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2019年02月17日

シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外「佐橋甚五郎」11

5 相関係数を言葉で表す

 数字の意味を言葉で確認しておく。

0≦r≦0.2 : ほとんど相関がない
0.2≦r≦0.4 : やや相関がある
0.4≦r≦0.7 : かなり相関がある
0.7≦r≦1 : 強い相関がある

 言語の認知の意味分析、思考の流れ(誘発と創発)は、何れの場面も情報の認知の問題解決と未解決の組と強い相関関係があることが分かった。

【参考文献】
花村嘉英 計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風舎 2005
花村嘉英 森鴎外の「山椒大夫」のDB化とその分析 中国日语教学研究会江苏分会 2015
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社 2015
花村嘉英 日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默 ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
花村嘉英 川端康成の「雪国」から見えてくるシナジーのメタファーとは-「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ 中国日語教学研究会上海分会論文集 2019

花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外」より

シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外「佐橋甚五郎」10

4.3 甘利を打つ

源太夫はこういう話をした。甚五郎は鷺を撃つとき蜂谷と賭をした。蜂谷は身につけているものを何なりとも賭けようと言った。A2B2

甚五郎は運よく鷺を撃ったので、ふだん望みをかけていた蜂谷の大小をもらおうと言った。A2B2

それもただもらうのではない。代わりに自分の大小をやろうというのである。A2B2

しかし、蜂谷は、この金熨斗付きの大小は蜂谷家で由緒のある品だからやらぬと言った。A2B2

甚五郎はきかなんだ。「武士は誓言をしたからは、一命をもすてる。よしや由緒があろうとも、おぬしの身に着けている物の中で、わしが望むのは大小ばかりじゃ。ぜひくれい」と言った。A2B2

「いや、そうはならぬ。命ならいかにも棄ちょう。家の重宝は命にも換えられぬ」と蜂谷は言った。A2B2

「誓言を反古(ほご)にする犬侍め」と甚五郎がののしると、蜂谷は怒って刀を抜こうとした。A2B2

甚五郎は当身を食わせた。A2B2

それきり蜂谷は息を吹き返さなかった。A1B1

平生何事か言い出すとあとへ引かぬ甚五郎は、とうとう蜂谷の大小を取って、自分の大小を代りに残して立ち退いたというのである。A2B1

◆相関係数は、次の公式で求めることができる。
相関係数=[(A-Aの平均値)x(B-Bの平均値)]の和/
√(A-Aの平均値)2の和x(B-Bの平均値)2の和
上記計算表を代入すると、
相関係数 = -24/√32 x 18 = -24/√576 = -24/2 4= -1
従って、強い負の相関があるといえる。

花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外」より

シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外「佐橋甚五郎」9

A言語の認知(思考の流れ):1外から内の誘発、2内から外の創発→6、4
B情報の認知:1問題解決、2未解決→4、6

◆A、Bそれぞれの平均値を出す。
Aの平均:(6 + 4)÷ 2 = 5
Bの平均:(4 + 6)÷ 2 = 5
◆A、Bそれぞれの偏差を計算する。偏差=各データ−平均値
Aの偏差:(6 - 5)、(4 - 5)= 1、-1
Bの偏差:(4 - 5)、(6 - 5)= -1、1
◆A、Bをそれぞれ2乗する。
Aの偏差の2乗 = 1、1
Bの偏差の2乗 = 1、1
◆AとBの偏差同士の積を計算する
(Aの偏差)x(Bの偏差)= -1、-1
◆AとBの偏差を2乗したものを合計する。
Aの偏差を2乗したものの合計 = 1 + 1 = 2
Bの偏差を2乗したものの合計 = 1 + 1 = 2
◆AとBの偏差の合計を合計する。-1 -1 = -2

計算表
A 6 4 10
偏差 1 −1 0
偏差2 1 1 2
B 4 6 10
偏差 −1 1 0
偏差2 1 1 2
AB偏差の積 −1 −1 −2

◆相関係数は、次の公式で求めることができる。
相関係数=[(A-Aの平均値)x(B-Bの平均値)]の和/
√(A-Aの平均値)2の和x(B-Bの平均値)2の和
上記計算表を代入すると、
相関係数 = -2/√2 x 2 = -2/√4 = -2/2 = -1
従って、強い負の相関があるといえる。

花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外」より

シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外「佐橋甚五郎」8

4.2 鷺を打つ

とある広い沼のはるか向うに、鷺が一羽おりていた。銀色に光る水が一筋うねっている側の黒ずんだ土の上に、鷺は綿を一つまみ投げたように見えている。A1B2

ふと小姓の一人が、あれが撃てるだろうかと言い出したが、衆議は所詮打てぬということにきまった。A1B1

甚五郎は最初黙って聞いていたが、皆が撃てぬと言い切ったあとで、独り言のように「なに撃てぬにも限らぬ」とつぶやいた。A2B2

それを蜂谷という小姓が聞き咎めて、「おぬし一人がそう思うなら、撃ってみるがよい」と言った。A1B2

「随分撃ってみてもよいが、何か賭けるか」と甚五郎が言うと、蜂谷が「今ここに持っている物をなんでも賭きょう」と言った。A2B2

「よし、そんなら撃ってみる」と言って、甚五郎は信康の前に出て許しを請うた。A2B2

信康は興ある事と思って、足軽に持たせていた鉄砲を取り寄せて甚五郎に渡した。A1B2

「あたるもあたらぬも運じゃ。はずれたら笑うまいぞ」甚五郎はこう言っておいて、少しもためらわずに撃ち放した。A2B1

上下こぞって息をつめて見ていた鷺は、羽を広げて飛び立ちそうに見えたが、そのまま黒ずんだ土の上に、綿一つまみほどの白い形をして残った。A1B1

信康を始めとして、一同覚えず声をあげてほめた。田舟を借りて鷺を取りに行く足軽をあとに残して、一同は館へ帰った。A1B1

花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外」より

シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外「佐橋甚五郎」7

4 統計処理−相関

4.1 相関の作り方

 シナジーのメタファーのために作成しているデータベースは、データの種類で見ると、俗に言う測れないカテゴリーデータからなる。数量データといわれる身長、体重、気温、湿度などとは異なり、値が連続ではなく飛び飛びで離散的となる。カテゴリーデータは、対象の性質を表したり、現象や、区別を表したりする。性別、好き、嫌い、うまい、まずい、おもしろいなどあるものの性質や現象が示される。(前野2012)
 相関とは原因から結果が生じ、互いに関係しあっていることをいう。また、相関関係があるとは、ある測定値の変化に対して他の測定値も変化する場合に使われる。相関の強さは、ピアソンの相関係数で表す。合わせて共分散という統計用語が重要となる。

(1) 共分散の公式
共分散=[(xの各データ−xの平均値)x(yの各データ−yの平均値)]の和/データ数
   =[(xの偏差)x(yの偏差)]の和/データ数
   = xとyの偏差積の和/データ数

正の相関があると0より大きく、負の相関があると0より小さくなる。

(2) 相関係数(ピアソン)
相関係数=XYの偏差平方和/√(Xの偏差平方和)x(Yの偏差平方和)

「佐橋甚五郎」の問題解決の場面を使用して、簡単な例を見てみよう。

花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外」より

シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外「佐橋甚五郎」6

3.2 標準偏差による分析
 
 グループA、グループB、グループC、グループDそれぞれの標準偏差を計算する。その際、場面1、場面2、場面3の特性1と特性2のそれぞれの値は、質量ではなく指標であるため、特性の個数を数えて算術平均を出し、それぞれの値から算術平均を引き、その2乗の和集合の平均を求め、これを平方に開いていく。(公式2)
 求められた各グループの標準偏差の数字は、何を表しているのだろうか。数字の意味が説明できれば、分析は、一応の成果が得られたことになる。 

◆グループA
場面1(特性1:6個と特性2:4個)の標準偏差は、公式2により0.49となる。場面2(特性1:1個と特性2:9個)の標準偏差は、公式2により0.3となる。場面3(特性1:6個と特性2:4個)の標準偏差は、公式2により0.49となる。
【数字から分かること】
場面2を見ると、創発を表す数字が極端であるため、「佐橋甚五郎」は、個人主義による作品であると言える。

◆グループB
場面1(特性1:7個と特性2:3個)の標準偏差は、公式2により0.46となる。場面2(特性1:10個と特性2:0個)の標準偏差は、公式2により0となる。場面3(特性1:7個と特性2:3個)の標準偏差は、公式2により0.36となる。
【数字から分かること】
原文の最後にも記されているように、「佐橋甚五郎」は「続武家閑話(ぞくぶけかんわ)」という文献から起こした作品であり、場面1、場面2、場面3を通じて、アイロニーが少ないことがわかる。

◆グループC
場面1(特性1:2個と特性2:8個)の標準偏差は、公式2により0.4となる。
場面2(特性1:1個と特性2:9個)の標準偏差は、公式2により0.3となる。
場面3(特性1:0個と特性2:10個)の標準偏差は、公式2により0となる。
【数字から分かること】
場面1、場面2、場面3を通じて、新情報の2が多いため、ストーリーがテンポよく展開していることがわかる。

◆グループD
場面1(特性1:4個と特性2:6個)の標準偏差は、公式2により0.49となる。、場面2(特性1:2個と特性2:8個)の標準偏差は、公式2により0.4となる。場面3(特性1:6個と特性2:4個)の標準偏差は、公式2により0.49となる。
【数字から分かること】
場面1、場面2、場面3を通じて、場面の前半は問題未解決、場面の後半は問題解決というパターンである。作品の冒頭に問題提起があることから、各場面の問題解決が関連するように配慮されており、作品の構成に近いデータが取れている。

花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外」より

シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外「佐橋甚五郎」5

◆場面3
澄み切った月が、暗く濁(にご)った燭(しょく)の火に打ち勝って、座敷(ざしき)はいちめんに青みがかった光りを浴びている。A1B2C2D2

どこか近くで鳴く蟋蟀(こおろぎ)の声が、笛の音にまじって聞こえる。甘利は瞼(まぶた)が重くなった。たちまち笛の音がとぎれた。A2B1C2D2

「申し。お寒うはござりませぬか」笛を置いた若衆の左の手が、仰向けになっている甘利の左の胸を軽く押(おさ)えた。A1B1C2D2

ちょうど浅葱色(あさぎいろ)の袷(あわせ)に紋の染め抜いてある辺である。A1B2C2D2

甘利は夢現(ゆめうつつ)の境に、くつろいだ襟を直してくれるのだなと思った。A1B1C2D2

それと同時に氷のように冷たい物が、たった今平手がさわったと思うところから、胸の底深く染み込(こ)んだ。A1B1C2D2

何とも知れぬ温い物が逆に胸から咽へのぼった。甘利は気が遠くなった。A1B1C2D1

三河勢の手に余った甘利をたやすく討ち果たして、髻(もとどり)をしるしに切り取った甚五郎は、鼠(むささび)のように身軽に、小山城を脱けて出て、従兄源太夫が浜松の邸に帰った。A2B1C2D1

家康は約束どおり甚五郎を召し出したが、目見えの時一言も甘利の事を言わなんだ。A2B1C2D1

蜂谷の一族は甚五郎の帰参を快くは思わぬが、大殿の思召しをかれこれ言うことはできなかった。A2B2C2D1

花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外」より

シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外「佐橋甚五郎」4

◆場面2
源太夫はこういう話をした。甚五郎は鷺(さぎ)を撃つとき蜂谷と賭(かけ)をした。蜂谷は身につけているものを何なりとも賭けようと言った。A2B1C2D2

甚五郎は運よく鷺を撃ったので、ふだん望みをかけていた蜂谷の大小をもらおうと言った。A2B1C2D2

それもただもらうのではない。代わりに自分の大小をやろうというのである。A2B1C2D2

しかし蜂谷は、この金熨斗(きんのし)付きの大小は蜂谷家で由緒のある品だからやらぬと言った。
A2B1C2D2

甚五郎はきかなんだ。「武士は誓言(せいごん)をしたからは、一命をもすてる。よしや由緒があろうとも、おぬしの身に着けている物の中で、わしが望むのは大小ばかりじゃ。ぜひくれい」と言った。A2B1C2D2

「いや、そうはならぬ。命ならいかにも棄ちょう。家の重宝は命にも換えられぬ」と蜂谷は言った。
A2B1C2D2

「誓言を反古(ほご)にする犬侍め」と甚五郎がののしると、蜂谷は怒って刀を抜こうとした。
A2B1C2D2

甚五郎は当身(あてみ)を食わせた。A2B1C2D2

それきり蜂谷は息を吹き返さなかった。A1B1C2D2

平生何事か言い出すとあとへ引かぬ甚五郎は、とうとう蜂谷の大小を取って、自分の大小を代りに残して立ち退いたというのである。A2B1C2D1

花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外」より

シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外「佐橋甚五郎」3

3 統計処理−バラツキ

3.1 データの抽出

 作成したDBから2つの特性からなるカラムを抽出し、標準偏差によるバラツキを調べてみる。例えば、A:思考の流れ(1外から内の誘発と2内から外の創発)、B:ジェスチャー(1直示と2隠喩)、C:情報の認知プロセス(1旧情報と2新情報)、D:情報の認知プロセス(1問題解決と2未解決)というように文系と理系のカラムをそれぞれ2つずつ抽出する。

◆場面1 鷺を打つ
とある広い沼のはるか向うに、鷺が一羽おりていた。銀色に光る水が一筋うねっている側の黒ずんだ土の上に、鷺は綿を一つまみ投げたように見えている。 A1B2C2D2

ふと小姓の一人が、あれが撃てるだろうかと言い出したが、衆議は所詮打てぬということにきまった。 A1B1C2D1

甚五郎は最初黙って聞いていたが、皆が撃てぬと言い切ったあとで、独語のように「なに撃てぬにも限らぬ」とつぶやいた。 A2B2C1D2

それを蜂谷という小姓(こしょう)が聞き咎めて、「おぬし一人がそう思うなら、撃ってみるがよい」と言った。 A1B1C1D2

「随分撃ってみてもよいが、何か賭けるか」と甚五郎が言うと、蜂谷が「今ここに持っている物をなんでも賭きょう」と言った。 A2B1C1D2

「よし、そんなら撃ってみる」と言って、甚五郎は信康の前に出て許しを請うた。 A2B1C2D2

信康は興ある事と思って、足軽に持たせていた鉄砲を取り寄せて甚五郎に渡した。 A1B1C2D2

「あたるもあたらぬも運じゃ。はずれたら笑うまいぞ」甚五郎はこう言っておいて、少しもためらわずに撃ち放した。 A2B1C2D1

上下こぞって息をつめて見ていた鷺は、羽を広げて飛び立ちそうに見えたが、そのまま黒ずんだ土の上に、綿一つまみほどの白い形をして残った。 A1B1C2D1

信康を始めとして、一同覚えず声をあげてほめた。田舟を借りて鷺を取りに行く足軽をあとに残して、一同は館へ帰った。 A1B1C2D1

花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外」より

シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外「佐橋甚五郎」2

@ 佐橋甚五郎は、家康の嫡子信康に仕える小姓であった。どんな用事でも敏捷にこなし、武芸にも優れていた。また、遊芸も巧者で笛を上手に吹いた。ある時、信康の物詣の際に、通りすがりの沼に下りていた鷺を撃てるかどうかで小姓の蜂谷と口論になった。そこで何かを賭けることにした。鉄砲の銃弾は運良く鷺に命中した。甚五郎は、蜂谷に金熨斗付きの大小を求めた。しかし、蜂谷は拒んだ。翌日、蜂谷は傷もないのに死んでいた。甚五郎の行方がわからない。しかし、田舎に隠れていることが知れて、甚五郎の従兄佐橋源太夫がことの事情を家康に伝える。
A この短編には武士の意地が記されている。それを内から外への思考とすると、脳の活動としては創発が考えられる。甚五郎の欲求は蜂谷が拒絶したために満たされない。欲求の充足は阻止された。そこで怒りが生じ情動が生まれる。こうした創発は、人に攻撃的な行動を促す。
B 家康は事情を察してから源太夫に言い放つ。奉公として甚五郎に武田方の甘利四郎三郎を討たせることになった。甚五郎は、目の上の瘤であった小山の城で甘利を討ち、さらには北條氏に対陣を張って軍功を収めた。ところが甚五郎に賞美の言葉はなかった。その上、甘利に可愛がられていたとのことで、大阪へ遷った羽柴家への使いを見送られる。その後、源太夫の邸へも立ち寄らずに行方がわからなくなった。
C ここでも甚五郎は思いが満たされないため、不快感が生じて情動が現れている。二木(1999)によると、こうした適応行動が起こるには、外界から入ってきた刺激の生物学的意義(例えば、有害か否か)を評価する過程が働いているという。甚五郎にとってこの発現はどうやら有害だったようだ。24年の月日を経て朝鮮からの使いとして朝鮮人になりすまして甚五郎は家康の前に現れる。
D 情動ついては、大脳の内側にある大脳辺縁系が密接な関係にある。特にその中でも扁桃体が重要であり、扁桃体と線維連絡のある視床下部や視床下部と線維連絡のある中脳中心灰白質も、情動の表出に関与している。例えば、情動に伴う自律神経系の反応(心拍数、呼吸、血圧の変化)や行動面での反応(恐怖に対するすくみや逃避、怒りによる攻撃)の生起である。つまり、扁桃体─視床下部─中脳中心灰白質という1つの系が情動に関与する脳の部位になっている。

花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外」より

シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外「佐橋甚五郎」1

1 はじめに

 シナジーのメタファーのために一作家一作品でできることを現状のレベルでまとめている。今後、統計処理など研究の技葉がさらに増えていくように日々精進していきたい。この小論では森鴎外(1862−1922)の「佐橋甚五郎」を題材にする。

2 Lのストーリー

 私のテキストの分析は、シナジーのメタファーを考察することである。最初に受容と共生からなるLのストーリーを作成し、次にそれを反映するリレーショナルDBについて分析していく。
 基本的に、「山椒大夫」(1914)と同じ方法で、「佐橋甚五郎」(1913)について見ていくことにする。すでに見たように、鴎外の執筆時の脳の活動を感情として、「鴎外と感情」というシナジーのメタファーを作成している。「山椒大夫」と「佐橋甚五郎」の違いは、前者が誘発の強い情動(外から内)で、後者が創発の強い情動(内から外)というところにある。

花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−森鴎外」より
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花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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