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2017年03月03日

【BLUE GIANT】マンガ 感想&あらすじ ジャズの音に魅入られた少年の軌跡を描いた青春サクセスストーリー

ビッグコミック。2013年10号から連載。既刊10巻
作者:石塚真一
他作品:岳 みんなの山



あらすじ

宮城県仙台市に住む高校3年生の宮元大。高校ではバスケ部に所属してスポーツで汗を流す日々を送る傍ら、大はあるモノに熱中し、広瀬川の土手の上にいた。

中学時代、友人に連れられて初めて訪れた場所、ジャズバー。そこで生のジャズを目の前で体験した大は、激しく心を打たれたことがきっかけになり、サックスを吹きはじめていた。

誰の教えも受けずに独学で勉強し、毎日休むことなく川原の土手の上で、雨が降れば長い坂を登った先にあるトンネルの中で、無心にサックスを吹き続ける日々を送っている大。

ライブでお客から罵声を浴びせられたこともあったが、―――世界一のジャズプレーヤーになる
その夢を現実にするため、ジャズを通じて様々なプレーヤーたちと出会い、家族や周囲の人たちの助けや応援を励みに、大はただ真っ直ぐに突き進んでいく。

登場人物

・宮本 大(みやもと だい)
主人公。開始時は仙台市の高校に通う3年生、後に上京。母は10歳のときに亡くなっており、現在は父、兄、妹の4人家族。中学時代に友人と一緒にジャズバーを訪れ、生のジャズ演奏に魅せられたことでテナーサックスを始め、世界一のジャズプレイヤーを目指すようになりました。人並み外れた肺活量によって太く鋭いパワワルな音を生み出し、大の演奏を聴いた多くの人達が激しく心を揺さぶられ、中には涙まで流す人も現れます。真っ直ぐな性格で、ひたむきな姿勢でジャズと常に向き合っています。

・宮本 雅之(みやもと まさゆき)
大の兄で宮本家の長男。家族思いの優しく懐の大きいお兄さん。高校卒業後に就職し、母のいない宮本家を父と一緒に支えています。大がジャズをやるために自分でお金を貯めていると聞いていたことから、初任給の当日、訪れた音楽ショップで安物ではなく一番高いテナーサックスを迷うことなく購入し、それを大にプレゼントしました。

・宮本 彩花(みやもと あやか)
大の妹で宮本家の末っ子。天真爛漫な女の子。雅之のことを「でっかい兄ちゃん」、大のことを「ちっちゃい兄ちゃん」と呼んでいます。大とはよく喧嘩をする仲でしたが、上京する際は涙を流して悲しんでいました。上京後の大にフルートをプレゼントしてもらい、現在は大もサックスを教わっていた由井 (ゆい)の音楽教室でレッスンを受けています。

・宮本大の父
宮本家の大黒柱。大型食品スーパーの店長を務めています。大が将来何をしたいのかを気にしていましたが、ジャズプレーヤーになりたいという大に対し、悩むそぶりもなく「やれよ。とことん、おもいきりやれよ。」と後押ししてくれました。

・沢辺 雪祈(さわべ ゆきのり)
東京で大が出会ったプロを目指すイケメンジャズピアニスト。大と同い年。高い才能とそれに見合う卓越した技術を持ち、努力も怠りません。大と玉田とのトリオバンド「ジャス」を組むことになります。大たちの演奏に容赦なくダメ出しをして尊大な態度をとることもありますが、ジャズには真剣に向き合っており、自らへの批判も真摯に受け入れる度量の深さもあります。ジャズ界の武道館「ソーブルー」に立つことが子供の頃からの夢。

・玉田 俊二(たまだ しゅんじ)
大の仙台時代からの友人。大学進学のために上京し、1人暮らしをしていたアパートに上京した大が住み着いています。大のサックスに触発されたことでドラムを始めることになります。音楽経験もない素人で当初は雪祈にメンバー入りを反対されていましたが、大学にも行かず毎日練習に励んだことでメキメキ上達し、少しずつでも認めてもらえるようになりました。


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感想・見所

初めて聞いたジャズの音楽に魅入られたことでテナーサックスを始めた少年が、ジャズを通じて様々な人達と出会い、音を共有していくなかで成長し、世界一のジャズプレイヤーを目指して立ち止まることなく突き進む物語。
「JAZZ(ジャズ)」をテーマにした青春音楽漫画。マンガ大賞2016において第3位、第62回小学館漫画賞を一般向け部門で受賞しています。著者は実写映画化もされた『岳』を代表作に持つ石塚真一さん。
『BLUE GIANT』は「ビッグコミック2016年17号」で既に完結していますが、2016年18号から同誌で『BLUE GIANT SUPREME』というタイトルに改め、日本を飛び出した海外編が連載スタートされています。

数多あるジャンルの中でも年齢・性別あらゆる垣根を越えて高い人気を得ている「音楽」漫画。その種類は多岐に及ぶことから、一概に音楽漫画として一括りにはまとめ辛いところもありますね。クラシックを題材にしている『四月は君の嘘』や『ピアノの森』、日本の伝統音楽を題材とした『ましろのおと』や『この音とまれ!』、他にも軽音楽・合唱・ブラスバンドなど、次々と各雑誌で新しい音楽漫画が生まれています。
今回紹介させていただく『BLUE GIANT』は「ジャズ」。同じテーマを扱った作品を挙げるなら『坂道のアポロン』ぐらいしか思い浮かびません。私が知らないだけでしょうけど意外とこのテーマで描かれている漫画というのは少ないですね。

馴染みのない人でも楽しめるジャズ漫画

「ジャズ」と言われても、昔からある音楽ジャンルのひとつとして名前を知っていても、現代ではメディア露出が少ないため馴染みは薄く、少なくとも私はピアノ経験ありますけど「ジャズって何?」と聞かれても説明がちょっと困難。ジャズ関連で思い浮かぶ人物もシンガーの「綾戸智恵」さんくらいでしたから。しかし、本作は私のようなジャズ初心者であっても関係なく楽しめ、読めば登場人物たちの生き様に心を熱くさせられる人も少なくないと思います。
まず、タイトル『BLUE GIANT』の意味は、質量と温度が極めて高いことから、赤を通り越して青色の光を放つ巨星「青色巨星」のこと。大のサックスの師匠であった由井がその星に見立て、世界一輝くジャズプレイヤーのことをブルージャイアントと呼んでいます。

ストーリーは単純に言ってしまえば大のジャズプレイヤーとしての成長物語ですが、実はかなり早い段階で大が将来世界的なジャズプレイヤーになることは想像できます。エピソードの合間や巻末で、作中に登場したキャラクターが数年後の成長した姿で登場し、大のことについて聞かれているインタビューシーンが毎巻挿し込まれています。昔の交流を懐かしみ、現在の彼を語る様子から、大がどんな状況にあるのかが推測できますね。
つまり、これは大が世界的なジャズプレイヤーに至るまでに辿っていった道、成長過程を見るサクセスストーリーです。将来の成功が恐らく確定しているにも関わらず、1つ1つの描写が丁寧に描かれているため、冷めるどころか帯びた熱が一層温度を増していき、必要ないだろうに応援したくなっている自分がいました。

リアルな問題を絡めて描かれる「夢」を追う男たちの姿

今の時代は、声を大にして夢を語ること、本気になって必死で何かに取り組むこと、なぜかそれらを嘲笑する傾向にあると思います。私自身も夢はあっても気恥ずかしくて誰かに真剣に語ったことはありません。
しかし、自分の持つ夢や目標を堂々と声高に叫び、そこに向かってひたむきに取り組む大たちの姿を見てると、心に何かが突き刺さると同時に清清しい気分にもなれ、何よりそんな彼らを素直に「カッコイイな」と思ってしまいますね。暑いから、雨が降ってるから、お金がないから、時間がないから、そんな自分を甘やかす言い訳で怠けることはせず、どんな日も、どんな状況でも大はサックスを吹き続けています。
もちろん順風満帆にトントンと事が運ぶわけもなく、度々大たちの前には大小様々な壁が立ち塞がります。それが結構リアルなのはこの作品の魅力でもあると思います。当初はセッションしてるにも関わらず我流で好き勝手に吹いてたことから、聞いていたお客に罵声を浴びることもありました。ただ、めげないのが大という男。楽器を知り、音を知り、技術を学びんで努力を続けたことで、周囲との調和をとりながらも自分の個性を殺さない演奏が少しずつできるように成長していきます。
あと金銭面の問題ですが、このあたりの描写は実にシビアで現実的に描かれています。当然駆け出しの彼らが音楽で手にするお金なんて微々たるもので、日々バイトに明け暮れる毎日。大変なのはプレイヤーだけではなく、CDを売る人たち、ライブを運営してる人たちも同様。でも、そんな状況の中でも夢を捨てずに努力してるからこそ、こちらも応援もしたくなります。

圧倒される「音」の表現

そしてなんといっても音の表現、ライブの表現が見事。音楽を扱っている漫画で最も困難とされるのは耳では聞けない「音」の表現。作品ごとに様々な工夫を凝らして読者になんとかして音を伝えようとしていますね。
この作品はそこがよく表現されていると思います。演奏者とお客の表情などのリアクション、コマ割り、細やかな描写、工夫を凝らした演出、それ等によって音の大きさや激しさ、それに曲調がうまく表現されていました。
漫画であることには変わりないのに、絵ではなく音に引き込まれるかのような錯覚に陥ることもありますね。その迫力に圧倒され、時には大袈裟かもしれませんけど感動して涙が出そうになることもあります。

最後に

ジャズという音楽の素晴らしさだけではなく、何かに本気で挑むことのかっこ良さも見せてくれた作品でした。とにかく心を打たれるシーンやセリフが多く、涙腺に訴えかけてくる感動、冷めていた心をたぎらせてくれる熱さがあり、音楽描写だけではなく、濃い人間ドラマも魅力的な内容。
年代も性別も関係なく楽しむことができる作品だと思いますので、よければ読んでみてください。自信をもっておすすめさせていただきます。



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posted by ハネ吉 at 19:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2017年02月24日

【この音とまれ!】マンガ 感想&あらすじ 筝の音に想いを乗せて部活に打ち込む高校生たちの青春ドラマ

ジャンプスクエア。2012年9月号より連載中。既刊13巻
作者:アミュー



あらすじ

時瀬高校筝曲部は3年生が卒業したことで、元々少なかった部員はついに倉田武蔵ひとりを残すのみになってしまった。

部の存続のため新入部員勧誘に励む武蔵だったが、入部希望者は一向に現れず、しかも廃部危機と合わせて大事な部室も不良たちに占領されているという最悪の状況だった。

そんな時、地元では不良として名の知れた新入生の久遠愛が部室に現れ、居座っていた不良たちを追い出すと、「俺、そーきょく部 入っから」と入部希望を出してきた。不良である彼を信用できなかった武蔵は入部希望を突き返すが、愛の箏への真剣な思いを汲み取って筝曲部へ受け入れる。

さらに、琴の名門の娘・鳳月さとわ、愛の友達3人組、武蔵の同級生も加わったことで、筝曲部の状況は一変することになる。
様々なトラブルに直面しながらも日々の練習や交流の中で絆を深めていく仲間たちは、琴の魅力に目覚めたことで熱意を持って取り組むようになり、ライバル校と競い合いながら高校全国1位という目標に向け突き進んでいく。


主要登場人物

・久遠 愛(くどお ちか)
主人公。時瀬高校1年生。愛称「チカ」。親に見捨てられたことが原因で地元でも有名な不良になってしまいましたが、箏職人の祖父・久遠源と一緒に暮らすうちに落ち着きを取り戻していきました。源の死をきっかけに、祖父が大切にしていたものを知りたいという理由から筝曲部へ入部。不良っぽい見た目とは裏腹にとても素直な性格で、子供のように無邪気に笑うこともあります。当初は素人同然の腕前でしたが、筝を学ぶことには積極的なため上達は早く、まれに聴く者の心を惹きつける音を奏でることもあります。現在は叔母・衣咲宅に居候。素人甘いものとおにぎりが好物。

・鳳月 さとわ(ほうづき さとわ)
ヒロイン。時瀬高校1年生。箏の名門である鳳月会家元の娘。容姿端麗の黒髪美人。箏に対する熱意は強く、腕前は天才的。元々母親とは良好な関係でしたが、夫の死後様々な要因で精神的に弱っていたことから母娘関係に亀裂が生じ、大会でのある出来事が原因で破門、以来絶縁状態になってしまいました。入部理由は将来プロデビューするにあたって「弱小校を全国に導いた」という箔をつけるため。傲岸不遜で指導も厳しい尖った性格をしていますが、筝曲部で過ごす内に雰囲気は柔らかくなり、当初の目的に関しても心境の変化が生じるようになります。

・倉田 武蔵(くらた たけぞう)
もう1人の主人公。時瀬高校2年生。筝曲部部長。真面目な性格をした努力家ですが、臆病で本番やプレッシャーに弱い面もあります。ですが、チカやさとわたち新入部員たちとの交流で精神的な弱さを克服しつつあります。誰にでも優しく包容力もあり、部員たちをよく見ていることから心の機微にも聡く、悩んでいる人を見つけると自然に寄り添い温かい言葉を与えてくれます。その反面、自分自身のことについては1人で抱え込みがち。先輩から受け継いだ部と代々伝わる曲を守るという強い意志を持っています。

・足立 実康(あだち さねやす)
チカの友人。時瀬高校1年生。愛称「サネ」。光太と通孝と一緒にチカのいる筝曲部へ入部しました。中学時代、不良にナイフで絡まれた際チカに助けられ、以来友情を感じるようになり、その時の借りもいつか返したいと思っています。当初は部の存続のために数合わせとして入部しましたが、箏の魅力に触れていく内に真面目に取り組むようになります。

・水原 光太(みずはら こうた)
チカの友人。時瀬高校1年生。愛称「コータ」。サネ等と一緒に当初は数合わせとして筝曲部へ入部し、チカに中学時代の借りを返すため演奏にも取り組むようになります。明るく人懐っこい性格。リズム取りが苦手で他の部員たちから遅れ出しますが、猛練習と周囲の助けによって克服。バストサイズを正確に当てる特殊能力の持ち主。

・堺 通孝(さかい みちたか)
チカの友人。時瀬高校1年生。愛称「みっつ」。小太り体型。サネやコータと一緒に当初は数合わせとして筝曲部へ入部し、チカに中学時代の借りを返すため演奏にも取り組むようになります。見た目から受ける印象通り食べることが好き。

・来栖 妃呂(くるす ひろ)
武蔵と同級生の女子高生。過去の出来事から人間関係そのものを信じておらず、暇つぶしと称して仲良さげの人達に近づいて関係を壊していました。箏曲部にも部内の関係を壊すため入部したが、何を画策しても絆を壊すことはできませんでした。本当はチカたちのような関係を羨んでおり、さとわの言葉と、壊そうとした自分すらも部員たちが受け入れてくれたことで改心しました。副部長として武蔵をサポートしていくうちに恋心を抱くようになります。

・滝浪 涼香(たきなみ すずか)
箏曲部顧問を務める男性教師。当初は名ばかりの顧問として全くやる気を見せず、全国大会出場という目標も「勘弁しろよ」と応援すらしようとしていませんでした。実は両親ともに世界的に有名な音楽家で、自身も天才的な作曲の才能を持っています。未熟ながらも本気で打ち込む部員達を見て徐々に感化され、顧問として、音楽の先輩として協力するようになります。



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感想・見所

部員がたったの1人しかいなかった高校の箏曲部に、箏職人の祖父を持つ不良や箏の名門の娘をはじめ、内に様々な葛藤を抱えた面々が集まり、トラブルに直面しながらも日々箏に励み成長するなかで、全国1位という高い目標を掲げ部員一丸となって邁進する姿を描いた物語。
「箏」に打ち込む高校生たちの部活青春ドラマ。2017年3月8日には「久遠」「天泣」「龍星群」など、劇中で演奏された曲を収録した『この音とまれ!』の楽曲CDが発売されるようです。

近年、メジャーからマイナーまで様々な文科系部活、伝統文化を題材に扱っている熱い青春漫画が次々に登場し、高い人気を集めるようになりましたね。漫画を通して様々な角度から、異なる視点から、多くの日本文化を見て知ることができるのは興味を持つ良い機会にもなり、そのなかで送られている青春の輝きがまた素晴らしい。ときには眩し過ぎて目を逸らしたくなる場合もありますけど・・・。
競技かるたの『ちはやふる』、書道の『とめはねっ! 鈴里高校書道部』、さらに盆栽を扱った『雨天の盆栽』という作品まで登場し、同じ伝統音楽では三味線を題材にした『ましろのおと』辺りが有名ですね。本作は箏に青春を燃やす高校生の姿を描いた作品ということで、先にタイトルを挙げた中でも『ちはやふる』が好きな人なら特に楽しめるのではないかと思います。

伝統文化とはいえ、一般の人にとってはあまり馴染みない「箏」というマイナージャンルを題材にした珍しい作品。マイナーとはいえ中身は正統派青春ストーリーの様相を見せ、全国1位を目指すスポ根的な熱い展開、恋に友情に悩む少女マンガらしさも伺え、登場人物1人1人の内面やバックボーンも巧みな表現で丁寧に描いています。

本作は久遠愛と倉田武蔵という2人の主人公を起用。不良として荒んだ生活を送っていたが、箏職人である祖父との暮らしで落ち着きと安らぎを得られた新入生の愛。中学3年のときに起きた事件と祖父の死を経験したことで、「祖父が大切にしていたものが何なのか知りたい」という理由から入部します。
武蔵はチカたちが入部するまではたった1人の部員として、周囲から「なでしこちゃん」なんて揶揄されながらも部を守ろうとしていました。
ストーリーは主にこの2人と、筝の名門・鳳月会の娘として天才的な演奏技術を持つが、家庭環境に問題を抱えているヒロインのさとわを中心に展開されます。メインは3人であることに違いありませんが、比較的多くの視点を介しているのも特徴。他部員のサネや来栖さんだけではなく、ライバル校の面々や親族関係者など、メインからサブまで多くのキャラにスポットを当てているため感情移入しやすく、視点が変わると見え方や印象も同様に変わるので面白い。

登場人物の内面・心理描写が巧み。ほとんどのキャラが内に多かれ少なかれ悩みや葛藤を抱えています。しかも、ほぼ例外なく不器用という特性も付き、思春期の少年少女からいい年した大人たちまで、悩みもがいてる場面は少なくありません。
しかし、これこそが青春モノの醍醐味でもありますからね。本音でぶつかり合うこと、相手のことを理解しようと努力すること、周囲の助けも受けながら、それぞれのキャラが絆を結び、感じ、深めていきます。
特に部として絆を深めて心をひとつに全国を目指す姿は羨ましいとも感じました。私は中学・高校・大学の部活やサークルは個人競技だったので、チカたちのように団体で力を合わせて勝利を目指すことに憧れがあります。クセの強い子たちばかり、しかも大多数が素人からスタート、一見纏まりようがないメンバーが皆同じ方向を向いて突き進む姿は眩しいですね。

もちろん筝での演奏表現も素晴らしく、読めば筝に興味を持つかもしれません。作者のアミューさんがもともとこの方面に明るい方で、母と姉が筝の奏者、ご本人も経験者ということから、劇中のオリジナル曲も実際に作曲したそうです。
漫画からだけでは耳で音を聞くことは当然叶いませんが、奏者と聴衆の表情や背景、コマ割によって巧みに表現され、その曲と共に感情も流れ込んでくるかのような気さえします。漫画では聞けないと書きましたが、本作は実際に耳で聞きながら読むことができます。楽曲CDも発売されるようですし、youtubeに「流星群」や「久遠」の楽曲がアップされていますので、それを聞きながらその場面を読めばまた違った印象を受けるかもしれません。

少年マンガ的な面白さ、少女マンガ的な面白さの2面を併せ持った作品でした。全国1位を目指す熱い展開、甘酸っぱさを感じさせてくれる展開、シリアスとコメディ部分など、バランス良く描かれているので終始飽きることなく読むことができます。ストーリー、絵、キャラクターどれをとっても爽やかで美しく、読後感も素晴らしい良作。
もちろん、筝に対してあまり知識を持っていなくても全く関係なく楽しむことができます。むしろ、演奏場面やくどくないわかり易い解説を見ると興味が湧いてきますね。
男性も女性も関係なく楽しめ、筝や音楽に興味のある方、学園青春モノが好きな方には特におすすめできる作品。よければ読んでみてください。



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posted by ハネ吉 at 19:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2017年01月20日

【ピアノの森】マンガ 感想&あらすじ 想いが込められた演奏に心揺さぶられるヒューマンドラマ

ヤングマガジンアッパーズ→モーニング。1998年9号から2015年49号まで連載。全26巻
作者:一色まこと
他作品:花田少年史



あらすじ

森の中に捨て去られたピアノ、誰にも音を出せない壊れたピアノ、そのピアノを幼い頃から遊び場にしてきた少年、一ノ瀬海。

「森の端」と呼ばれるはぐれ者たちが集まる色街、そこで水商売をして生計を立てている母と2人で暮らしているカイ。店の雑用として働き、普通の子供らしく生きることは叶わない環境にいたカイは、いつまでもこの嫌な町から、そしてピアノの森からは離れられないと感じていた。

森にあるピアノの元の持ち主であり、かつて天才ピアニストと呼ばれた音楽教師の阿字野壮介は、もう聴けないと思っていた森のピアノを軽やかに弾くカイの姿を目の当たりにする。カイは阿字野から「一緒にピアノをやらないか」と誘われ、その場は断ったものの、どうしても弾けないショパンを弾けるようになるため、条件付きでピアノを学ぶことになった。

師との出会い、ライバルとの出会い、様々な人たちとの出会いがカイを大きく成長させ、その音色で多くの人たちをピアノの森へ誘っていく。

主要登場人物


主要人物紹介。
・一ノ瀬 海
主人公。通称「カイ」。母親似で女性にも間違われるほど綺麗な顔立ちをしている美少年。母の怜子と2人で「森の端」と呼ばれる色町で暮らしています。幼い頃から森に捨てられていた特殊なピアノを遊び場にしてきたことにより、天才的な才能と感性を自然に身に付けていました。大抵の曲は聴いただけで弾くことはできますが、当初は楽譜すら読めませんでした。当時音楽教師をしていた元天才ピアニストの阿字野壮介に才能を見出され、コンクールに出場したことがきっかけとなり、人に聴いてもらうことに喜びを感じるようになります。

・阿字野 壮介
カイの師。森のピアノの元持ち主。かつて国内の賞を総なめにし、世界的にも名を馳せたほどの天才ピアニスト。しかし、交通事故で左手の自由を失い、さらに婚約者を失ったことに強いショックを受け、ピアニストの道は捨て音楽教師として小学校で勤務していました。怪我で失ったはずの音を奏でるカイとの出会いに衝撃を受け、カイの師になることでピアノの世界に再び戻ることになりました。カイを世界に連れていくため、後ろ盾となり持ちうる技術を教え込みます。

・雨宮 修平
カイの親友兼ライバル。父親が国内で有名なピアニストであり、幼い頃からピアノの英詩教育を受けて育ってきました。小学生の時に短い間通っていた転校先でカイと出会い親しくなりました。他人と自分を比較してしまうことが多く、特にカイに対しては良くも悪くも強いライバル心を抱いています。全日本ピアノコンクールで優勝したものの、カイの演奏に敗北感を抱き、その才能を恐れた父親の薦めで海外留学しました。

・一ノ瀬 怜子
カイの美しい母親。生まれも育ちも色町の「森の端」であり、水商売で生計を立てています。15歳の若さでカイを出産(父親は不詳)。カイには深い愛情を注いでおり、森の端を出て欲しいとも願っており、カイのこれからを真剣に考えてくれる阿字野壮介に託すことを決めます。

・丸山 誉子
ピアニストを志している少女。裕福な家庭で生まれ育ち、常に白石という使用人が傍に控えています。第56回全日本ピアノコンクール・中部南地区予選でカイと出会い、その演奏を聴いたことで憧れを抱くようになりました。カイに会うためいくつものコンクールに出場し、その最中腱鞘炎を患うも、カイとの再会を果たし治療に専念することになりました。

・ジャン・ジャック・セロー
世界的なピアニストで指揮者。ショパン・コンクールに出場した若かりし頃の阿字野を唯一高く評価し、その折に他の審査員と揉めたことで以降コンクールとは袂を分かっています。事故にあった後も阿字野を気にかけ、日本語を覚えて励まし続けていました。カイの推薦者になり、阿字野と共に心強い後ろ盾になっています。



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感想・見所

森に捨てられていたピアノを弾いて育った少年が、ライバルや師との出会いをきっかけに世界の舞台へ羽ばたき成長する姿と、心揺さぶられる少年の奏でる演奏に深く影響を受けていく人たちとの人間ドラマを描いた物語。
数ある楽器のなかでもピアノをメインに扱い、それに携わるそれぞれの人間模様を描いたヒューマンドラマです。第12回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞。2007年にはアニメーションで映画化もされ、上戸彩さんや神木隆之介さん等が主人公たちの声を担当しています。

これまで読んできた中にも、『四月は君の嘘』、『BLUE GIANT』、『のだめカンタービレ』、『ましろのおと』など、音楽を題材とした人間ドラマを描いた素晴らしい作品はありますが、個人的にはこの『ピアノの森』は特に印象深い作品になってます。途中休載していたことも強く印象付けられた要因の1つですけどね。
引き込まれる音楽描写とストーリー展開、登場人物の人間関係と心理描写、そして何と言っても感動のフィナーレ、魅せられてしまう要素の多い作品です。

終始飽きさせず、記憶にも残る巧みなストーリー構成は素晴らしかったです。開始時点でのカイは小学5年生、成長した終盤では17歳の姿を描いています。物語を大きく分けると、カイの【少年時代編】と【思春期編もしくは準備期間編】、そして【ショパンコンクール編】の3編構成です。ちなみに、アニメーション映画はだいたい6巻の冒頭ぐらいまでの少年時代を映像化されています。
少年時代では、まだ楽譜すら読めず勝手気ままに遊びで弾いていたカイが、次第に誰かに聴いてもらえることに喜びを感じたことで、真剣にピアノへ向き合う決意をする過程を丁寧に描き、同時にカイの置かれている容易には抜け出せない過酷な環境についても語られています。そして、かけがえのない師となる阿字野、雨宮や誉子たち同年代のライバル、この先も物語に深く関わってくる人たちとの出会いの話もあります。
思春期編ではカイたちは高校生に成長しており、カイの置かれている状況の変化、阿字野によって着実に育てられている様子を伺うことができます。さらに、スランプに陥っていた雨宮がカイのピアノを聴き逃げずに向き合うことを決意する話、カイと岸上冴との恋愛、誉子の手首の故障の話など、本筋のテーマとは少し関わりの浅い話もありますね。ですが、それによって物語はより深みが増し、目標に向けての良いステップ段階を描かれていたと思います。
そして、ショパンコンクール編。見所は当然演奏。それぞれのピアニストたちの全てをこめた演奏、カイも冒頭からこれまでの人生を凝縮したかのような濃く深みある演奏を披露してくれます。そしてラストは・・・。

登場人物の心理描写を丁寧に語り、心情描写も巧みに表現されているので、1人1人に感情移入しやすくなっているのもこの作品の非常に優れているところですね。
楽しさや喜び、苦悩や挫折、そして葛藤と決意。登場人物の心の動きがとても分かりやすく、読んでいるとキャラクターと同様に苦しさや楽しさを感じることもあるので気持ちをもっていかれそうになりましたね。
そして、そんな心の内を吐き出すかのように様々情景を駆使した演奏シーンと、それを聴く人たちの心情描写が素晴らしく、「音」を読む人に伝えるという音楽漫画で最も難しいと思われる問題を巧みな描写で見事に表現していました。用いられている情景、奏者と観客の表情から音の強弱や曲の特徴は読み取りやすく、聴いたことのない曲であってもどんな曲か、どんな気持ちで奏でられているのかがとても伝わってきます。本来は聞こえないはずの演奏に圧倒され、感動を深く刻まれまた気分になりました。奏者の過去や経験を知っていると演奏の深みも増しますね。

正直言いますと、1巻だけを読んだ時点ではあまり強く惹かれませんでした。続き読むかも少し悩んだんですが、それだけで判断するのもどうかと思い、2巻、3巻と読み進めていくうちにどんどん面白くなり、今後の展開やカイの行く末が気になっていつの間にかどハマりしてましたね。最初のインパクトは強いけど終盤に向け尻すぼみになっていく作品が多いなか、ラストに向けどんどん盛り上がっていくステーリー展開は本当に素晴らしかったと思います。
この物語のフィナーレには完全にやられましたね。メインはカイという1人の天才の成長物語だと思っていたんですが、ラストを見てカイと阿字野2人の物語だということにやっと気づかされました。あそこまで気持ちよくシメてもらえると読者としても嬉しい限りです。
飲み込まれそうになる見事な演奏シーン、魅力ある登場人物が織り成す人間ドラマ、文句なくおすすめできる作品なのでよければ読んでみてください。
このマンガに出てきた楽曲を聴きながら読むのも良いかもしれませんね。ほんとに素晴らしい作品でした。



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posted by ハネ吉 at 19:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2016年07月04日

【ましろのおと】マンガ 感想&あらすじ 三味線に情熱を注ぐ奏者たちの演奏と人間ドラマを描いた青春ストーリー

月刊少年マガジン。2010年5月号から連載中。既刊17巻
作者:羅川真里茂
他作品:しゃにむにGO



あらすじ・概要

青森の津軽で生まれ、小さい頃から祖父・松五郎の三味線を聞いて育った澤村雪。松五郎がこの世を去ってしまったことで自分の「音」まで見失った雪は、無くした何かを見つけるために三味線を携え単身上京する。
松五郎が床に伏せっていた折、
「それじゃじっちゃんの真似だ。じっちゃんが死んだら三味線弾くな。みっともない音出してるって気づくまで引いたらダメだ」
そう言われたことが原因でしばらく弾くことが出来ずにいた。しかし、自分には他に何もないことに気づき、再び三味線を手に取る雪。学園での友人たちとの出会いや、様々な三味線奏者との交流を通じて、雪は人として、演奏者として、不器用ながらもゆっくり成長していくのだった。

登場人物

・澤村雪(さわむら せつ)
青森で生まれ育った16歳の少年。師でもあった祖父が亡くなったことで失った自分の音を探すために単身上京。他人と関わることが少し苦手で、普段はあまり表情を変えないクールな性格ですが、意外と感情は読み取り安く、熱い心を持っています。祖父譲りの高い三味線の才能を持つものの、未熟ゆえに演奏の出来は落差が激しく、あまり安定しません。誰かの為など、明確な目的がある場合は比較的良い演奏になります。

・澤村松吾郎(さわむら まつごろう)
雪の祖父で、全盲の三味線奏者。世の中に名前が広がっているわけではありませんが、その演奏に魅入られた人は少なくもなく、特に三味線奏者の間では高く評価されています。一応雪の師匠ではありますが、手取り足取り指導をすることはなく、「奪え」と言うだけでした。

・その他
弟思いの優しい雪の実兄で、三味線の兄弟子にもあたる全国有数の実力者の澤村若菜(さわむら わかな)。
ビューティー関連の「梅丸」という会社の女社長を務めている雪と若菜の母親で、雪の才能を世に知らしめようとしている澤村梅子(さわむら うめこ)。
雪のライバルで自称友達の、全国大会準優勝の実力を持つ田沼総一(たぬま そういち)。


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感想

名人とまで言われた三味線奏者の祖父・松吾郎の才能を受け継いだ沢村雪が、三味線を通じて多くの人達と出会い、様々な経験のなかで、挫折や苦悩、喜びや楽しさを受け止めながら成長していく物語。
「三味線」をメインテーマとして据え、もうひとつ「自分探し」も重要なテーマになってる作品。三味線は渋くて大人が嗜むイメージが強く、若い子にとっては馴染みの薄い世界でしょうが、この漫画に描かれている演奏シーンを見れば地味なイメージは吹き飛びますね。

見所はなんといっても雪の成長と変化です。物語開始当初の雪は勝負の勝ち負けにはあまり関心を持たず、自分の納得できるような音さえ出せれば満足といった感じでした。しかし、学園の仲間たちと一緒に演奏したこと、ライバル達の見事な演奏を聞いていくなかで、彼の勝負事に対する姿勢に少しずつ変化が出始めます。
さらに、民謡居酒屋でお客の前に立って演奏を披露する経験をしたことで、自分が納得する為だけではなく、誰かに聴かせる音についても学ぶようになります。それまでの雪の演奏は自分に向けて弾いていましたから、それではダメだということに気づいたことで、三味線演奏者として進歩がみられるようになりました。

成長を伺えるのは何も主人公の雪だけではありません。登場人物がとても多い作品ではありますが、サブキャラ一人一人にしっかりした背景があり、個性もそれぞれ立っているのでどの子にも魅力を感じますね。
そんな彼らも、雪や周囲の人達との交流から影響を受け、そして誰かの演奏を聴くことで感化され、抱えている悩みやトラウマ、コンプレックスに立ち向かおうとする成長と変化を見せてくれます。
雪の成長や演奏だけではなく、キャラクター同士の人間ドラマも見所のひとつかと。

当ブログでも何冊か音楽系のマンガを紹介しましたが、耳では聴こえない音を表現するのはホントに難しいことだと分かります。
このマンガでも擬音、奏者や聴き手の表情、心象風景など、いろいろな手法を巧みに駆使して、読者に音とその中に込められた想いを伝えようとしています。情熱的に心へ訴えかけてくるような力強い音や、包み込まれているかのような優しい音、それから音の緩急、熟達した音から未熟な音まで、様々な音を巧みに表現されていたと思います。

三味線というマイナーな楽器を扱った珍しい作品でありながら、夢中になって読み通してしまう熱さがある面白い作品。三味線には地味で固そうなとっつき難いイメージがあるかもしれませんが、演奏シーンは迫力があるだけではなく、うっとり見惚れてしまう美しさもありました。
絵に関しては少女マンガっぽいので好き嫌い分かれそうですが、個人的には美しさや繊細さを表現するには合ってると思います。
演奏だけでなくあっちこっちの人間ドラマにも要注目しているので、これからの展開が楽しみです。音楽モノ、学園モノ、青春モノが好きな方なら楽しめると思いますので、よければ読んでみてください。

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posted by ハネ吉 at 16:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽
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