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認知症患者さんの殺人事件
■2015年横須賀で認知症の薬・ドネペジル(商品名:アリセプトなど)のを飲んでいる認知症の患者さんが妻を刺し殺した事件があった。アリセプトの興奮作用が関係しているであろうことは、医療現場にいる人間なら、誰もが想像できる。
アリセプトによって怒りやすくなり、興奮して噛みついたり、さらには刺し殺したりするのは副作用ではない!と言い張る専門家もいるけれども、興奮して大声を上げたり、暴力を振るったり、人が激変する。患者さん本人も苦しいが家族も辛い、困り果てている。
それにもかかわらず、大々的に認知症キャンペーンを張っているNHKの番組で、「怒りっぽくなったのは、薬が効いて家族の言うことがわかるようになったからだ。怒る元気もなかった人が怒る元気が出たことは良いこと。家族がきつい言葉をかけているから患者が怒るのだ。怒ることは主作用なので薬をやめてはいけない」と強弁している認知症治療の専門家を見て、目を疑った。つまりこの専門家こそが、「認知症ムラ」の住人、村長さんである。(P176)
■保険適用になっている認知症薬は、いずれも少量から飲み始めて、2〜4倍まで増量する規定になっている。(2016年6月に厚生労働省はこの増量規定にしたがわなくてもいいという事務連絡を出した。)しかし、医学会は未だ増量時の重大な副作用も、少量でも効果がある人がいることも認めていない。
たとえばアリセプトの場合、3rで初めて2週間後には必ず5mgに増量しなければならないという規定がある。3rで調子がよかったのに、5mgに増やした途端に興奮したり。暴力をふるまったりすることを私たちは現場で少なからず経験する。こんなときは3mgに減量、あるいは中止するのが当然だが、増量規定はそれを許さなかった。
減量するどころか、「認知症が進んでいる場合は、1日に10mgに増量することができる規定もある。増量すると、さらに怒りっぽくなって、鎮静作用のある抗精神病薬が処方される。その結果 ふらつき→転倒→骨折→寝たきり→食事量低下→胃ろう、という悪循環もある。いったい誰のための抗認知症薬、そして増量規定なのだろうか。(P177)
■抗認知症薬の増量規定はあまりにも問題が多いので、「抗認知症薬の適量処方を実現する会」を2015年秋に設立して、私が代表理事となり、厚生労働省に抗認知症薬の少量処方を認めるように求めてきた。すると2016年6月に「少量投与を容認する」という事務連絡がでた。
しかし、こんな重要な情報を、多くの現場の医師や薬剤師はまだ知らない。なぜなら、テレビも大手新聞も、このニュースをほとんど報道していないからだ。もちろんその背景には、製薬会社の広告費などのシガラミがあるだろう。まだ認知度は低い。そもそも「アリセプトに相当な頻度で重い副作用がある」ということすら知らない医療者が多い。(P182)
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