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93年 壁の穴から

 本日は、Doug Sahm Dayです。
 というわけで、今回はこちらのアルバムを聴きました。
 入手したばかりの、(小声で)ブートCDです。
 一応、複数のアーティストが参加しているライヴ盤で、誰がメインとか謳っているアルバムではありませんが、Doug Sahmの収録が目玉のブートといって間違いないでしょう。

 Doug Sahmの場合、かなりライヴ音源のソースが残っていると推察しますが、あまりブートの情報は聞きません。
 まあ、BeatlesやStones、Dylanとかと同じような期待をしても無理だとは思います。
 でも、もう少し出てもいいのでは…とファンとしては思ってしまうのです。
 ブートが一定以上流通すると、撲滅のためにオフィシャルが作られるという例がありますから。

doug sahm29.JPG

Holl In The Wall
20th Anniversary Live

1. Texas Tornado (Doug Sahm) : Texas Mavericks featuring Doug Sahm
2. We Uset to Fuss, We Used to Fight (J. Rymes) : Two Hoots & A Holler
3. Think It Over (K. James, L. James) : LeRoi Brothers
4. That's Life (Kay, Gordon, ) : Shoulders
5. Help Me Get Over You (M. Warden) : Wagoneers
6. You're The One (J. A. Lane) : Bizarros
7. I Just Do (Mitchael Hall) : Lollygaggers
8. Visions of Johana (Bob Dylan) : Texas Mavericks featuring Doug Sahm
9. I Got a Hole In My Pirogue (J. Horton, T. Franks) : Two Hoots & A Holler
10. Rumble (M. Grant, Link Wray) : Gary Dixon with LeRoi Brothers
11. Sometimes (Gene Thomassonn) : Teaxs Mavericks featuring Doug Sahm
12. Pointed Toe Shoes (Carl Perkins) : Johnathan Foose with the Bizarros
13. Pleas Don't Think I'm Guilty (M. Warden) : Wagoneers
14. Baby, You Scare Me (Michael Hall) : Lollygaggers
15. Chain of Love (Steve Doerr) : LeRoi Brothers
16. Chain Gang Woman (S. Coppinger) : Bizarros
17. Eldorado Boogie (Ike Ritter) : Bizarros

 本盤は、93年6月、オースティンの"Hole in the Wall"(ライヴハウス?)でのライヴ録音だということです。
 収録曲は17曲、ボリュームたっぷりで、しかもお目当て以外のアーティストも総じて良い感じです。

 例えば、LeRoi Brothers
 私は、昔から大好きなバンドです。
 どこがいいかと言いますと、何といってもサウンドです。 
 「コンパクト」、このバンドのサウンドの魅力は、この言葉に集約されると思います。
 ホーンはもちろん、キーボードもなしのスモール・コンボですが、音は決してスカスカに感じることのない、小気味のいいグルーヴが大変気持ちいいサウンドのバンドです。
 収録曲は3曲です。

3. Think It Over (K. James, L. James) : LeRoi Brothers
10. Rumble (M. Grant, Link Wray) : Gary Dixon with LeRoi Brothers
15. Chain of Love (Steve Doerr) : LeRoi Brothers

 そして、本盤収録の時点でのバンド編成は次のとおりです。

LeRoi Brothers
Steve Doerr : vocals, guitar
Mike Buck : drums
Casper Rawls : guitar
Mike Korpi : bass

 LeRoi Brothersは、本盤録音の前年92年にアルバム"Crown Royale"をリリースしていて、その中の1曲で、Doug Sahmがコーラスで参加しています。
 また、ドラムスのMike Buckは、90年のTexas Tornadosの1stにも参加していました。
 Doug Sahmとの関係も、なかなかなに親密なバンドなのでした。

 収録曲のひとつ"Think It Over"は、ご存知、Jimmy Donelyの代表作のひとつで、作者名にあるK. Jamesは、彼の本名(?)James Kenneth Donelyからきている署名です。
 LeRoi Brosは流石の演奏で、スワンプ・ポップの名作を彼らなりに、しかし素晴らしい王道の解釈でやっています。
 こういうところが愛すべきところだと、改めて思います。

 Bizarrosというバンドが収録されています。

6. You're The One (J. A. Lane) : Bizarros
12. Pointed Toe Shoes (Carl Perkins) : Johnathan Foose with the Bizarros
16. Chain Gang Woman (S. Coppinger) : Bizarros
17. Eldorado Boogie (Ike Ritter) : Bizarros

 メンツは以下のとおりです。

Bizarros
Moon Bellamy : vocals, harmonica
Bill Bentry : drums
Ike Ritter : guitar, vocals
John X. Reed : guitar
Brooks Brannon : guitar
Speedy Sparks : bass on track6,12
Stan Coppinger : basson track16,17, vocals 

 ギターのJohn X. Reed、ベースのSpeedy Sparksの名前が眼を惹きます。
 この二人は、Doug Sahmとの関係が深い人たちです。
 このBizarrosへの参加がレギュラーなものなのか、それとも臨時なのかが気になります。
 もしレギュラーなら、そしてアルバムがあるのなら聴いてみたいと思いました。
 (Ike Ritterというカッコイイ名前のギターリストも、それだけの理由ですが気になります。)

 1曲だけチョイスするなら、"You're The One"でしょうか。
 ブルージーなスタイルで、LeRoi Bros.にも通じるコンパクトなサウンドが魅力的です。
 小粋なフレーズを紡ぐギターと、ブルージーなハープがいい感じの佳曲です。

 Two Hoots & A Hollerというバンドにも注目です。

2. We Uset to Fuss, We Used to Fight (J. Rymes) : Two Hoots & A Holler
9. I Got a Hole In My Pirogue (J. Horton, T. Franks) : Two Hoots & A Holler

 メンツは、トリオということはなかったと思うのですが、本盤でのクレジットは以下のとおりです。

Two Hoots & A Holler
Ricky Broussard : vocals, guitar
Vic Gerard : bass, vocals
Chris Staples : drums

 "We Uset to Fuss, We Used to Fight"が、ファストかつトワンギーなナンバーで、かっこいいです。
 このバンドは、Doug Sahmが亡くなった時、Dougを偲ぶオリジナル曲を作って録音しています。
 その収録アルバムのことは、以前に当ブログに書きました。
 興味がある方は、下記のリンクからご覧ください。
 
 その他、Wagoneersは、カントリー・ロック系のバンドで、おだやかなサウンド、(ハイ)ロンサム調のボーカルが耳に残る、これまた気になるバンドです。
 やはり、ほとんど捨てバンドなし、そう言いたいライヴ・アルバムになっています。

 さて、お待たせむしました。
 本命のバンドを紹介します。
 なぜか、この名前で出演しています。

Texas Mavericks featuring Doug Sahm
Doug Sahm : vocals, guitar
John X. Reed : guitar
Speedy Sparks : bass
Mike Buck : Drums
Michael Sweetman : saxophone

 覆面バンド、Texas Mavericksが、唯一のアルバムをリリースしたのは86年でした。
 それからこの時点まで、既におよそ7年が経過しています。
 一回きりの匿名バンドだったはずですが、これ以外でもこの名前を使った出演はあるのでしょうか?
 気になります。

 本盤の編成で、何といっても気になるのは、キーボード系が不参加なことです。
 要は、Augie Meyers若しくはその代役の不在です。
 86年のアルバムでは、El Rochaという変名で(おそらくAugie)がオルガンやシンセを弾いていました、
 ギターのJohn X. Reed(当時の変名、Johnny X)、ベースのSpeedy Sparks(当時の変名、Miller V. Washington)はオリジナル・メンバーです。
 そして、ドラムスがErnie Durawa(当時の変名、Frosty)からMike Buckへ交替しているほかは、サイド・ギターのAlvin Crow(当時の変名、Rockin' Leon)が不参加です。
 わざわざ、Doug Sahm(当時の変名、Samm Dogg)をフューチャリング扱いにしたのは、名前を特記したかったのかも知れません。

1. Texas Tornado (Doug Sahm) : Texas Mavericks featuring Doug Sahm
8. Visions of Johana (Bob Dylan) : Texas Mavericks featuring Doug Sahm
11. Sometimes (Gene Thomassonn) : Teaxs Mavericks featuring Doug Sahm

 DylanとGene Thomasは、Dougのアイドルですね。
 両曲とも、ライヴ録音が聴けて感激しました。

 そして、"Texas Tornado"です。
 この曲は、予備知識なしに聴いて驚きました。
 皆さんは、ここで知ってしまいますので、知りたくない人はこの続きを読むのはやめましょう。

 この曲は、表記こそ単純に"Texas Tornado"となっていますが、実はメドレー仕立てで、オフィシャルでは聴けないレアな音源になっているのです。
 Doug Sahmの語りから入るところも素晴らしく、わくわくします。
 そして、肝心の中身はこうです。

Texas Tornado (2コーラス・プラス)
〜 Is Anybody Going to San Antone (サビ)
〜 Texas Tornado (サビ) 
〜 Lodi (1コーラス・プラス) 
〜 Texas Tornado (サビ)
〜 Is Anybody Going to San Antone (サビ〜終了)

 いやあ、書いていて、また嬉しくなってきました。
 こういう貴重なお遊び(?)が、ちゃんと記録され、繰り返し聴けることが素晴らしいです。
 レアなクリーデンスの"Lodi"の間奏の前で、Dougが「Aa〜 Johnny Reed !」、「Ah〜 CCR !」と呼びかけて、ギター・ソロを促しているところが、ばっちり記録されています。

 「神様、感謝します。」
 こういう、その場にしか存在しない至福の瞬間、それが切り取られて記録されている、そのことに感謝せずにはいられません。

 今晩は、このメドレーを繰り返し聴いて、Doug Sahmを偲びながら眠りにつきたいと思います。



Susie Q 〜 Born On The Bayou
(1994 Switzland Live)
by Sir Douglas Quintet


リード・ギターは、John Jorgenson (多分)


Green River  〜 Susie Q 〜 Land of 1000 Dances
(1994 Switzland Live)
by Sir Douglas Quintet





関連記事はこちら

Doug Sahm Day
本日は ダグ・サーム・デイ(2012年11月18日)
テキサス遥か (2011年11月18日)
白夜の国から (2010年11月18日)

Rick Broussard
悲しい知らせに空が泣いた



 

テキサス遠征 面影を追って 

 届いたパッケージを裏返して驚きました。
 若いBen Vaughnと、在りし日のDoug Sahmのツーショット写真が眼に飛び込んできたのです。

 "Texas Road Trip"という、アルバム・タイトルからして、何となく予感はありました。
 だって、Ben Vaughnは、ニュージャージーだかフィラデルフィアだかの出身のはずです。

 この人のテキサス好きは分かっていましたが、だからこそ期待していいんじゃないの?
 そんな密かな私の思いは、見事に当たっていたのです。
 「テキサス遠征」
 なんて素敵なタイトルなんだ。

 本盤は、Ben VaughnからDoug Sahmファンへの嬉しい贈り物になっています。

ben vaughn1.jpg

Texas Road Trip
Ben Vaughn

1. Boomerang (Ben Vaughn, Bill Lloyed)
2. Miss Me When I'm Gone (Ben Vaughn)
3. I'll Stand Alone (Ben Vaughn)
4. Fire in the Hole (Ben Vaughn)
5. Texas Rain (Ben Vaughn)
6. Sleepless Nights (Ben Vaughn)
7. She Fell Out the Window (Ben Vaughn)
8. Heavy Machinery (Dan Marcus)
9. Seven Days Without Love (Ben Vaughn, Bill Lloyed)
10. Six By Six (Ben Vaughn)

 本盤は、今年リリースされた、Ben Vaughnの最新作です。
 アマゾンのクレジットによれば6月24日発売となっていますが、私はつい最近まで、その存在に気付きませんでした。
 
 ルーツ・ロッカー、Ben Vaughnは、日本ではあまり話題にならない人ではないかと思います。
 この人には、"She's About A Mover"のカバーがあり、それで私もかろうじて知っていた人です。

 この人は、おそらくはエンジニア系の人ではないかと思われ、スタジオ大好きのオタっぽい匂いがします。
 私は、アーティストとしてより、プロデューサーとして先に知っていたのだと思います。

 この人は、ほぼ引退して、バスの運転手をしていた偉大な歌手をくどき、アルバム1枚分の録音をさせた人です。
 その歌手とは、Arthur Alexander
 それは結果的に、Arthurの最後のスタジオ録音になりました。
 最高の伴奏者をそろえ、素晴らしい演奏と歌唱を記録した、その功績は特筆すべきだと思います。
 Arthur Alexander最後のオリジナル・アルバム、"Lonely Just Like Me"、未聴の方はすぐ聴きましょう。

 さて、そんなBen Vaughnさんですが、今回、またも嬉しいお膳立てのうえ、本盤を創ってくれたのです。
 本盤の録音に参加したのは、以下のメンバーです。

Ben Vaughn : guitar, harmonica, vocals
Augie Meyers : vox organ, accordion, piano
Alvin Crow : fiddle
John X Reed : guitar
Speedy Sparks : bass
Mike Buck : drums
Scott Esbeck : background vocals

Produced by Ben Vaughn
Recorded at Wire Recording, Austin TX.

 思わず、「わかってるねえ Benさん!!」
 と、快哉を叫びたい、そんな仕事ぶりです。
 プロデューサーの仕事の大半は、資金繰り(調整)とキャスティングです。
 Arthurとの仕事がそうであったように、条件(場所と人とモチベーション)をそろえたら、後は自然な化学反応を待つ、ということでしょう。

 リスト最後のScott Esbeckさんは未知の人ですが、それ以外のメンツは、Doug Sahm人脈の主にリズム・セクションの常連たちで、この人たちを集めてアルバムを創ろうなんて、発想の段階で大成功ですね。
 おそらく、集められた人たちは、特別な気持ちでスタジオに入ったに違いなく、こみ上げてくる想いがあったろうと推察します。

ben vaughn-001.JPG


 Doug Sahmの盟友、Augie Meyersは、ついこの間、最新作"Santa Fe"をリリースしました。
 そして11月は、例年、Doug Sahmのメモリアル・イベントが開催されており、今年もJoe King Carrascoと一緒に出演する予定です。
 
 Alvin Crowは、久々の登場という印象です。
 Takoma時代(81〜83年)のSir Douglas Quintetで、ギター(とフィドル)を担当していた人で、自身がリーダーのバンドではウエスタン・スイングをやっていました。
 86年の覆面バンド、Texas Mavericksにも参加し、Rockin' Leonの変名でギターを弾き、ボーカルを担当した曲では、ヒーカップ唱法を聞かせていました。
 今作では、フィドルでの参加ということで、特定の曲のみの参加だったのかも知れませんが、きっと懐かしい面々と旧交を温めたことでしょう。

 ギターのJohn X Reedの近況はどうだったのでしょう。 
 少なくとも、昨年13年までは、Lucky Tomblin Bandでツアーをしていたと思われます。
 Louie Ortegaではなく、John X Reedが呼ばれたのは、特に理由はないと思いたいです。
 John X Reedは、(伝説の)Freda & The Firedogsのギターリストだった人で、おそらくDoug Sahmとの出会いはその頃だと思います。
 その後、John X Reedは、Sir Douglas Quintetの77年のアルマディロ・ヘッドクォーターの同窓会ライヴに参加したほか、80年のDougのソロ作、"Hell Of A Spell"、そして86年のTexas Mavericksでもギターを弾きました。

 ベースのSpeedy Sparksは、(存在さえ知らなかった、又は知られていなかった)97年のソロ・アルバムが、12年にMP3で配信されました。
 CDでのリイシューは、どうやらないようなので、私はしびれを切らせて購入しました。
 が、今からでも全然OKなので、出来ればCD化してほしいです。
 (実は、97年リリースというのは情報だけで、当時本当にリリースされたのか、確たることは不明です。)
 Speedy SparksとDoug Sahmとの出会いの時期はよく分かりませんが、Sparksは、81年の"Border Wave"に参加して以降、86年の"Texas Mavericks"、90年以降の"Texas Tornadosの全てのアルバムに参加しています。
 Doug Sahmのベーシストと言えば、Jack Barberか、この人という印象が強いので、Jackの近況も気になります。
 
 ドラムスのMike Buckは、Doug Sahmとの関係では、George RainsやErnie Durawa、John Perez(故人)ほどの常連ではないです。
 名前をあげた、かつての仲間たちも、当然ながら年齢を重ねているわけで、壮健でいてほしいです。
 Mike Buckは、T-Birdsの初期メンバーであり、LeRoi Brothersのメンツでもありました。
 90年のTexas Tornadosの1stでは、DurawaやRainsとともにドラムを叩いています。
 (LeRoi Brosの92年作"Crown Royale"では、Doug Sahmが逆にゲスト参加して、"Angeline"という曲でハーモニーをつけています。)

 そしてプロデュースは、当然、Ben Vaughn自身が行い、オースティンのスタジオで録音されています。

 さて、収録曲ですが、Benが最も強くイメージするDoug Sahm、ということなのでしょう。
 全曲、BenのペンによるDoug Sahm風のオリジナル曲で構成されています。
 Benは、ブラック・ミュージックにも造詣が深い人ですが、傾向としては、Doug Sahmのカオスな音楽性のうち、Tex-Mexの側面を中心にフォーカスしたアルバムになりました。

 アルバムは、Ben Vaughnの辛めの味付けを利かせた歌詞をのせ、Dougお得意のミディアム・テンポ曲でスタートし、Augieのピーピー・オルガン、のどかなアコーディオン、一転して哀愁の三連曲、ろうろうと歌い上げるバラード等々、さながらDoug Sahmのパブリック・イメージのショーケースのような展開を見せます。
 また、表面上はTex-Mex中心のようですが、ホーンレス、フィドルあり、スチール・ギターなしという制約の中で、実はDoug Sahmの多彩な音楽性を再現しようと試みた、考えた構成になっているのかも知れません。
 
 まあ、1曲くらいは、Doug Sahmのカバーがあっても良かったかも、などと思ったりしますが、きっとこれで正解なのでしょう。
 とにかく、Doug Sahmゆかりの老雄たちに囲まれ、Doug Sahmのポジションで歌い演奏したBen Vaughnは、きっと本盤の制作を心から楽しんだに違いない、そう思うのでした。



Boomerang
by Ben Vaughn Quintet


Ben Vaughn - guitar, lead vocals
Gus Cordovox - accordian
Mike Vogelmann - bass
C.C. Crabtree - sax
Seth Baer - drums



関連記事はこちら

Alvin Crow
可愛い七つの子はフィドル弾き
ロッキン・レオンのふるさと

John X Reed
おいらのいい人 完熟トマト
回想のファイアドッグス
テキサス遥か
テキサスのご婦人がた

Arthur Alexander (Ben Vaughn)
本家ヘタウマ

Augie Meyers
オーガスティンの聖なる信仰
オーギーに首ったけ
曲に歴史あり、メキシコへ旅して
曲に歴史あり、セルマからヴェルマ物語
曲に歴史あり、夜の正座ものがたり
曲に歴史あり、ケパソ物語 
三連符の調べで夢見心地
オーギー・マイヤースさん、気をつけて

パン屋の1ダース

 今回は、かなり以前に入手しながらも、その時々の理由から後回しにして聴いてこなかったアルバムを、やっと聴きました。
 多分、多くの人には馴染みのないアルバムであり、バンドだと思います。

 本盤は、テキサスのBig Shot、Lucky Tomblinがキャリアの最初に組んだバンド、Lucky 13の唯一のアルバムです。
 
 唐突ですが、ここで中身を紹介する前に、今回の警句を一言。
 「1ダースに1個おまけされると、うれしい。」

lucky tomblin3.jpg

Lucky Club Music
Lucky 13

1. Longline Locomotive (Lucky Tomblin)  
2. Halloween Blues (Lucky Tomblin)   
3. Survivor's Song (Lucky Tomblin)   
4. Strawberry Boots (Lucky Tomblin)  
5. Court of Kali (Lucky Tomblin)    
6. Hymn for Her (Lucky Tomblin)    
7. Funky Butt (Rocky Morales)   
8. Skylight (Lucky Tomblin)      
9. Russian Romance (Lucky Tomblin)   
10. Rock 'N' Roll Soul         
11. Mom and Dad Waltz (Lefty Frizzell)  
Secret Track
12. [Untitled]             
13. [Untitled]            

 本盤は、01年にTexas World Recordsからリリースされました。
 バンドの構成メンバー、というか録音参加メンバーを紹介します。
 以下のとおりです。
 
Musician
Billy Stull : Acoustic, Classical & Electric Guitars
Rocky Rodriguez : Acoustic Guitar
Mike Zeal : Bass
Max Baca : Bajo Sexto
Al 'Footsie' Catan : Drums
Heart Sterns : Percussion
Sauce Gonzales : Keyboards & Hammond Organ
Al Gomez : Trumpet
Rocky Morales : Tenor Saxophone
Spot Barnett : Tenor & Soprano Saxophone
Louis Bustos : Baritone Saxophone
Joe Hernandez : Trombone
Lucky Tomblin : Lead Vocals
Becky Tomblin, Tiffany Carnes, Illuminada : Buckground Vocals
Producer
Lucky Tomblin, Bobby Arnold, Billy Stull

 バンド・リーダーは、オースティン、サンアントニオの顔役(?)、Lucky Tomblin(vo.)です。
 実は、当ブログで、Lucky Tomblinに注目するのは2回目で、以前の回では、Lucky Tomblin Band名義の3rdアルバム、"Red Hot From Blue Rock"を取り上げました。
 本盤との関係を時系列で表すと、次のようになります。

Lucky 13
01年 Lucky Club Music(本盤)

Lucky Tomblin Band 
03年 Lucky Tomblin Band
06年 In a Honky-Tonk Mood
07年 Red Hot From Blue Rock
10年 Honky Tonk Merry Go Round

 ちなみに、Lucky Tomblin Bandのメンツは、

Lucky Tomblin : lead vocals
John Reed : lead guitar、vocals
Redd Volkaert : lead guitar、vocals
Bobby Arnold : guitar、vocals
Sarah Brown : bass、vocals
Jon Hahn : drums
Earl Poole Ball : piano、vocals

 であり、本盤のメンツとは一新されていることが分かります。
 ただ、本盤では、Doug Sahmの一派といいますか、ファミリー的なメンツがズラリと並んでいて壮観です。
 チョイスしてまとめて再掲しますと

Sauce Gonzales : Keyboards & Hammond Organ
Al Gomez : Trumpet
Rocky Morales : Tenor Saxophone
Spot Barnett : Tenor & Soprano Saxophone
Louis Bustos : Baritone Saxophone

 これは、そっくり、後のWest Side Hornsのメンバーですね。
 このメンツから、Lucky Tomblin Bandがカントリー系だったのに対して、Lucky 13はブルース、ソウル系であることが予想されます。

lucky tomblin4.jpg

 バンマスのLucky Tomblinは、Doug SahmやAugie Meyersと古くからの友人だとのことで、それは、この濃いメンバーを見ると納得できます。
 キーボードのSauce Gonzalesは、Arturo 'Sauce' Gonzalesという名で知られる人で、Doug Sahmの晩年の録音、ストックホルム・ライヴでも、Dougのバックをしっかり支えた人です。

 そしてここに、Max Baca(Bajo Sexto)も加えたいです。
 現在、Los Texmaniacsの主要メンバーであるMax Bacaは、Augie Meyersとの親交が深いバホ・プレイヤーです。

 さて、Lucky Tomblinが、ドキュメンタリー映画「ホーム・オブ・ブルース」の制作指揮を務めたという話は、以前の記事で書きました。
 さらにこの人は、Augie Meyersが70年代に立ち上げた最初のレーベル、Texas Re-Cord Companyの共同設立者でもあったようで、その関係の長さ、親密さを感じます。

 Lucky Tomblinは、アルバムのリーフレットに、こんなことを記しています。
 「ラッキー13は、時には一緒につるんだり、あるいは離れたりしながらも、結局、35年あまりも共に音楽を創り続けてきた、サンアントニオ以来の古い友人たちの集まりです。」
 また、
 「ダグ・サームの素晴らしい着想とオーギー・メイヤースの友情に感謝します。」
 とも記しています。

 ところで、Lucky 13とは何でしょう?
 ラッキーセブンは分かりますが、わざわざ13を名乗るなんて、特別な意味でもあるんでしょうか。
 メンバーの人数でしょうか。
 そういえば、バックコーラスを除けば13人です。(偶然かな?)
 案外、そういう何でもないことが真相である可能性は高いです。

 英語圏には、"パン屋の1ダース"というイディオムがあるそうで、その正しい成り立ちはともかく、要は結果的に忌み数である13を浄化(?)してしまう、そんな力技のこじつけが面白いです。
 このあたり、日本人向きの話のような気がしますが、いかがでしょうか?
 
 さて、ここまで内容に一切触れてきませんでした。
 本盤は、Lucky Tomblin Bandと比較すると、バンド・コンセプトが分かりにくいかも知れません。
 でも、実は同じコインの裏と表なのだと思います。

 本盤では、ブルージーなソウル・リビュー風の曲だったり、コットンクラブのようなキャブ・キャロウェイ風の曲だったり、さらに、サザン・ロック調のカントリー風味の曲などが散見して、とりわけ、オルガンのグルーヴィーなトーンをバックに、ホーンが短くても魅力的なフレーズを挟み込み続ける、そんなスタイルの曲に好感を持ちました。
 聴きどころは、やはり、SauceのオルガンとRocky Moralesほかのホーン陣の演奏でしょう。

 チャートとは無縁の音楽だと思います。
 しかし、そのグルーヴには不思議な魅力があるのでした。 

 ところで、1曲だけ普通にカバーが入っています。
 Lefty Frizzellの"Mom and Dad Waltz"です。
 Lefty Frizzellは、ご存知のとおり、Marle Haggardのヒーローであり、彼の憧れは何人かいましたが、歌い方まで影響を受けたのはLeftyだけです。
 
 また、Willie NelsonもLeftyが大好きで、"To Lefty Fron Willie"というタイトルのアルバムを創っているほどです。
 そのアルバムには、くだんの"Mom and Dad Waltz"も入っていました。
 聴きこむほど味わいが深まる佳曲ですね。

 本盤でのこの曲は、その後のキャリアである、Lucky Tomblin Bandへと続く伏線であるかのようです。



Illegal Man
by Lucky Tomblin Band


Lucky Tomblin Bandの1st(03)収録曲
アコーディオンはゲストのAugie Meyers


Mom and Dad Waltz
by Lefty Frizzell





関連記事はこちら

Lucky Tomblin
おいらのいい人 完熟トマト


オーガスティンの聖なる信仰

 
 赤字 追記しました。

 11月になって、初めての更新です。
 ぐずぐずしているうちに、あっという間に日が経ってしまいました。

 実は、今月はあるテーマに沿った記事で繋げられないか、と考えていたのです。
 自らしばりをかけるなんて無謀な気もしますが、出来るなら、なるべく更新回数もあまり減らさずに…。

 可能かどうか分かりませんが、まず今回は、その第一回にふさわしいアルバムを聴くことが出来ました。
 Augie Meyersの最新作、"Santa Fe"が先日届いたのです。
 (テーマについては、日々の更新からご想像ください。)


augie meyers2.jpg

Santa Fe
Augie Meyers

1. Santa Fe (Augie Meyers)
2. Something's Wrong (Augie Meyers)
3. Crazy Heart (Augie Meyers)
4. Borrow Me Some Money (Augie Meyers)
5. Dreaming On (Augie Meyers)
6. Counting Drops of Rain (Gene Jacoby)
7. Came Into My Life (Augie Meyers)
8. God Gave You to Me (Ralph Stanley)
9. Never Thought I'd Ever Fall in Love Again (Augie Meyers)
10. Joints Really Jumping (Augie Meyers)
11. I Did, You Did (Augie Meyers)

 本作は、Augie Meyersにとって、多分17枚目のオリジナル・アルバムになります。
 (完全なソロ名義及び"〜Western Head Band"名義(?)に加え、一部のDoug Sahmとの共作名義のうち、実質ソロ作である"Still Growin"を含めた数え方によります。…異論は認めます。)
 
 本作は、昨年の"Loves Lost and Found"に続くもので、快調なリリースだと思います。
 ただ、今作の収録曲は、81年から07年の間に録音した音源を元に、数曲に手を加えた作品だという説明がなされています。
 といっても、決して既発曲からの編集盤ではなく、実質新作であるのは間違いありません。
 ただ、説明の趣旨を素直に読めば、81年〜07年録音の未発表曲集という言い方も出来ます。
 それが正しければ、前作のタイトル、Lost and Foundは、今作にこそふさわしい名称なのかも知れません。

 さて、収録曲を見ていきましょう。
 録音クレジットの詳細は明らかにされてはいず、個別にどの曲が何年にどこで録音したというデータはありません。
 録音に参加したミュージシャンと4箇所のスタジオ名が、まとめて明かされているだけです。
 そこには、数年前に故人となった人も含まれていて、Rocky Morales(sax)の名前が眼をひきます。
 その他のDoug Sahm人脈では、Spot Bernet(sax)、Charlie McBurney(tp)(McBurnieと記載)、Al Gomez(tp)、Jack Barber(b)、Clay Meyers(dr)らの名前が確認できます。
 
 録音時期には、かなり幅がありますが、通して聴いても違和感は全くありません。
 一部を除き、アクースティックな印象を受ける録音が多く感じます。
 また、全体的にリラックスした雰囲気も受けます。

 まず次の3曲に注目です。
 
2. Something's Wrong (Augie Meyers)
3. Crazy Heart (Augie Meyers)
10. Joints Really Jumping (Augie Meyers)
 
 この3曲は、収録曲のうち、例外的に過去のアルバムで録音している曲です。(と、当初思いました。)
 聴き比べましたが、全て別の録音だと思います。

 まず、"Something's Wrong"ですが、10年のアルバム、"Trippin Out On Triplets"の収録曲に、"Something Wrong"という曲があります。
 ピアノの左手の伴奏が印象的な、完全にニューオリンズ・スタイルの3連バラードです。
 ファッツ・ドミノのリッチな歌声を連想する、ゆったりゆるいグルーヴがたまりません。
 しかし、今回の本盤での"Something's Wrong"は、驚いたことに全く別の曲のようです。
 スチール・ギターのイントロから始まる、調子のいい陶酔系の8ビート・ナンバー(昔の4ビート・カントリー風)です。
 どちらも自作ですので、こんな似た題名を付けたのは忘れてしまっていたのでしょうか?
 追記(14.11.8)
  何という勘違い!!  というか(本人としては)笑えない間違い。
 10年の"Something Wrong"(混乱しそうですが、実は"Something's Wrong"という表記が正解)は、自作ではなく、Fats Dominoのカバーでした。
 10年作を取り上げた過去の記事(三連譜の調べで夢見心地)を読み返したら、ちゃんとカバーだと書いていました。
 しかも、「クレジットがないので調べた」と経過まで書いているのに、すっかり忘れていました。
 今回、Fatsを連想するなどと書いていて、笑えます。
 当該記事は、下記の「関連記事はこちら」のリンクから参照出来ます。


 その点、"Crazy Heart"は、06年のアルバム、"My Freeholies Ain't Free Anymore"の同名の収録曲と同じ曲です。
 ただし、アレンジが全く違い、別の録音であるのは間違いありません。
 06年版が、アコーディオンの伴奏をメインにした、全面陽気なパーティ・ソングなのに対して、今作での同曲は、同じ陽気なナンバーでも、アコギ(ドブロ?)とフィドル、とりわけフィドルが印象に残る流麗なアレンジに仕上げています。 

 そして、"Joints Really Jumping"は、コンピ・アルバム、"Deep In The Heart Of Texas"で、"Joints Is Jumping"という表記になっていた曲だと思います。
(今、手元にないので気弱な表現ですが…。)
 "Joints Really Jumping"は、本作収録曲の中では、少し毛色が違う、タイトルどおりのホーンを強調したジャンプ・ナンバーです。
 基本的に雰囲気は同じだったと思いますが、"Joints Is Jumping"の方が、よりタイトでテンポが早いジャンプ・ナンバーだったと思います。
 今作でのそれは、ホーンこそ入っていますが、スラップ音も聴こえ、ロカビリーに近いスタイルと言えるかも知れません。

augie meyers3.jpg

 
 その他の曲は、私の知る限り、今回が初出の曲だと思います。
 ですが、決して残り物だとか、一旦没になっていた曲などといった印象を受ける曲はありません。
 いずれも、Augie Meyersらしい、「可愛らしい」曲だと思いました。
 例えが不似合かも知れませんが、私がここで思う「可愛い」とは、大きな熊のぬいぐるみのような無邪気な(?)可愛さです。
 (説明が余計に意味不明ですか?) 

 そして、今作でのカバー曲は次の2曲です。

6. Counting Drops of Rain (Gene Jacoby)
8. God Gave You to Me (Ralph Stanley)

 いずれも、私には初見の曲です。

 "Counting Drops of Rain"は、おそらく、テキサスのカントリー・シンガー、Wade Jacobyのカバーだと思います。
 美しいメロディを持った曲で、原曲は、一時期のナッシュビルのシュガー・コーティングから逃れることが出来た、オールド・タイミー、かつ時を超越したような佳曲だと思います。
 Augieの解釈は、よい曲を素直にやっていて好感が持てます。
 
 一方の"God Gave You to Me"は、作者名から、スタンリー・ブラザーズの作品だろうと思います。
 (ラルフのソロの可能性もありますが…。)
 ソリッドな定型のブルーグラスではなく、ヒルビリー・デュオ風のワルツで、とてもいい曲です。
 ドック・ワトソンやルーヴィン・ブラザーズ好きの私には、この手の曲は大好物なのでした。
 フィドル、マンドリンらのアンサンブルが見事な出来で、おすすめの曲です。

 本盤を、オール・アメリカン・ソング集などと言うと、オーギーは「大げさ過ぎる」と照れるでしょう。
 アカデミックな側面に注目したがるのは、日本人の(悪い)性癖でしょうか。
 オーギーなら、 楽しく歌える、談笑(バカ騒ぎ?)しながら軽く踊れる、そんな音楽集なのだと言うかも知れません。

 フォーキーな曲から、マウンテン・バラッド、ヒルビリー・ブルース、黒っぽいジャンプ、果てはメランコリックなジャグ風まで、聴き返すごとに様々な側面を見せ、新たな魅力に気付かせてくれる、良質のアルバムだと思います。




Dinero
by Texas Tornados




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