田中宇の国際ニュース解説
2008年9月28日
http://tanakanews.com/
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★国連を乗っ取る反米諸国
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9月16日、ニューヨークのウォール街で大手金融機関が連続破綻し、経済
に関するアメリカ中心体制の崩壊が始まった日、ウォール街から6キロほど離
れた国連本部では、政治に関するアメリカ中心体制の崩壊を宣言するかのよう
な、国連総会の新議長の演説が行われた。
この日、国連では年次総会が開始され、ニカラグアのミゲル・デスコト・ブ
ロックマン元外相(Miguel d'Escoto Brockmann)が、総会議長に選任された。
ブロックマンは就任演説で「安保理事会の中には、戦争中毒の国(アメリカ)
がおり、世界の平和と安全を脅かしている」「(米軍のイラク)侵攻によって
120万人もの人々が殺された」と、アメリカを酷評した。
http://www.voanews.com/english/2008-09-17-voa7.cfm
国連総会の議長任期は1年間で、ブロックマンはこの1年間で国連改革を進
め、「拒否権」など絶大な権力を持っている安保理の常任理事国(米英仏露中)
の権限を減少させ、代わりに全加盟国が出席する総会の権限を拡大することで、
国連を「民主化」したいと言っている。彼はまた、発展途上国に対して借金取
り的な財政緊縮政策を強要してきた、米欧が支配する組織であるIMF(トッ
プは必ず西欧人)と世界銀行(トップは必ず米国人)を改革したいとも表明した。
http://www.reuters.com/article/worldNews/idUSN1630800820080917
1960年代に非同盟諸国の運動が世界的に活発化して以来、国連では、発
展途上国が結束し、欧米(米英)による世界支配や、米ソ2極的な覇権体制を
非難する動きが続いてきたが、ほとんどの動きは、途上国側が分裂させられて
沈静化して終わっている。今さら、たまたま国連総会の議長に中南米の反米論
者が就任して1年ほど騒いだところで、具体的な変革など何も起きるはずがな
いと考えるのが常識かもしれない。
しかし私が見るところ、ブロックマンの国連総会議長への就任の裏には、世
界的な策略がある。ベネズエラ、ブラジル、イラン、ロシア、そしておそらく
中国までが絡んだBRIC+反米諸国という「非米同盟」による、米英中心の
世界体制を変えようとする多極主義的な策略である。今この策略が加速してい
るのは、金融危機による米国の経済覇権崩壊との相乗効果を狙ったものだろう。