日本農業再生論 「自然栽培」革命で日本は世界一になる! [ 高野 誠鮮 ] 価格:1,540円 |
■硝酸態窒素は多くの病気の根源とも言われている恐ろしいものです。
今から60年ほど前のアメリカで、ある母親が赤ん坊に裏ごししたホウレンソウを離乳食として与えたところ、赤ん坊が口からカニのように泡を吹き、顔が紫色になったかと思うと30分もしないうちに生き途絶えてしまう悲しい出来事がありました。ブルーベビー症候群と呼ばれるものです。
牛や豚、鶏などの糞尿を肥料として与えたホウレンソウの中に硝酸態窒素が残留していたのです。硝酸態窒素は体内に入ると亜硝酸態窒素という有害物質に変わり、血液中のヘモグロビンの活動を阻害するので酸欠を引き起こし、最悪の場合死に至ってしまう。また、発がん性物質のもとになったり、糖尿病を誘発すると言われれいる恐ろしいものなんです。
家畜の糞尿は有機栽培でも使われますが、堆肥を十分に完熟させてから施せば問題はありません。しかし未熟の堆肥をつかうと、とくに葉物には硝酸態窒素が残ってしまうので危ないのです。
さらに危ないのは化学肥料を施しすぎた野菜で、要注意です。
このような事件がその後も多発したために、ヨーロッパで硝酸態窒素に対して厳しい規制があり、EUの基準値は現在およそ3000PPMと決められています。それを超える野菜は市場に出してはならない。汚染野菜として扱われるのです。ところが日本にはその基準が野放し。農林水産省が不問に付しているからです。
スーパーで売られているチンゲンサイを調べたら硝酸態窒素、16000ppmだよ!。米はどうか?最低でも12000ppm。高いほうは皆さん、パニックになってしまうの数値でしたので、ここには書けません。
それに比べて自然栽培農家の作ったコマツナは、わずか3.4ppmでした。
農薬も問題です。
日本は農薬の使用量がとりわけ高い。2010年までのデータによると上から中国、日本、韓国、オランダ、イタリア、フランスの順で、単位面積あたりの農薬使用量は、アメリカの約7倍もあります。
残留農薬のある野菜を食べ続けると体内に蓄積されていいって、めまいや吐き気、皮膚のかぶれや発熱を引き起こすなど、人体に悪影響を及ぼすとされています。
ヨーロッパの知り合いから聞いた話ですが、日本に渡航するこのようなパンフレットを渡されたそうです。
「日本へ旅行する皆さんへ。日本は農薬の使用量が極めて多いので、旅行した際にはできるだけ野菜を食べないようにして下さい。あなたの健康を害するおそれがあります。」(P12)
■2009年のアメリカの権威ある化学雑誌「サイエンス」に、化学肥料が地球温暖化の諸悪の根源(evil)と書かれてあったんです。地球温暖化は大気中に大量に排出された二酸化炭素やメタンガス、フロンガスなどにより太陽からの熱の吸収が増えた結果、気温が上昇することです。その最大の原因が化学肥料に含まれる亜硝酸化窒素ガスだと。
化学肥料を畑にまいたとしても農作物が吸収するのはわずか1〜1.5kg。あとは雑草や土が2〜3kg吸収し、残りの5.5〜7kgは、気化して亜酸化窒素になり大気中に拡散します。これが温暖化のいちばんの原因らしいのです。つまり温暖化のおもな原因を作ったのが農業であるということです。(P21)
■スーパーで売っているホウレンソウやニンジン、冷蔵庫に長い間置いておくと腐ってドロドロに溶けてしまう。化学肥料や完熟してない堆肥を使っているから窒素過剰により腐るんです。けれども自然栽培のホウレンソウやニンジンは枯れます。本物は枯れます。食べちゃいけないのが腐るんです。腐ったり溶けたりするものを食べて、体にいいわけがありません。
山へ行ってみてください。葉っぱはみんな枯れるでしょう。人の手で肥料が与えられてないからです。それが自然の姿なんです。(P31)
■有機栽培は(ひどく腐るということ以外に)無農薬ではないということも気をつけないといけません。30種類以上の農薬が使用OKとされていて、なかには石炭ボルドーといった化学合成農薬も含まれます。またその使用量にも制限がありません。(P107)
■遺伝子組み換え作物を推進する一派は、人口削減計画を考えているとしか思えない。(P124)
2014年にフランスが、遺伝子組み換えトウモロコシの栽培を禁止する法案を可決しました。同年にはドイツやイタリア、ロシアでも遺伝子組み換え作物は禁止となりました。それなのに平気で安心ですねと勧める国はおかしい。これ異常な世界です。
本当におかしなことが一方で進んでいます。すべて金儲けのためですよ。
■大規模農業経営の落とし穴(P128)
オランダのある企業がITを使ってハウスの中で人が入らなくても生産ができる取り組みを行ったのですが、10年も経たないうちに倒産してしまいました。設備投資費と電気代が莫大にかかるからです。野菜は単価が安いので、それに見合わなかったというわけです。
水耕栽培も取り組んでいるところもありますが、あれも経費がかかる。
1985年のつくば科学万博でも一本の苗からおよそ一万3000個のトマトを作ったハイポニカ農法が話題になりましらが、電気代が非常にかかかり持続不可能です。
周りの農地を買い足して行う大規模農業は、効率よくなり、コストも安くなるんでしょうが、大量生産を目指すとどうしても肥料、農薬、除草剤に頼らざるを得なくなる。もちろんF1種の種も大活躍するでしょう。
仮にビジネスで成功したとしても、そこで作られる野菜を食べさせれれたら消費者はどうなるんですか?
大きな田畑にまかれた肥料、農薬、除草剤で環境汚染も進みます。
よくないよ。
そもそも農業統計上の「農家」とはどのような世帯を指しているのかといえば、
「経営耕地面積が10a以上の農業を営む世帯または農産物販売額が年間15万円以上ある世帯」なんです。
だから平日は会社勤めをして、土日にちょっと畑仕事をするだけでも農家でいられる。しかも国からは農機具を購入する際の助成金、所得補償による給付金などさまざまな恩恵が与えられています。
農家をやめられない人が多いのもうなずけます。
おいしい野菜、健康にいい野菜を作ろうとする志がないまま、世界を牛耳っているモンサント社のF1種の種をまいて、肥料、農薬、除草剤をばらまき、田畑に入って土にまみれない農家がどれだけ多いことか。
そういう農家を見ると、おまえ、甘えてるんじゃないのかという気持ちになってしまうな。