2016年06月18日

複素数の三角不等式を証明します

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問題17 複素数三角不等式の証明 [高2★★★☆☆]

 複素数 z = a + bi の絶対値は次のように定義されます:

複素数の絶対値

(1) 任意の複素数 z1, z2 について次の不等式を証明してください。

    |z1|−|z2| ≦ |z1 + z2| ≦ |z1| + |z2|

(2) (1) の結果を用いて次の不等式を証明してください。

    |z1 + z2 + ...... + zn| ≦ |z1| + |z2| + ...... + |zn|

[ヒント] (1) さえ証明できれば (2) は簡単ですが、使う道具が思い浮かばないと、どうしようもありません。この手の証明問題の定番ともいえる「あの方法」を使いますよ。
  
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解答17

(1)まずは右側の不等式

|z1 + z2| ≦ |z1|+|z2|   [a]

を証明してみましょう。まず z1 = 0, 或いは z2 = 0 のときは等号が成り立ちます。それ以外の場合は

z1 = a + bi, z2 = c + di

とおいて、右辺から左辺を引いた式

P = |z1| + |z2| − |z1 + z2|

を作ります。成分で表すと


となりますね。しかし、この形ではこれ以上計算を動かすことはできないので、 √ を外した形の式を作ることを試みます。こういった数式の変形法は数学Tなどでも定番です。とりあえず Q という式


を作って P に掛けてみます。問題によって常にお決まりの方法で上手くいくとは限らないのですが、こうした場合は定番の手法を取り敢えず試してみて、ダメだったら別の方法を考えるのです。さて Q は常に正ですから P に掛けても符号は変わりません:


 まだ中途半端に √ が残っていますが先ほどよりはましになりましたね。地道にコツコツと続けて√ を外していきましょう。この先は ac + bd の符号によって場合分けが必要です。

@ ac + bd < 0 のときは PQ > 0 つまり P > Q が成り立ちます。

A ac + bd > 0 のときは、


という正の数を作ります。これを PQ にかけて計算すると

PQR = (ad − bc)2 ≧ 0

が得られます。ゆえに PQ ≧ 0, すなわち P ≧ 0 が証明されました。
この結果を使って左側の不等式

|z1|−|z2| ≦ |z1 + z2|

が証明できます。|z1| を変形して、

 |z1| = |z1 + z2 − z2| ≦ |z1 + z2| + |− z1| = |z1 + z2| + |z2|

となりますから、

|z1|−|z2| ≦ |z1 + z2|   [b]

が示されました(証明終わり)。

 とまあ、ひらめきで解くというよりも、「√ が鬱陶しいからとにかく外しちゃえ」と変形していたら、いつの間にか証明できていた、という感じの解答になりますね。

(2) (1) を z1 から zn までの総和に拡大した不等式です:

 |z1 + z2 + ...... + zn| ≦ |z1| + |z2| + ...... + |zn|   [c]

(1) を前提とすれば当たり前のような関係式ですが、任意の n で成り立つことをきちんと示すには数学的帰納法を用います。まず (1) の結果から n = 2 のとき

|z1 + z2| ≦ |z1|+|z2|

が成り立ちます。n = k で

  |z1 + z2 + ...... + zk| ≦ |z1| + |z2| + ...... + |zk|

が成り立っていると仮定すると、n = k + 1 では

  |z1 + z2 + ...... + zk + zk + 1|
   ≦ |z1 + z2 + ...... + zk| + |zk + 1|
   ≦ |z1| + |z2| + ...... + |zk| + |zk + 1|

となってやはり成り立つので、全ての n について [c] が成立します(証明終わり)。

範囲を逸脱した知識を使うことの是非について

 たとえば入試などで数学Tの問題に対して数学Vの知識を使って解答して良いのかどうか ...... 正直言うと私にはよくわかりません。おそらく採点する人次第だと思います。大学で習う知識を使うのはダメだけど、高校数学の範囲なら「うーむ。まあ、いいだろう」と見逃してくれる気がしますけどね。あまり無責任なことも言うわけにもいきませんので断言はしませんけど。ただ、こういう疑問に対して大学側も「ダメ」あるいは「別にいいよ」と予めガイドラインを示しておけば、受験生も無用な心配をしなくて済むと思うんですけどね。
 ちなみにセンター試験などのマークシート方式では、いわば「正解さえ出せれば何でもあり」ということになりますので、引き出しをいくつか持っておくと思わぬ「近道」ができたりすることもあります。センターを受ける人は、ちょっと範囲を超えたところを(基本だけでいいので)勉強しておいても損はないと思います。
 
この記事へのコメント
 御指摘の通りです。
 さきほど記事を訂正しておきました。
 本当に助かりました。ありがとうございます。
Posted by BlogCat(管理者) at 2018年10月08日 16:38
PQ=… と R=… の右辺の第1項について。
@係数は1ではなく、2ではないでしょうか。
A√(c^2 + b^2)のところは、√(c^2 + d^2)ではないでしょうか。

PQR=… の右辺について。
(ad−bd)^2 ではなく、(ad−bc)^2 ではないでしょうか。
Posted by 蓮 at 2018年10月08日 11:54
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