2015年11月25日

砂漠の仲間

 焼けつくような砂漠の道を、ラクダにのった商人が旅をしていました。
「ああ、水が飲みたい。水はどこだ」
 ラクダも長旅ですっかり疲れているのか、
「足が痛い、どこかで休みたい」
とよろよろと歩いていました。
 あるとき、遠くにヤシの林を見つけました。
「あそこで、休むとしよう」
「水もあるかな」
 ところが、行けども行けどもヤシの林は遠のくばかり。
「蜃気楼だ」
「がっかりだ」
 ラクダは、動かなくなりました。
「こら、こんなところで立ち止まっていたら、死んでしまう。はやく水のあるところに行かないと」
「それなら、俺の荷物を持ってくれ」
「ラクダのくせにもんくいうな」
「じゃ、もう歩かない」
 しかたがないので、荷物を持ってやりました。
 やがて、またヤシの林がみえました。
「あれもまた蜃気楼かな」
「どうでしょう。いってみますか」
 歩いて行くと、まさしくヤシの林があります。それに小さな井戸も見えました。
「よかった、今夜はあそこで野宿をしよう」
 けれど、ヤシの葉はどれも枯れていて、井戸も空っぽです。
「ああ、がっかりだ。こんどは、おまえが荷物をもってくれ」
「いやだな」
 ラクダはもんくをいいながら 仕方なくもちました。
 でも、また立ち止まりました。そして荷物にむかって、
「おい、荷物。お前はいいな、のってるだけだから」
 荷物がこたえました。
「そうだよ。おれは荷物だからね」
 それをきいた商人が怒っていいました。
「そんなことあるかい。困っているときはお互いさまだ。こんどはお前がおれたちをせおってくれ」
 荷物は困った顔をしましたが、
「じゃあ、仕方ない。せおってあげるよ」
といって、らくだと商人をせおって歩きだしました。
 でもしばらく行くと、荷物はくたびれて、しゃがみこんでしまいました。
「もうだめだ。かわってくれ」
 こんなことをしていると、だれもせおいたくありません。
「どうだい、ジャンケンして、負けたものが1キロづつ歩いたら」
「そうしよう」
 三人はジャンケンをしました。
「かった」
「かった」
 負けたのは商人でした。
「しかたない」
 そういって、らくだと荷物をせおって歩きました。
1キロ歩くと、またジャンケンして今度は、荷物が負けました。次はラクダでした。
三人とも、そうやってかわりばんこに歩きました。
 やがて、みんなくたびれて、ばったりと砂の上に倒れこんでしまいました。
みんな死にそうなようすで、むこうの丘をぼんやりと見たときです。商人が叫びました。
「みんな起きろ、町が見えるぞ」
 三人は、生き返ったように、町の方へかけていきました。


012d0640e49161ca7622868a6d39216a.jpg



(つるが児童文学会「がるつ第36号」所収)

昭和テレビアニメ館コチラ (昭和の懐かしいテレビアニメをご紹介しています)









(記事の更新は随時行います)

2015年11月18日

たこ八のぼうけん

 ある日、たこ八が海の中の岩場で遊んでいると、真っ白いからだをした自分とそっくりなたこのともだちが、海面からおりてきた。
「おまえは、いったいだれだ。なんて名前だ」
 ところが、何もいおうとしないので、腹が立ったたこ八は、ぐいっとそのたこのからだをつかんでやった。それが、たこ八にとっては大きな失敗だった。
いきおいよく、そのたこといっしょにつりあげられて、硬いコンクリートのうえにたたきつけられた。そして、すぐにクーラーボックスの中へ入れられてしまった。
 狭苦しいクーラーボックスの中で、たこ八がぶるぶると震えていると、クーラーのふたがとつぜん開いて、ほかのたこが入ってきた。たこ八は、ぽーんとジャンプをすると、まんまとそとへ出ることに成功した。そして、大急ぎでその場から逃げていった。
ところが、あわてていたたこ八は、海とは反対の方向へ逃げていったのだ。
 たこ八がやって来た所は、ある漁師さんの家の中庭だった。
けれども、その家にはかい猫がいて、たこ八は、またまた逃げださなければならなくなった。
 たこ八は、すぐにかい猫に見つかって、さんざん追いかけまわされたあげく、爪でからだをあちこちかきむしられて、命からがら、どうにかその家から出て行くことが出来た。
「おれは、このさき、どんなひどい目に会うかわかんないな。海はどっちなんだい」
 たこ八が、アスファルトの道を歩きながら、そんなひとりごとをいっていたとき、むこうからとてつもなくでっかい車が走ってきた。
「ゴーーー、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーーーーッ!」
 それは、超大型のトレーラーで、猛スピードをあげて、たこ八のほうへむかってきた。おどろいたたこ八は、大急ぎで、よこの草むらの中へ飛び込んだ。もしも、あんな大きなトレーラーにひかれたら、いまごろたこ八は、たこ八せんべいになっていたかもしれないのだ。
 草むらの中で、たこ八が、しばらくがたがた震えていたときだった。
空の上から、大きな手がのびてきたかと思うと、その手でぐいっと捕らえられてしまった。
 たこ八が、おどろいて目をあけてみると、そこには髪の毛がぼさぼさで、ひげをぼうぼうに生やした、変な匂いのする、汚い服を着たおっさんが立っていた。
 たこ八は、乞食のおっさんに捕まってしまったのだ。
 乞食のおっさんは、にやにや笑いながら、
「きょうは、ついてるのおー、さっそく飯にしようかのおー」
といいながら、うれしそうに歩きはじめた。
 乞食のおっさんは、陸橋の下の自分のすみ家へやって来ると、さっそく火鉢に火を起こしはじめた。
そして、火力が出てくると、その上にあみをおいて、たこ八を乗せたのだ。
「あっ、ちちちちちちちちちちちちちちちーーーーーーーーーーっ!」
 たこ八は、あまりの熱さに、あみの上から飛びはねた。十メートル以上は飛びはねたと思う。
 たこ八が空の上で、あわてふためいていると、一羽のからすがまいおりてきた。そして、たこ八のからだをしっかりとつかむと、松林のほうへ飛んでいった。
 たこ八は、こんどはからすに捕まってしまったのだ。でも、焼きだこになるよりはましだった。
 からすは、たこ八をつれて、自分のすみかへむかいはじめた。
しばらくしてから、こんどは、一羽のトンビがからすめがけて飛んできた。
おどろいたからすは、たこ八を、おもわず下へ落としてしまった。
くるくるとまわりながら、たこ八が落ちた所は、海の見える旅館の池の中だった。
 池の中で、たこ八がぼんやりしていると、飼われていたコイたちがやってきた。
「おまえ、宇宙人か。どこの星からやってきたんだ」
 コイたちは、めずらしそうにたこ八を見ていった。
「違う、おれは、海からやってきたんだ」
 たこ八が、コイたちに、これまでのいきさつをはなしてやると、みんな気の毒に思い、なんとか、たこ八を海へ帰してやろうと思った。
 そのとき、むこうの家の方から、ピシャン、ピシャンという水の音が聞こえてきた。
「あれっ、ひょっとして、むこうは海かな?」
 たこ八は、池の中から飛び出ると、いそいで、水の音のする方へ歩いていった。
すると、白いけむりがたちこめた中に、なつかしいともだちのすがたが、ぼんやりと見えた。
 たこ八は、おおよろこびで、みんなのいる方へかけていくと、水の中へ飛び込んだ。
「あちちちちちちちちちちちちちちちちちーーーーーーーーーーっ!」
 ところが、たこ八は、あわてて外へ飛び出した。たこ八が入ったのは、旅館の露天風呂だった。たこ八は、もうすこしで湯でだこになるところだった。
そして、湯ぶねに入っていたのは、この旅館にとまりに来ていた、頭のはげた老人会のじいさんたちだった。じいさんたちは、ずいぶんお酒を飲んでいたから、たこが湯ぶねに入ってきても、さしておどろきもしなかった。
たこ八は、じいさんたちに捕まらないように、急いでその場から逃げようとしたとき、露天風呂の岩づたいに、一匹のかにが歩いているのに気がついた。
「やあっ、かに君、きみは、海からきたのかい」
 たこ八の声をきいて、かには、「そうだよ、いまから海へ帰ろうとおもってね」
 かには、よくこの露天風呂へやってきては、自分のからだの汚れを落としていくのだった。
 たこ八が、岩づたいに、かにのあとを追ってついて行くと、やがてむこうの方に、なつかしい青い海が見えてきた。
「やった、海だ。ほんものの安全な海だ」
 たこ八は、目がしらを、あつくさせながら、思わずそうさけんだ。
 近づいていくと、潮のにおいがしてきた。耳をすますと、波の音も聞こえてくる。
 たこ八は、かに君になんどもお礼をいった。
「かに君、どうもありがとう。きみのおかげで、おれの寿命もまだまだ伸びそうだ」
 たこ八は、そういうと、波が打ち寄せている岩場へと走っていった。そして、にこにこ笑いながら海の中へ入っていった。

madako01c.png



(自費出版童話集「白馬の騎士とフリーデリケ」所収)

昭和テレビアニメ館コチラ (昭和の懐かしいテレビアニメをご紹介しています)








(記事の更新は随時行います)

2015年11月11日

ゆうれいパトカー

 その田舎の国道を走るときは、道路交通法を十分に守って走らなければいけないのです。少しでも違反していると、すぐにゆうれいパトカーに追われるのでした。
 ある夜、この国道を、長距離トラックが時速70キロのスピードで走っていると、後ろから一台のパトカーがサイレンを鳴らして追いかけてきました。パトカーは、すぐにトラックの前方に入り込むと、スピードをゆるめて止まりました。
「しまった。速度オーバーだ」
 この国道の制限速度は50キロでしたから、20キロの速度違反でした。
トラックの運転手さんは、すっかりあきらめて、警官が出てくるのを待っていました。
ところがどうしたことでしょう。いくら待っても警官が出てこないのです。
 運転手さんは、なんだか気味が悪くなってきました。
でも、こんな所でいつまでも停車しているわけには行きません。時間どおりに荷物を届けないと行けないのです。
 仕方がないので、自分からパトカーのいる場所へ歩いて行きました。ところが、車の中を覗いて驚きました。運転席には誰も乗っていないのです。
「ひえー、ゆうれいパトカーだ」
運転手さんは、すっかり怖くなってその場所から走り去って行きました。
 そんな出来事の後も、何台もの法定速度を超過して走っていた車が、同じような体験をしました。そんなことがたびたびだったので、それからはみんなこの国道を走る時は、スピードを落として走りました。法定速度で走ってさえいれば、ゆうれいパトカーに追われることはなかったからです。
 また、この国道の一時停止の場所でも同じような体験をした車がありました。
 ある夜、残業を終えた会社員が、この国道の一時停止の場所で、徐行だけで通り過ぎようとしたとき、そばの空き地から突然ライトが点燈して、一台のパトカーが姿を現しました。
会社員は、すぐに車を止めて、もとの停止位置まで戻り、やり直しをしていると、ライトは消滅して、さっきのパトカーの姿はどこにもありませんでした。
こんなふしぎな出来事も、すぐに人の耳にも伝わりました。
それは車ばかりではありません。
 ある日、この国道の横断歩道を赤信号で渡ろうとしていたお爺さんのうしろから、
「赤信号ですよ。渡らないで下さい」
と拡声器で呼び止められました。
 びっくりしたお爺さんは、すぐにうしろを振り返ってみましたが、そこには誰もいませんでした。
「おかしいなー」
と思っていると、一台のパトカーが国道のはるか向こうへ走り去って行きました。
そんな不思議な場所だったので、もう十年以上もこの国道では、無事故、無違反の記録が続きました。
 この国道を走ってみると、ところどころに「ゆうれいパトカーに注意」の標識が立っています。

04b6b55bfc749ccf03f3178f218793c1.png


(未発表童話です)

昭和テレビアニメ館コチラ (昭和の懐かしいテレビアニメをご紹介しています)








(記事の更新は随時行います)

2015年11月04日

伸びろ髪の毛

 たけくんのお父さんは、最近抜け毛で悩んでいました。頭髪の真ん中あたりが薄くなってきたのです。
「こりゃいかん。早いうちに処置しなくちゃ」
 翌日、お父さんは薬局へ行って育毛剤を買ってきました。
「よし、これで解決しよう」
 洗面所へ行くと、箱を開けて薬をつけはじめました。
ひんやりと気持ちよく、ぽんぽん頭皮に塗りつけていきます。
見ているたけくんに、
「今日だけじゃ、だめなんだ。毎日続けることが大切なんだ」
といって、その日からはかかさずに薬をつけるようになりました。
 三ヶ月もすると、お父さんの髪の毛は少しずつ黒くなってきました。
「どうだい。ほんとうにこの薬はよくきくだろ」
「うん、もう少しだね。まえのようにふさふさした髪になるといいね」
それからたけくんに弟ができました。なまえは、りょうくんといいます。とても元気な子でよく泣きます。
 ある日、たけくんは、りょうくんの髪の毛が薄いのに気づきました。
「これじゃ、大きくなったとき、お父さんみたいに苦労してかわいそうだな」
 たけくんは、お父さんの引き出しの中から育毛剤をもってきました。
「これをつけてあげたら、すぐ髪の毛が濃くなるぞ」
そういって眠っているりょうくんの頭に育毛剤をつけてあげました。つけながらお父さんがいったことを思い出しました。
「毎日続けることが大切なんだ」
そのことを思い出しながら、毎日りょうくんの頭に育毛剤をつけてあげました。
 ある日、お母さんが心配そうにいいました。
「ねえ、あなた。りょうくんの髪の毛、最近やけに濃くなったみたいね」
「ああ、そうだな。でも、うらやましいな。おれとどっちが早く濃くなるか競争だな」
 そばで聞いていたたけくんは、
「よおーし、りょうくん負けちゃいけないぞ」
といって、それからも毎日育毛剤をつけてあげました。
 半年がたちました。お父さんの髪の毛は、前のようにすっかりもとどおりになりました。
ところが、赤ちゃんのりょうくんの頭は、アビーロードの横断歩道を歩いているビートルズのメンバーのようなぼさぼさの長髪になりました。もちろんりょうくんの勝ちでした。
しかし、その後も、りょうくんの髪の毛は伸び続け、月に一度はかならず散髪屋へ行かなくてはならなくなりました。
「こりゃ、たいへんだ。一度、医者へ連れていこうか」
「そうね。そうしましょう」
 お父さんとお母さんの心配そうにしている様子を見ながら、たけくんは、
「これはちょっとやりすぎだったかな。でも、お父さん、お母さん心配しなくていいよ。もうりょうくんの頭に薬はつけないから」
そういって、育毛剤をつけるのをやめました。ひと月後には、りょうくんの髪の毛はそれ以上は伸びなくなったということです。 

E882B2E6AF9BE589A4cafe_money_ai2_57.png



(自費出版童話集「びんぼうなサンタクロース」所収)

昭和テレビアニメ館コチラ (昭和の懐かしいテレビアニメをご紹介しています)
             









(記事の更新は随時行います)



ファン
検索
<< 2015年11月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
最新記事
写真ギャラリー
最新コメント
タイムマシンにのって by 海月です (05/23)
アコーディオン物語 by 海月です (01/22)
ゆうれいパトカー by 海月です (11/15)
タグクラウド
カテゴリアーカイブ
童話(99)
プロフィール
さんの画像

童話の創作とマンドリンを弾くのが趣味です。前橋市のマンドリンクラブに所属しています。
プロフィール