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ヒッチハイカーズ・ブルース

 私は、コンテンポラリーなブルースを聴く機会があまりありません。
 嫌いというわけではありませんが、積極的に聴くこともないです。 
 まあ、それがヒット曲なら、広く聴かれている理由があるとは思いますし、聴けば気に入るかも知れません。
 でもどうせ聴くなら、流行りものとかとは関係なく、ルーツをがっつり感じる古いスタイルが好きです。

 そんな私が、今回の主人公、Mighty Mo Rodgersを聴くことになったのは、どういう巡りあわせでしょう。
 その音楽性は、初めて聴いた私の耳には、とてもスムースでソフィスティケイトされたものだと感じました。

 しかし、彼は、必ずしも安定したメジャーとは言い切れず、事実近年はインディーズで活動しているようです。
 とはいえ、本盤のコンセプトが私の興味を惹くことがなければ、出会うことはなかったでしょう。  

 本盤は、アメ車の象徴、キャデラックをとばし、ウエストコーストからイーストコーストまで、ルート66の道程をめぐる旅を米国音楽の探訪になぞらえる内容になっています。
 (…と私は解釈して関心を惹かれ、入手しました。)

 本盤は11年にリリースされた、Mighty Mo Rodgersの最新作です。


Cadillac Jack
Mighty Mo Rodgers

1. Cadillac Jack Says "Bring the Fishtail Back" (Mighty Mo Rodgers)
2. Black Coffee and Cigarettes (Mighty Mo Rodgers)
3. Boogie To My Baby (Mighty Mo Rodgers)
4. Cadillac Ranch (American Stonehenge) (Mighty Mo Rodgers)
5. Motor City Blues (Mighty Mo Rodgers)
6. See America First (Mighty Mo Rodgers)
7. Tell Me Why (Mighty Mo Rodgers)
8. The Freddy Fender Song (Mighty Mo Rodgers)
9. God In My Car (Mighty Mo Rodgers)
10. Hitchhiker's Blues (Mighty Mo Rodgers)
11. My Blues, My Car and My Woman (Mighty Mo Rodgers)
12. West Coast Blues (Mighty Mo Rodgers)
13. Slow Dance With Me (Mighty Mo Rodgers)
14. Lights of America (Jan Eglen, Mighty Mo Rodgers)

 Mighty Mo Rodgersは、魅力的な声を持つシンガー、キーボーディストで、そのバンドの演奏はとてもソウルフルです。

 写真から感じる風貌は貫禄たっぷりで、経験値の高いベテランのブラック・アーティストだろうと思いました。
 しかし仮に、何の予備知識もなしにその歌声を聴いたなら、「もしかするとソウルフルな白人シンガーという可能性もあるかな」とふと思ったかも知れません。
 なぜなら、ブルージーでソウルフルですが、ロック以降の音楽だと感じるからです。

 彼が黒人であることを知ったうえで連想したのは、ロバート・クレイでした。
 そう思って聴きかえすと、ファンキーでメロウなビートに共通性を感じます。

 本盤の収録曲はすべて自作で、その音楽はブルージーです。
 ただ、いわゆるブルースマンとは少し違った肌触りを感じました。
 マイナー・ブルース調の曲が多くあり、それが売りだと思いますし、間奏のソロはブルースそのものだったりしますが、多くはブルース形式ではなく、ブルース・バラードとでも呼びたい音楽です。



 本盤の参加メンバーは以下のとおりです。

Mighty Mo Rodgers : vocals, keyboad
Burleigh Drummond : drums, percussion
Will MacGregor : bass on track1 to 11,13
Kevin Longden : guitar on track1 to 11,13
Dick Aven : saxophone, flute on track9,10,11,12
John Davis : dobro on track11
Mary Harris : strings on track2, keyboad on track6
Steve Guillory : guitar on track12,14
Albie Burks : bass on track12,14
Jan Edlen : oercussion on track14
Jim Gibson : guitar on track12
Nick Senelli : accordion on track8
Darryl Dunmore : harp on track5
Tollak Ollestad : harp on track3

 ソウルフルな歌声が素晴らしいです。

 特に、熱を帯びた声がハスキーになるところが魅力的で、サザン・ソウルのシンガーを連想せずにはいられません。
 ロバート・クレイのほかでは、例えば、リトル・ミルトンとか、ブルーズン・ソウル系の人を思い出します。

 本盤は、素晴らしくブルージーでソウルフルなバラードが次々に展開していくアルバムです。
 そんな中、"Motor City Blues"は、ブルース・ハープ入りで、雰囲気たっぷりに進行する、本盤では珍しくブルースそのものといった曲です。
 ただ白人の演奏なら、ブルース・ロックと呼んだかも知れません。
 (どうも、みかけに囚われがちです。)

 本盤は優れた曲が多く収録されていますが、いかんせん同じような曲が多いという印象を持ちます。
 そんな中、はっきりと言える聴きものは次の2曲です。

7. Tell Me Why
8. The Freddy Fender Song

 "Tell Me Why"は、鍵盤奏者であるMighty Mo Rodgersらしく、Jerry Lee Lewisを引き合いに、あのころのロックンロールの楽しさをハネるピアノに乗せて歌い飛ばす曲で、歌詞がいまいち理解できませんが、とりあえず「訳けを聞かせて」と繰り返しあおり続けます。
 曲中では、Chuck Berry、Fats Domino、Roy Orbison、Little Richard、John Lee Hooker、B. B. Kingの名前が次々と織り込まれています。

 "The Freddy Fender Song"は、クルージング中、ラジオから流れてきたFreddy Fenderの歌を聴いた主人公が、かつて人生のひと時を共に過ごした女性の想い出を振り返る曲です。
 曲中では、Freddyの代表曲、"Before The Next Teardrop Fall"と"You'll Lose A Good Thing"のタイトルが、歌詞の中にもじって盛り込まれています。
 曲調は、アコーディオンこそ控えめに入りますが、予期していたFreddyっぽさはさほどでもありません。
 最初は少し残念なアレンジかと思いましたが、何度も聴くうちに、イントロだけでぐっとくるお気に入り曲になりました。
 今はかなり良いバラードだと思っています。

 この人は、モダン・ブルース・ファンには聴かれている人なんでしょうか。
 もともとのリスナー層が知りたいものです。

 いずれにしても、ブルースからロックンロールへの道筋をたどる旅の試みは抗いがたい魅力に溢れていて、この人には、更に深く、オール・アメリカン・ミュージックの探求者となってほしいと感じました。




Cadillac Jack by Mighty Mo Rodgers





メープル・シロップ テキサス風味

 しかし、このバンド名でカナダって、どういうことなんでしょう。
 最初は、普通にテキサスのバンドだと思ってチョイスしました。

 今回は、カナダのテキサス音楽好き(?)のバンドをご紹介します。


Southern Exposure
The Texicanos

1. If You Were Not Born in Texas (Roger Arndt, Susan Hillman)
2. Dinero (Augie Meyers)
3. It Feels Like Forever (Lowry Olafson)
4. Mexico...Whatcha Doin' To Me (Roger Arndt, Susan Hillman)
5. Feelin' Kinda Lonely Tonight (Jamie O'Hara)
6. Heartaches Over Ice (Roger Arndt, Susan Hillman)
7. Do You Wanna Boogie Woogie (Roger Arndt)
8. Hestia's Waltz (Roger Arndt, Susan Hillman)
9. Rancho Grande (trad. arr. Roger Arndt)
10. Querencia (Roger Arndt)
11. Dark Days (Roger Arndt)
12. Ghost Riders in the Sky (Stan Jomes)

 「テキシカーノ」って、何か造語ですかね。
 これで、テキサン・カナディアン(そんな概念があるとして)とは解せないと思うんですが…。

 ウェブからの限られた情報によれば、本盤の主役たちは、カナダのブリティッシュ・コロンビア州あたりを本拠とするバンドではないかと思います。

 本盤は、同州のボーエン・アイランドで録音され、05年にリリースされました。

 本作に参加したメンバーは、以下のとおりです。

Roger Arndt : lead vocals, guitars, fiddle, banjo, accordion, bajo sexto
Ruby Red : bass, lead vocal on track8,12
Richard Baker : guitars, bass on track12
Kendra Arndt : lead vocal on track6
Alex Alegria : vocals on track2,9, spanish translations
Ron Thompson : lead guitar on track7,9, 6-string banjo on track8
Michael Creber : piano on track7
Bruce Hamilton : peddle steel on track1,6
Moritz Behm : ghost fiddle on track8

 このうち、リード・ボーカルで、多くの楽器を持ち替えて演奏するバンド・リーダー、Roger Arndtは、カナダ生まれながら、サンアントニオでの居住経験がある人で、なんとベトナム戦争の退役軍人らしい(?)です。
 生年がわかりませんが、それなりの年齢ですね。
 このバンドが、テキサスの音楽を愛好するのは、この人によるんでしょう。

 しかし、ベトナム戦争のとき兵役を回避するため、アメリカからカナダへ渡った若者がいたという話がありますが、逆に派兵しなかったカナダから、わざわざ米国軍に従軍し、さらに遠い異国で戦ったというのは、サンアントニオにいた時期が、彼の人生によほど大きな影響を与えたのでしょうか。

 このRogerと、英国生まれの女性ベーシスト、Ruby RedことSusan Hillmanがバンドの中心メンバーではないかと思われます。

 あと、ギターのRichard Bakerは、カナダの有名な(私は知りませんが…)Doug and the Slugsというロック・バンド出身らしいです。



 本盤は、1曲目から、ごきげんなボブ・ウィルズ・スタイルの正調ウエスタン・スイングで始まります。
 この曲の印象はかなり強いです。
 ウエスタン・スイング好きの私は、一発で気に入りました。

 そして、続いて演奏されるのは、Augie Meyersの作品、"Dinero"です。
 "Money"を意味するスペイン語です。
 歌詞の内容は分かりませんが、陽気なパーティ・チューンです。
 この曲のクレジットには、"A tribute to the Texas Tornados"と添え書きがされています。

 この曲のAugie Meyers自身のバージョンは、90年のTexas Tornadosの1stで初めて発表されました。
 その後、96年のAugieのソロ・アルバム、"Alive And Well At Lake Taco"で再演されています。
 (Texas Tornadosの2枚のライヴ盤でも聴くことができます。)

 この最初の2曲の流れこそ、私がこのアルバムに惹きこまれた理由です。
 アコースティック・スイングっぽいアルバムといえるかも知れません。

 哀愁漂うフォーキーな曲から、正調ホンキートンク・カントリーまでが展開するなか、アルバムのアクセントとなっているのは、7曲目の"Do You Wanna Boogie Woogie"です。

 これは、ウキウキ感満点に快調に飛ばすカントリー・ブギで、モダンさを醸し出すローリン・ピアノが最高にはまっています。
 ジャジーなトーンでスイングするエレキ・ギターのソロもごきげんです。
 コディ司令の失われた惑星の空挺楽団を思い出します。

 トラッドの"Rancho Grande"や、"Ghost Riders in the Sky"も決まっています。
 "Rancho Grande"は、ポップス風の味付けがされていて、Freddy Fenderのバージョンに近いスタイルでやっています。

 今の所、本盤以降のリリースは不明ですが、もう少し聴いてみたいと思わせるバンドです。



La Bamba by The Texicanos







爆走! トナカイ・ビート 

 フィンランドは、はるか昔、スウェーデンに支配されていました。
 そのためか、フィンランド語とともにスウェーデン語も公用語らしいです。
 どうも北欧なんて一括りにしてしまいがちですが、フィンランドはスウェーデンと比べると馴染みが薄い印象があります。

 スウェーデンの音楽でいうと、やはりABBAでしょうか。
 オールディーズ好きには、ボッパーズなんてバンドが浮かびます。(もはや、おっさんだけが知っている存在かも)
 小説だと、マルティン・ベック・シリーズが懐かしいです。(大好きでした。)

 その点、フィンランドはどうなんでしょう?
 五木寛之には、ロシアやスペインなどと並んで、北欧の国を舞台にした優れた小説がありました。
 フィンランドで連想するのは「青年は荒野をめざす」とか、もっと直接的には「霧のカレリア」とかかな…。
 でも、音楽だと何ですかね。

 スウェーデンと似た下地があるのなら、アメリカの古い音楽が好まれる風潮があっても可笑しくないです。
 スウェーデンは、80年代、まだ米Rhinoも英Aceも手を付けていなかった時期から、ルート66とか、ミスターR&Bといったブート・レーベルが、盛んにジャンプ・ブルースのリイシューを手掛けていました。
 私は、ワイノニー・ハリスも、ロイ・ブラウンも、スウェーデン盤で初めて音を聴きました。

 今回は、フィンランドのグッド・ロッキンなビート・バンド、Doctor's Orderの08年リリースのアルバムをご紹介します。


Seleccion Grade
10 Aniversario Reserva
Doctor's Order

1. How Do You Sleep At Night (Hamalainen, Nattila, Vaatainen)
2. Los Mas Rapidos Muchachos (Hamalainen, Nattila)
3. She's Hot, I'm Not (Nattila)
4. When The Shit Hits The Fan (Nattila)
5. Big Fat Mam' (Hamalainen, Nattila)
6. Boogie Kind Of Thing (Hamalainen, Nattila)
7. Shut Up! (Hamalainen, Nattila, Tuominen)
8. Wham Bam With The Medicine Man (Hamalainen, Nattila)
9. Holy Moly (Hamalainen, Nattila, Vaatainen)
10. Hittin' The Big Mungo Note (Hamalainen, Nattila)
11. Keep It Under Hundred (Hamalainen, Nattila)
12. Big Bad Doc (Hamalainen, Nattila)
13. So It Is (Hamalainen)
14. You Live, You Learn (Hamalainen, Nattila, Tuominen)
15. Doctor In Disguise (Hamalainen, Nattila, Vaatainen)
16. Money Talks, Bullshit Walks (The Drummer Song Part 1) (Nattila)
17. Einstein (The Drummer Song Part 2) (Nattila)

 Doctor's Orderは、98年ころから活動を開始したのではないかと思われます。
 それは、本盤のタイトルからもうかがえます。
 本盤の表題は、Grande選出の10周年記念盤という意味だと思います。

 "Grande"というのは、ギターのArto Hamalainenのニックネームです。
 このバンドは、ギター、ベース、ドラムスという最少編成のビート・バンドで、三人にはそれぞれニックネームがあります。

 ベーシスト、リード・ボーカルのTeppo Nattilaのニックネームは"Teddy Bear"、ドラムスのKimmo Oikarinenは"Mighty Man"です。
 そして、先代のドラマー、Tuominenのニックネームは"Dirty Harry"でした。

 全17曲、理屈抜きで楽しめるアルバムになっています。

 基本は、シンプルでパンキッシュなロックンロール、ビート・ロックです。
 スピード感満点のビートの中で繰り出される小粋なギターのフレーズは、ロックンロール・ギターのリフの、ありったけを陳列したショーケースのようです。

 また、曲によっては、ボトルネックを使ったギター・ブギがアグレッシブに突っ走ります。
 この手の曲が思いのほかあって、ハウンド・ドッグ・テイラーみたいに聴こえる曲もあります。

 さらに、ボーカルとハープ、またギターとハープとが掛け合う曲が熱いです。、
 とにかく、攻撃的なビートが、コンパクトかつタイトにまとまって押し寄せてきます。

 Dr Feelgood、The Pirates直系のタフなサウンドが快感そのものです。
 とりわけ、ブルース・ハープが活躍する曲では、最初期のDr Feelgoodを連想せずにはいられません。
 また、スライドを交えたハードなブギでは、初期のZ. Z. Topを思わせる曲もあります。

 どの曲もみんな同じようなテイストなんじゃないかって?
 そのおりです。
 実のところ、バリエーションは少ないです。

 断言しましょう。
 バラードは1曲もないです(キリッ)。

 全体から受ける印象は、同じような曲がこれでもか、これでもかと続くアルバムという風に感じるかも知れません。
 でも、曲ごとに様々な工夫がなされていて、一見シンプルでも、私などはアイデアの宝庫だと思います。
 また、ラウドかも知れませんが、ノイジーではありません。

 さて、本盤は活動10周年記念盤です。
 収録曲の構成は、過去のアルバム収録曲からのセレクトが15曲、新曲が2曲です。
 以下に、曲を並び替えてみました。
 このうち、現在流通しているのは、07年の6曲入りミニ・アルバム、"Cutthroat and Dangerous"だけです。 

00年 : Doctor's In Disguise
13. So It Is
15. Doctor In Disguise

02年 : The Real Thing
1. How Do You Sleep At Night
2. Los Mas Rapidos Muchachos
5. Big Fat Mam'
8. Wham Bam With The Medicine Man
9. Holy Moly

04年 : Shut Up Doc !
6. Boogie Kind Of Thing
7. Shut Up!
11. Keep It Under Hundred
14. You Live, You Learn
16. Money Talks, Bullshit Walks (The Drummer Song Pat 1)

06年 : The Doc Pack
4. When The Shit Hits The Fan
17. Einstein (The Drummer Song Part 2)

07年 : Cutthroat and Dangerous
12. Big Bad Doc

New !
3. She's Hot, I'm Not
10. Hittin' The Big Mungo Note

 Doctor's Orderは、本盤のあと、The PiratesのJohnny Spenceをリード・ボーカルに迎えたアルバムを2枚リリースしています。
 これらは、いずれもJohnny Spence & Doctor's Order名義で出されました。

09年 Full Throttle No Brakes
11年 Hot And Rockin'

 これらは、Piratesの新作と言ってもいい感じに仕上がっていて、Doctor's Orderのメンツから敬愛する先達へ向けた愛を感じます。
 私は、故Mick Greenの個性がPiratesの方向性を左右していたと思っていましたが、彼抜きでも、Johnny Spenceが全く不変の音楽をやっていることに改めて驚かされました。

 最近作の"Hot And Rockin'"では、"A Shot Of Rythm & Blues"、"All Night Walker"などの古いR&Bのカバーが最高です。
 このあたりの感想は、懐古趣味が入っているかも知れません。
 この2作は、細かいことを言いますと、ポール・バーリソン風味が薄まったThe Piratesの新作という感じに、私は捕えました。

 最後に、本盤の収録曲について、気になることを書きます。
 先述のように、本盤収録曲は、過去作からのセレクトになっています。
 過去のアルバムのほとんどは、現在生産終了となっており入手が困難なため、その救済措置として本盤は価値があると思います。

 そこで気になるのは、この収録曲が新録なのか、過去作からの再収録なのかということです。
 私は、残念ながら"The Doc Pack"以前のアルバムを持っていず、聴き比べすることが出来ません。
 私としては、どちらかと言えば、過去録音のチョイスであってほしいです。

 しかし、クレジットには、08年録音と記されています。
 また、参加メンバーのクレジットに、過去のメンツの名前がありません。
 Doctor's Orderは、ギターとベースはオリメンから変わっていませんが、ドラムスは3代目なのです。

 現在のドラマーは、本盤ないしは、私が未入手の前作、"Live At Puistoblues"(7曲入り限定盤EP-CD、08年、入手困難)からの参加だと思われます。
 クレジットを信じるなら、過去作の新録音ということになります。
 うーん、そうなんでしょうか。

 そこで、唯一過去作を持っているアルバムの収録曲を比較してみました。
 "Cutthroat And Dangerous"が初出の"Big Bad Doc"です。

 本盤には、この曲に関して特記があり、きちんとMick Green参加とクレジットがあります。
 この曲が収録されていた"Cutthroat And Dangerous"は、06年末録音の07年リリースです。
 わずか2年前の録音であり、再収録の方がむしろ普通のように思いますが、私の聴く限り、新録音だと思いました。

 本盤収録曲は、07年盤と比べてボーカルが始まるまでのイントロが長く、間奏のソロも若干違うように聴こえます。
 これを聴く限り、Mick Greenのリフは譜面ではなく、その日のフィーリングなのかと思ったのでした。

 どうも、くだくだとすみません。
 ごちゃごちゃ考えずに、シンプルに音を楽しめ、そんな声が聴こえてきそうです。
 Don't Think, Feel …ですね。



Big Bad Doc by Doctor's Order




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履きなれたスニーカーたち



ジプシー・ギター・マン

 私はコレクターではない、そう思っています。
 人にもそう言っています。

 そんな私が、気になるふたつの言葉があります。
 それは、こんな言葉です。

 「迷ったら買え」(…次の機会はない、後悔するぞ)
 「欲しがり続ければ、いつか手に入る」(…手に入らなかったからといって、くよくよするな)

 いずれも、アイテム収集にあたっての心構えですが、相反しているかのように聞こえます。
 厳密には、前段は事に当たっての行動基準で、後段は心の持ちようと言えるかも知れません。
 短期の真理と長期の真理と言い換えましょうか。

 ものにこだわる限り、心の葛藤は常にやってくるのでした。


The Rains Came
Joey Long

Side One
1. The Rains Came (Huey P. Meaux)
2. Don't Got No Education (J. Longoria)
3. I'm Gonna Preserve Your Love (J. Longoria)
4. Treasure Of Your Love (B. DeVorzon)
5. If I Should Need You (J. Rhodes)
Side Two
1. You Can't Give Back The Love (Jack Rhodes, Porter Jordan)
2. Funky Junky Woman (J. Longoria)
3. Part Time Love (C. Hammond)
4. Cajun Country (J. Longoria)
5. Midnight Blue (J. Longoria)

 Joey Longの名前は、数年前から常に私の心の中にあり、わずかでも情報が欲しい、1曲でも多く音が聴きたいと思っていました。

 私には、そんな存在が何人かいます。
 Joey Long、Buck Rogers、Gene Thomas、この三人こそ、数年に渡って私の関心を惹き続けている人たちです。
 いずれも、アイテムの絶対数が少なく、露出も少ない人たちです。
 ウェブ上にも、限られた情報があるのみです。

 そんな中、今回、私が以前から欲しかったアルバムを入手することが出来ました。
 Joey Longの70年代のアナログLP盤です。

 本盤は、Huey P. MeauxのCrazy Cajun Recordsから78年にリリースされたもので、以前に入手した"Flying High"というLPと合わせ、同レーベルから出された彼のアルバムは全て入手出来たことになります。

 Joey Longは、ルイジアナ出身のギターリストで、10代からプロとして演奏していました。
 ホンキートンク・カントリーからブルースまで、何でも弾きこなす人で、ヒューストンでHuey P. Meauxの眼に留まり、関係を深めた人です。

 Meauxのシュガーヒル・スタジオで他人の伴奏を数多くやった人で、本人のリーダー作がどれくらいあるのか、私にはよく分かりません。
 Meauxは、複数のレーベルを持っていましたが、そのひとつであるTear Drop Recordsのカタログには(LPは)ないようです。

 まあ普通に考えて、そんなにLPが作れた人だとは思えないので、シングルがどれくらい、どこのレーベルから出ているのか、気長に探していきたいと思います。

 これまで私が入手出来たのは、次の3種のフォーマット、計5アイテムです。

CD
"The Guys From Big Mamou" 94年 (Collectables COL-CD 5341) 米盤
Link Davisとのカップリング盤、全14曲中、Joey Longの曲は6曲。各曲のソースは不明ですが、"The Rians Came"は、70年代のCrazy Cajun録音ではないかと思います。

"Anthorogy" 00年 (Blues Factory BFY 47029) オランダ盤(?)
14曲入り、上記コレクタブルズ盤と4曲が重複(ただし、一部ミックス違いがある可能性あり)
上記同様、各曲のソースは不明ですが、"The Rians Came"は、70年代のCrazy Cajun録音ではないかと思います。

12インチLP
"The Rains Came" 78年 (Crazy Cajun CC-1027)
10曲入り、上記2枚のCDとは、表題曲の1曲のみが重複。
他の9曲はおそらく未CD化ではないかと思います。
表題曲は、シングルと同じバージョンだと思いますが未確認です。

"Frying High" 78年 (Crazy Cajun CC-1049)
10曲入り、上記のCD、LPとは重複なし。
おそらく全て未CD化だと思われます。

7インチ・シングル
"I'm Grad For Your Sake"/"The Lights Have Gone Out" (Running Bear 45-8300)
A面が、Doug Sahmの愛唱歌であるため、どうしても欲しかった7インチ盤。
上記のCD、LP、いずれにも未収録。
両曲とも、コンピCDにも未収録だと思われますが、収録CDがあるのなら、ぜひ入手したいです。

 さて、本盤の全体の印象ですが、これまで聴いたCD、LPの中で最も聴きごたえがあると思います。
 ブルースに聴きものが多く、なかなかにサイケで強力なフレーズが刺激的です。

 本盤は、スワンプ・ポップ・バラードの表題曲、"The Rains Came"を柱に、ブルースやソウル風の曲をうまく配置したアルバムだと思いました。

 "The Rains Came"は、比較的ゆるいアレンジでやっています。
 この曲は、Big Samboという黒人サックス・プレイヤーがオリジナルの曲で、Heuy Meauxが、自身が手掛けるアーティストに繰り返し吹き込ませている曲です。

 すぐに思いつくところだけでも、以下のようなアーティストが録音しています。

Sir Douglas Quintet
Freddy Fender
Warren Storm
Doug Kershaw
B. J. Thomas
Quintet (Doug Sahm抜きで作られた唯一のアルバムでやっています。)

 とりあえず、当分はこのアルバムを味わい尽くしたいと思います。

 でも、人間の欲は際限がありません。
 早くも、もっともっとという思いが募ってきています。



4 O'lock Blues by Joey Long


この曲は、"Anthorogy"に収録されています。



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アンクル・サンボズ・キャビン
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テックス・マニアのうたげ
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夢はキングサイズベッドで

 コンピレーション・アルバムが好きです。
 たとえダブリが満載でもファン心情をくすぐるものがあれば、たとえコンセプトが究極にニッチでも、いーえ、それならかえって「その意気やよし!」と嬉しくなってしまうのでした。

 つい先だって、これは誰得なんだろう? そう思うコンピCDを見つけました。
 テキサスはサン・アントニオのガレージ・ロックをコンパイルしたアルバムです。
 Home Cooking Recordsが編纂して、Collectables Recordsが95年にリリースしたものです。

 このいかにも一般受けしそうにないコンセプトの仕掛け人は、Roy C. Amesさんという人で、この制作チームは、Doug Sahmの初期作品集や、Harlem Recordsのレーベル・コンピをCD化した布陣と同じです。

 うーん、Roy C. Amesさん、期待を裏切らない人ですね。
 これは入手するほかないです。


Classic Rock
from San Antonio, Texas 1958-1979

1. Sally Let Your Bangs Hang Down   (J. Olenn)  Johnny Olenn & The Jokers
2. One More Time (org. varsion)  (Head, Gibson, Bulton, Frazier, Buie, Pennington)  Roy Head & The Traits
3. One More Time (national varsion)  (Head, Gibson, Bulton, Frazier, Buie, Pennington)   Roy Head & The Traits
4. Sapphire   (J. Corduway)  Doug Sahm
5. Little Girl  (Gerick, Jones)   Pandora'Box
6. I Want You To Love Me (Ray Libert, T. Calderon) Ray Libert
7. Crazy Baby (R. London) Robb London
8. Henrietta (Fore, Hichfield) J. Dee & The Offbeats
9. Why Why Why (Doug Sahm) Doug Sahm
10. Don't Be Blue : Roy Head & The Traits
11. You're Late Miss Kate (Fore, Hichfield) J. Dee & The Offbeats
12. Mary Jane (R. London) Robb London
13. Set Me Free (B. Morrison) Bill Morrison & His Band
14. Don't Be Shy (Allison) Gary Middleton

 このCDは、残念ながら、全体的に音がよくないです。
 とはいえ、音なんて、アナログLP時代は細かいことはいいませんでした。
 そうですよね、同世代の皆さん。
 最近は、私もついつい言ってしまいがちですが…。

 もう、聴けるだけで嬉しい、そんな風に考えられたのは、思えば幸せな時代だったのかも知れません。
 ジャンプ・ブルースが手に入らなくて、スウェーデン盤のブートを漁ったことが懐かしい想い出です。
 今の若者たちは、スクラッチ・ノイズの彼方から聴こえる憧れの音楽なんて、そんな感慨を味わうことはないんだろうなあ…。

 さて、構えることなく聴きましょう。
 まあ、構えるような内容でもないです。

 Doug Sahmの初期作品が2曲入っていますが、この時期の作品は、いまやNorton Recordsから、ほぼコンプリート集が出て、有難みは少なくなりました。
 本盤リリースと同じ95年に、Roy C. AmesさんがDoug Sahmの初期音源のCD化への最初の仕掛けを行っています。
 このあたりの復刻CD化の流れは、だいたいこんな感じです。

95年 "Doug Sahm His Early Years" (Collectables COL-5559)
Roy C. Ames編纂14曲入り、別テイク1曲収録。

00年(98年?) "Doug Sahm In The Begining" (AIM 1308) 
豪盤。同じく14曲入りだが、上記盤とは2曲が別の曲。

00年 "Doug Sahm San Antonio Rock" (Norton ced-274) 
18曲入り。10代のとき他人の伴奏をやった4曲を収録。

 Doug Sahmの話になると脱線しそうなので、軌道修正します。

 期待していなかったのに、興味深かったのは、Roy Headの"One More Time"が2バージョン収録されていて、しかも続けて収録されているため、その違いがよく分かることです。

 オリジナル(TNT)は、思いのほかブルージーで攻撃的なギターをバックに、手拍子とタンバリンの連打を重ねるという手作り感満載のつくりです。
 …音がこもりまくっています。

 一方、全国盤(Septer?)のほうは、まずボーカル・エコーが深めで、なおかつブラス陣を前面にたてたアレンジです。
 アグレッシブなギターは、歌伴ではホーン・リフに隠れてオフ気味のため、間奏でのソロが引きたってとても効果的です。

 そして、終わったと見せかけるブレイクのあと、サビをもう一回繰り返すアレンジになっています。
 聴きやすさでは全国盤の圧勝ですね。
 ローカル盤は、比較するとチープなつくりが際立ちますが、それよりも音がこもりすぎだと感じました。

 Jimmy Deeの"Henrietta"が聴けるのも嬉しいです。
 この曲は、一時期かなり追っかけた曲でした。
 "Henrietta"は、海外サイトではロカビリーと紹介されることが多いですが、日本人の感覚ではスクリーム系ロックンロールじゃないでしょうか?

 この曲は、John Fogertyがお蔵入りになった幻の3rdソロ・アルバム(アサイラム)でカバーしていた曲で、Doug Sahmもライヴ盤でやっていたため(未入手ですが、"Country Groove"をB面とするDoug Sahm名義の76年の7インチ盤があるようです。)、一時期、私がたいへん関心を寄せていた曲です。

 過去記事で、この当たりのことをくだくだと書いていますので、よければご覧ください。
 当時は、ようつべでしか聴けないと思っていましたが、今なら本盤以外でも、以下のCDで聴けることが分かっています。

96年 "Dot Rock 'n' Roll" (英Ace) 
Dot Recordsのレーベルロックンロール・コンピ。
元はTNTですが、全国盤はDotから配給されました。

99年 "That'll Flat Git It! Vol.5" (独Bear Family) 
熊家族のレーベル別ロカビリー・コンピのDot編。

07年 "The Golden Age Of American Rock 'n' Roll, Vol.11" (英Ace) 
ビートルズ登場以前のヒットを網羅したコンピ・シリーズの1枚。

 ちなみに、Jimmy Deeの59年リリースのシングル、"Rock-Tick-Tock"(TNT 161)では、17歳のDoug Sahmがリード・ギターを弾いているらしいです。
 (上記のNorton盤、"Doug Sahm San Antonio Rock"に収録。)

 その他の曲は、いかにもローカルな感じがしますが、案外心地よく和めたります。
 時代の空気感みたいなものに、理由不明の好感を持ちます。

 もしかすると、今はその価値にさほど気付いていないだけかも知れません。
 このレアな無名曲たちを、いつか宝物と感じるときがくるかも知れないな、そんなことを夢想すると楽しいです。



Henritta by Jimmy Dee & The Offbeats




Henrietta by John Fogerty




Henrietta by Doug Sahm







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オーキー・フロム・レイト60s

 今回は、おそらくほとんどの方がご存じないだろうと思われるアーティストをご紹介します。
 サザン・ロック、ブルース・ロック系のギターリスト、シンガーのDavid Doverさんです。
 この人は、オクラホマ州タルサの出身で、本名をDavid Dover Barberといいます。

 私が勝手に推測するところ、この人はファンが高じてプロになった人で、録音機材好きのオタク系ミュージシャンではないかと思います。


Mississippi Mud
David Dover

1. You Rascal You (Sam Theard)
2. The Jealous Kind (Robert Guidry)
3. Mississippi Mud (David Dover)
4. Place in Your Heart (Manny Charlton)
5. It Came Out of the Sky (John Fogerty)
6. Slide Man (David Dover)
7. Dust My Broom (Robert Johnson)
8. Take Care of Me (David Dover)
9. Fool for Your Stockings (Beard, Gibbons)
10. Peter Gunn (Henry Mancini)

 David Doverは、通常はバンド編成で録音してはいますが、曲によっては全てのパートを自ら演奏することもまれではありません。
 そして、これはまず間違いないと思うのですが、60s70sロックの熱心なファンであり、何よりもJohn Fogertyの熱狂的なファンだろうと思います。
 私がそう思うのには理由があります。

 David Doverは、これまで4枚のアルバムをリリースしています。
 以下のとおりです。

04年 Seal Of Approval (この1枚のみ、David Dover Band名義。下の3枚はソロ名義)
05年 Mississippi Mud
05年 Veterans Day
10年 Dover Soul

 これらは、いずれも自身のレーベルからリリースしており、まだメジャーからの配給はないようです。
 
 今回、4枚のうち、どれを取り上げようかと考えました。
 最近作の"Dover Soul"にしよう、一旦はそう思ったのですが、結局考え直しました。

 4枚には、ほとんど音楽性の違いはありません。
 ただ、1stがサウンド的に若干しょぼい気がします。

 私の思うところ、バンド名義の1stが最もオタクっぽい音で、なぜか一人多重録音の匂いがします。
 これは、リズム隊が弱く感じるからだと思います。
 とりわけ、ドラムスが弱いように思います。
 きちんと額面どおりバンドでやっているとすれば、録音が悪いのかミックスのバランスが悪いのか、私にはリズム隊の音が軽く感じられます。

 アルバムの構成では、1st、2ndは有名曲のカバーを中心に、自作曲を交えるというスタイルです。
 対して、3rdは、ほぼ自作曲でまとめています。
 5年のブランクを開けて出された4thは、自作曲を抑え目にして、再び1st、2ndに近い構成に戻しています。

 というわけで(?)、音に若干不満がある1stはまず外し、カバー曲が多く、音楽的嗜好がわかりやすい2ndを選びました。
 本盤の参加メンバーは、以下の通りです。

David Dover : vocals, guitars(all), keys(2,3,4,5,6,8),bass(3), drums(3,4)
Rick Paul : guitar(2,4)
Rick Potter : guitars(2)
Michael Vines : screaming lead guitar(10)
C. J. Anderson : bass(1,2,4,5,6,7,8,9,10)
Rick Heck : drums(1,2,6,7,8)
Terry Brawley ; drums(5,10)
Stanley Lindley : drums(9)
Rick Morrow : keys(1,7,10)
Dave Russell : sax(1,2,10)
Jimmy 'Junior' Markham ; harmonica(8)

 最初の方で、この人は、John Fogertyのファンだろうと書きました。
 David Doverは、リリースした4枚のアルバムで、必ずJohn Fogertyのカバーをやっています。
 次のとおりです。

1st : 110 In The Shade
2nd : It Came Out of The Sky
3rd : Run Through The Jungle
4th : Who'll Stop The Rain

 "110 In The Shade"以外は有名曲ばかりですね。
 "110 In The Shade"は、唯一John Fogertyのソロ・アルバムからのチョイスで、97年の"Blue Moon Swamp"収録曲です。
 "Hundred And Ten In The Shade"と表記されていた曲で、ゴスペルっぼい曲調の作品です。
 残りの3曲は、いずれもCCRの曲で、説明不要の作品ばかりですね。

 David Doverは、もともとJohn Fogertyと声質が似ています。
 さらに、大好きな曲をやるということで、これらの曲では思い入れたっぷりにやっています。
 
 本盤では、冒頭の曲、"You Rascal You"が、John Fogertyの曲ではありませんが、Johnが75年のソロ2作目でやっていた曲です。
 どれだけ好きなんだ、と言いたいです。

 各アルバムのカバー曲からも、この人の趣味嗜好をうかがってみたいと思います。

1st : She Caught The Katy タジ・マハールのカバー
    Never Ending Song Of Love ディレイニー&ボニーのカバー
    Run Run Rudolph チャック・ベリーのカバー
    It's Not My Cross To Bear オールマン・ブラザーズのカバー 
    From Small Things デイヴ・エドモンズのカバー
    Life Is Hard ジョニー・ウインターのカバー

2nd : The Jealous Kind ボビー・チャールズのカバー
    Dust My Broom エルモア・ジェイムズ(ロバート・ジョンスン)のカバー
    Fool For Your Stocking Z. Z. トップのカバー

4th : Same Old Blues J. J. ケイルのカバー(ただし、本人のお手本はフレディ・キング盤らしいです。)
    Johnny B. Goode チャック・ベリーのカバー(何とChuck Berry本人と共演しています。ライヴ録音)

 音を聴かなくても、何となくどんなタイプの人か想像できてきていませんか?
 ルーツ・ミュージック好きの方なら、少なくとも、彼のカバー曲のチョイスに、好感をいだく人は少なくないと思います。

 趣味っぽい、アマチュアイズムもうかがわせながら、だからこそ共感できる部分が多々ある人だと思います。
 まあ、メジャーで出せないのには、それなりの理由があるとは思います。
 雌伏に不思議の雌伏なしではあります。

 とはいえ、B級、C級好みの奇特な皆さん、一度ご賞味されてはいかがでしょう。



Mississippi Mud by David Dover





タフでなければ 優しくなれない

 今回は、Dr. Feelgoodの96年作、"On The Road Again"でリード・ボーカルを担当した、Pete Gageのソロ・アルバムをご紹介します。
 Pete Gageは、主としてピアノとハーモニカをプレイする、ブルース系の英国人ボーカリストです。

 彼は、Lee Brilleauxの後を受けた最初のボーカリストでしたが、結果的に1作のみの参加にとどまりました。
 ただ、Dr. Feelgoodのヨーロッパ・ツアーなど、ライヴの活動期間はそれなりにあったようです。


Tough Talk
Pete Gage

1. Tough Talk Boogie (Pete Gage)
2. Bad Feeling (Pete Gage)  
3. Victim Of Your Love (Pete Gage)
4. Relaxing With My Baby (Pete Gage)
5. No Other Woman (But The One From Louisiana) (Juha Takanen, Pete Gage) 
6. Standing At The Crossroads Again (Mickey Jupp)
7. Mose (Pete Gage)  
8. Midnight Hour Blues (Leroy Carr)
9. Under My Skin (Pete Gage)
10. I Got A Right (Pete Gage)
11. Other Side Of The Street (Pete Gage)
12. Sweet Mercy (Pete Gage) 
13. Let The Four Winds Blow (D. Bartholemew, A. Domino)
14. Living In My Sin (Pete Gage)
15. Do Some Rock'n'Roll (Pete Gage)

 本盤は、10年にフィンランドのヘルシンキのレーベル、Goofin Recordsからリリースされました。
 録音もフィンランドで行われています。

 Pete Gageとフィンランドとのゆかりは、やはりDr. Feelgoodの北欧ツアーがきっかけだったのではないかと推測します。
 "On The Road Again"のリリースが96年ですので、それを受けて同年か翌年くらいに、スウェーデンやフィンランドを回ったのではないでしょうか。

 Pete Gageは、97年に初のソロ・アルバム"Out Of Hours"をリリースしています。
  (その前には、私は未入手ですが、Pete Gage Expression名義で95年に1枚出しているようです。)

 その"Out Of Hours"がヘルシンキ録音で、Goofin Recordsからのリリースでした。
 このアルバムは、サイドメンを使わない、純粋なピアノの弾き語りアルバムで、スロー・ブルースを中心にやっていました。

 対して、13年ぶりとなる本盤は、素晴らしい伴奏陣を得て、ビート・ロック、ブルース・ロックのスタイルでやっています。
 参加メンバーは、以下のとおりです。

Pete Gage : vocals, piano, harmonica(2,9)
Gypie Mayo : guitars(4,6,8,9,11,13), bass(8)
Archie Hamalainen : guitars(1,2,4,5,6,9,12,15)
Honnu Pikkarainen : guitar(3,10), organ(3,7)
Arto Makela : guitar(7,14)
Teuvo Lampinen : bass(3,10,11,12,14)
Teppo Nattila : bass(1,2,4,5,6,7,9,13,15)
Juha Takanen : drums, percussion(all), accordion(5)
produced by Pete Gage, Juha Takanen, Teppo Nattila

 このメンツだと、やはりGypie Mayoの参加が目を惹きますね。
 もちろん、Dr. Feelgoodの2代目ギターリストです。
 Wilcoに比べると、ほのかにアメリカンなテイストも感じる人で、私は大好きでした。 

 そして、そのほかのメンツは、英米系の名前とは少し違う感じですね。
 これを見ると、フィンランド系の名前は、語尾が「〜ネン」で終わるのか、などと妙なところに感心してしまいます。
  
 実は、Gypie Mayoはスペシャル・ゲストで、本盤でPete Gageを強力にサポートしているのは、Doctor's Orderというバンドのメンツなのでした。

 Doctor's Orderは、98年から活動しているフィンランドのトリオ編成のビート・バンドで、スタイルとしては、完全にDr. Feelgood、The Pirates系のバンドです。
 (98年というのは、10周年記念と銘打たれていた彼らの08年リリースの編集盤から逆算しました。
 同盤には、「リー・ブリローに捧げる」と献辞が記されています。)

 このバンドは、その活動の開始時期が、Dr. Feelgoodが北欧ツアーをした(と思われる)すぐ後であること、また、バンド名が、Dr. Feelgoodの84年作、"Doctors Orders"を連想させることなどから、ウラは取れていませんが、強いリスペクトを感じます。

 Doctor's Orderは、Piratesとも深い関わりがあり、これまでMick Greenをゲストに迎えたミニ・アルバムを出したほか、直近の2作では、同じくPiratesのボーカルで、ベーシストのJohnny Spenceをフロントに立て、名義までJohnny Spence & Doctor's Orderとしてアルバムをリリースしています。
 どうです?
 興味がわいてきましたか。

 ちなみに、Doctor's Ordersという、酷似した名前の別バンドが存在しますので、ご注意ください。
 バンド名の語尾に(s)がつかないほうが、フィンランドのロッキンR&Bバンドです。

 本盤の参加メンツのうち、ギターのArchie Hamalainen、ベースのTeppo Nattilaの二人がDoctor's Orderのメンバーです。
 なぜか、ドラムスのメンツのみ不参加です。

 そのかわりに、ドラムを叩いているJuha Takanenは、これまでDoctor's Orderのアルバムを何枚もプロデュースしている人です。
 (ベースのTeppo Nattilaは、本盤ではバックに徹していますが、Doctor's Orderのリード・ボーカルで、Pete Gageの97年のソロ作、"Out Of Hours"で、既に制作陣の一人として参加していました。)

 さて、そろそろ中身を聴いてみましょう。
 Doctor's Order勢がサポートとはいえ、当然、メインのPete Gageのスタイルに合わせた演奏になっています。
 ガチのビート・ロックもありますが、全体的には、スライドを使ったブルース・ロック調のものが耳を惹きます。
 そして、Pete Gage自身による、ピアノのソロが聴きものです。

 全て必聴といいたいです。
 しかし、あえて私の注目曲をいくつかご紹介します。

1. Tough Talk Boogie
3. Victim Of Your Love
4. Relaxing With My Baby
5. No Other Woman
6. Standing At The Crossroads Again
8. Midnight Hour Blues
13. Let The Four Winds Blow

 うーん、チョイスしすぎですね。
 まあ、その他の曲も捨て曲なしといいたいです。

 アルバムの冒頭を飾る"Tough Talk Boogie"は、本盤を象徴する1曲です。
 Pete Gageのタフなボーカルが、名刺がわりの一発で、ガツンときます。
 アーシーなスライドが、ブギを基調としたメロにはまっていて、Peteのブルージーな咽喉もたっぷり聴けます。
 このスタイルこそ、Pete Gageの根幹をなすものでしょう。

 一方、驚かされるのが、本盤では珍しいストレートなバラードの"Victim Of Your Love"です。
 ブルージーなマイナー・バラードなら他にもありますが、ここでは男気たっぷりに、ダイナミックな込みあげ系バラードをやっています。
 サビを前にして、絞り出すようにハスキーになるボーカルが、John Hiattを連想させます。
 胸にぐっとくる名唱です。 
 お奨めの1曲です。

 "Relaxing With My Baby"は、Gypieがギターを弾いた曲で、アルバート・キング風のスクイーズ系スロー・ブルースが聴けます。
 マイナー・ブルースでも、比較的からっと乾いたトーンがGypieらしいと感じました。

 "No Other Woman"は、飛び道具的な1曲です。
 ここでは、ケイジャン・ロックンロールをやっています。
 アコーディオンも加わり、とにかく、楽しさ一杯のダンス・チューンに仕上がっています。

 "Standing At The Crossroads Again"は、Micky Juppの作品で、Dr. Feelgoodが91年のアルバム"Primo"でやっていた曲です。
 人生の岐路(女が去っていくという、本人にとっては重大事件)に立った主人公の心情を歌った曲で、比喩として、十字路でロバート・ジョンスンとエルモア・ジェイムズに出会う描写があります。
 Feelgood盤では、Steve Walwynがギターを弾いていた曲を、ここではGypie Mayoがプレイしていて、とても興味深いです。
 この曲は、Dave Edmundsもやっていますね。
 ぜひ、聴き比べてみてください。



 "Midnight Hour Blues"は、リロイ・カーのカバーで、これはPeteの97年のピアノ・ブルース集、"Out Of Hours"をすぐに連想しました。
 "Out Of Hours"は、期待せずに聴いたせいもあり、予想以上に気に入ったアルバムでした。
 ここでは、バンドをバックに、ゆったりとウォーキン・ブルースしています。
 弾き語りでも、バンド形式でも、本質は変わらないPeteのブルース・ボーカルが聴けます。
 タフでドスの効いたスタイルと、柔らかい歌いくちの切り替えが、大変魅力的です。

 "Let The Four Winds Blow"は、ファッツ・ドミノの比較的後期の作品で、私はどちらかといえば、もっと初期の作品が好きです。
 ここでは、ニューオリンズ風のピアノの雰囲気は希薄で、メンフィスあたりの、例えばロスコー・ゴードンなんかを連想しました。

 その他、GypieがT-Boneのフルアコっぽいサウンドを聴かせる、ウエストコースト・ブルース風の"Other Side Of The Street"や、これぞDoctor's Oederの本領発揮という感じのビート・ブギ、"Under My Skin"なんかも良いです。
 "Under My Skin"は、いくつかあるDr. Feelgood直伝のスタイルの1曲で、思わず頬が緩みます。

 全体を通して、Peteのボーカルからは、汗やガッツといったワードが頭に浮かび、Lee Brilleauxを想い起こさせてくれます。
 とりわけ、それはファストな曲に顕著で、Birilleauxの在りし日の姿を思い出さずにはいられません。

 Doctor's Order勢のプレイという面でいいますと、一本調子のビート・ロックだけじゃない、別の一面を知ることが出来ました。
 ちなみに、Doctor's Orderの06年作、"The Doc Pack"(生産終了、未入手)では、Pete Gageがゲスト参加して、2曲でボーカルとハーモニカを披露しているらしいです。



How Do You Sleep by Doctor's Order




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サンアントニオ・ソウル・グレイツ

 これは、はずれもあるな、そう思いながらも期待半分で聴きました。
 短い曲が、わずか12曲、とりとめなく入っています。
 色んなタイプの曲を、ノー・プランでぶち込みました、とりあえず一丁上がり、そんなチープ感が漂っています。

 …しかし
 しかし、私にとっては、何気に刺激たっぷりの盤でした。

 結論
 これは良いです。


All I Could Do Was Cry
Rudy Tee Gonzales y sus Reno Bops

1. All I Could Do Was Cry (B. Davis)
2. Crazy, Crazy, Crazy Baby
3. Tell Me What You Gonna Do (B. Peterson) she's about amover
4. Have Faith (B. Ferguson)  
5. In The Palm Of Your Hand (B. Spurlock)   
6. Further On Up The Road
7. It Was Just An Illusion (Rudy T. Gonzales)
8. Oh Baby, I'm Crying (Rudy T. Gonzales)  
9. The Phillie (Rudy T. Gonzales)  
10. Only You (Can Break My Heart) (Buck Owens)
11. A Pair Of Sevens (Rudy T. Gonzales)  
12. The Tables Have Turned (Parker) 

 Rudy Tee Gonzalesは、名前だけは知っていました。
  
 まず間違いなく、サン・アントニオ出身のチカーノ・シンガー(グループ)だと思います。
 Huey P. Meauxのレーベルの一つ、Taer Drop Recordsから、60年代(多分)にアルバムを出しています。 
 (ざっくりいって、Tear Dropは60年代のテキサス中心、Crazy Cajunは70年代のルイジアナ中心だと思います。)

 私は、Sunny Ozunaのファンとして、彼のように歌えるチカーノ・シンガーを探していました。
 Sunnyのように、というのは、英語で歌うChicano Soul(R&B)を得意としている歌手ということです。

 そんな条件のもと、私が出会い、聴くようになったのが、Joe Jamaであり、Little Willie Gでした。
 そして今回、私は、Rudy Tee Gonzalesを新たにお気に入りリストに追加したのでした。

 Huey P. Meauxは、Tear Drop Labelから、Rudy Tee GonzalesのLPを4枚リリースしています。
 これは、同レーベルでは2番目に多いリリース数で、Meauxのお気に入りだったのだと思います。
 (ちなみに、最多リリースは、Sunny & Sunlinersの6枚です。)

 本盤は、05年にテキサスのGolden Eagle Recordsからリリースされました。
 録音クレジット等全く記載がないため、いろいろと推測するほかありません。

 収録曲数が12曲と少なく、LPのストレートCD化の可能性もなくはないです。
 ただ、Tear Dropの4枚のLPには、該当するタイトルがありません。
 また、ジャケが近影をコラージュしたもので、仮にLPをCD化したものだとすれば、ジャケ、アルバム・タイトルともに変更したものだということになります。

 普通に考えれば、新たに組んだ編集盤ということでしよう。
 しかし、05年のリリースで12曲入りというのは、やはり少ないですね。
 何とも、もやもやが残りますが、この真相は、Tear DropのLPの内容を確認するほかないてず。

 実は、Tear Drop盤のストレート・リイシューと思われるCDが、Golden Eagleから3枚出ています。
 これらは、LPと全く同じタイトルのCDです。
 LP盤の実物を見たわけではないため、確定とはいえませんが、おそらく間違いないでしょう。
 
 残る1枚の内容がわかれば、すっきりします。
 あせらないで、自然に明らかになることを待ちたいです。



 では、音を聴いた印象はどうでしょうか?

 正直、分からないです。
 60年代のヴィンテージ録音のような曲もあれば、70年代か80年代の音のように聴こえる曲もあります。
 ただ、音圧のレベルが曲によって不安定で、寄せ集めのような気はします。
 少なくとも、アルバム単位で録音された音源ではないと思います。

 私の印象では、70年代の音源を一部含む、60年代中心の音源をコンパイルしたものではないかと考えます。
 とはいえ、これまでの経験から、私の耳は全くあてになりません。
 そろそろ、単純に音を楽しみましょう。

 すべてが注目曲といいたいですが、あえて選ぶなら次の5曲です。

1. All I Could Do Was Cry
3. Tell Me What You Gonna Do 
5. In The Palm Of Your Hand
6. Further On Up The Road 
9. The Phillie

 いずれも個性がはっきりした曲で、全くかぶっていません。
 
 "All I Could Do Was Cry"は、Chess時代のEtta Jamesのナンバーです。
 映画「キャデラック・レコード」で、Etta James役のビヨンセが歌っていました。

 Rudy Gonzalesのバージョンは、あたかもOscar Tony Jr.が歌う、"For Your Precious Love"のようです。
 この意味、分かりますか?

 イントロから、プリーチが延々と続き、「もしかして、このまま歌詞を語り風にやるだけで終わりなのか?」と勘ぐり始めたころ、やっとメロにのせて歌いだした途端、すぐに終了してしまうという荒ら技です。
 アルバム冒頭からやってくれます。
 この曲は、RudyのR&Bバラードの代表作かも知れません。

 "Tell Me What You Gonna Do"は、誰が聴いても、Sir Douglas Quintetの"She's About A Mover"を連想してしまう作りの曲です。
 そっくりとまではいいませんが、全体のリズム、オルガンのリフなど、姉妹曲とでもいいたい曲です。
 この曲は、Rudy版のテキサス・ガレージ・ロックでしょう。

 この系統では、"The Phillie"も、楽しい曲です。 
 こちらは、Sam The Sham & The Pharaohsの"Wooly Bully"のスタイルに近く、影響力の大きさを感じます。

 "In The Palm Of Your Hand"は、三連の美しいDoo Wopバラードです。
 このスタイルこそ、Rudy Gonzalesの真価が最も出ている曲だと思います。
 バックのハーモニーが、とても効果的に使われて、Rudyのリードを引き立てています。
 同様のスタイルでやった、"Oh Baby, I'm Crying"も素晴らしい出来です。

 "Further On Up The Road"は、もちろんBobby Blandの名作のカバーです。
 こちらは、ブルージーなRudyを代表する曲でしょう。
 ここでは、奇をてらったフェイクはなく、素直にオリジナルに沿ったアレンジでやっています。
 ホーンの鳴りがいいです。
 ブルース・ギターが、ソロでペンペンとチンピラっぽい音を出していて、大好きです。

 最後に、"Only You (Can Break My Heart)"についても触れておきましょう。
 この曲は、もしやPlattersの大有名曲(Buck Ram作)ではと思いましたが、クレジットどおりBuck Owensの曲でした。
 あちらは、"Only You (And You Alone)です。 

 さて、アルバムとしては、まとまりのなさが、かえって善玉カオス(?)という感じです。
 チカーノR&Bの好アルバムだと思います。
 こういうスタイルに需要があったのは、いい時代だったですね。

 Rudy Tee Gonzalesは、初期からスペイン語での歌唱曲も多く、その意味でもSunny Ozunaとよく似ています。
 カントリーの名曲たちを全編スペイン語でカバーした、その名も"Country"というアルバム(多分、Tear Drop原盤)もお奨めです。



unknown song by Rudy Tee Gonzales y sus Reno Bops




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泣いたサニーがもう笑った
ぼくらのチカーノ・ヒーロー

Joe Jama
ブラウン・ソウル 孤高のテハーノ
ジョー・ジャマの音楽と人生

Little Willie G
ディスカバー・ウイリー・ガルシア
心の扉を開けてくれ

Compilation
ウエストサイド・ソウル
チカーノ・タウンからの贈り物
ハーレムのダイスを転がせ
バリオでロッキン
イーストサイド・ワールドへようこそ
イーストL.A.の郷愁




ハワイアン・カウボーイ

 今回は、ハワイのカントリー・シンガーをご紹介します。
 ハワイはアメリカの州とはいえ、ちょっと不思議な感じです。
 「マウイのハワイアン・カウボーイ」を自称するこの人、さてどんなテイストなんでしょうか?
 実は、ファースト・コンタクトです。


My 9th Island Paniolo Ranch
Danny Estocado

1. Hook In My Heart (Kevin Wicker)
2. Volcanic Heart (William Nauman)
3. Ring of Fire (June Carter, Merle Kilgore)
4. Long Black Train (Josh Turner)
5. Keeper of the Key (Harlan Howard)
6. Po'o Wai U Makawao Rodeo (Danny Estocado)
7. Heart That You Own (Dwight Yoakam)
8. Wasted Days and Wasted Nights (Huey P. Meaux)
9. My 9th Island Paniolo Ranch (Danny Estocado)
10. It's Only Make Believe (Conway Twity, Jack Nance)
11. Hello Love (Betty Jean Robinson, Aileen Mnich)
12. Daddy's Home (William Henry Miller, James Sheppard)
13. Jesus Hold My Hand (Albert E. Brumley)
14. Pele Pu'uwai (William Nauman)
15. Sweet Spot (Mark May)
16. Pride and Joy (Stevie Ray Vaughan)

 プロフや最近の活動などの詳細は不明ですが、彼のサイトの情報によれば、オアフ島生まれで、94年CDデビュー、これまでに6枚のCDをリリースしています。
 主な活動の拠点は、ラスベガスらしき内容が記載されていました。

 そして、定期的にハワイへ戻って活動しているほか、毎年日本で公演を行っているとの記述がありました。
 実は、日本のカントリー・ファンの間では周知の人なんでしょうか?

 熊本や京都のカントリー・フェスに出ている人なのかな?
 どうも思い切り無知をさらけ出している気がしてきました。 

 本盤は05年のリリースですが、アマゾンのエントリーでは最近作です。
 既にかなり前という感じですが、くだんのサイトの記述ともあっています。

 とにかく、聴いてみましょう。
 
 ……。

 通して聴いて最初に頭に浮かんだのは、「ハワイのフレディ・フェンダー」というワードでした。
 本盤の録音はナッシュビルで、なーんだと拍子抜けする思いですが、70年代のFreddy Fenderの作品を思わせる、輪郭のくっきりしたポップなサウンドが、とても聴きやすいです。

 本盤では、"Wasted Days and Wasted Nights"をやっていますが、Freddy Fenderを連想したのは、それだけが理由ではありません。
 ミディアム、スローのバラードでの泣き節が、Freddy Fenderを思い起こさせるのでした。

 本盤では、さほど顕著には出てはいませんが、そこはかとなく漂うハワイアン・テイスト、ポリネシアン・フレイバーが色々と想像力をかきたててくれます。

 直接的には、"Po'o Wai U Makawao Rodeo"や"Pele Pu'uwai"のような曲ですね。
 とりわけ、"Pele Pu'uwai"です。
 ハワイ語(?)の不思議な懐かしい響き、いかにもな「らしい」音階、旋律を使ったメロに癒されます。
 こういった曲を、もっとバイリンガルでやれば、さらにFreddyっぽく感じることでしょう。

 ハワイ風味探しに気持ちがとられていましたが、何気に、ビッグ・カントリーをやっていて興味深い内容になっています。 

 ジョニー・キャッシュの名作から、ホンキートンク・マイスター、ハーラン・ハワードの作品、ドワイト・ヨーカムのしっとり系バラードまで、バラエティに富んだ選曲です。
 コンウェイの初期の名作ロッカ・バラード、"It's Only Make Believe"には意表を突かれました。

 まあ、意表を突くといえば、ラストのスティーヴィー・レイ・ヴォーン作品、"Pride and Joy"に勝るものはないですね。
 ここでは、ぶっとい迫力のシャッフル・ブルースに果敢に挑戦して、"Sweet Spot"と並んで、ブルージーなDannyが聴けます。

 そんな中、私のお奨めは、オリジナルでは、アルバム・タイトル曲の"My 9th Island Paniolo Ranch"、カバーでは、"Daddy's Home"です。

 "My 9th Island Paniolo Ranch"でいう、9番目の島とはなんでしょう。
 ハワイ州は、8つの島と100以上の小島で構成されています。
 この自作の軽快でポップなナンバーは、「ぼくがほんの子どもだったころ…」という歌詞で始まります。
 ハワイ生まれの気概みたいなことを歌っているのではないでしょうか。
 バックで適時入ってくる「掛け声」「囃子言葉」が雰囲気を盛っています。

 "Daddy's Home"は、ドワイト・ヨーカムのバラードとともに注目のバラードです。
 この曲こそ、最もFreddy Fenderを思わせる歌唱だと思います。
 泣き節が見事に決まったサービス・エース級の1曲でしょう。

 "Daddy's Home"の原曲は、Shep & LimeLitesが61年にリリースした、遅れてきたドゥ・ワップの名作でした。
 時は既にアーリー・ソウルが芽吹き始めていたころです。

 この曲の歌詞の最期は、"〜A Thousand Miles Away"と結ばれています。
 この"A Thousand Miles Away"のフレーズこそ、リーダーで作者のJame Sheppardが、以前に組んでいたグループ、The Heartbeats時代にヒットさせた、もうひとつのワン・ヒット・ワンダー曲のタイトルなのでした。

 Danny Estocadoは、なかなかに面白いアーティストだと思います。
 過去作では、もっとハワイ・ルーツに根差したアルバムもあるようなので、聴いてみたいです。

 ところで、思いつきを書かせてください。
 アメリカのもうひとつの飛び地、アラスカ州には、カントリー・シンガーはいるんでしょうか?
 もちろん、ここでイメージしているのは、エスキモーやカナダのイヌイットのような先住民族出身のシンガーです。
 どうでしょう?

 



Po'o Wai U Makawao Rodeo by Danny Estocado






遊び人ら 国境の南にたむろする

 今回は、初物です。(もちろん、私にとって)
 初めてこのバンドの名前を知った時、字づらから間違った覚え方をしてしまいました。
 よく見ればすぐにわかるのですが、Tejano Gigolos(テハーノ・ジゴロズ)だと思ったのです。
 当然、頭にあったのはTex-Mex系のバンドでした。

 しかし、二度見するまでもなく、正しくはTijuana Gigolosです。
 Tijuanaはメキシコの街の名前、Gigoloはもう英語化してるのでしょうが、もともとはフランス語で、意味はまあ分かりますよね。
 一体、どういうバンドなんでしょうか?


Do Ya Wanna Go ?
Tijuana Gigolos

1. Blind Man Walkin' (Marty Steinhausen)
2. Oh Me Oh My (Marty Steinhausen)
3. Ice Cream Cone (Marty Steinhausen)
4. Le Bigga Mack (Marty Steinhausen)
5. Cajun Jukebox (Marty Steinhausen)
6. Haley's Comet (Dave Alvin)
7. 25 to Life (Marty Steinhausen)
8. Mas Fina (Marty Steinhausen)
9. The Letter (Marty Steinhausen)
10. Days and Days (Marty Steinhausen)  
11. El Fuego Del Sol (Marty Steinhausen)
12. Knock Knock (Marty Steinhausen)
13. South of the Border (Marty Steinhausen)
14. Jeff's Banana (Pick Your Own Damn Fruit) (Jeff Boehmer)
15. Do Ya Wanna Go? (Marty Steinhausen)

 Tijuanaという街からは、レイモンド・チャンドラーの小説(「長いお別れ」?)を連想します。
 私立探偵フィリップ・マーロウが、テリー・レノックスの事件で関わりを持った(?)街でした。

 この街のカナ表記は、ティファナか、ティワナかなんて、訳者のあとがきでしたか、書評だったかで話題になっていたのではないかと思います。

 当時、私は中2くらいだったと思います。
 中1でエドガー・ライス・バローズ(John Carter, Tarzan)に出会い読書の面白さを知り、中2でハワード(Conan)やチャンドラーを知って、さらに夢中になって翻訳小説を読みまくったものでした。
 あれっ 何の話でしたっけ?

 メキシコは、アメリカの4つの州と接していて、東端はテキサス、西端はカリフォルニアに接しています。
 Tijuana(ティファナ)は、メキシコの北西端にあって、カリフォルニア州の南端と接する街です。

 このバンドの本拠地ですが、ウェブから限られた情報を見る限り、ネブラスカ州リンカーンのような気がします。
 それでは、なぜティファナと名乗っていいるのか、という話になりますが、よくわかりません。
 でも、少なくともメキシコのバンドではないだろうと思います。

 本盤を聴いたところ、予想と違う展開で進行し、驚きました。
 当初、Tex-Mex系のバンドだ思っていたのですが、アーシーなカントリー・ロック("Oh Me Oh My")だったり、ケイジャン・カントリー("Cajun Jukebox")だったり、シャープなインスト・ブルース("Jeff's Banana")だったりして、「えっ」という感じです。

 マカロニ・ウエスタンのテーマみたいな曲("El Fuego Del Sol")までやっています。
 さらに、ロカビリーっぽい曲("Days and Days")もあり、ヒーカップ、マンブルを屈指したボーカルが聴けます。
 
 本盤は、05年にリリースされたもので、あるいは、このバンドの1stかも知れません。
 (この後に、もう1枚出でいます。)

 参加メンバーは、以下の通りです。

Marty Steinhausen : guitars, vocals(1,2,3,5,,8,9,11,12,13,15), bass(14)
Tony Meza : congas, bongos, percussion, vocals(6,7,10,12)
Jeff Boehmer : bass, guitar(14)
Tom Harvill : organ, piano, vocals
Dave Robel : drums
guest
Justin G. Jones : cowbell on "Le Bigga Mack"
David Fowler : fiddle on "Cajun Jukebox"
Benjamin Kushner : harmonies on "The Letter"
Joyce Durand : harmonica on "South of The Border"

 メンバーの編成は、ギター、ベース、鍵盤、ドラム、パーカッションからなる5人組です。
 主としてリード・ボーカルをとるのは、ほとんどの曲を書いているギターのMarty Steinhausen(ドイツ系?)で、パーカッションのTony Mezaがセカンド・ボーカルとして4曲ほどリードをとっています。
 Tony Mazaのボーカルは、若干荒い気もしますが、アルバムの中でいいアクセントになっています。

 既に何度か聴き返しているのですが、聴き返すたびに好感度が上がります。
 
 特筆したい曲があります。
 "Oh Me Oh My"です。

 ただ、この曲は、バンドを代表する曲といえるかどうかは難しいです。
 何しろ、いろんなタイプの曲をやるバンドなので、もしかすると突然変異的な1曲かも知れません。
 (見極めるため、もっとアルバムが聴きたいです。)

 あるいは、"Ice Cream Cone"のような、疾走系で不良っぽいロックンロールこそ本質かも、とも思います。
 それでも、"Oh Me Oh My"を、ぜひとも推したい理由があります。
 それは、この曲が、John Fogertyの歌唱を連想させてくれる、最高の曲だからです。

 CCRは、私にとって、Beatlesの次に、その後のレコード漁りの指標になったバンドでした。
 Beatlesからは、50sロックンロール、ロカビリー、ブラック・ハーモニー・グループ、ガール・グループなどに導かれました。

 そして、CCR(John Fogerty)からは、MGsを始めとするメンフィス・ソウル、カントリー、ジャグ・バンド、ゴスペル・カルテットなどに関心を寄せるきっかけを得たのでした。

 "Oh Me Oh My"は、いかにもJohn Fogertyが書きそうなメロを持つ、カントリー・ロックに仕上がっています。
 だけでなく、ボーカルの高音の出し方など、雰囲気がまんまJohn Fogertyという感じで、聴き惚れました。
 全てのJohn Fogertyファンにお奨めの1曲です。

 そして、もう1曲、"Haley's Comet"にも注目です。
 この曲は、元Blastersの中心メンバーだった、Dave Alvinとルーツ系シンガー・ソングライターのTom Russellが書いた曲で、作者盤のほか、Texas Tornadosのカバーがあります。

 ロックンロール・レジェンドの一人、ビル・ヘイリーの晩年の生活、孤独な最期を歌った曲で、「彗星が落ちた」という比喩が印象的です。
 (良く知られているように、彼のパンド名はコメッツでした。)

 アメリカで落ち目になったヘイリーは、ヨーロッパに活路を見出します。
 当初、大きなリスペクトを持って迎えられたヘイリーでしたが、その人気は長続きしませんでした。
 ロックンロールの危険で反抗的なイメージは、マーロン・ブランドから、エルヴィスやジェイムズ・ディーンへと受け継がれ、髪の薄い中年のヘイリーは、時代から置いていかれようとしていたのです。 
 かつてのスターに訪れた現実のペーソスと、栄光時代の幻覚を、疾走感たっぷりのアレンジで描写するロックンロールがかっこいいです。

 アーシーなロックンロールから、カントリー・ロック、ケイジャン・カントリー、シャッフル・ブルース、ウエスタン(?)・インスト、異国情緒漂うボーダー・ソング、繊細で内省的なバラードまで、ごった煮感満載で、まだ正体がつかめない、まだまだ底が深いんじゃないか、そう期待させてくれる好バンドだと思います。

 2ndが入手困難なのが残念です。
  (MP3アルバムは購入できます。)

 まあ、あせらずにいれば、そのうちいつか入手できるでしょう。



Oh Me Oh My by Tijuana Gigolos




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