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2018年01月10日

東野圭吾『ブルータスの心臓 完全犯罪殺人リレー』

〜『ブルータスの心臓 完全犯罪殺人リレー』7つのポイント〜

『ブルータスの心臓 完全犯罪殺人リレー』は、東野圭吾13作目の作品。
産業機器メーカーで働く主人公が、己の出世と保身のために悪事に手を染めようとする話です。
自身の過去の経験から、人間よりも機械のほうが信頼できる主人公は、同情すべき余地もあるのでしょうか。
登場人物が軒並み悪人。
こういう話も読みごたえがあるのかもしれません。

産業機器メーカーで人工知能ロボットの開発を手がける末永拓也。
将来を嘱望される彼は、オーナーの末娘・星子の婿養子候補になるが、恋人・康子の妊娠を知り、困惑する。
そんな矢先、星子の腹違いの兄・直樹から、同僚の橋本とともに、共同で康子を殺害する計画を打ち明けられ・・・。
大阪→名古屋→東京を結ぶ完全犯罪殺人リレーがスタートした!
傑作長編推理!

さあ、『ブルータスの心臓 完全犯罪殺人リレー』について語りましょう。

ブルータスの心臓 完全犯罪殺人リレー (光文社文庫) [ 東野圭吾 ]

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感想(152件)





1 あらすじ

中堅産業機器メーカーに勤める末永拓也。
上昇志向が強く、これまでも数々の実績を積み重ねてきました。
上層部に取り入ろうと、オーナーの末娘の婿養子になることを目論みますが、関係を持った女性・康子から妊娠を告げられます。
康子は堕胎するつもりは毛頭ありません。
野望を達成する前にこのトラブルをどのように解決しようか考えていた矢先、拓也は専務の息子・直樹から呼び出しを受けます。
そこには同僚の橋本の姿も。
直樹も橋本も康子と関係を持っており、誰が康子の子の父親かが分かりません。
それぞれにとって康子の妊娠は不都合であるため、共同で康子を殺害する完全犯罪計画を練りますが・・・。
計画を実行に移すと、思いがけない出来事が起こります。


2 登場人物

末永拓也 
産業機器メーカー「MM重工」勤務。
人工知能ロボットの研究開発を行う。
自身が手掛けたロボット『ブルータス』を愛する。
雨宮康子の殺害計画に参画する。
雨宮康子  
「MM重工」役員室勤務。
拓也と関係を持つが、相手は拓也だけではなかった。
拓也に妊娠を告げ、堕胎しないと宣言する。
仁科直樹  
拓也の上司。「MM重工」開発企画室長で専務の息子。
雨宮康子殺害計画の発案者。
橋本敦司 
「MM重工」勤務。極限ロボットの開発に従事。
雨宮康子殺害計画に参加。
仁科敏樹  
「MM重工」専務。直樹の父。
仁科星子  
仁科敏樹の次女。
仁科沙織  
仁科敏樹の長女。
宗方伸一  
仁科沙織の夫。「MM重工」航空機事業部研究主任。
中森弓絵  
「MM重工」開発企画室勤務。
酒井悟郎  
「MM重工」作業員。中森弓絵の幼馴染。
高島勇二  
「MM重工」に勤務していた作業員。     
1年前に作業中の事故で命を落とす。
佐山総一  
警視庁捜査一課刑事。

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感想(0件)





3 殺害計画

雨宮康子から妊娠を告げられ堕胎しないことを宣言されたのは拓也だけではありませんでした。
開発企画室長の仁科直樹と、拓也の同僚・橋本敦司も同様に康子から責任を取るよう迫られていたのです。
しかし康子の子供の父親は誰か分かりません。
直樹は康子から莫大な養育費を要求され社内での立場が危うくなることを危惧しています。
橋本はこれまでの順風満帆な出世街道が危ぶまれることを恐れています。
そして拓也にとっては星子との結婚の大きな障害になります。
3人の思惑が一致し、共同で康子を殺害することを計画します。
大阪、名古屋、東京に別れ、大阪で康子を殺害し死体を名古屋まで運び、名古屋から東京に運び死体を処理する、という殺人リレー計画です。
詳細まで計画を練り、ついに康子殺害の実行日。
名古屋担当になった拓也は、待ち合わせ場所に駐車されていた車で東京に向かい、東京担当の橋本に死体を引き渡します。
しかし現れた死体は康子のものではありませんでした。

4 第二の被害者

第一の事件が起こってから数日後、第二の事件が起こります。
当初は自殺と思われたのですが、警察の捜査中にトリックを使った殺人だということが判明します。
犯人はいったいどのような方法でこの事件を起こしたのでしょうか。
そして犯人は一体誰なのでしょうか。
拓也は迫りくる恐怖に対しどのように立ち向かうのでしょうか。






5 末永拓也
 
決して恵まれた人生を送ってこなかった末永拓也。
幼い時に母を亡くし、左官職人だった父は酒に溺れ、拓也にも暴力を振るっていました。
少年時代に父を憎み軽蔑した拓也は、あらゆる欲望を抑え、自力で東京の大学に合格します。
大学入学後も人一倍の努力を重ね、大学院で「MM重工」との共同開発に携わります。
以降、「MM重工」に入社し、順風満帆に実績を重ねていく拓也。
自分は選ばれた人間である、自分は人を支配する最上層の人間になる、という野望を持ち、星子の婿養子になるために尽力します。
拓也は人を信じていません。
信じられるのは自身が手掛けたロボットのみ。
このような屈折した性格も、拓也の生い立ちが大いに関係しているのではないでしょうか。


6 事件の真相

雨宮康子殺害計画は拓也の全く予想していない展開となりました。
そして第二の事件が起こります。
計画の発案者である直樹に、何か拓也たちに知らせていない思惑があるのではないか、そう考えた拓也は、警察に疑われながらも独自に捜査を行います。
そして導き出された結論は・・・。
事件の真相、そして真犯人は意外な人物でした。






7 総評

利害関係の一致する3人が結託しての殺人計画。
そしていざ実行してみると計画とは異なる人物の死体が現れます。
設定としては大変面白いのですが、どこか全体的に中だるみ感があったような気がします。
それは、ひょっとしたらどの登場人物にも感情移入できなかったからなのかもしれません。
謎解き自体は引き込まれるのですが、拓也というキャラクターに同調できないところがあります。
主要登場人物にろくでもない人物が多いのも理由なのかもしれません。
そして最後の結末。
残り数ページの追い込み感がすごかったのですが、この結末には賛否両論分かれるかもしれません。
結局、この作品の登場人物で救われたのは誰なのでしょうか。

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まとめ
『ブルータスの心臓 完全犯罪殺人リレー』7つのポイント
1 3人で共謀して殺人リレーを行うという設定の面白さ
2 運ばれていた死体は意外な人物のものだった
3 続いて起こる第二の事件
4 末永拓也のキャラクター
5 主要登場人物にろくな人物がいない
6 物語の結末は?
7 この作品で救われたのは誰か


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