2016年08月31日

白馬の騎士とフリーデリケ

 そのお屋敷には三人の姉妹が、お母さんと一緒に楽しく暮していました。今日は、この国の王様が毎年開く、お城での大舞踏会がある日です。
 みんな朝から何度もドレスを着替えたり、お化粧した顔にまたお化粧したり、それはそれは忙しい日でした。
 ところが、一番下の妹は、今年も舞踏会に出かけないのです。
「フリーデリケ、今年もまたお留守番?」
お姉さんたちが、心配そうに聞きました。
「ええ、わたしのことは心配しないで、みんなで楽しい舞踏会へ行ってらっしゃいね」
フリーデリケは、馬車で出かけていくお姉さんたちを、うらやましそうに見送りました。
 そのとき、夜空の向こうから、翼の生えた白馬に乗ったひとりの騎士が、この家のベランダへ舞い降りてきました。
「お嬢さん、なんて悲しそうな顔をしているのですか」
白馬の騎士は、娘のそばへやって来ていいました。
「だってわたし、今年もお城の舞踏会に出られないんですもの」
「そうでしたか。からだに合うドレスが見つからないんですね」
「そうなのよ。わたし、去年よりも、こんなに太っちゃって、とても恥ずかしくて舞踏会へいけないのよ」
食いしん坊の娘は、顔を赤らめながらいいました。
「それじゃ、わたしの国の舞踏会へいらっしゃい。今夜、わたしのお城で仮装舞踏会が開かれるんですよ」
「仮装舞踏会?」
 フリーデリケは、それを聞くとにっこり笑いました。だって、仮装をすれば、この太った体をうまくごまかすことが出来るからです。
「それじゃ、出かけましょう、お嬢さん。しっかりつかまってて下さいよ」
白馬の騎士は、娘を馬に乗せると、空の上にあるそのお城へ行くことにしました。
白馬は、少し重そうな様子で、羽ばたきをしながら、お城へと向かいはじめました。
 やがて、雲の隙間から、うっすらとお城が見えてきました。そのお城は、切り立った雲の岩の上にありました。
 お城の門をくぐり抜けると、大広間の方から、華麗なウインナ・ワルツが聴こえてきました。
「お嬢さん、もうすぐ舞踏会がはじまりますよ。わたしたちも、控え室へ行って仮装服を身につけましょう」
 そういって、白馬の騎士は、馬を地上へ降ろしました。それから二人はいそいで控え室へ行くと、仮装服を身につけることにしました。
 フリーデリケが選んだ服は、かわいい白くまのぬいぐるみでした。白馬の騎士が選んだ服は、ライオンのぬいぐるみでした。
 すっかり、用意の整ったふたりは、手をつないで、舞踏室へ入っていきました。真っ赤なじゅうたんの上では、たくさんのお客さんたちが、様々な仮装服を身につけて、楽しそうにおしゃべりをしていました。
 やがて、室内オーケストラが、「美しき青きドナウ」の曲の演奏をはじめると、会場のお客さんたちは、みんな曲にあわせてワルツを踊りはじめました。フリーデリケも白馬の騎士を相手にしながら、一緒に踊りました。明るいシャンデリアの光のもとで、舞踏室は大にぎわいです。
 踊りながらフリーデリケは、こんなことを考えていました。
「いまごろ、おねえさんたちも、地上の王様のお城で、楽しそうに踊っているでしょうね。でも、わたしのほうが、もっと楽しいわよ。こんなすてきな男性と踊れるんですもの」
 しばらくして、このお城の王様が、家来をしたがえて、舞踏室へ入って来ました。
「みなさん、今夜は、よくいらして下さいました。どうか、時間のゆるすかぎり、ゆっくりくつろいでいって下さい」
 王様のあいさつが終わると、また、ワルツが流れはじめました。
「さあ、もう一曲踊りましょう」
白馬の騎士がいうと、フリーデリケは、ちょっと顔を赤らめながら、
「ええ、お願いします。でも、わたしとても緊張したせいか、お腹がぺこぺこなのよ」
「そうでしたか、それは気づきませんでした。では、食堂へ行きましょう」
 二人は舞踏室から出ていくと、食堂へ向かいました。
 食堂へ行くと、大きなテーブルの上に、豪華な料理が並んでいました。
「さあ、どうぞ、たくさん召し上がってください」
 フリーデリケは、はじめ控えめに食べていましたが、やがて、がつがつといせいよく食べはじめました。
 それを見ながら、白馬の騎士は、
「ずいぶんお腹が空いていたんですね。さあ、ご遠慮なさらずに、たくさん食べてくださいよ。食事がおわったら、わたしの両親を紹介しますからー」
 そういうと、白馬の騎士は食堂から出ていきました。
しばらくして、すっかりお腹がふくれたフリーデリケが舞踏室へもどってくると、王様のそばで、白馬の騎士が待っていました。
「さあ、こちらへいらして下さい。父上、この方が、わたしのフィアンセです」
 それを聞いて、フリーデリケはびっくりしました。
「え、このわたしが、フィアンセですって。そうだったの。この方は本当の王子さまで、わたしのことが好きだったんだわ」
 フリーデリケが、とまどっていると、王様がにこにこしながらいいました。
「どうですかな、お嬢さん。あなたさえよければ、わたしの息子の嫁になってやってはくださらんか。そしたら将来あなたはこの国の王妃さまですよ」
「王妃さま!」
フリーデリケは、それを聞いて、こころの中でにっこり笑いました。
(王妃さまになれるなんて、こんなチャンスは、めったにないわ。毎日、きれいなドレスが着られるし、おいしい料理もたくさん食べられるし、どうしようかなー」
 すると王子さまも、念をおすように、
「どうかお願いします。ぜひとも、わたしの妃になってください」
 フリーデリケは、二人に頼まれているうちに、すっかりその気になってしまい、その場で妃になることを決めてしまいました。
「みなさん、今夜はめでたい夜になりました。さあ、もっと踊りましょう。音楽開始!」
王様のかけ声で、室内オーケストラが奏ではじめたのは、喜歌劇「メリー・ウイドウ」からの愛らしいワルツです。フリーデリケは、夢うつつの気分で、王子さまと踊りはじめました。
 翌日、ずいぶんと早い盛大な結婚式が、お城の中で開かれました。
フリーデリケが、純白のウエディング・ドレスを身につけて、王子さまと式場に現れたとき、お客さんたちは、みんな盛大な拍手を送りました。ふたりは、みんなの祝福を受けながら指輪の交換をしました。
 そして、披露宴会場では、たくさんのお客さんたちと一緒に、楽しい食事をすることになりました。
ところが、朝から緊張の連続で、すっかりお腹がぺこぺこだったフリーデリケは、はじめは、お客さんたちと話をしながら、ゆっくりと食べていましたが、やがて、食べることばかりに夢中になってしまいました。そして、いつものように、つぎつぎとお料理を平らげていきました。
お客さんたちは、その見事な食べっぷりにみんな驚きましたが、
「いいではないか。健康そのものじゃ」
王様がいうと、みんな、またにこにこと笑って、食事をはじめました。
 やがて、結婚式もぶじに終わり、フリーデリケは、お城の中でいつものように楽しい毎日を送ることになりました。
 ところが、何日かすると、お母さんのことや、お姉さんたちのことが頭に浮かんできました。
「いま頃、家の人たちは、何をしているのかしら。だまって出て行ったわたしを、みんなで探しているのかしら」
そんなことを考えていると、またお腹がすいてくるのでした。
 フリーデリケは、お城の食堂へ行っては、お菓子を食べたり、果物を食べたり、ワインを飲んだりして、そんな気持ちをまぎらわせていました。
 けれども、心配ごとは、そればかりではありません。お城には、毎日のように、お客さまがおいでになるので、フリーデリケは、緊張の連続です。お客さまが帰ったあとは、いつも食堂へむかいます。そして、食べる量も日に日に多くなっていきました。
 そんな生活が一年もつづくうちに、お城の食べ物がだんだんと無くなってきました。
「これは、困ったことじゃ、わしらの食べ物も無くなりはしないか」
王様も、お妃さまも、王子さまも、気が気ではありません。
「なんとか、姫の心配ごとを、なおしてやらなくてはいかんな」
みんなが、そんなことを考えているうちにも、フリーデリケは、さかんにお城の食べ物を食べあさります。
食堂が閉まっているときは、お城の庭に植えてある、イチゴやナシやオレンジなんかを、むしゃむしゃと食べるのです。
 そのうちに、庭の果物を食べ尽くしたフリーデリケは、こんどは、お城を抜け出して、近くの農家へ行くと、ぶどうやさくらんぼ、スイカにメロンに、きゅうり、レタスまで食べてしまうのです。
ですから、農家の人たちが、毎日のように、お城へやってきては、王様に苦情を訴えにきました。見かねた王様は、王子さまと相談して、お姫さまを、下界の家へ帰らせることにしたのです。
 翌日、フリーデリケは、王子さまと一緒に、白馬に乗って、お城から出ていきました。そして、なつかしい自分の故郷の家へと向かいはじめました。
 白馬は、来たときよりも二倍も、三倍も体重の増えたフリーデリケを乗せながら、汗をかきかき、ずいぶん苦しそうに飛んで行きました。
 やがて、雲の下に、フリーデリケが住んでいたお屋敷が見えてきました。
「フリーデリケ、なごり惜しいけれど、これでお別れだね。いつまでも、しあわせに」
そういって、寂しそうにしているフリーデリケに、王子さまがお別れの口づけをしようとした時、緊張のあまり、からだのバランスを失ったフリーデリケは、白馬の背中からずり落ちると、そのまま真っ逆さまに、地面に向かって落ちていきました。
 王子さまは、落ちていくフリーデリケを助けることも出来ずに、ただ口を開けて心配そうに見ているだけでした。
(どしーんー!)
 耳をつんざくような大きな音がしたかと思うと、フリーデリケは、いつも見慣れている自分の部屋のベッドの下で、目をさましました。
舞踏会から帰って来たばかりの、お姉さんたちが、その音を聞きつけて、どかどかと部屋へ入ってきました。
「フリーデリケ大丈夫、また寝ぼけてベッドから落ちたのね。でも、今夜はどんなすてきな夢を見ていたのかしら」
 お姉さんたちの問いかけに、フリーデリケは、眠気まなこで、空の上のお城へ行ったことをはなしました。でも、いつものようにお姉さんたちは、ぜんぜん信じてくれませんでした。
 けれども、フリーデリケの指には、王子さまから貰った結婚指輪が、しっかりとはめられていたのを、彼女自身もそのときにはぜんぜん気づいていませんでした。 


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(自費出版童話集「白馬の騎士とフリーデリケ」所収)





(記事の更新は随時行います)

2016年08月19日

音痴な小鳥

 すごい音痴な小鳥がいました。
いつも林の中で、朝から晩まで大きな声で鳴いていました。
なかまの小鳥たちは、その鳴き方が変なので、いつも困ったものだと言い合いました。
「あんなひどい音痴では、ぼくたち鳥仲間の品格にかかわる。どうにかならないものかなあ」
 だけど、その小鳥はそんなことにはおかまいなしに、いつも同じように鳴いていました。
 ある日、村の子供たちが、この林に遊びにやってきました。なかに小さい子供たちもいました。
 幼稚園の先生からいつも、
「小鳥さんは歌がじょうずだから、小鳥さんのように歌ってごらんなさい」
と教えてもらっていました。
 小さい子供たちは木の上から聴こえてくるその小鳥の歌声をきいて、いつも練習をしました。
ところが、ある日、幼稚園の歌の時間のとき、子供たちの歌を聴いて先生はびっくりしました。
「みんなの音程がずれてるわ。誰のまねをしたのでしょう」
子供たちに尋ねてみると、小鳥さんのまねをしたことを話しました。
 またある日のことでした。
この村で一番、詩吟のうまいお百姓のおじいさんが、いつものように、家の近くの林の中で練習をしていると、どこからか変な鳴き声が聴こえてきました。
「ずいぶんひどい鳴き方だ。困った小鳥だな」
 はじめは気にもせずに練習をしていましたが、だんだんと自分の音程もおかしくなってきたのです。
 秋の詩吟コンクールのとき、とんだめにあいました。いつもの年なら上位入賞のはずなのに、音程がずれているので予選で落ちてしまいました。
 頭にきたおじいさんは、今度あの小鳥を見つけたら、撃ち落として焼き鳥にしてやろうと文句をいいました。
 音痴な小鳥は、ひさしぶりに町へ行きました。
町の公園へ行ってみると、たくさんの親子連れが来ていて、子供たちがブランコやシーソーにのって遊んでいました。
 噴水のそばのベンチでは、アベックや年寄りが腰かけて、池の中を泳いでいる鯉や金魚にエサをやっていました。
 公園の片隅で、ひとりのアコーディオン弾きが、子供たちに演奏を聴かせていました。
小鳥も、そばの木の枝にとまって一緒に聴いていました。
 子供たちは、アコーディオンの伴奏を聴きながら、一緒に歌いはじめました。
それをきいて小鳥も歌いました。
 ところが、いくら歌ってもみんなと音程が合いません。それにアコーディオンの伴奏とも合わないのです。
「おかしいな。どうしてだろう」
なんども歌っているうちに、その理由がわかってきました。
「そうかぼくの歌い方がおかしいんだ」
小鳥はそのときはじめて、自分の音程がずれていることに気づいたのです。
小鳥は、なんだかはずかしくなってきました。いまのうちに治そうと思いました。
 そして夕方までみんなに合わせて歌っていると、みんなと同じように歌えるようになりました。
「よかった、よかった。これで村へ帰ってもは安心だ」
 小鳥はそういって町から出て行きました。


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(未発表童話です)




(記事の更新は随時行います)

2016年08月10日

丘の上の作曲家

 村からはずいぶん離れた静かな緑の丘の上に、一軒の小屋が建っていました。その小屋には三年も前からひとり暮らしをしている作曲家がいました。
 以前は町で暮らしていましたが、騒音が嫌いで、この静かな田舎へやってきたのです。
 町ではアパートに住んでいましたが、赤ん坊の泣き声や自動車の音、工事現場から聞こえる騒音で仕事がはかどらず、ここへやってきたのです。
 急いでやってきたので、ずいぶんいろんな物を忘れてきました。でも重たいピアノと五線紙ノートと筆記用具だけは忘れませんでした。この作曲家にとってほかの物はさして重要でもありませんでしたから。
お腹がすけば、山へ行って木の実やキノコを採ってきて食べたり、川へ行って魚を釣ってきたりしました。
 作曲家の毎日の生活は、おおよそ次のようなものでした。
 まず、朝ごはんを食べてから散歩に出かけます。近くの森へ入り、梢から聞えてくる小鳥の声に耳を傾けます。落ち葉のところで這いずっているカマキリ、クツワムシ、テントウムシの足音、花の蜜を探しているミツバチや熊んバチの羽音、そんな音にも静かに耳を傾け、五線紙ノートに書き込みます。家に帰ってから自分の作品にそれらの音を取り入れるためです。
 だけど、この作曲家はこれまでほとんど作曲の注文を受けたことがありません。いつも自分でもこういってます。
「おれは一生、無名の作曲家で終わりそうだ」
そうはいっても、過去にいくつかの仕事を引き受けたことがありました。ひとつは映画音楽の仕事でした。低予算のメルヘン映画で、この作品に音楽を付けたのです。
 ロシアの昔話をもとにした映画で、付けた音楽は自分では気にいっていましたが、映像担当者がぜんぜん才能がなく、音楽と映像がまったく合いません。監督とも肌が合わなかったので、出来上がった映画は完全な失敗作に終わりました。
 学校から校歌を依頼されたこともありました。でも斬新過ぎるという理由で採用されませんでした。そんなことで一時期仕事を休んでいたのですが、ある日、丘の原っぱの道を散歩していたとき、一人の詩人さんと出会ったのです。
 いろんな土地を旅している人で、見るからに風変わりな人でした。でも詩才はあり、この詩人の詩と自分の音楽はどこか共通するところがあったのです。
 お互いに付き合いながら、ある日、二人で歌曲を作ってみようかということになりました。詩人さんがこれまで書いていた詩を全部見せてもらって、曲が付けられそうな詩を選びました。
 選んだ詩は、次のようなものでした。
第1篇「世間から追い出されて」、第2篇「旅から旅へ」、第3篇「私はどこを彷徨うか」、第4篇「沼のほとりで」、第5篇「夕暮れの道」などです。
 ボヘミアン的なところはありますが、静かで落ち着いた詩が多く、これらの詩に曲を付けていきました。
 数週間後、出来上がった歌曲をピアノ伴奏で一緒に歌ってみました。二人とも大変満足でした。
知り合いの楽譜出版社に送ってみると、採用されてかなりの数が売れたようでした。
 それからも二人で歌曲を作っていきましたが、性格の違いから、共同作業は長くは続きませんでした。
「きみと一緒に仕事をするのは無理だ」
といって別れてしまったのです。
仕方なく作曲家は、別の仕事を探すことにしました。
 久しぶりに丘を降りて、町へ行ったとき、ひとりの船乗りに出合いました。居酒屋でお酒を飲んでいた時でした。いろいろと海の暮らしのことを聞きながら、自分も船に乗ってみたくなりました。
「世界の海を旅したら、海をテーマにした音楽が書けそうだ」
決断するとすぐに船に乗ることに決めました。
 ある日、その船乗りの紹介で、外国行きの貨物船に乗りました。ずいぶんくたびれた赤サビだらけの老朽船でした。仕事は甲板掃除やペンキ塗りばかりでしたが、非番のときは、デッキで海を見ながら、音楽のイメージを膨らませました。
 出港してからすぐに船酔いに悩まされましたが、十日もするとそれにも慣れました。
 航海中は、嵐にも出会わずシケた日は一週間程度で済みました。
広い海を毎日見てると、いろんなものに出合います。水平線の向こうにイルカの一群に会ったこともあります。すごいスコールにあって、その雨で、髪の毛を洗ったこともありました。
 一番神秘的だったのは真夜中に、くらげの一群にあって、水面が星のようにキラキラと輝いている情景でした。それらの体験を、すべて音楽として表現することに夢中でした。
 狭い船室のベットの中で、五線紙を広げて、鉛筆で音符を書き込んでいく作業が航海中続きました。
 ときどき船員たちのいびきの音や、調子はずれの歌声に悩まされたりしましたが、それでも航海中に、ほとんどの曲が出来上がっていきました。
 目的の国へ着くと、荷物の積み下ろし作業で忙しく、作曲ははかどりませんでしたが、町へ行くと久しぶりに、むこうの珍しい料理を食べたり、映画を観に行ったりしました。
 数日間その国でのんびりしてから、帰路につきました。
帰りの航海でも、印象に残った風景などを音楽にまとめて、半年後に船を降りて、丘の家に帰ってきました。
 久しぶりに見る丘の景色は、いつものようにのどかで、美しい花々に覆われていました。上着のポケットには、船会社から貰った給料袋も入っており、そのお金で、おいしい食べ物を食べに町へ行ったりしました。
 そして、船の中でほとんど出来上がったスコアを、部屋の机の上に広げて、毎日見直していきました。
 100ページもあるスコアの最初のページには、交響詩「海の風景」とちゃんと標題が書き込まれています。スコアを修正しながら、
「この作品が見事出来上がったら、町のオーケストラ指揮者に観てもらおう。上手くいけば町の音楽ホールで演奏してもらえるかもしれない」
 そんなことを呟きながら作曲家は、今日も部屋の机に向かって、ペンを動かしています。


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(未発表童話です)






(記事の更新は随時行います)

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