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2018年07月05日

数学: トポスの定義 ── 部分対象関手

集合の圏を特徴付ける 2 つの性質として
・ 任意の有限極限が存在する;
・ 任意の集合に対して, その部分集合全体からなる集合を構成できる.
に注目する.

圏論において, トポス (topos) はこれらを一般化した性質を備えた圏として定義されるが, この観点からは集合論の一般化と考えることもできる.
また, 別の観点からは, 位相空間上の層のなす圏の抽象化とも言える.

読んでいる本では, 最初はトポスを集合の一般化として定義していて, その際に部分対象関手 (subobject functor) が用いられる.
これについてメモしておく.

圏 $\mathscr{C}$ において, 射 $f : A \rightarrow B$ が, 2 つの射 $g, g' : T \rightarrow A$ に対して
\begin{equation*}
\newcommand{\Ar}[1]{\mathrm{Ar}(#1)}
\newcommand{\ar}{\mathrm{ar}}
\newcommand{\arop}{\Opp{\mathrm{ar}}}
\newcommand{\Colim}{\mathrm{colim}}
\newcommand{\CommaCat}[2]{(#1 \downarrow #2)}
\newcommand{\Func}[2]{\mathrm{Func}(#1,#2)}
\newcommand{\Hom}{\mathrm{Hom}}
\newcommand{\Id}[1]{\mathrm{id}_{#1}}
\newcommand{\Mb}[1]{\mathbf{#1}}
\newcommand{\Mr}[1]{\mathrm{#1}}
\newcommand{\Ms}[1]{\mathscr{#1}}
\newcommand{\Nat}{\mathrm{Nat}}
\newcommand{\Ob}[1]{\mathrm{Ob}(#1)}
\newcommand{\Opp}[1]{{#1}^{\mathrm{op}}}
\newcommand{\Pos}{\mathbf{Pos}}
\newcommand{\q}{\hspace{1em}}
\newcommand{\qq}{\hspace{0.5em}}
\newcommand{Rest}[2]{{#1}|{#2}}
\newcommand{\Sub}{\mathrm{Sub}}
\newcommand{\Src}{d^{0,\mathrm{op}}}
\newcommand{\Tgt}{d^{1,\mathrm{op}}}
f \circ g = f \circ g'
\end{equation*} を満たすとき常に $g = g'$ が成り立つならば, $f$ は単射 (monomorphism) であると言い, $f : A \rightarrowtail B$ のように書く.

圏 $\Ms{C}$ において,
\begin{equation*}
\xymatrix@=48pt {
\ar@{}[d]_{D:} & ~ & B \ar[d]^g \\
& A \ar[r]_f & C
}
\end{equation*}
の形の任意の図式 $D$ が常に引き戻し (pullback), つまり図式 $D$ の $\Ms{C}$ における極限 $P = \lim\,D$ を持つものとする.
このとき, 射 $p_1 : P \rightarrow A$, $p_2 : P \rightarrow B$ が一意的に存在して, 図式
\begin{equation*}
\xymatrix@=48pt {
P \ar[d]_{p_1} \ar[r]^{p_2} & B \ar[d]^g \\
A \ar[r]_f & C
}
\end{equation*} が可換になる.
このような圏 $\Ms{C}$ では, 上記の図式において $g$ が単射ならば $p_1$ も単射になるという性質がある.
\begin{equation*}
\newdir{ >}{{}*!/-5pt/@{>}}
\xymatrix@=48pt {
P \ar@{ >->}[d]_{p_1} \ar[r]^{p_2} & B \ar@{ >->}[d]^g \\
A \ar[r]_f & C
}
\end{equation*} これは, $\Ms{C}$ の射 $f : A \rightarrow C$ によって, $C$ への単射 $g : B \rightarrowtail C$ が, $A$ への単射 $p_1 : P \rightarrowtail A$ に引き戻されることを意味する.

2 つの単射, $g : U \rightarrowtail A$, $h : V \rightarrowtail A$ を考える. これらに対して射 $i : U \rightarrow V$,
$j : V \rightarrow U$ が存在して, 図式
\begin{equation*}
\newdir{ >}{{ }*!/-5pt/@{>}}
\xymatrix {
U \ar@{ >->}[dr]_g \ar[rr]^{i} & & V \ar@{ >->}[dl]^h \\
& A &
}
\qquad
\xymatrix {
U \ar@{ >->}[dr]_g & & V \ar[ll]_{j} \ar@{ >->}[dl]^h \\
& A &
}
\end{equation*} が共に可換になるときに,
\begin{equation*}
g \sim h
\end{equation*} と書くことにする.
上記の 2 つの図式が可換であることより, $g = g \circ (j \circ i)$, $h = h \circ (i \circ j)$ が成り立つが, $g$, $h$ が単射であることより $j \circ i = \Id{U}$, $i \circ j = \Id{V}$ が成り立つ. つまり $U$ と $V$ は $i$, $j$ を同型射として同型になる.
対象 $A$ をターゲットとする単射全体の集合を $M(A)$ とおくとき, $\sim$ は実際に $M(A)$ 上の同値関係となるので, これによる商空間を
\begin{equation*}
\Sub(A) = M(A) \big/ \sim
\end{equation*} とおく.
各単射 $g : U \rightarrowtail A$ の同値関係 $\sim$ による同値類を $[g] = [g : U \rightarrowtail A]$ と書くことにすれば,
\begin{equation*}
\Sub(A) = \left\{\, [g : U \rightarrowtail A] \mid g \in M(A) \,\right\}
\end{equation*} である.
$\Sub(A)$ の元を $A$ の部分対象 (subobject) と呼ぶ.

$\Ms{C}$ の任意の射 $f : B \rightarrow A$ に対して, 単射 $g : U \rightarrowtail A$, $g' : U' \rightarrowtail A$ が与えられ, $g \sim g'$ が成立しているとする. $\Ms{C}$ に関する仮定より図式
\begin{equation*}
\xymatrix@=48pt {
& U \ar@{ >->}[d]^g \\
B \ar[r]_f & A &
}
\qquad
\xymatrix@=48pt {
& U' \ar@{ >->}[d]^{g'} \\
B \ar[r]_f & A
}
\end{equation*} は共に単射 $g$, $g'$ の引き戻しとなる一意的な単射 $h : V \rightarrowtail B$, $h' : V' \rightarrowtail B$ を持ち, 図式
\begin{equation*}
\newdir{ >}{{ }*!/-5pt/@{>}}
\xymatrix@=48pt {
V \ar@{ >->}[d]_h \ar[r]^{p_2} & U \ar@{ >->}[d]_g \\
B \ar[r]_f & A
}
\qquad
\xymatrix@=48pt {
V' \ar@{ >->}[d]_{h'} \ar[r]^{p'_2} & U' \ar@{ >->}[d]^{g'} \\
B \ar[r]_f & A
}
\end{equation*} は可換になる.
このとき, $h \sim h'$ が成り立つことが示せるので, 集合間の射 $\Sub(f) : \Sub(A) \rightarrow \Sub(B)$ を
\begin{equation*}
\Sub(f)([g]) = [h]
\end{equation*} と定義することができる.

このようにして定義される写像 $\Sub : \Ms{C} \rightarrow \Mb{Set}$ は反変関手になる. $\Sub$ を $\Ms{C}$ 上の部分対象関手 (subobject functor) と呼ぶ.
通常, 混乱の恐れが無い場合には同値類 $[g : U \rightarrowtail A]$ の代わりに射 $g : U \rightarrowtail A$ 自体を $A$ の部分対象として扱う.

これにより, 上記の図式 $D$ が常に極限を持つような圏 $\Ms{C}$ において, $\Mb{Set}$ における部分集合の一般化である部分対象が定義される.
部分対象が定義できる条件として, 任意の引き戻しの存在が要求されるという事実が興味深い.
posted by 底彦 at 18:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 数学

映画: 『万引き家族』── メモ

昨日観た『万引き家族』は素晴らしい映画だったので, 忘れないうちに書いておく.

祖母の年金を頼りに都会の隙き間に隠れたような家に集まった家族の物語である.
祖母, 父親のオサム, 母親のノブヨ, その妹のアキ, 子どもは祥太. 後にオサムが街で拾ってきたユリが加わる (ユリは実の親から虐待を受けていることが物語内でほのめかされている).

前半は家族それぞれのエピソードが断片的に短く描かれる.

それを観るのが結構きつい:

・彼らに血の繋がりは無い. みんな何かから逃れて集まってきたような. 背景に虐待や, 肉体的・精神的暴力, 犯罪がちらつく.
・家族の生活は笑いが絶えない. こういう楽しい様子への違和感 (これはもはや失われた家族の風景ではないか) といくらかの羨望.
・犯罪で結び付いていることや祖母が高齢であることなどから, この家族に近い将来に訪れるであろう確実な破局の予感.
・子どもに万引きをさせていること. オサムの指示でもやり, 子どもだけでも (最初は祥太だけだが後にはユリも) やる. 子どもが罪を犯すのを見るのは非常に辛い.

そういう要素のためか, 逆に世の中から弾き出され, 逃げ出した彼らに感情移入してしまった.
自分とは別の世界の話と言って, 俯瞰して彼らを眺めることができない.

後半になってある事件をきっかけに家族の存在が見つかってしまい, 全員が警察の取り調べを受けることになる.
前半に描かれた断片の裏側にあったものが明かされていく.

ユリは本当の親の元に戻される.
祥太は施設に入る.
その他の家族もバラバラになって新しいそれぞれの生活が始まる.

落ち着くべきところに落ち着いたという風になっている.

けれどもこの結末は自分が望むものとは異なっていた. こういう結末になってほしくなかった.
彼らは, 元の虐待や暴力に晒される世界, そして再び犯罪を行ってしまうかも知れない世界の中に戻っていくことになるではないか.

家族に感情移入していた自分は, どうにかして彼らみんなが幸福な結末に辿り着いてほしいと願っていた.
彼らが行くところはここじゃない. そう感じてしまっていた.

しかしこの物語の中にあるどんな要素を持ってきても, 自分が望むそういう別の結末を組み立てることは不可能だ.
考えれば考えるほど, そういう幸福な結末がどうやっても否定されるよう緻密に物語が組み立てられていて, これを強引に引っくり返そうとすれば却って物語が台無しになってしまう.
この緻密さ, 細かなところの丁寧な作り込みがすごい.

物語の必然的な流れとして, あるべきものがあるべきところに収まる結論になっていて, どうにもこれを受け入れざるを得ない.

でも彼らはどこに行けばいいのか, 本当の行き場所が無いではないかという感情が残ってしまう.

この結末に自分を納得させようと思えば, 家族の各々のこれからの成長を信じるしかない.
血の繋がりの無い家族として隠れるように身を寄せ合って暮らしていた経験や思い出が, その支えになってくれることを願うしかない.

この家族を他人事ではないと感じた自分に, それを信じて願う心の強さを持てるだろうか.

そう問いかけられている思いだ.
posted by 底彦 at 18:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日常生活

夕方まで寝込む

昨日遅くまで寝付けず, 睡眠不足のため午前中はだらだらと寝てしまった.
起き上がれたのは夕方になってから.
やや無気力が苦しい.

とりあえず踏ん張ってスーパーに買い物に行った.

帰宅後シャワーを浴びる.

早めに休む.
posted by 底彦 at 18:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日常生活
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