2008年10月27日
時代の転換
木下晃伸氏のメルマガ
【投資脳のつくり方】
から引用
1.三菱UFJ、最大1兆円増資へ
(出所)2008年10月26日付日本経済新聞朝刊1面より
●大手三メガによる巨額増資の可能性が出てきた
●希薄化以上に、日本も危ない、という印象が強く出てしまった
●2割、3割の下落を覚悟してでも、2倍、3倍を取りにいけるか
三菱UFJフィナンシャル・グループが今年度中に最大1兆円規模の増資を検討
しているとの報道があった。本日の日本経済新聞には、三井住友フィナンシ
ャルグループ、みずほフィナンシャルグループも、資本増強に向けて検討し
ているとの報道も見られる。三菱UFJは「そのような事実はない」と否定して
いるが、可能性は大いに出ていると考えておきたい。
日本の三メガバンクは、週内にも、9月中間期と2009年3月通期の業績予想を
下方修正する方針。ただ、米欧の大手金融機関のように巨額赤字や資本不足
に陥るような状態にはなく、公的資金注入も不要だ。
それでも、1兆円規模の増資、ということになれば、これは2003年1月に、苦
境に立たされていたみずほグループが、増資に踏み切った額と同じ。希薄化
による株価下落はもちろんのこと、投資家に「日本の金融機関もそこまで悪
いのか」と思わせるには十分だった。結果として、金融株は総崩れとなり、
日経平均株価は82年以来26年ぶりの安値に沈んでしまった。
9月15日、リーマン・ブラザーズ証券が破綻した際、当メールマガジンでは、
「破綻による公的資金投入は買い」とお伝えした。一方で、「増資のタイミ
ングでは投資するのは早い」とも書いた。邦銀の過去の株価推移を見ると、
増資に踏み切ってから株価が大きく下落したためだ。そして、同時に邦銀は
財務健全性に優れ、増資は必要ないと考えていた。しかし、結果として、大
手三メガは、直近の株価暴落により増資に踏み切る可能性が出てきた。株式
市場に対して明らかにマイナスだ。
市場がパニックに陥っている中、市場はもう一段下落する可能性を否定する
根拠は無い。かといって、GDPに対して、半分以下で評価されるほど、日本
株が壊滅的である訳でもない。ギャップはいずれ埋まっていく。ここは、2
割、3割の下落を覚悟してでも、これからの2倍、3倍の上昇を期待して投資
に臨むほかない。
2.金融危機、世銀緊急融資を拡大
(出所)2008年10月26日付日本経済新聞朝刊1面より
●国家に対する信認が剥落
●マネーに対する信認がないということ
●各国通貨に対して円高であることは、何を意味しているのか
いま、世界の株式市場が急速に冷え込んでいるのは、国家に対する信認が剥
落しているためだ。これは、新興国の国債で構成される米ETF「EMB」の推移
を見ると明らかだ。
※iShares JPMorgan USD Emer Mkt Bnd Fd ETF (Public, NYSE:EMB)
http://finance.google.com/finance?q=NYSE%3AEMB
マネーは国家の信頼があるからこそ、赤の他人からでも信用して受け取る事
ができる。モノやサービスと交換することができる。しかし、国家に対する
信頼がなくなったらどうか。日本国に対する信頼がもし無ければ、円をもら
っても意味がない。いつ紙くずになってしまうか分からないという恐怖が巻
き起こるためだ。
こうした事態が新興国には現実として起こっている。アイスランド、ハンガ
リー、ウクライナ、ベラルーシなどは国家の存続自体に疑念の目が向けられ
ている。また、隣国である韓国も通貨が大きく下落している。各国の通貨も
同様だ。
その中で、ひときわ輝く存在が円だ。日経平均株価は、ここに来て暴落して
いるが、実はユーロ建てで計算すれば、それほど下落していないという奇妙
なことになっている。それだけ、対ユーロに対して円が強くなっているとい
うことだ。
日本は今は消去法的かもしれないが、こぞって買われている通貨だ。しかも
低金利でこれだけ各国通貨に対して円高になるということは、信頼が厚いと
いうこと。いずれこのマネーは、日本の株、不動産などの資産にも流れ込む
ようになる。
3.500年の歴史に学ぶ
(出所)2008年10月27日付日本経済新聞朝刊4面より
●覇権国は、興隆と衰退を繰り返す
●米国一極集中が終わり、世界多極化時代へ
●先に価値観の変化に気づいた日本は耐性がある
100年に一度の恐慌を経験している私たち。今までに経験した危機とは、景
色が違っており、株式市場から離れてしまう投資家も多いだろう。もしくは、
無視を決め込んでいる投資家も多いかもしれない。
株価がピークから4分の1に下落することになった90年代の日本のバブル崩壊
によって、最終的には過去の日本の高度経済成長がもうやって来ないことを
国民に認識させ、従来型精神構造の破壊がもたらされた。日本にとって、明
治維新、太平洋戦争に続く大変な時代転換となったと言っても過言ではない。
いま、米国に始まったサブプライムローン問題が、結果として、マネー恐慌、
世界恐慌を引き起こしている。世界各国が取り組んでいる動きは、決して間
違っているわけではない。また、楽観論によって動きが遅い訳ではない。日
本のバブル崩壊に比べても、かなりのスピードと規模で立ち向かっている。
それでも、奏功せず、市場が制御不能な状態に陥っているのは、株式市場が
何かを訴え、価値観を変えようとしていると考えるべきなのだろう。私は、
米国一極集中時代が終わり、徐々に米国から複数の地域に権力が分散する多
極化の時代が到来することを示唆しているものと考える。そのため、米国に
変わって権力を持とうとする新興国各国が、国家の信認を投資家から得られ
ていない状態が続いているため、株式市場が動揺し続けているものと考える。
歴史を振り返っても、覇権国は興隆と衰退を繰り返している。時代が転換す
るタイミングだからこそ、市場は荒っぽく出迎える。しかし、システムが崩
壊し、すべてが終わってしまう訳ではない。特に、日本株式市場はいち早く
バブル崩壊を経験し耐性もある。ため息がでる相場が続くが、精神力が問わ
れていると考えたい。
【投資脳のつくり方】
から引用
1.三菱UFJ、最大1兆円増資へ
(出所)2008年10月26日付日本経済新聞朝刊1面より
●大手三メガによる巨額増資の可能性が出てきた
●希薄化以上に、日本も危ない、という印象が強く出てしまった
●2割、3割の下落を覚悟してでも、2倍、3倍を取りにいけるか
三菱UFJフィナンシャル・グループが今年度中に最大1兆円規模の増資を検討
しているとの報道があった。本日の日本経済新聞には、三井住友フィナンシ
ャルグループ、みずほフィナンシャルグループも、資本増強に向けて検討し
ているとの報道も見られる。三菱UFJは「そのような事実はない」と否定して
いるが、可能性は大いに出ていると考えておきたい。
日本の三メガバンクは、週内にも、9月中間期と2009年3月通期の業績予想を
下方修正する方針。ただ、米欧の大手金融機関のように巨額赤字や資本不足
に陥るような状態にはなく、公的資金注入も不要だ。
それでも、1兆円規模の増資、ということになれば、これは2003年1月に、苦
境に立たされていたみずほグループが、増資に踏み切った額と同じ。希薄化
による株価下落はもちろんのこと、投資家に「日本の金融機関もそこまで悪
いのか」と思わせるには十分だった。結果として、金融株は総崩れとなり、
日経平均株価は82年以来26年ぶりの安値に沈んでしまった。
9月15日、リーマン・ブラザーズ証券が破綻した際、当メールマガジンでは、
「破綻による公的資金投入は買い」とお伝えした。一方で、「増資のタイミ
ングでは投資するのは早い」とも書いた。邦銀の過去の株価推移を見ると、
増資に踏み切ってから株価が大きく下落したためだ。そして、同時に邦銀は
財務健全性に優れ、増資は必要ないと考えていた。しかし、結果として、大
手三メガは、直近の株価暴落により増資に踏み切る可能性が出てきた。株式
市場に対して明らかにマイナスだ。
市場がパニックに陥っている中、市場はもう一段下落する可能性を否定する
根拠は無い。かといって、GDPに対して、半分以下で評価されるほど、日本
株が壊滅的である訳でもない。ギャップはいずれ埋まっていく。ここは、2
割、3割の下落を覚悟してでも、これからの2倍、3倍の上昇を期待して投資
に臨むほかない。
2.金融危機、世銀緊急融資を拡大
(出所)2008年10月26日付日本経済新聞朝刊1面より
●国家に対する信認が剥落
●マネーに対する信認がないということ
●各国通貨に対して円高であることは、何を意味しているのか
いま、世界の株式市場が急速に冷え込んでいるのは、国家に対する信認が剥
落しているためだ。これは、新興国の国債で構成される米ETF「EMB」の推移
を見ると明らかだ。
※iShares JPMorgan USD Emer Mkt Bnd Fd ETF (Public, NYSE:EMB)
http://finance.google.com/finance?q=NYSE%3AEMB
マネーは国家の信頼があるからこそ、赤の他人からでも信用して受け取る事
ができる。モノやサービスと交換することができる。しかし、国家に対する
信頼がなくなったらどうか。日本国に対する信頼がもし無ければ、円をもら
っても意味がない。いつ紙くずになってしまうか分からないという恐怖が巻
き起こるためだ。
こうした事態が新興国には現実として起こっている。アイスランド、ハンガ
リー、ウクライナ、ベラルーシなどは国家の存続自体に疑念の目が向けられ
ている。また、隣国である韓国も通貨が大きく下落している。各国の通貨も
同様だ。
その中で、ひときわ輝く存在が円だ。日経平均株価は、ここに来て暴落して
いるが、実はユーロ建てで計算すれば、それほど下落していないという奇妙
なことになっている。それだけ、対ユーロに対して円が強くなっているとい
うことだ。
日本は今は消去法的かもしれないが、こぞって買われている通貨だ。しかも
低金利でこれだけ各国通貨に対して円高になるということは、信頼が厚いと
いうこと。いずれこのマネーは、日本の株、不動産などの資産にも流れ込む
ようになる。
3.500年の歴史に学ぶ
(出所)2008年10月27日付日本経済新聞朝刊4面より
●覇権国は、興隆と衰退を繰り返す
●米国一極集中が終わり、世界多極化時代へ
●先に価値観の変化に気づいた日本は耐性がある
100年に一度の恐慌を経験している私たち。今までに経験した危機とは、景
色が違っており、株式市場から離れてしまう投資家も多いだろう。もしくは、
無視を決め込んでいる投資家も多いかもしれない。
株価がピークから4分の1に下落することになった90年代の日本のバブル崩壊
によって、最終的には過去の日本の高度経済成長がもうやって来ないことを
国民に認識させ、従来型精神構造の破壊がもたらされた。日本にとって、明
治維新、太平洋戦争に続く大変な時代転換となったと言っても過言ではない。
いま、米国に始まったサブプライムローン問題が、結果として、マネー恐慌、
世界恐慌を引き起こしている。世界各国が取り組んでいる動きは、決して間
違っているわけではない。また、楽観論によって動きが遅い訳ではない。日
本のバブル崩壊に比べても、かなりのスピードと規模で立ち向かっている。
それでも、奏功せず、市場が制御不能な状態に陥っているのは、株式市場が
何かを訴え、価値観を変えようとしていると考えるべきなのだろう。私は、
米国一極集中時代が終わり、徐々に米国から複数の地域に権力が分散する多
極化の時代が到来することを示唆しているものと考える。そのため、米国に
変わって権力を持とうとする新興国各国が、国家の信認を投資家から得られ
ていない状態が続いているため、株式市場が動揺し続けているものと考える。
歴史を振り返っても、覇権国は興隆と衰退を繰り返している。時代が転換す
るタイミングだからこそ、市場は荒っぽく出迎える。しかし、システムが崩
壊し、すべてが終わってしまう訳ではない。特に、日本株式市場はいち早く
バブル崩壊を経験し耐性もある。ため息がでる相場が続くが、精神力が問わ
れていると考えたい。