2008年09月02日
本格的な円高相場の始まり
今井 雅人 氏のコラムから引用。
http://markets.nikkei.co.jp/column/fxwatch/index.aspx?site=MARKET&genre=i3&id=MMMAi3000002092008
本格的な円高相場の始まり(2008/9/2)
福田首相が突然辞任した。国としては大変憂慮すべき事態である。しかし最近は、日本の政治の混乱が為替相場に影響を与えたことはほとんどないので、相場的にはあまり気にする必要はない。
さて、為替市場では円全面高の様相がいよいよ鮮明となってきている。8月5日付のコラムで英国経済リセッション入りの可能性が高まってきたとご紹介した。先週末ダーリング英財務相がイギリス経済は1960年以来最大の試練を迎えていると発言したことから、いよいよ英国経済は深刻化してきていることが推測できる。8月12日付のコラムでは、英国に限らず、ユーロ圏、オセアニア諸国などの景気も減速しているため、これらの通貨が下落していくだろうという見通しを示したが、現在もその状態に変化はなく、これ以上に説明する必要はないだろう。現在の為替市場は各国のファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)に従って極めて合理的に動いている。これだけわかりやすい相場展開も珍しいほどである。
実はここ1年ほどで今回同様急激に円高になる動きが2度あった。昨年8月のサブプライムローン問題発生時と今年3月のサブプライムローン問題が深刻化した時期である。過去2回のケースでは、急激な円高は一時的なものに終わり、その後急速に反転し円安方向に戻っている。ここまでの値動きが過去2回と類似しているため、今回もまた円安方向に戻るのではないかと期待する投資家もいるかもしれないが、今回は円安方向には戻らないと考えておいたほうがよい。
なぜなら、過去2回の円高の原因と今回は根本的に異なるからだ。過去2回のケースは米国の金融市場混乱により投資家の間に動揺が広がり、リスク縮小の動きから金利差取引の解消が活発化、そのため円高方向に相場が大きく動いたという要因であった。こうしたケースでは、混乱が収束し、投資家に冷静さが戻ってくると相場は自然と反転していく。しかし、今回の円高は日米以外の諸国の経済が急速に減速し、金融緩和期待が急速に高まっていることが要因にある。
ここ4−5年ほど為替市場では米ドル以外の主要通貨に対して、長期的な円安傾向が続いていた。その原因は低水準の円金利であることは言うまでもないが、その一方で、欧州経済、オセアニア諸国の景気が堅調で金利も上昇傾向だったこともこうした国の通貨の上昇要因となったことを忘れてはいけない。このように長期間楽観視されていた市場環境が一転して悪化し始めているのであるから、その影響は極めて大きい。このようなファンダメンタルズの変化に従って形成されたトレンドは容易には反転しないのが一般的である。
欧州中央銀行(ECB)もイングランド銀行(BOE)もまだ、金融緩和スタンスまでは姿勢をはっきり変えていない。緩和はこれから始まる。本日2日、オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)が政策金利を0.25%引き下げると確実視されているが、仮に予想通り利下げが実施されたとしても、これはまだ継続的な利下げの入り口に過ぎない。ニュージーランドは継続的な利下げサイクルに既に入っているが、それもここ1−2カ月の間に始まったばかりである。
こうした環境を考慮すれば、今後米ドル以外の通貨でさらに円高が進行する可能性は極めて高いと結論付けできる。ともかくファンダメンタルズに従った相場の値動きには逆らわないことである。少し円高になったからといって、安易に円売り外貨売りを敢行することは手控えるべきと個人的には考える。(FXマーケットウオッチ)
http://markets.nikkei.co.jp/column/fxwatch/index.aspx?site=MARKET&genre=i3&id=MMMAi3000002092008
本格的な円高相場の始まり(2008/9/2)
福田首相が突然辞任した。国としては大変憂慮すべき事態である。しかし最近は、日本の政治の混乱が為替相場に影響を与えたことはほとんどないので、相場的にはあまり気にする必要はない。
さて、為替市場では円全面高の様相がいよいよ鮮明となってきている。8月5日付のコラムで英国経済リセッション入りの可能性が高まってきたとご紹介した。先週末ダーリング英財務相がイギリス経済は1960年以来最大の試練を迎えていると発言したことから、いよいよ英国経済は深刻化してきていることが推測できる。8月12日付のコラムでは、英国に限らず、ユーロ圏、オセアニア諸国などの景気も減速しているため、これらの通貨が下落していくだろうという見通しを示したが、現在もその状態に変化はなく、これ以上に説明する必要はないだろう。現在の為替市場は各国のファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)に従って極めて合理的に動いている。これだけわかりやすい相場展開も珍しいほどである。
実はここ1年ほどで今回同様急激に円高になる動きが2度あった。昨年8月のサブプライムローン問題発生時と今年3月のサブプライムローン問題が深刻化した時期である。過去2回のケースでは、急激な円高は一時的なものに終わり、その後急速に反転し円安方向に戻っている。ここまでの値動きが過去2回と類似しているため、今回もまた円安方向に戻るのではないかと期待する投資家もいるかもしれないが、今回は円安方向には戻らないと考えておいたほうがよい。
なぜなら、過去2回の円高の原因と今回は根本的に異なるからだ。過去2回のケースは米国の金融市場混乱により投資家の間に動揺が広がり、リスク縮小の動きから金利差取引の解消が活発化、そのため円高方向に相場が大きく動いたという要因であった。こうしたケースでは、混乱が収束し、投資家に冷静さが戻ってくると相場は自然と反転していく。しかし、今回の円高は日米以外の諸国の経済が急速に減速し、金融緩和期待が急速に高まっていることが要因にある。
ここ4−5年ほど為替市場では米ドル以外の主要通貨に対して、長期的な円安傾向が続いていた。その原因は低水準の円金利であることは言うまでもないが、その一方で、欧州経済、オセアニア諸国の景気が堅調で金利も上昇傾向だったこともこうした国の通貨の上昇要因となったことを忘れてはいけない。このように長期間楽観視されていた市場環境が一転して悪化し始めているのであるから、その影響は極めて大きい。このようなファンダメンタルズの変化に従って形成されたトレンドは容易には反転しないのが一般的である。
欧州中央銀行(ECB)もイングランド銀行(BOE)もまだ、金融緩和スタンスまでは姿勢をはっきり変えていない。緩和はこれから始まる。本日2日、オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)が政策金利を0.25%引き下げると確実視されているが、仮に予想通り利下げが実施されたとしても、これはまだ継続的な利下げの入り口に過ぎない。ニュージーランドは継続的な利下げサイクルに既に入っているが、それもここ1−2カ月の間に始まったばかりである。
こうした環境を考慮すれば、今後米ドル以外の通貨でさらに円高が進行する可能性は極めて高いと結論付けできる。ともかくファンダメンタルズに従った相場の値動きには逆らわないことである。少し円高になったからといって、安易に円売り外貨売りを敢行することは手控えるべきと個人的には考える。(FXマーケットウオッチ)