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2017年09月20日

【カードキャプターさくら】マンガ 感想&あらすじ 20年以上たった今尚多くの人に愛され続ける伝説の魔法少女作品

なかよし。1996年6月号から2000年8月号まで連載。全12巻
       [新編]2016年7月号から連載中。既刊2巻
作者:CLAMP



あらすじ

私立友枝小学校に通う4年生の木之本桜(きのもと さくら)は、母親を早くに亡くしているため、現在は父と兄の3人で暮らしている元気がとりえの女の子。

ある日、父の書庫で不思議なデザインをあしらわれた古い本を見つけたさくら。本を開いてみると、ぬいぐるみのような姿で大阪弁を話す封印の獣・ケルベロス(ケロちゃん)が現れ、中には魔術師クロウ・リードが創った魔力を持ったカードが封印されていたことを聞かされる。

だがしかし、ケルベロスはカードの守護者でありながらつい30年程居眠りしてしまい、その間に封印が解けてカードはあちこちに散らばってしまった。

「『クロウカード』――その封印が解かれるとき、この世に災いがおとずれる」

カードが災いをもたらす前に再び封印を施すため、魔法の素質を見込まれたさくらはケルベロスから「封印の鍵」を託され、勝手に「カードキャプター」を任されることに。

かくしてさくらは、ケルベロスともう1体の守護者・月(ユエ)、クロウの遠戚の少年・李小狼(リ・シャオラン)、そして親友の知世(ともよ)たちと共に、実体化したカードを全て回収するため様々な事件に立ち向かっていく。


主要登場人物

ネタバレも含まれているので注意


・木之本 桜(きのもと さくら)
主人公。私立友枝小学校4年生の女の子。チアリーディング部所属。運動神経が抜群に良く、特にバトンが得意。毎朝ローラーブレードを履いて登校。母・撫子(なでしこ)を早くに亡くしているため、現在は父・藤隆(ふじたか)と兄・桃矢(とうや)の3人で暮らしています。
明るいことがとりえの、とても素直で思いやりのある優しい性格。頑張り屋ではあるけど、天然且つ少々ドジな一面もあります。兄が原因でオカルト系が大の苦手。「はにゃ〜」や「ほえ〜」などが口癖。
元々魔法を使う素質があったことから、父親の書庫にあったクロウカードの本の封印を解いてしまい、目覚めた守護者・ケルベロスによってカードキャプターにされてしまいました。「なんとかなるよ、絶対だいじょうぶだよ」という無敵の呪文を持ちます。
小狼とは当初こそカードと雪兎のことでライバル関係にありましたが、協力してカードに立ち向かうなかで次第に親しくなり、告白を受けたことで彼への恋心を自覚しました。雪兎に憧れを抱いていましたが、それは恋愛感情ではなく父や兄に向けるような家族愛に近い。

・ケルベロス
クロウカードの守護者の1人で「選定者」。愛称「ケロちゃん」。本の封印を解いたさくらの魔法を使う素質を認め、了解を得ないままカードキャプターに選んでしまいました。長いこと本が大阪にあったことから、その影響を受けてすっかり大阪弁がうつってしまいました。たこやきと甘い物が好物。
本の護り役でありながらついつい長いこと居眠りしてしまい、そのせいでクロウカードが飛散する事態に。「太陽」をシンボルとする「炎」と「地」を司る守護獣であり、普段は羽の生えた小さなぬいぐるみのような姿ですが、さくらが「火」のカードを回収したことで真の姿(大きな白い翼が生えたライオン)に戻ることが可能になりました。

・大道寺 知世(だいどうじ ともよ)
さくらの同級生で親友。私立友枝小学校4年生。コーラス部所属。大企業「大道寺なんとかかんとかコーポレーション」社長の一人娘であり、ボディーガード付きの豪邸に住んでます。ですわ調のお嬢様口調。誰にでも物腰柔らかいおっとりした性格ながらも、年の割に冷静で思慮深く、その上さくらのことになると熱くなる一面もあり。歌と裁縫が得意。
とにかくさくらのことが大好きで、カードキャプターの活動への協力とかこつけて、自作したコスチュームを毎回着せてはビデオカメラで撮影し、それをコレクションして鑑賞することに喜びを感じています。親友以上の特別な好意を抱いていますが、さくらの幸せが第一であるスタンスを持つことから、小狼との関係を純粋に応援。
母・園美がさくらの母・撫子と「いとこ」同士であるため、2人は「はとこ」の関係。知世の長い黒髪は、撫子のことが大好きだった園美が彼女に似せたかったから。

・李 小狼(リ・シャオラン)
香港からクロウカードを回収しに来た転校生の少年。イギリス人と中国人の両親を持つクロウ・リードの、母方の実家である李家の出身。高い魔力と身体能力を持ち、武術も得意。
基本的にはクールな性格ですが、恥ずかしがり屋なところもあり、さらにさくらと同じぐらい純粋な心を持つため、ありえない嘘でも簡単に受け入れてしまう素直な一面もあります。
クロウカードの封印が解けたことを察し、それを回収するため日本に訪れて来ました。当初はさくらのライバルとしてカードの奪い合いをしていましたが、お互いのことを知るにつれ徐々に親しくなり、自身が回収するよりも彼女のサポートに徹することが増えていきます。さくらがクロウカードのマスターになってからも日本に留まり、以降はカードがないため剣と武術、そして護符を主体にした戦い方へ移行。この生活のなかでさくらへの恋心を抱くようになり、最終巻にて想いを告げました。
ちなみに、アニメ版では彼の従妹にあたる「李苺鈴(リ・メイリン)」というオリジナルキャラクターの女の子が登場。

・木之本桃矢(きのもと とうや)
さくらの兄。友枝小のすぐ隣にある私立星條高校の2年生。長身のイケメンで成績優秀・スポーツ万能なことから、親友の雪兎と共に女子人気が高い。
さくらのことを「怪獣」呼ばわりするなど意地悪なことばかりしてきますが、本当はいつも心配して気にかけている妹想いのお兄ちゃん。大切な妹に近づく小狼とは何かと衝突しがち。
守護者たちが認めるほどの強力な魔力の持ち主。さらに、母の魂を視認できる高い霊感を持ち、さくらは幼い頃から幽霊の話を聞かされていたせいでオカルト系が苦手になってしまいました。さくらがまだユエの存在を支えるほどには成長していなかったとき、消失の危機に陥っていた彼に「さくらも守って自分(雪兎)も守ってくれ」と告げ、全ての魔力を託しました。
さくらがカードキャプターであることには気づいていますが、自ら関わることはせず、素知らぬフリをして邪魔にならない距離で見守っています。

・月城雪兎(つきしろ ゆきと)/月(ゆえ)
桃矢のクラスメートで親友。私立星條高校の2年生。桃矢と同じく秀才でスポーツも抜群のセンスを見せ、やはり女子人気が高い。おっとりした柔和な性格で、いつも優しい笑顔を欠かさない銀髪メガネ男子。細身な見た目に似合わずかなりの大食い。さくらの憧れの人であり、小狼も好意を寄せていました。
実はクロウカードの守護者の1人である「審判者」であり、人間の雪兎は仮の姿。見た目は翼を背に持ち、銀髪を腰辺りまで伸ばした無表情の美青年。「月」をシンボルとし、「風」と「水」の属性を司る存在。元の主であるクロウを深く敬愛しているため、当初はさくらを認めようとしませんでしたが、彼女の優しい想いと力に触れたことで新たな主と認めました。雪兎はユエとしての記憶は持ちませんが、ユエは雪兎として活動してるときの記憶もあります。
月の性質上自ら魔力を作り出すことはできず、他者から魔力を供給する必要があるため、1度それが原因で消失しかけるも、桃矢から全ての魔力を託されたことで安定しました。

・柊沢エリオル(ひいらぎざわ エリオル)
さくらカード編から登場したイギリスからの転校生。年の割りに落ち着きのあるメガネをかけた柔和な少年。さくらとはすぐに打ち解け、そのことで彼女に惹かれ始めていた小狼から敵意を向けられるも、その感情にすらすぐ気づいて
さくら編で巻き起こる事件の黒幕であり、その正体はクロウ・リードの記憶と魔力を引き継いだ転生者。自身が創作したルビー・ムーン(月)とスピネル・サン(太陽)の従者を従え、さくら達には気づかれずに事件を起こしていました。そこに悪意はなく、「闇の力」を源にしていたクロウカードに対して、さくらが目覚めたのは「星の力」であったため、属性の違いからカードが力を完全に失う前に、さくらの魔力で「さくらカード」に創り変えるよう仕向けていました。
ちなみに、前世では強大過ぎる自身の力に悩んでいたことから、亡くなる前に魂を2つに分けていました。ひとつがエリオルとなり、もう片方を宿して産まれたのはなんとさくらの父・木之本藤隆です。


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感想・見どころ

ここ近年、かつて多くの読者を魅了した名作マンガの復活情報が続々舞い込んで来ます。まあ、大人の事情でしぶしぶなんていうケースも多いと思われ、この復活劇についてはファンの間でも様々な意見があるのでしょうけど、個人的には不安を抱きながらも、より激しく嬉しい感情が溢れてたりします。
『フルーツバスケット』が9年ぶりに新連載スタートしたときは本気で喜びましたね。あと、少し前になりますけど『魔法陣グルグル』の復活新連載にも歓喜させられました。
これから特に注目してるのは、やはり18年ぶりに復活と相成った『るろうに剣心』。既にスタートを切ったとはいえ、私のような単行本派にはまだまだおあずけ状態が続くことから、この手に届くまで首をおもいっきり長くして待つとします。

さて、今回紹介させていただくのは、傑作として名高い懐かしき魔法少女漫画『カードキャプターさくら』。新章がスタートし、2018年にはアニメも放送されるので、かなり今更ですけどその魅力を書いてみようと思います。

偉大な魔術師によって創作され、永き封印から解き放たれた魔法のカードを巡り、魔法少女となった小学生とその仲間たちが、巻き起こる数々の不思議事件に立ち向かっていく物語。
少女漫画に掲載されている魔法少女作品。コミック単行本は通常版[全12巻]・新装版[全12巻]・記念版[全9巻]が発行されています。漫画を原作としたアニメ(クロウカード編[全46話]/さくらカード編[24話])、映画[2作品]、ゲームなど、多方面でメディアミックスされている作品。
現在は約16年ぶりに復活を果たし、同誌で新章「クリアカード編」が連載中。さらに、2018年1月からの放送予定でテレビアニメ化も決定しています。
作者は『XXXHOLiC』や『魔法騎士レイアース』など多くの名作を生み続けている女性漫画家集団・CLAMP(クランプ)。現メンバーは大川七瀬(おおかわ ななせ)、いがらし寒月(さつき)、猫井椿(ねこい つばき)、もこな、4人の先生方。過去にも様々な漫画家が在籍されていたそうです。

『悪』なきやさしい世界観から生まれた愛され続ける魔法少女

1990年代中頃に連載開始され、その後に放送されたアニメの影響を受けるなどして、たちまち女の子だけではなく広い層から絶大な人気を集め、20年以上たった今尚愛され続ける伝説とも言える作品。
漫画からでもアニメからでも夢中になっていた人はとても多く、オタクを大量製造して世に解き放った作品としても有名ですね。しかも、それはメインターゲットだったちびっ子に留まらず、大きなお友達まで生み出すことになりました。なんという罪深さ・・・。

カードキャプターとなった小学生の少女・さくらが、封印から解き放たれてしまったクローカードを、仲間たちと協力しながら回収していくというのが本筋の流れ。

この実体化するクローカードの設定が面白い要素のひとつでして、1枚1枚にしっかりとした個性があるうえ、ただ回収して終わるのではなく、それ以降の魔法バトルにも適材適所で活かされています。なので、毎回事件が起きて解決するまでの大まかなパターンは同じても、今度はどんな魔法が飛び出すのかというワクワク感がありました。どちらかと言うとアニメ版の方が顕著にその傾向は現れていたと思います。
単純にカードを集めていくという行為自体が良いアイデアでしたね。

大きな特徴として、事件を起こすカードたちにも、事件を裏で企てている者にも、そしてさくら達が関わっていく様々なキャラクターの中にも、「悪意がない」という点が挙げられます。プリキュアのような正義vs悪というわかり易い構図はなく、敵は現れても真の意味での悪者は存在しません
まさに「理想」を象ったやさしい綺麗な世界とも言え、これを長所とするか、短所とするかは、それぞれで判断すれば良いと思います。

あと、この手の作品で「変身しない魔法少女」というのは意外と珍しく、わざわざ毎回異なるコスチュームに着替えて事件に臨むなど、非現実の中に多少のリアリティを織り交ぜている点も魅力と言えましょう。

魅力溢れるキャラクターたちが織り成す人間関係

子供だった頃に読んでいたときにはそれほど気にしてませんでしたが、改めて観察してみると人間関係、特に恋愛事情がカオス過ぎる作品でしたね。

過去と現在、両思い・片思い・三角関係、BL(ボーイズラブ)にGL(ガールズラブ)、教師と生徒(小学生)、シスコン、ロリ・・・etc。
忘れてはいけない。これは少女向けマンガ雑誌「なかよし」掲載ということを。

昼ドラも真っ青な濃い要素がこれでもかと詰め込まれています。普通の作品なら同性愛ひとつとっても、重いテーマとしてドロドロな話になりがちです。
にも関わらず、CCさくらの世界ではあまりにも自然な形で見せられるため、ノーマルな私の認識が変なのではと思ってしまうからおかしい。

というより、この物語は全てがノーマルとでも言えましょうか、「好き」という感情に余計な飾り付けをしてないようにも思え、愛に制限や差別がありません。さくらに恋する知世、桃矢に恋する雪兎、その姿がとても自然体であるからすんなり入ってきます。
この人間関係に最初は困惑してしまうかもしれませんけど、何冊か読み進めていくと、拒否反応強い人でも受け入れてしまう自分に出会えるかも。

大人になった今ではこの辺りの要素も楽しめるようになっていたので、魅力の幅が一層広がりました。

可愛いは正義!

上記でいろいろ書いたことだけではなく、魅力ポイントをあげるとキリがない作品なのですけど、結局のところ最終的には「すごい可愛い!」という所に落ち着きます。

特に主人公・さくらは、見た目、内面、言動、どこをとっても可愛すぎました。元気で明るくて人懐っこく、家族や友達が大好きな女の子。
「ほえええええ」や「はにゃあああん」という口癖も、オタクたちの心を鷲づかみにした大きな要因ですね。狙いすぎな気もしなくはないです。ただ、さくらはいつだって自分を飾ることはせず、誰に対しても分け隔てなく自然体で接っしていることから、それがマイナスに働くことは全くありませんでした。

さらに、普通の魔法少女モノなら変身後の衣装はだいたい決まっていますが、CCさくらは違います。もともと変身という要素自体を省いてるため、そこは好きなように出来るという利点があります。
そこで活躍するのがさくらの親友である知世。彼女はお手製のコスチュームをさくらに着せて撮影することが趣味なので、毎回違うさくらの可愛いコスチューム姿を見ることができ、それが人気にも繋がっていたと思います。

その知世自身もさくらに負けず劣らず可愛い女の子だったので、知世ファンもかなりの割合を占めていましたね。かくゆう私も、この作品を読んでいた子供の頃は知世にかなり惹かれていました。

というより、結局のところ登場キャラクターみんな可愛いんですよね。男も女も、大人も子供も、そしてケロちゃんとスピネルも、みんな愛すべきキャラクターでした。

最後に

ではこんなところで、20年たっても色褪せることなく多くの人たちに愛されている作品『カードキャプターさくら』の紹介でした。
いかがだったでしょうか?

「萌え」が先行してますけど、漫画もアニメも結構真面目に製作され、こと「愛」についは別段真剣に向き合っていた作品でしたね。家族、友情、恋、色んな愛の形を偏見なく自然な姿で描かれています。
もちろん、そんな深く考える必要なく「可愛い」ってだけで十分魅力的な作品なので、ライトにあっさり楽しめるのも良いところです。

絵に関してはさすがCLANPといった感じで、乱れもなく安定した作画で最後まで綺麗に描かれていました。魔法の表現はとても美しく、構成も見事な出来栄えだったと思われ、全体的な完成度が非常に高いレベルでしたね。

性別も年代も関係なく、幅広い層の読者に楽しんでもらえる内容だと思いますので、よければ読んでみてください。自信を持って強くおすすめさせていただきます。

あと、現在連載中の「クリアカード編」の動向も気になるところ。2018年冬から始まるアニメ共々楽しみで仕方ないす。

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2017年03月10日

【ちはやふる】マンガ 感想&あらすじ 小倉百人一首競技かるたに情熱をそそぐ少年少女たちの熱き青春ストーリー

BE・LOVE。2007年12月28日から連載中。既刊33巻
作者:末次由紀
他作品:エデンの花



あらすじ

まだ何の情熱も知らない小学6年生の女の子・綾瀬千早(あやせ ちはや)は、福井からの転校生・綿谷新(わたや あらた)と出会い、「競技かるた」という百人一首を用いた競技の存在を知る。

新から才能があると言われた千早は、かるたの世界に強く惹かれだし、幼馴染の真島太一(ましま たいち)も巻き込んで、どんどん競技かるたにのめり込んでいった。

――それから4年後。新は故郷の福井へ転校し、太一も名門中学へ進学したことで、3人は離れ離れになっていたが、千早と太一は進学した瑞沢高校で再会を果たす。

千早は新がかるたを辞めたと聞くも、かるたが嫌いになったわけではないと分かり、小学生の時に交わした「かるたを続けてたらまた会える」という約束を信じ、太一と一緒に強くなって新と再会することを誓い合った。

そして、千早と太一は部の設立のため、和服を愛する古典マニアの大江奏、学年2位の秀才・駒野勉、かるた経験者の西田優征の3人の勧誘に成功し、苦労の末に瑞沢高校かるた部を始動させた。

瑞沢高校かるた部の仲間たちと全国選手権を目指す千早。それと同時に、女性競技者の頂点であるクイーンへの想いも大きく膨らませていく。

主要登場人物

・綾瀬千早(あやせ ちはや)
主人公。小学6年生の時に出会った綿谷新から競技かるたを教わり、後に進学した瑞沢高校で太一と競技かるた部を設立。府中白波会所属のA級選手。天性の聴力による“感じ(聞き分け)”の良さというかるたにとって最も大事な才能を持ち、対戦中はその能力に起因する驚異的な反応速度、高い集中力を生かし、「攻めがるた」を得意としています。かるたへの情熱を燃やしすぎるあまりに周囲からは「かるたバカ」として扱われ、容姿端麗にも関わらず、行動と発言が全てを台無しにしてしまうことで「無駄美人」とも言われています。かるたの顧問になりたりという理由から、教師を目指し勉学にも励むようになります。

・綿谷新(わたや あらた)
小学生の時に千早の通う学校に転校してきた同級生。福井南雲会所属のA級選手。千早と太一が競技かるたを始めるきっかけとなった、眼鏡をかけた寡黙で温和な少年。永世名人・綿谷始を祖父に持ち、幼い頃から名人を夢見てかるた打ち込んできたことから、大会でも優勝する非凡な才能と実力があります。普段はクールで大人しい子ですが、元々負けず嫌いな性格のため、かるたが関わると熱くなります。かるたの試合では常に冷静沈着に流れを見極め、高い記憶力と正確無比の払い手を武器に対戦車を圧倒しています。

・真島太一(ましま たいち)
千早の幼馴染。府中白波会所属のA級選手。瑞沢高校かるた部部長。容姿端麗、文武両道、実家が裕福なうえに性格まで爽やかで優しい非の打ち所のない少年。女子からの人気も高く、才能や境遇に甘んじることなく隠れて努力をする人でもあります。しいて欠点を上げるなら、ここぞというときの運のなさ。かるたの試合では非凡な暗記力を駆使し、自陣・敵陣の札を把握して冷静に戦います。千早に恋心を抱いており、友人でライバルである新には対抗心を燃やしています。

・大江 奏(おおえ かなで)
瑞沢高校かるた部設立時からのメンバー。翠北かるた会所属のC級選手。礼儀正しく優しい少女。実家が「呉服の大江」を営む呉服屋の娘で、奏自身も和服をこよなく愛しています。古典オタクでもあり、百人一首や昔の和歌・歌人に対して深い造詣を持ってます。競技者としてよりも専任読手への憧れが強く、将来は千早のクイーン戦で読手を務めたいと思っています。

・西田 優征(にしだ ゆうせい)
瑞沢高校競技かるた部設立時からの部員。翠北かるた会所属のA級選手。太めの体型で、千早たちからは「肉まんくん」というあだ名で呼ばれています。かるた歴は部内で最も長く、小学生のときに千早、新、太一の「チームちはやふる」とかるた大会で対戦し、その縁で入部しました。幼い頃から培ってきた経験で身に付いた、「流れの読み」と呼ばれる札の読まれる順番を読むことが得意。太めの外見に反して意外と運動神経は高い。

・駒野 勉(こまの つとむ)
瑞沢高校競技かるた部設立時からの部員。翠北かるた会所属のB級選手。試験では太一にこそ及ばなかったものの、学年2位の秀才。机にかじりついて勉強してる姿から、「机くん」と呼ばれています。勧誘を拒否していましたが、強引な千早の行動、太一の熱い説得で心を動かされ、入部を決めました。勤勉で真面目な性格から、対戦記録の詳細なデータを収集しており、そのデータを試合でも生かし、部員たちに適格なアドバイスも与えてくれます。かなちゃんのことが好き。

・若宮 詩暢(わかみや しのぶ)
京都出身の現クイーン。小学4年生でA級に昇格し、史上最年少15歳でクイーン位をおさめています。千早同様整った顔立ちをした美少女ですが、ファッションセンスも千早と同じくかなりダサい。ただ、かるたのタイプは千早とは正反対の「守りがるた」。独特な感性の持ち主で、かるたから愛されてるかのような札との深い?つながり”があると評されています。札を払う動作は正確無比で鋭いにも関わらず、恐ろしく丁寧で滑らか。新とはかるたを通した昔馴染みではあるが、1度も勝てたことがないため強く意識しています。



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感想・見所

競技かるたにおける女流最高位のクイーンを目指す少女が、部活の仲間たちと全国優勝に向けて日々の練習に励みながら、ライバルたちと切磋琢磨し、友情を育み、ときに恋に悩んで、熱い青春を駆け抜けていく物語。
「小倉百人一首競技かるた」を題材にした作品。少年少女のかるたに打ち込む姿と、友情、恋愛を描いた青春ストーリー。
いろいろあって漫画家活動休止していた末次由紀さんの、再開後初となる連載作品にして、著者最大のヒット作です。「マンガ大賞2009」大賞、「このマンガがすごい!2010」オンナ編第1位、2011年第35回講談社漫画賞少女部門受賞。
2011年にはアニメ化され、2013年にはアニメ2期も放送されました。2015年に実写映画化が発表され、女優の広瀬すずが主演で、2016年に『ちはやふる -上の句-』、『ちはやふる -下の句-』が公開。さらに、映画の続編製作も決定しています。あと、中学時代を描いた小説もあります。

昨今、マイナーな競技や文化を題材にした青春漫画、スポーツ漫画が目覚しい活躍をみせるようになりましたね。薙刀に打ち込む少女たちの姿を描いた『あさひなぐ』、高校生が伝統楽器である筝(こと)に青春を燃やす『この音止まれ!』など、メジャー級の人気競技に負けず劣らずの熱さと華々しさを読者に届けています。
そして、今回紹介させていただく『ちはやふる』は、そんなマイナー競技を扱った漫画の中では、今や代表的な作品の1つとして高い人気を誇っています。上記でタイトル名を上げた作品が好きな方なら楽しめるのではないかと思います。
それ以外では『青空エール』なんかも部活、友情、恋愛、を描いた青春ストーリーですので、本作にも通じるところがありますね。まあ、こちらの方が『ちはやふる』より甘酸っぱい恋愛してますけど。

まず、タイトル名にもなっている「ちはやふる」というのは、在原業平の和歌に出てくる枕詞です。以前紹介した「応天の門」の主人公ですね。
“ちはやふる 神代も聞かず 竜田川 からくれないに 水くくるとは”
漢字だと「千早振る」になります。一見すると風景を表現している歌のように見えますが、これは平安時代のプレイボーイである在原業平が、恋愛関係にあった女性に送った恋の歌らしいです。清和天皇に輿入れしたことにより手の届かなくなった藤原高子に、暗にほのめかしていまだ忘れえぬ想いを込めて詠ったという説があります。

読手が読み上げる百人一首の上の句を聞き、対戦相手よりも早く下の句を書かれた札を取る、それがこの作品のメインテーマでもある「競技かるた」というスポーツ。実際の映像を見てもらえれば分かると思いますが、非常に激しく、「畳の上の格闘技」とも言われる競技です。

『ちはやふる』は、そんな競技かるたに情熱をそそぐ女子高生・綾瀬千早を中心に、部活の仲間やライバルたちなど、周囲の人たちとの友情、恋愛、そして競技かるたに励む姿を描いた漫画です。
そもそもは女性向け漫画雑誌に掲載されている少女漫画。ただ、この作品は千早たちを取り巻く恋愛要素も見所のひとつではありますが、あくまでメインは「競技かるた」。恋愛よりも仲間やライバルたちとの友情、それぞれの家族関係、そして競技者として、ひとりの人間としての成長により重きを置いたストーリー構成になってます。少女漫画的なキラキラした恋愛も見せながら、今ではむしろ少年漫画でも珍しくなった友情・努力・勝利を体現した王道青春漫画とも言える内容。
そのあたりが少女漫画でありながら、男性にも好まれ、広く親しまれている要因にもなっていると思われます。

今でこそ高い人気を誇っていますが、競技人口は少なく、メディア露出もごく僅か、世間の認知度も低めという、いわゆるマイナー競技である「競技かるた」なだけに、これをテーマにするというだけでも挑戦的だったのではないかと思います。百人一首なら授業に取り入れている学校は結構あるのでそれなりに馴染まれているのでしょうが、競技かるたとなるとちょっと変わってきますね。
しかし、この作品を読むと競技かるたのルールや概要だけでなく、その凄さ、面白さ、カッコよさが激しく伝わってきます。1枚の札をとるために全神経を研ぎ澄ませる競技者、緊張感に包まれた静寂が広がる会場、そこに読手の声が響き渡り、上の句が詠まれると同時に場の空気は一変し、さながら戦場のような激しさを見せます。
その試合描写が作者・末次由紀の高い画力によって描かれているため、かるたの魅力は何倍にも引き上げられています。速く、激しく、熱く、時に泥臭く、またあるときには見惚れてしまうほどの美しさがあり、それらを見事に表現されていました。激しい動作はもちろんのことですが、個人的には札が詠まれる前の静けさの表現が素晴らしいと感じています。
心理描写も巧みで、相手との駆け引き、その時の体調や状態、抱えている悩みや葛藤なども垣間見ることができるので、単に迫力があるだけではなく、内容が非常に濃い見応えある試合を演出していました。

競技かるたがメインとはいえ、やはり千早たちの恋愛も非常に気になる要素。肝心の主人公である千早がそっち方面に免疫がない疎い子なので、なかなか大きな変化は見せませんでしたが、この頃ようやく太一、新の両名にも動きがあり、鈍感な千早も恋に悩む様子を見せるようになりました。
これまでの何とも言えないもどかしさも良かったんですが、この三角関係がどう変化し、どのような決着を見せるのかは楽しみですね。
他にも机くんやかなちゃんなど、ちらほらと恋の香りが漂っているので、メインの子たち以外のキャラにも注目。

競技かるたに着目した斬新さ、青春漫画としての王道な展開を見せるストーリー、登場人物が多いにも関わらず一人一人が個性的で魅力に溢れるキャラクター、作品内容にマッチした高い画力で描かれている絵、ほとんど悪い点が見られず、まだ完結してないですけど全体的に質の高い名作だと思っています。
現実の競技かるたにも強い影響を及ぼしているようで、メディアで取り上げられる機会も増え、かるたの大会に訪れる観客も増加し、確実に知名度アップへ貢献されていますね。
友情、恋愛、成長、千早たちの熱い想いとひたむきな姿は読む者の心を揺さぶる面白さがあり、同時に百人一首、競技かるたの奥深さと魅力も伝えてくれる作品。男性でも女性でも幅広い層の人たちに楽しんでもらえると思うので、よければ詠んでみてください。自信をもっておすすめさせていただきます。



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2017年03月06日

【クジラの子らは砂上に歌う】マンガ 感想&あらすじ 独特な世界観で描かれる“感情”が運命を動かすファンタジー作品

ミステリーボニータ。2013年7月号から連載中。既刊8巻
著者:梅田阿比
他作品:幻仔譚じゃのめ



あらすじ

砂刑歴93年。果てのない砂の海が延々と広がる世界。生命の息吹さえ感じられない砂の海には、「泥クジラ」と呼ばれる島のような漂泊船に乗り、あてもなくただ漂流し続ける民族がいた。

泥クジラの上で暮らす人間の9割は、感情を発動源とされる「情念動(サイミア)」を操る能力者であり、彼らは普通の人間よりも遥かに短命だった。

閉ざされた世界で短い一生を終える運命のなか、記録係を務める14歳の少年・チャクロ。
ある日、泥クジラのように砂上を漂流する漂泊船を見つけ、偵察隊に同行したチャクロはその船の中で、生まれて初めて外界の人間――少女・リコス――と出会う。

当初は冷淡だったリコスは船の住人と過ごすにつれ心を通わせていくのだが、突如泥クジラは謎の来訪者の襲撃を受け、泥クジラは戦禍に飲まれていくことになる。

止まっていた泥クジラの時間は動き出し、チャクロはその全てを日記に記していく。

登場人物

・チャクロ
主人公。印の少年、14歳。物語りの語り部。泥クジラでの役割は記録係。印であってもサイミアの操作が苦手なことで、周囲から「デストロイヤー」と呼ばれています。どんなことも記録せずにはいられない「過書の病(ハイパーグラフィア)」を患っています。リコスに出会ったことで外の世界に興味を持つようになり、泥クジラやこの世界の秘密を知っていくことになります。サイミアの操作は苦手とはいえ、チャクロの念紋の大きさから高い能力を秘めている可能性があります。

・リコス
ヒロイン(?)。印、14歳。泥クジラに漂着した廃墟船に1人でいた褐色の肌を持つ少女。帝国の感情を持たない「人形兵士(アパトイア)」で、服にリコスと刺繍してあったことからチャクロたちにそう呼ばれるようになりました。当初は帝国の施術により感情を失っていましたが、チャクロたちと過ごすうちに少しずつ感情を取り戻し、次第にチャクロに対しても特別な感情を抱くようになります。実は帝国のアパトイアを率いる軍団長官オルカの妹ですが、帝国と、そして兄と決別し、泥クジラの皆と生きることを決意しました。

・スオウ
無印、17歳。女性と見紛うほど美しい容姿を持つ青年。優しい穏やかな性格で、「印」達の短命にも嘆いています。次期首長候補と期待されていたことから、首長のタイシャが帝国の襲撃によって命を落としたことで、覚悟を決め正式な首長に就任。泥クジラの秘密を知ったことで、印たちを救うために船を捨てる決意をしました。

・オウニ
印、16歳。問題児集団「体内モグラ」のリーダーであり、泥クジラ随一のサイミア使いでもあります。帝国の兵士からは「悪霊(デモナス)」と呼ばれ恐れられています。外界へ出たいと望んでいたのは、本当は好きな泥クジラに何者か分からない自分のことを否定されたくないという思いから、必死に外へ逃げようとしていました。名前と年齢意外は不明ですが、「ヌースから生まれた化け物」と言われました。

・ネリとエマ
チャクロの前に現れる謎の少女。人ならぬ存在であり、ネリは心優しく平和を望み、エマは対照的に争いを望んでいます。ネリはファレナを守るために姿を消し、時を同じくして入れ替わるようにエマが現れました。エマはチャクロに泥クジラの舵を渡しました。

・オルカ
リコスの兄。連合帝国の「人形兵士(アパトイア)」を率いる軍団長官。泥クジラ住民の殲滅作戦を指揮するも失敗。その時、帝国に8つしかない「ヌース」と戦艦「スキロス」を失うが、詭弁により処罰は免れています。泥クジラのヌースとデモナスの力を入手し、その力で皇帝からもヌースを奪い至上の世界を造ることを目的としています。



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感想・見所

砂に覆われた世界を舞台に、砂上に浮かぶ島のような船の上で暮らす人々の過酷な運命を、あらゆることを記録し続ける少年の手記をもとに語られる物語。
少女漫画雑誌で連載されている、砂に覆われた独特の世界観で描かれる異世界ファンタジー漫画。「このマンガがすごい!2015」において、オンナ編の10位にランクインしています。
著者は『フルセット!』、『ブルーイッシュ』、『幻仔譚じゃのめ』を代表作に持つ女性漫画家の梅田阿比さん。2016年春にはこの作品を原作とした2.5次元の舞台も上演され、さらに2017年1月にアニメ化も発表されました。
最初は特に事前情報なく、この作品の美麗な表紙イラストに引かれてなんとなく読み始めた作品だったんですが、予想を遥かに超える重厚さに脱帽。

少女マンガらしからぬ内容に見えたので、当初は少年マンガ雑誌に掲載されていてもおかしくない作品だなと思ってました。ですが読み進めてみると、世界観こそ少女マンガでは珍しい壮大さで描かれていますが、展開の仕方や心理描写などを見てると「あぁ、少女マンガだな」といった感じになりました。
あくまで私的な意見ですが、比較的少年マンガはシリアスを強調した作品であっても、立ちふさがる敵や困難、そういったものと衝突し、挫折を味わおうとも再び立ち上がって努力により打ち破る、そうして読者は達成感やら満足感、充足感を得ていくものだと思います。困難や敵も読者が認識できる確かな形があり、勧善懲悪といったように話もわかり易い。
ただこの作品、確かに困難な状況を打破し、ひと時の安らぎを得て、登場人物たちは明日への希望も抱いてはいますが、壁を乗り越えて勝利を得ても、残るのは悲しみや言いようのない漠然とした不安の色が濃いと思います。進展するほど影は大きくなり、全体的にも少し暗い雰囲気。彼等の境遇や丁寧な心理描写を見てると、応援したい気持ちよりも同情の部分が大きくなってきますね。

この作品は、砂の海に浮かぶ「泥クジラ」と呼ばれる大型船の上で暮らし、その中だけでほぼ一生を終えていく人々の姿を描いた物語です。彼等の日常風景と共に襲い繰る帝国との激しい戦闘描写もあり、様々な出来事を経て、世界や泥クジラの謎が少しずつ解き明かされていきます。
そして、起こった出来事の全てを日記に記し続ける少年・チャクロの物語でもありますね。ちなみに、「泥クジラ」で生まれた子らの名前は、チャクロ(茶黒)スオウ(蘇芳)オウニ(黄丹)といったように、色がモチーフになっているようです。
骨太なストーリーで暗いシリアス面が強調されていますが、泥クジラに住むキャラクターの明るさが少し緩衝材になり、読む側にとってもそれが救い。ほのぼのした日常を壊すように残酷な戦闘が巻き起こり、物語が進展するにつれ運命の過酷さは深まりますが、そんな中でも新たな仲間、そして明日への希望も生まれます。絶望の中にも希望を感じられ、しかし不穏な影は常に付き纏っているという絶妙な空気感は見事ですね。

私が思う最たる魅力は独特な世界観と設定ですね。まず最初に知っておくべきは、この作品は「ハイパーグラフィア(過書の病)」と呼ばれる、なんでも記録せずにはいられない主人公の少年・チャクロの記した記録と手記を、第三者の「うめだ(作者)」という人物が見つけ、それを元に漫画を描いているという体裁がなさた懐古本的な作風
果て無き砂の海が広がる世界、そこに浮かぶ島のような巨大船「泥クジラ」。この泥クジラの住人のうち約9割は“印”と呼ばれ、「情念動(サイミア)」という念じることで器物を操る力を持つ能力者たちです。ただ、印たちは動力源として泥クジラの心臓部「魂形(ヌース)」に命を吸われているため、寿命は約30年と短命。それ故、住人の1割であるサイミアを使えないかわりに長命な“無印”たちが指導者としての役割を担っています。
外界はディストピア的な世界で船の中も絶望的に思われるかもしれませんが、当の印たちに暗さはなく、明るくのびのび生きてるので閉ざされたユートピアにも見えます。彼らにとってそれは生まれたときからの必然であり、その死を幾度も見ていることから受け入れています。むしろ、無印たちの方がそのことを憂いていますね。
泥クジラに彼らが乗っている理由を知るとやはり辛い気持ちになってしまいますが、儚いからこそ彼等の姿は眩しく強い輝きを放っているようにも思えます。住人がこの循環から抜け出せるのかというのも、本作の大きな見所ですね。

キーとなるのは「感情」だと思います。上述で泥クジラのヌースは命を吸っていると書きましたが、他のヌースが吸っているのは命ではなく「感情」。当初リコスが感情を失っていたように、この世界には感情の“ある”人間と、感情の“ない”人間”がいます。詳しくは避けますが、その感情が争いを生む要因にもなってきます。
この作品を読んでると、感情がいかに人間にとって必要なものなのかが身に染みますね。一応人間とは言いますが、作中の感情を喰われている人たちは、操られている人形のように機械的に動く存在。何も感じない彼らには悲しみも辛い感情もない変わり、そこに人間らしさはなく、人間の形をしていても生きていると言っていいのかは疑問。
時に私も何も逃げ出したくなりますが、リコスの変化を見てると、人間にはなくてはならないものだなと思わされますね。彼女からチャクロに対して特別な感情を伺えたときは嬉しくも感じました。

読み始めると一気に引き込まれる世界観、気になり過ぎて困る骨太なストーリー、そして愛しい気持ちを抱かせてくれるキャラクター、どの要素も素晴らしく、戦闘も残酷ではあるけど迫力があって見応えはありました。暗さが目立ってはいますが、新天地を目指す冒険心をくすぐるワクワク感も少しあり、秘された多くの謎や伏線が少しずつ解き明かされていく展開の仕方も見事ですね。
この世界を儚くもより美しく見せている要因のひとつは、作者・梅田阿比さんの絵の力ですね。女性作家さんらしい繊細なタッチで描かれる背景や人物は美しく、素晴らしいファンタジー世界を生み出しています。単行本の表紙からして素敵なイラストなので、目も心も奪われてしまった気分。
暗い結末を予感させる雰囲気もありますが、できるなら泥クジラの人々が幸福な地へ辿り付いてほしいと願わずにはいられません。
まとめる力がないのでいつもより少し長くなってしまいましたが、よければ『クジラの子ら』を読んでみてください。強くおすすめさせていただきます。



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2017年02月17日

【町でうわさの天狗の子】マンガ 感想&あらすじ 天狗の子として生まれた少女が普通の幸福を求めて奮闘する恋愛ストーリー

月刊フラワーズ。2007年6月号から2013年12月号まで連載。既刊12巻
作者:岩本ナオ
他作品:雨無村役場産業課兼観光係



あらすじ

緑峰山に住まう天狗を信仰する町、緑峰町。山のふもとに母と2人で暮らす少女・刑部秋姫は、天狗の父と人間の母との間に生まれた町でうわさの天狗の子。

普通の人より力が強いこと、たくさん食べることを除けば、見た目も中身もどこにでもいるごくごく普通の女の子。お山では暮らさず、下界で母と暮らしながら学校にも通っていた。

天狗になるため修行に明け暮れる幼馴染の瞬ちゃんからは、はやくお山にあがって「修行して 天狗になれ」と口酸っぱく言われ続けているが、天狗になりたくない秋姫はそれを拒み続ける毎日。秋姫の頭の中は憧れのタケル君のことで頭がいっぱいなのだが・・・。

天狗の子の秋姫は、お目付け役の瞬ちゃんや友達の緑ちゃんたち、それと緑峰山に住む眷属たちと、ちょっとふしぎでヘンテコな日常を送っていく。

主要登場人物

・刑部 秋姫(おさかべ あきひめ)
主人公。群青高校に通う1年生。天狗の父親と人間の母親との間に生まれた天狗の子。力持ち、大食いを覗けば、外見も中身も普通の女の子。 「緑峰山太郎坊秋姫」という天狗としての名前を持ち、お山では「太郎坊」や「姫さま」と呼ばれています。天狗としての資質は他に類を見ない力を秘めていますが、本人は天狗になることを強く拒んでおり、普通の女の子になりたいと望んでいます。

・榎本 瞬(えのもと しゅん)
秋姫の幼馴染。まだ赤ん坊のときに緑峰山の麓に捨てられていたところを康徳坊に拾われ、秋姫と一緒に育てられました。人間ではありますが天狗になるため修行に励んでいます。天狗としての名は緑峰山次郎坊瞬。秋姫のお目付け役として群青高校に通いだします。女子からの高い人気にはあまり関心ない様子ですが、秋姫のこととなると一生懸命になります。

・神谷 武(かみや たける)
秋姫の片想い相手。群青高校に通う1年生。実家は大工で、秋姫の父が住まう康徳神社を建てたのは神谷家の先祖。女子からの人気が高いだけでなく、妖からも好かれる性質。手先が器用なため物作りを得意とし、血筋が影響しているのか武の作る像には何かが宿るようです。誰にでも隔てなく優しい性格ですが、さびしがり屋の一面もあります。仏像マニア。

・松中 緑(まつなか みどり)
秋姫の親友。群青高校に通う1年生。祖父は緑峰町長を務めています。まだ幼かった頃は「町長の孫」として扱われことを嫌い、秋姫が自分と似た境遇にあったことがきっかけで仲良くなりました。クールで物静かな性格をしてますが、結構毒を吐きます。読書家で、特にオカルト系の怪しい本が好き。

・金田一麗華(きんだいち れいか)
秋姫のクラスメイト。群青高校に通う1年生。当初は緑峰町にある天狗信仰に懐疑的な立場にあり、秋姫や緑峰中学出身者を馬鹿にしていたが、後に和解し、緑ちゃんと共に秋姫の良き理解者になります。面倒見の良い姉御肌で頼りがいのある性格。

・康徳坊(こうとくぼう)
秋姫の父親。緑峰山にある康徳神社の僧正天狗。夏祭りの夜に出会った秋姫の母・春菜と450歳差の恋仲になりました。最初は秋姫をお山に引き取る約束をしていましたが、春菜の脅しを含んだ猛反発を受けて断念。秋姫のことを非常に溺愛して何かと気にかけています。元は破戒僧でしたが、天狗となった現在では街の住民からとても慕い敬まわれています。


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感想・見所

天狗の父と人間の母との間に生まれた少女が、人間離れした自らの力や天狗に関わる様々な事柄に振り回されながらも、幼馴染や友人たちと共に、恋をし、友情を育み、普通の女の子として青春を送ろうと奮闘する物語。
ちょっと不思議なほんわか青春ラブストーリー。「TV Bros.」のマンガ賞『輝け! 第2回ブロスコミックアワード2009』大賞受賞、第55回小学館漫画賞少女向け部門受賞した作品。

まず私が気に入ったのはこの作品の世界観。
少し懐かしさを感じるどこにでもありそうなのどかな田舎町を舞台としています。土着信仰が根付いてるところが田舎らしくあるんですが、その信仰の対象は偶像の神仏ではなく、人々の目に映り言葉も交わせる命を持った天狗。神様や妖といった人ならざるものの存在を人々は疑いなく認知しており、敬い、親しみ、畏れを抱きながら信仰しています。
本来ならファンタジー的な存在である天狗や神、人の言葉を話す動物や妖怪などが、違和感なく日常生活の中に溶け込んでいるふしぎな世界観です。会話のなかにも当たり前のように天狗などのことがあがり、主人公が天狗の娘であることも周知の事実として住民たちは受け入れており、孫を相手にしてるかのように結構可愛がられています。
ありふれた日常を送る町の住民、学校へ通う少年少女、それを山の上から見守る天狗や眷族たち、人の日常にファンタジー要素が自然に寄り添う町、とても良い雰囲気ですね。

これだけ見ると和風ファンタジーモノを想像してしまうのかもしれませんが、展開の仕方はとても少女マンガらしい作品です。まあ、少女向け雑誌に掲載されていたわけですから当然ではあるんですけどね。
ちょっと不思議な世界で、天狗の父親を持って生まれてきた少女が、等身大の女子高生らしい悩みを抱いて学校生活を送っています。イケメンの人気者に憧れを抱いていた少女がその人とお近づきするため日々奮闘しているうちに、いつしかずっと近くで見守ってくれていた幼馴染の存在の大きさに気づき、次第に想いを膨らませていくという少女マンガの王道とも言っていい流れ。
それだけだと定番というよりありきたりな作品になり下がってしまう恐れがあるわけですが、そこに天狗や妖などのファンタジー要素を織り交ぜてることで、他の少女マンガとは一線を画す味わいを楽しめる作品に仕上げています。

主人公の秋姫は、年上好きの母親が450歳離れた天狗の父親と結ばれたことで生まれた女の子。脱輪したトラックを軽々と持ち上げてしまう怪力の持ち主で、将来は大天狗にもなれる高い資質を秘めていますが、本人は頑なに天狗になることを拒否し続けていました。秋姫は普通の女の子として恋愛をし、友達と遊んで、平凡な生活を送りたいと望んでいます。なにより、天狗になってしまったら父のように毛深く厳つい可愛さの欠片もない姿になってしまうので、それは女の子からしたら受け入れがたいことでしょうね。
天狗に絡んだ悩みも当然持ってはいますが、好きな人に可愛くないところを見せたくない、親が薦めるものにはなりたくないなど、この年頃なら誰しも普通に抱えてそうな悩みばかりです。ただ、本人の思いはどうあれ、皮肉にも内に秘められた大きすぎる天狗の力はどんどん成長して秋姫を悩ませることになります。そして、終盤からはファンタジー色がかなり強調された展開になりますね。

登場人物はどのキャラも皆良い子ばかりで可愛い。キャラ数は大所帯ではありますが、主人公だけでなく友人たちの恋愛も丁寧に取り上げています。
やっぱりメインの秋姫と瞬ちゃんは良かったですね。裏表がなく、誰よりも強い力を持っているのに守ってあげたくなる秋姫は可愛い。そして、秋姫の不安をいつも受け止めてくれる駿は男前。上述でも書いた通り天狗の力が大きく成長して不安を募らせる秋姫ですが、瞬ちゃんはぶっきらぼうな態度でいつでもどんなときでも寄り添ってくれます。見守っているだけではなく、好きな子のために成長しようとする瞬ちゃん、これは惚れますね。
秋姫の友人たちはすごい安心させてくれる存在でした。秋姫が辛そうな時は一緒に悩み、優しく励まし、嬉しい時や楽しい時は肩を並べて笑いあってくれる大切な友達。皆良い子ばかりなのでどの子の恋愛も純粋に応援したくなりますね。
特に親友のミドリちゃんが好きですね。秋姫のことを本当に大切に思ってくれていることが強く伝わってきます。ミドリちゃんと瞬ちゃんの意外すぎる関係がある意味作中で一番驚いたかもしれません。

読み始めた当初こそ、特殊な設定と世界観ばかりに注視していたんですが、、読み進めていくうちに先の展開がどんどん気になり出していました。ジワジワと引き込ませてくれる面白さがあるかと思います。
ラストもぐだぐだな展開に陥ることはなく、1人の少女を救うため、幸せになってもらうため、登場人物一丸となって奔走する温かさを見せ、とても感動させてもらえました。
普通を求めた天狗の子から、普通であることの幸せ、そしてそんなありふれた日常の中にこそ特別が生まれることに気づかせてもらえました。恋愛、友情、親子愛、ファンタジーでも日常系としてでも楽しめる作品なので、よければ読んでみてください。おすすめさせていただきます。



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2017年01月27日

【ぼくの地球を守って】マンガ 感想&あらすじ 前世の記憶を持つ少年少女たちが自分と向き合う姿を描いたSF作品

花とゆめ。1986年12月20日から1994年5月20日まで連載。既刊21巻
作者:日渡早紀
他作品:GLOBAL GARDEN



あらすじ

北海道の田舎から東京の高校へ転校してきた坂口亜梨子は、草花や樹木の気持ちがわかる不思議な少女。元々引っ込み思案で大人しい性格が災いしてクラスには馴染めず、さらに東京は自然の「自」の字もない空気の悪い街だったため、「帰りたい・・・」と寂しさを募らせていた。

ある日、亜梨子は偶然クラスメートの迅八と一成の会話を聞いてしまったことをきっかけに、2人が同じ夢を共有していることを知る。夢の中ではお互い全くの別人の姿であり、背景にはまるで月から見下ろしているかのようにいつも地球があるということだった。

一緒に話を聞いていた近所に住む何かとちょっかいを出してくる小学生の輪は、亜梨子が他の男子と仲良く話していたことに嫉妬してしまう。困らせようとイタズラしたことに怒った亜梨子は、叱った折に誤ってベランダか輪を転落させてしまった。

幸い奇跡的に軽傷で済んだ輪だったが、この事故をきっかけに迅八たちが話していた月の記憶に目覚め、怪しい行動をとるようになっていく。さらに、亜梨子もまた月で「木蓮」という女性として生きていた夢を見るようになり、遠い場所の、遠い記憶に深く関わり、振り回されていくことになる。


主要登場人物

坂口亜梨子
植物や動物の感情が分かる少女。石蕗高校1年生。黒髪ロングヘアーの美少女。内気で大人しい性格をしており、北海道から引っ越してきた当初はクラスに馴染めずにいました。輪とは近所に暮らしていたことから世話を任せられることもあり、彼のイタズラには困っていました。前世の記憶に覚醒してからは動植物の感情が分かるだけではなく、歌によって植物の成長を促進させる現象も起しています。
前世は木蓮(モクレン)という名の女性。本名「コウ=ハス=セイ=テ=モク=レン」。 生物学者で、月基地のマドンナ的存在。数億人に1人しかいないキチェ=サージャリオンという特殊能力者。彼女の歌は植物を異常成長させてしまう効果があります。

小林輪
亜梨子の隣室に住む少年。小学2年生。ある事故がきっかけとなり、前世の記憶と能力に覚醒し、大人びた態度と言動をとる天才少年になりました。事故前はイタズラ行為で亜梨子の気を引こうとしていましたが、事故以降は直接的に想いを伝えるようになり、強い執着も見せます。何かの目的のために怪しげな行動をとるようになり、覚醒はしても本来とは別の人物として振舞っています。
前世は紫苑(シオン)という名の男性。本名。「ザイ=テス=シ=オン」孤児院出身の戦災孤児。天才的なエンジニア、強力なサーチェス能力の持ち主ではありますが、協調性には欠けています。木蓮の恋人だった。

小椋迅八
亜梨子のクラスメイトの石蕗高校1年生。一成の幼馴染。単純で喧嘩っ早い性格。亜梨子に想いを寄せており、彼女が木蓮の転生者だと知ってからより気にかけるようになります。前世の記憶には覚醒はしていますが、能力はほとんど使えません。
前世は玉蘭(ギョクラン)という名の男性。本名「オ=アンティ=シャ=ギョク=ラン」。考古学者。サーチェスではありましたが、制御は上手くできなかったようです。 前世では木蓮に片想いしており、紫苑とはライバル関係。

錦織一成
石蕗高校1年生。迅八の幼馴染。中世的な整った顔立ちをしている少年。前世の女性が玉蘭(現在・迅八)に一途な愛を抱き続けていたことで、次第に一成自身もその想いに引きずられ迅八を意識するようになり、思い悩む日々を送っていました。
前世は槐(エンジュ)という名の女性。本名「ト=フェコ=ロール=エン=ジュ」 。古生物学者。木蓮に恋する玉蘭に想いを寄せていました。テレパス能力の持ち主。

国生桜
横浜に住む高生2年生の少女。勝気な性格をしているため、女性らしい槐に憧れを抱いています。前世では槐(一成)の親友だったこともあり、迅八を意識してしまうことに思い悩む一成の相談に乗り励ましている内に親しくなっていきます。
前世は繻子蘭(シュスラン)という名の女性。本名「ロキ=シ=アノール=シュス=ラン」 。科学者。親友の槐の保護者的存在。報われない彼女の恋を見守り続けていました。勝気な性格に反し、精神的な面は脆い。

土橋大介
川崎に住む高校2年生。ある事故がきっかけで、同じ学校に通う桜も前世を持っていることを知ります。前世の月基地でリーダーを務めていた影響か、現世でも7人のリーダー的存在です。
前世は柊(ヒイラギ)という名の男性。本名「オク=タコ=サノール=ヒイ=ラギ」 。言語学者。月基地のリーダーを務めていました。ウィルスに汚染した基地を放棄するという提案を責任感から拒み、結果メンバー全滅を招いてしまいました。

笠間春彦
病弱で入退院を繰り返している少年。インド系クォーター。紫苑にそっくりな容姿。中学3年に復学していますが、年齢的には高校2年生。前世で犯した過ちに悩み、そのことで輪に脅されてしまいます。体が弱いのは、前世から引き継いだテレポートを繰り返していたため。
前世は秋海棠(しゅうかいどう)という名の男性。本名「レム=サイ=ネ=シウ=カイドウ」 。医学博士。基地で蔓延したウイルスのワクチンを完成させるが、木蓮を手に入れた紫苑に嫉妬し、彼にだけワクチンを打ってたった1人取り残そうとしました。



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感想・見所

月から地球を見守るように観察していた7人の異星人。月で命を落とした彼らの記憶と能力を引き継いだ7人の少年少女たちが、現世でも消えない深く刻まれた前世の因縁と対峙し、思い悩みながらも今を懸命に生きようとする姿を描いた物語。
通称「ぼく地球(ぼくたま)」と呼ばれる、輪廻転生によって現世と前世の狭間で揺れ動く主人公たちを描いたSF作品です。
通常の新書版コミックス全21巻の他に、大型の愛蔵版コミックス全10巻、文庫版全12巻が発行されています。また、アニメ化もされており、1993年から全6話でOVAもリリースしました。OVAは原作の途中までなうえ、ラストもオリジナル展開で締め括られてはいますが、個人的にはかなりお気に入りのアニメですね。

もう20年以上も前に完結した作品です。連載スタートに関しては30年以上前というかなり古い作品。私が読んだのは今から2年くらい前ということで、やはり絵柄やセリフ、人の考え方などからも若干古さを感じたものの、面白いものはどれだけの年月が経とうと色褪せない魅力がありますね。私の育った時代とのズレから違和感を感じることもありましたが、いつの間にか読む手が止まらなくなって一気に読了。

主人公の少女・亜梨子が偶然クラスメイトの迅八と一成の会話を聞き、夢―「ムーン・ドリーム」を共有していることを知り、輪の転落事故(軽傷)と回復を経た後に自身も「木蓮」としての夢を見て覚醒しました。
そのことを迅八たちと話し合った結果、月基地には7人の人物がいたことから、「もしかしたら探せば他にもいるんじゃないか?」という流れになり、夢の中の仲間探しを開始します。案の定、同様の夢を見ていた桜、大介、そして晴彦たちが現れ、そこに幼い輪も加わるというのが序盤ですね。
ここから究極のかまってちゃん(紫苑)を筆頭に、登場人物1人1人の愛憎入り乱れた人間ドラマが展開されていきます。

7人中6人がだいたい16、17歳の同年代のなかに、1人だけ小学生の輪が交じっているという違和感、「なぜ?」という疑問を抱くと思います。これは決して偶然でもなんでもなく、後々判明することですが、月基地で起こったあることが大きな原因となっており、彼の空白の9年間が本筋ストーリーに大きな意味をもたらすことになります。
亜梨子たちは他のメンバーと会うまでは「ムーン・ドリーム」がいつの時代を映してしたのかは曖昧でしたが、最も多く夢を見ていた大介の話から前世だったという確信に至り、さらにまだ思い出していない衝撃の事実も知らされることになります。

最初はただの不思議な体験に対しての興味心から起きた会合だったと思います。しかし、お互いの記憶を確認し合い、自分たちの前世をより深く知っていくなかで、次第に心までもう1人の自分に引っ張られていくようになり、前世と現世の狭間で思い悩むようになってしまいました。
彼女たちの年代が感受性の高まりやすい時期というのも大きな要因でしょうね。ただでさえ精神的には不安定な時期に、さながらもう1つの人生を体験してるようなものですから、自分をどこに置いていいものか思い悩むのも、影響を強く受けてしまうのも当然といえば当然の話だと思います。
ただ、この現世と前世の記憶が絡み合う複雑な人間模様は面白い。中には性別が前世と現世で異なる子も存在し、恋していた相手が前世では異性でも現世では同性ということもあり、その想いの影響まで受けているのだから困ったものです。前世の完璧な木蓮という人物像と今の自分を比較して自信をなくしてしまう亜梨子や、前世での過ちを深く引きずる晴彦、そして最も色濃く前世のしがらみに囚われている輪。現世と前世、今の自分と転生前のもう1人の自分、悩み苦しみ葛藤しながらも、それぞれが答えを出すためにしがらみと向き合うことになります。
登場人物は多くても1人1人しっかした設定で丁寧に作られており、それぞれが役割を果たしていたので全く必要ないという子はいなかったですね。

木蓮たち月メンバーのエピソードも面白かったです。遠く離れた母星に起きた悲劇、基地内で起こる様々なトラブルや事件によって、話が進むごとにシリアスの濃度は増していきましたが、重くても目が離せない展開を繰り広げていました。それぞれの誰かを想う愛情を強く感じられたものの、結局誰一人として報われることなく命を落としたのは辛かったです。月での暮らし以前、戦災孤児だった紫苑の親代わりになったラズロと珍獣キャーとの過去話も、好きだけど悲しい。
私は木蓮好きでしたね。とても良いキャラだったと思います。容姿端麗、才色兼備、冷静沈着、温厚博識、それでいておおらかな性格。一見スキのない完璧な聖女なんですが、実はお転婆ではねっかえりな子という性格は良かったですね。

壮大な物語と人間ドラマに感動させてもらえました。輪廻転生、地球外の星と生命、ESPなど、下手するとごちゃ混ぜ過ぎて物語が破綻してしまいそうな設定とテーマを組み込んでいますが、1つ1つの材料を丁寧に調理し上手くまとめられており、その読者を引き込ませる展開と世界観の奥深さは素晴らしかったです。
あと、漫画とは関係ありませんが、菅野よう子さんが作曲したOVAのテーマソング『時の記憶(歌手:SEIKA)』は名曲だと思います。重厚でありながら透き通った声がその場に広がる透明感ある美しい曲です。ぜひ聞いて欲しい。
男女問わず読める作品だと思うので、よければ読んでみてください。ただ、どちらかというと大人向けかな。あと、続編として『ボクを包む月の光』、『僕は地球と歌う』も出てます。



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プロフィール
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ハネ吉
とにかく漫画が大好きです。愛してるといっても過言ではありません。どんなジャンルにも手を出しますね。正直、文章力にはあまり自信はありませんが、なるべくうまく伝えられるようにがんばります。ちょっとだけでも読んでもらえたらうれしいです。 ちなみに、甘い物とネコも大好きです。
プロフィール
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