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前門の爆風 後門の狼

 今回は、少し休憩です。
 久しぶりに、パイレートDVDを観ました。
 「カリブの海賊」ではありません。

 無駄にひねってみましたが、つまりはブートDVDです。
 2組のアーティストの公演を収録したもので、なかなかに興味深い内容だと思います。

 収録されているのは、Blastersが11曲、Los Lobosが9曲です。
 クレジットによれば、両組とも85年4月16日、ニューヨークのクラブ・リッツ(Ritz)での公演となっています。

 この2組は、80年代LAロカビリー・シーン(?)から飛び出した代表的なバンドですね。
 Los Lobosは、East L.A.チカーノ・シーンからと言うべきかも知れませんが…。


Los Lobos / Blasters

 
The Blasters Live at the Ritz
New York, NY 4.16.1985

1. Rock 'n' Roll Will Stand
2. Long Black Cadillac
3. Crazy Baby
4. No Other Girl
5. Border Radio
6. Colored Lights
7. Little Honey
8. One More Dance
9. I'm Shakin'
10. American Music
11. Marie Marie
Los Lobos Live attThe Ritz
New York, NY 4.16.1985

1. Will The Wolf Survive
2. Come On Let's Go
3. Our Last Night
4. Anselma
5. Let's Say Goodnight
6. I Got To Let You Know
7. Farmer John
8. Don't Worry Baby
9. La Bamba

 この2組は、当初兼任していたサックスのSteve Berlinを通して、兄弟グループとも言えました。
 当時、SteveがLos Lobosの正式メンバーとして専任することになった時、Blasters派だった私は、少なからずショックを受けたものでした。

 85年というのは、Blastersにとって曲がり角になった(と私が思っている)、"Hard Line"をリリースした年でした。

 "Hard Line"は、私は「微妙かも」と思ったアルバムで、本盤収録の公演時に既にリリース済だったのか不明ですが、"Rock 'n' Roll Will Stand"、"Little Honey"の2曲が演奏されています。

 今回、邦題「ハリウッド旋風」収録の作品や、さらにそれ以前のレパートリーなど、初期作品のクオリティがやはり際立っていると改めて感じました。

 一方、Los Lobosは、世界にその存在を知らしめた名作、"How Will the Wolf Survive?"のリリースが前年の84年ですから、(異論はあると思いますが)私はバンドの個性が最高に機能していた時期だと思っています。

 ひとつ前のミニ・アルバム収録曲を含め、本DVDのセットリストは最高だと思います。
 既にLobos版の"La Bamba"もやっています。
 ここでは、Los Lobosが内包している(と私が初期から感じていた)影のある部分は、まだそれほど顕著になっていないと思います。

 ここからは、今回、映像で知ることができたことについて、私の感想をごく簡単にまとめます。
 実は私は、Blasters、Los Lobosともに、まとまった映像を観たのは初めてです。

 まず、Blastersですが、Phill Alvinが指弾きだということを初めて知りました。
 親指でベースを鳴らして、残りの指で下の弦を弾き下ろすパターン、そして、親指とその他の指で内側へつまむようにはじく2つのパターンが目につきました。
 よりファストな曲では、親指と人差し指でピックを握るような形をつくり、他の指は開いたままストロークしますが、サム・ピックをしているのか否かは判然としません。



 Phillさんは、残念ながら、フロントマンとして華があったとは言い難い気がします。
 広い額、後退気味の髪、笑うと歯を剥き出したように見えるルックスなどが印象的です。

 一方、Dave Alvinは、特別かっこいいソロの出番があるわけでもなく、兄弟二人とも、後のミュージシャンズ・ミュージシャン的な匂いを、既に少し感じます。



 Gene Taylorは、この頃から、後に日本で見た体型のまま、イメージそのままでした。

 曲としては、私は"No Other Girl"が特に好きで、演奏シーンが見られてうれしいです。
 あとは、"So Long Baby Goodbye"とJimmie Rodgersのグッド・ロッキンなカバー、"Never No More Blues"が入っていればなお嬉しかったのですが…。

 Los Lobosは、全て好きな曲ばかりです。

 映像を観て驚いたのは、David Hidalgoが、1曲の中でアコーディオンを弾きながら歌い、途中からアコを下して、おもむろにバーを取り出し、スチール・ギターを弾いたシーンです。
 Phill Alvinの指弾きもそうですが、こういった小さな発見は、映像ならではの楽しみですね。



 Cesar Rosasは、基本はストラト(サウスポー)ですが、曲によってバホ・セストに持ち替えるシーンがばっちり収録されていて、これは不思議でもなんでもないですが、やはり映像で確認できたのは感激でした。

 "Will The Wolf Survive"で始まり、中盤に"Anselma"を効果的に挟んで、"Don't Worry Baby"、"La Bamba"の流れで締める美しいセトリだと思います。

 "Farmer John"は、"Anselma"の裏面だった曲で、チカーノに人気の曲です。
 これで「サンアントニオをあとにして」が入っていればと思うのは贅沢でしょうか。



 岐路に立っていた時期のBlasters、本格的に飛躍をしようとしていた時期のLos Lobos、それぞれを捉えた貴重なソフトだと思います。



Never No More Blues by The Blasters
 


Never No Mo' Blues by Jimmie Rodgers




 

ロックパイルが北欧に残した芽

 今回も、スカンジナビア半島ネタです。
 北欧時代のBilly Bremnerについて、色んな角度からクグッていて、偶然見つけました。

 スウェーデンのバンドで、本盤は07年にリリースされた、おそらくは最近作ではないかと思います。
 このバンドのことは、ほとんど何も知りません。

 ビニール盤時代の最期くらいにデビューしたバンドではないかと思われ、本盤を含め、これまで5枚ほどCDがあるのではないかと思います。
 ただ、例によって過去作の入手はなかなか困難なようなので、見つけたらゲットしたいところです。


We're Back
Simon Crashly and the Roadmasters

1. She's A Real Rock & Roller (Asberg, Nordahl, Nilsson, Larsson)
2. You Can't Catch Me (Asberg, Nordahl, Nilsson, Larsson)
3. Tribute To Rockpile (Asberg, Nordahl, Nilsson, Larsson)
4. Big Boys Boogie (Asberg, Nordahl, Nilsson, Larsson)
5. One Way Romance (Bremner)
6. Lonesome Traveler (Guthrie)
7. It's Only Rock & Roll (Asberg, Nordahl, Nilsson, Larsson)
8. There'll Be No Teardrops Tonight (Hank Williams)
9. Good Rockin' Daddy (Maher)
10. Wet Wet Wet (Asberg, Nordahl, Nilsson, Larsson)
11. One Way Track (Svennbeck, Asberg, Nordahl, Nilsson, Larsson)
12. Blue Paradise (Asberg, Nordahl, Nilsson, Larsson)
13. Boogie Woogie Baby (Asberg, Nordahl, Nilsson, Larsson)
14. Brand New Man (Asberg, Nordahl, Nilsson, Larsson)
15. We're Back (Asberg, Nordahl, Nilsson, Larsson)

 本盤は、Billy Bremnerの作品("One Way Romance"、自演盤も有名人のカバーもないのでは?)1曲と、メンバー共作名義による"Tribute To Rockpile"という、嬉しくなるようなタイトルの曲を含む、とても興味深い内容になっています。

 バンド構成は以下の通りで、基本は、ギター、コントラバス、ピアノ、ドラムからなる4ピース・バンドです。
 (過去作のジャケでは、もう1本ギターが加わって、5人編成で写っているものがあります。)

Sten Asberg : guitar, vocals
Christer Nordahl : double bass
Anders Larsson : piano, accordion
Peter Nilsson : drums, backup vocals
guest
Janas Olpers : lap steel

 ギター、ボーカルのSten Asbergが、バンド名にある、Simon Crashlyのことです。
 なぜそう名乗っているかなど、理由は全く分かりません。
 アメリカ風のバンド名にしたかったのかもしれませんが、だとすれば、Crashlyという姓はあまり一般的とは言えない気がしますが…。



 曲目リストのとおり、オリジナル曲は、基本的にメンバー4人の共作名義になっています。

 バンドのスタイルは、編成的にロカビリー系を連想しそうですが、本盤に限って言えば、見事なくらいシンプルな8ビートのロックンロール・バンドそのものです。
 (デビュー時等、過去作ではロカビリー・スタイルでやっているようです。)

 Billy Bremnerの提供曲、ロックパイル讃歌曲に限らず、全体的にたんたんとロックンロールするナンバーがほとんどで、このての音楽が好きな人なら、思わず頬が緩むこと間違いないでしょう。

 例えば、多くの曲でのStenのバッキングは、小指を使ったChuck Berryスタイル・オンリーといってもいいくらいです。
 (思わず、Rockpile、Dave Edmunds、Billy Bremnerらを連想せずにはいられません。)

 一方、気になるベースは、つべの過去動画を見ると盛んにスラップしていますが、ピックアップなしなのか、本盤では(カチカチ音は)埋もれて聴こえません。
 また、多くの曲ではピアノが使われていますが、アコーディオンに持ち替えた曲(多重録音もあり)があり、同傾向の曲が続くなか、アルバムの良いアクセントになっています。
 とはいえ、そのバックでは、昔ながらの不変のギターブギ・リズムが刻まれているのでした。


Chriter Nordahl


5人編成時代


 ところで、気になったのは、オリジナル曲に有名曲と同じタイトルをつける傾向があることで、本盤では"You Can't Catch Me"、"It's Only Rock & Rol"などが目をひきますが、クレジットどおり間違いなく彼らのオリジナルです。
 過去作では、"Honky Tonk Woman"なんていうオリジナル曲もあるようです。

 Billy Bremner作品以外のカバーでは、Hank Williamsの"There'll Be No Teardrops Tonight"(邦題「今夜は涙なんか見せないぞ」)が注目です。
 アコーディオンを効果的に使ったアレンジで、原曲が持つロンサムなブルー・ラヴ・ソングの雰囲気を、見事にパーティ・ソングに変貌させています。

 とにかく、理屈抜きに楽しめるアルバムだと思います。


Tribute To Rockpile
by Simon Crashly & the Roadmasters




Jill
by Simon Crashly & the Roadmasters


初期ロカビリー時代 〜 この頃はギター2本でピアノレスのようですね。



スカンジナビアからロッキン

 うーむ
 北欧って、何かミュージシャンを惹きつける特別な魅力があるんでしょうか?
 この人もまた、スウェーデンを活動の拠点にしている(住んでいる?)人です。

 これって、いつ頃からでしたっけ?
 少なくとも、98年の2ndソロ、"A Good Week's Work"では、既にスウェーデンと深く関わっていたはず…。
 などとタイプしてから気付いたのですが、この人が制作したスウェーデンのRockpileこと、The Refreshmentsの1st、"Both Rock 'n' Roll"がリリースされたのは95年でした。
 そこから起算すると、あと数年で、北欧との蜜月は20年に及ぶわけです。


Billy Bremner's Rock Files
Billy Bremner

1. The Alliguitar And The Rockadile (Billy Bremner, Micke Finell)
2. I Hit The Nail Right On The Head (Billy Bremner, Micke Finell)
3. My Life Has Stopped On Red (Billy Bremner, Micke Finell)
4. Bullies (Billy Bremner, Micke Finell)
5. Emergency (Billy Bremner, Micke Finell, M. Ahlsberg)
6. At Last The Summer's Here (Billy Bremner, Micke Finell)
7. The Cocktail Of The Year (Billy Bremner, Micke Finell)
8. Take It Day By Day (Billy Bremner, Micke Finell)
9. Lie Detector (Billy Bremner, Micke Finell)
10. Can't Turn Back (Billy Bremner, Micke Finell)
11. Hell's Doors (Billy Bremner, Micke Finell)
12. Instead Of Believing You (Billy Bremner, Micke Finell)
13. Every Day I Love You More And More (Billy Bremner, Micke Finell)
14. She's No Queen (Billy Bremner, Micke Finell)
15. Lena (Billy Bremner, Micke Finell)

 本盤は、スウェーデンの会社から、今年6月末にリリースされました。
 例によって、販路はEU圏内の一部ショップ中心で、大手では未だあまり流通していないようです。

 本盤の裏ジャケには、"Ball & Chain"と"Rock Around The Clock"という二つのロゴがプリントされています。
 どうやら、"Rock Around The Clock"が元々の製作レーベルではないかと思われ、だとすれば、現状の販路の狭小さについては、"Ball & Chain"にもう少し頑張ってほしいところです。

 一方の"Rock Around The Clock"は、Refreshmentsのサックス・プレイヤー、MIcke FInellが深く関わっている(オーナー?、チーフ・プロデューサー?の)会社ではないかと思います。

 いつもながら、本題に入る前に脇道にそれますが、ここでBillyのキャリアについて、確認の意味でざっくりと振り返りたいと思います。
 以下は、私の勝手な整理ですので、「これを入れるのはおかしい、あれが入ってない」などの異論は認めます。

黄金期 (Rockpile時代)
78年 Trax On Wax 4 : Dave Edmunds
78年 Jesus of Cool : Nick Lowe
78年 Juppanese : Mickey Jupp (片面のみRockpile勢が伴奏)
79年 Labour of Lust : Nick Lowe
79年 Repeat When Necessary : Dave Edmunds
80年 Seconds of Pleasure : Rockpile
80年 Musical Shapes : Carlene Carter
81年 Twangin' : Dave Edmunds
(モントルー・ライヴは略)

放浪期 (必殺裏方人時代)
82年 Give Me Your Heart Tonight : Shakin' Stevens (リード・ギターでゲスト参加)
84年 Learning to Crawl : The Pretenders ("Back on the Chain Gang"の流麗なソロは◎)
84年 Bash! : Billy Bremner (1stソロ)
90年 Packed! : The Pretenders (メジャー・バンドに正式加入、この盤のみ)

北欧期 (スカンジナビア雄飛時代)
95年 Both Rock 'n' Roll : The Refreshments (制作及びゲスト参加)
97年 Trouble Boys : The Refreshments (制作及びバンドに正式加入)
97年 Hey Conductor : Inger Nordstrom (制作及びゲスト参加)
98年 A Good Week's Work : Billy Bremner (2ndソロ、Refreshmentsのメンバーが参加)
99年 Are You Ready : The Refreshments (この盤でバンド脱退)
00年 Musical Fun For Everyone : The Refreshments (制作及びゲスト参加)
00年 A Pile of Rock Live : Dave Edmunds (Refreshmentsが伴奏、録音は97年)

近年 (スカンジナビア半隠棲時代〜もしかして覚醒?時代)
06年 No Ifs, Buts, Maybes : Billy Bremner (3rdソロ)
11年 Bad Trouble : Trouble Boys (Sean Tylaとの双頭バンド結成〜まさかこれ1枚で自然消滅?)
12年 Billy Bremner's Rock Files : Billy Bremner (本盤4thソロ、Refreshmentsのメンバーが参加)


Hey Conductor : Inger Nordstrom (97)
(Billy制作のスウェーデンの女性カントリー・シンガー
ロッキン・カントリー盤、タイトル曲はBillyの提供曲)


 こうやって見ると、仕事してますねえ。
 もし、昨年からの流れが活動の再活発化につながるなら嬉しいです。
 (来日予定は中止になりましたが…。)
 というわけで、本盤へとたどりつくわけです。

 さて、本盤の参加メンバーは以下のとおりです。

Billy Bremner : guitars, banjo, bass, vocals
Micke Finell : saxophone
Pelle Alsing : drums
Mats Forsberg : drums
Rolf Jansson : drums
Matthias Bruhn : piano
Johan Blohn : piano
Bengt Bygren : piano
Sean Tyla : artwork & design

 このうち、Micke Finell(sax)、Mats Forsberg(dr)、Johan Blohn(p)の三人がRefreshmentsのメンバーです。
 Refreshmentsのギターとベース以外が参加していることになり、ここまでくると、バンドの核であるベースのJoakim Arnellの不参加に、何か意味があるのかと気になってしまいます。
 何しろベーシストを呼ばず、Billy自身がベースを兼任しているのですから…。

 この布陣は、まるで老師と師を慕う弟子たちのようで、全体的なサウンドは、Rockpile〜Refreshmentsの流れそのままの、痛快なロックンロール・アルバムに仕上がっています。
 
 このあたりは、Nick Loweが、数年前から完全に日向ぼっこ路線というか、(好意的に言えば)枯れた魅力を醸し出しているのに対して、Billyさんは変わらぬロケンローラーぶりを見せていて頼もしいです。
 (ただ、リーフレットの近影を見ると、その外見はNick同様のシルバー化が顕著で、哀愁さえ感じます。)

 全曲理屈抜きで楽しめるアルバムですが、収録曲では、あえて言えば以下の曲が印象に残りました。

1. The Alliguitar And The Rockadile
4. Bullies
5. Emergency
7. The Cocktail Of The Year
8. Take It Day By Day
9. Lie Detector
14. She's No Queen
15. Lena

 うーん、3〜4曲だけピックアップしようとしたんですが、あれもいい、これも気になるで、結局後半をはしょる感じのチョイスになりました。
 以下は私の感想ですが、ごく普通の音楽ファンには、「同じような曲ばっかりじゃん」と言われかねない美しいマンネリズムに共感できる方のみどうぞ…。

 まず、何と言ってもRockpile直系の曲調、サウンドがうれしい、トラック1の"The Alliguitar And The Rockadile"とトラック14の"She's No Queen"が特に印象に残りました。
 あっさりした曲の入り方、たんたんとロックンロールする展開など、Rockpile的様式美が美しい曲たちです。
 "She's No Queen"は、ギター、ピアノ、ボーカルのコール&レスポンス、多重録音のコーラスも良いです。
 もうこの2曲でオールOKという感じですが、その他の曲にも触れましょう。

 "Bullies"は、少しアメリカン・ロック調の作品で、どこか疾走系フォーク・ロックの風合いもあります。
 魅力的な12弦ギター風のリフレインに、Billyがバンジョーを多重録音しています。

 トラック5のEmergency"とトラック9の"Lie Detector"は、いかにも「らしい」トワンギンなギター・プレイが聴けます。
 基本は、思い切ってラウドに聴きたいですが、小粋なオブリの機微を聞き込むため、1度はヘッドフォンでも聴きたいところです。
 "Emergency"は、サックス・リフがメインのロックンロールで、こういうの好きです。

 "The Cocktail Of The Year"は、一転してピアノが主役のブギで、これまた好みです。
 これは、誰が弾いているのでしょう。

 本盤では、かなりアコギを多用していて、"Take It Day By Day"は、その代表例として紹介します。
 エヴァリー兄弟風のボーカル曲で、アルバムの一つのアクセントになっています。

 ラストの"Lena"は、唯一のインスト・ナンバーです。
 トワンギンなプレイ満載ですが、あまりスリルはないです。

 何となく、結論めいたことを、思わずフライングしてしまいました。
 私は、この音楽が大好きです。
 繰り返し聴いても疲れない、リラックス効果の高いアルバムだと思います。

 でも一方で、私の頭の隅には、ある冷めた考えが支配しているのでした。
 ここには、ある種の様式美があり、古くからの聴き手が期待していることに、期待しているタイミングで応えてくれます。
 これは立派な快感のフォーマットでしょう。
 しかし、予想を裏切るような、不安を抱かせるようなスリルの提示はありません。
 もしも、スリルの昇華からのカタルシスが欲しいなら、別の音楽がいいかも知れません。



 例えば、同じBillyでも、昨年リリースされた新バンド、Trouble Boys(こちらもMicke Finell参加)の"Bad Trouble"なら、Sean TylaとBilly Bremnerの個性の違いから、綱渡りのような緊張感を感じることが出来るかも知れません。
 (もっとも、個性がぶつからずに、すれ違っているような印象も受けますが、そこを面白く思う人もいると思います。)

 音楽の楽しみ方、個々の好みは千差万別です。
 また、好みが一つでない場合がほとんどでしょう。
 その日の体調、その場の雰囲気、気持ちに合った音楽を聴くのがベストです。

 とはいえ、全てをひっくるめた上で、本盤の音楽は、ひとたび鳴りはじめたら、私を幸福な気分へと導いてくれることも確かなのでした。

 (蛇足)
 "The Alliguitar And The Rockadile"ですが、アリゲーターのつづりが違うことに気付きました。
 (Alliguitar → 正 Alligator)単語の後半がギターのつづりになっています。
 Alliguitarは、All I Guitarと分解できますが、意味不明ですね。
 Rockadileも辞書にはない単語です。
 そこで少し考えたのですが、これって、意味なんかなくて、こういうことじゃないでしょうか?
 アリゲーターとクロコダイル(Alligator And Crocodile)のしゃれ…。


Alliguitar, Rockadile by Trouble Boys (2010年12月投稿動画)


 こんな動画を見つけました。
 オフィシャル動画ではないかと思われ、投稿時期から推察すると、元々はTrouble Boysの1st用に用意された曲だったのではないでしょうか。
 今回、Billyの4thソロに収録されたことが、Trouble Boysの前途と無関係ならよいのですが…。
 (この動画によれば、Rockadileは、Rock or Dieを意味するみたいですね。)


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チカーノ・ブルースマン

 追記あり : 斜体赤字

 今回は、この人を聴きました。
 Randy Garibayというシンガーの97年のアルバム、"Barbacoa Blues"です。
 この人は、以前に取り上げた、Sonny Aceのアルバムに、バックコーラスで参加していた人です。

 ランディ・ガーリベイは、Doug Sahmのファン向けに紹介するなら、Dougの88年の名盤"Juke Box Music"で、名曲"What's Your Name"をDougとデュエットしていた人です。
 長めのソロ・パートを交互に歌いあった、二人の名唱は素晴らしかったですね。

 

 
Barbacoa Blues
Randy Garibay
 

1. Chicano Blues Man (Randy Garibay)
2. Barbacoa Blues (Randy Garibay)
3. Too Close to the Border (Randy Garibay)
4. What Did You Think (Randy Garibay)
5. I Can't Stop Loving You Baby (James E. Lewis)
6. Viuda Negra (Black Widow Woman) (Randy Garibay)
7. Two Steps from the Blues (John Brown, Don Robey)
8. El Chupacabra (Randy Garibay)
9. Tell Me Why (Randy Garibay)
10. Curandera (Randy Garibay)

 本盤の裏ジャケには、5人の人物によるRandy Garibayの紹介、推薦文が寄せられています。
 その中から、3人の言葉の大意をご紹介します。

 「ランディは、チカーノのジャッキー・ウイルソンだ。」
 Clifford Antone (アントンズ・オーナー)

 「ランディは、私の師匠(my mentor)です。私にとって、彼のステージ上でのとても自然なパフォーマンスを見ることは大きな楽しみです。」
 Sunny Ozuna

 「私は、まるで50年代から時を超えてきたような、ランディの素晴らしい声に魅了されています。
 彼は、至高のチカーノ・ブルースマンです。
 ランディは、Little Willie John、Joe Hinton、Junior Parker、Bobby Blue Blandらの伝統を汲んでブルースを歌い続ける稀有な存在です。」
 Doug Sahm

 うーむ、色々とつっこみどころがあると思いませんか。
 本題に入る前に横道に逸れそうですが、私が気になったのは2点です。

 サニー・オズナの「私の師匠」発言。
 そして、ダグ・サームが、ジュニア・パーカーやボビー・ブランドと同じ並びで、ジョー・ヒントンの名前をあげていることです。

 まず、Sunnyの発言ですが、Sunny Ozunaは世に知られた時期が早く、一つ前の世代のスターのようにも思えます。
 しかし、SunnyとRandy、そしてDougの生年を比べると、思いのほか年齢が近いのでした。
 同世代といってもいいでしょう。 

 Randy Garibay : 39年生れ02年没 享年63歳
 Doug Sahm : 41年生れ99年没 享年58歳
 Sunny Ozuna : 43年生れ 今年69歳

 3人の中では、Randyが年長で、Sunnyが末っ子だったのでした。

 次にDougの発言です。
 Doug Sahmが、Junior ParkerやBobby Blandをアイドルとしていた事は、ファンの間では周知のことです。
 その他、ブルース系では、Guitar Slim、T-Bone Walkerなどが思いつきます。

 しかし、Joe Hintonをリスベクトしていたとは初めて知りました。
 ウイリー・ネルソンの"Funny How Time Slips Away"(時の流れは早いもの)のカバーで有名な人で、ディープな面もありますが、どちらかと言えばバラーディアー・タイプのシンガーだという認識でした。
 サザン・ソウル好きが多い日本のソウル・ファンの間では、あまり人気のない人ではないでしょうか。
 まあ、Duke(Backbeat)時代はバックが素晴らしく、滑らかな歌い方は、Junior Parkerのテイストに通じるところがあるかも知れません。
 などとタイプしているうちに、急にじっくり聴き返したくなってきました。
 (簡単に影響を受けてしまうのでした。)

 さて、本盤の参加メンバーは以下の通りです。

Randy Garibay : guitar、vocals
Jim Waller : keyboad、saxophone
Jack Barber : bass
Al Gomez : trumpet
Bobby Flores : steel guitar

 録音は、サン・アントニオのスタジオで行われたようです。
 ドラムスがノー・クレジットですが、Duke Anthonyという人ではないかと思います。
 Doug Sahm人脈のJack barber、Al Gomezの参加が気になります。

 Doug Sahmとの関係は、かなり古くまで遡るようです。
 Dougがパーソナルなバンドを持つ前、Harlem Records時代の頃が出会いのようです。

 Harlem時代の頃のDougは、色々と違う名義でレコードを出していました。
 その中の一つに、Doug Sahm & the Pharaohsがありました。
 私は、こういったものは、そのレコーディングの為だけに集められ、即席で名付けられたバンドかと思っていました。
 しかし、Pharaohsは実在していて、正確にはバンドではなく、5人組のボーカル・グループだったようで、そのリード・シンガーがRandy Garibayだったのでした。


Randy Garibay & the Pharaohs


 具体的には、Doug Sahm & Phraohs名義でリリースされた、"Crazy Daisy"/"If You Ever Need Me"(Warrior507)が、DougとRandyの最初の共演盤らしいです。

 18歳の時、ギターを手に入れたRandyは、Sonny Ace & TwistersやCharlie and the Jives(どちらも地元のローカル・バンド)と演奏するため、純粋なDoo Wopグループだったファラオスを脱退します。
 こうして、彼のチカーノ・ブルースマンとしてのキャリアが始まったのでした。 

 Randy Garibayは、これまで私が聴いてきた、Tejano Music系のチカーノ・シンガーとは一味違います。
 何しろ、一流の聴き手から、チカーノ・ブルースマンと呼ばれている人なのです。
 ルーツに根差したラテン系をやることもあるようですが、比較的控えめのようです。

 Doug Sahmとのデュエット曲では気付かなかったことですが、本盤を聴いて、あるシンガーを連想しました。
 それは、ニューオリンズのサザン・ソウル・シンガー、Johnny Adamsです。
 Randy Garibayは、伸びと艶のある声が大変魅力的なシンガーです。

 Johnny Adamsを連想したのは、声質が似ていることが第一ですが、優れた技巧を持つボーカリストだと感じたからでした。

 アルバムは、アップテンポのファンキー・ブルース、"Chicano Blues Man"でスタートします。
 思わず"Chicago Blues Man"と読みそうです。
 ホーン陣のせわしないリフをバックに、渋い美声で「アイム・ア・ブルースマン、チカーノ・ブルースマン」と歌っています。
 間奏では、ストラトでの素早いギター・ソロを聴くことが出来ます。
 アタマから「ガツン」とアイデンティティを披瀝した、Randyからの名刺がわりの一発という感じです。

 続く"Barbacoa Blues"は、マイナー調のウォーキン・ブルースで、ブランドに通じるようなブルージーR&B風のボーカルが聴けます。
 ホーン・パートをハープに変えれば、シカゴ・ブルース調にも聴こえそうですが、ギターがやはりテキサスっぽいです。
 ずっと英語詞なのですが、最後の最後になってスペイン語で振り絞るように歌う箇所が印象的です。

 "Too Close to the Border"は、よりストレートにテキサスを感じさせるリズム&ブルースです。
 ある意味、Fabulous Thunderbirdsがやっていてもおかしくないような感じの曲で、ブルース・ロック調と言えるかも知れません。
 そんな連想をしていると、Randyの声がKim Wilsonみたいに聴こえてきました。 
 (追記)
 この曲は、Joe Jamaが04年(Randyの没後)にリリースしたアルバム、"Leigh Street Blues"でやっていました。
 私は、当ブログで当該のJamaのアルバムをとりあげ、感想を書いていますが、そこでは「Bobby Blandに似合いそうな曲」と書いています。 (下段にリンク追加しました)


  "What Did You Think"は、スチール・ギターがフューチャーされる静かなバラードです。
 出だしのメロディ、アレンジが、Ray Charles版の"Ellie My Love"(愛しのエリー)を連想させます。
 ここでのRandyは、Johnny Adamsを彷彿とさせます。
 多分、スチールの参加はこの曲だけだと思います。

 "I Can't Stop Loving You Baby"は、アップテンポのごきげんなナンバーです。
 ころころと転がるピアノの前奏から、おしゃれなでジャジーなギター・ソロ、メイン・テーマのホーン・リフと徐々に分厚くなっていき、ボーカルが満を持して入ってきます。
 古いビッグ・バンドがやりそうな楽しさ満点のブギウギ曲で、間奏では小粋なミュート・ペットをバックに、RandyがT-Boneの手癖のようなソロを繰り返し弾いています。 
 私は、本盤では特に好きな曲のひとつです。
 ぜひ、オリジナルが知りたいです。

 "Viuda Negra (Black Widow Woman)"は、スペイン語で歌い始めるストレート・ブルースです。
 途中から英語詞になり、「私は囚人、喪服の未亡人」と歌っています。
 ギターのオブリ、ソロともにたっぷり聴けます。

 "Two Steps from the Blues"は、もちろんボビー・ブランドのDuke時代の代表曲のひとつです。
 これを聴くと、改めてブランドが後進に与えた影響力の大きさを感じます。
 Randyが、滑らかな歌いくちで、ブランド流ブルース・バラードを歌います。 
 サビ近くでの高音部のうがい唱法はなく、Johnny Adamsばりに伸びのある声を張り上げています。

 "El Chupacabra"は、ブルースではなく、はっきりとラテン・ルーツに根差した曲です。
 コンガやボンゴ風のリズムを、おそらくはシンセが出しています。
 楽しいメキシカン・ペットのリフにのせて、チュパカブラのことが歌われているようです。
 チュパカブラは、TVのSFドラマ「Xファイル」でも1話が作られた南米の未確認生物(UMA)です。
 歌詞の内容が不明なので、陽気な曲調とチュパカブラがどう結び付くのか謎です。

 "Tell Me Why"は、最高の曲、最高のパフォーマンスだと思います。
 完全に50年代のDoo Wopスタイルの曲で、思わずドリーミーとかマーベラスとか言いたくなりました。
 三連の鍵盤をバックに歌う、スタイリッシュかつジェントルなボーカルがたまりません。
 ノー・クレジットですが、素晴らしい男声コーラスが入っています。
 間奏でのリバーブの効いたギター・ソロが曲の雰囲気にぴったりです。
 "I Can't Stop Loving You Baby"とともに、本盤の双璧だと思います。

 ラストの"Curandera"は、バイリンガルで歌うブルースです。
 アフロ・アメリカンなホーン・リフが盛り上げるなか、ラテン調のリズムを隠し味に、ブルージーなギター・ソロが立ち上がってくる間奏は、ラテン・ロックみたいにも聴こえます。

 本盤は、要所にラテン風味を加味してはいますが、あくまでブルースを主体としたアルバムだと思います。
 そして、Pharaohs時代はこんな風だったのかと思わせてくれる、レトロな三連Doo Wopバラードが入ったことで、とても彩り豊かになったと感じました。

 本盤は、97年にAngelita Miaからリリースされました。
 このアルバム以前の活動は、あまり明らかになっていません。
 LP時代にアルバムを作った人なのか知りたいです。

 

 

ブエナのころ

 いつものように、obinさんのブログを訪問したところ、Johnny Perezが亡くなったとのことで、追悼の文を書かれていました。
 Johnny Perezは、Sir Douglas Quintetの初代ドラマーで、Doug Sahmとは60〜80年代あたりまで、Dougの様々なキャリアに密接に関わった人でした。

 今回は、Johnny Perezゆかりのアーティストである、この人のアルバムをチョイスすることにしました。 


Danceteria Deluxe
Joe King Carrasco & the Crowns

1. Buena (Joe King Carrasco, Johnny Perez)
2. Let's Get Pretty (Joe King Carrasco, Johnny Perez)
3. Betty's World (Joe King Carrasco, Johnny Perez)
4. Party Doll (Buddy Knox, Brown)
5. Tuff Enuff (Joe King Carrasco, Johnny Perez)
6. Wild 14 (Joe King Carrasco, Johnny Perez)
7. Kicks On You (Joe King Carrasco, Johnny Perez)
8. Nervoused Out (Joe King Carrasco, Johnny Perez)
9. Susan Friendly (Joe King Carrasco, Johnny Perez)

 Joe King Carrascoは、78年にTornado Recordsから"Rock-Roll Tex-Mex"でデビューしました。
 この時はDoug Sahm人脈のEl Morino Band(Speedy Sparks, Ernie Durawa, Augie Meyers, Louie Bustos, Charlie McBurney)という豪華なメンツをバックに、ゴージャスなオルケスタ・サウンドを披露してくれました。

 Joe King Carrasco & the Crownsとなったのは、翌79年にRoir Recordsからリリースした、"Tales From The Crypt"からです。
 Crownsでは、El Morino Bandとは一転して、コンパクトなロック・コンボ・スタイルをとり、当時の最先端、ニューウェイヴ風に調理した、Tex-Mex Rock'n' Rollをかっこよく決めてくれました。
 そして、ミニ・アルバム1枚を経て、欧州ではStiffから、米国ではHannibalから、バンド名をタイトルとしたアルバムがリリース(80年〜81年)され、広く(?)知られるようになります。

 Johnny Perezが、どうしてCarrascoの売出しに関わりを持つようになったのか、私は知りませんが、初期のCarrascoのアルバムには、Perezの名前がしばしばクレジットされています。
 精査したわけではありませんが、80年代半ば頃までは密接な関係にあったのではないかと思います。

 ドラムでの参加こそないようですが、しばしば一緒に曲づくりを行い、一部プロデュースもやっています。
 本盤収録曲では、バディ・ノックスのカバー、"Party Doll"1曲を除く全ての曲が、Joe King CarrascoとJohnny Perezの共作となっています。
 (本盤の表記に従いましたが、他の盤では別のクレジットになっている曲が含まれています。)

 さて、本盤は、曲目を見ると、Carrascoの初期の代表曲を集めた、ありきたりの編集盤のように思えます。
 しかし、Carrascoのオフィシャル・サイトの記述によれば、本盤収録曲は、80年3月にニューヨーク州ブロンクスで録音されたデモ録音で、11年のCrownsの再結成をきっかけに世に出ることになった、これまで一度もソフト化されていない音源だそうです。
 本盤は、11年6月にAnaconda Recordsからリリースされました。

 デモ録音とのことですが、通して聴いた感想は、普通に聴ける完成された音源だと思いました。
 というか、この頃は名曲ぞろいで、ぐいぐい引き込まれます。
 むしろ、曲によっては、普及版よりも荒々しさが感じられて好きかも知れません。
 エコー深めで、かつ録音レベルも高めです。

 などと書きましたが、実はそれほど真剣に二つのバージョンを聴き比べたわけではありません。
 そもそも、Carascoの音源については、混乱するようなクレジットが多いのです。

 Stiffでの出世作となったシングル、"Buena"は、同曲を最初に収録したアルバム、"Tales From The Crypt"のCDのライナーによれば、79年にオースチンで録音されたということになっています。
 しかも、この時のセッションでは、ベースはSpeedy Sparksと記載されています。
 (Crownsのベーシストは、Brad Kizerという人で、CDライナーによれば、収録曲の約半分がSparksのプレイで、残りがKizerとなっています。)

 しかし、オフィシャル・サイトでは、同アルバムはニューヨーク州ニューヨーク録音と記載されています。
 私は、オフィシャル・サイトの記述にいくつかの誤り(矛盾?)を見つけましたので、根拠は薄いですが、具体的な記述をしているCDライナーの方が、より信憑性があるのではと思っています。
 (しかし、確証はありません。) 

 そこで考えたのが、次のような推測です。

 Stiff盤のLP、"Joe King Carrasco & the Crowns"は、80年ニューヨーク録音となっています。
 このアルバムには、"Buena"を含む、"Tales From The Crypt"とかぶる曲が7曲も収録されています。
 これら7曲は、普通なら、前年に録音したものをそのまま再録するのでしょうが、あるいは、ベーシストを全面的にBrad Kizerとしたうえで、新たにニューヨークで録音し直したのかも知れません。

 ここで忘れてならないのは、本盤は同じ州でも、わざわざブロンクス録音だとしていることです。
 何か色々と面倒ですねえ。  
 そして、これら一連のことが、混乱に拍車をかける元ととなった、というのはいかがでしようか。 

 まあ、相手はテキサスですので、細かいことは言ってもしようがない気はします。
 聴き手側も、とことんは追及せず(疲れるので)、大らかな気持ちで、とにかく楽しみましょう。

 Johnny Perezは、私の手元にあるLPでは、85年の"Bordertown"までは名前を見つけることが出来ます。
 "Bordertown"のLPでは、一部の曲のプロデューサー、コンポーザーとしてクレジットされています。


Joe King Carrasco & the Crowns (80年 Stiff盤)


Party Weekend (83年 MCA盤)


Bordertown (84年 Big Beat盤)


 一方、Doug Sahmとの関わりでは、アルバムで言いますと、82年の"Quintessence"、83年の"Live Texas Tornado"(録音年不明、81〜83年?)あたりが最後ではないかと思います。
 Joe King Carrasco、Doug Sahmともに80年代ですね。

 さて、私がCarrasco好きということが大きいですが、本盤は「スカッ」と聴きとおせるパンチの効いたアルバムです。
 とりわけ、冒頭の"Buena"から、"Let's Get Pretty"、"Betty's World"と続く流れが最高にごきげんです。

 "Buena"の、アコギから始まってメロディックなベース、グルーヴィーなオルガンが入ってくる前奏の雰囲気は、Sir Douglas Quintetのサウンドそのものです。
 本バージョンでのベースは、ざっくりとクリーデンスの「雨を見たかい」を連想しました。

 "Let's Get Pretty"は、Joe King Carrasco版の"96 Tears"じゃないでしょうか。
 脳内に留まって暴れ回る無限軌道リズムは、分かっていてもはまってしまう高い習慣性があります。

 ちなみに、トラック7の"Kicks On You"は、Stiff盤では"I Get My Kicks On You"と表記されている曲です。

 Johnny Perezが曲づくりにどんな役割を担ったのか不明ですが、本盤の収録曲はみんな好きです。
 "Bordertown"収録曲で、Johnny PerezがJ.J.Light(クインテットの70年代初期のベーシスト)と共作した、"Baby Let's Go Mexico"もポップな良い曲でした。


Buena by Joe King Carrasco & the Crowns (81)




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ストックホルムの贈り物

 北欧よ 白夜の国よ ありがとう
 ストックホルム、イエテボリ、マルメ、全ての美しいスウェーデンの街々を統べる神々よ
 今宵 サンアントニオ・レコードの製作スタッフに祝福を

 私は、あなたがたの素晴らしい仕事を 心から支持します。

 日の没さない国から 日出処の国へ届いた素晴らしい便り
 月の光のもと 贈り物を開き、震える手でディスクをセットすると 
 全能の魔神が現れて 私の願いを聞き入れてくれるのでした。

  (至福の時間) 

 そして…
 全私が泣きました 歓喜の涙です。

 1997年8月のストックホルム
 Doug Sahmの完全未発表ライヴ音源がCDリリースされたのです。


 
Live In Stockholm
Doug Sahm
Last Real Texas Blues Band

1. Farmer John (Don Harris, Dewey Terry)
2. Talk To Me (Joe Seneca)
3. Nitty Gritty (Doug Sahm)
4. Nuevo Laredo (Doug Sahm)
5. Dealer's Blues (Doug Sahm)
6. Bad Boy (Lilian Armstrong, Avon Long)
7. (Is Anybody Goin' To) San Antone (Dave Kirby, Glen Martin)
8. Pick Me Up On Your Way Down (Harlan Howard)
9. Adios Mexico (Doug Sahm)
10. (Hey Baby) Que Paso (Augie Meyers, Bill Sheffield)
11. Wasted Days & Wasted Nights (Freddy Fender, Wayne Duncan)
12. She's About A Mover (Doug Sahm)
13. Mendocino / Dynamite Woman (Doug Sahm)
14. Meet Me In Stockholm (Doug Sahm)
15. Treat Her Right (Roy Head, Gene Kurtz) 

 本盤は、スウェーデンのSan Antonio Recordsからリリースされました。
 私が入手したショップのインフォによれば、12年8月13日発売となっています。

 レーベルは、Soundcarrier / Gazell、番号はDOUGALIVE1です。
 Doug Alive 「ダグは生きている」ということでしょうか。
 いかにもブートっぽい番号ですが、ディスク、パッケージの作りともに、オフィシャルといっていいレベルです。

 単に大手からの販路がないだけで正規盤なんでしょうか。
 当初は、スウェーデンを中心にEU圏内の一部のショップのみで流通していたようです。
 
 それが、最近、各国アマゾンでも予約が開始されました。
 (MP3ダウンロード・アルバムは、8月11日から先行販売されていたようです。)

 本邦アマゾンのカタログ情報によれば、入荷するのはUS盤で、レーベルはGazellとなっています。
 (もしかすると、US盤と読むのではなく、単にアメリカから輸入という意味かも知れません。)

 パッケージは、三つ折りを畳んだデジパックで、中には署名のないライナーが掲載されています。
 ライナーは、音源の編集(長すぎるMCをカットした等の記述がある)に関することに加え、まるで当時現場にいたかのような、コンサート・レポ風の文章になっています。
 録音者とクレジットされている、Ad Koekkoekなる人物の文章なのかも知れません。

 以下は、ライナーの記述を参考に、私の感想をまじえてご紹介します。

 録音は、97年8月11日、ストックホルムのどこか、場所は明記されていません。
 MCは一部カットしたとありますが、コンサートのセットリストは完全に収録したと誇らしげにライナー氏が書いています。
 (収録時間は68分です。)

 ただし、最後のトラック15のみ、97年8月2日のベルギー、ローケレン(Lokeren)という街のどこかでの演奏となっています。

 当夜の参加メンバーは、以下の通りです。

Doug Sahm : guitar, lead vocals
Shawn Sahm : guitar, vocals
Jack Barber : bass
Fran Christina :drums
Al Gomez : trumpet
Rocky Morales : tenor saxophone
Arturo "Sauce" Gonzales : keyboads
Janne Lindgren : steel guitar

 既発のアントンズでのライヴ盤と比べると、基本的なメンツの揃え方は同じですが、北欧公演ということもあり、同行者は一部違っています。
 基本は、Augie Meyersが不参加ということで、それはアントンズ盤と変わりません。
 (アントンズ盤は、曲によって一部メンツにばらつきがあり、全て同一日ではなく、複数の公演の演奏が混ざっているのではと想像します。)

 オーギーがいれば、お呼びがかからなかったと思われる鍵盤奏者は、アントンズ盤と同じく、アルツロ・ソース(愛称)・ゴンザレスです。
 ソース・ゴンザレスは、ダグとは70年代からの付き合いで、タグの没後、ウエストサイド・ホーンズのリズム隊の一員となり、Rocky Moralesとともに、バンド・リーダー的な存在となった人です。
 (最近は、健康不安が伝えられています。) 

 そして、ドラムスは、Fabulous Thunderbirdsのフラン・クリスティーナです。
 この人は、テキサスの一流どころのセッションに多数参加していて、T-Birds以外では、Stevie Ray Vaughn、Jimmie Vaughn、Marcia Ballらのレコーディング、そして系統の違うところでは、Asleep At The Wheelとのセッション(79年"Served Live"、80年"Framed")にも参加しています。
 ダグとの共演は、ソフト化されたものでは、初めてかも知れません。
 ちなみに、アントンズ盤のドラムスは、George Rainsでした。

 ベースのJack barber、トランペットのAl Gomez、サックスのRocky Moralesは、アントンズ盤と同じです。
 ダグとの付き合いの長さでは、Rocky、Jack、Alの順でしょうか。

 そして、Dougの息子、Shawn Sahmがギターで参加しています。
 この人は、リード・ギターも弾く人ですが、80年代初めの、Sir Douglas QuintetのAustin City Limitsのライヴでは、まだリードの大半は親父のDougが弾いていました。
 しかし、本盤のライナー氏によれば、Dougは主にサイドを担当し、多くの曲でShawnがソロを弾いたとしています。
 また、多くの曲でコーラスをつけています。


Shawn Sahm


 ちなみに、アントンズ盤では、Derek O'BrienとDenny Freemanがギターで参加していました。
 Derek O'Brienは、Texas TornadosのAustin City Limitsにゲスト参加して、要所でソロを弾いている人です。
 一方、Denny Freemanは、ソロのギター・インスト・アルバムを2枚も出している人ですが、Derekと共演したアントンズ盤では、Dennyがサイドに回っていました。

 スチール・ギターのJanne Lindgrenは、おそらく唯一現地のアーティストではないかと思います。

 さて、本盤でのLast Real Texas Blues Bandは、アントンズ盤とは少し演奏の色合いが違います。
 基本のメンバー構成は同じにもかかわらず、セットリストを変えたため、結果として、とても興味深い演奏となっているのです。

 アントンズでは、ブルース、リズム&ブルースなどに特化したセトリでした。
 しかし、このストックホルム公演では、それに加え、アントンズではやらなかった、テックス・メックス、カントリーなどをやっています。
 このため、ゲストにスチール・ギターリストこそ迎えてはいますが、本来ならまだ足りません。
 オリジナルでは、フィドルやアコーディオンをフューチャーしていた曲を、ラップ・スチール、キーボード、ギターが代替しているのです。
 これが本盤を大変興味深く、希少なものにしています。

 まず、最初に結論めいたことを書かせてください。
 本盤に収められた演奏は、単に珍しいだけでなく、素晴らしい内容だと思います。
 録音の出力レベルが若干低いようですが、バランスは一定ですので問題ありません。
 少し音量を上げて聴き、別のディスクに替えるとき、元に戻してください。

 公演全体を通して、Doug Sahmの歌唱、バンドのパフォーマンスともに素晴らしいです。
 そして、曲間のDougの早口のしゃべりが絶好調で、これでもカットしたのなら、元は凄い量なんだろうなあ、と推察します。
 この2年後に急逝してしまうなんて、当日居合わせた幸福な人は、信じられない気持ちで当時の想い出を振り返ったことでしょう。

 

エドワード、ジョセフとウィルの息子

 英Jasmineから、Falconsの新しい編集盤CDがリリースされました。
 英Jasmineは、米国のノスタルジック音楽全般を精力的にリイシューしている再発専門レーベルです。

 本社はロンドンではないかと思いますが、パッケージにメイド・イン・チェコと記されているのが興味深いです。


You're So Fine 1956-1961
The Falcons

1. Baby That's It (Floyd,Floyd)
2. This Day (Hamilton)
3. Can This Be Christmas (Schofield)
4. Sent Up (Finnie, Rice)
5. I Wonder (unknown)(not originally Issued)
6. Something Hit Me (Kan) (not originally Issued)
7. Love At First Sight (Laired, Mosey)(not originally Issued)
8. This Heart Of Mine (Hamilton, Woods)
9. Romanita (unkown)
10. (When) You're In Love (schofield, West)
11. No Time For Fun (schofield, West)
12. Please Don't Leave Me Dear (schofield, West)
13. Juke Hop (Green) (not originally Issued)
14. Anytime, Anyplace, Anywhere (Morris, Tate)
15. Girl Of My Dreams (unknown)(not originally Issued)
16. Let It Be Me (Finnie, Stubbs, Stubbs)(not originally Issued)
17. I'll Never Find Another Girl Like You (Schofield)
18. Whose Little Girl Are You ? (unknown) (not originally Issued)
19. Just For You Love (Davis, Gordy, Gordy)
20. You're So Fine (Finney, Schofield, West))
21. Goddess Of Angels (Schofield, West)
22. You're Mine (unknown)
23. That's What I Aim To Do (Schofield, West)
24. You Must Know I Love You (Schofield, West)
25. Feels Good (unknown)
26. Billy The Kid (Kan)
27. You're On My Mind (unknown)
28. Anna (unknown)
29. (I Don't Want No) Part Time Love (Pickett, Schofield, West)(not originally Issued)
30. What To Do (unknown)(not originally Issued)

 Falconsは、ブラック・ボーカル・グループ、アーリー・ソウル、双方のファンともに大好きなグループだと思います。
 よく知られているように、Wilson Pickett、Eddie Floyd、(Sir)Mack Riceら、後にソロとして有名になったシンガーが多数在籍していた、デトロイトの名門グループです。

 Falconsは、ニューヨークの名門、Driftersと似たところがあります。
 クライド・マクファターのオリジナル・ドリフターズと、ベンE・キングのドリフターズ(クラウンズ)が、元々は別のグループだったように、ファルコンズも60年代半ばにグループの一新が行われます。
 ソニー・モンローをメインとするファルコンズです。

 本盤は、オリジナル・ファルコンズのレコード・デビューから、ピケット時代までをカバーしています。
 Falconsは、アナログ時代にDoo Wopに特化した(?)リイシュー・レーベル、Relic Recordsから、3枚の編集盤が作られていました。
 1枚目はジョー・スタッブズ時代、2枚目はピケット時代、3枚目は1,2枚目からもれた音源を集めた内容(だと思う)でした。

 Relicは、アナログ時代は隆盛でしたが、CD時代になって、膨大なカタログのCD化を進める中、米Rhinoや英Aceのような波に乗りきれず、フェードアウトしていきました。
 (アナログ時代に無双状態だった英Charlyも、生き残りはしましたが、衰退したという印象はいなめません。)

 RelicのCDは、私はアナログ盤を持っていないものを優先的に入手していました。
 CD棚をさっと探したところ、「モーリス・ウイリアムズ&ゾディアックス」と「チャネルズ(シャネルズ?)」が見つかりました。
 あるはずなのに、例によって行方不明なのが、コンピの"Soul Of Detroit"、Robert Ward & Ohio Untouhablesの"Hot Stuff"です。
 (後者は確認したいことがあったのですが…。)
 とりあえず、ジャケ画像のみ載せます。





 Falconsについては、ソニー・モンロー時代をまとめた編集盤CDを除けば、これまでCDを持っていませんでした。



 というわけで、今回の発売のインフォを見て楽しみにしていたのでした。

 本盤は、オリジナル・ファルコンズの以下の時期の音源を主に収録しています。

創設期
Eddie Floyd : lead tenor
Bob Manardo : tenor 
Tom Shetler : baritone 
Arnett Robinson : tenor 
Willie Schofield : bass

第二期
Eddie Floyd : lead tenor 
Joe Stubbs : lead tenor 
Mack Rice : baritone 
Willie Schofield : bass  
Lance Finnie : guitar 

第三期
Eddie Floyd : lead tenor
Wilson Pickett : lead tenor
Mack Rice : baritone
Willie Schofield : bass
Lance Finnie : guitar

 創設期は5人編成のボーカル・グループでしたが、ギターのランス・フィニーが加入してからは、4人のボーカル・プラス・ギタリストになっています。
 伴奏隊のうち、ランス・フィニーだけが正式メンバーとなったのは、何か理由があるのでしょうか。
 実は、Falconsは、フィニーの正式加入以前から、かっこいいギターが聴こえます。

 第三期のあと、一時期的に、Gene "Earl" Martinという人物がSchofieldと変わったりしましたが、Pickettの離脱後には、再度第二期の編成になったりしています。
 その後、オリジナル・ファルコンズからセカンド・ファルコンズへと移行していくのでした。

 さて、本盤は、創設期から第三期までの主な録音のうち、ピケットのアトランティックでの1stソロに収録された数曲をオミットした内容になっています。
 英Jasmineのこれまでの編集盤の例からいくと、これらを含む音源を多数加えて2枚組にするところでしょうが、今回はなぜか1枚ものにまとめています。

 アマゾン掲載のジャケ写真の右下には、「2CD SET」のロゴがありますが、これは実際に発売されたものにはありません。



 あるいは、当初は2枚組が企画され、プレス・リリースではアマゾン掲載の写真だったのかも知れません。
 (Jasmineのオフィシャル・サイトでは、正しい写真になっています。)

 さて、本盤は、主としてエディ・フロイド、ジョー・スタッブス、ウイルソン・ピケツトがリードをとった曲を中心に、ほぼ年代順に並べた編集となっています。
 
 2曲だけ、Little Beeという本名不明の女性シンガーがリードをとった曲があります。
 "Something Hit Me"と"Love At First Sight"がそうです。

 ところで、曲名の後に、(not originally Issued)と記されているものがありますが、これは発掘という意味での未発表曲ではなく、各レーベルで録音当時に発売しなかった音源という意味で、RelicでLPに収録されたものがほとんどです。(全く意味のない補記ですね。)

 本盤の収録曲で、私の知る範囲では、以下の4曲が初CD化(初ソフト化?)ではないかと思います。

2. This Day
3. Can This Be Christmas
8. This Heart Of Mine
9. Romanita

 最初の3曲が、Eddie Floydのリード、最後の1曲は、Mack Riceのリード・ボーカル曲で、"This Heart Of Mine"以外は、シングルのB面曲です。 
 この中では、古いスタイルで展開する曲に、新しさを感じさせるコーラスを付けた"This Heart Of Mine"が特に好きです。

 これだけでなく、本盤のEddie Floydのリード曲を聴くと、彼はFalcons時代から味があると思いました。
 ただ、本盤の後半に出てくるJoe Stubbsと比べてしまうと、やはり普通にうまいだけかな、とも感じます。
 これは、Joe Stubbsの個性の強さが比類のないものだからです。

 Joe Stubbsのリード曲、"You're So Fine"は、初期Falconsを代表するヒット曲で、アーリー・ソウルの名作です。
 私は、この曲を日本盤のコンピ「アメリカを聴こう」シリーズの1枚で初めて聴きました。

 この曲は、後期Falconsの代表曲、Pickettの"I Found a Love"の影に隠れがちです。
 (私の思うところ、楽曲としてのデュープ・ソウル・バラードのベスト3は、"I Found a Love"に、ガーネット・ミムズの"Cry Baby"とインプレッションズの"For Your Precious Love"だと考えています。)

 "You're So Fine"は、これらとは別の種類の魅力があり、やはり傑作だと思います。
 そして、私が昔から好きなのが、やっぱりStubbsのリード曲、トラック24の"You Must Know I Love You"です。
 これは、もっと評価していい曲じゃないでしょうか。

 他では、トラック11の"No Time For Fun"と、トラック12の"Please Don't Leave Me Dear"がいいです。
 この2曲のリードは誰でしょう?
 やはり、Eddie Floydかな。
 
 "No Time For Fun"からは、コースターズ風の楽しさを感じます。
 ロッキン・ギターも大活躍しています。

 そして、"Please Don't Leave Me Dear"の歌唱は、ジャッキー・ウイルソンを連想します。
 デトロイト周辺のシンガーは、どこかしらジャッキーへの憧憬を持っていそうですが、本盤収録曲に限れば、Eddie Floydと、Joe Stubbsの一部の歌唱に近い資質を感じました。
 Stubbsでは、トラック19の"Just For You Love"はいかがでしょう。

 一方で、聴きようによっては、Sam Cooke的なものもあります。
 例えば、トラック17の"I'll Never Find Another Girl Like You"とか…。
 これは、Floydのリードですね。

 "You're So Fine"は、今回繰り返し聴きました。
 そうすると、歌に入る前のイントロが、妙に気になってきたのです。
 このイントロの雰囲気って、何かに少し似てませんか?
 Sam Cookeの何か… かなり考えて、ようやく思いついたのが、Samではなく、Ovationsの"I'm Livin' Good"でした。
 どうでしょうか…あくまでイントロの印象です。

 さて、最後のあたり、Pickettのリード曲が続きます。
 トラック25の"Feels Good"からトラック29の"(I Don't Want No) Part Time Love"までです。
 さすが、バイタリティを感じる歌い方です。
 この時期のいくつかの曲は、Pickettのアトランティックの1ソロ、"In The Midnight Our"に収録されています。
 "Take This Love I've Got"と"Let's Kiss And Make Up"はそうだと思います。
 
 最後に入っている、トラック30の"What To Do"は、Ohio UntouchablesのBenny McCainがリードの曲で、Falcons名義で出されたようですが、Falconsの伴奏をOhio Untouchablesがやったというより、逆にOhio Untouchablesメインの曲のコーラスをFalconsがやったのかも知れません。

 "What To Do"は、Robert Ward & Ohio UntouchablesのCD(見つからないRelic盤)にも収録されています。
 これを聴き返して、同じ音源なのか確認したかったのですが、気持ちがあせるばかりで、現在のところまだ発見できていません。

 本盤は、Falconsの概要をさくっと知るには良いアルバムだと思います。



You Must Know I Love You by Falcons




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