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2017年04月10日

漫画『魔王城でおやすみ』1巻の感想とあらすじ

『魔王城でおやすみ』1巻の感想。


魔王城でおやすみ
著者:熊之股 鍵次
掲載:週刊少年サンデー
1巻発売日:2016年9月16日

かつて、人と魔が交わり存在していた時代。その安定を乱す魔王が地の底より現れ、捕らえた人の国の姫を自らの居城へ幽閉し、世界を支配しようと目論んでいた。魔王の宣言を聞いた人々は怒り、悲しみに暮れ、囚われの姫を想い、勇者は救出のために立ち上がる。
そんな中、魔物が跋扈する魔王城に囚われたスヤリス姫は、悲しみに涙し、恐怖に震え、絶望する・・・・ことはなく、「寝る以外・・・することがない。」と、暇を持て余していた。特に害されることはなく、忙しい公務からも解放され、ご飯も3食わりと美味で悪くない居心地なのだが、安眠できない環境に思い悩むスヤリス姫。
囚われ(?)の姫は魔王城を好き勝手に闊歩し、魔王以下配下の魔物たちを翻弄しながら、安眠を求め魔王城を蹂躙していく。

魔王の治める居城に攫われてきた人の国のお姫様が、周囲の思惑・意図・憂慮とは裏腹に、当たり前のように牢から抜け出しては安眠を求めて好き勝手に振舞い、魔王城の面々を翻弄していく物語。
囚われの姫が安眠を得るために奮闘する睡眠ファンタジーコメディー。コミックのカバー裏には、作中に登場した主人公やモンスターなど登場キャラのイラストと名前が描かれてます。なんかドラクエにでも出てきそうですね。
最初のきっかけは、ただ暇を潰したいがために適当に書店で買っただけの作品だったんですが、予想外に面白くてちょっとハマってしまいました。

人間と魔族が対立する世界で勇者と魔王が熾烈な戦いを繰り広げる中、魔王によって攫われてしまうお姫様というのは、古今東西のファンタジー作品ではお馴染みの展開と言えます。子供の頃からこの手の流れをどれだけ見てきたことか。国民的ゲーム『マリオ』シリーズで言うところの、クッパなど何者かによって毎回こりずに攫われてしまうピーチ姫なんかは、誰でも知るところの代表的お姫様ですね。
この『魔王城でおやすみ』でもお姫様が魔王に攫われ勇者が旅に出るという王道的な始まり方をするわけですが、当の主人公はそんな王道とはかけ離れた異彩を放ちまくりなかつてないお姫様。

舞台は、人間と魔族が対立する世界にある魔王の居城たる「魔王城」。強大な力を持つ魔王とその配下が根城とし、数多の魔物たちが闊歩する恐ろしいはずのラストダンジョン。
主人公はそんな魔王城に囚われてしまった人類統一国家カイミーン王国の姫・スヤリス姫です。本名はオーロラ・栖夜・リース・カイミーン。
本来のお姫様なら、毅然とした態度を装いながらも、目のないところでは悲しみにくれ、自由のない拘束の中で勇者の救いを待つのが通例だと思います。だがしかし、王国にいたときは「いそがしい」という悩みを持っていたスヤリス姫は、その忙しさから解放され、ぞんざいに扱われることなく3食美味な食事付きという高待遇も受けてることで、恐怖に震えるどころか「寝る以外・・・することがない。」なんて言葉をこぼす始末。そして、目下の悩みが安眠できないことだというありえなさ・・・。

睡眠はたしかに大事です。単純に健康な身体作りをするためにも、1日の作業効率を上げるためにも、快適な睡眠は誰しもが望むことでしょう。なにより、ベッドやマクラなどの快適な寝具を使っての睡眠はなんとも言えない心地良さ。
しかし、まさか魔王に囚われているお姫様が安眠・快眠について悩むとは思いもしませんでした。しかも、快眠寝具を得るためにまるで我が家のごとく魔王城を好き勝手歩き回るお姫様って、斬新にも程があります。脱出に用いた牢の鍵についてはもちろん没収されているようですが、あるカワイイ入手経路を確保しているために没収・入手の無限ループ状態。
姫の寝具作りにかけるやる気が異様に高く、ときには悪魔の所業とも言える手段を用いて、着実に牢の中が快適空間へと変貌を遂げていきます。

また、そんな姫に翻弄されている魔王や魔物たちの姿には笑わせてもらえ、だんだん彼らが可愛く見えてくるから面白い。
忘れてはいけないのがスヤリス姫は囚われの姫で王国に対しての大事な人質だということ。なのに毎回当たり前のように牢から抜け出すものだから、姫が逃げたのではないかと魔王城内は大騒ぎ。しかも姫は魔物自体を寝具に用いようとしたり、彼らが身につけているものも容赦なく奪っていくため、姫に震える魔物たちという珍しい構図を目にすることも珍しくありません。そして寝具を得た姫は周囲の騒ぎなんてなんのその、素直に牢へ戻って「すや・・・すや・・・」と夢の中。あと、かなり無茶苦茶な行動をとりがちなため、魔物から「命だいじに」「ガンガン行かない」とお叱りを受けることもあるお姫様です。
姫のフリーダムな行いによって被害を受けるのは魔王や勇者も同様。例えば、魔王がバランスを考えてダンジョンに置いていた勇者専用の大事な装備も、姫による姫のための寝具作りであえなく粉々に粉砕され、勇者が入手したのは姫が合成したゴミ。
姫に振り回されすぎて皆過労でぶっ倒れるのではないかと心配になってしまいましたね。

やり尽くされた感のあったファンタジーというジャンルで、囚われの姫が安眠を求めて奮闘するという斬新な設定は面白かったです。これほど救いがいのないお姫様というのも珍しい。
魔王城が姫によって翻弄されていくドタバタ劇場も笑いどころが多く、描かれているカワイイ絵柄も作品の雰囲気にマッチしていたので良かったです。
前代未聞の魔王城を舞台にした人間のお姫様による睡眠ファンタジーコメディー。さらなるお姫様のフリーダムな奮闘を期待して、今後も追っていこうと思います。


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ハネ吉
とにかく漫画が大好きです。愛してるといっても過言ではありません。どんなジャンルにも手を出しますね。正直、文章力にはあまり自信はありませんが、なるべくうまく伝えられるようにがんばります。ちょっとだけでも読んでもらえたらうれしいです。 ちなみに、甘い物とネコも大好きです。
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