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オールドウェイヴ ボーダーウェイヴ

 Sir Douglas Quintetが、80年代初期に所属していたTakama Records時代のスタジオ盤、"Border Wave"がCDリリースされました。
 私の知る限りでは、オリジナル仕様でのCD化は初めてだと思います。

 意外な気もしますよね。
 Doug Sahmで、CD化の遅れというと、この少し後のSonet時代が(ファンの間では)長年の懸案です。
 (近年になって、スウェーデン盤で、いくつか編集盤が出ました。)

 でも、Takoma音源は、何となく、とっくにソフト化されたような印象を持ってしまいがちです。
 Doug Sahmの他のTakoma音源はCD化済でしたが、実は本盤は(多分、おそらく、きっと)初CDなのでした。

 
Border Wave
Sir Douglas Quintet

1. Who'll Be the Next in Line (Ray Davies)
2. It Was Fun While It Lasted (Doug Sahm)
3. Down on the Border (Doug Sahm)
4. I Keep Wishing for You (Butch Hancock)
5. Revolutionary Ways (Doug Sahm)
6. Old Habits Die Hard (Doug Sahm)
7. You're Gonna Miss Me (Roky Rrickson)
8. Sheila Tequila (Doug Sahm)
9. Tonite, Tonite (Alvin Crow)
10. Border Wave (Doug Sahm)

 Doug SahmのTakama音源のディスコグラフィーは以下のとおりです。

LP
80年 Hell Of A Spell : Doug Sahm (TAK 7075) ソロ名義第一作
81年 The Beat Of Sir Douglas Quintet : Sir Douglas Quintet (TAK 7086) 既発曲の新録音ベスト
81年 Border Wave : Sir Douglas Quintet (TAK 7088) 本盤のオリジナル・アナログ盤
83年 Live Texas Tornado : Sir Douglas Quintet (TAK 7095) オースティンとL.A.でのライヴが混在
86年 The Collection : Sir Douglas Quintet (英Castle CCSLP-133) 2枚組(TAK 7086+TAK 7088)

CD
86年 The Collection : Sir Douglas Quintet (英Castle CCSCD 133)1枚もの(TAK 7086+TAK 7088のB面)
86年 Live Texas Tornado : Sir Douglas Quintet (TAKCD 7095)
87年 The Beat Of Sir Douglas Quintet : Sir Douglas Quintet (TAKAMA CDP-72786)
98年 Live Texas Tornado : Sir Douglas Quintet (Fantasy/CDTAK 6505)(ジャケ違い)
99年 Hell Of A Spell : Doug Sahm (Fantasy/TAKCD 6507-2)

 再発ものは、最初にリリースされた、代表的なもののみ記載しました。

 Takama時代は、Doug Sahmが、マーキュリー(69-73)でのサンフランシスコ時代を経て、アトランティック(73)で傑作を出しながらもセールスにつながらず、その後ワーナーで1枚、ABCで1枚を出したあと、次第にメジャー・レーベルから離れていった時期です。

 この頃、地元のAugieのレーベルからひっそり出していたアルバムを、スウェーデンのSonetから再発して、北欧とのつながりを深めています。
 そして、Takamaを離れたあとは、本格的にスウェーデンへと活動の拠点を広げ、Sonetから新作をリリースするようになります。

 本盤は、81年にオリジナルのLPが出されました。
 そして、86年には英Castleから、Takoma製ベスト盤(TAK 7086)とのカップリングで、2枚組LPが作られます。
 この時の2枚組は、AD面がTakama製ベスト、BC面が"Border Wave"という、変則的な構成になっていました。


 同じ年に出された同名のCDは、(まだ2枚組CDが珍しかったのでしょうか)2枚組LPをベースに、"Border Wave"のA面5曲をオミットした形で、1枚物のCDにまとめられました。
 これが、"Border Wave"の音源(の一部)を初めて使ったCDです。
 (なお、近年、スウェーデン発の編集盤CDに一部の曲が収録されました。)

 以降、私の知る範囲では、今回が、初めてオリジナル仕様でのCD化だと思います。

 さて、本盤でのSir Douglas Quintetのサウンドは、他の時期とは何となく違う雰囲気があります。
 ロック・コンボ的な側面を強く感じるサウンドで、曲によっては、Joe King Carrascoの初期を連想させるところもあります。

 最大の特徴は、サイド・ギターのAlvin Crowの存在でしょう。
 この人は、Doug Sahmの歴代サイドメンの中でも、特に個性的な一人だと思います。

 本盤でのメンツは以下のとおりです。

Doug Sahm : lead vocals, guitar
Augie Meyers : organ
Alvin Crow : vocals, guitar
Johnny Perez : drums
Speedy Sparks : bass
add.
Shawn Sham : vocals, guitar

 従来のQuintetは、パーソナルなサイド・ギターが決まっていませんでした。
 ギターは、Dougの1本だけのときが多く、時に応じてゲストが補助したりしていました。
 Alvinによってサイド・ギターの固定化が確立し、その後ゆっくりとLouie Ortegaへの交代が行われていきます。

 Alvinのメイン楽器はフィドルだと思いますが、本盤では一貫してギターを弾いています。
 そして、ボーカリストでもあり、メインで歌う出番もあるほか、多くの曲でハーモニーをつけています。
 実は、ウエスタン・スイング大好きという人なのですが、この頃は、しばしば初期のバディ・ホリーっぽいヒーカップを披露したりと、ロカビリー寄りの印象を受けます。

 Alvin CrowのQuintetでの在籍期間は、正確には分かりません。
 スタジオ盤への参加としては、本盤ないしは、同81年発売の"The Best Of Sir Douglas Quintet"からだと思います。
 それでは、バンドを離れたのはいつ頃でしよう。

 多分、Dougが北欧を活動の拠点にしだした頃から行動を別にして、オースティンに留まったのではないかと思います。
 ただ、86年リリースの覆面バンド、Texas Mavericksの"Who Are These Masked Men?"では、Rockin' Leonの変名で参加して、ギターをを弾きました。

 この時は、相変わらずの、バディ・ホリー風の唱法で、Johnny Cashの"Rock'n'Roll Ruby"を派手に決めて、ぶれない姿勢を見せています。
 (ちなみに、Texas Mavericksのリード・ギター、Johnny Xの正体は、Louie Ortegaではなく、元Freda & The FiredogsのJohn X. Reedです。この時は、珍しくも、ギター3本体制だったのでした。)

 さて、本盤のもうひとつの特徴は、ホーンレスだということです。
 Doug Sahmは、10代のころから、ホーンをバックにした録音を数多く行ってきました。
 Tribe時代のSir Douglas Quintetの頃から、それは自然に寄りそっていたのです
 初期Quintetのホーンは、テナー・サックスのFrank Morinで、彼はマーキュリー時代の終わり(70年頃)まで、Doug Sahmと密な関係を続けていました。

 Frank Morin(ts)の後は、お馴染みのRocky Morales(ts)、Louie Bostos(ts)、Charlie McBurney(tp)、Al Gomez(tp)らが頻繁に参加するようになりますが、中でもホーン一人体制の場合は、Rocky Moralesの参加率がダントツです。

 リズム・ギターのAlvin Crowの個性、そしてホーンレス、これこそが本盤を他のアルバムとは印象の違う存在にしている要因だと思います。

 アルバムは、Ray Daviesの作品、Kinksの"Who'll Be the Next in Line"の力強いカバーで始まります。
 これがまた、特異な例で、Doug Sahmがブリティッシュ・ロックのカバーをやるのは非常にまれなことです。
 他には、プロコム・ハルムの"Whiter Shade Of Pale"(青い影)くらいしか思いつきません。

 選曲の面でも、珍しいアルバムだったわけです。
 ホーンがないだけでなく、(Alvin Crowが参加しているにも関わらず)カントリー系の曲がないのも特徴です。

 さて、本盤のメンツの動く姿を見ることが出来るライヴ映像があります。
 CD、DVDともに出でいる、"Live From Austin TX"のSir Douglas Quintet盤です。
 (これは、TV番組のAustin City Limitsの81年収録の映像で、Doug Sahmは、ファンにとって幸せなことに、ソロ名義(70年代)、Quintet名義(80年代)、Texas Tornados名義(90年代)と、3つの異なった時代がソフト化されています。)


 映像を見ると、音だけでは気付かない、興味深い要素をいくつも発見します。
 本盤の収録曲のうち、Austin City Limitsでやっているのは、次の6曲です。
 (曲の並びは、ACLのセトリ順)

Down On The Border
I Keep Wishing For You
Who'll Be The Next In Line
Tonite, Tonite
Old Habits Die Hard
You're Gonna Miss Me

 これらの映像を見てから、再度本アルバムを聴き返すと、さらに楽しいです。

 まず、映像のAlvin Crowが若いです。
 Aivinのギターは、シングル・カッタウェイのセミアコ(グレッチ?)で、基本的にサイドのみのプレイです。
 そして、多くの曲でコーラスをつけています。
 Doug Sahmはテレキャスター、Shawn Sahm(Dougの息子)はレスポールです。
 Shawnは、ACLのセットリスト全17曲の内、7曲(上記6曲+1曲)に参加しています。

 全体的にレイドバックした雰囲気の曲が少なく、元気な曲、グルーヴィーな曲が多いです。
 Alvinの作品で、自身がリード・ボーカルを務める"Tonite, Tonite"は、やはりヒーカップ調、かつガッツ溢れる歌声で、元気一杯にかっ飛ばすファスト・ナンバーです。
 間奏のギター・ソロは、Dougです。

 Dougのオリジナルも、力強く躍動感のあるサウンドがほとんどで、若きAlvinの存在が、知らずのうちにバンド全体に影響を与えている気がします。
 (…近年のAlvin Crowは、二倍くらいの恰幅のいい体型になり、ゆったりとホンキートンクしています。)

 そんな中、フォーキーな"I Keep Wishing For You"が目立ちます。
 この曲は、(元)FlatlandersのButch Hancockの作品で、私は本人盤は未聴ですが、おそらく原曲は、ディランみたいなぶっきら棒なスタイルではないかと想像します。
 本盤では、Dougの手によってメロディの輪郭が明確にされ、美しいミディアム・バラードになっています。

 私が"I Keep Wishing For You"を初めて聴いたのは、Butchの盟友の一人、Joe Elyのバージョンで、確か、彼のライヴ盤"Live Shots"(のオマケの7インチ盤)で聴いたのでした。
 当時、「なかなかいい曲だな」とは思いましたが、Doug盤を聴くまでは、それほどの曲だとは思っていませんでした。

 Doug盤の仕上がりは、曲のポテンシャルを見事に引き出した、目が覚めるような素晴らしい仕事で、「ダグラス卿の魔法」とでも呼びたいです。
 この曲での間奏のソロは、Dougが弾いています。

 今回、本盤を久々にじっくり通して聴きました。
 そして、ACLの映像を合わせて見て、改めて強烈な魅力に惹きこまれ痺れました。

 やっぱり、Doug Sahmは、どの時代も最高です。



Who'll Be The Next In Line by Sir Douglas Quintet




関連記事はこちら

Sir Douglas Quintet
至宝の五重奏団、彼方へ
魔法使いはヒップスター
白夜の国から
ストックホルムで会おう
ビニール・オンリーのクインテット

Alvin Crow
鞍の上の生活へ帰ろう
可愛い七つの子はフィドル弾き
ロッキン・レオンのふるさと






みたび路上へ

 ルート66をテーマにしたコンピレーションの、シリーズ第三弾がリリースされました。
 制作は、第一弾から一貫して手掛けている、Asleep At The Wheelのドラマー、David Sanger先生です。

 1枚目を出したころは、続編など想定していなかったのではないかと思います。
 その結果、本盤のタイトルも、Vol.3などとナンバリングされることもなく、わずかに"More"の単語がそれをうかがわせているだけです。


Even More Songs of Route 66
From Here to There

1. Be Thankful For What You Got (William Davaughn) Emily Gimble
2. Travelin' Mood (James Wayne) Seth Walker
3. Rockin' Down The Highway (Tom Johnston) Bruce Hughes
4. White Line Fever (Merle Haggard) Dale Watson
5. Little Floater (Terry Adams) Elizabeth McQueen
6. 99 Miles From L.A. (Albert Hammond, Hal David) Claire Small
7. On The Road Again (Floyd Jones, Alan Wilson) Carolyn Wonderland
8. Pickin' California Slaid (Jason Ekland) Cleaves
9. Hit The Road, Jack (Percy Mayfield) Tim Curry
10. Truckin' Man (Dale Watson, David Biller) Jason Roberts
11. Willin' (Lowell George) Band Of Heathens  
12. Route 66 (Bobby Troup) Mike Barfield
13. The Road (Danny O'Keefe) Matt the Electrician  

 実は、当プログでは、過去の2枚を取り上げていました。
 当時、2枚目までは出ていたのですが、まさか3枚目が出るとは…。

 いずれのディスクも、多くの無名人、無名バンドを含む内容になっています。
 当時は、おぼろげながら思っていたことですが、収録アーティストの多くは、主としてオースティンを拠点に活動している人たち、及びDave Sangerのセッション・コネクションから参加することになった人たちだと思います。

 まず、シリーズの変遷をおさらいしましょう。




98年 Songs of Route 66 : All-American Highway
01年 More Songs of Route 66 : Roadside Attractions
12年 Even More Songs Of Route 66 : From Here To There

 このタイトルの流れって、例えば古い日本映画風に言うと「続〜」「続々〜」って感じですかね。
 私は、「またまた〜」とか、「ご存じ〜」なんてのも好きです。

 先の2作は、ルート66そのものをテーマにした曲、ルート66の沿道の街を歌った曲などが集められていました。

 本シリーズの特徴は、できるだけ既発曲ではなく、本盤のための新録音をコンパイルしていることです。
 さすがに、1枚目は、"Route 66"のオリジナル曲や、代表的なカバー曲を押えていましたが、2枚目では、基本的に当該盤のための新録音を集めるという美しい構成で攻めています。

 本盤でも、その編纂スタイルを継承していますが、コンセプトに関しては、先の2枚と比べると少しゆるめた(?)感じで、必ずしもルート66とゆかりのある曲ばかりではないようです。
 本盤でのキーワードは、旅、路上、放浪、などではないかと思います。

 アルバムは、初めて聴くシンガーがほとんどです。
 まず、テキサス・フィドル・レジェンド、Johnny Gimbleの孫娘、Emily Gimbleの歌でスタートします。
 カントリーぽさは皆無といってよく、歌い方もアレンジもアンニュイで、おしゃれなブラック・ミュージック風です。

 続くSeth Walkerなるシンガーの"Travelin' Mood"は、過去2枚のアルバムに近い選曲です。
 地名を読み込んだ曲で、ニューオリンズ・ファンク風です。
 この人にアルバムがあって、こういう曲をもっとやっているのなら、少し気になります。、

 そして、ドゥービー・ブラザーズのカバーが登場します。
 Bruce Hughesもまた、私にとって初見のシンガーです。
 "Rockin' Down The Highway"は、チャイナ・グローヴとか、ロング・トレイン・カミンとかに比べるとあまり知られていない曲だと思いますが、初期ドゥービーでは、16ビート以外の良作のひとつだと思います。
 ドゥービーは、旅に関する曲を多くやっているイメージがあります。

 次はDale Watsonです。
 やっと少しは知っているシンガーが出てきました。
 でも、本コンピ・シリーズで聴いている程度です。

 Dale Watsonは、本シリーズの2枚目、"More Songs Of …"に2曲収録されていて、今回の1曲と合わせて計3曲は、本シリーズ最多収録数です。
 "White Line Fever"は、Merle Haggardのカバーで、ゆったりめのテンポで、渋くジェントルな雰囲気でやっています。
 マール・ハガードも、ホーボー・ソングをたくさん歌っているので、本コンピ向けの人ですね。
 服役経験者のハグの出世作は、逃亡者の歌でした。

 Elizabeth McQueenは、Dave Sangerのパートナーです。
 彼女は、Sangerと結婚して、Asleep At The Wheelに加入しました。
 Asleepでのベスは、ノスタルジックな曲を好んでやっていますが、加入前のアルバムで、パブ・ロック大好き女子の正体を明かしていました。

 ベスは、本盤では、NRBQの"Little Floater"をやっています。
 "Wild Weekend"収録曲ですが、必要なときに行方不明なため、ライヴ盤"Tokyo"でQバージョンを聴き返しました。
 ほとんど記憶になかった曲でしたが、こういうきっかけで気になる曲になっていくんでしょうね。
 風を切るような清々しい歌い方で、全盛期のカーリーン・カーターを可愛らしくしたような仕上がりになっています。

 過去の2枚では、制作のDave Sangerが、かなりドラムを叩いていましたが、本盤では奥さんのベスが、他の参加者の曲で、いくつかハーモニーをつけています。

 続いて、なかなか興味をひく曲、歌唱が続きます。
 ジョン・リーのロック版のような、Carolyn Wonderlandの"On The Road Again"、圧倒的に曲が存在感を主張しているTim Curryによる"Hit The Road, Jack"が耳をひきます。
 とはいえ、Tim Curryさんは、Ray好きが良く出ている好演だと思います。

 そして、Asleepのフィドラー、Jason Robertsが歌う"Truckin' Man"は、かっこいいトワンギーなロッキン・カントリーです。
 曲は、Dale Watsonの作品のようです。
 ギターは、Daleかと思いましたが、Jason Allenという人でした。
 Jason Robertsは、2枚目の"More Songs Of …"に続いて2度目の登場です。

 そして、"Willin'"を演奏するBand Of Heathensは、珍しく私がアルバムを持っているバンドです。
 これは、先の"Hit The Road, Jack"同様、曲そのものの魅力が突き抜けています。
 ですが、名曲の補正を差し引いても、とてもいい雰囲気に仕上がっています。

 本盤は、多くの方にとって、無名人ばかりのアルバムだと思います。
 過去の2枚も、私にとって当初はそうでした。
 でも、その後、2組のアーティストが、私の新たなお気に入りになりました。
 不思議なことに、両者とも、全く別のアプローチで好きになり、本シリーズのコンピでファースト・コンタクトしていたことは、後から気付いたのでした。

 過去の記事を読むと、その2組にはさほど注目していず、つくづく自分の見る目のなさ(聴く耳のなさ?)を痛感します。

 さて、本盤はどうでしょうか?



Route 66 by Bobby Troup, Nat King Cole,
Chuck Berry, Rolling Stones etc etc



Little Floater by NRBQ with Phil Woods




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Route 66
オール・アメリカン・ハイウェイ・ソング
マザー・ロードを行く

Elizabeth McQueen
新入部員は、眼鏡女子
まるごとパブ・ロック
町一番のぐーたら娘



明日に別れの接吻を

 今回は、Cookie & the Cupcakesのサックス・プレイヤー、Lil' Alfredの唯一のソロ・アルバムを聴きました。

 Cookie & the Cupcakesは、Cookieこと、Heuy Thierryを中心とするSwamp Popの代表的グループです。
 多くの人にとって、Swamp Popの魅力にはまるきっかけにして、決め手となるアーティストではないでしょうか。

 私がそうでした。
 P-Vine盤で出会い、輸入盤店で英Acd盤を見つけて更に好きになりました。
 もちろん、LP時代のことです。

  

Dealin' With The Feelin'
Lil' Alfred

1. Dealin' With the Feelin' (A.Babino)
2. Kiss Tomorrow Goodbye (Alfed Reed)
3. The One Thing (Bonnie Hayes)
4. Lie to Me (A. Babino, Don Rollins)
5. She's Looking Good (Collins)
6. Hold on to What You've Got (Joe Tex)
7. I've Got the Wrong Somebody (D.Egan, B.Flett)
8. Flying High (On the Wings of My Music) (A. Babino)
9. I Need Your Love So Bad (J.Mertis Jr.)
10. I Should Have Gone Dancing (C.l.Milburn)
11. It's Too Late (Chuck Willis)
12. Here from Now On (D.Egan, B.Flett)
13. Barefootin' (R.Parker)
14. The Only Girl (A.Babino, G.Khoury)

 Cookie & the Cupcakesは、52年、前身であるBoogie Ramblers時代に、Eddie ShulerのGoldbandと契約します。
 この時、Goldbandで、彼らのプロデューサーを務めたのが、George Khouryでした。
 Goldband時代には、Boogie Ramblers名義で、"Cindy Lou"の小ヒットを出しています。

 彼らが本格的に成功したのは、George Khouryが自らのレーベル、Lyricからリリースした、"Mathilda"を出してからのことです。
 58年のことでした。

 彼らの成功後、GoldbandのEddie Shulerは、Boogie Ramblers時代を含むシングルを集め、Cookie & the CupcakesのLPを作っています。
 その裏ジャケには、自分たちこそ、この偉大なグループを最初に録音したのだと、誇らしげに記していました。

 本盤は、Jin RecordsからリリースされたCDで、私が所有するディスクには95年と記されています。

 普通に95年リリースかなとも思いますが、トラック12〜14がCDボーナス・トラックとなっていて、こういう表記は80年代後半のLP・CD併存期に見られたものなので、再発なのではと考えてしまいます。

 一方、海外では、LPからCDへと素直に交代したわけではなく、プレイヤー価格の低廉化が進行するまでは、カセットのシェアが強かった時期がCD黎明期と重なっていましたので、95年初発もないとは言えない気もします。

 さて、Cookie & the Cupcakesのメイン・リードは、Heuy "Cookie" Thierry(vo.sax)ですが、他にもリード・ボーカルをとっているメンバーがいます。

 初期メンバーのShelton Dunaway(sax, trp)がその代表で、Chuck Willisのカバー(本当はトラッドかも)、"Betty & Dupree"はSheltonのリードでした。
 そして、クラプトンがカバーして有名になった、"Got You On My Mind"は、CookieとSheltonのデュオ曲です。

 グループの年少組だった本盤の主人公、Lil' Alfredは、"Walking Down The Aisle"ほかでリードを担当しています。
 ウエディング・ソング(だと思う)の"Walking Down The Aisle"は、当時10代のAlfred Babino(バービノウ?)少年が、素晴らしいボーイ・テノールを聴かせるDoo Wop調の傑作です。

 Lil' Alferdという愛称は、地元のディスク・ジョッキーが、15才でプロとして歌っていた彼につけたものでした。

 Lil' Alfredは、64年にHuey "Cookie" Thierryが自動車事故の負傷でグループを離れたころから、自然と中心メンバーとなっていったようです。 

 Lil' Alfredのリード曲では、他にも"Even Though"という私の大好きな曲があります。
 こちらも、Doo Wopスタイルのコーラスが入ったボーカル曲でした。

 しかし、今回の盤は、曲目をご覧いただけばお分りのように、ソウルの名曲カバーを中心とした構成です。
 ジョー・テックスの名作サザン・ソウル・バラードから、ロジャー・コリンズ(ピケット盤が有名ですが)のジャンプ・ナンバーまでを果敢に挑戦しています。

 ルイジアナ繋がりで、バラードでは"Kiss Tomorrow Goodbye"、ジャンプでは"Barefootin"もやっています。

 本盤のセッションは、主として(全10曲)以下のメンバーで行われました。 
 これらは、Lil' Alfred自身がプロデュースしています。

Lil' Alfred : vocals
Chet Blackstone : keyboads
Mike Dubroc : guitar, percussion, background vocals
Gerald Romero : bass
Al Allemond : drums
Don Rollins : sax
Kevin Stone : trumpet 

 一方、一部の曲のみ別のセッションでの録音があります。
 以下のとおりです。

"Bearfootin'" + "It's Too Late"の2曲
Wayne Sensat and C.O.Vallet : produce
Lil' Alfred : vocals
Chris Flowers : sax
Walter Allen : keyboads
Jack Johnson : trumpet
Jerry Mouton : bass
Randy Melancon : guitar
Mike Rogers : drums
Tommy Elender :sax

"I've Got the Wrong Somebody" + "Here from Now On" の2曲
David Egan : produce, keyboads
Buddy Flett : produce, guitar
Lil' Alfred : vocals
Ron Eoff : bass
Robert Cardwell : drums

 David Eganの作品2曲の制作に、作者本人が関わっているわけです。
 David Eganは、ルイジアナのピアニスト、シンガー、ソングライターで、つい先ごろ新作をリリースした、Swamp Popのスーパー・グループ、Lil' Band O' Goldのメンバーでもあります。

 本盤の内容は、(ファン目線での補正込ですが)充分楽しめるレベルだと思います。
 ただ、ヴィンテージ期の奇跡的なパフォーマンスの再現を期待するのはやめましょう。

 本盤は、大人になって魔法を失い、奇跡を起こせなくなった、かつての天才少年が、普通に努力して作ったアルバムだと思います。

 Lil' Alfredは、90年代後半にCookie & the Cupcakesを名乗るグループを率い、音楽フェス等に出たらしいです。
 懐かしいメンバーがどれくらい参加したのかは調べられていません。

 出来れば、リユニオンで、スタジオ盤新作を出してほしかったです。
 それが無理なら、ライヴ音源をディスク化してほしいものです。



Kiss Tomorrow Goodbye by Lil' Alfred




Kiss Tomorrow Goodbye by Johnny Winter


私はアリゲーター時代のジョニー・ウインターが好きです。
これは、「ギター・スリンガー」でやったバージョンです。
スワンプ・ポップ風にやっています。



Kiss Tomorrow Goodbye by Danny White


多分、これがオリジナル、63年ニューオリンズ録音だと思います。
Danny Whiteは、1枚ものの英Kent盤CDが出ています。



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沼地のハーモニー
ゴールドバンドのカップケーキ
ボーカル・グループとして聴くカップケイクス





想い出のウエストサイド

 以前、Sonny Aceというアーティストのアルバムを取り上げました。
 60年代にシングルを出していたサンアントニオのシンガーの近作(?)でした。

 そのセッションに参加したメンバーの顔触れが興味深くて、いろいろと勝手な推測を書きました。
 その際、メンツの中にあいまいだった人物がいたのですが、今回の主人公こそ、その当人ではないかと私は考えています。


Bringing Back The Memories 50's & 60's Vol.1
Rocky "Shuffle" Hernandez and The OBG Band

1. Linda Lu
2. I'm A Fool To Care
3. Corina
4. Guess Who?
5. Hurt
6. Will You Still Love Me Tomorrow
7. For Your Love
8. I'd Rather Go Blind
9. C. C. Rider
10. DWI Blues

 おさらいです。
 Sonny Aceのアルバム、"There's Good Rockin' Tonight"での伴奏メンバーてず。

Sonny Ace : vocals 
Rocky Morales : sax
Arturo Gonzales : keyboad
Mike Seal : bass
Felix Villarreal : guitar
Randy Garibay : background vocal
Rocky Hernandez : drums

 私は、このうち、ドラムスのRocky Hernandezが、Little Joeの弟と同姓同名であることから、同一人物かな、どうなんだろうなどと、ごにょごにょ口を濁していました。

 そんな中、本盤を見つけました。
 状況証拠ではありますが、言い切りたいと思います。

 Sonny Aceのアルバムでドラムを叩いていたのは、Little Joeの弟ではありません。
 同姓同名ですが別人です。
 今回ご紹介するアルバムの主人公こそ、その人だと思います。

 本盤のRocky Hernandezさんは

 状況証拠1 : ドラマーである。(これは間違いない。)
 状況証拠2 : 過去にSonny Aceと共演経験がある。(Web情報) 

 本盤は、Rocky "Shuffle" Hernandezさんがバンド・リーダーを務める、OBG Bandの1st(00年作)です。
 OBGとは、Oldies But Goodiesの略です。

 この人には、オフィシャル・サイトやファン・サイトがなく(多分)、Web情報もわずかです。
 そんな中から、断片的な情報を紡いでみました。
 (これから先は、またまた新たな推測を含みます。)

 Rocky Hernandezは、現在60代半ばくらいの年齢(多分)で、おそらくはサンアントニオ近辺の生まれ。
 同地で好まれていた50s60sの音楽(ウエストサイド・サウンド)を愛し続けている人だと思います。

 最初に参加したバンドは、Jesse & the Rocking Dukesで、15才の頃でした。
 65年に学校を卒業した彼は、Blue Notesというバンドに参加したらしいです。
 その後、Sonny Ace & the Twisters、Augie Meyersらと共演しています。

 彼のニックネーム、"Shuffle"は、Augie Meyersが名付けたそうです。
 当然、そのドラムの演奏スタイルから付けられたのでしょう。

 アルバム・デビュー(ソロ名義)は、90年代ではないかと推測しますが、定かではありません。
 (Web上では、OBG Band以前の痕跡が見つけられません。)
 ミレニアムを迎え、バンド名義でリリースした第一作が本盤になります。

 本盤の参加メンバーは以下のとおり(だと思います。)

Danny Esquivel : guitar, lead vocals
Nando Aguilar : bass, vocals
George Gonzalez : guitar
Tommy "El Gato" Luna : sax
Rocky Hernandez : drums

 実は、Tommy "El Gato" Lunaの担当楽器が(Webでも)不明なのですが、ジャケの5人の写真から、消去法で仮にSaxとさせていただきました。

 私の推測では、表ジャケ写の左から、George Gonzalez(g)、Danny Esquivel(l.vo)、Rocky Hernandez(dr)、Tommy "El Gato" Luna(sax)、Nando Aguilar(b)ではないかと思います。

 裏ジャケもご紹介します。



 左上がRocky、真ん中はリード・ボーカルのDannyではないかと思います。

 さて、バンドのサウンドは、曲によって適不適がある気もしますが、ミディアム・アップのリズム曲が合っている気がします。
 そして、Tommyのサックスが、時にロッキー・モラレスを連想させる素晴らしさで、ズバリ決まった曲では、Doug Sahmの名盤、"Juke Box Music"のサウンドを思い出します。

 私は、意外さでハードルが下がっているのか、"Will You Still Love Me Tomorrow"、"I'd Rather Go Blind"が気に入りました。
 両曲は、対極のイメージがある曲ですが、本盤では、どちらもコンパクトな演奏が効果を発揮していて、これらの曲のカバーでは、しばしば間延びしたバラードになりがちなのをしっかり締めています。

 ルイ・オルテガみたいな、シンプルなリズム・ギターで始まる、"Will You Still Love Me Tomorrow"は、80年代のSir Douglas Quintet風の軽快なサウンドを聴かせてくれます。

 そして、サックスのコーラス、ソロが映えている、"I'd Rather Go Blind"が印象に残ります。
 重厚なサザン・ソウル・バラードというイメージがある曲ですが、味のあるウエストサイド・サウンドの佳曲に仕上がっています。
 メロをリードするベースが見事に雰囲気をつくって曲を支配しています。

 スローでは、"Guess Who"、"For Your Love"での優しいサックスがやはり良いです。
 ろうろうと歌うボーカルに寄りそうメロウ・サキソフォンが堪りません。

 ラストの"DWI Blues"だけがオリジナルではないかと思われ、ブルージーに締めてくれます。

 OBG Bandは、このあと同じコンセプトで続編を作っていて、最近作はシリーズ4作目になります。



C.C.Rider by Rocky "Shuffle" Hernandez & The OBG Band




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エースはダイヤモンド



サンアントニオ・コネクション

 今回は、サンアントニオ・ソウル・レジェンドの一人、Rudy Tee Gonzalesが、99年にリリースした、"The Rudy Tee Show"名義のアルバムを聴きました。

 Rudy Teeについては、当初、彼の音楽よりも先に、ファミリー・ネーム(ゴンサレス)の語尾が"s"である点が気になりました。
 リトル・ジョー・エルナンデス(Hernandez)、フラコ・ヒメネス(Jimenez)のように、語尾の表記が"z"で、読み方がサ行のスに近い発音であるのが、よく目にするケースです。


 
Reflections
The Rudy Tee Show

1. Matilda (G.Khoury, H.Thierry)
2. Just Because (L.Price)
3. Knock On Wood (Cropper, Stephen Lee, Eddie Floyd)
4. Walk Through This World (Seamons Savage)
5. Shake, Rattle & Roll (Charles Calhorn)
6. On Bended Knee (R.Guidry)
7. Gratefully
8. Never Let Me Go (Hold Me, Thrill Me) (H.Noble)
9. I'm Your Puppet (Oldham, Penn)
10. Pledging My Love (Washington, Rovy)
11. Just A Dream (J.Clanton, C.Matassa)
12. Alfie's Theme (Sonny Rollins) [inst]
13. When A Man Loves A Woman (Calvin Houston Lewis, Andrew James Wright)
14. Old Time Rock & Roll (George Jackson, Tom Jones V)
15. Together Again (Buck Owems)
16. All I Could Do Was Cry (B.Davis)

 Rudy Tee Gonzalesは、60年代に、Heuy P.MeauxのTear Drop Recordsから、"Rudy Tee Y Sus Reno Bops"名義で4枚のアルバムを出していた人で、これは当時、同レーベルでは、Sunny & The Sunlinersの6枚に次ぐリリース数でした。

 素直に考えれば、需要があったということでしょう。
 Sunny & The Sunliners同様、チカーノR&Bから出発して、次第にスパニッシュ・コミュニティ向けのレパートリーへとシフトしていった人でしたが、英語曲の代表曲は、本盤でも再演している、"All I Could Do Was Cry"です。

 本盤は、全編英語曲、それも古いリズム&ブルース、ロックンロール、メンフィス・ソウルなど、一定の世代のチカーノに、Oldies(Chicano Oldies、Lawrider Oldies)などと呼ばれ、愛され続けている音楽のカバー集になっています。
 (若干スワンプ・ポップ寄りに感じます。)

 本盤でのプロジェクト、"The Rudy Tee Show"の主なメンバーは、以下のとおりです。

Rudy Tee Gonzales : vocal
Rudy Palacios : guitar, vocal
Fernando Aguilar : bass, vocal
Tony Pena : bass
Manuel T. Gonzales : drums
Mike Baez : keyboads, vocal
Joe Posada : sax
Joey Perez : sax
Sandy Sanchez : accordion

 このうち、Rudy Palaciosは、Sunny & The Sunlinersのギターリストだった人です。

 Sunliners(Sunglowsではありません)の設立時のギターは、Oscar Villanuevaという人でしたが、録音時期不明のアルバム、"Live In Hollywoodの頃には、Rudy Palaciosに交代していたようです。
 このライヴでは、その他のメンツも含め、それまでのスタジオ盤とは大幅に違うため、ツアーだけのメンバーだった可能性もなくはないです。
 しかし、その後のSunliners(〜Sunliner Band)の活動は、この時のメンバーがベースになったようです。

 本盤のジャケ写で、中央のRudy Teeの左斜め上に配置されている、額が広く髪が後退気味の人物がRudy Palaciosです。
 この人は、近年ソロ・アルバムを出しているため、顔が分かるのでした。
 (ソロ作は、スペイン語曲中心ですが、英語曲では、"What's Your Name"、"You Send Me"などをやっています。)

 そして、写真の特定ができませんが、ベースのFelnando Aguilarは、Rudy Tee & Reno Bops時代からの古参メンバーです。

 本盤のリード・ボーカルは、もちろんRudy Teeですが、他にも3名がリードをとっています。
 以下のとおりです。 

Rudy Palacios (g) 3曲
8. Never Let Me Go (Hold Me, Thrill Me)
9. I'm Your Puppet 
11. Just A Dream

Fernado Aguilar (b) 1曲 
10. Pledging My Love

Mike Baez (key) 2曲
13. When A Man Loves A Woman
14. Old Time Rock & Roll

 Rudy Tee Gonzalesは、残りの9曲でリード・ボーカルをとっています。(トラック12のみインスト)



 さて、本盤のサウンドは、99年としては、かなり古い音のような印象を受けます。
 20年くらい前の音といわれても納得したでしよう。
 私は、シンセ・ブラスは好きではなく、本盤の編成は結構なことですが、では生音のホーン陣が効果的かというと、さほどでもない、と言わざるを得ません。
 そもそも、ホーン陣というほど分厚くない。

 名曲ぞろいですが、現在の技術でかっこよく録音したといった感じが希薄で、なおかつ、当然ながら、古いR&Bが漂わせていた時代の熱気、独特の空気感は望むべくもありません。
 少し残念なミックスのような気がします。
 いっそのこと、華やかで能天気なラテン曲があれば、少しは受ける印象も変わったかも知れません。

 ここで大胆に言ってしまいましょう。
 Rudy Teeは、決してへたなシンガーではありませんが、本盤から受ける印象は、あまりソウルフルとはいいがたいです。
 むしろ、最初からうまさで勝負していない他の3人のボーカリストの方が、素朴な味わいがあってよく感じました。
 これは、選曲にも関わりがあると思います。

 Rudy Teeは、Doo Wopが似合うと思うので、コーラス入りで50年代のDoo Wopをやってほしかったです。
 Doo Wop以外では、他のアルバムでやった、スペイン語版"Sometimes"(もちろん、Gene Thomas作の名作にして、Doug Sahmの愛唱歌)は良かったです。

 先に触れましたが、今回の盤の選曲は、テハーノというよりも、スワンプ・ポップ寄りのそれです。
 まあ、"Just Because"、"Pledging My Love"、"Just A Dream"なんかは、ガルフコースト共通の人気曲ですね。

 本盤だけを聴いていると、Rudy Teeは、スペイン語曲がベストと思ってしまいそうです。
 でも、ヴィンテージ期ののどの艶を再現できる、彼の個性を引きす選曲とプロデューサーに出会えれば、まだまだ、良いサンアントニオ・ソウルのアルバムが作れるシンガーだろうと私は思います。



All I Could Do Was Cry by Rudy Tee & The Reno Bops




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サンアントニオ・ソウル・グレイツ




月の砂漠を行く ジョン・ブル

 Wes McGheeという英国人ロッカー(?)をご存知でしょうか?
 もうかなりのベテランです。

 今回、03年作ではありますが、あまり見かけなかったアルバムが再発されたため、期待しつつも、あまりハードルを上げないようにしながら聴きました。


Mexico
Wes McGhee

1. Endless Road (Wes McGhee) 
2. Hey Hey (White Weston Boot) (Wes McGhee)
3. Johnny Gotta Run (Wes McGhee)
4. Someone to Rely On (Wes McGhee)
5. Heartache Avenue (Wes McGhee)
6. Tejano Moon (Wes McGhee)
7. Drink Your Dreams Away (Wes McGhee)
8. I Wish I Had a Dime (Wes McGhee) 
9. Gimme Some O'That (Wes McGhee)
10. Angel Dressed in Black (Wes McGhee)
11. Jesus Y Maria & the Border Guitars (Wes McGhee)
12. (Here On a) Saturday Night (Wes McGhee)
13. Moon On the Brazos (Wes McGhee)

 南部米国人になりたかった英国人といえば、私などはまず、クラプトンの名前が浮かびます。
 表明していない人の中にも、訊ねれば「私もそうだ」と言いいそうな人は少なくない気がします。
 特に、黒人ブルースマンに対する憧れが強い人はありそうですね。

 しかし、今回のWes McGhee先生は、テキサンになりたかったという人で、しかも思うだけでなく、70年代末から、音はもちろんのこと、ジャケもそれ風のアルバムを創り続けてきた、英国生まれの古参テキサス・オタなのでした。

 私が最初に手にしたのは、多分80年の2nd"Airmail"で、ジャケは口髭をたくわえたカウボーイ・ハットのおじさんというものでした。
 若いころの録音ですが、音はコースト・カントリーなどとは一線を画した、フォーキーかつボーダー・ソング風のカントリー・ロックでした。

 あるいは、85年の2枚組ライヴ盤、"Thanks For The Chicken"だったかも知れません。
 こちらはライヴということもあって、オースチン発アウトロー・カントリーの流行りを意識しつつも、R&B、ロックンロール、Tex-Mexなどなどを詰めこんだ、おもちゃ箱のような楽しいアルバムでした。
 もちろん、どちらもアナログLP盤の時代の話です。
 ボリュームがありますが、初めて聴くならこれがいいかも知れません。



 本盤は、そんなWes McGheeの、相も変わらない「継続はちから」的なアルバムです。
 Wes先生は、ギター系の楽器を得意としているユーティリティ・プレイヤーで、本盤でも、スパニッシュ・ギター、バホ・セスト、バリトン・ギター(6弦ベース?)などを演奏しているほか、アコーディオンまでやっています。

 バンドのサウンドとしては、フィドルは比較的多用しますが、スチール・ギターは少なめで、ホーンが入ることも多いため、そういうイメージでのカントリー臭は薄い方だと思います。

 ざっくり言えばフォーキーなんでしょうが、ボーダー・ソング的な異国情緒、そして無国籍なロマンティック路線(マカロニ・ウエスタン風?)サウンドも持ち技のひとつで、その雑種性はあまり他に例をみません。

 さて、本盤は英国のベドフォード録音を中心に、3曲のみテキサス録音(Spicewood, TX)を含む内容になっています。
 メンツの多くは古くからの仲間たちだと思いますが、嬉しいことにFred Krcがドラムスで4曲参加しています。

 Fred Krcは、Freddie "Steady" Krcのステージ・ネームを持つ、テキサスのシンガー、ドラマーです。
 Freddie Steady 5、Freddie Steady's Wild Countryという、二つのバンドのリーダーで、私は、英国60sビート好きのテキサンだという印象を持っています。
 テキサス好きの英国人と英国ビート・バンド好きのテキサンという取り合わせは愉快です。



 Fred Krcは、自らのバンドが軌道に乗る前、Wes McGheeのバンドでドラムを叩いていた人で、先に触れたライヴ盤などで彼のドラムが聴けます。
 この二人の関係は現在も続いていて、お互いのバンドに、しばしばゲスト参加(その多くは全面参加)しています。
 
 本盤でのFredは、テキサス録音のみに参加かと思いましたが、ばっちり英国録音にも参加していて、絆の深さを感じます。
 さすがに、Freddie Steady 5のメンバーは誘わなかったようです。

 そして、3曲のテキサス録音のうち、"Heartache Avenue"という曲にのみ、ベースでLarry Langeなる人物が参加しています。
 この人もまた、Fred Krcと同時期にWes McGheeのバンドに参加していた人で、私は、サンアントニオのSwamp Pop、Tex-Mex大好きバンド、Larry Lange & his Lonely Knightsのリーダーその人ではないかと、以前に当ブログに書いてはしゃいだことがありました。

 書いてから、ウラをとらないまま書いちゃったと思いましたが、同姓同名の別人という可能性も否定できないながら、担当楽器まで同じなのです。 
 (状況証拠ばかりですが、アルバムでFreddie Krcの曲もカバーしています。)
 Larry langeもまた、単独で参加したようです。
 Lonely Knightsのメンツが同道していれば確定なんですが…。
 サンアントニオとスパイスウッドって、どれくらい距離があるんでしょう?
 テキサスの広さって、日本人にはイメージがわかないです。



 さて、色々な味わいを楽しめるのがWesの音楽です。
 今回は、その一端を紹介するため、次の5曲について触れます。

1. Endless Road
2. Hey Hey (White Weston Boot)
4. Someone to Rely On 
6. Tejano Moon
12. (Here On a) Saturday Night 

 "Endless Road"は、オープニングの曲ということで、明るく爽やかな曲を持ってきています。
 カントリー・ロックなんでしょうが、歌声がフォーキーで、少しトーキング風な歌い回しが渋くて魅力的です。
 メロディックなベース、きれいなマンドリンの響き、Wes自身が弾くギターの爽やかなフレーズなど、高く豊かな音楽性を印象づける1曲目に仕上がっています。

 "Hey Hey (White Weston Boot)"は、コンフント・スタイルでやった楽しさ満点の曲で、Wesの弾くバホ・セストのリズムが耳に残ります。
 アコーディオン、フィドルの流麗な演奏が、パーティ・ソングらしい雰囲気を盛り上げる中、Wes得意のスパニッシュ・ギターのオブリ、短い間奏のソロが効いています。
 Wes流のTex-Mexです。

 "Someone to Rely On"は、スタックスを連想させるサウンドで、ベース主導のイントロからスタートします。
 そこへカットインしてくるクリアなトーンのギターが、まるでクロッパーみたいで好きです。

 "Tejano Moon"は、ロマンチックなバラードで、美しいメキシカン・トラッペットの響きの中、静かに進行します。
 私は、夜の砂漠を行く、そんなイメージで聴きました。
 巻き弦中心にトワンギーな音色を奏でる単弦メロ弾きが、Wesの真骨頂という感じです。

 "(Here On a) Saturday Night"は、アルバムも終盤になって、なんと疾走系のロックンロールを披露してきます。
 80sアメロク風のサウンドで、ボブ・シーガーばりに爽快に飛ばすWesは、それまでのイメージとずれがありますが、「この程度は若いころやり尽くしたけど、今だって簡単にできるんだぜ」…そんな風な言葉を脳内再生してしまいました。

 なにが(どの路線が)メインなのか、分かりづらい人ではあります。
 でも、カオスな趣味嗜好大好きな私としては、長く音楽活動を続けて、時折りは驚かせてほしい、そんな風に思うのでした。



Soy Extranjero by Wes McGhee


87年のロンドン公演、ドラムはFred Krc



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Wes McGhee
翼よ あれがテキサスの灯だ

Freddie Steady Krc
時間に忘れられたロックンロール

Larry Lange & his Lonely Knights
コンタクト落とした !
ハイウェイ90サウンドに酔いしれて
ようこそ、イヴァンジェリン・カフェへ
チカーノ魂の片りんを見ました



国境の南、月の西

 Los Texmaniacsの新作がリリースされました。
 今作は、09年にSmithonian / Folkwaysに移籍してリリースした"Border Y Bailes"の路線を継承したスタイルのアルバムになっています。 
 "Border Y Bailes"は、全編スペイン語の曲で構成したメキシカン・ルーツを探求したアルバムで、グラミーを獲得しました。

 Los Texmaniacsは、デビューから2作目までは、リズム&ブルース、カントリー、テックスメックスなど、ロック・サイドでいうルーツ・ミュージックのミクスチャー・バンドでした。
 
 ただ、当初から、バホ・セストとアコーディオンを核とする、コンフント・スタイルを頑固に貫いていたため、メキシコ伝統音楽の探求へとベクトルを絞ったのは、さほどサプライズではありませんでした。


Texas Towns & Tex-Mex Sounds
Los Texmaniacs

1. Ay te dejo en San Antonio (I Leave You in San Antonio)[cancion-polca] (Santiago Jimenez Sr.)
2. Amor bonito (Pretty Love) [cancion-polca](Lydia Mendoza)
3. El Paso / San Antonio Rose [western ballad] (Marty Robbins / Bob Wills)
4. Viva Seguin (Long Live Seguin)[polca] (Santiago Jimenez Sr.)
5. Si quieres verme llorar (If You Want to See Me Cry)[bolero] (Johnny Herrera)
6. Ana mia (My Ana) [cancion-polca] (Max Baca)
7. Los barandales del puente (The Railings of the Bridge) [cancion mexicana]
8. Atotonilco [Cancion-Polca] (inst.)
9. Waltz Across Texas [waltz-song] (Talmadge Tubb)
10. El buque de mas potencia (The Most Powerful Ship)
11. El aeroplanito (The Little Airplane) [redova] (Pedro Ayala)
12. Mojado sin licencia (Wetback without a License) [cancion-polca] (Santiago Jimenez Sr.)
13. Mil Besos (A Thousand Kisses) [bolero] (Emma E. Valdelamar)
14. La Lamparita (The Little Lamp) (Freddie Martinez)
15. The Eyes of Texas / Deep in the Heart of Texas (John Sinclair, June Hershey / Don Swander)
16. El Contrabando del Paso (El Paso Contraband) [corrido] (Gabriel Jara Franco)
17. Por una mujer casada (Because of a Married Woman) [cancion ranchera] (Felipe Valdes Leal)
18. Salvador [waltz]

 Los Texmaniacsのこれまでの歩みは、以下のとおりです。

04年 A Tex-Mex Groove (Maniax Records)
XX年 A Blue Cat Christmas (会社名の記載なし)
07年 About Time (Maniax Records)
09年 Border Y Bailes (Smithonian / Folkways)
12年 Live In Texas (Maniax Records)
12年 Texas Towns & Tex-Mex Sounds (Smithonian / Folkways)

 このうち、"A Blue Cat Christmas"は発売年の記載がなく、参加メンバーの顔触れから、とりあえず04年作と07年作の間に入れてみました。

 メンバーの変遷も記します。

第一期(04年 "A Tex-Mex Groove"の頃)
Max Baca : bajo sexto
Micheal Guerra : accordion
Speedy Vee : bass
…当初はトリオ編成でした。1stには、Flaco Jimenez(acc)、Augie Meyers(org)、Los Lobos(g)、Shown Sahm(g)、Ruben Ramos(vo)ら豪華なゲストが参加。(Micheal Guerraは、イーストLAのバンドへのゲスト参加が多い、アコのスタジオ・エース的な人)

(A Blue Cat Christmasのセッション)
第一期のメンツに加え、Danny Martinezという人がドラムスを叩いています。
Augie Meyers(Key)が参加。

第二期(07年 "About Time"の頃)
Max Baca : bajo sexto
David Farias : accordion
Speedy Vee : bass
Lorenzo Martinez : drums
…現在の中心メンバーである、MaxとDavidのコンピが揃いました。また、ドラムスが正式メンバーになりました。(ただし、間に合わなかったのか、ジャケ写はトリオのままです。)
David Hidalgo(g)、Bobby Flores(st.g)、Augie Meyers(org)他がゲスト参加。

第三期(09年 "Border Y Bailes"〜現在)
Max Baca : bajo sexto
David Farias :accordion
Oscar Garcia : bass
Lorenzo Martinez :drums
…ベースが交代して、現在のメンツになりました。
09年作には、Flaco Jimenez(acc)がゲスト参加。

 このあと、今年リリースしたライヴ盤、"Live In Texas"は、久々に1st、2ndと同じManiax Recordsから出されました。
 ただ、広く流通していないようで、本邦アマゾンはもちろん、アマゾンUSでもラインナップにさえ上がっていません。 

 そして、再びスミソニアン/フォークウェイズから、今回の最新作です。



 今作には、Ray Benson(vo)、Jason Roberts(fid. 共にAsleep At The Wheel)、Bobby Flores(fid)がゲスト参加しています。

 "Border Y Bailes"の音楽は、テハーノ、ラティーノの間ではどのように受け止められたのでしょうか。
 私は、メキシカン・ルーツを探求したアカデミックなアルバムだと思いましたが、スパニュッシュ・コミュニティでは、単純に懐かしの流行歌集、あるいは踊れる懐メロ集として聴いた人もいたと思います。

 古い良い曲を蒐集して、いい音で再現記録した資料的価値の側面、そして古びない踊れるパーティ・ソングの楽しさを若い世代に伝えた側面、両方正解だと思います。

 今回の新作は、その路線を継承したアルバムです。
 なおかつ、一部英語曲(カントリー、トラッド)を含んでいて、その意味では少しとっつきやすくなっています。
 サウンドとしては、Max Bacaのバホ・セストのリズム、ベース・ランでのメロディ弾きが特に耳に残ります。

 スペイン語曲では、フラコのお父さん、サンチャゴ・シニアの曲が複数入っていて、親しみがわきます。
 フラコは、親父さんの曲をいくつもカバーしているので、すぐに特定できなくとも、どこかで聴いたメロディがあるかも知れません。

 アルバム1曲目の"Ay te dejo en San Antonio"は、フラコがソロ・アルバムのタイトル曲にしている曲で、本盤のテーマともいうべき曲だと思います。
 邦題「サンアントニオをあとにして」です。
 Los Lobosも、あの「オオカミのアルバム」の前に、最初のミニ・アルバムのラストでやっていました。

 このあたりの曲が、本盤では、Cancion-Polcaと注記されているんですが、私の認識ではランチェラでした。
 Cancion Polca(Polka)は、歌ものポルカくらいの意味でしょう。
 全く無知なんですが、ポルカって、基本はインストなんですかね。

 "Viva Seguin"も、フラコを聴いていればお馴染みの曲ですね。
 この曲は、単にPolcaと注記されています。

 他にも、ボレロ、コリードなんて注記が出てきます。
 以前、ボレロがバラードのスペイン表記だと思っていたと書きましたが、どうやらコリードがそれに当たるらしいです。



 私は、今作もアカデミックなアルバムだと思っていますが、シンプルに楽しい流行歌集であることも確かです。
 どうしても英語曲に触れてしまいますが、Ray Benson、Bobby Floresが参加した"El Paso / San Antonio Rose"は、なかなかの聴きものです。

 Marty Robbins得意のカウボーイ・ソング、"El Paso"は、美しいメキシコ娘に恋をした若者が、恋敵を手にかけてしまい、町を去ろうとしながらも、恋する娘への想いが断ち切れず、追手の集結する町へときびすを返そうとする物語曲(サーガ)です。
 この異国情緒漂う名曲に続き、これまた名曲中の名曲、Bob Willsの"San Antonio Rose"が歌われます。
 こちらも、アラモとサンアントニオの美しい少女の想い出を懐かしむ歌です。
 このメドレーはいいです。

 Jason Robertsがフィドルを弾く、アーネスト・タブの"Waltz Across Texas"もまた、隠れた(?)名曲でしょう。
 タブは、もちろん"Walking Floor Over You"だけじゃないんです。

 そして、最後まで英語曲で申し訳ないですが、"The Eyes of Texas / Deep in the Heart of Texas"は、問答無用で郷愁を誘う曲です。
 "The Eyes of Texas"は、日本ではなぜか「線路は続くよどこまでも」の歌詞で知られている曲です。
 これは、鼻歌がでてきちゃいます。
 「テキサスの心に深く」とのメドレーでフィドルを弾くのは、Bobby Floresです。

 正直いって、私は1stや2ndのようなカオスなアルバムが好きです。

 グラミー・アワード・ウイナーになっても、この路線ばかりというのはどうでしょう。
 初心に戻って、思い切ってはっちゃけてくれたら嬉しいのですが…。




Si quieres verme llorar by Los Texmaniacs


これは、ボレロだそうです。



関係記事はこちら

Los Texmaniacs
ごきげんメックス・テックス
テキサス熱中時代
テックス・マニアのうたげ
フェリース・ナビダ
オーガストとマクシミリアン

Plus One
テキサンの心に深く



ネーデルラントのブギウギ男

 今回は、オランダのシンガー、ブギ・ピアニストをご紹介します。
 前回の記事つながりというわけでもないのですが、今年出た最新作がファッツ・ドミノの作品集なのです。

 この人は、本名をEric-Jan Overbeekというらしく、なにか拍子抜けしました。
 これじゃ、英語圏の名前と雰囲気がさほど変わらないです。
 オランダ語って、もっとドイツっぽくなかったですか?


Tribute To Fats Domino
Mr. Boogie Woogie
 

1. I'm Walking
2. The Fat Man
3. Blue Monday
4. I'm Ready
5. I Want to Walk You Home
6. Be My Guest
7. I'm In Love Again
8. Let the Four Winds Blow
9. I Hear You Knocking
10. Shake, Rattle and Roll
11. Blueberry Hill
12. Jambalaya
13. Poor Me
14. I'm Gonna Be a Wheel Someday
15. Red Sails in the Sunset
16. Whole Lotta Loving
17. Walking to New Orleans
18. Hello Josephine
19. Please Don't Leave Me

 オーダーする前に(別のアルバムの曲を)試聴していたのですが、嵐のような速弾き系をイメージしていました。
 しかし、ファッツ・ドミノでは、イメージ的にどうしてもゆったり系にならざる得ないですよね。

 Mr. Boogie Woogieは、もう少し若いころ、本名でもアルバムを出していて、ピート・ジョンソンのような感じだと、私は思っていました。
 本盤でのプレイは、他のファッツ・フォロワーのそれと比較すると、さすがにファストです。

 本盤の参加メンバーは以下のとおりです。

Mr.Boogie Woogie (Eric-Jan Overbeek): piano, vocals
Marcel Schuurman: guitar (panned left)
Chris “C” Clemens: additional guitar (panned right)
Robbie Andreas Carree: drums
Harm van Sleen: bass
Koen Schouten: baritone sax
Bart van Ballegooijen: tenor sax
Joran van Liempt: tenor sax
Arnoud de Graaff: tenor sax
Harm van Oss: trumpet
Jasper Aubel: trumpet

 本盤は、11年9月にオランダのカトワイク(Katwijk)のスタジオで、本人のプロデュースにより録音されました。

 のちのMr.Boogie Woogieこと、Eric少年は、8歳からピアノを始め、13歳の頃にはそれまで習ったすべてのスケールや練習曲に不満を感じていたそうです。

 そのころ、ブルースに関心を持ち始めていた彼は、次第にギターでブルースを弾くようになっていましたが、ある日、ラジオから流れてきた曲に衝撃を受けます。

 それは、Fats Dominoの"Swanee River Hop"という曲で、彼の覚醒は81年の出来事だそうです。
 以来、再びピアノの世界へと戻ったそうです。
 古いアメリカのリズム&ブルースの魔法にかかったわけですね。

 "Swanee River Hop"は、いつもお世話になっている、英AceのImperial Singlesシリーズを参照すると、Vol.2に収録されていました。

 まさにロックンロールの最盛期の曲のひとつです。
 私は、この曲名からは、メロもサビのフレーズも浮かんできませんでした。
 あまり有名な曲ではないですね。
 そういえば、そんな発言をしているわりには、本盤で彼は"Swanee River Hop"をやっていません。

 そして、彼のプレイは、一見ニューオリンズ風には聴こえず、やはりもっと古いスタイルのブギヴギを連想させます。
 19曲もやっていますが、ゆったりした三連曲よりも、力強くファストな曲の方が彼の本領のような気がします。

 スローな曲、例えば"I Hear You Knocking"や"Walking to New Orleans"のような曲も悪くはないですが、速い曲の印象が勝っています。

 それでも、特徴的なイントロやリフを持つ、いかにもニューオリンズR&B風の曲は、きちんとそれ風に演奏していて、それはそれで胸が高鳴ります。

 "The Fat Man"などがその代表例で、私は、この曲に思い入れがあるため(始めて買ったファッツのアルバムの収録曲)嬉しさもひとしおです。 
 (歌声に、もう少しリッチさが出ればなおいいです。)

 繰り返し聴くうち、Mr.Boogie Woogieスタイルのセカンドライン・ビートが耳に合うようになり、彼流のFats Domino Songもいいなあ、今はそう思っています。

 この前の休日は、読書(kobo Touchを買ってしまいました。)のBGMとして流して聴いていました。

 最後に、今回も、収録曲を英AceのImperial Singlesシリーズに沿って並び替えてみます。

Fats Domino
The Early Imperial Singles 1950-1952

2. The Fat Man

The Imperial Singles Vol.2 1953-1956
13. Poor Me
19. Please Don't Leave Me

The Imperial Singles Vol.3 1956-1958
1. I'm Walking
3. Blue Monday
7. I'm In Love Again
11. Blueberry Hill
16. Whole Lotta Loving

The Imperial Singles Vol.4 1959-1961
4. I'm Ready
5. I Want to Walk You Home
6. Be My Guest
8. Let the Four Winds Blow
14. I'm Gonna Be a Wheel Someday
17. Walking to New Orleans
18. Hello Josephine (?…My Girl Josephine)

The Imperial Singles Vol.5 1962-1964
9. I Hear You Knocking
12. Jambalaya

(?)
10. Shake, Rattle and Roll
15. Red Sails in the Sunset

 50年代後期の作品が多いですね。
 私は、やはりVol.1〜Vol.2のあたりの曲が一番好きです。



Mr. Boogie Woogie (2011)








リル・ファッツ・オー・ゴールド

 スワンプ・ポップの異世代同居バンド、Lil' Band O' Goldの最新作を聴きました。
 どこかの文章で、「三世代のメンバーからなる」みたいな表現を見た覚えがあります。

 本バンドは、70代のWarren Storm(dr)、Dickie Randry(sax)から、リーダー格の40代、C.C.Adcock(gt)まで、三世代は大げさでも、親子くらいの年齢差があるメンツで構成されているバンドです。


Plays Fats
Lil' Band O' Gold

1. Blue Monday (Warren Storm) 
2. It Keeps Raining (Robert Plant)
3. Let’s Talk It Over (Don’t Lie To Me) (C.C. Adcock) 
4. I'm Ready (Lucinda Williams with Ani DiFranco, Kenny Bill Stinson)
5. I'm In Love Again (David Egan) 
6. Going Home (Warren Storm) 
7. Ain't That A Shame (Jimmy Barnes) 
8. What A Price (Grand Prix) (Steve Riley)
9. 4 Winds Blow (Warren Storm)  
10. Poor Me (C.C. Adcock) 
11. I'm Walkin' (Tim Rogers)
12. Rosemary (Warren Storm)
13. I've Been Around (Robert Plant)

 曲目のあとの( )内は、リード・ボーカルです。
 本盤でのメンツは以下のような感じだと思います。

Warren Storm : drums, vocals
Steve Riley : accordion, vocals
C.C.Adcock : guitar, vocals
David Egan : piano, vocals
Dave Ranson : bass
Richard Comeaux : pedal steel guitar
Dickie Landry : sax
Pat Breaux : sax
Kenny Bill Stinson : keyboad(若しかするとguitarも)
(もう一人、Huston Dereksという人の名前がリーフレットの最終ページに記されているのですが、誰のことなのか分かりませんでした。)

 このバンドは、スワンプ・ポップのオールスターというには、若干むりがあるかも知れません。
 もともとスワンプ・ポップはニッチなサブ・ジャンルです。
 ジャンルを代表するアーティストでも、一般的な音楽ファンには、限りなく無名でしよう。

 この中では、ドラムスのWarren Stormが、スワンプ・ポップ・レジェンドと呼ばれている人です。
 若いころは、J.D. Millerのもと、セッション・ドラマーとして、エクセロのスワンプ・ブルース・マンのセッションに多数参加しています。
 ソロ・シンガーとしては、"Prisoner's Song"(58)ほかのヒットがあり、これまで、Lil' Band O' Goldのアルバムでは、最も多くリード・ボーカルを務めています。

 David Eganは、シンガー、ソングライター、ピアニストで、ソロ作もありますが、他のシンガーへの曲提供で、ライターとしての方が評価が高い人かも知れません。
 Egan作の"First You Cry"(1stに本人バージョン収録)は、パーシー・スレッジのカバーがあるほか、私はリトル・バスターのバージョンが好きです。

 Steve Rileyは、スワンプ・ポップというより、モダンなケイジャン・バンドのアコーディオニストです。
 そして、C.C.Adcockは、スワンプ・ロッカーとベタに言ってしまいましょう。


2ndのころのスナップだと思います。


 さらに本盤には、ロバート・プラントほか数人のゲストが参加しています。
 以下のとおりです。

Robert Plant
Lucinda Williams
Ani DiFlanco (誰ですか?)
Jimmy Barnes (同上)
Tim Rogers

 スワンプ・ポップのスーパー・グループと評されるこのバンドのことは、当ブログにコメントをいただいた二見さんからご教示いただいて知って以来、過去作を愛聴していました。
 バンドは、これまで2枚のアルバムをリリースしていて、本盤は2年ぶり、通算3枚目になります。
 以下のとおりです。

00年 The Lil' Band O' Gold (Shanachie Records)
10年 The Promised Land (Room 609)
12年 Plays Fats (Dust Devil Music)

 1stのあと、2ndまで10年のブランクがありますが、2ndの録音は06年で、4年寝かされていたことになります。
 そして、3枚とも、すべて別の会社からリリースされていますね。
 当初は1回限りの企画ものだったのか、それとも需要がなかったのか(だとすれば寂しすぎる)

 本盤のDust Devil Musicは、オーストラリアの会社のようです。
 2ndのリリース後、オーストラリアやニュージーランドで公演したようなので、その関係でしょうか。
 
 また、ゲストの一人、Tim Rogersというのは、You Am Iというオーストラリア(!)のロック・バンドのメンバーです。
 You Am Iは、音楽的には私の関心外のバンドですが、一度だけ聴くきっかけがありました。
 このバンドには、なんと"Doug Sahm"という題名の自作曲があるのでした。
 この件は、当ブログで過去に触れました。

 さて、本盤は前作同様、ルイジアナのラファイエ(ット)で録音されました。
 プロデュースは、C.C.Adcockが仕切っています。
 前作でC.C.と共同制作した、Tarka Cordellは不参加です。
 (ちなみに、1stはニューオリンズ録音で、C.C.とLil' Band O' Goldの共同制作名義でした。また、Tarka Cordellは、C.C.の2枚のソロ作を制作している人です。)

 1stは、David EganやC.C.のオリジナルを混じえながら、ニューヨーク・ディープから、ニユーオリンズR&B、スワンプ・ポップ、ケイジャンなどを披露したアルバムでした。
 対して、2ndは、引き続き渋いカバー曲をやりつつも、オリジナル曲の比率を上げたアルバムになっていました。
 そして、今作は、ファッツ・ドミノのカバー集です。
 これが、ジャズなら、"Plays Fats"とは、ファッツ・ウォーラーを連想していたでしょう。

 1stと2ndでは、音の印象がかなり違いました。
 2ndは、各パートがそれぞれ個性をうまく出しつつも、出しゃばりすぎないスタンスが気持ち良いサウンドでした。
 大好きなアルバムです。
 一方、1stは、C.C.が大先輩に遠慮したのか、オーバー・プロデュースの真逆という感じで、めいめいが自由にやりましたという印象を受ける緩いガレージなサウンドでした。(と感じました。)

 対して、今作はどうでしょう。
 プロデュースは、C.C.単独です。
 ただ、今作は、多彩なゲストが参加していることもあり、彼らの意見も取り入れながらやったのでしょう。
 1st、2ndとも肌触りの違う印象を持ちました。
 私の好みでは、ロック的なフェイクで味付けしたものより、オリジナルのイメージに近いもの、あるいはデキシー調など別の意味で古いスタイルに仕上げた作品が気に入りました。

 頑固に原曲に近いスタイルでやった、Warren Stormの担当曲、そして独自のアレンジながらセピアな雰囲気を出すことに成功しているDavid Eganの"I'm In Love Again"の仕上がりがとりわけ好きです。
 Warrenの"4 Winds Blow"は、ウキウキ軽快なリズムと、いい味を出しているペダル・スチールの使い方が私にはツボでした。
 そして、Rose Mary"は、誰がやっても悪くなりようがない名作ですね。
 へたにいじるべからずです。

 Steve Rileyは、わが道を行く感じのサウンドで、クリオールなまりっぽい歌いくちがいいです。
 クリフトン・シェニエを連想しました。
 やはりケイジャンとザディコは同じコインの両面ですね。

 C.C.は、当初いまいちかなと思いましたが、"Poor Me"がよいです。
 ここでの仕上げは、ジョン・レノンのアルバム、"Rock and Roll"を連想させる、スペクターっぽいエコーが胸に切なく迫ります。

 ゲストの担当曲では、Jimmy Barnesの、Fatsの歌い方や演奏のギミックをデフォルメした仕上げが痛快でした。
 Tim Rogersも頑張っていて悪くないです。
 まあ、何と言っても原曲が名作ぞろいですからね。

 Robert Plantは、彼の好みの牧歌的スタイルと、得意の艶っぽいウェットなボーカルが決まれば最高ですね。
 2曲ともよいですが、あえて私の好みで1曲あげるなら、ラストの"I've Been Around"がよりセクシーでお奨めです。

 最後に、本盤の収録曲を、英AceのCD、"Fats Domino Imperial Singles"シリーズ(Vol.1〜5)に当てはめて締めたいと思います。 

Fats Domino
The Early Imperial Singles 1950-1952

6. Going Home (Warren Storm)
3. Let's Talk It Over (Don't Lie 2 Me) (C.C.Adcock)

The Imperial Singles Vol.2 1953-1956
7. Ain't That A Shame (Jimmy Barnes)
10. Poor Me (C.C.Adcock)
12. Rosemary (Warren Storm)

The Imperial Singles Vol.3 1956-1958
1. Blue Monday (Warren Storm)
5. I'm In Love Again (David Egan)
11. I'm Walkin (Tim Rogers)

The Imperial Singles Vol.4 1959-1961
2. It Keeps Raining  (Robert Plant)
4. I'm Ready  (Lucinda Williams with Ani Di-franco)
8. What A Price (Grand Prix) (Steve Riley)
9. 4 Winds Blow (Warren Storm)
13. I've Been Around (Robert Plant)

 本盤は、繰り返し聴きこむほど、味わい深さを感じて、さらに好きになっていくアルバムだと思います。



It Keeps Rainin' by Robert Plant & Lil' Band O' Gold




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テハーノ・サウンド・ショーケース

 今回は、テハーノ・ミュージックの大物、Ruben Ramosが兄貴のAlfonso Ramosと組んで作ったアルバムの内の1枚を聴きました。

 彼ら二人の共同名義のアルバムは、両名の名前のあとに"The Texas Revolution"(オルケスタの名前)と名乗っているケースが多いですが、本盤は、単に"Ruben Y Alfonso"(Ruben & Alfonso)名義となっています。 


Medley of 34 Golden Hits
Ruben Y Alfonso Ramos

Exitos De Rancheras 
1. Un Cielo
2. Flecha Envenenada
3. Mala Cara
Charro Medley
4. Palabra De Hombre
5. La Mal Pagadora
6. Se Me Hizo Facil
7. Mi Unico Camino
8. Volver Volver
Rock & Roll Medley
9. Mr. Pitiful
10. Mustang Sally
11. Farther On Up The Road
12. Shake Rattle & Roll
Boleros De Oro
13. Amor Mio
14. Si Dios Me Quita La Vida
15. Amor De La Calle
16. Parece Que Fue Ayer
17. Si Te Vas De Mi
Rancheras Del Pasado
18. Un Nuevo Contrato
19. Con El Agua Hasta El Cuello
20. Ojitos Sonadores
Oldies Medley
21. Tears On My Pillow
22. When A Man Loves A Woman
23. What's Your Name
24. Silhouettes
25. In The Still Of The Night,
26. Stand By Me
27. My Girl
Boleros Romanticos
28. Gema
29. Sabra Dios
30. Dios No Lo Quiera
31. Estoy Perdido
32. La Barca
Fats Domino Special
33. Blue Monday
34. Blueberry Hill

 唐突ですが、英語では、なぜ兄弟姉妹を明確に表現しないのでしょうか?
 会話でブラザー、シスターと言うとき、兄か弟か、姉か妹か、彼らは気にならないのでしょうか。

 年齢が離れていて、かつ本人が目の前にいれば、見た目でわかるかも知れません。
 でも、そうでない場合、話題になっている人物が、ジョンの兄貴なのか弟なのか、ジュリアの姉なのか妹なのか、私は気になります。

 父と子と精霊の前では、家族かどうかさえ判別できればよく、長幼の別は問題ではないということでしょうか。
 まあ、お兄ちゃん、お姉ちゃんとは呼ばず、名前で呼ぶから問題ないんでしょうね。

 これは、日本人だから気になるのでしょうか。
 家長制は、もはや遥か昔の歴史的制度ですが、なごりが日本人のDNAに埋め込まれているのかも知れません。
 例えば、長男、次男、長女、次女の表記が住民票から消えたのは、さほど前のことではありません。
 これは、正嫡の別を表しないための改正だったはずで、今回の話題とは別の話でしょう。
 住民票の続柄の表記が「子」となっていることに、なんとなく不足感を感じるのは古い人間なのかな?

 すみません、脱線しました。
 何が言いたいかといいますと、アルフォンソ・ラモスはルーベン・ラモスの兄貴だと思うのですが、はっきりと"older brother"、"younger brother"などの表記が見つからないのです。
 どうも文化的ないしは宗教的なところに理由があるのか、などと無駄に考えてしまったのでした。

 ジャケット写真の左が兄貴のアルフォンソ(sax, vocal)、右が弟のルーベン(vocal)だと思います。
 最近のルーベンの写真を見ると、本盤写真よりもずっと年齢を重ねているように感じられ、かつ黒いサングラスをかけていることが多いです。
 本CDは、04年リリースと表記されていますが、オリジナルはもっと以前なのだと思います。

 もともとは、アルフォンソのバンドだった"Mexican Revolution"を兄弟でやるようになり、その後、名称を"Texas Revolution"と変更して、現在はルーベンのバンドになった…と理解しているのですが、間違っていたらご指摘ください。




 さて、全34曲入りとすごいボリュームのように感じられますが、消化不良などなく、流れるように楽しく聴けます。
 7分から8分程度のメドレー曲が多く入っていて、曲目表の見た目ほどの圧迫感はありません。
 実際には、8セットの曲に分かれている感じです。

 スペイン語によるラテン曲は、伝統にのっとりつつもモダンなサウンドで、とても耳に心地よく聴きやすいです。
 そして、英語曲のメドレーが最高のアクセントになっていて、胸が躍る展開です。

 ところで、メドレー群のうち、ランチェラは何となくわかるのですが、ボレロとチャロ(もしかしてチャオ?)がよく分かりません。
 私は、ボレロは英語のバラードのスペイン語表記かと思っていた時期がありました。
 今は、よく分からないとしか言えません。

 さらに、チャロ(Charro)なんていうのは、いったい何なんでしょう?
 メキシコの伝統音楽(文化?)のひとつの形態なんでしょうね。

 その点、英語曲のメドレーは分かりやすく、ほっとします。
 ただ、ロックンロール・メドレーとなっているのが、メンフィス・ソウルやブルースだったりするのが不思議ではありますが…。

 オールディーズ・メドレーとなっているものの中心は、いわゆるドゥ・ワップです。
 このあたりは、アメグラ的なオールディーズかと思いがちですが、少し違って、チカーノ文化では、この手の古いジャンプ、リズム&ブルース(とりわけドゥ・ワップ)をオールディーズ(チカーノ・オールディーズ)と呼ぶらしく、古くから長く愛されているらしいです。

 テハーノ・オルケスタの代表的存在、Sunny & Sunlinersが、その初期に、Little Anthony & Imperialsをお手本の一つとしていたことは、いくつかの文章に記されています。
 本盤のオールディーズ・メドレーの歌いだしが、Imperialsの"Tears On My Pillowであるのは偶然ではないでしょう。
 Imperialsは、チカーノ、テハーノに愛され続けているグループなのだと思います。

 このメドレーの選曲は、時期によって多少変化があるようで、"Just Because"や"You Send Me"を組み入れているアルバムもあります。

 このセットリストをライヴでやったなら、間違いなく楽しめるステージになると思います。
 ラストにFats Dominoがくるのも意表を突かれます。

 ソウル・レビューならぬ、テハーノ・レビューの最高の1枚だと思いました。




Oldies Medley by Ruben Y Alfonso


Tears On My Pillow 〜
〜 When a Man loves a Woman 
〜 What's Your Name 
〜 Silhouette 
〜 In The Still Of The Night 
〜 Stand By Me 
〜 My Girl






   
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