2016年02月19日

トラクトリックス(追跡線/牽引線)

 今回は tractrix (追跡線) を扱います。

トラクトリックス(追跡線/牽引線)


 牽引線とか犬曲線と呼ばれたりもします。
 「え? 犬曲線?」と驚かれるかもしれませんが、下図を見てご理解ください。

 トラクトリックス犬.png

 ポチ(P)は飼い主さんに伸び縮みしない紐でつながれています。
 で、図にあるように飼い主さんは水平移動していくのです。
 ポチは嬉しそうに尻尾を振って飼い主さんの後を追うわけですが、そのときポチの動く軌跡がトラクトリックスです。でも「犬曲線」なんてあんまりですよね。なので、もっと飼い主さんの愛情が伝わりそうな名前をつけておきました。名づけて……

わんこのお散歩曲線

です! どうですか? ダメ? それなら……

ポチと楽しくお散歩曲線

これもダメですか? まあ皆さんのお好きな名前で呼んでくださいな。

トラクトリックスは次のような微分方程式の解になっています:

(a 2 - y 2) y′2 = y 2

 思わず「う!」と唸りたくなるような強面の式ですが、見かけ通りけっこう手強い方程式です。微分方程式の扱いに自信のある方は解いてみてください。「どうしても解き方を知りたい!」というコメントがあれば解法を載せますが、できればそのコメントは勘弁してほしいです(たくさんの数式をブログに載せるのは本当に手間がかかるのです)。ネットか大学の図書館で探せばたぶん見つかります。

 解は対数を含んだ陰関数(implicit function)で表されます:

トラクトリックスの解

 定数が煩わしいので a = 1 としておきましょう:

トラクトリックスの解定数a=1

 媒介変数 t を用いると、

x = t - tanh(t), y = sech(t)   [2]

のように簡単な形に書けますが、今回は [1] のままで話を進めます。

 01追跡線.gif

 x = 0 で尖がった形のグラフです。
 この尖がりは √… の項に原因があります。
 それを確かめるために、この項を取っ払ってみましょう:

 02追跡線変形@.gif

 尖がりがなくなって滑らかに連結していますね。
 では再び項を元に戻して、log(…) の項に cos(y) をかけてみます:

 03追跡線変形A.gif

 原点付近でぐるりと1周する関数です。
 cos(y) の代わりに exp(y) をかけると・・・・・・

 04追跡線変形B.gif

 丸みを帯びた帽子のような形になりました。
 最後に欲張って cos(y) と exp(y) の両方をかけてみると・・・・・・

 05追跡線変形C.gif

 三角帽子の出来上がり。今回はこれでおしまい。
 ⇒ なんとなくの数学日記(生もみじ饅頭をいただきました)

2016年02月17日

Excel でレムニスケート(連珠形)を描きます

 今回はヤコブ・ベルヌーイのレムニスケートです。
 漢字で書くと連珠形。英語で書くと lemniscate.
 好きな名前で憶えてください。

レムニスケート(連珠形)


 直交座標形式は x と y の4次式です:

(x 2 + y 2) 2 = 2a 2(x 2+y 2)

 極方程式で表すと:

r 2 = 2a 2cos2θ

 2a 2 の項を消すために a = 1/√2 と決めておきましょう。
 このとき (x, y) を媒介変数で表示すると:

レムニスケート

となります。それではグラフを描いてみます。

 01連珠形.gif

 見事な曲線です。名前のとおり珠が2つ連なっていますね。
 英語名の lemniscate はラテン語の lemniscus(リボン)に由来します。
 リボンの結び目(今の場合は原点)のことを結節点と呼びます。

 正直言うとこれ以上美しいグラフは望むべくもないのですが、このまま終わると記事が短すぎるので、いつものように色々と変形してみます:

 02連珠形変形@.gif
 形は色々と変わりますが、同じ図形が左右対称に連なっている点では共通しています。
 この中では3枚目のグラフが一番気に入っています。y の分子にある cosθ の指数をさらに大きくすると2つの珠はどんどん離れていきます。気になる人は試してみてください。

 もう少し見てみましょう。 x に θ をかけるだけで驚くようなグラフが出現します:

 03連珠形変形A.gif
 3次元画像を眺めるつもりで、グラフを見つめてみてください。
 少しずつ角度を変えた円がたくさん連なっているように見えませんか?
 全ての円は結節点で接しています。これは連珠ならぬ連環ですね。

 y にも θ をかけてみましょう:

 04連珠形変形B.gif

 左右に円が連なっていますね。よくみると非対称です。
 最後にもう1つ。x の分子にある cosθ の絶対値の平方根をとります:

 05連珠形変形C.gif

 x は必ず正の値をとるのでグラフは右側だけに存在します。
 水滴のような形をした閉曲線ですね。
 ⇒ なんとなくの数学日記(漫画をたくさん読みます)

2016年02月15日

デカルトの正葉線

 今回取り扱うのは デカルトの正葉線。英語で書くと Folium of Descartes .
 別に英語で書く必要もないですけどね。何となく格好良いから書いてみました。
 以前に扱った正葉曲線と名前が似ていますが、完全に別物なので混同しないでくださいね。

デカルトの正葉線


 直交座標における関数形は x と y の3次式。とてもシンプルな表式です:

x 3 −3axy + y 3 = 0 (a > 0)  [1]

 しかし、この方程式をただ睨んでいてもグラフは描けません。

 デカルトの正葉線は媒介変数 t を用いて次のように書けることが知られています:

デカルトの正葉線方程式

 「本当かなー?」と疑う人は、[2] を [1] に代入して、ちゃんと方程式が成り立っていることを確認してみてください。途方もなく面倒な計算なので、あまりおすすめはしませんが。さて「この式をエクセルに放り込めばグラフの出来上がり」となりそうなのですが、そうもいかないのが正葉線の厄介なところ。 t ≒ −1 で分母があまりに小さくなるため、エクセルで正しく割り算が計算できない領域がでてきてしまいます。そこで再度次のような変数変換をして式を書き直します(a = 1 としてあります):

t = (1 + s) / (1 - s)

デカルトの正葉線方程式変数変換

 この変換を私が思いついたのなら「すごいだろ」と自慢しますが、残念ながら私ではありません。誰が考えたのか知りませんが(きっとすごく頭の良い人でしょう)、この変換は実に巧みにできていて全ての s に対して分母を 1 以上の値にしてくれます。こうなると、Excel に怖いものなしです。さあこれで今度こそグラフを描くことができます:

 はい。これがデカルトの正葉線(a = 1)です!

 01デカルトの正葉線.gif

 「……そんなに苦労したのに、こんな簡単なグラフなの?」と思ったりしませんでした?

 シンプルなグラフこそ奥深いものがあるのです。ちなみにデカルトの正葉線の漸近線は

y + x + a = 0

となることが知られています。

 さすがにこれで終わるのはあんまりなので、少し変形していきましょう。
 [2] において余計な係数を取り払い、なおかつ最初の (  ) の中に - s 2 という項を加えます。「なぜそんなふうにするの?」と尋ねられても「勘」としか答えようがありません。長年エクセルでグラフを描いていると、こういう妙な勘がはたらくのです。さてグラフのほうは……

 02デカルトの正葉線変形@.gif

 漸近線に沿って伸びていた直線が葉に巻きつきます。
 これもまたシンプルで美しいグラフですね。
 けっこう気に入っているグラフなので何か名前をつけようと思案中です。
 皆さんも何か良い名前を思いついたらコメントしてください。

 さらに - s 4 という項を加えます:

 03デカルトの正葉線変形A.gif

 葉が2重になりましたね。さすがにこのあたりになると完全にコンピューター数学の領域です。式が複雑すぎて手計算ではとても扱えません。せっかくですから葉っぱのような形のグラフを他にもいくつか紹介しておきます:

 04変則2葉線.gif

 05変則4葉線.gif

 06二重葉線.gif

 デカルトさんのように賢くなくても、コンピューターを使ってあれこれい適当に数式をいじっていると、偶然思わぬ発見があったりします。難しい計算は全てソフトが代わりに実行してくれますからね。「ひたすらに頭を捻って定理の証明法を発見する」という数学の王道とは全く別物ですが、趣味として数学で遊ぶことができるというのも現代人ならではの贅沢かもしれませんね。
 ⇒ なんとなくの数学日記(新しいブログを始めます)

2016年02月08日

Excel で放物螺旋と双曲螺旋を描きます

 代数螺旋の第2回です。放物螺旋双曲螺旋 を扱います。

放物螺旋

 アルキメデス螺旋 (r = θ) は周回ごとの曲線は等間隔で描かれていましたが、θの平方根をとることによって間隔を変化させることができます:

r = a √θ

 a はグラフ全体の拡大・縮小に関係するだけのパラメータなので、今は a = 1 と定めておきます。すると (x, y) とθの関係は次のように表せます。

x = √θ cosθ, y = √θ sinθ

 √θ はθ が増すほどその増加率は減少していくので、
 双曲螺旋のグラフを描いてみると・・・・・・

 01放物螺旋.gif

 このように周回ごとの曲線間隔が狭くなっていくのです。

 間隔を変化させる螺旋は他にもたくさんあります。
 その中でも簡単な例は対数関数を組み込んだ極方程式です:

r = log θ (注:底は e です)

 しかし放物螺旋とは異なる振る舞いをします:

 02螺旋r=lnθ.gif
 このグラフは漸近線をもちます (y = 0)。すなわち −∞ から原点までほぼ直線状に伸びて来て、そこから渦を巻き出します。曲線間隔は対数関数に従って徐々に狭まっていきます。

双曲螺旋

 極方程式でθの逆数をとれば、やはり間隔を変化させる螺旋が描くことが予想できます。それが 双曲螺旋 の方程式です。

r = a/θ

 a = 1 とすると (x, y) と θ の関係は

x = cosθ/θ, y = sinθ/θ

となります。この方程式はとても美しいグラフを描きます:

 03双曲螺旋.gif

 漸近線は y = 1 。無限遠方から大きな弧を描きながら周回しつつ徐々に間隔を狭めていき、最終的に近づいていきます。しかし原点付近では曲線の密度がどんどん増し、なかなかその半径を小さくしません。θ → ∞ でようやく原点に達することができます。

 双曲螺旋を少し変形して、

x = cosθ + cosθ/θ, y = sinθ + sinθ/θ

という関数を定めてグラフを描いてみます:

 04双曲螺旋変形.gif

θ → ∞ で

x = cosθ, y = sinθ

となりますから、半径 1 の円に巻きつく螺旋になっているわけです。円の付近では線が密になりすぎて見えにくいので、本当に螺旋を描いているのかどうか、x = 1 の付近を拡大してみます。

 05双曲螺旋変形拡大図.gif

 きちんと線が分かれていることが確認できますね。エクセルグラフでは目盛を自由自在に変えられるので、こういうことも簡単にできてしまいます。
 

2016年02月07日

アルキメデスの螺旋(渦巻線)

アルキメデスの螺旋(渦巻線)

 ロープをぐるぐると巻けばアルキメデスの螺旋が出来上がります。古代シラクサの数学者アルキメデスさんも船着き場で巻かれたロープをじっと観察していたのかもしれません。別にそんなことしなかったかもしれません。まあともかく極方程式の中でもっとも簡単な式で表せるグラフが アルキメデスの螺旋(Archimedes' spiral)です:

r = aθ

 a = 1 と決めてしまえば、

r = θ

となって、さらに簡素な方程式になります。偏角θが増せば動径 r も大きくなるのですから、数学に慣れた人はこの方程式を見ただけで螺旋を描くことがわかります。x, y を具体的に表示すると、

x = θcosθ   (1)
y = θsinθ   (2)

となります。さっそくいつものようにグラフを描いてみましょう。

 01アルキメデスの螺旋.gif

紛れもなく螺旋ですね。ここで (1) と (2) をθで微分してみますと

dx = (cosθ - θsinθ)dθ   (3)
dy = (sinθ + θcosθ)dθ   (4)

となります。この dx と dy の意味を考えます。

 02微小角に対する線分増加率.gif

 上図はアルキメデスの螺旋を拡大表示したものです。 dx と dy は微小角 dθ に対する線分の増加 ds の x 成分、y 成分となっていますね。図にあるように螺旋が1周するごとに ds は大きくなっていますから、dx と dy の絶対値も大きくなっていきます。その効果は (3) と (4) の第2項 sinθ, cosθ の前にかかるθで表されています。ここから予想されることは、あらためて

x = cosθ - θsinθ   (5)
y = sinθ + θcosθ   (6)

とおいてみたときに、この方程式もまた螺旋を表しているのではないかということです。それではエクセルを使って実際に試してみましょう:

 03アルキメデスの螺旋微分@.gif

 予想通りですね。向きは逆になっていますが、やはり渦を巻いています。とすると (5), (6) を再び θ について微分しても ......

 04アルキメデスの螺旋微分A.gif

 やはり螺旋が出来上がります。何度繰返し微分しても新しい形の螺旋が生まれてきます。ちなみにベクトル (dx/dθ, dy/dθ) を (1 + θ2) の平方根で割って規格化すると、任意の θ における接線ベクトルが得られます:

 05アルキメデス螺旋の接線ベクトル.gif

 ちなみにアルキメデスさんも任意の点における接線を求めることに成功していたようです。彼が生きた時代は紀元前ですから、当然デカルト座標も解析幾何学も用いることはできませんでした(つまり上のように機械的に計算できるような問題ではなかったということです)。当時の幾何学の知識だけで問題を解決したわけですから、本当にすごい人ですね。
 
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