アフィリエイト広告を利用しています

広告

この広告は30日以上更新がないブログに表示されております。
新規記事の投稿を行うことで、非表示にすることが可能です。
posted by fanblog

グッド・ロッキン・ダディ

 英国ピアノ・ロッカーのアルバムをご紹介します。
 ただし、新譜ではありません。
 私が入手したものは、英盤(アイルランド盤?)のCDで、リリース年のクレジットがありません。
 まあ、ミレニアム以降に出されたリイシュー盤だと思います。

 オリジナル盤は、楽曲の出版年のデータ等から、おそらく98年ころのリリースではないかと推測します。


  
Come On And Dance
Gavin Povey
& The Good Rockin' Daddys

1. Coma On And Dance (Gavin Povey)
2. Looks Likes Love (Gavin Povey)
3. Did I Tell You (Gavin Povey, Augie Meyers)
4. That's The Time (Gavin Povey)
5. Who's That Guy (Gavin Povey)
6. Hold Me Back (Gavin Povey)
7. Glory Bound (Gavin Povey)
8. Call Me Soon (Gavin Povey)
9. Hold Me Close (Gavin Povey, Phil Nelson) 
10. What It Is (Gavin Povey, Phil Nelson)

 Gavin Poveyは、プロフがあまり分からない人です。
 英国の鍵盤奏者で、現在は、Albert Leeのバック・バンド、Hogans Heroesの一員としでピアノやオルガンを弾いています。

 Albert Leeのライヴ盤を聴いたとき、この人は歌いたい人なんだと感じました。
 Leeの公演のセットリストでは、2曲程度、リード・ボーカルをとっています。

 Gavin Poveyは、80年代の英国ロカビリー・スター、Shakin' Stevensの全盛期のアルバム数枚で、ピアノを弾いていた人です。
 Shakyのファンである私は、Albert Leeのアルバムに彼の名前を発見して、俄然関心がわいてきたのです。
 しかも単にバックの人ではなく、自作曲を歌っていることから、ソロ活動はないのかと考えたのです。
 そして、少し調べました。

 結果、よく分かりません。
 ただ、言えることがあります。
 本盤は、おそらく本人のリーダー作としては、現在入手可能な唯一のアルバムだろうということです。

 本作の収録曲は、全て自作で、楽曲の出版は最も古いもので85年、新しいもので98年とクレジットされています。
 これらから、古い曲は、ソングライターとして他人に提供してきたものか、あるいはバンドなど別名義で、本盤以前に録音があるのではないかと考えましたが、調べきれませんでした。

 他人の伴奏では、パブ・ロック、ニューウェイブの時代に、いくつかの痕跡があるようです。

 79年のInmatesの1st、80年のLew Lewisの1stでピアノを弾いています。
 そして、その後まもなく、Shakin' Stevensのバンドに参加します。
 また、この間、84年にはBilly Blemnerのソロ作、"Bash"に参加し、やはりピアノを弾いています。

 興味深いのは、Augie Meyersとの関係です。
 本盤に収録されている曲、"Did I Tell You"は、Augieとの共作で、出版クレジットは85年となっています。
 Augieとは、どういう経緯でつながりが出来たのでしょう。 

 "Did I Tell You"は、Augieも吹き込んでいて、86年の"Augies Back"、同年の"My Main Squeez"と2枚のソロ作で取り上げたほか、Texas Tornadosの91年作、"Zone of Our Own"でも再演しています。

 "Augies Back"がロンドン録音で、Gavin Poveyがサポートメンの一人として参加していましたので、そのあたりがゆかりとなったのかも知れません。

 ところで、"Did I Tell You"は、二人の共作名義ですが、Augieの作風を強く感じさせるつくりの曲です。
 それは、本盤のその他の曲と聴き比べれば明らかです。
 仮に、Gavin Poveyの主導で書かれたとすれば、Gavinが完全にAugieをイメージして書いたのでしょう。

 Augie Meyersのファンなら、このGavin Poveyのバージョンはぜひ聴いていただきたいです。
 ここで、アコーディオンを弾いているのはPoveyです。
 (さらに言いますと、"Did I Tell You"は、Flaco Jimenezもアーフリー時代にカバーしていますので、そちらも聴くほかないですね。)

 ここで、遅ればせながら、本盤の参加メンバーをご案内します。
 以下の通りです。

Gavin Povey : lead vocals, keyboads, accordion, bass
John Dillon : drums on Track1,7
Geoff 'Hound Dog' Haves : guitar & b.vox on track1,7
Jimmy Smith : guitar on track3,6
Fran Byrne : drums on track4,5,8,10
Rod Quinn : drums on track2,9
John McLoughlin : guitar on track2,4,5,8,9,10
John Rafferty : rhythm guitar : on track2

 うーん、誰一人知らないなあ…。
 私の今までの守備範囲には入ってこなかった人たちなのでしょう。

 本盤でのGavin Poveyの大半の演奏は、直球のロックンロール・ピアノで、さらに言えばライト・テイストなブギウギが基本という感じです。
 ボーカルには特段のあくがないですが、クールな雰囲気があります。

 "That's The Time"のような、ニューオリンズR&Bスタイルの三連曲もやっていて、ボーカルはFatsぽかったりしますが、ピアノのプレイは、Fats DominoでもHuey Smithとかの系統でもなく、歌伴で、ポロンポロンときれいなフレーズをいれるところなどは、フロイド・クレイマー風だったりして不思議です。

 早い曲はジャンプ系ですが、かといって、Amos Milburnのような怒涛の打楽器プレイでもないです。
 どちらかといえば、ムーン・マリカンやメリル・ムーアらを連想させる、転がるようなヒルビリー・ブギ・ピアノです。
 
 本盤では、あえて黒っぽさを抑え気味にしている気がします。
 それでも、にじみでてくるのは、ジャンプやジャイブ、ウエスタン・スイングなどのブギ曲のテイストです。
 マンブルぽいボーカルが曲に被さってくると、ピアノ系のロカビリアンという感じにも聴こえます。

 全体的には、ざっくりと、おかずの少ない、ライト・テイストのブギウギ・プレイといってしまいましょう。
 
 中には、スラッピングが聴こえる曲がありますが、クレジットが正しければ、本人のプレイということになります。
 また、ギター陣が良い感じで、Rockpileを連想させるバッキング・プレイは、やはり麻薬のような魅力があります。

 そして、トラック7の"Glory Bound"は、Albert Leeのライヴ盤でやっていた曲です。
 歌詞の中に、グローリーとか、ハレルヤとか出てくるのが特徴で、セイクレッド・ソングなんでしょうか。

 アルバムの終盤の2曲では、ポップ・カントリー調のミディアム・リズムの曲もやっていて、よい感じです。
 とりわけ、ラストの曲は、黒人シンガーがやれば、アーリー・ソウル風に聞こえそうな良曲です。

 本盤は、Gavin Poveyが、自身の資質のうち、あえてカントリー、ロカビリー・サイドのそれを前面に打ち出そうとしたアルバムだと感じました。
 それでも、ときおり顔をのぞかせ、滲み出てしまう、ほのかなR&Bテイストが、私にはたまりません。



Looks Like Love by Gavin Povey


これは、ギターがメインの曲ですね



関連記事はこちら

Albert Lee
超絶速弾き男 実はこんな人

Shakin' Stevens
終わりだなんて言わないで

Augie Meyers
オーギーに首ったけ



テックス・マニアのうたげ


 今回は、Los Texmaniacsの最新作をご紹介します。
 Los Texmaniacsは、Tejas Brothersや、イーストL.A.のLos Fabulocosとともに、私が注目しているTex-Mexバンドです。

 本盤は、彼らの初のライヴ盤になります。
 録音時期は、クレジットがなく不明ですが、09年リリースの前作の収録曲を含む内容になっています。 


Live In Texas
Los Texmaniacs

1. Lucerito  
2. Lollypop Polka  
3. A Mover El Bote (Matias Munoz)
4. Rain, Rain (Huey P.Meaux)
5. Por Una Mujer Casada
6. El Pajualazo
7. Stranded (fea, Willie J. Blues)
8. Viva Seguin
9. Cuando Me Dejes De Amar
10. Que Bonita Chaparrita (Henry Gomez)
11. Sacate Los Piojos Chencha
12. Escaleras De La Carcel
13. Cancion Mixteca
14. Dame Tu Amor Baby (Studio Version)
15. Que Suerte La Mia (Studio Version)

 本盤は、テキサスのローズデイル公園でのライヴとなっていて、野外公演の収録なんでしょうか。
 トラック13までがそのライヴ音源です。
 加えて、2曲のスタジオ録音がボートラとして追加されています。

 収録曲のうち、過去作にスタジオ・テイクがあるものは、以下のとおりです。

1stアルバム "A Tex-Mex Groove" : 04年
チョイスなし

2ndアルバム "About Time" : 07年
4. Rain, Rain
9. Cuando Me Dejes De Amar
10. Que Bonita Chaparrita

3rdアルバム "Border Y Bailes" : 09年
1. Lucerito 
2. Lollypop Polka
3. A Mover El Bote

 ここで、Los Texmaniacsについて、おさらいしておきましょう。
 中心人物はMax Bacaという人で、バンドは、彼の弾くバホ・セスト(12弦ギター)とアコーディオン奏者とのデュオという、伝統的なコンフント・スタイルをベースにしたバンドだと思います。

 出身は、おそらくサン・アントニオだと思われますが、活動拠点はオースティンかも知れません。
 また、イーストL.A.のチカーノ・バンドとも交流があるか、もしくはウエストコーストで活動期間があるバンドではないかとも推察します。

 04年リリースの1stアルバムの頃は、バホ・セスト、アコーディオン、ベースというトリオ編成で、正式メンバーとしてはドラムレスのバンドでした。
 この時、Max Bacaの相棒としてアコを弾いたのが、様々なTex-Mex系バンドでセッションしている、Michael Guerraという人です。

 Michael Guerraは、Shawn SahmのTex-Mex Experienceに参加していた人で、あのバンドはどうなったんでしょう?
 Shawn Sahmが、新生Texas Tornadosを組んだ時点で自然消滅したのかな。
 Shawnとは交流が深いようで、Michaelは、そのTexas Tornadosの復活作へも参加したほか、少し以前のShawnのソロ作では、Max Bacaとともににクレジットされていました。

 その他、初期のLos Lobosを彷彿させる、Los Lonely Boysのアルバムへの参加をはじめ、Augie Meyersのソロ作、Krayolas(Tex-Mex Beatles !)のアルバム、Raul Malo(Mavericksのリード・シンガー)のソロ作など、色々とお呼びがかかっている人気者です。
 ただ、ツアーよりもスタジオを選んだのでしょうか、彼は1stのみでバンドを離れます。

 1stの"A Tex-Mex Groove"は、Los Lobos勢のバックアップのほか、Augie Meyers(key)、Sawn Sahm(g)、Ruben Ramos(vo)らが協力していて、華々しいデビューという感じです。 
 "She's About A Mover"のカバーをやっていて、それが、私がこのバンドに興味を持ったきっかけでした。

 2ndの"About Time"は、私が最初に入手したアルバムです。
 1stの路線を正統進化させたもので、伝統的音楽からの影響とポップなロックンロールのスタイルを融合させた素晴らしい作品で、やはりLos Lobos勢やAugie Meyersがゲスト参加しています。

 そして、このアルバムから、アコーディオンがDavid Fariasにチェンジし、現在まで続くツー・トップ体制が確立します。
 また、ドラムスが正式にに加入しました。

 対して、3rdアルバムの"Border Y Bailes"は、完全に伝統音楽の探求へとシフトしたコンセプト・アルバムになっています。
 アカデミックな性格を打ち出したもので、メキシカン・アメリカンのルーツに根差した、ポルカ、クンビア、ランチェラ、ボレロなどの伝統音楽のショーケースになっています。



 スペイン語中心のアルバムなので、前2作と比較するととっつきやすさは後退しています。
 バンドは、このアルバムでグラミーを受賞しました。
 そして、このときからベーシストが交代し、現在の編成になります。
 以下のとおりです。

Max Baca : bajo sexto, vocals
David Farias : Accordion, vocals
Oscar Garcia : bass, vocals
Lorenzo Martinez : drums

 本盤のセット・リストは、2ndと3rdからの選曲と、新たなレパートリーで構成されています。
 ここでの伝統曲は、あくまで皆が踊って集えるチューンとして、ポップな英語曲となんの違和感もなく溶け合っています。

 フォーク・ダンス曲のような"Viva Seguin"も、Doug Sahm盤、Freddy Fender盤が有名なスワンプ・バラードの"Rains Came"(本盤では"Rain Rain"と表記)も、流れるように展開して、耳に心地いいです。

 ざっくりいって、このバンドは、やはりバホ・セストとアコーディオンのデュオを核とした、ごきげんなダンス・バンドです。

 さらに言えば、テックス・メックスの王道を行く、豊かな音楽性を持ったポップ・バンドだと言いたいです。



Que Bonita Chaparrita by Los Texmaniacs




関連記事はこちら

Los Texmaniacs
ごきげんメックス・テックス
テキサス熱中時代
フェリース・ナビダ
オーガストとマクシミリアン

Tejas Brothers
リッチマンの歌
君にだって起こるさ

Los Fabulocos
イーストL.A.発キャリ・メックス
メヒコ・アメリカーノ

The Krayolas
マージーでフォーキー、そしてテキサス
テツクス・メックス・ビートルズ

Raul Malo
罪人と聖者のはざ間で





正統 王様バンド降臨 !

 カラスコに外れなし!!

 やみくもに叫んでしまいました すみません。
 でも、最近の高アベレージをみていると、思わずそう言いたくなります。

 今回は、Joe King Carrascoの最新作をご紹介します。
 前作からさほどのインターバルなしに、早くも新作がリリースされました。
 しかも嬉しいことに、表記こそスペイン風ですが、Joe King Carrasco and The Crownsの31年ぶりの再会アルバムなのです。

 彼らは、昨年11年に合流し、どうやら6月に再会記念公演を、さらには8〜9月にテキサスの州内各地を回って追加公演を行ったようです。

 そして、スタジオに戻った彼らの最新の成果が、ここに届けられたというわけです。
 これが期間限定の同窓会なのか、それとも本格的な再結成なのか、今後の展開が気になるところです
 興味深く見守りたいです。


Que Wow
Joe King Carrasco y Los Crowns Originales !

1. Drug Thru the Mud (Joe King Carrasco)
2. Que Wow (Joe King Carrasco)
3. Havin a Ball (Joe King Carrasco)
4. Nacho Daddy (Joe King Carrasco)
5. Yo Soy Tuyo (Joe King Carrasco)
6. My Lil Anna (Joe King Carrasco)
7. 1313 Jamaica (Joe King Carrasco)
8. Pachuco Hop (Joe King Carrasco, Johnny Perez)
9. Vamos a Matar El Chango (Joe King Carrasco)
10. Macho Grande (Joe King Carrasco)
11. Rosa La Famosa (Joe King Carrasco)
12. Right On Catcheton (Joe King Carrasco)
13. Bandido Rock (Joe King Carrasco)
14. Drug Thru the Mud (Hidden Radio Track) (Joe King Carrasco)

 はっきりいって、オリメンが誰だったのか、認知していませんでした。
 しかし、ひとつだけはっきり言えることがあります。

 キーボード&アコーディオンのKris Cummings女史のピーピー・サウンドと、Joeの声質こそが、Crownsサウンドの要だったのだ……と。
 メンバーを再確認しましょう。
 ジョーにブラッドにミゲル(マイク)にクリス、以下のとおりです。

Joe King Carrasco : guitars, vocals
Kris Cummings : keyboad, accordion, vocals
Mike Navarro : drums, percussion, vocals
Brad Kizer : bass, vocals

 こうやってみると、シンプルですね。
 ギターが1本なんですよ。
 久々に、ハードかつラテン志向のリード・ギターリストが不在の編成で、とても新鮮です。

 そのかわり、よく歌うジャバラと鍵盤が、バンド・サウンドのカラーを決定していることに、改めて気づかされます。


裏ジャケ(ドクロ見参!!)


 さて、Joe King Carrascoのキャリアは、乱暴に分けると以下のようになります。

Joe King Carrasco and El Molino (デビュー作、1作のみ。最初はカセットでリリースされた。)
Joe King Carrasco and The Crowns (ざっくり80年代)
Joe King Carrasco y Las Coronas (ざっくり90年代以降)

 この間、ソロ名義のものもありますが、メンツはCoronasである場合が多いようです。

 最初のバンド、El Molinoは、リズム隊、ホーン陣ともに大充実のオルケスタで、メンツは、Augie Meyers(key),Speedy Sparks(b), Ernie Durawa(dr), Charlie MacBurney(tp), Luie Bustos(sax), Rokey Morales(sax)ほかを擁する最高のバンドでした。
 このメンツは、完全にDoug Sahm人脈で、バンマスはおそらく、トランペットのCharlieだと思われます。
 この編成に近い楽団をDoug Sahmの作品でいいますと、名盤"Westside Sound Rolls Again"です。
 素晴らしさが想像できますよね。

 このあと、すぐにスモール・コンボ化して、新たに結成したのがCrownsで、オルガンとアコの能天気サウンドが印象的でした。
 Carrascoの作品は、ほとんどオースティンで録音されていますが、Crowns時代には例外的にニューヨーク録音があります。

 次いで、Coronasでは、リード・ギターが加入したのが特徴で、時にハードに、時にラテン風に派手に弾きまくり、好き嫌いがあるかも知れませんが、やはり能天気さは不変です。

 そして、今回のCrowmsの再集結盤ということになります。

 ところで、冒頭に31年ぶりの再会と書きましたが、これはライナー氏の文を引用したものです。
 しかし、この31年というのは、実はハテナです。

 仮に本盤の録音を11年として、そこから起算したとして、31年前を計算すると80年になります。
 Crowns名義の同名タイトルのアルバムがリリースされたのが80年で、おそらくはそこから数えているのでしょう。
 しかし、その前年に、既にCrowns名義で"Tales From The Crypt"が出ていて、正確にはここから計算すべきでしょう。

 なぜなら、80年のアルバムでは、早くもドラムスのチェンジが行われているからです。
 オリジナルを名乗る以上、本盤に参加したMike Navarroを加えた編成時点から数えるべきでしょう。
 その後まもなく、Dick Rossという人とチェンジして、バンドが変わっても、この人が長くタイコを叩くことになります。
 90年代には、一時期、Javler Zentenoという人が叩いていますが、アルバムとしては1枚だけ(のはず)です。

 さて、そろそろ中身を聴いていきましょう。
 Joe King Carrascoは初心者だけど、Nick Loweは大ファンだという方は、Nick Loweの"Half a Boy and Half a Man"を思い出してください。
 あんな感じのサウンドを思い描いていただければ、そう遠くはありません。

 実は、Joe King Carrasco & The Crownsの同名タイトルのアルバムは、英国では、Stiff Recordsからリリースされていて、Nick Loweともレーベル・メイトだった時期があったのでした。
(同じ年に出た同名の米盤は、収録曲に数曲違いがあります。)

 うーむ、懐かしくて涙がでそうですね。
 私が持っているのは、Stiffのラベルのカラー盤ですが、なぜかメイド・イン・西ドイツです。
 (時代を感じますね。)

 当時は、Joe King Carrasco版、"You're Gonna Miss Me"(または"96 Tears"か"Gloria")ともいうべき"Let's Get Prety"とか、あのあたりの曲が好きで、繰り返し聴いたものでした。

 さて、本盤の収録曲のうち、過去作の再演が数曲あります。
 まず、そのあたりから整理してみましょう。
 以下の4曲がそれです。

8. Pachuco Hop
10. Macho Grande
11. Rosa La Famosa
13. Bandido Rock

 "Pachuco Hop"と"Bandido Rock"の2曲は、87年のアルバム"Badido Rock"収録曲の新録音です。
 私が持っているアナログLPは、仏New Rose盤です。

 そして、"Macho Grande"は、08年のサントラ盤、"Rancho No Tengo"収録曲の新録音です。
 くだんのアルバムは、いつものメンツが全く参加せず、Joe King Carrascoのギター以外は、ほとんどのパートを、Gene Moriartyという人が一人で多重録音している変則アルバムでした。
 (私は、映画は未視聴ですが、このサントラはよいです。モリアーティ教授(と呼びたい)に任せたサウンドは、カラスコの個性を弱めることなく、別の魅力をみせることに成功しています。アーシーでレイドバックしたカラスコが聴けるのはこれだけです。)

 "Rosa La Famosa"は、11年リリースのライヴ盤、"En La Ruta Maya"(録音は08年)でやっていた曲です。
 私の知る範囲では、スタジオ・テイクを収録したアルバムはないと思います。
 でも、普通はありそうですよね。
 あるいは、私が未入手のアルバムに収録されいるのかも知れません。
 (MCA盤で未入手のものがあります。)

 うーん、気になってきました。
 最近、アナコンダ・レコードから、過去の音源の復刻が進んでいるようなので、チェックしたいところです。
 (ただ、ストレート・リイシューではなく、ジャケもタイトルも、選曲も違う新編集盤が複数でていて、お宝を含むのか、全て既出曲のみなのかが判別しがたく、ファン泣かせです。)

 とまれ、細かいことはなしで、とにかく聴きましょう。
 30数年の時の流れを超えて、あの懐かしいサウンドが部屋中に広がっていきます。
 全身が音に反応します。
 捨て曲一切なし 最高です。

 私の好みでは、とりわけ"Drug Thru the Mud"に痺れます。
 4人のアンサンブルが、最高に決まった瞬間を捉えた名演だと思います。
 もはや、麻薬のような習慣性のある音楽としか言いようがないです。

 元も子もないかもしれませんが、この際言ってしまいしょう。
 やっぱり、Joe King Carrascoは、どんなスタイルでも楽しい……と。
 あー 言っちゃった。

 今作は、人によってはノスタルジックな感傷にひたれる作品かも知れません。
 (私にはそうです。)
 クリスのリフのループは、デジャヴ感満載でぐいぐいと効いてきます。

 先に名前をあげた曲以外は、新曲のはずですが、ほとんどが以前から知っていた曲だ、そんな気がしてなりません。
 魔法にかけられたような気分です。
 今現在の私は、Coronasの何倍も、このOriginal Crownsが好きです。
 曲によっては、Krisのオルガンが、もろAugieのプレイを連想させて涙がちょちょぎれそうです。

 Coronasと比べると、狂気の部分が抑えられて、若干サウンドが大人になった気もしますが、これを「味」とか「年輪」と呼ぶのは、彼らには似合わないです。
 どの時代でも、根源にあるのはひとつだからです。

 能天気で無条件に楽しいサウンド、体験していない方は聴くほかないです。
 ほんとに…。

 いつかこのバンドで、新生Texas Tornadosとの共演盤を作って、Augie、Flaco、Krisのバトルを実現してほしいです。
 (Texas Tornadosの96年作、"4Aces"では、Carrascoがゲスト参加して、DougとFreddyがデュオしたCarrascoのカバー曲、"Tell Me"でギターを弾いていました。) 


Drug Thru The Mud by Joe King Carraso y Los Crowns 2011




関連記事はこちら

そんなに長尺じゃありません
王様、アメリカン・ロックする
王様、わんこをレスキューする
若き日の王様とエル・モリーノ
コンチネンタル・クラブへようこそ





バッパビリー・スイング

 アコースティック・スイングって、最近とんと話題を聞かないんですが、私が情報にうといだけでしょうか?
 まあ、レココレとかも、気になる記事がないと立ち読みで済ましちゃう人なので、世間知らずかも知れません。

 かつて、鈴木カツさんや宇田和弘さんが著作のタイトルに使ってたりして、それなりに用語として露出していた時期もありましたが、さほど高まることもなく沈静化したんじゃないか、というのが私の印象です。

 当時は、ジョン・ミラーとか、ルウ・ロンドンとか、私の嗜好に合っていたのでしょう、随分と感化されたものでした。

 でも、言葉の流行り廃りとは関係なく、音楽は存在します。
 ジャネット・クラインなど、それなりに話題になっている人がいても、グッドタイム・ミュージックとか、単に別の名前で呼ばれていることもありますよね。

 アコースティック・スイングでも、グッドタイム・ミュージックでもいいのですが、そういった言葉から自由にイメージしてください。
 今回は、そんな(?)アルバムです。

 

Bop-A-Billy Swing !
Recorded Live !
Beats Walkin'

1. Lady Be Good (Gershwin)
2. Suger Moon (Wills, Walker)
3. My Window Faces The South (Livingston, Silver, Parish)
4. Straight, No Chaser (Monk)
5. Eating Right Out of Your Hard (Bass) 
6. Honeysucle Rose (Waller, Razaf)
7. Old Fashioned Love (Mack, Johnson)
8. Route 66 (Troup)
9. Wonderful World (Welss, Thiele)
10. Heart of a Clown (Nelson, Rollins, Kane)
11. Choo Choo Ch'Boogie (Horton, Gabler, Darling)
12. Goin' Away Party (Walker)
13. Reckon I'm a Texan Till Die (Wood, Butler)
14. House of Blue Lights (Jacobs)

 Beats Walkin'というバンドをご紹介します。

 まあ、バンドというより、グループと呼びたい感じですね。
 ボーカルは若々しく、艶もありますが、ジャケ裏の写真を見る限り、かなり年配のメンツで構成されているようです。

 基本のメンバーは4人で、ギター、ベース、スチール・ギター、ドラムスという編成です。
 さらに、本盤では、サックスとフィドルがゲスト参加しています。

 メイン・ボーカルは、ギターの女性とドラムスの男性が分け合っている感じですが、ほかの2人もそれぞれ1曲づつリード・ボーカルをとっています。
 詳細は、以下のとおりです。

Wendi Bourne : guitar, vocals on tracks 1,2,6,8,10,12
Jim Cohen : pedal steel guitar, match-bro, vocals on tracks 5
Bob Lewis : bass, vocals on track 11
Chuck Lindsey : drums, vocals on tracks 3,7,9,14
guest :
Troy Corley : tenor saxophone
Joel Glassman : fiddle

 本盤は、01年のフィラデルフィア公演のライヴ録音で、02年にリリースされました。
 彼らは、どうやらペンシルバニア州出身らしいこと、この前にもう1枚アルバム(97年)があること、このグループの情報は、ほとんどこれが全てです。

 私は、ジャズについてはほとんど門外漢ですが、セロニアス・モンクくらいは知っています。
 まあ、「ラプソディ・イン・ブルー」(だけ)を知っている程度ですから、ごくごく普通のレベルです(?)
 トラック4のインスト、"Straight, No Chaser"は、初めて聴きました。
 「ラプソディー」とは全くイメージが違う曲ですね。

 そして、ファッツ・ウォーラーも同様です。
 "Honeysucle Rose"は、有名だと思いますが、やはり曲名は知っているけれどメロと一致しない、そんな程度でした。
 ここでは、スチール・ギターが主役になって頑張っています。

 さて、本盤には、作者がWalkerとなっている曲が複数収録されています。
 "Suger Moon"と"Goin' Away Party"がそうです。
 これらは、いずれもCindy Walkerのことで、ヒルビリー〜ホンキートンク時代の人気女性コンポーザーです。
 多くのシンガーに曲を提供していますが、私にとっては、Bob Willsの名作をいくつも書いた人として大好きな人です。

 "Suger Moon"では、そのBob Willsとの共作名義になっています。
 当然、Bob Wills & His Texas Playboysのレパートリーです。

 カバーでは、Asleep At The Wheel盤がお奨めです。
 ライヴ盤でもやっていました。
 ジャジー、かつレイジーな雰囲気を持つ曲で、いかにもRay Bensonが好きそうな曲です。
 本盤では、軽快で楽しげなアレンジでやっています。

 "Goin' Away Party"は、多分初めて聴く曲で、原曲は知りません。
 ライナーには、レスリー・ゴアからインスパイアされて書かれた曲、みたいなことが書かれています。
 でも、レスリー・ゴアって、ぶりぶりの60sアメリカン・ポップスのイメージですよね。
 ここで言われているのは、やはり代表曲の"It's My Party"なんでしょうか?
 曲名からいってそんな感じですよね。
 "It's My Party"のアンサー・ソングですか(?)
 でも、こちらはバラードなのでした。

 余談ですが、Willie Nelsonが、Cindy Walkerの曲ばかりを歌ったアルバムを出しています。
 結果的に、Bob Willsのレパートリー中心の選曲になっていました。

 そのBob Willsは、本盤でも主役級の扱いです。
 このBeets Walkin'というバンドは、ジャズ小唄的な曲とBob Willsが好きなんだと思います。
 "My Window Faces The South"と"Old Fashioned Love"の2曲が、Bob Willsの有名曲のカバーです。

 とりわけ、"My Window Faces The South"は、多くのカバーがある人気曲です。
 ロック・ファンには、Commander Cody & His Lost Planet Airmen盤がお奨めですが、もちろん、Asleep盤もよいです。
 この曲は、誰がやっても外れなしの名曲だと思います。

 "Old Fashioned Love"は、知名度ではかなり劣りますが、これも良い曲です。
 スリー・ドッグ・ナイトの大ヒット曲は、"Old Fashioned Love Song"で別の曲です。

 "Old Fashioned Love"は、元は古いジャズのピアノ・インストかも知れません。
 いつの時点かで、誰かヒルビリー系歌手が歌詞を付けて、この形にしたのではないかと思います。
 でも、オリジナルはともかく、やはりこの曲はBob Wills盤が最高です。
 Bob Willsのヒット盤は、47年にリリースされています。
 この曲は、マール・ハガードも、Bob Willsのトリビュート・アルバムで演っていました。

 その他、ルイ・ジョーダンの"Choo Choo Ch'Boogie"や、定番の"Route 66"まで、いずれも小粋で軽快なボーカルで、おしゃれかつ爽やかに歌っています。
 曲によっては、男女ボーカルのかけあいなどもあり、マンハッタン・トランスファーを連想させたりもします。

 "Choo Choo Ch'Boogie"では、スチール・ギターが列車の走りの爽快感を、サックスが力強く邁進するさまを表現しています。

 かと思えば、サッチモの"Wonderful World"では、ほとんど直球勝負でうっとり歌いあげていて、サッチモを意識しつつも、過度なダミ声になって物まねになりそうなのをこらえています。

 ラストは、これまた定番の"House of Blue Lights"で締めです。
 ロックンロール・ファンには、もちろんChuck Berry盤ですね。
 原曲はよく分かりませんが、ヒルビリー・ブギ・ピアニストのメリル・ムーア盤がポピュラーにした曲だと思います。
 メリル・ムーアは、ムーン・マリカンとともに、ジェリー・リー・ルイスのお手本になった人です。

 もちろん、Jerry Lee Lewisもやっていて、その他、Commander Cody & His Lost Planet Airmen盤、Asleep At The Wheel盤もあります。
 Chuck Berry直系では、George Thorogood盤もあり、ちょっとラウドてすが聴きものです。
 本盤では、少しテンポをゆったりめにして、リラックスした雰囲気でやっています。

 レパートリーから、全体的にカントリー寄りかと思われるかも知れませんが、意外とカントリー臭は希薄で、特にスチール・ギターのサウンド、フレーズにそれを感じます。
 ピアノレスにも関わらず、モダンな雰囲気を感じさせる、大人のサウンドに仕上がっています。

 ロッキン・サウンドはもちろんいいですが、たまにはスインギーというのもいかがでしょうか。




My Window Faces The South by Beats Walkin'




San Antonio Rose 〜 Hey Good Lookin' 〜 
Don't Fence Me In 〜 Smoke! Smoke! Smoke! 〜 etc etc…
by Beats Walkin'


あれっ MCでテキサス・スイング・バンドって紹介されてますね?



関連記事はこちら

ぼくんちの窓は南向き
シンディ・ウォーカー20選
バディ、ボブを歌う
最後のときに
テキサスのご婦人方
オースティン音楽バンド


ブラウン・ソウル 孤高のテハーノ

 今回、かねてから欲しかったアルバムが手に入ったのでご紹介します。
 サン・アントニオ出身のチカーノ・シンガー、Joe Jamaが04年にLa Luz Recordsからリリースしたものです。
 私にとっては、彼の3枚目のコレクションになりました。
 うち1枚は、全編スペイン語で歌うラテンものでしたので、英語で、なおかつR&B中心の演目は、やはり嬉しいです。

 この人は、ほとんど日本では無名だと思いますが、私は、イーストLAでいう、Little Willie Gに比肩する人だと思っています。
 まあ、Willie Gも、一部の好事家のみに知られているにすぎませんが…。


Leigh Street Blues
Joe Jama

1. Southside Shuffle
2. Tired Of Being Alone (Al Green) 
3. Too Close To The Border (Randy Garibay) 
4. Make Somebody Happy (John Alexander Lightwood) 
5. Beginning (Robert William Lamm)
6. 25 or 6 to 4 (Robert William Lamm) 
7. Moondance (Van Morrison) 
8. I'll Be Around (Randolph Thomas Bell)  
9. The Next Time You See Me (Earl Forest, Bill Harvey)
10. Baby I'm For Real (Anna Gaye, Marvin Gaye) 
11. Pappa Was A Rolling Stone (Barrett Strong, Jesse Norman Whitfield)
12. America The Beautiful (Katharine T. Bates)

 名前のカナ表記は、私はジョー・ジャマとしていますが、ジョー・ハマと記している人もいるようです。
 普通は、そっちのほうが正しいような気もします。
 ただ、この人のJamaという姓は本名ではなく、ニックネームが元になったステージ・ネームです。

 49年サン・アントニオ生れ、Joe Peralesというのが彼の本名です。
 16歳のとき、チカーノ・ドゥワップ・グループの名門、Royal Jestersに参加(多分)、公演地の宿泊先で、ティーンネイジャーらしいバカ騒ぎを起こします。
 このとき、半裸のパジャマ(Pajama)姿が滑稽だったことから、仲間たちから、Joe Pajamaとはやしたてられ、その後、Joe Jamming → Joe Jamas、そして現在のJoe Jamaへと落ち着いたとのことです。(彼自身が言っていますが、ネタの可能性もあります。でも、ネタだとしたら内容がつまんないですよね。)

 元がパジャマですのでジャマかな、というのが私の考えですが、そんな元ネタは風化して、ハマと呼ばれている可能性はあると思います。
 彼の名をコールするMCが聞きたいですね。
 (残念ながら、ようつべには、あまり動画がありません。)

 さて、この人はアフロ・アメリカンの音楽に強い影響を受けたシンガーであり、そしてオルケスタのベーシストでもあります。
 ソロ・アルバムはあまりないと思われ、また、音楽活動の近況も私には知るすべがありませんが、最近では、Royal Jestersのリュニオン・ライヴ・アルバムにゲスト参加していました。

 シンガーとしては、ウラに近い高音から低音の太い声までを屈指する人で、決して美声とは言い難いですが、味のあるいい歌手だと思います。

 今作では、メンフィス・ソウルから、ブラス・ロック、ヴァン・モリスン(これはジャンルじゃないけど、そうとしか言いようがない)、フィリー・ソウル、モータウン、そしてアメリカ讃歌(愛国歌)まで、いろいろやってますが、違和感なくスンナリ聴けます。

 本盤の参加メンバーは以下の通りです。 

Joe Jama : lead vocals, bass guitar
Anthony Hernandez : keyboads
Xavier(Weasel) Portillo : drums
Ray Zule : guitar
Ralph Saenz : guitar
George Gonzales : guitar
David Alcocer : guitar
Louie Delgado : percussion
Jorge Alejandro : percussion
Rene Garcia : trombone
Gabe Pintor : saxaphones
Adrian Ruiz : trumpet
Al Gomez : trumpet



 いつも思うのですが、ロックでは、サックス入りのサウンドは珍しくないですが、トランペットが加わると格段にゴージャス感が増しますよね。
 まして、本盤のように、トロンボーンとのコンボだと最高です。
 大人数のラテンでは普通なのでしょうが、この編成で古いジャンプやスイングを演るとはまりまくりで、私の大好物です。

 全体のサウンドは、まさにそのホーン陣が花形と言っていいでしょう。

 アルバムは、哀愁のメキシカン・トランペットの静かなイントロから、バンドが一斉に立ち上がってくる、ジャンプ系R&Bインスト、"Southside Shuffle "でスタートします。
 おしゃれ、かつスリリングで、かっこいいです。

 ボーカル曲のトップは、Al Greenのナンバーで始まります。
 この"Tired Of Being Alone"という曲は、最近、Sam Cookeのカバー集で話題のトータス松本が大好きだと言っていた曲で、彼が03年に出した最初のカバー・アルバム、「トラベラー」で演っていました。
 (ちなみに、私の好みでは、今回の「ツイスティン・ザ・ナイト・アウェイ」より「トラベラー」の方が好きです。)
 サウンドは、あまりHiっぽさは感じず、所々Bobby Womackみたいに聞こえたりもしますが、Joe Jamaは、原曲にそって、ねちっこくウィスパーに歌っています。
 おしゃれなリズム・ギターとオルガン(?)のロング・トーンが耳に残ります。

 続く"Too Close To The Border"は、初めて聴く曲で、やはりオルガンの鳴りが印象的なシャッフル・ブルースです。
 Bobby Blandに似合いそうな曲だと思いました。
 原曲は分かりません。

 そして、"Make Somebody Happy"は、フィリー・ソウルっぽい曲ですが、どうもSantanaのナンバーらしいです。
 私は、サンタナについては、「哀愁のヨーロッパ」の泣きが大好き、程度のライト・リスナーです。
 意識して聴いても、さほどラテンぽさは感じません。
 ただ、ギター・ソロはそれっぽいですね。
 それ以外は、ソウル・コーラス・グループの曲だと言われれば、信じるレベルです。
 Jamaは、貫禄のリード・ボーカルを聴かせています。

 続いて、"Beginning"から、"25 or 6 to 4"へと、Chicagoのカバーが連続できます。
 私は、これまた、Chicagoもライトなリスナーで、初期のいくつかのヒット曲を知っているくらいです。
 でも、"25 or 6 to 4"は、曲名は一致しませんでしたが、メロを聴いて、思わず座り直してしまいました。
 「これ知ってるなあ」と独り言を言っていました。
 バンドの編成からいって、この選曲は正解で、いい流れでアルバムが進行していると感じました。
 この曲のみ、女性ボーカルがデュエットしています。 

 そして、問答無用の名曲、"Moondance"です。
 同名アルバムは、A面の流れが最高に好きです。
 ここでのJoe Jamaは、オリジナルの雰囲気をうまくなぞったアレンジで、物憂げ感をうまく表現しつつも、力強く歌いきっています。
 やりきり感がいいです。
 ホーン陣も、ブリブリではなく、ジャジーに迫っています。

 次の"I'll Be Around"は、Spinnersの大ヒット曲のカバーですね。
 フィリー・ソウルの中では、甘すぎないところが、私は気に入っているグループです。
 ファルセットのメンのパートも、バリトンのパートも、一人でやりきっています。
 コーラスとの絡みも決まってますが、もしかしたらコーラスも自身で入れている可能性はあります。
 ムーディーな名曲にうっとりさせられます。

 Junior Parkerの名作、"The Next Time You See Me"は、スイート・ソウル中心の展開のなか、素晴らしいアクセントになっていて、するりと聴き手の内側に侵入してきます。
 ソウル・バラードから、一転ソリッドなブルースへと転換する流れが、とても効果的です。
 ここでも、ほとんどオリジナルどおりに演っていて、素晴らしいです。

 再び、静かに優しくスタートするバラード、"Baby I'm For Real"が、またもムードを一転させます。
 ここでも、Joe Jamaが、スイートなテナーと、力強いバリトン・リードを一人で演じています。
 原曲は、モータウンのソウル・グループ、Originalsですね。

 そして、名門Temptationsの"Pappa Was A Rolling Stone"のカバーの登場です。
 この時代のテンプスは、私はいまいちですが、本盤のこれまでの流れ的にはOKです。

 ラストの"America The Beautiful"は、アメリカの愛国歌です。
 私は、Elvisあたりを連想しましたが、Ray Charles盤が有名なようです。
 古い歌だと思いますが、9.11で多くの歌手が取り上げ、さらに広まった曲ではなかったかと思います。

 なぜ、本盤のラストがこの曲なのかは、よくわかりません。
 ちなみに、アルバムがリリースされた04年は、大統領選挙の年でした。
 共和党のジョージ・ブッシュ(テキサス出身、息子の方)が再選したのでした。




関連記事はこちら

ジョー・ジャマの音楽と人生
ウエストサイド・ソウル
ハイウェイ90サウンドに酔いしれて
ハーレムのダイスを転がせ




   
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。