちに問題になると言わざるを得ず、現行法の解釈としては採用できない。
 したがって、本件でも、A及びEの原告適格を認めることはできない。 以上

事例研究行政法第2版 第1部問題9 国立公園内での転落事故をめぐる紛争

回答
1 歩道の設置管理の瑕疵を国賠法2条1項で争えるか検討する、
2 国賠法2条は公の営造物の設置管理の瑕疵による損害を賠償させるための規定であり、要件は@公の営造物であること、A設置管理に瑕疵があることである。@について、公の営造物とは国又は公共団体により公の目的に供される有体物であり、自然公物、動産も含む。実際に公の目的に供されているかが決め手となる。Aについて、設置管理は事実上のもので足りる。瑕疵とはその物が通常有すべき性質を有していないことすなわち危険性を有することを指し、供用関連瑕疵により生じる第三者への危険性も含まれる。もっとも、全く危険性のない物というのは想定できず、生活関係の中で受忍すべきものと一般的に考えられている危険性に対してまで賠償義務を発生させるのは適切でないから、その危険性が社会生活上受忍すべき限度を超える場合に、原則として損害賠償義務が発生すると解する。また、瑕疵の有無の判断は@危険の存在、A損害発生の予見可能性、B損害の回避可能性、を総合的に考慮する。もっとも、公平のためBは抗弁事項と解する。
3 本件では、問題となる柵は@海岸線の歩道に設置されたものであるから設置場所として一般的な危険が存在している。
 そして、問題となるのはA予見可能性である。たしかにXは柵の上のパイプに腰を掛け、下のパイプに足を置き、海側に背を向けて座っており、このように柵をベンチ代わりに使うことは柵の通常の用法に反するから予見不可能とも思える。テニスコートの審判台を本来の用法と異なった使い方をしたため瑕疵が否定された事例もある。しかし、異なる使い方が常態化しており、国や公共団体側にこのような異なった使い方が蔓延することに対する是正責任がある場合には、予見可能性はあるというべきである。
 そうして改めて本件を見ると、問題の歩道は甲県乙市の観光地であり、歩道は観光客を増加させるために乙市の要望で甲県が設置したものである。観光地であるからその歩道を歩くのは観光客であり、飲酒をしていたり歩き疲れていたりすることも多いことが容易に想定される。そして、実際に観光客が従来から防護柵やその周辺に座ることがよくあり、乙市もその事実を把握していた。そうすると、予見可能性はあったというべきである。
 そして、ベンチを設置したり、防護柵を改造したり、「座るな」の警告文を掲出する等の対応で、本件は容易に回避できたと認められる。
4 したがって、本件で歩道の設置者である甲県と、実際に管理を事実上行っていた乙市には損害賠償責任がある。
5 また、費用負担者である国や、事実上管理を行っていた乙市も、国賠法3条によって責任を負う。国賠法3条の趣旨は被害者の救済の便宜であり、道路の設置者と費用負担者が異なる場合が適用の典型例であるが、本件にも当てはまる。  以上

事例研究行政法第2版 第1部問題8 飲食店における食中毒をめぐる紛争

回答
 国家賠償制度は、公務員による公権力の行使によって生じた損害を国又は公共団体に賠償させる制度である。その責任の性質について、公務員の責任の代位責任とする説があるが、加害公務員が不特定の場合に国又は公共団体に責任を問えなくなるので妥当でない。責任の性質は、国又は公共団体が公務員を通じて危険を生じさせていることに対する自己責任であると解する。
 なお、通常の不法行為との違いは、求償の要件に故意・過失が加わっていること(国賠法1条2項)、及び使用者の免責規定がないことである。
 国賠法1条による損害賠償が認められるための要件は、@公権力の行使であること、A公務員であること、B「職務を行うについて」、C故意・過失、D違法性、E損害の発生である。@は権力的作用を意味するという説もあるが、私経済作用と2条が適用されるものを除くすべての行為と解する(広義説)。Aは組織法上の概念ではなく、公権力の行使を行うものであれば民間人でも公務員に当たる。Bは職務関連性を意味し、その有無は外形から判断する。Dについて、民法上は権利の性質と侵害態様の相関関係で判断するという説が伝統的通説だが、国賠法の違法はこれと異なる。取消訴訟で争われる違法性との比較でいうと、取消訴訟では法令違反という意味で違法性が使われるのに対し、国賠訴訟では公務員が職務上の法的義務を尽くしたか否かという観点から違法性が判断される(違法性二元説)。
 以上が要件の一般論であるが、本件のように規制権限の不行使が争われる訴訟類型では何が違法性を根拠づけるか問題が生じる。一般に行政庁の規制権限行使は裁量事項である場合が多く、また、行政庁は公益のために規制権限を行使するのであって行政庁による規制権限の行使により私人が受ける利益は反射的利益とされ、それ自体は法的保護に値しないとも考えられるからである。しかし、一定の場合には裁量権が収縮すると構成したり(裁量権収縮論)、第三者の権利の重要性から行政庁に作為義務が生じると構成したり(作為義務論)することにより、規制権限不行使の場合の違法性を基礎づけるべきである。判例は、行政庁の規制権限の不行使が、その権限を定めた法令の趣旨目的、その権限の性質等に照らし、具体的事情の下で、不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、その不行使により損害を受けた者との関係において、国賠法1条1項の適用上、違法となると解している。
 本件では、飲食店Pの施設の管理ないし設備は食品衛生法50条及び51条に基づき同施行令及び施行条例の定める基準に適合しない事態になったのだから、A県知事は同法56条に基づきPの営業停止命令を出すべきであった。しかしA県知事は職務上の注意義務を尽くすことなく漫然と行政指導をしたのみである。食品衛生法は国民の健康の保護を図ることを目的とするもので、規制権限が適切に行使されずに食中毒が発生した場合には人命にかかわることから、その失われる利益の大きさを考慮すると、規制権限の行使が飲食店の営業の自由を考慮しても、安全性が確信される程度の規制権限が行使されるべきであった。にもかかわらず保険所長Cは、Pが過去に処分を受けたことがなかったこと、経営者が改善を口約束していることなど、過大に考慮すべきでない事実を過大に考慮して規制権限を発動しなかったのであるから、このようなA県の権限不行使は、Xとの関係で、国賠法1条1項の適用上、違法である。
 したがって、それにより発生したGの死亡について、Aは損害賠償責任を負う。 以上

事例研究行政法第2版 第1部問題7 指定管理者をめぐる紛争

設問1
1 Bは、利用許可処分の義務付訴訟(行訴法3条6項2号)と申請拒否処分の取消訴訟(同3条2項)を併合提起し、甲市の市民会館利用規則が条例16条の委任の範囲を超え無効であると主張しうる。
2 
(1)甲市文化会館は、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設だから「公の施設」(地方自治法244条1項)に当たる。公の施設は住民の福祉向上を目的とする施設だから、公の施設の指定管理者(地方自治法244条の2第3項)は、住民の利用申請があった場合には、正当な理由がない限り、原則として利用許可処分をしなければならない(地方自治法244条2項)。甲市文化会館条例は、地方自治法244条の2第1項の委任を受けて甲市文化会館の設置管理のために設けられた委任条例であるが、同条例11条2項が不許可の事由を列挙したのは、地方自治法の規定により許可処分を出すことが原則だからである。そうすると、同条例11条2項は限定列挙であり、同条例は会館の管理等に関し必要な事項の定めを規則に委任しているが、規則において新たに不許可の要件を創設的に定めることは予定されていないというべきである。
(2)そうすると次に問題となるのは「甲市以外の普通地方公共団体の住民は、小会議室の利用については、利用日以前の事前の利用申込みはすることができない」と定めた利用規則が新たに不許可の要件を創設的に定めたものであるか否かである。条例11条2項4号は「その他利用させることが会館の管理上支障があると認められるとき」と、解釈の幅のある規定となっており、前述の利用規則は「会館の管理上支障があると認められるとき」を単に具体化しただけであって、新たに不許可の要件を創設的に定めたものではないと見ることも考えられるからである。そこで利用規則の内容を見るに、利用規則の主語は甲市以外の普通地方公共団体の住民であるから、利用規則は甲市の住民と甲市以外の住民を区別し、甲市の住民の利用を優先させる趣旨の規定と言える。たしかに条例11条2項には甲市の住民と甲市以外の住民を区別している不許可要件はないため、このような区別は条例の予定しない不許可要件を創設的に定めたものとも考えうる。しかし、そもそも普通地方公共団体の公の施設は住民の福祉を増進する目的で設置管理されるものであるから、当該公共団体の住民とその他の住民を区別することが当然に違法となるわけではない。もとより、厳密に住民でなければ一切使用できないというような運用には問題があるが、住民と住民以外を問わず利用申込が多く利用の競合が頻繁に起こる公の施設において住民を優先的に利用させる不許可要件は、それが他の住民の利用を不当に阻害するものでないかぎり、「管理上支障があると認められる」(条例11条2項4号)場合の一つとして許されると解する。
(3)本件では、甲市の小会議室は交通至便の地にあり人気があって利用頻度が極めて高く、これまで甲市以外の住民の利用が多すぎて実にしばしば甲市の住民が利用できないことが多かったという立法事実があり、利用の競合が頻繁に起こる公の施設と言える。そして、甲市以外の住民は一切利用できないわけではなく、利用申込ができないのみであり、当日に空きがあれば利用できるのであるから、甲市以外の住民の利用を不当に阻害するものとは言えない。
3 したがって、利用規約は「管理上支障があると認められる」(条例11条2項4号)を具体化したものであり、条例16条の委任の範囲を超えるものではなく、適法である。
設問2
1 Cは、設問1と同様に、利用許可の義務付訴訟と利用許可の取消処分の取消訴訟を併合提起すべきである。

(1)実体法上の違法事由
 Cに会館の利用を許可したことが条例15条1号、11条2項1号、4号に当たるとするAの判断は、事実誤認及び他事考慮があり、裁量権を逸脱して違法であると主張しうる。
 条例11条2項1号は「秩序を乱し」「公益を害するおそれ」など抽象的な文言が使われており、具体的な申請された集会がそれらの事由に当たるか否かの判断には裁量が認められる。もっとも行政庁に裁量が認められる処分であってもその判断が事実の基礎を欠き、または社会通念上著しく妥当を欠くときは裁量権の逸脱・濫用として違法となると解する。
 本件はAはCに「内ゲバ事件」が起きたと判断したと考えられるが、捜査中の警察においてすらまだ「内ゲバ事件」と断定されたわけではないので事実誤認がある。また、申請された利用日に会館で結婚式が行われることから、葬儀が場にふさわしくないものと判断された可能性があり、そうだとすると11条2項各号以外の事由に基づいて許可処分を取り消したことになるため、他事考慮がある。
 したがって、本件許可処分の取消は裁量権の逸脱であり違法である。
(2)手続法上の違法
 本件許可の取消処分は条例15条に基づくものであるから、行政手続法の適用を受けない(行手法3条3項)が、同内容である甲市の行政手続条例の適用を受ける。条例15条による許可の取消は、Aが条例に基づきCを名宛人として直接に権利制限をする処分であるから、行手法上の不利益処分(行手法2条4号)にあたる。したがって理由の提示が必要となるが(同14条)、理由提示の趣旨は行政庁の恣意を抑制し、また不服申立ての便宜を与えることであるから、理由付記の程度は、いかなる事実がいかなる法規の適用を受けたのかの判断を記載自体から被処分者が了知しうる程度にする必要があると解する。
 本件では適用の条文が示されているだけで、いかなる事実が問題とされたのかをCが了知することができない。
 したがって、本件の理由提示は行手法14条と同内容の甲市行手条例に違反する。
設問3
1 Aは、指定管理者の指定取消処分(条例8条)の取消訴訟を提起することが考えられる。
2 
(1)実体法上の違法理由
 @喫茶店の設置と地元名産品の販売は公の施設の管理の範囲内であり、行政財産の目的外使用ではないから、条例7条1号に違反しないこと、A指定の取消しは営業停止措置等の打撃緩和措置を介在させない点で比例原則違反であることを主張できる。
ア @について
 指定管理者の権限は公の施設の「管理」(地方自治法244条の2第3項)であるが、どのような行為が「管理」の範囲内であるかは困難な問題を生じうる。一般的に言えば、公の施設の設置目的は住民の福祉向上であり(244条1項)、指定管理者への管理の委任の目的は設置目的の効果的達成である(244条の2第3項)ため、指定管理者は住民の福祉向上を達成するため行政機関が自ら行うのでは実施しにくい創意工夫を凝らすことが予定されていると言いうる。他方、指定管理者は普通地方公共団体が指定するものであり、長または委員会は管理業務内容について指示する権限があり(同10項)、指定を取り消す権限もあること(同11項)から、何が「管理」に当たるのかの判断権限は第一次的には地方公共団体にあり、裁判所はその判断が裁量権の逸脱濫用に当たらないかぎりその判断を尊重すべきである。いかなる場合に裁量権の逸脱濫用となるかについては、行政庁の判断が重要な事実の基礎を欠き、または社会通念上著しく妥当を欠く場合と解する。
 管理業務が収益を伴う場合があるが、客観的に収益を上げることが直ちに福祉の向上の目的を超え、ひいては管理の範囲を逸脱するわけではない。収益的事業が管理の範囲を超えるか否かは、指定管理者の意図、収益事業の規模、提供されているサービスや販売されている物の内容を総合考量して判断すべきである。
 そうしてみると、本件のAが行った喫茶室の設置と地元名産品の販売は、サービスの内容としては利用者に憩いの場を提供し、また地場産業の活性化に資するものであり、住民の福祉の向上のためのものでないとは言えない。収益規模は不明であるが、Aの意図としても管理の目的を超えない。そうすると、本件の事業は住民の福祉向上を達成するためAが創意工夫をしたものであるから、行政財産の目的外使用には当たらない。
 そうすると、このようなAの事業をもっぱらの収益的事業と認定した甲市長の判断は社会通念上著しく妥当を欠くものと言える。Aの前記行為は地方自治法に違反するものではなく、したがって条例7条1号に違反するものでもない。
 したがって、甲市長の処分は違法である。
イ Aについて
 比例原則とは、私人の自由に対する制約は真に必要な場合でなければならない必要性の原則と必要な場合であっても目的と手段が比例していなければならないという過剰規制の禁止を内容とし、元来は警察行政に妥当する原則であったが、現在では侵害行政一般に妥当するものと解されている。
 指定管理者が条例8条の一に該当する場合に、市長は指定管理業務の取消処分の他、期間を定めた営業停止処分をすることができ、手段の選択に裁量が認められる(条例8条本文)。この手段の選択は自由裁量ではなく、指定管理者に適切に管理させる目的のために必要最小限度の手段を選択しなければならない。
 本件では、甲市長は営業行為を止める指示を出した後、直ちに指定取消処分を行っており、適切に管理させるための必要最小限度の手段を選択していない。
 したがって、比例原則違反の違法がある。
(2)手続違法
 指定取消処分は行手法上の不利益処分に当たるが、聴聞手続きを経なかったことを主張しうる。聴聞手続きを経れば結果が変わりえたと考えられるから、この違法は取消事由となる。 以上


事例研究行政法第2版 第1部問題6 住民票の記載をめぐる紛争

回答
1 あり得る訴訟類型
(1)抗告訴訟(行訴法3条)
 住民票の記載を処分とみた場合、住民票の記載処分の義務付け訴訟が考えられるが、これは住民基本台帳法(以下「法」という)14条2項が私人に申請権を付与したものとみるかどうかによって、申請型義務付訴訟(行訴法3条6項2号)なのか、非申請型義務付訴訟なのか(同1号)が分かれる。申請型義務付訴訟であるならば、2008年11月19日の応答を処分とみるか否かで併合提起する訴訟に違いが生じる。処分とみればその取消訴訟を併合提起することになる(行訴法37条の3第3項2号)。処分でないと見れば、住民票の記載処分の不作為の違法確認訴訟を併合提起することになる(同1号)。
 また、出生届を受理しない処分(本件不受理処分)の取消訴訟と、出生届の受理処分の義務付け訴訟の併合提起も考えられる。
(2)当事者訴訟(行訴法4条後段)
 確認対象として、@Aが住民票に記載されるべき地位にあること、AAが有権者となった後初めての選挙で選挙権を有することが考えられる。
2 考察
(1)抗告訴訟について
ア 住民票の記載(法8条)の処分性の有無
 処分とは、国又は公共団体の行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものを言う。住民票の記載が法効果を発生させるかが問題となるところ、選挙人名簿の登録は住民基本台帳に記録されている者をもとに行われる(法15条)から、住民票に記載がなければ選挙人名簿に登録されず選挙権(憲法15条)を行使できないことが確実になる。つまり住民票の不記載は、選挙権を行使できない法的地位に立たされることを意味する。したがって、住民票の記載は法効果性を有し、処分に当たる。
イ 法14条2項が申請権(行訴法3条6項2号)を付与したものか否か
 「申請」(行訴法3条6項2号)の意義は同法に定義がないが、行政手続法上の「申請」(2条3号)と同義と解される。そうすると、申請とは、@法令に基づき行政庁の許可等を求める行為であって、A当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。
 本件は、法14条2項に基づくものだから@を満たし、下位法たる施行令11条が応答義務を定めているからAを満たす。
 したがって、法14条2項は申請権を付与したものである。
 そのため、提起する訴訟としては、申請型義務付訴訟が正しい。
ウ 2008年11月19日の応答の処分性の有無
 この応答は住民基本台帳法施行令に基づいているから法に基づいているものと言える。また、前述のように住民票の不記載は選挙権を行使できない法的地位に立たされることを意味するから、法効果性を有する。
 したがって、この応答は処分性を有する。
 そのため、提起すべき申請型義務付訴訟は行訴法37条の3第1項2号に基づくものであり、併合提起するのは応答処分の取消訴訟である(同3項2号)。
(2)当事者訴訟について
 要件は@確認対象の適切さ、A即時確定の利益の存在、B方法選択の適切さである。
 @確認対象としてAを選ぶのは、Aがまだ1歳未満の子供であることを考えると、即時確定の利益がなく、確認の利益を欠くため不適法である。したがって、当事者訴訟を選択するならば、確認対象は@とすべきである。
 Aしかし、Aはまだ1歳未満の子供であるから、選挙権を行使するまでにはまだ間があるため即時確定の利益はない。さらに、B抗告訴訟が提起できるから、方法選択としても適切ではない。
 したがって、当事者訴訟は提起すべきではない。
(3)結論
 法8条に基づく住民票の記載を求める申請型義務付訴訟と、2008年11月19日に行われた応答処分の取消訴訟を併合提起すべきである。
3 Aの本案の主張
(1)@嫡出子または非嫡出子の別は不合理な差別であり憲法14条1項に違反すること、A2008年11月19日の住民票の記載をしない旨の応答処分の法3条、8条、14条1項違反を主張しうる。
(2)@について
 家族制度をどのように定めるかは立法裁量事項であるが、個人の尊厳(憲法13条)という根本価値を無視してはならない。また、非嫡出子というのは人が社会において一時的にではなしに占める地位であり「社会的身分」(14条1項後段)にあたるから、この差別は厳格に審査しなければならない。嫡出子と非嫡出子を区別する目的は相続分に差を設けることであり、相続分に差を設ける目的は法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調和である。この目的は正当であるが重要性は相対的なものである。手段として嫡出子と非嫡出子の相続分に差を設けるのは、法律婚の尊重という制度設計上の便宜から生じる不利益を一方的に何の落ち度もない非嫡出子に押し付けるものであり、不合理である。
 したがって、嫡出子と非嫡出子の区別は不合理な差別であり、憲法14条1項に違反する。
 そのため、嫡出子と非嫡出子の区別が記載されていないことを理由に本件出生届を受理しなかった本件不受理処分は違法である。
 そして、出生届と戸籍の記載は法7条5号で関連付けられており、また、選挙権の付与を含む国民の保護という同一目的に向けられたものである。さらに、本件不受理処分の段階では未だAに具体的な不利益が及ぶおそれは小さかったと認められ、本件不受理処分を争わなかったことに非はない。そのため、本件不受理処分の違法は2008年の応答処分の違法に承継される。
(3)Aについて
 住民票の記載はある個人が住民であることを認める性質のものであり、記載の要件は提示された法文からは不明であるが、ある自治体内に住所を有すれば住民票に記載しなければならない性質のものであり、かつ、その判断は法3条、8条、14条1項の文言から裁量事項ではない。
 したがって、Aが甲市内に住所を有するのを認識しているにもかかわらず住民票に記載しない甲市長Dの応答は法3条、8条、14条1項に違反する。 以上

事例研究行政法第2版 第1部問題5 パチンコ店の営業許可をめぐる紛争

設問1
1 原告適格は処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)に認められる。法律上の利益を有する者とは、自己の権利または法律上保護された利益を必然的に侵害され、または侵害されるおそれのあるものをさし、当該法律が保護する利益が一般公益に吸収解消されることなく、個々の国民の個別的利益としても保護する趣旨を含むと解される場合に法律上保護された利益が認められる。処分の相手方以外の者について法律上保護された利益の有無を判断する場合には、9条2項の要素を考慮する。
2(1)風営法の目的は善良で清浄な風俗環境の維持と青少年の保護である(風営法、以下「法」1条)。その目的を達成するため、同法は営業時間(13条)、照度(14条)、振動・騒音(15条)、広告等(16条)を制限している。また、風俗営業を営もうとするものは都道府県公安委員会の許可を受けなければならず(法3条)、都道府県知事は、営業所が良好な風俗環境を保全するため政令で定める基準に従った都道府県の条例で定める地域内にあるときは許可をすることができない(4条2項2号)。そして政令で定める基準は風営法の「関係法令」(9条2項)たる風営法施行令6条に規定があり、そこでは住宅集合地域が定められている(施行令6条1号イ)。条例で定める地域はA県の場合資料2の条例が定めている。この条例は自主条例ではなく、風営法に委任された委任条例であるから「関係法令」に当たる。条例3条は第1種地域を指定しており(条例3条1号)、第1種地域には都市計画法の第1種低層住宅専用地域が含まれる(条例別表、都市計画法9条1項参照)。そうすると、風営法は風俗営業所の近辺の住宅の生活環境を保護する趣旨を含むというべきである。
(2)そして、住宅の生活環境は、当該住宅が営業所に近ければ近いほど乱れる性質のものであり、法令に違反した営業所が建てられた場合の生活環境の被害は、生命・身体の利益ではないものの、当該営業所が存在する限り昼夜を問わず発生し続ける。
 このように法の趣旨・目的並びに処分において考慮されるべき利益の内容・性質を考慮すると、法は風俗営業所の近辺の第1種地域に住宅を有し現に居住する住民ないし条例3条2号に該当する施設が良好な生活環境を害されないという具体的利益を、単に一般公益としてではなく、個別的利益として保護する趣旨を含むというべきである。
3 本件では、Qは本件パチンコ屋付近に居住する住民だが、商業地域内に居住する住民であるから、その良好な生活環境は保護されていない。一方、Rは第1種低層住宅専用地域に居住しており、その住居は本件パチンコ屋の駐車場から50メートルという近場にあるから、その良好な生活環境が条例3条1号によって個別的利益として保護されている。
4 したがって、Qには原告適格がないが、Rには原告適格がある。
設問2
 Rは、本件パチンコ屋の駐車場の一部が第1種地域(条例3条1号)内にあるにもかかわらず本件許可をしたことが、法4条2項2号違反であることを主張できる。
 一方、C小学校の教育環境が悪化するにも関わらず本件許可をしたことは、R自身がC小学校に通学中ないし通学予定の子を有していない以上、主張できない(行訴法10条1項)。
以上

事例研究行政法第2版 第1部問題4 ラブホテル建築規制条例をめぐる紛争

設問1
1 処分(行訴法3条2項)とは、国又は公共団体の行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定することが法律上認められているものを言う。
 この定義から、ある行為が処分に当たるための要件は@公権力性、A法効果性、B具体性(紛争の成熟性)と解する。
2 本件不同意は、乙市市長という行政庁の行為だから公権力性がある(@充足)。
 Aについて、不同意の決定(条例3条3項)は、条例の規定上、それ自体が直接に何らかの法的効果を生じさせるものではない。建築基準法上も、市町村長の同意が建築確認の要件となるという規定はないから、建築主は、条例3条2項の同意を得なくても、建築確認申請をして建築確認を受け、建築を進めることは可能である。そうすると条例3条3項の不同意決定の法的性質は観念の通知であり、処分に当たらないとも思える(A不充足)。
 そのうえ、不同意決定を無視して建築確認申請をし、建築確認を得て建築を進めた場合、条例により建築中止命令を出されるおそれがある(条例6条)。この中止命令は罰則で担保されているから(条例11条)、処分に当たることは疑いない。そうすると、B紛争の成熟性の観点からも、建築主には中止命令の取消訴訟を提起させれば足りるとも思える。
 しかし、不同意の決定を争いたい建築主は、不同意決定を無視して建築を進め、中止命令を出されるまで争えないというのは迂遠であり、不同意決定が出た段階で不同意決定自体を争わせた方が紛争の実行的解決に資する。また、不同意決定にもかかわらず建築を進めたい建築主が不同意決定が出た段階で取りうる手段は、不同意決定を無視して建築確認申請をし、建築確認を得て建築を進めることしかない。また、乙市では過去、同様の事例でほぼ確実に中止命令が出されている。このような法の仕組みと運用を考慮すると、不同意決定が出た段階で、建築を進めたい建築主は、将来中止命令を受けるべき法的地位に立たされたと評価できる。そうすると、不同意決定の段階で実質的に中止命令という法的効果が発生し、紛争が成熟していると言いうる(AB充足)。
3 したがって、本件不同意は処分に当たる。
設問2
1 Aが甲県に対して抗告訴訟で争う場合、建築確認の義務付け訴訟(行訴法3条6項2号)が適切である。この場合には建築確認がなされない不作為の違法確認訴訟を併合提起する(同法37条の3第3項1号)。
2 甲県の対応の行政法上の評価
 甲県は、Aに対し、行政指導をしていることを理由に建築確認を留保している。行政指導という事実行為により建築基準法6条4項の期間を経過して建築確認を留保することが適法かが問題となる。
 この点は、行政指導を理由に建築確認を遅延させることは直ちに違法ではないとされている(判例)。しかし、申請者が行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず行政指導を継続し建築確認を留保することは、任意の協力を求めるという行政指導の性質(行手法32条1項参照)に反し、違法である(同33条)。甲県という地方公共団体の行政指導には行手法は適用されないが(行手法3条3項)、同内容の行政手続条例があるからこの議論が当てはまる。
 本件ではAは出店計画を一切変更するつもりがないことをはっきりと言っているので、「行政指導に従う意思がない旨を表明」している。
 したがって、Aに対してこれ以上の行政指導を続け、建築確認を留保することは違法である。  以上

事例研究行政法第2版 第1部問題3 指定医師の指定取消しをめぐる紛争

設問1
 Xは、甲県医師会会長を被告として、指定医師の指定の取消処分の取消訴訟を提起すべきである。
設問2
1 実体法上の違法事由(比例原則違反)
(1)Xの主張
 Xは、たった2例と少なく、かねてよりのXの人工妊娠中絶反対の主張につじつまを合わせようとしたもので悪質でない人工妊娠中絶の届出義務違反により、指定医師を取消されるのは比例原則に違反すると主張すべきである。
 比例原則とは、行政処分が行われるのは必要な場合でなければならないという必要性の原則と、必要な場合であっても目的と手段が比例していなければならないという過剰規制の禁止を内容としており、元来は警察権の行使の場合に用いられていたが、現在は権力的な行政行為一般に妥当するものと解されている。
 Xは、かねてより人工妊娠中絶反対を公言していたのであり、そのこととつじつまをあわせるために問題とされた届け出義務違反を行ったのであり、悪質性がない。また、違反の回数も2例と少ない。加えて、人工妊娠中絶自体は母体保護法の要件を満たしている。そうすると、取消処分の必要性がない。仮に必要性を肯定したとしても、警告、停止(規則15条本文)等、打撃緩和措置を採り得るのであり、突然に取消すという手段は均衡を失している。
(2)反論及び結論
 反論として、人工妊娠中絶の届出義務は指定医師としての最も基本的な義務の一つであり、これを履行しないのは重大な義務違反である。このような重大な義務違反が2例もあり、しかも過失によるものではなく故意によるものであるから、悪質性が大きい。したがって、比例原則に反しないというものが考えられる。
 しかし、25条違反は罰金で処理されるのが法で予定されていることからすれば(32条)、25条違反は被告の主張するほどに重大な義務違反とは到底考えられない。Xに対してなんらの打撃緩和措置を採らずに指定を取り消すのは明らかに均衡を失している。
 したがって、Xの主張は認められる。
2 手続上の違法事由
(1)聴聞手続の欠缺
 指定医師の取消しは不利益処分(行手法2条4号)に当たるから、原則として聴聞手続(同13条1項)が必要である。しかし、本件では聴聞手続きがなされていないから、違法である。聴聞手続きがあれば本件のような明らかな比例原則違反の処分はなされなかったと考えられるから、かかる手続違背は取消事由となる。
 これに対して、被告はXに事実関係を確かめたことを主張するかもしれないが、法定の様式(15条)にのっとっていないため、聴聞に当たらない。また、手続違反が取消事由にならないことも主張しうるが、聴聞手続きを欠くことは重大な違法であるから、認められない。
(2)理由の不備
 指定取消しの通知書に書かれた理由は不備であり、違法(行手法14条)である。理由付記の趣旨は行政庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制し、不服申立ての便宜を与えることである。侵害処分に対しては、特段の事情のない限り、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用したかを処分の相手方が記載自体から知り得ることが必要である。本件の記載は適用条文が書かれているが、適用の号が書かれていないため、Xは問題の人工妊娠中絶がどの違法事由として評価されたのか記載自体から知ることができない。
 しかし、適用条文は記されているから、この程度で恣意の抑制と不服申し立ての便宜を図る趣旨は達成されている。その事実関係のあてはめは聴聞手続き等で示されれば足りると解され、号数までをする必要はない。
 したがって、行手法14条違反は認められない。  以上


事例研究行政法第2版 第1部問題2 予備校設置認可をめぐる紛争

設問1
1 取消事由のついて
 Xは取消事由として行手法5条違反を主張できるか検討する。
 同条は申請に対する処分に適用される(申請と処分の定義について行手法2条2号、3号)。Xが行った学校教育法(以下「法」)4条の認可の法的性質は、都道府県教育委員会が無認可の各種学校に教育中止命令をだすことができ(法136条2項)、その命令は罰則で担保されている(法143条)から、処分(行手法2条2号)である。そしてXの申請は、中止命令を出されずに教育をするという利益を付与する処分を求めるものであり、法4条より都道府県知事に応答義務が課せられていると解されるから、申請(行手法2条3号)に当たる。したがって、本件には行手法5条が適用される。
 行手法5条は1項で審査基準を定めることを行政庁の義務として定め、同3項で審査基準の公表義務を定めている。本件でXはY県の担当部署に審査基準がないか問い合わせた際、ないと返答を受けたため、この返答が真実ならば5条1項違反であり、この返答が真実でなくても公表されていなかったと認められるから5条3項違反である。
 もっとも、行手法違反があってもそれが取消事由となるかを検討しなければならない。手続法違反があっても、当該手続きを行ったとしても結果が変わらなければ取消事由とするほどの重大な瑕疵ではないと考えられるからである。しかし、「地元予備校間での過当競争を防ぐための適正配置」が考慮されることが知らされていれば、Xとしては定員の削減などの対策をとることが現に可能であったのだから、審査基準を知らされていたならば本件の不許可処分は出されなかった可能性がある。
 したがって、本件の手続法違反は取消事由となる。
2 X勝訴の場合のY県知事の義務
 取消判決は処分庁を拘束する(行訴法33条1項)。そのため、Y県知事は、審査基準を定め、又はすでに定められている審査基準を公表して、改めてXの申請に対する処分をしなければならない(同33条2項)。
 許可処分が義務付けられるわけではない。Xは、勝訴判決により許可処分を確実に得たいならば許可の義務付け訴訟を併合提起すべきである(同3条6項2号、37条の3第3項2号)。
設問2
1 取消事由について
 都道府県知事が各種学校を認可するための要件は法に規定がないから、都道府県知事の裁量事項であるが、まったくの自由裁量ではなく、法の目的に拘束される。そして、実際に都道府県知事の判断過程で当然尽くすべき考慮を尽くさず、または本来考慮すべきでない事情を考慮に入れもしくは過大に評価すべきでない事情を加重に評価した場合には、その判断過程に誤りがあり違法となると解する。
 法4条の認可をするにあたり考慮すべき事情は同法には規定がないから省令を参照する。各種学校規定(以下「省令」)2条は、各種学校の水準の維持、向上を図る努力義務を定めている。ここでいう水準とは教育水準であることは明らかである。そうすると、省令の生徒数(4条)、入学資格(6条)、教員数(8条)の定めはいずれも一定の教育水準を確保する目的と解される。また、省令9条は保健衛生に言及しているから、教育水準維持とともに保健衛生確保の目的も考慮しうる。
 本件で考慮されたのは「地元予備校間での過当競争を防ぐための適正配置」であり、教育水準維持とも保健衛生確保とも異なる。したがって、本件の都道府県知事の判断は本来尽くすべき教育水準維持や保健衛生確保の考慮を尽くさず、本来考慮すべきでない予備校間の適正配置を考慮に入れたものであり、判断過程に誤りがある。
 したがって、本件処分は違法である。
2 Y県知事の義務について
 取消判決は処分庁を拘束する(行訴法33条1項)。そのため、Y県知事は判決の趣旨に従い、予備校の適正配置を考慮せずに改めて申請に対する処分をしなければならない(同33条2項)。同条により、Xは改めて申請をする必要はない。
 許可処分を得たい場合に義務付け訴訟を併合提起すべきことは設問1と同様である。 以上

事例研究行政法第2版 第1部問題1 ソーラーシステム設置の補助金をめぐる紛争

設問1
1 Aの主張の法的根拠
 Aの主張は法律の留保原則に基づくものと考えられる。法律の留保とは、一定事項について行政行為をするには法律の根拠が必要であるという原則である。一定事項とは何なのかについて、種々の見解があるが、主なものは自由主義の観点から国民の権利利益を侵害する行政行為と解する侵害留保説と、自由主義に加えて民主主義の観点から基本権の実現について本質的な事項と解する重要事項留保説である。Aとしては、重要事項留保説を採用し、補助金の交付は給付を受けるという重要事項だから法律事項であると主張したい。
2 Y市長の反論
これに対してY市長は、侵害留保説に立ち、補助金の交付は国民の権利利益を侵害する行政行為ではないから法律の根拠は不要と主張したい。内閣法11条は侵害留保説を前提としていると解されるから、この反論は認められやすいと考えられる。
設問2
 処分(行訴法3条2項)とは、国又は公共団体の行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定することが法律上認められているものを言う。この定義から、処分の要件は@公権力性、A法効果性、B具体性(紛争の成熟性)と解される。
 Y市としては、補助金の交付はY市と住民との契約関係であるから、@を欠くと主張しうる。しかし、条例には「申請(3条)、決定(4条)、決定の取消し(6条、11条)という処分について用いられるのと同様の文言が用いられている。また、交付決定の取消しには理由の提示が求められているが(条例14条)、ここからは交付決定の取消しを行手法上の不利益処分とする立法者意思が看取される(行手法14条参照)。そのため、本件決定には@公権力性があると解すべきである。
 ABが認められることは明らかである。
 したがって、本件決定は処分に当たる。
設問3
1 Bの主張
 Bは@資料1の補助金交付要綱(以下「要綱」3条)の補助対象者に該当するにもかかわらず補助金の交付を受けられないのは要項3条に違反すること、及びA同じ条件のCが交付決定を受けて自分が受けないのは平等原則(憲法14条)違反であることを主張しうる。
 なお、手続違反を主張したいが、本件決定は規則に根拠を置く地方公共団体の処分であるから行手法の適用がなく(行手法3条3項)、行手法違反は主張できない。
2 Y市の反論
 @についいては要項3条は要項1条の目的の範囲内で適用される条文であり、要項1条の目的には「予算の範囲内において」とあるのであるから、予算が尽きた以上3条の適用はないと反論できる。
 Aについては以下のように反論できる。平等原則の適用に当たってはどこに基準(ベースライン)を設定するかが重要である。Bの主張は、給付を受けうる地位がベースラインとなることを前提としている。しかし、本件の補助金は行政府が政策的に恩恵として与えているものであり、補助金を受けられないのが原則であるから、ベースラインは補助金を受けられないことに設定すべきである。そして、Bは、6月以降に申請をしたすべての者と平等に補助金を受けられないだけでえあるから、平等原則違反はない。  以上

ファン
検索
<< 2016年05月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
最新記事
写真ギャラリー
最新コメント
タグクラウド
カテゴリーアーカイブ
プロフィール
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。