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ルイジアナで迎えるクリスマス

 クリスマスですね。
 この時期には、旬の企画ものが出ますが、まったく買っていません。
 でも、キャロル・キングの新譜はちょっと気になっています。

 定番のクリスマス・アルバムというものがあって、私もいくつか持っていますが、ずっと欲しいと思いながら買い逃しているものがあります。
 ベンチャーズのクリスマス・アルバムなんですが、今年も入手せずじまいでした。
 "I Feel Fine"のイントロから始まるのは、「赤鼻のトナカイ」でしたっけ?

 今回は、おそらく誰も注目していないだろうアルバムを紹介します。

 
Have a Merry South Louisiana Christmas

1. White Christmas : Van Broussard
2. It Won't Be Christmas Without You : Ronnie Melancon
3. Louisiana Christmas Day : Ryan Foret and Foret Tradition
4. Silver Bells : Kenny Cornett
5. Rockin' Around the Christmas Tree : Mike & Steve Broussard
6. All I Want For Christmas Is You : Wayne Foret
7. Jingle Bells : Fats Domino
8. Christmas Comes But Once A Year : Ronnie Melancon
9. Let It Snow : Gary T.
10. Santa Claus Is Back : Jake Chimento
11. So This Is Christmas (McCLain, Hacher) : Mike & Steve Broussard
12. I Told Santa Claus : Kenny Cornett
13. Blue Christmas : Mike & Steve Broussard
14. Rudolph The Red Nosed Reindeer : Fats Domino
15. Please Come Home For Christmas : Van Broussard
16. Jingle Bell Rock : Grace Broussard
17. I'll Be Home For Christmas : Travis Thibodaux
18. Sweet Dream Christmas (Kane, Glaze) : Kane Glaze

 ルイジアナで、現在進行のスワンプ・ポップをリリースし続けている、CSP Records制作のクリスマス・アルバムです。
 本盤は、07年にリリースされました。

 私は、当初、収録曲はこの盤のための新録かと思っていたのですが、どうやら既出の吹き込みの寄せ集めのようです。

 Wayne Foretの"All I Want For Christmas Is You"は、彼のアルバム、"Still Going Strong"からのチョイスです。
 また、Ryan Foretの"Louisiana Christmas Day"は、やはりRyanのアルバム、"She's Mine"からのものです。

 その他、ネタ元は調べ切れていませんが、VanとGraceのBroussard兄妹は、CSPではお馴染みです。
 あるいは、Van Broussardは、CSP Recordsで最も多くのアルバムをリリースしているスワンプ・ポップ・シンガーかも知れません。

 Ryan Foretもやはりお馴染みです。
 この人もベテランですが、VanやWayneに比べると若手でしょうか。

 Gary T.と息子のTravis Thibodauxが、それぞれソロでフューチャーされているのが嬉しいです。
 期待にたがわず、いい味を出しています。
 (実は今日、この親子の共演盤、"Deuce Of Hearts"(99年Jin Records)が届きました。)

 その他は初めて聴く人ばかりです……。
 一人の超大物を除いては。

 そう、もちろん、Fats Domino師匠ですね。
 師匠もCSPに録音していたとは驚きです。

 そこで少し調べたところ、どうやら、93年のキャピトルからのアルバム、"Christmas Is A Special Day"が出典のようです。
 CSP Recordsは、このアルバムを06年にジャケを替えてリイシューしていました。
 本盤のFatsの収録曲は、この"Christmas Is A Special Day"からのチョイスです。

 この人は、やはり凄いですね。
 最近作は、06年のものでしょうか。 

 私は、活きのいい現役スワンプ・ポップ・シンガーに関心があります。
 しかし、Fatsのこの90年代の録音を聴くと、その強烈な存在感に圧倒されました。

 全盛期をはるかに過ぎていますが、あるいはB.Bと同様、まだまだ晩年などではなく円熟期なのかも知れません。
 ただ、カトリーナ以降、流石に活動のニュースが伝わってこないようです。

 Ronnie Melancon
 Kenny Cornett
 Mike & Steve Broussard
 Jake Chimento
 Kane Glaze

 この5組はいずれも初めて聴きました。
 1、2曲を聴いただけで判断できませんが、一聴した感想は似ています。
 
 彼らは、おしなべて普通にうまいです。
 これは肯定ではありますが、なんとも手放しで好きとは言えず、こんな風に言ってしまうのがもどかしいです。

 言葉足らずなのが歯がゆいですが、とりあえず思いつくまま言えば、あくの強さが不足しているように感じます。
 普通にうまいし、古いスタイルの曲もそつなくやりそうです。
 でも、私は、普通にうまいより、「へたうま」のほうが好きです。

 「えぐさ」や「危険な香り」、または逆に「茫洋とした抜けた感じ」でもいいんですが、名前を残している昔のブルースやR&Bのシンガーは個性の塊でしたよね。

 例えば、本盤のFatsの"Jingle Bells"を聴きましょう。
 誰もが知る手あかのついた曲です。

 しかし、Fatsがやると、素晴らしい左手のリズム(Fatsのプレイではないかも知れませんが)、バックの軽快な手拍子を従えた、唯一無二のあのリッチな歌声に酔わされます。
 その歌いくちの隅々に、過去のヒット曲で繰り返し聴いた、あんな「くせ」やこんな「くせ」がそこかしこに見え隠れして、思わず胸キュンです。

 そんな思いのなか、初物組では、Jake Chimentoが、最も個性を感じます。
 単純にダミ声ということもありますが、それも武器ですよね。

 他では、Mike & Steve BroussardとKane Glazeが、もう少し聴いてみたいと感じさせてくれました。
 Broussardという姓が気になりますが、Van Broussardとはおそらく関係ないと思います。
 Broussardという姓は珍しいですが、実のところ、私は他にもこの姓のミュージシャンを知っています。

 ブルー・アイド・ソウル系(?)のMarc Broussard、テキサス・ロッカー系(?)のRick Broussardなどです。
 私は、勝手にフレンチ系(クリオール系?)の姓ではないかと想像しています。

 今回気になったシンガーは、ぜひ単独盤が(あれば)聴いてみたいです。

 本盤は、クリスマス・アルバムとして充分楽しめる内容です。
 そして、初めて聴いたシンガーに関心を持つとともに、何よりもFats DominoのImperial時代以降にも、大いに興味を持たせてくれたアルバムになったのでした。



Jingle Bells by Fats Domino



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 季節ものなので、クリスマス・アルバムの連投でいきたいと思います。
 今回は、Freddy Fenderの聖夜曲集で、Huey P. Meauxが制作して、77年にMCAからリリースされたものです。

 この時期の一連のアルバムと同じく、ヒューストンのシュガーヒル・スタジオで録音され、バックもいつものハウス・バンドの面々だと思われます。

 アルバムのジャケ・デザインが一見地味ですが、もしや古代マヤかアステカのキルト模様がモチーフでは、などとメキシコと結び付けて考えてしまうのは、少し強引でしょうか……。


 
Merry Christmas ・ Feliz Navidad
Freddy Fender

Side One
1. Please Come Home For Christmas (Charles Brown, Gene Redd)
2. Pretty Paper (Willie Nelson)
3. Love Gets Better At Christmas (Lee Emerson, Mickey Moody)
4. If Christmas Comes To Your House (Lee Emerson, Mickey Moody)
5. Blue Christmas (Billy Hayes, Jay Johnson)
Side Two
1. Christmas Time In The Valley (Baldemar Huerta)
2. Santa ! Don't Pass Me By (Huey P. Meaux)
3. When They Ring Those Christmas Bells (Lee Emerson, Mickey Moody)
4. I'll Be On The Chimney (When Santa Comes Tonight) (Lee Emerson, Mickey Moody)
5. Natividad Song (Bob Ferguson)

 本盤の収録曲は、程度の差こそあれ、ほぼ英語とスペイン語のバイリンガルで歌われています。
 英語中心に歌い、ワン・フレーズだけスペイン語になるものから、1番は英語、2番はスペイン語とはっきり切り替えているものなど様々です。


CDはタイトル、ジャケ共に変更されています



 さて、通して聴いてまず思うのは、1曲1曲がていねいに制作されているなあ、ということです。

 曲ごとに、当然違いがあるにも関わらず、全般的に落ち着いた雰囲気で進行し、良くいえばクオリティが平準化されている、悪く言えばメリハリに欠ける構成だな、と感じました。

 個別に完結していて、全体を通してのパーティー感が希薄なような気がします。
 実際、明るめのウキウキ感のある曲も、孤独でブルーな気分を歌った曲も、個別に聴けば印象の違いは明らかですが、この流れの中で聴くと、なぜかたんたんと進行するように感じます。

 例えば、Charles Brownの"Please Come Home For Christmas"は、この曲のカバーとしては珍しく、ブルージーさがとても低い印象を受けます。
 一方、明るく楽しい(はずの)"Love Gets Better At Christmas"では、逆にはしゃいだ感じがぐっと抑えられているように受け取りました。
 定番のベルの音がないつくりも、印象を大きく左右していると思います。

 そんな中で、私が強く惹かれたのは、次の3曲です。

Side One
4. If Christmas Comes To Your House
Side Two
1. Christmas Time In The Valley
2. Santa ! Don't Pass Me By 

 "If Christmas Comes To Your House"は、とても落ち着いた雰囲気で進行する曲で、間奏に比較的長めのスペイン語での語りがあり、(当然意味は理解できませんが)とても印象づけられ、その雰囲気と構成の妙にまんまとのせられた感じです。

 "Christmas Time In The Valley"は、Freddy Fenderの自作曲です。
 (Baldemar Huertaは、彼の本名です。)
 こちらは、英語で長めにしっかりと歌ったあと、2番をごく自然にスペイン語で歌っています。
 この切り替えがいつもながら見事で、またまた制作側の仕掛けにはまってしまいます。
 少しゴスペルっぽさやトラッドな雰囲気も感じさせる、素朴な魅力がある曲です。

 "Santa ! Don't Pass Me By"は、聖夜への期待と緊張を歌った曲で、Jimmy Donleyのカバーです。
 作者がHuey P. Meauxとなっていますが、つい先ごろ英Aceからリリースされた、Jimmy Donleyのレア作品集のブックレットでは、Huey P. Meauxとともに、Murphy Madduxの名前が共作者としてクレジットされていました。

 Murphy Madduxは、Jimmy Donleyのパートナー的な存在だった人で、おそらくはHuey MeauxがDonleyから権利を買い取ったものだと推測され、Donleyの作品だと思います。

 Jimmy Donleyのレパートリーで、Donleyと関係の深い人物とMeauxの共作となっているものは、まず間違いなくDonleyが書いたものだと私は勝手に考えています。

 この曲では、驚くべきことにオリジナルのDonley盤より、こちらのFreddy盤のほうが、英語が聴き取りやすいです。
 Donley盤では気付いていませんでしたが、はっきりと"Saint Nick"(聖ニコラス)に語りかけている歌だと分かります。

 にぎやかにパーティを盛り上げるものがクリスマス・アルバムだと思っていましたが、何度か聴き返すうち、こういうのもありかもと思うようになりました。

 家庭での聖夜の団らんを邪魔しないように配慮された、優れたクリスマスBGM集になっているかも知れません。


Santa ! Don't Pass Me By by Freddy Fender




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 年の暮れですねェ
 でもその前に、このイベントをこなしておきましょう。
 クリスマスです。

 行事としては、個人的になんの感興もないですし、クリスマス・ソングにも特別な想いはないですが、好きなアーティストが手掛けているものには、ファンとして普通に興味があります。


A Blue Cat Christmas
featuring Los Taxmaniacs
with Special Guests
Augie Meyers & Willie J. Laws

1. Navidad Navidad Navidad (Baca, Farias, Villanueva) 
2. Jingle Bell Rock 
3. I Saw Mommy Kissed Santa Claus  
4. Santa Clause Is Comming Town  
5. Marry Christmas Baby  
6. Rudolph The Red Nose Reindeer  
7. Jesus Is The Reason (Baca, Farias, Villanueva) 
8. Feliz Navidad  
9. Jingle Bells  

 Los Texmaniacsが、ゲストにAugie Meyersを迎えて吹き込んだクリスマス・アルバムを入手しました。
 リリース年のクレジットはありませんが、アマゾンの商品紹介欄では08年リリースとなっています。

 一部のオリジナル曲を除き、クリスマス・ソングのスタンダードをやっており、選曲は、外国人にも馴染みの深い特に有名な曲を並べています。

 全般的に楽しく陽気なアレンジでやっていて、曲間にメンバー同士の短いやりとりが交わされるのが、何を言っているのか気になります。

 参加メンバーは以下のとおりです。

Max Baca : Bajo, Drums, Percussion
David Farias : Accordion
Israel "Speedy" Villanueva : Bass
Willie J. Laws : Guitar
Augie Meyers : Keyboards
Vernon "Spot" Barnett : Saxophone
Danny Martinez : Drums
David Villearal : Trumpet
Henry "Si O No" Gomez : Vijuela

 中心メンバーは、バホ・セストのMax BacaとアコーディオンのDavid Fariasです。

 陽気に弾むリズムに、暖かみのあるアコーディオンとAugie Meyersのオルガンが、素晴らしいハーモニーを奏でています。
 そして、否が応でもクリスマスを連想させる、鈴の音の「シャンシャン」がムードを盛り立てます。

 冒頭の"Navidad Navidad Navidad"は、メキシカン・トランペットの哀愁のイントロで始まる、少しセンチな曲調のボレロで、スペイン語で歌われます。
 "Navidad"は、クリスマスを意味し、"Feliz Navidad"で「メリー・クリスマス」のようです。

 アルバム全体を通して、パーティ風の親密な雰囲気で展開していきます。
 
 Augieがリード・ボーカルをとるのは、トラック3の"I Saw Mommy Kissed Santa Claus"です。
 鈴の音をバックに、Augieがオルガンで弾き語りをし、Texmaniacsのメンツが盛り立てます。
 お馴染みのAugieの声が聴こえてくるだけで和んでしまいます。

 アルバムのアクセントは、"Marry Christmas Baby"です。
 これを歌っているのは誰でしょう。
 普通に考えればMax Bacaですが、B. B. Kingのような喉を聴かせています。
 とてもブルージーなアレンジで、ここでのアコーディオンはザディコのそれのようです。

 一転、"Rudolph The Red Nose Reindeer"では、お馴染みのメロをお馴染みのスタイルで演奏します。
 それでも、アコーディオンの響きがTex-Mexであることを思い出させてくれます。

 トラック7の"Jesus Is The Reason"が、唯一事前に知らなければクリスマス・ソングだと分からない曲でしょう。
 鈴の音がなく、グルービーなオルガンとベースが印象に残ります。
 盛んに「ジーザス」と連呼しているのでゴスペルかと思うかも知れません。 
 曲の最後になって「クリスマス」と叫んで解答が明かされます。

 次の"Feliz Navidad"がいい曲です。
 歌詞の中で、"I Wanna Wish a Merry Christmas"と英語で歌う箇所があり、そこを除けば全てスペイン語で歌われます。
 楽しい雰囲気が伝わってきます。

 ラストは"Jingle Bells"です。
 出だしから、おもちゃの楽器のような伴奏で「がやがや」と始まり、ジャグ・バンドっぽい展開でスタートします。
 そして、徐々に演奏が厚くなっていき、盛り上がっていくところがいいです。

 全9曲、あっという間に終わります。
 がっちり固めた演奏ではなく、思い思いにメンツが楽しみながら参加している、そんな印象を受けました。

 タイトルにある"Blue Cat"は、何か意味があると思うのですが不明です。



All About Avocados by Augie Meyers & Los Texmaniacs




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ハートの切り札

 今回は初物です。
 以前から名前は知っていたのですが、音を聴くのは初めてです。

 実は、この人のことはよく分かりません。
 勝手な想像をしますと…
 60年代くらいにシングルを出していたけれど、LPを出すまでには至らず、CD時代になって遅まきながらアルバム・デビューした、まあそんな感じの人なのでは?


Across The Board
Gary T.

1. The Fat Man (Bartholomew, Domino)
2. Just As Long (As I'm With You) (Gary Thibodaux)
3. Roses Don't Grow Here Anymore (Tommy Maclain)
4. Angels Don't Fly (N. "Cotton" Guidroz)
5. Louisiana (That's What Cajuns Do) (Gary Thibodaux)
6. If I Had You (V. Guzzetta) 
7. Johnny B Goode (Chuck Berry) 
8. Since You Left Me (D. Schurb) 
9. All By Myself (Bartholomew, Domino)
10. I Don't Wanna Cry (L. Gatlin)
11. Love Struck Baby (Stevie Ray Vaughn)
12. Eleven Roses (McCall, Morris)
13. Don't You Know (Bartholomew, Domono)
14. Nobody's Darlin But Mine (Davis, Pruett)
15. Sweet Home Chicago (Robert Johnson)

 シングルの有無を調べるとすれば、Jin、Swallow、Goldband、そしてExccelloあたりでしょうが、そこまでの気力は持ち合わせていません。
 とりあえず、Wikiにはページがないようです。

 わずかに分かる範囲で言いますと、本名は、Gary Thibodauxといい、息子のTravisもミュージシャンで、親子名義の共演盤があるようです。

 本盤は、スワンプ・ポップをたくさん出しているCSP Recordsから、07年にリリースされました。

 パーソネルは以下のとおりです。
 息子がバンド・メンツですね。

Gary T. : lead vocals, piano, slide and lead guitar
Travis Thibodaux : drums, piano, organ, scrubboard,b.g.vocals
Nelton Rodrique : saxophone
Bozo Jarreau : drums
Bailey Thibodaux : scrubboard

 Gary T.は、Fats Dominoのスタイルをベースにした元気な三連のニューオリンズR&Bと、同じ三連でも、もろにスワンプ・ポップという感じの哀愁のバラードが売りだと思いました。

 そして、ここからが興味深いのですが、ピアノだけではなく、ギターも弾く人で、それもスライドを使ったリードをプレイするというサプライズな人なのでした。

 本盤では、3曲のDominoナンバーをやっていて、これは曲の良さもあってとてもいい感じに仕上がっています。

 また、自作の"Just As Long (As I'm With You)"や、Tommy McLainの"Roses Don't Grow Here Anymore"は、哀愁味たっぷりのミディアム・スロー・バラードで、この人の本領はこのあたりかなと感じます。
 サックス・ソロがムーディーな"If I Had You"も、胸キュンのバラードでよいです。

 現役のスワンプ・ポップ・シンガーで、Fats Dominoの影響が強い人では、この人とWayne Foretが双璧ではないかと強い印象を受け、即行で気に入りました。

 一方、ギターを弾いている曲も聴いてみましょう。
 Chuck Berryの"Johnny B. Goode"は、Berryの持つ小粋なスイング感も残しつつも、全体的には南部風で、ギターのトーンも若干ディストーションがかかっているので、かなりブルース・ロックに近い印象を受けます。
 ギター・ソロでは、タッピング風の速弾きもあります。
 まあ、選曲はベタですね。

 さらに、もう1曲のギター曲が驚きます。
 Stevie Ray Vaughnの1stのアタマに入っていた、Rayの作品、"Love Struck Baby"です。

 原曲は、特徴的なイントロこそないですが、やはりChuck Berryスタイルのロックンロールでした。
 ここでは、Ray Vaughnのクリアで素早いストラト・トーンを彷彿させつつも、サックスのブロウとギターのかけあいによる、独自の味付けで迫ってきます。

 ブルース・スタンダードの"Sweet Home Chicago"は、Magic Sam風というか、映画Blues Brothers風に決めていますね。
 そして自作曲、トラック5の"Louisiana(That's What Cajuns Do)では、元気一杯のケイジャン・ダンス曲も披露していて、なかなかにバラエティさもあって聴かせます。

 トラック12の"Eleven Roses" などは、George Jonesの名作、"A Good Years For The Roses" を思い出させる、カントリー調のいい曲です。

 全体の印象からは、古いスタイルのR&B好きの人、ちょっぴりカントリー風味を隠し味にしたスワンプ・ポップ・バラードが好きな人なら、本盤は気に入ると思います。
 まあ、そのての方には、ブルース・ロック風の曲は賛否が分かれるかもしれませんね。
 私はといえば、カオスな面白さとしてはOKで、不必要とまでは言いませんが、なくても好きです。
 
 最近聴いている現役スワンプ・ポップ・シンガーの中では、メンフィス・ソウル志向が感じられない人でした。

 普通にカントリーをやってもいいアルバムを作れる人だと思います。
 トラック14の"Nobody's Darlin But Mine"がまた、胸キュン系のカントリー風味のバラードに仕上がっています。

 トラック8の"Since You Left Me"の作者、D. Schurbは、現役のスワンプ・ポップ・シンガーのはずで、未聴ですが、近いうちに聴いてみたいひとりです。

 Gary T.は、おそらく単独アルバムは、今のところこれだけではないかと思います。
 私は、かなり気に入りました。
 今後の動向を注意していきたいです。

 また、50s60sのシングル曲があるのなら、ぜひ聴いてみたいです。
 どこかのコンピに入ってないかな?


Take My Hand by Deuce Of Hearts


キーボードがGary、ドラムとリード・ボーカルが息子のTravis Thibodaux (多分)


 
 追記
 今日、Bobby Charlesの日本企画盤「ベター・デイズ」が届きました。
 多分、惜しくて当分はながめて過ごすと思います。

 ほかにも、Fame StoryやGeorge Jacksonのデモ集など、年末になって、続々とじっくり味わいたいアルバムが届きます。
 嬉しいです。
 





スワンプの王子、究極のダブル

 凄いコレクションがリリースされました。
 Swamp Popファンにとっては、一生ものの宝ですね。

 Jimmy Donleyの60年代の音源の大量蔵出しです。
 CD2枚組のうち、Disc2はほぼ全曲初出音源です。


In The Key Of Heartbreak
The Complete Tear Drop Singles And More
Jimmy Donley

Disc 1
1. A Woman's Gotta Have Her Way - As Kenny James (Murphy Maddux)
2. Please Mr. Sandman - As Kenny James (Huey Meaux)
3. Honey Stop Twistin' (Huey Meaux)
4. Hello Remember Me (Huey Meaux, Murphy Maddux)
5. Think It Over (Little Mae Donley, James Donley)
6. Forever Lillie Mae (Huey Meaux)
7. Santa, Don't Pass Me By! (Huey Meaux, Murphy Maddux)
8. Baby, Heaven Sent Me You (Huey Meaux)
9. Loving Cajun Style (Huey Meaux)
10. You're Why I'm So Lonely (Huey Meaux)
11. Let Me Told You (Huey Meaux)
12. Just A Game (Huey Meaux, Wayne McGill)
13. I Really Got The Blues (Huey Meaux)
14. Forget The Past (Huey Meaux, Myrna Roberts)
15. I'm Lonesome Without The Blues (Huey Meaux)
16. I'm To Blame (Huey Meaux)
17. Love Bug (Huey Meaux, Murphy Maddux))
18. Strange, Strange Feeling (Huey Meaux)
19. My Forbidden Love (Murphy Maddux)
20. Santa's Alley (Instrumental) (Huey Meaux, Murphy Maddux)
21. I'm Lonesome Without The Blues (Huey Meaux) demo
22. I'm To Blame (Huey Meaux) demo
23. Love Bug (Huey Meaux, Murphy Maddux) demo
24. Baby Ain't That Love (Huey Meaux) demo
25. I Still Care (Huey Meaux, Jack Jessup) demo acoustic ver.
26. Two Sides To The Story Of Love (Huey Meaux) demo acoustic ver.
Disc 2 Demo
1. Message To Huey / A Woman's Gotta Have Her Way - Pee Wee Maddux & Jimmy Donley (Murphy Maddux)
2. Please Mr Sandman (Huey Meaux)
3. Honey Stop Twistin' (Huey Meaux)
4. Santa! Don't Pass Me By (Huey Meaux, Murphy Maddux)
5. Think It Over (Little Mae Donley, James Donley)
6. Forever Lillie Mae (Huey Meaux)
7. Loving Cajun Style (Huey Meaux)
8. Let Me Told You (Huey Meaux)
9. Just A Game (Huey Meaux, Wayne McGill)
10. I Really Got The Blues (Huey Meaux)
11. What A Price (Antoine Domino, Murphy Maddux, Jack Jessup)
12. Stop The Clock (Antoine Domino, Murphy Maddux, James Donley)
13. Spare Me The Details (Murphy Maddux)
14. Mathilda (George Khoury, Huey Thierry)
15. Rockin' Bicycle (Antoine Domino, Murphy Maddux, Jack Jessup)
16. If That's The Way You Want It (Murphy Maddux)
17. Little Cajun (Jimmy Donley, Marion Carpenter)
18. The Domino Twist - Jimmy Donley & Ernie Chaffin (Antoine Domino, Murphy Maddux, James Donley)
19. Rose Mary (Antoine Domino, Dave Bartholomew)
20. It's You I'm Missing - Jimmy Donley & Ernie Chaffin (Huey Meaux)
21. Our Last Goodbye (James Donley)
22. Don't Fall In Love (James Donley)
23. Don't You Know (Antoine Domino, Dave Barthlomew)
24. I Need You (James Donley)
25. I Still Care (Huey Meaux, Jack Jessup) band ver.
26. If I Knew You Didn't Know Better (Murphy Maddux) band ver.
27. Two Sides To The Story Of Love (Heuy Meaux) band ver.
28. You're Lonely Too (Huey Meaux, Murphy Maddux)
29. It's Time To Say Goodbye (James Donley)
30. I'll Keep On Movin (James Donley)

 Disc1は、最後の方の数曲を除いて、ほとんどが99年に英Edselからリリースされた、"Born To Be A Loser 〜 Crazy Cajun Recordings"で既にまとめられていたものです。
 ですが、それを持って価値が下がることなどありようがなく、やはり本CDのメインは、これら既出の珠玉作たちであるのは間違いありません。

 今回副題が、"The Complete Tear Drop Singles and More"となっていますが、英Edsel盤のブックレットを見ると、Tear Drop盤のコンパイルであったことが確認できます。

 Huey Meauxのレーベルは、Crazy Cajun Recordsが有名ですが、他にもTribeやStarflite、そしてTear Dropなどがあります。
 また、本盤によって、American Pla-Boyなるレーベルも彼のものだと知りました。
 Disc2-28の"You're Lonely Too"が、本盤で唯一のAmerican Pla-Boy音源です。

 さて、レアという意味での今回の目玉は、Disc1の終盤の数曲と、Disc2全曲です。
 ホーンレスの未編集ものに加えて、アコギでの弾き語りや、ピアノだけの伴奏で歌われているものなど、シンプルそのもののデモ録音が多数含まれています。

 面白さ、興味深さだけでいうと、これらの音源に惹きつけられます。

 ところで、ここで改めてJimmy Donleyさんのおさらいをしたいと思います。
 本名は、James Kenneth Donleyといい、実はルイジアナ出身ではなく、29年ミシシッピのガルフポートという所の生まれらしいです。

 ゴシップ的な情報になりますが、なんと5回も結婚しているそうです。
 最初の奥さんはEdithといい、結婚したとき、彼女は16歳、Jimmyは20歳でした。
 そして、最後の奥さんが、Disc2-6の"Forever Little Mae"のタイトルになっている、Maeさんです。

 Jimmy Donleyの最初の録音は、56年にDeccaへ吹き込まれました。
 ナッシュビルの大物プロデューサー、Owen Bradleyが手掛けています。
 この時期の音源は、独Bear Familyから、"The Shape You Left Me In"として、10年にCD化されました。

 60年代には、テキサスのHuey MeauxがDonleyを獲得しますが、このとき、Owen Bradleyは、MeauxにDonleyのことをこんな風に伝えています。
 「君はもうひとりのハンク・ウイリアムスと契約したのさ」

 オーウェンの言葉は最大の賛辞ですが、Donleyの持ち味の多くは、R&Bにあります。
 Jimmy Donleyの最大のアイドルは、Fats DominoとRay Charlesだったようです。

 本盤を通して聴いて思ったのですが、案外Swamp Popそのものといった曲は、さほど多くありません。
 まあ、Swamp Popの定義はあいまいなので、聴き手の受け取り方によります。

 私の思うところ、Swamp Popの典型といえるのは、次のような曲です。

Disc1
2. Please Mr. Sandman
5. Think It Over
8. Baby, Heaven Sent Me You
14. Forget The Past

 ちょっと狭義かも知れませんが、ニューオリンズR&Bやケイジャンと分けるため、チョイスしてみました。
 一方、ニューオリンズR&B系は、私の思うところ以下のとおりです。

Fats Domino スタイル
Disc1
4. Hello Remember Me
12. Just A Game
24. Baby Ain't That Love (デモのみなのが惜しいです。これは、50年代のBobby Charlesにより近い雰囲気です。)
Disc2
12. Stop The Clock
15. Rockin' Bicycle
18. The Domino Twist
19. Rose Mary
23. Don't You Know

 Disc2の5曲は、Dominoの作品とJimmyとDominoの共作です。
ライナーによれば、Dominoには、60年から62年の間に、7曲のDonley作品の吹き込みがあるらしいです。
 (私は手持ちのCDで、2曲のみ確認しました。)

Ray Charles スタイル
Disc1
3. Honey Stop Twistin'
11. Let Me Told You

 ライナーによれば、大のDonleyファンであるDoug Sahmが(ここからのライナー氏の表現がどうかと思いますが)、"Honey Stop Twistin'"をもとにして、「テンポを少し落とし」、「ビートを変えて」、「歌詞を書き直して」作ったのが、"She's About A Mover"だそうです。
 面白い話で、それなりの裏を取っているのでしょうが、そこまで変えれば、ほとんど別のものになりますよね。

Lee Dorsey スタイル
Disc1
17. Love Bug

 そして、私は聴き比べ出来ていませんが、次の曲がLloyd Priceの"Have You Ever Had The Blues"という曲の影響下に書かれたらしいです。
Disc1
13. I Really Got The Blues

 さて、今回のブックレットには、とても興味深い写真が多数掲載されています。
 Jimmy Donleyが曲を書いたときに残した、手書きによる歌詞の走り書きです。
 そこには、"Wards & Music by Kenny James"と署名されています。
 (前述のとおり、彼の本名は、Kenneth James Donleyです。)

 今回、ブックレットの写真で確認できるのは、以下の曲の手書きの歌詞です。
 (おそらくは第一稿)

・Keep On Movin' - Kenny James, Wayne Davis =Disc2-30 "I'll Keep On Movin'
・Our Last Goodbye - Kenny James =Disc2-21
・A Game You Were Playing - Kenny James, Wayne McGill =Disc1-12 "Just A Game"
・Please Mr. Sandman - Kenny James =Disc1-2
・Honey Stop That Twistin - Kenny James =Disc1-3 "Honey Stop Twistin'"
・Lovin Cajun Style - Kenny James =Disc1-9
・I'm To Blame - Kenny James =Disc1-16
・Foget The Past - Little Mae Donley =Disc1-14 (これは、奥さん作ではなく、奥さん名義にしたのでしょう。)
・A Year Ago - Kenny James, Wayne Davis =Disc2-28 "You're Lonely Too"

 これらから推測できるのは、おそらくJimmyの吹き込みのうち、Huey Meaux名義となっているものは、大部分が(本当は全てと言いたいですが)、Jimmy Donleyの自作なのだと思います。
 Jimmyのテキサス時代はいろいろとあるようで、「とりあえずキャッシュを求めた」ようです。
 (Decca時代は、自作のクレジットが多いです。)

 Disc2では、ホンキー・トンクや、Charlie Richばりのカントリー・ソウル風の曲も聴くことが出来ました。
 オルガンのない(もちろんホーンもない)"Think It Over"は珍品です。
 とにかく、ファンにとっては嬉しい、当分はヘビロテの1枚になりそうです。

 追記
 ライナーによれば、Johnny Vincentの米Aceに4曲のアンイシュードがあるそうで、気になります。

 アマゾンの曲目リストには、数か所、曲順の誤りがあります。
 また、Disc1-20の"Santa's Alley"は、アマゾンではインストと表記されていますが、Disc1-7の"Santa, Don't Pass Me By!"のボーカルがオフ気味になったものだと思います。
 残念なことに、完全にオフになっていず、低いレベルでボーカルが残っているため、編集ミスのように聴こえます。



Rockin' Bicycle by Jimmy Donley / demo


左端の女の子はFatsの娘さんです


Rockin' Bicycle by Fats Domino




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そんなに長尺じゃありません

 今回は、Joe King Carrascoの最新作です。

 キタ━(゚∀゚)━!!!!!

 久々の骸骨ジャケ


Vamos A Get Down
Joe King Carrasco

1. Noche (Joe King Carrasco)
2. El Arroyo (Joe King Carrasco)
3. Easy Going (Joe King Carrasco)
4. Looking for a Party (Joe King Carrasco)
5. Vamos a Get Down (Joe King Carrasco)
6. That's What She Said (Joe King Carrasco)
7. Hurricane (Joe King Carrasco)
8. Bump and Run (Joe King Carrasco)

 チカーノ音楽のジャケでは、ドクロのデザインは定番です。

 これは、キリスト教の死者の日(日本のお盆に当たる行事)の関係だと思いますが、なかでもメキシコ及びその影響下にある地域では、ドクロ信仰があるらしいです。

 ロス・ロボスにもドクロ・ジャケのアルバムがありましたよね。
 Joe King Carrascoも、過去作でドクロのキャラを使ったアルバムがいくつかあったはずです。

 どうして不気味なものを祀るのか、我々の感覚では理解不能ですが、まあ、もともと日本人は宗教音痴ですから止むをえませんよね。

 日本人は平然と「無宗教です」と言ったりしますし、特段それで訝しがられることもありませんが、欧米の人にはそれこそ理解不能でしょう。

 日本人にとって、お盆は特別に宗教行事という意識は薄いでしょう。
 宗派とは関係なく、お地蔵様を大切にしたりもします。
 また、自宅に神棚と仏壇の両方があるのは珍しいことではありません。

 このあたりのことは、とりわけキリスト教、イスラム教、ユダヤ教などの一神教では、考えられないことだと思います。
 ただ、理解できないことを怪訝に思うのは自由ですが、否定するのはやめてほしいですね。

 さて、本作のパッケージにはリリース年の記載がありませんが、最新作で間違いないと思います。
 バンドの編成は以下のとおりです。 

Joe King Carrasco : lead vocals & guitar
Chris Stephenson : keyboad & backing vocals
Tom Cruz : lead erectric guitar
Chuggy Hernandez : bass & backing vocals
Javier Zenteno : drums



 ここに、ゲストとしてサックス、トランペットらのホーン陣が加わっています。
 本作の音を一言でいうと、ファンキー・ラテン・ロックでしょうか。

 リズム・ギターの細かくせわしないカッティングに、かっこいいブラスのリフが被さる曲が大半です。

 クールなサイド・ギターは、Tom Cruzのブレイのような気がします。
 曲によっては、長めのリード・ギター・ソロが入るものもあって、これは多重録音でしょうか。

 ラテン・パーカッションが活躍する曲では、ブラスとのゴージャスなアンサンブルが耳を惹きます。

 そんな中、王様のボーカルは、昔ながらのとぼけた味が出ていて、少し安心します。

 全体的に、曲調のバリエーションが少ないような気がしますが、よく聴くとスカっぽい曲もあったりして、それなりにアクセントは付けられています。

 はっきりと違う印象を受ける曲は"Hurricane"で、これは本盤で唯一の疾走系のロックンロールです。
 これは、ストレートな横ノリのスイング感がよいです。

 ただ、いずれもCrowns時代のクレイジーなバカ騒ぎサウンドとはどこか違い、能天気でチープだったころをどうしても懐かしんでしまいます。

 とはいえ、相変わらず喧噪感はたっぷりあります。
 お祭りサウンドとして楽しみましょう。



Dinero by Joe King Carrasco


ドクロが出てくるPV見つけました



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埋もれた秘宝

 これは嬉しいアイテムが出ましたね。
 内容は既出のものが中心ですが、それでもミックス違いや未発表曲も含んでいて、パイ時代のKinksが大好きな私は大満足です。

 そもそも、編集盤大好き人間なので、新発掘ものがなくとも、気になるコンセプトだったりするとつい欲しくなっちゃうのです。

 極端に言えば、オール既出曲でも、曲のチョイスや並び順にこだわりが感じられれば、物欲センサーがONになりがちです。
 それにCDって、基本は新しいものほど音がいいですよね。(例外があるのが許せませんが…。)


Hidden Treasures
Dave Davies

1. Susannah's Still Alive (Dave Davies)
2. This Man He Weeps Tonight (Dave Davies)
3. Mindless Child of Motherhood (Dave Davies)
4. Hold My Hand (Dave Davies)
5. Do You Wish to Be a Man (Dave Davies)
6. Are You Ready (Dave Davies)
7. Creeping Jean (Dave Davies)
8. Crying (Dave Davies)
9. Lincoln County (Dave Davies)
10. Mr. Shoemaker's Daughter (Dave Davies)
11. Mr. Reporter (Ray Davies)
12. Groovy Movies (Ray Davies)
13. There's No Life Without Love (Dave Davies)
14. I Am Free (Dave Davies)
15. Death of a Clown (Dave Davies, Ray Davies)
16. Love Me Till the Sun Shines (Ray Davies)
17. Susannah's Still Alive (Dave Davies)
18. Funny Face (Ray Davies)
19. Lincoln County (Dave Davies)
20. There's No Life Without Love (Dave Davies)
21. Hold My Hand (Dave Davies)
22. Creeping Jean (Dave Davies)
23. This Man He Weeps Tonight (Dave Davies)
24. Mindless Child of Motherhood (Dave Davies)
25. Mr. Reporter (Ray Davies)
26. Hold My Hand (Dave Davies)
27. Good Luck Charm (John A. Koerner)

 本盤は、つい最近リリースされたばかりの最新編集盤です。
 内容は、一言でいえば、Dave Daviesの60年代のソロ・ワークをまとめたものになっています。

 60年代のDave Daviesのソロをまとめたものといえば、"The Album That Never Was"というアルバムが定番です。

 ただ、その中身は、必ずしも完全なソロのみではなく、Kinksのアルバムに収録されていたDaveの作品も含まれていました。
 というか、この時期はソロ名義であっても、バックはまんまKinksなんですから、多くの人にとってはKinksそのものですよね。

 以前(もう10数年前ですが…)、Kinksのオリジナル・アルバムが2イン1のCDで出された際、映画のサントラ盤"Percy"と"The Album That Never Was"という不人気盤(私は好きですが)ツートップがカップリングされていて、思わず買いました。

 人気盤と不人気盤を抱き合わせするあざとい商法が珍しくない中、非常に良心的でしたね。
 どちらも買い残していたため、CD1枚の価格で一気に入手できて嬉しかったのを覚えています。

 本盤には、"The Album That Never Was"収録の全曲が入っています。
 加えて、同収録曲のうち、いくつかのステレオ・ミックスが入っているほか、未発表とされているものが4曲入っています。
 未発表曲とクレジットされているのは、以下の通りです。

5. Do You Wish to Be a Man
6. Are You Ready
8. Crying  
25. Mr. Reporter

 そして、コアなファンには周知の作品かもしれませんが、ラストの"Good Luck Charm"が他の曲とは全く違う印象を受ける曲です。

 Elvisに同名の曲がありますが、一聴した感じでは別の曲に聴こえます。
 カバー曲をたくさんやっていた最初期のKinksみたいですね。

 曲調や歌詞からはArthur Crudupを連想し、演奏はピアノの存在がモダンですが、ジャグ・バンド風に聴こえます。
 ElvisとCrudup、なんだか不思議な連想のマッチングですね。

 というわけで、既出曲が大半なんですが、正直、私はほとんど覚えていませんでしたね。
 私にとって、Dave Daviesといえば、"Death of a Clown"です。

 あと、本盤収録曲では、"Love Me Till the Sun Shines"、と"Funny Face"でしょうか。
 でも、これらは兄貴が書いた曲ですね。
 Dave作品でもう1曲あげるなら、"Susannah's Still Alive"です。

 ともかく、ここまで他の曲を忘れていたとは思いませんでした。
 でも、聴きすすむうちに、何ともいえない懐かしい、胸が暖かくなる気分がしたのでした。

 好みのタイプの曲を、たくさん初見のような新鮮な気持ちで聴けたのですから、きっと幸せ者なのでしょう。
 アルバム・タイトルは、「隠し財宝」くらいの意味だと思いますが、期せずして忘れていた宝物がひょっこり大量に出てきたみたいな気分です。

 ところで、改めて思ったのですが、DaveってやっぱりRayと声が似ていますよね。
 聴き比べれば明らかに違うんですが、片方のみを聴いている範囲では間違えそうです。

 録音時期は、主に67年から69年にかけてが多く、初期Kinksの典型的なキンキー・サウンドは控えめです。
 また、ディランに影響を受けていた時期でもあるようで、フォーク・ロック調の曲も散見します。
 とはいえ、にじみ出るブリティッシュ臭が私にはたまらなく愛おしいです。

 個別の曲がどうとかではなく、この際すべて好きと言ってしまいましょう。
 後年は、徐々にハード・ロック風のサウンド志向へと接近するDaveですが、この頃は兄貴のRay Daviesが発するガラパゴス的唯我独尊路線が迷走する前で、その影響をよい方向で受け、私はとても好感を持っています。

 私は、パイ時代のKinksが好きなんですが、オリジナルでは、特に1stと2ndが好きです。
 編集盤では、ひねった選曲が嬉しい、「アフタヌーン・ティー・ウィズ・ザ・キンクス」という日本企画盤が私の嗜好にぴったりで大のお気に入りです。

 一方、代表曲を気軽に聞き流したいときは、同じく日本企画盤の「ザ・ベスト・アンド・コレクタブル・キンクス」でしょうか。
 あと、"BBC Sessions"も好きです。

 それらのアルバムに加え、時々引っ張り出しては、和みながら聴けるアルバムがまた1枚増えました。

 私がブリティッシュ・ロックが好きだ思うとき、多くはキンクスを思い描いているのでした。



Death Of A Crown by The Kinks


カラオケのモニターみたいに歌詞が出ます。


Good Luck Charm by The Kinks





Good Luck Charm by Elvis Presley


こちらはおまけです。


   
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