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2016年02月14日

国際私法 平成27年度第1問

設問1
 夫婦財産制は26条による。同条1項は婚姻の効力に関する25条を準用している。この趣旨は、法令が夫の国籍に連結していたのを両性平等の見地から改め、また、複数の当事者間に同一の法令を適用する必要から、段階的連結を定めたことである。もっとも、夫婦財産制の場合には、量的制限の定めはあるが私的自治が認められている(26条2項)。2項の趣旨は、国際私法の国際的統一の観点及び再密接関係地の認定が困難であることへの配慮である。量的制限があるのは、夫婦財産制は夫婦共同体との関連が強いためである。また、基準時については明文がないが、26条も25条も変更主義を採用している。すなわち、準拠法変更が生じた場合、その効力は将来に向かってのみ生じ、変更前までの夫婦財産関係についての規律については変更前の準拠法による。そのため、回答は以下の通りになる。
(1)A建物について
 26条1項に基づき、1995年時点の共通本国法である甲国法が適用される。
(2)B土地について
 26条1項の適用によれば、2010年時点の共通本国法である甲国法が適用されることになる。
 しかし、反致(41条)が適用されないか。反致の理論的根拠として、抵触規則も含めて指定するという総括指定説は、無限の循環が生じるため妥当でない。また、当該国が管轄を放棄しているという棄権説も主権理論を前提とするため妥当でない。実質的根拠として、内国適用拡大という見解は国際主義に矛盾するため妥当でなく、国際的判決調和という見解は反致で指定された国も反致を定めていれば調和しないから妥当でない。結局反致の理論的正当化は難しい。
 ともあれ、甲国法はXYの本国法だから、「当事者の本国法によるべき場合」(41条)に当たる。「その国の法」(41条)の「法」とは国際私法を指すところ、甲国国際私法@は第一段階として夫婦の同一常居所地法を指定している。常居所とは、居所よりも長い期間居住する場所をいうところ、XY夫婦はB土地を取得した2010年の時点で10年間日本で生活しているから、XY夫婦の常居所地法は日本法である。そうすると、「その国の法に従えば日本法によるべきとき」(41条)に当たる。
 したがって、41条の適用により、日本法が適用される。
(3)C土地について
 2012年時点の共通本国法である日本法が適用される。
設問2
1(1)夫婦財産契約の効力は夫婦財産制と性質決定できるから26条による。
(2)本件の夫婦財産契約は婚姻後来日前に締結されているから、XYの共通本国法は甲国法である。そのため、甲国法が準拠法となる。甲国民法Bは夫婦財産契約の締結を認めている。
(3)したがって、A建物の所有権はXの特有財産となりうる。
2(1)また、書面により締結していたという方式の有効性は34条による。
(2)同条は、方式が実質的要件と密接に関連することから、「当該法律行為の成立について適用すべき法」を準拠法としている。そのため、本件では甲国法が準拠法となる。甲国民法Bは方式として書面を要求するのみであり、本件の契約は書面でされている。
(3)したがって、方式は有効である。
3 以上より、本件の夫婦財産契約の通り、A建物の所有権はXの特融財産となりうる。
設問3(1)
1 本件の合意に26条2項が適用されるか検討する。まず、本件合意は「夫婦が、その署名した書面で日付を記載したもの」(26条2項)に当たる。そして、来日直後にはXとYの本国法は甲国法であったから、甲国法は「夫婦の一方が国籍を有する国の法」(同1号)に当たる。
2 したがって、この合意のとおり、甲国法が適用される。
設問3(2)
1 XY夫婦は1つの契約で異なる準拠法を選択しているが、このような分割指定が許されるか問題となる。思うに、国際的な強行法規の回避をいわゆる特別連結にゆだねるべきである以上、当事者自治の原則の帰結である分割指定を否定する理由はない。しかし、相互的な権利義務関係を切り離すような指定を認めるべきではない。そこで、契約の現実的な実現可能性を要件として、分割指定を認めるべきと解する。
2 本問でも26条2項該当性を検討するに、26条2項本文の要件は(1)と同様にあてはまる。そして、「日本に所在する土地」(契約の文言)は「不動産に関する夫婦財産制」(26条2項3号)に当たる。また、「日本法」(契約の文言)は「不動産所在地法」(26条2項3号)に当たる。そして、日本に所在する土地についてのみ他と切り離して日本法とすることで特に相互的な権利義務関係が切り離されることはないから、本件契約は実現可能である。
3 したがって、B土地の所有権については日本法が適用される。 以上

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国際私法 平成26年度第1問

設問1
1(1)離婚の届出は方式の問題だから34条によるところ、同条は方式を「当該法律行為の成立について準拠すべき法」によらしめているから、先決問題として離婚準拠法が問題となる。先決問題は本問題の準拠法によるのでも本問題の準拠法が所属する国の国際私法が指定する準拠法によるのでもなく、法廷地たる日本の国際私法が指定する準拠法による。
(2)日本の国際私法27条本文は25条を準用しており、25条は夫の本国法に連結していた法令の規定を両性平等の見地から改め、また夫婦に共通の準拠法を定める必要から段階的連結を定めている。但書は戸籍管掌者の便宜から日本法に連結している。すなわち、戸籍管掌者には形式的審査権限しかないところ、第3段階の最密接関係地の認定は戸籍管掌者には難しいからである。そのため、但書の文言上はすべてに優先するように読めるが、但書は最密接関係地に優先するに過ぎない。
(3)本件では、Pの本国法は甲国法であり、Qの本国法は日本法だから、共通本国法では連結しない。共通常居所地法(常居所とは、人が居所よりも長期間生活する地)は、PQは婚姻後5年間甲国で生活していたから、甲国と考えられる。そのため、離婚準拠法は甲国法である。
(4)そうすると、34条1項に基づき、離婚の方式の準拠法も甲国法となる。そのため、Qの届出を受けた日本の戸籍管掌者は、原則として受理しなければならない。
2 しかし、甲国法の適用が公序に反する場合は、甲国法の適用を排除することができる(42条)。要件は、@適用結果の異質性及びA内国関連性である。ここで@はあくまでも適用結果の異質性であって、適用する法自体の異質性を考慮する要件である。国際主義の観点から、日本の裁判所は外国法自体の良し悪しを判断できないからである。
 本件では、PとQは離婚に合意しているから、PとQを離婚するという甲国法の適用結果が異質であるということはない(@不充足)。
 したがって、Aを検討するまでもなく、適用結果は日本の公序に反しない。
3 したがって、PとQの離婚は日本において効力を有する。
設問2(1)ア
1 協議離婚の可否は離婚の問題と性質決定されるから27条による。同条の連結点と趣旨は前述のとおりである。
2 本件では、PとRに同一本国法は存在しない。同一常居所地は日本と解されるから、日本法による。日本の民法763条は協議離婚を認めている。
3 したがって、PとRは協議離婚をすることができる。
設問2(1)イ
1 面会交流の可否をどのように性質決定すべきか。離婚の効力とすることが考えられる。しかし、面会交流は子の利益にも資するから、夫婦間の利益だけを考慮した離婚の規定を使うのは妥当でない。親子間の法律関係とみて、32条によるべきである。
2 32条は法令が父の本国法としていたのを両性平等の見地から改め、また、複数の当事者間で同じ法律を適用する必要から、段階的連結を定めている。但書は子の常居所に連結している。この規定の趣旨は、両親が離婚した場合の戸籍事務の便宜である。
3 本件では、Cの本国法は甲国法であり、Pと同一だから、甲国法による。甲国法Cは、子は常に父の親権に服するとするから、本件でCの親権はPにあり、したがって、Pは常に面会交流できる。
設問2(2)
1 親権の有無は32条による。前述のように、同条を適用した結果、本件ではCの親権はPにある。
2 しかし、Pは服役中であるから、この適用結果は異質であり、内国関連性も大きいから、公序(42条)に反すると判断できる。
3(1)そうすると、42条で甲国法の適用を排除した効果が問題となる。この点について、法の欠缺が存在すると解し、内国の適用を拡大する見解がある。しかし、公序則を発動した時点ですでに結論は出ているから、法の欠缺は生じていないと解する。
(2)本件では、Pの親権を否定した場合、Rに親権があると考えるほかない。
4 したがって、日本の裁判所はRを親権者として指定することができる。 以上

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2016年02月13日

国際私法 平成25年度第1問

設問1(1)
1 共同養子縁組の必要性は養子縁組の問題と性質決定されるから、31条による。
2 31条1項は養子縁組を養親の国籍に連結している。養子縁組で考慮すべきは子の利益だから子の本国法とすることも考えられるが、養親子関係は養親の本国で営まれることが多いこと及び養子縁組により養子に養親の国籍を付与する国が多いことから、養親の本国法主義が採用された。
 本件では養親となるべきHの国籍は日本だから、日本の民法による。民法795条本文は、配偶者のある者が未成年者を養子とする場合に共同養子縁組を要求しており、同条但書は配偶者の嫡出子を養子とする場合には共同養子縁組を不要とする。
3(1)そこで、まずCがWの嫡出子か否かが問題となる。嫡出子とは、国際私法上、婚姻した夫婦から出生した子と解する。そうすると、Cはそれにあたらない。したがって、但書は適用されない。
(2)そうすると、次にCが未成年者か否かが先決問題となる。先決問題は本問題の準拠法によるのでも、本問題の準拠法が所属する国の国際私法が指定する準拠法によるのでもなく、法廷地である日本の国際私法により定まる準拠法による(H12.1.27)。日本の国際私法上、未成年者か否かは人の行為能力の問題と性質決定されるから、4条による。同条は、この問題について本国法主義をとる大陸法の伝統にしたがったものであり、譲許粗糖に比べて確認が容易であるという合理性がある。同条2項は取引安全に配慮している。
(3)本件では、Cは7才であり、日本法上未成年者である(民法4条)。
4 したがって、民法795条に基づき、共同養子縁組が必要である。
設問1(2)
1 養子縁組が日本の戸籍管掌者への届出によって方式上有効に成立するか否かは、養子縁組の方式の問題と性質決定されるから、34条による。同条1項は、方式が実質的成立要件と密接に関連するから、成立について適用すべき法によるとしていると解する。同条2項は、養親が異なる国籍を有している場合、片方の方式を履践することが困難なことにより養子縁組が成立しにくくなり、結果として子の利益に反することを防ぐため、行為地法に適合する方式を有効としているものと解する。
2 本件では、同条1項に基づき、「養子縁組の成立について適用すべき法」は、日本法及び甲国法である。同条2項に基づく「行為地法」は日本法である。
(1)Hとの縁組は日本法によるから、日本の戸籍管掌者への届出によって方式上有効に成立する(民法799条、739条1項)。
(2)Wとの縁組は1項に基づけば甲国法によるが、甲国民法Bによれば甲国の戸籍管掌者への届出が必要である。しかし、2項に基づき、行為地法である日本法に適合する方式として、日本の戸籍管掌者への届出は有効である。
3 したがって、日本の戸籍管掌者への届出により有効に成立する。
設問2(1)
1 Cが養子縁組により嫡出子となるか否かは養子縁組の効力の問題と性質決定される。31条1項は「養子縁組の要件は」ではなく「養子縁組は」と規定しているから、同条は養子縁組の効力についても定めていると解される。そのため、31条により、養父子間と養母子間のそれぞれで嫡出子となるかを判断する。
2(1)まず、Wの本国法である甲国民法Cによれば、CはHとWとの共同養子縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。
(2)次に、Cの本国法である日本の民法809条によっても同様に、Cは縁組の日から嫡出子の身分を取得する。
3 したがって、Cは嫡出子である。
設問2(2)
1 親権は親子関係の問題と性質決定されるから32条による。
2 32条1項は、法令が父の本国法に連結していたのを両性平等の見地から改め、また、子の保護の趣旨から、父または母と同一である子の本国法に段階的に連結している。同条2項は、両親が離婚した際の戸籍記載の便宜から、子の常居所地法を第2段階としている。
3 本件は、CとHの国籍が同一だから、日本法による。民法818条3項は、父母の婚姻中は父母が共同して親権を行使することを定めている。そうすると、HとWが婚姻しているか否かが先決問題となるが、法廷地法である日本法上、HとWの婚姻は有効に成立している(問題文)。
4 したがって、Cの親権を行使するのはH及びWである。
設問2(3)
1 親子間の扶養義務の有無には通則法は適用されず(43条1項)、扶養準拠法による。同法2条は、原則として扶養権利者の常居所地法を準拠法とする。この趣旨は、それによってこそ扶養権利者の需要に応じることができること、私的扶養と同一の準拠法に依拠させることで制度間の調和が図れることである。2条1項但書と同2項では、扶養権利者保護のためさらに2段階の補正的連結を定めている。したがって、「扶養を受けることできないとき」(1項但書、2項)とは、法律上扶養義務が課せられていない場合や個別的に裁判により義務を果しえない場合をいい、事実上扶養を受けられない場合を含まない。
2 本件では扶養権利者であるCの常居所(居所よりも長期間生活している場所)は日本と解されるから、日本法による。民法877条1項によれば、直系血族は互いに扶養する義務があり、CとHは親子であるから(民法727条)日本法上直系血族である。
3 したがって、HはCの扶養義務者である。

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2016年02月09日

国際私法 平成19年度第2問

問題文
 Yは甲国に主たる事業所を有する世界有数の医薬品製造販売業者である。Yはその製造する医薬品Aを甲国だけでなく、乙国等多くの国においてそれらの国に所在する事業所を通じて販売している。医薬品Aは日本の薬事法上の承認を受けておらず、Yは、日本に事業所を通じて販売している。医薬品Aは日本の薬事法上の承認を受けておらず、Yは、日本に事業所も担当者も置いていない。Xは日本に常居所を有する日本人である。以上の事実を前提として以下の設問に答えよ。
 なお、各設問はいずれも独立した問いであり、本件には、法の適用に関する通則法(平成18年法律第78号)が適用されることを前提とする。
〔設問〕
1.Xは、乙国に赴いた際に、日本では購入できない医薬品Aが売られていたので、乙国でこれを購入した。Xは、日本に帰国後、医薬品Aをしばらく服用していたが、体調が悪くなったため、病院で精密検査を受けたところ、医薬品Aの副作用の結果であることが判明し、日本の病院で乳通院を余儀なくされた。
(1)XはYに対し、入通院に要した費用等の損害賠償を求める訴えを日本の裁判所に提起した。日本の裁判所はこの訴えについて国際裁判管轄権を有するか。
(2)XのYに対する損害賠償請求に適用される法はいかなる国の法か。
2.乙国に常居所を有するZは、医薬品Aを大量に購入し、それが医薬品として承認されていない国々の居住者に対しても販売している。Xは、インターネットを利用してZから医薬品Aを購入し、郵送によって受領した。Xが医薬品Aをしばらく服用したところ、その副作用のため健康を害し、日本において入通院を余儀なくされた。XのYに対する入通院に要した費用等の損害賠償請求に適用される法はいかなる国の法か。

回答
設問1(1)
1 日本の裁判所が管轄権を有するか否かは民訴法3条の2以下の規定による。
2 3条の4第1項に基づき管轄が認められないか問題となり得る。同条は事業者と消費者の訴訟追行能力の差を考慮して、3条の2以下の他の規定と重ねて特に消費者を保護するために設けられた規定である。しかし、同条項は消費者と事業者との間で締結される契約に適用されるところ、本件で消費者Xは事業者Yとではなく乙国の販売店と売買契約を締結しているので、適用対象外である。
3 3条の3第8号に基づき管轄が認められないか。同条の「不法行為」とは国際私法上の概念であり、違法な行為によって他人に損害を与えた者が被害者に対してそれを賠償すべき債務を負う法律関係をいう。YはAの副作用という違法な行為によってXに入院に要した費用等の損害を与えたから、XY間の法律関係は「不法行為」に当たる。そして同号の「不法行為があった地」とは、加害行為地だけでなく結果発生地も含むと解されている。この趣旨は、不法行為地には証拠が存在する蓋然性が大きく、被害者保護に資する場合が多いからである。もっとも、不法行為が偶発的出来事であることから、加害者の予測可能性も考慮すべきであり、この趣旨で8号カッコ書きが定められている。結果発生地たる日本で訴えが提起された本件のような場合には、日本における結果発生が「通常予見することのできないもの」であるか否かが判断される。
 本件は、医薬品Aは日本の薬事法上の承認を受けておらず、Yは日本に事業所も担当者も置いていないことが、日本国内における結果発生が「通常予見することのできないもの」であることを立証する間接事実となる。一方、Yは世界有数の医薬品製造販売業者であること、Yはその製造する医薬品を甲国だけでなく乙国等多くの国においてもそれらの国の事業所を通じて販売していることは、「通常予見することのできないもの」であることを否定する間接事実となる。一般にある医薬品が未承認国の国民でも、承認国の国でそれらを買うことは容易な場合には、客観的に見て未承認国において副作用が発症する可能性はあるのだから、乙国でAの購入がXにも容易な状態で販売していたYは、Xの本国である日本で副作用が発症することを予見すべきである。そのため、本件は「通常予見することのできないもの」であるとは言えず、副作用という結果発生地すなわち「不法行為があった地」が「日本にあるとき」の要件を満たす。
4 3条の9で考慮されるべき特別の事情は認められない。
5 したがって、日本の裁判所は管轄権を有する。
設問1(2)
1 XのYに対する損害賠償請求は前述の不法行為に基づくものだから、通則法17条以下による。
2 AはYによって「生産され…た物」だから「生産物」(18条)に当たり、AはXに引き渡されているから「引渡しがされたもの」に当たる。「瑕疵」とは物が通常有すべき性質を有していないことを指し、Aの副作用はこれに当たる。そのため、本件は18条が適用される。
 同条の趣旨は以下のとおりである。生産物は性質上転々流通するから、17条によれば結果発生地が過度に広がるとともにそれが偶然に決定される可能性があり不都合である。そこで通則法は、生産者と被害者の接点であり、双方の利益のバランスをとることができるという観点から、生産物責任の準拠法を「市場地」法とする考え方を採用している。「市場地」の具体的内容は、本文では被害者保護の観点から引渡地とし、但書では生産業者と被害者の利益のバランス等の要請から主たる事業所所在地法としている。
 本件では、被害者Xが「引渡を受けた地」(18条本文)は、現実の引渡しを受けた乙国である。乙国ではAは承認されているから、乙国での引渡しは「通常予見することのできないもの」(18条但書)に当たらない。
そのため、乙国法が準拠法となる。
3 20条(例外条項)は明らかにより密接な関係がある地がある場合に例外的に当該地の法律を適用するとしているが、本件ではそのような地は見当たらない。
4 22条(特別留保条項)は日本法の重畳適用を定めている。同条は不法行為が日本の公序に関わることがあるため定められているが、不法行為は公益よりも私人間の利益調整の観点から把握されるのが最近の傾向だから、その合理性には疑問がある。
 この規定により、日本法も準拠法となる。
5 以上より、乙国法及び日本法が準拠法となる。
設問2
 XのYに対する入通院に要した費用等の損害賠償請求は不法行為の問題と性質決定され、前問と同じく生産物責任の問題だから18条による。
 本問はインターネットを通じた売買契約であり、引渡地と受領地が異なる。そのため、「引渡しを受けた地」の解釈が問題となる。前述のように、18条は生産者の予見可能性と被害者の保護との調和の観点から「市場地」法を準拠法としているのである。そして、一般的にインターネット販売のような隔地的取引の場合、消費者は世界中からアクセスするため予見不可能だから、販売場所が「市場地」となると解する。
 したがって、本件では受領地たる日本ではなく、引渡地たる乙国の法が準拠法となる。
以上

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2016年02月08日

国際私法 平成24年度第1問

問題文
 甲国人夫A及び甲国人妻Bは、20年前に来日し、以後、日本において生活をしていた。Aは、来日後しばらくして知り合った甲国人女性との間に子Xを設けたが、Xを認知していなかった。Xが出生以来日本において生活をしている甲国人であるとして、以下の設問に答えなさい。
 なお、甲国法は、日本の後見及び補佐に相当する制度を有するほか、次の@からBの趣旨の規定を有している。
@子は、父の死亡を知った日から2年以内に限り、検察官を被告として認知の訴えを提起することができる。
A認知をするには、父が被後見人であるときであっても、その後見人の同意を要しない。
B夫婦の一方が被後見人となったときは、他の一方はその後見人となる。
〔設問〕
1.Aは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況に陥った。本設問1との関係では甲国の国際私法からの反致はないものとして、次の問いに答えなさい。
(1)Bの請求により、日本の裁判所がAにつき後見開始の審判をする場合、いかなる国の法を準拠法とすべきか。
(2)Aにつき後見開始の審判をした場合、日本の裁判所は、いかなる国の法を準拠法としてBを後見人として選任することができるか。
(3)日本の裁判所がAの後見人としてBを選任した場合、AによるXの任意認知につき後見人Bの同意は必要か。
2.Aは、その後、Xを認知することなく死亡し、Xは、Aの死亡を直ちに知った。Xは、Aの死亡後2年6月を経過した時に、検察官を被告として日本の裁判所に認知の訴えを提起した。甲国の国際私法P条が、「父による子の認知は、出征当時の父の本国法、認知の当時における父の本国法又は子の本国法若しくはその常居所地法による。父が認知前に死亡したときは、その死亡の当時におけるその本国法を父の本国法とする。」と規定しているとすると、この訴えは適法か。

回答
設問1(1)
 後見開始の審判の準拠法は5条により、日本法となる。5条は、事理弁識能力を欠く要保護者が@日本に住所又は居所を有するとき、およびA日本国籍を有するときには、後見開始の審判等につき日本の裁判所が管轄を有することを定めている。5条により日本の裁判所に管轄が認められた場合には、法定地法として日本法が適用される。この趣旨は、非訟事件特有の実体法と手続法の密接な関係を考慮し、的確な保護措置が行われるようにすることである。
 本件は、5条により日本の裁判所に管轄権が認められたと考えられるから、法定地法たる日本法が準拠法となる。
設問1(2)
 後見人の選任は後見等がいかに実現されるかの問題と性質決定されるから35条による。そもそも5条に基づき日本で後見開始の審判が行われる場合、その後に誰を後見人とするか等も日本法を適用するほうが円滑である。そのため、35条2項2号は日本において後見開始の審判等があったときには、後見人の選任等の審判にも日本法を準拠法としている。
 本件はAについて日本法で後見開始の審判があったのだから、35条2項2号によりBを後見人として選任する審判は日本法による。
設問1(3)
1 被後見人Aが認知するにつき後見人Bの同意が必要か否かは非嫡出親子関係の成立の問題だから29条による。同条は1項は父との間の親子関係の成立について、子の出生当時の父の本国法(1項前段)、認知当時における父の本国法、及び認知当時における子の本国法(以上2項前段)を定めている。これは、できるだけ親子関係を成立させることが子の保護に資するから、選択的連結と解する。
 もっとも、29条1項後段や2項後段は認知当時の子の本国法によれば第三者の同意が必要なときはその要件も備えなければならないとしている。これは、いわゆるセーフガード条項であり、将来扶養してもらうことを期待して認知するような子にとって望ましくない認知から子を保護するための規定と解する。
2 本件では、Xの出生当時のAの本国法は甲国法であり、認知当時のXの本国法及び認知当時のAの本国法のいずれも甲国法であるから、1項前段、2項前段のいずれによっても準拠法は甲国法となる。甲国法Aによれば、認知をするのに後見人の同意は不要である。
3 したがって、Bの同意は不要である。
設問2
1 認知の訴えの国際裁判管轄については明文がなく(人事訴訟法29条1項)判例もないから条理による。条理の内容は、認知は主に子の保護のための制度だから、子の保護に資するように解釈すべきである。そうすると、本件のような死後認知は被告の住所を考慮する必要がないため、原告Xの住所地の裁判所すなわち日本の裁判所が管轄権を有する。
2 認知の訴えの準拠法は、前述のように甲国法である。もっとも、甲国の国際私法P条は認知当時の子の常居所地法をも選択的に準拠法と認めており、この規定を反致(通則法41条)の規定とみて日本法が適用されないか。
 反致の実質的根拠として内国適用拡大と国際的判決調和がいわれるが、前者は国際主義に矛盾し、後者は相手国も反致の規定を設けていれば調和しないから、根拠づけは難しい。41条後段が段階的連結の場合に反致の適用を排除しているのもそのためと考えられる。そこでさらに進んで、本件の29条のように選択的連結の規定で相手国の法が準拠法とされた場合は反致されないと解すべきである。なぜなら、選択的連結の規定により相手国に送致された場合は、日本の国際私法上、最密接関係地法の最終的決定と解されるからである。
 本件では、反知がされない結果、甲国法が準拠法となり、甲国法@は死後2年以内でないと認知の訴えを認めないから、訴えは不適法である。
3 この適用結果は日本の公序(42条)に反しないか。42条は適用結果の異質性と内国関連性の強さを考慮して外国法の特定の適用結果を排除する規定であるが、死後2年間で認知の訴えを提起させるのはその限りで法的安定性と子の保護の調和を図ったのであり、その適用結果は異質とは言えないし、内国関連性も大きいとは言えない。
 したがって、42条も適用されない。
4 以上より、この訴えは不適法である。  以上



国際私法 平成23年度第1問

問題文
 共に甲国人である夫Aと妻Bは、出生以来甲国のP地域に居住していたが、観光のために来日した。来日した翌日、滞在しているホテルの前の横断歩道を横断中、日本に居住する日本人Yの運転する自動車が、信号が赤であるにもかかわらず交差点に進入し、AとBはYの車にはねられて死亡した。両者の死亡の戦後は明らかでない。後日、事故当時甲国のP地域に居住していたAの父Xが来日し、Yに対して損害賠償を求める訴えを日本の裁判所に提起した。
 AとBの婚姻及びXとAの父子関係は有効に成立しているものとし、かつ、甲国は法を異にするP地域、Q地域、及びR地域からなる国であるが、これらの地域の間で生ずる方の抵触を解決するための規則は同国にはないものとして、以下の設問に答えなさい。
 なお、P地域の法(以下「P法」という。)は次の趣旨の規定を有している。
@債権の法定相続については、死亡当時における被相続人の常居所地法による。
A夫婦のうちの一人がその配偶者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、夫婦は双方とも同時に死亡したものと推定する。
B他人の生命を侵害した者は、被害者の近親者に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、その損害の賠償をしなければならない。
C慰謝料請求権を譲渡又は相続することはできない。
D配偶者、子及び直系尊属が第1順位の相続人になる。
〔設問〕
1.Xは、AがYに対して有する損害賠償請求権を相続にいより取得したとして、Yに対して損害賠償を求めている。
(1)Xの相続権の有無を判断するための準拠法を裁判所はP法とした。裁判所がP法を準拠法とするに至った推論の過程を示しなさい。
(2)Xは、「逸失利益の算定方法には、日本法が適用されるので、Aの逸失利益は、甲国におけるAの現実の収入の多寡にかかわりなく、日本の賃金センサス(賃金構造基本統計調査)に基づいて算定されるべきである。」と主張している。この主張の当否を論じなさい。
(3)Xは、「AがYに対して有する慰謝料請求権を相続による取得した。」と主張している。Xは、当該慰謝料請求権を相続できるか。
2.Xは、Aの死亡により自ら精神的苦痛を負ったことを理由に、Aの近親者としてYに対して慰謝料を請求することができるか。
3.Xは、「BがYに対して有する損害賠償請求権を、Aは、Bの配偶者として相続により取得し、かくしてAに帰属した当該請求権を自分はAの直系尊属として相続により取得した。」と主張している。この主張に理由はあるか。Bの本国法は、P法であるとして答えなさい。

回答
設問1(1)
1 Xが本件の権利を行使するためには、@AがYに対して損害賠償請求権を有しており、AそれをXが相続したことが必要だから、それぞれに関して準拠法が問題となる。
2 @について
 AはYに対して不法行為に基づく損害賠償を請求したい。不法行為とは、違法な行為によって他人に損害を与えた者が、被害者に対してそれを賠償すべき債務を負う法律関係を言い、AY間の自動車事故はこれに当たる。この事故による債権の発生は不法行為債権の成立の問題と性質決定されるから17条による。同条は原則として結果発生地法を準拠法としている。これは不法行為地と定めていた法令の規定が加害行為地を意味するのか結果発生地を意味するのかを明確にし、加害行為地の公序の維持よりは損害の公平な分担を重視する趣旨である。
 本件では結果発生地が日本なので、日本の民法によると、709条に基づきAのYに対する損害賠償請求権が観念的に発生している。
2 Aについて
 Xの相続権の有無は相続の問題と性質決定されるから36条による。同条は動産相続と不動産相続を区別しない相続統一主義を採用したうえで、死亡当時の被相続人の本国法を準拠法としている。被相続人の住所地法とするよりも法律関係が安定する利点がある。
 被相続人Aは甲国人だから、Aの本国法は甲国法としたいところだが、甲国は不統一法国であり、かつ、法の抵触を解決するための規則がない。そこで、38条3項カッコ書きに基づき、当事者の最密接関係地法が本国法となる。本件では、AはP地域に居住していたから、P法が本国法である。
3 もっとも、P法@は反致を定めているが、Aの常居所は日本ではなくP国であるから、P法@に基づく反致は成立しない。日本の通則法が反致(41条)を定めているのは、国際判決調和と内国法適用拡大を目指してのことである。
4 したがって、Xの相続権の有無はAの本国法たるP法によって判断する。
設問1(2)
1 「逸失利益の算定方法には日本法が適用される」の部分については、逸失利益は不法行為の成立の問題と性質決定されるから前述のとおり17条により日本法が適用されるため、Xの主張は正当である。
2 「Aの逸失利益は、甲国におけるAの現実の収入の多寡にかかわりなく、日本の賃金センサスに基づいて算定されるべきである。」という部分はどうか。これは逸失利益について適用される日本の民法の解釈になると解する。
 日本の民法は抽象的に同じ属性の人が生きていたとしたらどれほどの収入を得ていたかを判断するから、Xの損害賠償額もそれに従って決める。Aは甲国人であり、甲国のP地域に居住していたのであって、日本へは観光のために来たに過ぎない。そのため、Aの属性の者が生きていたとすれば甲国で収入を得ていたと考えられる。そうすると、賃金センサスも甲国のものに基づいて算定されるべきである。
 したがって、後半部分は正当ではない。
設問1(3)
 慰謝料請求権を相続できるかは相続の範囲の問題だから相続の準拠法による。前述のように本件で相続の準拠法はP法だから、P法の解釈となる。
 P法Cは慰謝料請求権の相続を否定している。
 したがって、Xは本件の慰謝料請求権を相続できない。
設問2
 XがYに対して慰謝料請求権を有するかどうかは不法行為の成立の問題だから17条による。前述のように同条本文は結果発生地法としている。
 そうだとしても、本件で結果発生地はどこだろうか。「結果が発生した地」(17条)とは、現実に法益侵害結果が発生した地または加害行為によって直接に侵害された権利が侵害発生時に所在した地のことをいう。加害行為によって直接に侵害された権利はXの精神的利益であり、Xが精神的苦痛を受けたことを損害結果ととらえると、Xは事故当時P地域に居住していたからP法が結果発生地法となる。
 しかし、このように解すると、不法行為についての準拠法が請求原因の違いでバラバラになるし、加害者にとって被害者の近親者がどこに住んでいるかは予見できないから、加害者の予見可能性も害する。そのため、結果発生地はあくまでも被害者死亡の結果が発生した日本であると解する。したがって、準拠法は日本法である。
 本件では、民法711条に基づき、XはYに対して慰謝料請求ができる。
設問3
 BがYに対して損害賠償請求権を有するか否かは不法行為の成立の問題だから17条により日本法が準拠法となる。日本法上、不法行為が成立するから、BはYに対して慰謝料請求権を有する。
 そして、AがBの配偶者としてBを相続するかどうかは相続人の範囲の問題だから相続の問題と性質決定され、36条により、P法が準拠法となる。P法Dより、配偶者は第1順位の相続人となる。
 もっとも、P法Aは本件のように死亡の前後が不明の場合に同時死亡を推定している。P法の同時死亡の効果は不明だが、論理的に考えて相互に相続は開始しないというべきである。
 そうすると、AがBの損害賠償請求権を相続したという点は正しくない。
 したがって、Xの主張には理由がない。  以上

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国際私法 平成22年度第1問

問題文
 Aは現在15歳であり、日本と甲国の国籍を有している。日本国籍を有する母Mは甲国籍を有する父Fと20年前に日本において婚姻し、両者の間にAが出生した。Aの出生後に勤務地が甲国となったFは、A及びMと共に甲国において家族生活を開始したが、しばらくしてFは急死した。甲国において生計を立てることができなかったMはAを伴い日本に帰国し、日本においてAを養育していたところ、Aが13歳の時、Mもまた死亡した。現在Mの母Xが日本においてAを看護養育している。
 甲国国際私法からの反致はないものとして、以下の設問に答えなさい。
〔設問〕
1.現在、XはAの後見人となることを望んでいる。
(1)日本の裁判所は、Aの後見人としてXを選任するための国際裁判管轄権を有しているか。
(2)日本の裁判所が国際裁判管轄権を有すると仮定した場合に、XをAの後見人に選任するために日本の裁判所はいかなる国の法を適用すべきか。
2.日本の裁判所がXをAの後見人に選任したとする。
(1)Mが甲国において生前親しくしていた甲国人Bは現在日本に居住している。Aを幼児のころから知っていたBは、Xが高齢であることもあり、Aを日本において自己の養子にしたいと望んでいる。AとBとの間の養子縁組についてXの承諾は必要か。
 なお、甲国法によると、「養子となる者が16歳未満の未成年者であるときは、その法定代理人が縁組に承諾しなければならない。」とされている。
(2)AとBとの間の養子縁組が日本において有効に成立した場合、Xの後見は終了するか。

回答
設問1(1)
 未成年後見の国際裁判管轄については明文や判例がないため、条理による。条理の内容として、未成年者の保護の観点が重要である。未成年の保護のためにどのような連結点を定めるべきか。
 準拠法と管轄の並行性を重視すると、通則法35条1項が本国法主義を採っているのに合わせて被後見人の本国の裁判所に管轄権を認めるべきとも思える。しかし、被後見人の保護は生活の本拠である居住地国において最も効果的に行われる。また、後見制度は被後見人と交渉を持つ一般社会の公益維持に奉仕するものである。したがって、被後見人の常居所地国の裁判所に管轄を認めるべきである(家事事件手続法176条参照)。常居所とは、人が居所よりは長期にわたり居住する場所である。
 Aの常居所は日本である。
 したがって、日本の裁判所が管轄権を有する。
設問1(2)
1 まずAが後見人を必要とする未成年か否かをどこの法律で判断するかが問題となる。後述の後見の準拠法に依拠させる考えもあるが、人の行為能力の問題と性質決定されるから4条による。同条1項は人の行為能力について本国法主義をとる。住所に比べて国籍は確認しやすいからである。
 そうすると、日本と甲国の国籍を有するAの本国法はいずれかが問題となるが、38条但書により、片方が日本の国籍なので日本法が本国法となる。日本法上、13歳のAは未成年者なので未成年後見人が必要である。
2 では、いずれの法で後見人を選任すべきか。後見人の選任は「後見、補佐又は補助」(35条1項)と性質決定されるから35条1項による。同条は後見等につき本国法主義をとる。後見は人の身分及び地位に関わるため4条と同じく属人法によるべきだからである。
 本件では前述のとおりAの本国法は日本法である。
3 したがって、日本法を適用すべきである。
設問2(1)
 養子縁組についての未成年後見人の承諾の必要性は養子縁組の問題と性質決定されるから31条によるべきである。同条1項は縁組の当時における養親の本国法に依拠し、さらに部分的に養子の本国法を累積的に適用する。子の福祉の観点から養子の国籍に連結させるべきとも思えるが、縁組成立後は養親の本国で生活するのが一般的であること、養子縁組により国籍を付与する国も多いこと、比較法的にも養親の国籍への連結が多いことから、養親の本国法主義が採用された。1項後段はセーフガード条項である。養子縁組が養子にとっても大きな影響を及ぼすものだから、養子の本国法も一部累積的に適用させ、子の保護に欠けることのないようにしたのである。
 本件は31条1項前段により養親Bの本国法たる甲国法が適用される。そして、Xの承諾の要否については養子Aの本国法たる日本法による。日本の民法上、養子が15歳未満の場合は法定代理人が縁組の承諾をする(民法797条1項)。そして、同857条、820条は未成年後見人に被後見人の監護権を付与しているから、XはAの「法定代理人」(797条1項)に当たる。Aは13歳である。そのため、31条1項後段の「養子となるべき者の本国法によれば…第三者の承諾…があることが養子縁組の成立の要件であるとき」に当たる。
 したがって、Xの承諾が必要である。
設問2(2)
 養子縁組が成立した場合に後見が終了するかどうかは養子縁組の効果の問題とも思えるが、より広い問題であるから後見の終了と性質決定し、35条1項によるべきである。そのため、被後見人Aの本国法である日本法による。
 日本法では未成年後見は未成年者に対して親権を行うものがないときに開始する(838条1号)から、親権を行うものがあるときに終了すると解される。本問では養親であるBに親権があれば、後見が終了することになる。そうすると、養親の親権の有無は親子関係の問題と性質決定されるが、これが後見の終了の先決問題ということになる。
 先決問題は本問題の準拠法によるのでも本問題の準拠法が所属する国の国際私法が指定する準拠法によるのでもなく、法廷地の準拠法による(判例)。通則法32条は子の本国法と親の本国法が同一である場合には子の本国法により、そうでない場合は子の常居所地法によるとしている。親子という複数の当事者間の法律関係だから、段階的連結が採用されている。
 本件では養子Aの本国法は日本法であるが、養親Bの本国法は甲国法であるから、本国法が異なる場合に当たる。そのため32条後段によりAの常居所地法たる日本法が適用される。
 日本法上、前述のように親権を行うものがあるときに未成年後見は終了する。
 したがって、Xの後見は終了する。  以上

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国際私法 平成21年度第1問

問題文
 日本人男Xと甲国人女Yは日本において婚姻し、甲国において婚姻生活を送っていたが、婚姻後しばらくして両者の性格上の相違からその婚姻関係は破たんした。Xは日本に戻り、現在XとYはそれぞれ日本と甲国に居住している。両者がそれぞれの本国において別居を始めて5年を経過したころ、Yは甲国において他の日本人男Aと親しくなり、甲国におけるAとの婚姻生活を望むに至った。そこで、Xとの離婚を決意したYは甲国の裁判所に離婚訴訟を提起した。訴状は、日本と甲国とが締結している司法共助の取決めに従い適法にXに送達された。Xは、急きょ、甲国の弁護士資格を有する者を代理人として選任し、甲国裁判所の国際裁判所の国際裁判管轄を争ったが、甲国裁判所はその管轄を肯定した。そして同裁判所は、12か月以上継続した別居を離婚原因とする甲国の規定を適用して、XとYとを離婚する旨の判決を言い渡した。判決確定後1か月して、YとAは婚姻しようとしている。
 XとYの間に子はない。この事例について、甲国の国際私法からの反致はないものとして、以下の設問に答えなさい。
〔設問〕
1.甲国裁判所の離婚判決の効力を日本で承認するための要件である国際裁判管轄は甲国に認められるか。
2.法の適用に関する通則法(平成18年法律第78号)の下におけるYとAの婚姻の実質的成立要件につき、次の問いに答えなさい。
(1)甲国裁判所の判決が日本において効力を有し、かつ、Yの本国法である甲国法は再婚禁止期間の制度を現在では廃止しているとする。離婚判決の確定後6か月を経過することなく挙行されるYとAの婚姻は有効に成立するか。
(2)甲国裁判所の判決が日本において効力を有せず、かつ、重婚を禁止する甲国の規定は「配偶者のある者が重ねてした婚姻は無効とする」と定めているとして、YとAの婚姻の成立の有効性について論じなさい。
3.婚姻の実質的成立要件が満たされていると仮定して、Aは、Yとの婚姻を挙行するにつき、@甲国の機関の関与の下に甲国法に従い婚姻を挙行した後に、甲国機関の発行する婚姻証明書を甲国に駐在する日本の領事に提出する方法又はA日本法の定める婚姻の届書を甲国に駐在する日本の領事に提出する方法のいずれを採るべきか。

回答
設問1
1 国際裁判管轄が甲国に認められるかは民訴法118条1号を満たすかという問題である。
 そもそも外国の主権の行使である司法権の作用の結果は、当然には日本で効力を有さない。しかし、そうすると日本において再び争うことになり、当事者の紛争が長引くだけでなく、日本の訴訟資源の効果的利用の点からも妥当でない。そこで、日本は民訴法118条の要件を満たした場合に外国の確定判決が日本においても効力を持つと定めた。外国判決の執行の場合は執行判決が必要だが(民事執行法22条6号、24条)、外国判決の効力そのものは118条の要件を満たすかだけを判断すれば特別の手続は不要である(自動承認の原則)。
2 では、118条1号の要件すなわち日本から見て外国裁判所の裁判権が認められるか否かはどのように判断すればよいか。
(1)第一に、判決国から見るか日本から見るかの問題については、判決国から見れば管轄があるのは当然であって118条1号が無意味になるから、日本から見るべきである。
(2)第二に、日本の直接管轄の判断基準と同じでよいか。すでに外国判決が存在する間接管轄の審査は直接管轄よりも緩やかでよいとも思えるが、基準の明確性の観点から同じにすべきと解する。
(3)第三に、日本の直接管轄の判断基準と同じだとしても、本件のような人事訴訟には民訴法3条が適用されないから(人事訴訟法29条1項)、日本の判断基準そのものを解釈する必要がある。離婚の国際裁判管轄についての昭和39年判決(@)は、被告の住所地の裁判所に管轄が認められるのが原則だが、原告が遺棄した場合、被告が行方不明の場合、その他これに準じる場合には日本の裁判所にも管轄が認められるとした。一方、平成8年判決は、日本に管轄が認められる場合は上記の3つの場合に限られず、当事者間の公平、裁判の適正・迅速の要請から判断するとした(A)。@とAの関係をいかに解すべきかが問題となる。@は外国人間の事件、Aは日本人と外国人の事件とする見解は理論的正当化ができず妥当でない。あくまで@が原則であり、Aは事案の特殊性から認められた判断基準と解する。したがって、特段の事情のない限り、@の基準を用いる。
 本件は被告Xの住所地が日本であるから日本の裁判所が管轄権を有するのが原則である。そして、例外該当性としては、5年間の別居が「遺棄」と言えるか問題となるが、本件XYは単に別居していただけであるから、「遺棄」に当たらない。特段の事情もない。
3 したがって、甲国に管轄は認められない。
設問2(1)
1 Yは甲国人でありAは日本人であるから、YとAとの婚姻は渉外性を有する。婚姻の有効性は婚姻の成立と性質決定されるから24条1項による。同条は両性の平等の観点から各当事者の本国法によるという配分的連結を定めている。もっとも、婚姻の実質的成立要件には婚姻適齢のような一面的要件と近親婚禁止のような双面的要件があるが、その区別は個々の要件を抵触法の次元で解釈して決めるべきである(抵触法説)。なぜなら、実質法の次元で決めるとすると、各国の実質法が渉外関係まで想定して定められているとは限らないため、解釈が困難だからである。そして双面的要件とされた場合には、24条1項が配分的適用を命じているにもかかわらず、当事者双方の本国法を累積的に適用したのと同じ結果となる。
2 では、再婚禁止期間は一面的要件か双面的要件か。再婚禁止期間を設ける趣旨は子の嫡出性の推定であろう。そして、嫡出子か否かは一義的に決まっていないと後に問題が生じる。したがって、再婚禁止期間は双面的要件と解する。
3 そうすると、配分的連結を命じる24条1項にもかかわらず、YとAにはそれぞれ日本法と甲国法を累積的に適用する結果となる。そして、日本法では女は離婚から6か月を経ないと再婚できない(民法733条1項)
4 したがって、YとAとの婚姻は無効である。
設問2(2)
 本問もXとAの婚姻の有効性が問題となっているから、24条1項が適用される。同条の解釈は前述のとおりである。
 甲国裁判所の判決が日本において効力を有さないということは、YとXは離婚していないということになる。そうすると、甲国および日本の重婚禁止規定が適用される。重婚禁止は明らかに双面的要件だから、24条1項が配分的適用を命じているにもかかわらず双方の法律を双方に累積的に適用したのと同じ結果となる。そして、双方を累積的に適用した結果が異なる場合には、より強力な効果を採用した法を尊重するため、有効から遠いほうの法律を適用すべきと解する(厳格法の原則)。
 本件では、日本法上重婚は無効にはならない(民法732条参照)が、甲国法上は無効となり、甲国法のほうが厳格であるため、甲国法が適用される。
 したがって、YとAとの婚姻は無効である。
設問3
 YとAとの婚姻の挙行は婚姻の方式の問題と性質決定されるから、24条2項及び3項を適用すべきである。2項は、婚姻挙行地での婚姻の公知という公益的観点から婚姻挙行地法主義を定めている。しかし、常に挙行地法が適用されるとすると宗教婚しか認めない国で非宗教者である外国人は婚姻できなくなるし、絶対的に婚姻挙行地にしなければならないほどの公益性もないと考えられるから、3項は当事者の一方の本国法の選択的連結を採用している。
 本件では2項によれば婚姻挙行地である甲国法の方式で行うことになるが、3項によりAの本国法である日本法の方式を選択することもできる。
 そうするとAの方法もできそうであるが、民法741条はいわゆる領事婚を日本人間の婚姻にしか認めていないため、YとAはこの方法を使うことはできない。
 したがって、@を採るべきである。  以上

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国際私法 平成20年度第1問

問題文
 日本に常居所を有する60歳の甲国人男Aは、事理を弁識する能力を欠く常況にあったため、日本の裁判所により後見開始の審判を受け、嫡出子である甲国人Xが、Aの後見人として選任された。Aには認知をしていなかった甲国人の非嫡出子Yがいた。一時的に事理を弁識する能力を回復したAは、日本において、遺言書に「Yを自己の子として認知する。」旨、日付及び氏名を自著し、これに押印した。遺言書作成に当たっては、医師1名が立ち会い、Aに事理を弁識する能力のあることを確認する旨を遺言書に付記し、署名押印している。その後、Aは、日本国籍を取得し、日本において死亡した。Yは、日本において、Aの遺産の分割をXに対して求めている。
 この事例について、甲国の国際私法からの反地はないものとして、以下の設問に答えなさい。
 なお、設問の各問いは、いずれも独立したものである。また、甲国の民法は、その要件・効果とも、日本の民法が定める後見制度と同視することができる後見制度を有しており、認知と遺言については次の規定があること及び本件事例には法の適用に関する通則法(平成18年法律第78号)が適用されることを前提とする。
【甲国の民法】
第P条 父が被後見人であるときは、後見人の同意を得て認知をすることができる。
第Q条 認知は、遺言によっても、することができる。
第R条 認知には、子の承諾を要しない。
第S条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自著し、これに印を押さなければならない。
第T条 被後見人は、その事理を弁識する能力が回復した時に限り、遺言をすることができる。
2 前項の場合には、医師1名以上が事理を弁識する能力のあることを遺言書に付記し、署名押印しなければならない。
第U条 遺言は、遺言者の死亡した時からその効力を生ずる。
〔設問〕
1.Aは遺言能力を有しているか。
2.Aの遺言は方式に関して有効に成立しているか。
3.Aの遺言が有効に成立しているとした場合、Yの認知は有効に成立しているか。
 なお、A死亡の時点においてYは20歳であり、Xは、AによるYの認知を容認しない態度をとっているとする。

回答
設問1
 Aは日本に常居所を有し、遺言作成時に甲国人であったから、Aの遺言能力の有無は渉外性を有する。遺言能力は人の行為能力と性質決定できるから、4条でその有無を決めるべきとも思えるが、4条は財産的行為能力に限って適用されると解されている(4条3項参照)。渉外性を有する遺言は、意思表示としての遺言自体の問題と遺言の内容となる法律行為の問題に分けられ、前者には37条が適用されると解されている。そこで、Aの遺言能力も37条で決める。
 37条が遺言の成立及び効力を成立当時の遺言者の国籍に連結している。これに従えば、Aの遺言能力はAの本国法たる甲国法が準拠法となる。
 甲国法T条は、被後見人はその「事理を弁識する能力が回復した時」に遺言能力を有する。そして、医師1名以上が事理弁識能力のあることを遺言書に付記し、署名押印しなければならないが(同2項)Aは、遺言をした当時これらの要件を満たす。
 Aは日本の裁判所により日本法で後見開始の審判を受けたが、自己の行為の利害得失を判断する能力が不十分な者を保護する趣旨は甲国の民法と同じと考えられるから、Aは甲国民法T条の「被後見人」に当たると解する。
 したがって、Aは遺言能力を有している。
設問2
1 遺言の方式に関する準拠法は、遺言の方式の準拠法(以下「遺言準拠法」という。)に関する法律で決める。Aの遺言が方式に関して有効に成立しているかどうかもこの法律を用いる。同法は、2条各号に掲げるいずれかに適合するときは、遺言の方式に関し有効としている。このように広い要件を定めているのは、遺言が方式の点で無効となるのをできるだけ防ぐことである(遺言保護)。
2 日本民法上の有効性
 遺言準拠法2条1号の「行為地法」はAが遺言をした地は日本であるから日本法である。
 民法968条1項によれば、自筆証書遺言の方式は全文、日付及び氏名を自書し、押印することである。Aの遺言書はこの要件を満たしている。
3 したがって、Aの遺言は方式に関して有効に成立している。
4 ちなみに、Aの遺言成立当時の国籍国法(遺言準拠法2条2号)である甲国法によっても、甲国民法S条は日本民法968条1項と同内容であるから、有効に成立する。
設問3
1 遺言による認知の効力は、遺言の内容となる法律行為の問題だから、37条の問題とはならない。29条1項前段は、非嫡出親子関係の成立に関して事実主義と認知主義双方の非嫡出親子関係の成立に適用される。そして、特に認知による親子関係の成立は、親子関係をできるだけ成立させることが子の利益に資するから、29条1項前段と同2項の選択的連結が定められている。1項後段は子の保護の趣旨から「子又は第三者の同意」を必要としている。
2(1)本件は「子の出生当時における父の本国法」(29条1項)は甲国法である。甲国民法P条は認知をするのに後見人の同意を必要としており、日本民法上後見人とされているXは甲国民法P条の「後見人」に当たると解されるから、Xの同意がないAの認知は無効である。
(2)しかし、「認知の当時における認知する者…の本国法」は、日本法である。なぜなら、Aは死亡する前に日本国籍を取得し、遺言の効力(設問1で検討したように甲国法が準拠法となる)は死亡の時から生ずるからである(甲国民法U条)。日本法上、認知をするには後見人の同意は不要である(民法780条)。そして、Yの父であるAは認知することができるし(779条)、認知は遺言によってもすることができる(781条)。Yは成年だからその承諾が必要だが(782条)、YはAの遺産分割を求めているから承諾はあると考えられる。786条との関係で、Xが認知を容認しない態度を取っていることが問題となるが、786条は認知の訴えを提起できることを規定したものであり、子その他の利害関係人の同意が認知の有効要件となるわけではない。したがって、日本法上、認知は有効に成立している。
3 ただ、通則法29条1項後段が「第三者の同意」を認知の有効要件としていることから、甲国民法P条の「後見人」すなわちXの同意がない本件では認知は無効とも思える。しかし、前述のように29条1項後段の趣旨は子の保護だから、「第三者」(29条1項後段)とは、子と利害が一致する者を意味すると解すべきである。そうすると、Xは遺産を巡ってYと利益相反関係にあるから「第三者」に当たらず、その同意は不要である。
4 したがって、Yの認知は有効に成立している。  以上
 
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国際私法 平成19年度第1問

問題文
 甲国人男Aは、自身の研究のために日本の大学に勤務していたが、その間に日本人女Xと知り合い、甲国において婚姻した。婚姻後5年を経過した時点で甲国に地震が発生し、当時、甲国の震源地近くで調査を行っていたAが行方不明となった。地震発生後7年が経過したが、Aの生死は依然不明の状態にある。AとXの婚姻が有効に成立していることを前提として、以下の設問に答えよ。
 なお、甲国の国際私法には次の規定があること、また、本件事案には法の適用に関する通則法(平成18年法律第78号)が適用されることを前提とする。
【甲国国際私法】
第P条 裁判所は、甲国国際私法の規定によって指定された国の実質法を適用する。
第Q条 相続は、相続財産の所在地に関わらず、被相続人の最後の住所地の法による。
設問
1.AとXは、婚姻後、甲国において婚姻生活を送っていたとする。Aが行方不明となって間もなくXは日本に帰国して生活していたが、日本人男Bと知り合い、現在ではBとの婚姻を望んでいる。
(1)Xが日本の裁判所にAの失踪の宣告を申し立てた場合に、日本の裁判所は子の申立てについて国際裁判管轄権を有するか。
(2)日本の裁判所が失踪の宣告をした場合に、日本の裁判所はAとXの婚姻の解消についていかなる国の法によって判断するか。
2.AとXは、婚姻後、甲国において婚姻生活を送っていたとする。(以下略)。
回答
設問1(1)
 失踪宣告は国家機関の宣告が必要であるから、準拠法だけでなく管轄も通則法に定められている。6条1項は、失踪宣告の原則的管轄原因を、不在者が生存していたと認められる最後の時点において日本に住所を有していたとき又は日本の国籍を有していたときに認めている。これは、不在者に関する不確実な法律関係の解決に利害を有する住所地と、戸籍の整理等に関わる国籍を基準にしたものと理解できる。もっとも、6条2項は例外的に、不在者の財産が日本にあるときにその財産について、また、不在者に関する法律関係が日本法によるべきときその他の事情に照らして日本に関係があるときにその法律関係について、日本の管轄権を認めている。これは、不在者をめぐる法律関係の不安定をできるだけ解消しようとして管轄原因を広げたものと解される。
 本件の日本人女Xは、甲国において婚姻し、甲国において婚姻生活を送っていたが、Aが行方不明となって間もなく日本に帰国して生活しており、住所、国籍において日本に関係があると言える。
 したがって、6条2項後段により、日本の裁判所は管轄権を有する。  
設問1(2)
 6条は、非訟事件における実体法と手続法の関連を考慮して、法定地法である日本法が失踪宣告の要件及び効力に関して適用されることを定めている。
 ここで失踪宣告に伴う婚姻の解消の法的性質を離婚とみて27条によるべきか、失踪宣告の効力とみるべきかが問題となる。離婚は両当事者の保護が問題になるが、失踪宣告に伴う婚姻解消は生存配偶者の保護しか問題にならないから、失踪宣告の効力とみるべきである。
 そうすると、本件では6条により日本法が準拠法となる。
 したがって、裁判所は日本法によって判断する。
設問2(1)
 甲国国際私法第P条は、甲国の裁判所が準拠実質法を適用する場合を、甲国国際私法の規定によって指定された場合に限定している。つまり、甲国の国際私法が指定した国の抵触法を参照して準拠実質法を決めることはないということであり、これは反致を認めないという意味である。
 通則法41条の適用上、この規定がいかなる意味を持つかというと、二重反致が成り立たないという意味を持つ。二重反致とは、A国の国際私法によればB国法が準拠法となるが、B国国際私法によればA国法が準拠法となり、かつB国の国際私法に反致規定があれば、その規定をも尊重してA国でB国宝を準拠法とする場合である。
設問2(2)
 本件相続の法的性質も、失踪の効力と考えることもできなくはない。しかし、日本の裁判所の失踪の効力は死亡の擬制であり(民法31条)、死亡の結果いかなる者が相続人となり、いかなる財産が相続財産となるかは、失踪の効力というより相続と性質決定すべきである。そのため36条で判断する。
 36条は相続統一主義(動産相続と不動産相続を区別せず、すべてを被相続人の属人法によって処理する立場)の観点から被相続人の国籍に連結している。同条が被相続人による準拠法選択を認めなかったのは、被相続人の意思は相続財産の処分によって実現できるからである。
 本件では、36条により被相続人Aの本国法である甲国法が準拠法となる。
 ここで、甲国抵触法Q条は、被相続人の最後の住所地に連結している。Aの最後の住所地は日本であるから、Q条に従えば日本法が準拠法となる。
 41条は反致を定めている。反致とは、法定地の国際私法によって指定された準拠法が所属する国の国際私法が、法定地法または第三国法を準拠法として指定しているときに、その外国の国際私法の立場を考慮して、法定地法又は第三国法を準拠法とするのを認めることである。反致の理論的根拠として、国際私法が準拠法として外国法を指定する場合にはその国の法律を総括的に指定しているから(総括指定説)があるが、双方の国が反致規定を置いていた場合に無限の循環が生じ妥当でない。主権理論を前提とした棄権説も妥当でない。また、実質的根拠として、国際的判決調和と内国適用拡大があると言われる。しかし、国際判決調和も双方の国が反致規定を置いていた場合には達成されず、内国適用拡大は法内容の平等という国際私法の原則に反するものである。結局反致の正当化は難しい。
 ともあれ、41条は「当事者の本国法による場合」にその国の国際私法に従えば日本法が指定されるときは日本法によるというように反致を定めている。「当事者の本国法による場合」には36条の場合が含まれるから、本件はこれに当たる。そして、甲国国際私法Q条によれば日本法が準拠法として指定される。前述のように甲国国際私法P条の存在が二重反致を生じさせないため、二重反致を検討する必要はない。
 したがって、本件相続には日本法が適用される。  以上
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