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2017年11月08日

【プリンセスメゾン】マンガ 感想&あらすじ 沼ちゃんを主軸に描かれる、妙齢女子たちの家にまつわるエピソードを綴った群像劇

【プリンセスメゾン】マンガ 感想&あらすじ 

やわらかスピリッツ。2014年8月7日から連載中。既刊4巻
著者:池辺葵



あらすじ

オリンピックを控え、世界中から注目を集める大都市・東京。

ファミリー向けのマンションギャラリー見学会に、複数のカップルに混じって、お一人様で果敢に参加しているおさげ髪の女性がいた。
彼女の名前は――沼越 幸(ぬまごえ さち)。

居酒屋チェーン店で働きながら、都内のアパートで一人暮らしをしている沼越さん。理想の家を求めて様々な物件を巡り歩いてきた彼女は、不動産会社の受付嬢からもよく知られる見学会の常連と化していた。

女性が一人、所得も低い状況で、家を持つことは果たして堅実なこと?それとも無謀なこと?

大きい夢なんかじゃない。自分次第で手の届く目標――そう言い切る沼超さんは、たったひとつの自分だけの家と巡り会うため、今日も東京の街を歩き回るのだった。

夢見ながらも切実に、それぞれの生き方、家への想いを考えながら、様々な人たちが織り成す家探しの旅がここに。

主要登場人物

ネタバレも若干含まれているので注意

・沼越 幸(ぬまごえ さち)
主人公。年齢は20代半ば。おさげ髪がトレードマークの小柄な女性。年齢よりも大分幼く見られます。独身。大人しいけどまっすぐな頑張り屋さん。その真面目な仕事ぶりと性格から職場での信頼は厚い。
現在は都内の古いアパートで一人暮らし。高校卒業後に上京し、以来8年間居酒屋チェーン店で正社員として働いています。両親は高校生のときに他界し、それから2年間は叔父夫妻のもとで暮らしていました。
理想の家を見つけて取得する夢を持ち、持井不動産のモデルルーム見学へも頻繁に参加。そのため、マンションの知識は不動産会社の社員並みかそれ以上に豊富。普段は質素な生活を送り、高くはない給料の多くを家購入の資金にするため貯金。理想と夢を抱いてはいても、地に足がついてるので物件探しは現実的に考え、身の丈にあった素敵な家を手に入れることが目標。
念願叶って夢のマイホームを35年ローンで購入。これからの事に対しては当然不安を抱えているものの、ゼロからここまで来たことからなんとでもなるとも思っており、購入の後悔は全くないようです。

・要 理子(かなめ りこ)
持井不動産に勤務するベテランの女性派遣スタッフ。独身。クールなしっかり者。実家は和歌山。
ユニットバスの手狭なマンションで一人暮らし。当初は、見学会によく訪れて来る幸にマンション購入の意欲があるのか疑問に思っていましたが、彼女の強い意志とひたむきさに触れたことで、家探しを応援するようになりました。
一人飲みや外食を好んでいます。居酒屋「じんちゃん」に立ち寄った際、偶然そこで正社員として働いていた幸と出会います。それをきっかけに彼女の自宅へ遊びに行ったり、一緒に出かけるようになり、「沼ちゃん」と呼ぶ友人の関係になり、家探しにも協力。幸が住宅ローン審査に通ったときは泣いて喜んでくれました。
音楽鑑賞が趣味。命を燃やすほど何かに必死で取り組めるモノがないことから、そういうモノを持ってる人には強く惹かれるようです。

・伊達 政一(だて せいいち)
持井不動産に勤務する社員。メガネをかけた真面目な男性で、あまり感情を見せない冷静な人。仕事ぶりは有能で責任感も強い。かなづちのため水が大の苦手。
高層マンションで一人暮らし。家事全般完璧にこなし、潔癖気質なところがあるため、部下の恩田からは独り身に向いてると言われています。少しとっつきにくい雰囲気はあっても、同僚からの信頼は厚い。
幸が本気で物件探しに取り組んでいることを分かっているため、彼女のことをとても気にかけ親身に相談も受け、理想を実現してもらえるように積極的に協力してくれます。
理子さんからは幸に惚れてると思われてる節がアリ。実際彼女のとこをどう想っているかは不明。

・阿久津 マリエ(あくつ まりえ)
持井不動産に勤務する新人の女性派遣スタッフ。年齢は22歳ぐらい。フレンドリーな明るい性格で、あまり細かいことを気にしませんが、そのせいで失敗することも。涙もろい。
恋人がいましたが、現在は別れて同棲していた部屋で一人暮らし。独りになったことで真剣にマンション購入を考えているとのこと。ただし、どれだけ本気かは定かではありません。理子さんを通して沼ちゃんとも親しくなり、一緒に出掛けることもよくあります。

・奥田 直人(おくだ なおと)
持井不動産に勤務する若手社員。関西出身。研修でモデルルーム担当になったばかりのため、案内はまだ若干おぼつかないところもあります。仕事は真面目に取り組み、性格も明るい。
会話の中にちょくちょく妙な関西弁を無自覚で挟むことがあり、そのことは伊達さんから注意を受けています。阿久津さんに気がある模様。かなりの甘党で男性ひとりでも気にせずスイーツ店にも入れます。


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感想・見どころ

みなさんはマイホームが欲しいと思ったことはありますか?
多くの方は一度や二度どころか、考えたことぐらいなら何度でもあると思います。人生においてひとつの大きな夢にも挙げられるでしょうから。もちろん、買えるかどうかは別として・・・。
私は確か高校2年の一時期、家欲しいモチベーションが異様に高まってしまい、妄想しながら見取り図なんかを描いてた記憶があります。現実は賃貸マンションで1人暮らしというのが大人になった今の姿ですが、マイホームの憧れは捨てられず、それを目標に貯金はしております。漫画読まなければもっと貯金できるのでは?なんてことは言わないでくださいね。
家を買うことの苦労は並大抵のことじゃありません。家を買うまでにも、家を買った後にも、様々な問題が付いて回るもの。それを本気で求めるのなら、単純な金銭だけではなく、相応の覚悟と意志の強さも必要とされることでしょう。

さてさて、そんなこんなで今回は、女性と家をテーマにした『プリンセスメゾン』という漫画を紹介させていただきます。特に女性読者から高い共感を得ている作品ですね。

居酒屋で働く理想のマイホームを夢見る女性と、親身になって彼女のサポートをする不動産屋スタッフたちの交流を主軸に、様々な事情と想いを抱えた女性たちによる、「女性が一人で家を持つこと」の切なさと喜びを描いた物語。
妙齢女子たちの家にまつわるエピソードを綴った群像劇。帯での謳い文句は「年収250万円ちょっとの主人公、沼ちゃんが挑む、SNSで大人気、共感度100%の家さがしストーリー。」(1巻)、「わたしだけの家。それは、いちばん幸福で、いちばん孤独な場所。」(2巻)など。「このマンガがすごい!2016」オンナ編にて第10位にランクイン。2016年には全8話でテレビドラマ化。
作者は第18回文化庁メディア芸術祭マンガ部門において新人賞を受賞した『どぶがわ』や、実写映画化された『繕い裁つ人』で知られる女性漫画家・池辺 葵(いけべ あおい)先生。

沼ちゃんと不動産屋の人々との温かな繋がり

基本一話完結の群像劇なので様々な女性たちが登場しますが、主軸となるストーリーは、理想の家を探している主人公の「沼ちゃん」こと沼越 幸(ぬまごえ さち)の家探し

都内の古い賃貸アパートで質素に暮らし、正社員として勤務する居酒屋で真面目に働き、多くはない給料から毎月コツコツ貯蓄。夢は「自分の家」を手に入れること。

なので沼ちゃんはマンションの内見にも余念がありません。なかでも持井不動産のスタッフとは特に顔なじみの間柄。ベテラン女性スタッフの理子と友人になってからは、他のスタッフとも一層距離が縮まり、お客と不動産屋の関係を超えた特別な繋がりを両者から感じるようになっていきます。

沼ちゃんの真剣な家への想いや考え、ひたむきに頑張る姿に触れる機会も増えたことで、理子さんや伊達さんをはじめとした不動産屋のスタッフたちは、それぞれの受け止め方で反応を示し、彼女と正面から向き合ってるように見えました。

沼ちゃんからは心に響くセリフもよく聞かせてもらえるのですけど、常日頃から物件を扱っている彼等だからこそより深く胸に刺さっていたようにも感じられます。

この関係性が心地良い空気感を生みだしてるんでしょうね。不動産屋の方々からは、沼ちゃんに理想の家と巡り会って欲しいという想いがヒシヒシ伝わってきました。
彼女の真摯な姿勢を見ていると、応援したい、自分も頑張りたいと思うようになるも理解できます。

リアルに描かれる現代の「おひとり女性」と「家」と「生活」

上記にも書いた通り群像劇ということで、メインとなる沼ちゃんのストーリー進行に併せて、オムニバス形式で様々な事情を抱えたプリンセスたちが登場します。

生活を確立し、広いマンションに一人で住む老齢のベテラン漫画家。
充実してるようでいて、時たま淋しさを覗かせるバリキャリ女性。
自分で選んだ道は本当に合っているのかとフト考えてしまう出版社の編集長。
渡り鳥のように住む家も土地も転々として思うままに生きているデザイナー。
・・・etc。

そのなかにはもちろん、沼ちゃんの家探しを仕事でもプライベートでも支えている理子さんや阿久津さんのエピソードもあります。

正直言いますと、なかには何度か読み返しても心情がぼんやりとしか分からなかった人物がちらほらいました。ただ、読み手によってエピソードごとの共感度合いはかなり違ってくると思います。
それだけこの作品の中では、十人十色のライフスタイルが描かれ、抱えている事情もリアルで様々。人によってはよく分からないシーンであっても、別の人には強く胸に刺さるモノがあるでしょうね。

完璧な幸福を実現できてる人物もいなければ、完全に不幸である人物もいません。なのでストーリーはゆるやかに進みつつも、言いようのない焦燥感も受け取れます。それでいて、最後にはいつも穏やかに締め括ってくれるので、とても心地よい読後感を味わえるのは良いところ。

共感できなかったとしても、全く同じスタイルで生きてる人なんて当然一人もいないので、色々な生き方を見ることが出来る面白さもありますね。
彼女たちの人生にふれることで、こういった生き方もあるんだなと、良い刺激を貰えるかもしれません。

理想のマイホームと巡り会うたにチェックすべき大切なポイント

マイホームが欲しいなと、ただの希望であろうとなんだとしても、少しでも思ってる方にはとても良い参考になる漫画でもあります。

毎回ではないですけどエピソードごとの合間に、「運命の物件」をみつけるためのチェックポイントや、「暮らし」に関する様々なアンケート結果をプリンセスメゾンのキャラクターたちが教えてくれます

もちろん、沼ちゃんが家探しをしているストーリー上でも、伊達さん辺りがとてもタメになるアドバイスをしてくれるので、これから物件を探す際にはとても役に立ちそうです。

そして、沼ちゃんからは覚悟や心がけを学ばせてもらえました。彼女は理想を強く持っているんだけど、決して夢見る乙女みたいなフワフワしてるキャラではなく、まず先に現実があることをちゃんと分かってます。悩みがないわけではなくとも、芯がしっかり通ってる彼女の姿勢と言葉には重みがありますね。

1巻のエピソードにもあった通り、現実から理想を算出することが大切なのだと思います。家を買うことに夢を見るのは別に悪いことではありませんが、マイナス面もしっかり考慮しておかないと、後々後悔したとき簡単に手放せる買い物ではないですから。

「何もかもぴったりくるものなんてどこにもない。だから私が見つけたこの家を大事にしようって・・・思うんです。」
この沼ちゃんの言葉、好きです。

最後に

こんな感じでいかがだったでしょうか?

理想の家を探す沼ちゃんと不動産屋の交流を主軸に、様々な女性たちの「住」をオムニバスで描いた漫画『プリンセスメゾン』の紹介でした。

静かで穏やかに、でも色んな感情が流れ込んでくるストーリーとキャラウターは面白い。様々なライフスタイルがあれば、その数だけドラマも生まれることになり、そのひとつひとつがゆるやかにどこかで繋がっていたのも良かったです。

多くを語らない作風なのも、作品を味わい深くさせている要因だと思います。セリフが少なく、表情や仕草、そのキャラの心を写しているかのような景色で感情を表現しているため、「絵と雰囲気から読む」とでも言えましょうか、読者はそれぞれの受け止め方で楽しむことができる魅力がありましたね。

家を買う予定がなくても、少しでも憧れを持っているなら楽しめますし、参考にもなると思いますのでよければ読んでみてください。自身を持っておすすめさせていただきます。

池辺 葵 小学館 2015-05-12
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2017年01月11日

【87CLOCKERS】マンガ 感想&あらすじ ディープでマニアックな世界に飛び込んだ青年の成長を描いた物語

ジャンプ改→週刊ヤングジャンプ。2014年11月号から2016年31号まで連載。全9巻
作者:二ノ宮知子
他作品:のだめカンタービレ



あらすじ

音大に通っている一ノ瀬奏は、夢もなければ闘争心もない生粋の草食系男子。音楽は好きでも誰かと争ってまで何かを掴み取りたい意志はなく、もうすぐ4年になるにも関わらず就職に対しても一切行動を起さず、かといって院に進む気もなければ海外へ留学する考えも持ってはいなかった。
ある日の雪の夜、奏は古いアパートの前で裸足のまま立ち尽くしていた美しい女性と出会い、彼女に一目惚れしてしまう。ハナという名の彼女は、パソコンの動作速度を競う「オーバークロック」の世界で戦っているミケのパートナーをしていることを知り、さらにミケによって一方的に奴隷のように扱われていると勘違いしてしまった。奏はハナを助けるためにミケを超え1番になることを目標にし、オーバークロックの世界に飛び込んでいく。

登場人物

・一ノ瀬 奏
主人公。英孝音楽大学3年生。専攻はヴァイオリン。向上心はなく、誰かと争うことも苦手な草食系男子。院や留学への意志はなく、就職についても何も考えていなかったが、就職問題は母のピアノ教室を手伝うことであっさり解決しました。ハナに一目惚れしたことでオーバークロックの世界を知り、1番になったらミケと別れて自分と組んで欲しいと申し出ます。

・中村 ハナ
名門大学に通う3年生。ウェーブがかった茶髪の美しい女性。世界で戦っているオーバークロッカーMIKEのアシスタントをしています。ドジっ娘なため、失敗してはミケに厳しく当たられていますが、それでも彼を1番にするために献身的にサポートを続けています。パイナップル工場で働いており、お金はないけど果物だけはたくさんある。

・ミケ
オーバークロックの世界記録保持者。オーバークロック界では世界的な有名人であり、彼に憧れるクロッカーも多くいます。オーバークロックの記録更新に固執しており、負けず嫌いでもあるため、一度スイッチが入ると周りが見えなくなります。性格には非常に難があり、ハナへの当たりも厳しく、都合良いようにこき使っています。

・鈴木 珠理亜
ミケに憧れている女性オーバークロッカー。大学4年生。専攻は薬学。オーバークロックの費用を稼ぐためにキャバクラで働いています。源氏名「ジュリア」。奏の指導役となり、ペアを組んで大会にも出場することになります。空冷にこだわりを持ち、液体窒素を使用したい奏に対し、「空冷極めずして窒素なし」と言い放ちました。

・火切 俊充
ハナの幼馴染で婚約者。あだ名は「ぼっさん」。小太りの男性。地元にある有力企業の御曹司。ハナに振られ続けた過去があり、その都度より強く大きく成長を遂げ、現在はアメリカでスマホアプリがヒットしたことで会社を立ち上げています。



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感想・見所

ひょんなことからオーバークロックの世界に足を踏み入れた青年が、一目惚れした女性やこの世界で戦う様々な人たちとの出会いを重ね、オーバークロッカーとして、人として、男として成長していく姿を描いた物語。
世界的にもそれほど知名度は高くないマイナー競技『オーバークロック』を題材とした漫画です。著者は『のだめカンタービレ』を代表作ひ持ち、現在は『七つ屋志のぶの宝石匣』を連載している二ノ宮知子さん。完全に作者買いした作品です。

何はともあれ、まずは「『オーバークロック』って何?」と疑問を持つ人が多いと思いますので、少し調べたことを説明。私もこの作品に出会うまでは全く知らなかったジャンルなので詳しくはありません。
英語では「Overclocking」。Clock(周波数)をOver(超える)するということです。CPUの使用上定められているクロック周波数の動作を規格値以上に処理能力を向上させる行為。
わけわかんないですね。簡単に言ってしまうと、パソコンを元々の性能よりも早く動作させることです。CPUは使用上規定値の周波数で動くように設定されています。その周波数を車のエンジンに例えると、エンジンの回転数を上げることによって馬力を大きくするみたいな感じだと思います。うまく用いれば格段に性能は向上しますが、当然リスクも高く、発熱によって破損する可能性も大きくなります。もちろん壊れてもメーカー保証外です。

個人の遊びとして行っている人もいますが、本作では組み立てたオーバークロックPCを用いて処理速度の技術を競い合う人達を描いています。二ノ宮さんはなんともニッチな世界に手を出したものですね。ここに恋愛要素も大きく絡めて物語は展開されていきます。
正直、CPUを冷やすためだけにそこまでするのかと、呆気にとられてしまうこともありましたね。中には写真のみの描写でしたけど、雪山へ行ったり、冷凍倉庫でOC作業したりと、理解に苦しむ行動。「何のために?」と思うこともあり、ニケに至っては「世界平和のために戦ってるんだ」とわけわからないことを真顔で言い放つ始末です。
ただ、関わってる人達の熱い思いは強く伝わってきました。何のためにとか言う以前に、好きだから、楽しいから、挑戦したいから。そのためにどんな労力でも支払って、少しでも速く、誰よりも上を目指している姿は眩しく、同時にそこまでなれるほど熱中できるものがあることが羨ましいと思いましたね。

この作品の醍醐味は、なんといっても主人公である奏の作品を通しての成長。競争することを嫌い、欲しいものがあっても誰かと争い勝ち取ってまで手に入れたいとは思わない青年。そんな奏がハナに一目惚れしたことでOCの世界に飛び込み、彼女のパートナーでありOCの世界的実力者でもあるニケを超え、自分のパートナーになってもらうために奮闘することになります。冷めた青年の心にはじめて炎が点ったんですね。1人の女性を振り向かせるために、関わりなかった世界へ飛び込み、ひたむきに努力する、嫌いじゃない流れです。
ハナやミケだけでなく、ジュリアなどOCに携わっている多くの人達と出会い、そして様々な経験を経て、精神的に大きく成長します。そして、本気で戦うことの意味と大切さを知った奏は、さらに自らを磨くために歩き出すことになります。

ジャンルがマニアックなら登場人物も超個性派揃いで面白いですね。
植物人間奏の心に炎を点した作中モテモテなハナに関しては、美人だけど個人的に女性としての魅力は全然感じませんでしたが、キャラクターとしては面白い子でしたね。最後その選択で「良いの?」とは思いましたが、彼女の想いは結局のところずっとあの場所にあったんでしょうね。私からすると、むしろ女性としてはジュリアの方が魅力的に見え、奏とくっついてくれないかなとずっと思っていました。
ミケはクセの塊みたいなキャラでしたね。ハナはいったい彼のどこに惚れたのか、最後までその魅力には気づけませんでしたが、きっと女性には分かる何かがあるのでしょう。
他にも強い個性を放っていたキャラは多く、登場シーンは少なくても強く印象に残っている人達ばかりでしたね。

9巻で終わるには早すぎたのではないかという気もしますが、それでも綺麗にまとめられており、それぞれが出した結論も完全に納得とはいかないものの、これはこれで良い幕の閉じ方をしていたと思います。ただ、できればその後を知りたい。特に奏とジュリアはどうなったのかすごい気になってます。
オーバークロックという多くの人に「何それ?」と疑問をもたれそうなマイナーなジャンルを扱いながらも、知らない人でも楽しめる内容で物語は展開され、テンポ良く進む読みやさもあり、最後まで楽しむことができました。
タイトル「87CLOCKERS」の意味も最終巻で分かるので、よければ読んでみてください。



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2016年12月28日

【ハチワンダイバー】マンガ 感想&あらすじ 他に類を見ない将棋をメインに扱ったバトル漫画

ヤングジャンプ・コミックス。2006年41号から2014年33号まで連載。全35巻
作者:柴田ヨクサル
他作品:エアマスター



あらすじ

人生の全てを賭け将棋のプロ棋士を目指していた菅田健太郎は、高すぎる壁に幅まれ、あと一歩のところで夢を断たれた元奨励会員。プロの道を断たれたとはいえ、将棋以外の生き方を知らない菅田は、日々の糧を稼ぐために賭け将棋に明け暮れる毎日を送っていた。
ある日、勝ちすぎてしまったことから対局相手を見つけられずにいると、凄腕の将棋指し“アキバの受け師”の存在を聞かされ、自分が負けることなど一切疑いを持たずに挑むが手も足も出ずに叩きのめさてしまう。このままで終われないと奮起した菅田は久々に将棋の勉強に取り掛かろうとするが、部屋は自堕落な生活により荒れ放題だったため、片付けてもらうため業者に依頼する。しかし、清掃にはなぜか菅田を「ご主人様」と呼ぶメイドの姿をした女性が現れ、しかもそのメイドは昨日自分のプライドをへし折った“アキバの受け師”こと、中静そよその人だった。
中静そよに才能を見出された菅田は、彼女の指導の下、真剣師としての道を歩みだすことに・・・。

主要登場人物

・菅田健太郎
主人公。将棋に人生の全てを賭けていたが、夢破れてプロ棋士への道を諦めた青年。奨励会脱退後は日銭を稼ぐために賭け将棋に明け暮れる日々を送っていました。“アキバの受け師”として名を馳せていたメイド姿の中静そよとの出会いをきっかけに、真剣師への道を本格的に歩み出すことになります。将棋盤に潜るイメージで勝利への道筋を導き出すことから、自らを“ハチワンダイバー”と名乗っています。中静そよに好意を抱き、その想いは将棋に負けないほど強くなっていきます。

・中静そよ
ヒロイン。19歳。「アキバの受け師」と称される凄腕の真剣師。グラマーな体系を持つ美人な女性。「秋葉原メイド掃除クラブ」のアルバイトをしており、みるくという源氏名を使いメイド姿で働いています。ある理由から鬼将会という団体に対して強い復讐心を持つ。将棋の戦術は相手の攻めをことごく受けきる戦法をとり、彼女も異名もそのスタイルによるものです。かなりの大食い。

・神野 神太郎
鬼将会に挑んだことが原因でホームレス暮らしをしている老人の真剣師。苗字と氏名それぞれに「神」が付くことから、通称「ニこ神」と呼ばれています。アマチュア名人戦3連覇を果たし、プロとの対局に勝利した過去を持つ実力者。勝負に敗北して弱っていた菅田を弟子入りさせ、将棋付けの毎日を送ることで成長を促しました。得意とする戦法は「雁木」。

・千鳥チコ
通商「チッチ」。約40歳。元女流名人という経歴を持ち、3連覇を成した後に突如引退。かつては愛らしい外見からアイドルのように扱われ、多くのファンを得ていました。子供の頃に谷生から将棋を習った過去を持ち、12歳で女流名人という偉業はその経験が大きな要因となっています。後に谷生の娘・卑弥呼と対局することになるが・・・。

・鈴木 大介
菅田のプロを目指していた当時の師匠。段位は八段。プロになれなかった菅田を今尚気にかけており、真剣師として腕を磨いた彼との対局を喜び、闘志を燃やします。早指しを得意とし、「早指し王」とまで呼ばれ恐れられる実力者。対局時には糖分補給のためシュークリームを持参しています。

・谷生
鬼将会の創設者。元奨励会3段。タイトル保持者を負かすほどの実力者。年齢は不詳だが、若い見た目に反して少なくとも推定40歳のチコよりは年上。幼い頃に「生まれる時代を間違えた」と生きることに悲観するが、将棋に出会い世界と繋がる感覚を憶えたことで没頭し、将棋こそが世界と捉えるようになります。プロ棋士を倒すため、真剣師の集団である鬼将会を創設しました。



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感想

プロ棋士になるという人生を賭けた夢を挫折した青年がメイド姿の女真剣師と出会い、様々な真剣師との戦いの中で将棋指しとして、人間として大きく成長していくと共に、彼女のために真剣師が集う組織を倒すために奮闘する姿を描いた物語。
将棋漫画、というより『将棋』を題材としたバトル漫画と言った方が正しいかもしれません。著者は独特なバトルとギャグが特徴の異種格闘漫画『エアマスター』でお馴染みの柴田ヨクサルさん。著者本人もかなりの実力者である上に、プロ棋士の鈴木大介8段が将棋監修を務め、さらに主人公の師匠役としても登場。2008年には溝端淳平さんを主演に迎え、実写ドラマ化もされています。

表で活躍しているプロ棋士ではなく、主に賭け将棋を生業としている真剣師たちの戦いを描いた作品です。将棋漫画というと、思い浮かぶのは最近では『3月のライオン』や『ひらけ駒』、少し以前だと『月下の棋士』や『しおんの王』なんかが有名ですが、本作ハチワンはストーリー展開、キャラクター、ギャグとノリ、どれをとっても他作品と比べると異質な将棋漫画。
ハイテンションな面白キャラ多数、ラブコメあり、格闘バトルあり、メイドありなど、様々な要素を将棋と絡め、時には将棋と全く関係ないバトルを繰り広げるおかしな作品です。私はここまでド派手な将棋漫画というのは他に見たことありません。

将棋というとあまり知識のない人にとっては難しく感じ、多少知識があったとしても盤面からだけではどちらが優勢かも判断に困り、人の動きも多くないことから地味で退屈にも感じられるなど、漫画としては扱い辛い題材だと思います。
しかし、この作品に関しては将棋対局の表現が非常にユニークであり、指し手ごとに過剰とも言える独特な表現方法を用い、将棋を全く知らない人でも楽しめるように作られています。
一手ごとに変化する盤面に対して、無数に広がる道筋を読み、その中にある勝利へと繋がる道を導き出す。実力が高ければ高いほど広く、深く読めるものですが、私のような常人には何が起こっているのかも理解不能な領域。そこを主人公である菅田の場合は盤面にダイブするというイメージを作り出し、深く、より深く潜る描写を見せることで読者にも分かり易く、尚且つワクワクさせる面白さも生んでいます。

将棋漫画でありながらじっくり読むような内容ではなく、バトル漫画のアクションシーンのように勢いで読めるところもあるため、あまり頭を使わないで楽しめると思います。もちろん将棋を知っていれば対局を深く読めるという楽しみ方もありますけどね。

アドレナリンが異常分泌されてるんじゃないかと心配になるほど、キャラクターのテンションが高いのも特徴。将棋や囲碁というのは厳かであり、“静”のイメージを抱きやすい競技だと思うんですが、そのイメージを見事にぶち壊しているというのは画期的。そのハイテンションは笑いを誘うこともあればドン引きを招くこともあるため、一概に良いとは言い辛いところもある意味面白い。
将棋してるときだけでなく、普段のやりとりの中でも異常にハイテンションな描写は目立ち、様々な想いを相手にぶつける時などはそれが顕著に現れていました。特に“愛”ですね。

画力に関しては低いというよりクセが強いので好みが分かれそうです。勢いや必死さは見事に描き出しており、ハイテンションなキャラと命を削る極限でのバトル描写を表現するには合ってると思うので、私は結構好きです。
『エアマスター』を読んでたときからなんとなく予想はしてましたが、著者はきっとムッチリ女性が好みなんでしょうね。ヒロインのそよを始め、多くがそのタイプの体型を持つ女性キャラでした。

将棋を知ってようが知らなかろうが関係なく、勢いだけで読ませてくる漫画でした。将棋をメインに扱っていてもやっぱりこれはバトル漫画ですね。良くも悪くも規格外、滅茶苦茶、イカれてるキャラクターと内容で最初から最後まで走り抜けてくれました。
最近似通った作品が多く出てくるなか、独特なストーリーと画風で他ではなかなか目にできない著者ならではの個性的な世界を生み出しています。人を選ぶ作品ではありますが、よければ試しに読んでみてください。個人的にはおすすめ。



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2016年12月07日

【宇宙兄弟】マンガ 感想&あらすじ また夢を追いたい気持ちにさせてくれる宇宙を目指す人たちの物語

モーニングKC。2008年1号より連載中。既刊30巻
作者:小山宙哉



あらすじ・概要

幼い頃に2人で宇宙飛行士になろうと約束を交わした南波兄弟。

それから19年の時が流れた2025年。弟のヒビトは一足先に宇宙飛行士になる夢を叶え、もうじき始めて月面に立つ日本人として歴史にその名を刻もうとしていた。

一方で、兄のムッタは勤めていた会社の上司に頭突きをくらわせたことでクビになり、同じ業界で再就職先を探してはみたが結果はままならず、出来の良い弟のこともあって気力を失いかけていた。

そんなムッタのもとに、ある日JAXAから新規宇宙飛行士選抜試験・書類審査通過の封書が届けられる。それは、宇宙へと飛び立とうとしていた弟のヒビトから、夢を諦めようとしていた兄ムッタへのメッセージだった。
「宇宙へ行きたい」。その想いを胸に、ムッタはヒビトの後を追い、再び宇宙飛行士を目指すべく歩み始める。

主要登場人物

・ 南波 六太
主人公。31歳(開始時)。特徴はモジャモジャ天然パーマ。性格は神経質で几帳面、見た目に反して繊細な人。高い観察力と記憶力、柔軟な思考力と発想力の持ち主。自動車デザイン会社に勤務していたが、弟を侮辱した上司に頭突きを御見舞いしクビ。その後、ヒビトからのメッセージを受け、諦めていた宇宙飛行士を目指すべく奮闘します。宇宙飛行士になる夢と共に、恩師であるシャロンの夢である月面望遠鏡建設も目指しています。せりかさんに片想い中。

・南波 日々人
ムッタの弟。JAXAの宇宙飛行士。28歳(開始時)。性格は兄ムッタとは真逆で、細かいことも周りからのプレッシャーもあまり気にしない大胆な性格。日本人初となる月面宇宙飛行士に選出。様々な技能を周囲より短期間で修得するなど、類い稀な才能の持ち主。兄想いであり、くすぶっていたムッタの背中を押し、宇宙飛行士になることを心待ちにしています。

・伊東 せりか
ムッタと共に宇宙飛行士選抜試験を受講した女性。ISS搭乗を目指している医者。体力・学力共に高い能力を示し、容姿も端麗という才色兼備。父親をALS(筋萎縮性側索硬化症)で亡くしており、その病気を解明し新薬を開発するためISSを目指しています。かなりの大食い。恋愛に関しては分かりやすいムッタの想いにも気づかないほど鈍感。

・真壁ケンジ
ムッタと共に宇宙飛行士選抜試験を受講した同い年の男性。妻と娘がいます。妻の進めから、宇宙飛行士を目指すことを決意。ムッタとは試験中に意気投合し仲良くなったことで友人になりました。爽やかな性格でリーダシップもあることから頼りになる存在だが、自身への評価はひねくれ者を通り越したねじれ者。

・カネコ・シャロン
天文学者の女性。同じ天文学者の夫・金子進一は4年の結婚生活を送った末、病没。日本にある天文台に暮らしており、子供の頃よく訪れてきた南波兄弟に様々なことを教え、大きな影響を与えています。後に、月面天測望遠鏡プロジェクトに関わるが、その最中・・・。

・ブライアン・ジェイ
故人。NASAの宇宙飛行士。弟のエディ・ジェイと兄弟で月面に立つ夢を持っていたが、月面でのミッションを終え、地球への帰還時に事故で地上へ墜落したことで死亡。宇宙飛行士や職員からの尊敬を集め、彼の言葉や功績は没後も多くの人々に影響を与えています。ヒビトを月面ミッションに推薦した人物。




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感想

宇宙への強い憧れを胸に将来2人で宇宙飛行士になろうと約束を交わした兄弟が、同じく純粋な夢を抱いて確固たる目的を持つ人たちと宇宙を目指す物語。
2012年4月にはアニメ化、同年5月には小栗旬と岡田将生を主演とした実写映画も公開され、さらに2014年8月には本編の前日譚を描いた『宇宙兄弟#0』のタイトルでアニメ映画も公開されています。漫画は昨年の末に読み始めてハマり、現在出ている分は全て読みました。アニメも全話観賞しましたが、映画は未視聴です。

ジャンルをSFと言っていいか少し困りますけど、近未来の話。最初にUFOっぽい物体も登場していることから、その要素も入ったストーリー漫画ですかね。「家族・仲間・友情」などの濃い人間ドラマも描かれている作品です。
それから、ALSなどの難病やパニック障害、他にもリアルな問題を多く取り上げているのも特徴。アニメではJAXAの協力も受けていたことから、宇宙飛行士・野口聡一さんが自身のキャラに自ら声を吹き込んで登場したことでも話題になっていましたね。

この物語は現代からほんの少し先の近未来、西暦2025年を舞台にした話です。実在するJAXAやNASAが実名で登場し、そこで働く職員達の姿や宇宙飛行士の姿が丁寧に描かれているので、リアリティを感じられる宇宙開発現場が広がっています。
近未来が舞台と言っても数年先程度であることや、登場人物たちがリアルな夢と葛藤を抱き、設定も突飛なところがほとんどないことから、まだまだ現代では一般人には遠いはずの宇宙を近くに感じることができます。
宇宙で様々な作業を行う光景だけでなく、試験や検査など宇宙飛行士になるまでの過程もしっかり描かれ、宇宙飛行士選抜試験では受講者にスポットを当てるのは当然として、審査している側の心情も伺えたのは良かったですね。
宇宙飛行士が主役になることもあれば、開発者や管制官など宇宙へ送り出す人たちが主役になることもあり、様々な個人や組織の働き、そこにある苦悩や喜びを見て感じることができます。

個性溢れる登場人物たちが多く、中でもちょっとダサいのにかっこいい主人公・ムッタが特に魅力的。
宇宙飛行士になる夢は弟・ヒビトに先を越され、ダサくて残念な行動(主にプライベートで)をとることも多々ありますが、彼の試験や作業での振舞いや言葉から能力の高さと人柄の良さを伺えますね。
物事の細かい部分までよく見て考察する高い観察力、類い稀な高い記憶力、さらに柔軟な思考から生み出される発想力・想像力の持ち主。このような高い能力を有しているにも関わらず、本人が一番そのことに疎いところが面白い。
でも1番はやはりその人柄ですね。ムッタはいつも弟に先を歩かれていることに強いコンプレックスも抱いています。それでもヒビトのことを誰よりも誇りに思い、兄として弟を思いやる兄弟愛も強く感じさせ、いつの日か兄弟で月に立つという約束を目指して奮闘するなど、その姿を見てると応援したい気持ちにさせてくれますね。彼の言葉には数々の挫折を味わってきた経験から来る深みもあり、だからこそ聞く人の心を打ち、時には救いにも繋がっているのだと思います。

心に残る名言が多いことも魅力の1つ。
グッとくる言葉もあれば、グサリと突き刺さる言葉もあり、この作品は登場人物1人1人の背景もしっかり作り上げているので、言葉がただ心に残るだけではなく説得力もありますね。例えば、
モノ作りには、失敗することにかける金と労力が必要なんだよ。いい素材使ってるモノがいいモノとは限らねえんだ。だけど、失敗を知って乗り越えたモノならそれはいいモノだ。
本気の失敗には価値がある
失敗を避けるために手を抜かず努力することは当然。でも、失敗から逃れるためにハードルを下げることがいいとは限りませんね。ただ、どうしても勇気が出ない。失敗したときのことを想像し、それが次に繋げるような想像ならまだしも、失うモノのことばかり考えてしまう自分がいました。こういう言葉を誰かに言ってもらえたら励みになるでしょうね。
あと、ここで思い出したのがシャロンの言葉。
昔のあなたってそんな子だったよ。なんにでも挑戦して、難しいことを選んだ
私も年を重ねていくごとに失敗を恐れ、失敗から逃れるようになっていたのでよく分かります。思い出してみると、子供の頃はもっとがむしゃらに行動し、楽しいことや難しいことに積極的でした。
心のノートにメモしたくなるセリフが多く、そこだけ切り取ってもいくらでも感想記事が書けそうです。

読むとまた子供の頃のように再び夢を追いたくなる作品でしたね。一度は挫折して夢を諦め、異なる道を歩んだ主人公が、周囲からの後押しで31歳から再び夢を目指す話。主人公たち作中の登場人物から勇気や励みを受け取ることができ、どうしようもなく突っ走りたくなる衝動に駆られてしまいました。単純に宇宙を目指すというロマンも胸を熱くさせてくれますね。
主人公のみならず、様々な人物にスポットを当てた内容は読み応えがあり、専門的な話も難解過ぎることなく語られているので読み易く、読み始めると時間を忘れて没頭してしまう面白さがありました。
何度でも読み返したくなり、その度に新たな発見をすることができる作品ですので、よければ読んでみてください。自信を持って強くおすすめさせていただきます。



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2016年11月25日

【3月のライオン】マンガ 感想&あらすじ 孤独の中にいた少年が人との繋がりによって成長していく物語。

ヤングアニマル。2007年14号より連載中。既刊12巻
作者:羽海野チカ
他作品:ハチミツとクローバー



あらすじ・概要

まだ高校生の身でありながら、プロ将棋の世界へ足を踏み込み、日々猛者たちとの真剣勝負に身を投じる若き棋士・桐山零。幼い頃に交通事故で家族を亡くし、父の友人であったプロ棋士の幸田に内弟子という形で引き取られる。これ以上迷惑を掛けまいと、早く自立するために一層将棋へ没頭し、弱冠15歳という若さでプロ棋士としての人生を歩み始めた。
幸田家を出て六月町で1人暮らしを始めた零。少し遅れて高校にも通い出したが、クラスメイトとは馴染めず孤独な時間を過ごし、心に負った傷も未だ癒えることなく零を苦しめていた。
ある日、無理に飲まされたことで酔い潰れていた零は、その店で働いていた1人女性に介抱される。翌朝、目を覚ました零の前に現れたのは、あかり・ひなた・モモの川本家3姉妹。
この出会いをきっかけに、零は三月町に住む川本家との交流を始めたことで、大切なモノを失った彼の孤独な心にも変化が起こることに。

主要登場人物

・桐山 零
主人公。高校1年生の17歳(開始時)。史上5人目の中学生棋士。黒縁眼鏡をかけた細身の体形の少年。小学生の時に交通事故で両親と幼い妹を失ってからは孤独の身となり、内弟子として引き取られた幸田家でも軋轢を生み、心を閉ざしていきました。その後1人暮らしを始め、山本家やプロ棋士仲間と交流を重ねる内、彼の心にも変化が表れ出します。棋士としては将来の名人候補と呼ばれ、棋風はオールラウンダー。

・川本あかり
川本家長女。20代女性。美人でスタイルがよく、温和な性格をした面倒見の良過ぎる女性。両親のいない川本家で母親代わりとなって妹たちの世話をし、家事をこなしています。昼は祖父の営む和菓子屋『三日月堂』を手伝い、夜は伯母が経営する店でホステスとして働き家計を支えています。ガリガリに痩せた人や動物を見つけると放っておけず、連れ帰ってふっくらさせたがる人です。

・川本ひなた
川本家次女。中学2年生(開始時)、その後3年生を経て零が通う駒橋高校へ進学。いつも明るい表情豊かな女の子。姉と共に家の家事、和菓子屋の手伝いをするしっかり者。姉妹の前では気丈に振舞っているが、本当は母親のいない生活を寂しく思っています。いじめられていた友達を庇ったことで、今度はひなた自身が標的にされることになるが、自分は間違ってないという姿勢を示し、そのことが零を救うきっかけにもなります。

・川本モモ
川本家三女。保育園児。純真無垢な甘えん坊。零のことを兄だと思っていたようです。二海堂が作中に出てくるアニメキャラクター「ポドロ」に似ていたことから彼に懐いています。

・川本 相米二
川本家の祖父。和菓子屋『三日月堂』を営む和菓子職人。孫娘たちのことを何よりも愛しており、特に末のモモに対しては甘々のデレデレ。若い身でありながらプロの世界で戦う零のことを認め、信頼しています。自身も将棋ファンであり、零の対局はよくチェックしているようです。

・二海堂晴信
プロ棋士、五段。幼い頃に零と対局したことをきっかけに、「終生のライバル」「心友」を自称しています。熱い心、根性と我慢強さの持ち主。ぷっくりふくよかな体形は、腎疾患を患っていることが原因。実家は裕福な家庭であり、常に執事の花岡が傍に控えています。



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感想

若くして将棋のプロ棋士となった孤独を抱えた高校生と、彼が出会った明るく優しい3人姉妹を中心に、様々な事情を抱えた人たちが、どこかに置いてきたもの、奪われたもの、失くしたものを、人とのふれ合いを通して取り戻していく物語。
『ハチミツとクローバー』の著者・羽海野チカ先生の作品。2016年にはアニメ化され、2017年には神木隆之介さん主演の実写映画も上映されます。
さらに、本編登場人物、日本将棋連盟会長・神宮寺崇徳の若き日を描いたスピンオフ作品『3月のライオン昭和異聞 灼熱の時代』も連載中。

作品のジャンルは、家族、恋愛、将棋をテーマにした人間ドラマといったところでしょうか。零と川本3姉妹を中心にした擬似家族的なふれ合いや、彼らと関わる学校関係者やプロ棋士の人達との、人間ドラマが描かれています。零たちが出会うサブキャラを中心に描かれるエピソードもそれなりにあります。
この作品は将棋漫画でもありますけど、その辺りに難しいことは特になく、知識はなくても全く問題ありませんのでご安心を。あればあったで楽しめる要素が増えることも確かですが、将棋が分からないから話の展開まで分からなくなるなんてことはありません。
ちなみに、棋戦のタイトル名はいろいろな方面に配慮して、「名人」以外は架空の名称を用いています。

作品の主な舞台になるのは、東京の下町風情溢れる『三月町』と『六月町』。これらは主に零と川本3姉妹の日常風景が描かれている舞台です。
あと、零の主戦場となる将棋会館。内装なんかは実在する将棋会館を取材した上で再現して描いているそうです。

ハートフルな作品ではありますが、零の生い立ちや境遇のみならず、川本家の抱える家庭問題や学校での出来事など、切なくて重苦しくもあるシリアスな話が多くあります。そのため、人の優しさや温もりが一層際立つ効果を生み、問題を乗り越えた後は心がほっこりした心地良い気分にさせてもらえます。
物語の軸となっているのは、桐山零を中心にした様々な登場人物たちと織り成す人間ドラマ。そして、孤独にもがいて生きていた彼が周囲の人たちの助けや励み、包み込む優しさにふれることによって、生じる心の変化と成長です。

主人公は両親と妹を幼い頃に亡くし、本来頼れるはずの親族は跡目のことばかりで零を気にかけることもなく、小学生でありながら天涯孤独の身となってしまった少年。プロ棋士の内弟子として引き取られた先でも、幸田家の子供たちよりも将棋が強くなったことで軋轢を生み、逃げるように将棋へ没頭することでさらに孤独となっていきまいした。巣に紛れ込み他の雛を蹴落として成長していくカッコウと自分を重ね、この家を壊してしまう前に出ていこうと決意し、努力の末に中学生という若さでプロへの道に進みました。皮肉にもこの辛い境遇が彼に生きる術を持たせることになったんですね。

プロになり1人暮らしを始め、1年遅れで高校にも通い始めましたが、関わる人が増えても彼の心の孤独は和らぐことはありませんでした。そんな時に零の前に現れたのが、あかり、ひなた、モモの川本3姉妹。
賑やかで温かい食卓を囲み、家族のように迎えてもらえ、辛そうにしているときは優しく包み込んでくれる優しい姉妹たちです、助けられているだけではなく、時には頼られることもあり、この出会いが零の心に変化をもたらす大きなきっかけになります。次第に3姉妹のみならず、棋士仲間や学校の先生など、深く人と関わりを持てるにまで零の心は変化し、救われていきました。

そして、川本家に起こったある事件が零の転換期にもなります。この作品、印象の悪い人物はいてもどこか同情する余地があり、完全な悪者という存在はいませんでした。そこに、腐ってる口から生まれてきたかのような、性根の腐りきった人物が3姉妹の前に現れます。本当なら姉妹にとってかけがえのない存在なんですが、彼女たちを永く苦しめてきた人物であり、そして今現在の幸せな家庭を壊しにやってきやがった男。
しかし、そんな時にどこか頼りなく見えていた桐山零が力強く毅然と立ち塞がったんですね。どちらかというと支えられる側にいた零が、彼女たちの土台に、壁に、家となって守る存在になったエピソードでした。支えられるだけだった零から、支え合える存在になった零の、成長・変化した姿はぜひ見てもらいたいです。

登場人物の心理描写を丁寧に表現しているので、彼等へ感情移入しやすいと思います。人の持つ良い面だけではなく、悩みやトラウマなど陰鬱とした負の感情もうまく描き出せており、登場人物たちの抱えている想いに共感しながら読むことができます。当たり前の事ではありますが、良いところもあれば悪いところもあるのが人なんですよね(一部例外あり)。

人と人との繋がりの大切さを改めて教えてもらえる作品。1人で生きていくことも全てを1人で背負うことも困難。だからこそ、誰かに頼ることも時には必要であり、それによって人の繋がりは深まり、全てがそうとは言いませんけど幸福を生むきっかけにもなるんだと、この作品を読んで思わされました。
クセの強すぎるプロ棋士などの愉快なキャラ、日常描写で食卓に並べられる美味しそうなあかりさんの料理、それぞれのキャラに焦点をあてたエピソード、静かに激しく繰り広げられる将棋戦など、見所は多分に用意されている作品。その中でも私が強く押させてもらいたいのは、ありきたりですけど主人公・桐山零の成長と変化です。
全体的な雰囲気は華やかで明るいとは言えませんが、読み進めると心地良い温もりを感じられ、心に明かりが灯る作品だと思います。
シリアスの中にも良い塩梅でコメディ色を加えていたりと、意外と読みやすい作品ですので、よければ読んでみてください。自信を持って強くおすすめさせていただきます。



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ハネ吉
とにかく漫画が大好きです。愛してるといっても過言ではありません。どんなジャンルにも手を出しますね。正直、文章力にはあまり自信はありませんが、なるべくうまく伝えられるようにがんばります。ちょっとだけでも読んでもらえたらうれしいです。 ちなみに、甘い物とネコも大好きです。
プロフィール
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