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キッピントン・ロッジ

 Brinsley Schwarz(バンドの方)の前身バンド、Kippington Lodgeの編集盤がリリースされます。
 かつて、98年に、Brinsley Schwarzのレア音源集"Hen's Teeth"がリリースされ、これにKippington Lodgeのシングル5枚の両面が収録されていましたが、Kippington Lodge名でのCDリリースは初めてだと思います。

  
Shy Boy
The Complete Recordings 1967-1969
Kippington Lodge

1. Shy Boy (Hopkins, Burgess)
2. Lady On A Bicycle (Brinsley Schwarz)
3. Rumours (J.Ferdy, Mark Wirtz)
4. And She Cried (Barry Landeman, Brinsley Schwarz)
5. Tell Me A Story (Barry Landeman)
6. Understand A Woman (Leckenby, Hopwood, Brooks)
7. Tomorrow, Today (Roger Greenway, Roger Cook)
8. Turn Out The Light (Barry Landman)
9. In My Life (Lennon, McCartney)
10. I Can See Her Face (NIck Lowe)
11. Land Of Sea (unissued)
12. Rumors (alt.take)
13. And She Cried (alt.take)
14. Shy Boy (BBC Radio Session)
15. Younger Girl (BBC Radio Session)

 既にAmazon JPを始め、大手ショップでインフォが始まっていますが、上記の10曲目までの正規テイクは、全て"Hen's Teeth"で既出済で、初出は後半の5曲のレア音源のようです。

 Kippington Lodgeには、Nick Lowe、Brinsley Schwarz、Bob Andrewsの三人が在籍していました。
 正直なところ、コレクターズ・オンリーというべきものでしょう。
 Kippington Lodgeは、Brinsley Schwarzの前身バンドであるという以外、それほど価値があるとは言えないと思います。

 もともと、彼らのシングルは、スタジオのエースが演奏し、彼らはボーカルのみ吹き込んだという話もあるようです。
 まあ、そのほうが、実際演奏レベルが高かったかも知れません。
 Nick Loweファンなら買いですが、万人向けとはとても言えないです。

 英国では、7月25日発売予定ですが、何と日本盤が出るようで驚きです。
 日本盤は、8月25日発売予定で、価格は英盤の約2倍です。
 ただ、気になることがあり、インフォされているリストによれば、なぜか曲順が変更されています。
 以下の通りです。

1. シャイ・ボーイ
2. レディ・オン・ア・バイシクル
3. ランド・オブ・シー (unissued)
4. アンド・シー・クライド (alt. take)
5. ルーモアズ
6. アンド・シー・クライド
7. ランド・オブ・シー (unissued Mark Wirtz lead vocal)
8. シャイ・ボーイ (BBC Radio Session)
9. ヤンガー・ガール (BBC Radio Session)
10. テル・ミー・ア・ストーリー
11. アンダースタンド・ア・ウーマン
12. トゥモロウ・トゥデイ
13. ターン・アウト・ザ・ライト
14. イン・マイ・ライフ
15. アイ・キャン・シー・ハー・フェイス

 これを見ますと、単に並び替えだけではなく、"Rumors (alt.take)"がオミットされ、"Land Of Sea"のリード・ボーカル違いが収録されることになっています。
 どちらかが誤りなのか、あるいは日本盤特別仕様なのか、気になるところです。
 とはいえ、過度の期待はどうでしょう。
 私は、英盤を入手するつもりです。
 (なんだかんだ言っても、やっぱり買います。)


 さて、ここで話は変わります。
 少し前に、実現することを願うと書いた、Rockpileのライヴ盤が正式リリースされるようです。
 Amazon JP及びUSでは、まだエントリーされていませんが、Amzon UKや、本邦HMV、ディスクユニオンで予約受付が開始されています。
 目出度いです。


 タイトルは、"Live At Montreux 1980"、8月22日発売予定です。
 本当は、音だけではなく、映像も見たいところです。

 私は、モントルーのライヴは聴いていないと思いますが(ブートで)、彼らの演奏にはムラがあり、のっているときは凄いですが、そうでないときは、しばしば退屈です。
 ドイツでのロックバラストのブート映像が有名ですが、あれは凄いです。
 ああいうのが、クリアな映像で見たいものです。

 とはいえ、スタジオ盤1枚のみだったRockpileに、晴れて2枚目の正式盤がリリースされるのは、パブ・ロック・ファンにとって、積年の夢の成就でしょう。
 ここは素直に喜びましょう。


 追記
 7月11日に、George Thorogoodの新作、"2120 South Michigan Ave"がリリースされます。
 この人はキャリア何年でしょう。
 John Lee、Elmore James、Chuck Berryのイメージが強い人ですが、タイトルから想像できるように、Chessサウンドに(またも)挑んでいるようです。
 いつまでたっても若いというか、ここまでいくと凄いです。
 Sunny BoyUや、Jimmie Rodgersの名作もやるようです。


I Can See Her Face by Kippington Lodge



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アリゲーター・バイユー、クロコダイル・スワンプ

 最近、期待していたいくつかの新作が、いずれも「それなり」の出来で、ファンとしては普通に楽しめたとはいえ、他の人に薦めるほどまではいかず、どうも悶々とする日々が続いています。

 例えば、NRBQの新作(あまり語っている方も少ないように思います)、P.J.O'Connellの新作(こちらも同様)などがそれに当たります。
 実は、NRBQの新作(!!)は、思いのほか良くて複雑な気分になりました。
 私は(複雑ではありますが)、若いメンバーの音が気に入りました。
 ただ、繰り返し聴いて、周りにやんやと吹聴するほどではなかったのでした。

 そして、普段から、NRBQの特徴として感じていた「混沌と狂気」は、Terry Adamsに起因するところが大なのだと、改めて強く思ったところです。
 私は、Joeyぬきでも、NRBQが成立しているような印象を持ち、ショックでした。
 今後は、Spampinato Brothersにも、ぜひアルバムを創ってもらって、NRBQなるものの正体を、再度見つめなおす機会をファンに与えてほしいものです。

 さて、今回は、比較的新しめのSwamp Pop Singerのアルバムを聴きました。

 
She's Mine
Ryan Foret and Foret Tradition

1. She's Mine (Jarvis, Nicholson)
2. Alligator Bayou (Futch)
3. Dark End of the Street (C. Moman, D. Penn)
4. Fooled Around and Fell in Love (E. Bishop)
5. Ya Ya (Levy, Lewis)
6. Goodbye Time (Hicks, Murrah)
7. It Wasn't Supposed to Happen (Collet)
8. I'm Gonna Find Another You (Mayer)
9. Hang Up My Rock and Roll Shoes (C. Willis)
10. Harry Hippie (J. Ford)
11. Take Me in Your Loving Arms (Guilbeau)
12. Sweet Soul Music (A. Conley, S. Cooke, O. Redding)
13. First You Cry (D. Egan, Flett)
14. Louisiana Christmas Day (Cox)
15. To Love Somebody (B. Gibb, R. Gibb)

 Ryan Foretは、99年に兄弟と思われるBrandon Foretと組み、1stアルバム"Dance With Me"でCDデビューしています。
 Ryanは、キーボードとリード・ボーカル、Brandonはドラムスを担当していました。

 その後、数枚のアルバムをリリースし、その間、メンバーの追加、交代などを経て現在に至っているようです。
 アルバムは、以下の通りです。

Dance With Me : 99'
Lost In The 50s : 01'
Hey Good Lookin' : 03'
Tee Nah Nah : 05'
She's Mine : 07'

 現在バンド名は、Ryan Foret and Foret Traditionとなり、その編成は、以下のように変わってきています。

Ryan Foret : vocals, keyboad
Jason Parfait : saxophone, bass, backgroud vocals
Jame Spells : trampet
Wade Pavolini : guitar
Lynn Boudreaux : drums

 また、今作へは以下のメンバーが参加しており、このうちの幾人かは、元メンバーで、おそらく準メンバー的存在かと思われます。

Brandon Foret : guitar, drums
Jeremy Billiot : bass
Alan Maxwell : bass
Lupe Valdiviez Jr. : drums
Gary Usie : drums
Mark Templet : guitar
Dwight Breland : steel guitar, acoustic guitar
Travis Thibodaux : Keyboad, organ, backgrand vocals

 彼らは、自分たちが演奏する音楽として、Swamp Pop、R&B、Soul、Funk、Motown、Country、Top40、80's Rock、Zydecoなどの名前をあげています。
 Swamp Popを真っ先に挙げているのが嬉しい、いわゆるバー・バンドというやつです。
 ルーツ系中心ではありますが、観客が求めるなら、喜んでTop40もプレイしますよ、という感じなのでしょう。

 ホーン陣を含むサウンドはしっかりしており、この手のバンドにありがちなB級っぽさも、あまり感じさせません。
 メインのRyan Foretのボーカルは、曲によっては、どこかPercy Sledgeの声を連想させるものがあります。
 (特に1曲目の"She's Mine"がそんな感じです。)

 非常に丁寧な歌いくちで、適当な比喩が思いつきませんが、あえていうなら、私は、Percyからヘタうまっぽさを差し引き、くっきり輪郭を明確にしたような印象を受けます。
 ただ、ヘタうまというのは、ある意味、褒め言葉でもありますから、必ずしも単に持ち上げているわけではありません。

 この当たり、彼の歌声に魅力を感じるかは、好みにもよるでしょう。
 私は好きです。
 そして、うまい人だとも思います。
 選曲の妙も素晴らしく、聴きやすいです。

 カバー曲には、高難度の渋い有名曲から、手あかがついたようなオールディーズまで、さまざまですが、どれもアベレージ・クラスか、それ以上だと思います。

 Rod Stewartが「グレイト・ロック・クラシックス」で取り上げた、Elvin Bishopの"Fooled Around and Fell in Love"が、Ryanの声質にあった曲で、いい感じに気持ちよく歌っているのがわかります。
 聴きもののひとつだと思います。

 また、ウエストコースト・カントリー・ロック風の"Goodbye Time"は、しみじみと聴かせる序盤から、次第にドラマチックに展開していくバラードで、これもRyanにあった曲だと思います。

 一方、同じように素直にやっても、"Hang Up My Rock and Roll Shoes"のような曲では、少し硬さが感じられ、まじめさが仇になっているように思います。
 ユーモラスな歌い方が出来れば、さらによいと思いましたが、これが彼の個性でしょう。
 その点、"Ya Ya"は、アレンジに一工夫していて、こちらはいい感じです。

 私の趣味的には、Jim Fordの"Harry Hippie"をやっているのが嬉しいです。
 この曲は、Bobby Womackのために書かれた曲で、Bobbyの優しい歌いくちが素晴らしく、すぐに好きになった曲でした。
 Jim本人の録音もありますが、ここでの、Ryanのお手本は、Bobby Womack盤だと思われ、丁寧に誠実な歌声を聴かせてくれています。

 Jim Fordは、R&Bテイストのカントリー系シンガー、ソングライターで、Bobby Womackには、他にも"Point Of No Return"を書いていて、こちらも名唱名演です。

 そして、なぜか、パブ・ロック勢に人気がある人で、"JuJu Man"という曲は、Brinsley Schwarz時代のNick Loweが、そしてDave Edmundsがソロでカバーし、多分その流れで、Flamin' Grooviesもやっています。
 また、渋いところでは、Nick Loweの"36inches High"がFordの曲です。

 ちなみに、近々、Jim Fordの69年の1stアルバムが、最新のリマスターで、ストレート・リイシューされる予定です。
 
 "First You Cry"は、David Eganが書いた曲で、Percy Sledgeや、Little Buster Forehandの名カバーがある素晴らしいスロー・バラードです。

 David Eganは、白人ピアニスト、シンガーで、近年は、Swamp Popのオールスター・グループ、Lil' Band O' Goldに参加して活動しています。
 私は、Eganの新録盤も含めた中でも、Little Buster盤が特に好きです。
 ここでのRyan Foret盤も素晴らしい仕上がりになっているので、聴きものだと思います。

 本盤で初めて知ったアーティストですが、過去盤を遡りたいと思わせる人です。



The Old Lake by Foret Tradition




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ブルーズン・ソウル・ブラザーズ
元祖ヘタウマ


ハーレムのダイスを転がせ

 Doug Sahmの初期の音源(50年代後半から60年代初め)をまとめた"His Early Years"というCDがあります。
 Home Cookingという会社が制作して、95年にCollectables Recordsからリリースされたものです。
 (日本盤も、96年にVividから出ました。)

 その後、Norton Recordsから、同じ時代をさらに掘り下げたCD、"San Antonio Rock - The Harlem Recordings 1957-1961"が00年に出て、その有難みは若干(かなり?)下がりましたが、それでも(辛うじて)"His Early Years"以外ではCD化されていない音源が存在しています。
 その"His Early Years"を編纂したのが、Roy Amesという人でした。

 
Rolling The Dice
The Best Of Harlem Records Of Texas
Volume 1
 
The Lyrics
1. Beating of My Heart
2. I Want to Know
Doug Sahm & The Markays
3. Why Why Why
Doug Sahm & The Pharaohs
4. If You Ever Need Me
The Royal Jesters
5. My Angel of Love
6. Those Dreamy Eyes
Benny Easley
7. Kiss Tomorrow Goodbye
8. You Say You Love Me
The Famous Flames With The Original Sunglows
9. I'm Gonna Try to Live My Life Over
10. So Long My Darling
The Playboys
11. Falling in Love With You
12. Let 'Em Talk
The Satin Kings
13. Mathilda
14. Let's Go, Let's Go
Charlie & The Jives
15. For the Rest of My Life
16. Bobby Socks & Tennis Shoes

 今回のCDは、その姉妹編とも言うべきもので、先のCDと同様、Roy Amesが編纂し、Home Cookingが制作、Collectables Recordsから95年にリリースされたものです。

 テキサスのHarlem Recordsの貴重なシングルをコンパイルした内容になっています。
 (正確には、子会社のSatin、Sable、Fanfareなどの関連レーベルの音源を含んでいます。)

 Harlem Recordsは、59年にE.J.Henkeが立ち上げました。
 Henkeは、当初、メンフィスのSun Recordsや、カリフォルニアのFabor Recordsなどの販促を行うかたわら、自らのレーベルの最初のレコードを作成にこぎつけました。

 それは、The Lyricsによる"Oh Please Love Me"で、テキサスでの成功を受けて、Decca Recordsへリースされ全国的ヒットを記録しました。
 (当該曲は、残念ながら本盤には未収録ですが、2ndシングルの"Beating Of My Heart"が収録されています。)
 Lyricsは、ドリーミーなバラードを得意とする、黒人白人混成のドゥ・ワップ・グループでした。

 別のアルバムで聴いたのですが、"Oh Please Love Me"は、ゆったりとしたテンポの三連曲で、テナー・リード、ベース・シンガー、2ndテナー以下のコーラスが、それぞれ存在を主張しながら進行する、ドリーミーなバラードです。
 (ただ、私の聴く限り、この曲が特別に他の曲より抜きんでているとは思えませんが…。)


 Roy Amesは、ライナーでE.J.Henkeのことを、地元の有望なアーティストを精力的に発掘した、南テキサス・ロックの祖父?(Grandfather of South Texas Rock)である讃えています。

 中でも、Henkeの功績は、Doug Sahm、Rocky Gill And The Bishops、 Rudy And The Reno Bops、Charlie And The Jivesなどを見出したことだとしています。

 ですが、私は、Doug Sahm以外は、誰も知りません。
 どうやら、これらの内の一部は、カルトなテキサス・ガレージ・バンドとして再評価されているらしいです。

 さて、収録曲をいくつか聴いてみましょう。
 まずDoug Sahmですが、ここでの2曲は、いずれも"The Early Years"に収録されているものです。 
 "Why Why Why"は、ロカビリアンのRudy Grayzellや、Jimmie Vaughanのカバーがある、通好みのブルー・バラードです。

 The Royal Jestersは、多分白人マイノリティ系のドゥ・ワップ・グループで、メンバーの変遷のなかでは、10代のJoe Jamaが参加して、リード・ボーカルをとっていた時期がありました。
 本盤収録曲当時のメンバーは、よく分かりません。
 ドリーミーなバラードはもちろん、フランキー・ライモン・スタイルのアップ・ナンバーも得意とする、ある意味、無数にいたに違いないボーカル・グループのひとつです。

 Joe Jamaは、のちにソロで成功するチカーノ・シンガー、ベーシストで、おそらく今でも現役だと思いますが、最近は、カントリー・ゴスペル系の活動をしているかも知れません。

 Benny Easleyは、一聴して、白人か黒人か分かりづらい感じのシンガーです。
 高めの声で、アーリー・ソウル・クラシック、"Kiss Tomorrow Goodbye"を歌っており、好感が持てます。
 また、"You Say You Love Me"は、初期のBobby Bland風のハード・ブルースで、B.B.のようなメリスマを効かせながら、Buddy Guyかと思わせるような、甲高くひっくり返る声で歌っています。

 The Famous Flames With The Original Sunglowsは、その名の通り、Sunny Ozunaの元のバンド、Sunglowsが、James Brownのバック・コーラス、Famous Flamesのバックを務めた曲のようです。
 ここでのFamous Flamesのリード・シンガーは誰でしょう?
 ここでは、ほとんどゴスペル・カルテットといった感じの厚いコール・アンド・レスポンスを聴くことが出来ます。

 The Playboysでは、がらっと雰囲気が変わります。
 これまで本盤は、ドゥ・ワップ・スタイルから、ゴスペル出身丸出しのコーラス隊へ流れていましたが、ここでスタイリッシュなシカゴ風ソウルへバトン・タッチします。
 リード・ボーカルが、時にファルセットを屈指する、まさに、インプレッションズを連想させるスタイルで、この流れで聴くと、なおさら新鮮です。

 続くThe Satin Kingsは、ルイジアナ・クラシックの"Mathilda"、ハンク・バラードの"Let's Go, Let's Go"をやっており、突然、田舎へ戻されたように感じます。
 Satinというのは、関連レーベルの名前と同じですので、Henkeが推していたグループだったのでしょうか。
 青くさいボーカルは味がありますが、パンチ不足気味で、全国ヒットを狙うにはどうかとも思います。
 
 Charlie & The Jivesは、近年再評価されているグループらしいです。
 いわゆるチカーノ好きの甘茶系ソウルではなく、もう少し前のスタイルだと思います。
 ただ、テキサス、ルイジアナ系のグルーヴィーなR&Bをやっており、これもチカーノ趣味ではあります。
 ラストの"Bobby Socks & Tennis Shoes"は、反復リズムを使ったソウル・インスト曲に仕上がっています。

 編者のRoy Amesは、ライナーの締めで、ぜひとも第二集を組みたいと宣言していますが、どうも実現しなかったのではないかと思います。


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サムデイ・ベイビー

 アナザー・ガンボでしょうか。
 私は、このアルバムを聴きながら、やはりドクター・ジョンの日本盤LPを思い出していました。
 手元にある「ガンボ」のCDは、私をがっかりさせてくれます。


Singing In My Soul
"Classic New Orleans Rhythm & Blues"
Ronnie Barron

1. Trick Bag (Earl King)
2. Worried Life Blues (Major Merriweather, Big Maceo, Sleepy John Eates)
3. Big Chief (Earl King, Wardell Quezerque)
4. Singing In My Soul (L. Johnson)
5. Doing Something Wrong
6. Lights Out (Mac Rebennack)
7. Hey, Now Baby (Roy Byrd)
8. Happy Tears
9. Pink Champagne (Joe Liggins)
10. River's Invitation (Percy Mayfield)
 
 私が、「ガンボ」がニューオリンズ録音でないことを知ったのはいつごろだったでしょう。
 そんなこと、思いもしないことでした。
 
 「ガンボ」は、多感な10代を黄金時代の只中で過ごし、早熟な天才としてシーンに関わった人物が、喧噪の時代を音楽で振り返った真の傑作でした。
 それは、生きた音楽でありながらも、アカデミックな1枚だと思いました。

 私は、「ガンボ」の日本盤LPが好きです。
 なぜなら、そこには多くの示唆に富んだ文章を含む、ライナーノーツが入っていたからです。

 そこには、演者のDr.Johnにより、収録曲との出会いや、演奏のアレンジの狙いなど、わくわくするようなエピソードが、思い入れたっぷりに記されていました。
 あの対訳は素晴らしい仕事だったと思います。

 ですが、私が持っている輸入盤CDには、ライナーそのものが入っていません。
 腹立たしいです。
 日本盤はどうなんでしょう。

 気を取り直したいと思います。
 本作もまた、メインはL.A.録音のようです。

 このアルバムは、いろいろとジャケ違いが存在するようですが、これはオーストラリア盤です。
 私は、オリジナルかどうかは別として、この「釣糸を垂れるスナフキンの後ろ姿」といった、このジャケのたたずまいが気に入っています。

 Ronnie Barronは、Mac Rebennackの2〜3才下で、彼とは子供のころからの音楽仲間でした。
 そして、このアルバムにも、ニューオリンズR&Bへの愛情と敬意に溢れた、演者ロニーによる各曲への簡単な紹介が記されています。
 「ガンボ」を連想したのは、音楽性やコンセプトだけではなかったのでした。

 そこでは、当時、15歳のDr.Johnが書いた"Lights Out"を、13歳のRonnieが、Dr.John自身から教わったと語っています。

 収録曲では、プロフェッサー・ロングヘアの作品が特に光っていると感じます。
 ヒューイ・スミスと長髪教授は、やはり凄いです。

 そして、スワン・シルバートーンズをやっているのが興味深いです。
 "Singing In My Soul"です。
 私は、スワンズでは、ここには入っていませんが、似たような曲調を持つ、"Mary Don't You Weep"という曲に思い入れがあり、そちらがより好みです。
 まあ、クロード・ジーターの第一声が入ってくる瞬間のスリルは、両者に共通しています。

 さて、私が本作で最も好きな曲は、2曲目の"Worried Life Blues"です。
 冒頭の"Trick Back"も悪くはないですが、曲順が入れ替わって入れば、衝撃度がさら増して良かったのに、と思っています。

 "Worried Life Blues"は、別名"Someday Baby"と呼ばれることも多く、おそらくはレコーディングの歴史が始まる前から、すでにあった曲だと思われます。
 ここでのRonnie Barronのバージョンは、私にいくつかの曲を連想させます。

 まずは、Ray Charlesです。
 Rayは、ニューオリンズへ出向き、Guitar Slimの伴奏を仕切ったことを契機に、大きな音楽的飛躍を遂げました。
 一方、Rayの仕事もまた、ニューオリンズR&Bへ多大な影響を与えたのでした。

 Ronnieの"Worried Life Blues"は、"I Got A Woman"のリズム・パターンを使っています。
 そこへ、あの「サムデイ・ベイビー、エーニモー」というくせになる決めフレーズが乗ってくるのでした。
 かっこよすぎます。

 私が、これを聴いて真っ先に思い出したのが、Rayの"I Got A Woman"と、もう1曲、唐突に思われるかも知れませんが、Muddy Watersの"Trouble No More"です。

 すぐ手元にこの曲の収録アルバムがある方は、ぜひ聴いていただきたいです。
 Muddyは、シカゴ・ビートに乗せて「サムデー・ベイべー、トラボー・フォー・ミー・エーニモー」とぶっきらぼうに歌い飛ばしています。
 この曲での攻撃的なアップのチェス・サウンドもまた、紛れもなくダンス・ビートなのでした。

 習慣性の高いビートと、魔術のようなアイデア溢れるソロが、たっぷり詰まった極上の1枚だと思います








サニー・ミーツ・ジーン・トーマソン

 これはどうでしょう。
 右瞳から一筋の涙をこぼす、上半身裸とおぼしい男のジャケットです。
 タイトルは、一文字"Cry"のみ。
 そして、アーティスト名は、これまた一文字"Sunny"です。


Cry
Sunny

1. Cry
2. Side Off Your Satin Sheets
3. Turn On Your Love Light
4. Sometimes
5. Come Live With Me
6. Goodnight Baby
7. Put Your Clothes Back On
8. Dancing In The Street
9. Hooked On A Feeling
10. Greater, Greater, Greater

 録音時期、初出時期ともに不明です。
 これはSunny Ozunaのアルバム中、唯一Sunny名義で出されたアルバムだと思います。

 私が持っているCDは、08年Golden Eagle Recordsからのリリースとなっています。
 Golden Eagleは、サン・アントニオの会社で、いつものことながら、クレジットのたぐいは一切ありません。

 とりあえず、全曲英語曲で、リズム&ブルースのカバーが入っているのが嬉しいです。
 クレジットがないためよく分かりませんが、ポピュラー・スタンダードとリズム&ブルースで構成したアルバムのように思います。
 早速聴いてみましょう。

 有名なリズム&ブルースは2曲です。
 "Turn On Your Love Light"と"Dancing In The Street"です。
 残念ながら、"Hooked On A Feeling"は、オヴェイションズのあの曲ではありません。

 まず、第一印象ですが、これはシングルの寄せ集めではなく、アルバム用の吹き込みだなあ、と感じました。
 アルバムには、リズム&ブルースもスタンダードもありますが、良く言えば統一感のあるサウンドです。

 特段の冒険もなく、まとまったアンサンブルだと思います。
 ただ、面白味はないようです。
 いなたさとか、渋みとかいった個性も感じません。
 あえて言うなら、普段からやりなれているツアー・バンドが、手慣れたナンバーをスコアどおりにやりました、という感じに聴こえます。

 ここでは、Bobby Blandの"Turn On Your Love Light"も、Martha & Vandellasの"Dancing In The Street"も、はたまた"Cry"のような曲も、同じようなテイストで演奏されています。

 どちらかと言えば、"Cry"向けのサウンドかも知れません。
 その意味で、2曲のリズム&ブルースは、若干惜しい気がします。
 ここでは、そういった安定感のあるアンサンブルの中で、それぞれの曲への微妙な味付け具合を楽しみたいところです。
 
 "Cry"は有名なスタンダードです。
 誰の曲とかは言えない曲ですね。
 バックは、いかにもジャズっぽい、おとなしめの音に聴こえます。
 これが、全体の基本の音かも知れません。

 対して、続く"Side Off Your Satin Sheets"では、スチール・ギターが入るため、それだけでカントリーっぽさが感じられます。
 でも、いなたくなりすぎず、ピアノのソロがあり、むしろモダンでおしゃれな雰囲気がします。
 
 さて、ここから脱線します。
 
 このアルバムには、"Sometimes"が入っています。
 私が、このアルバムに注目したのは、この曲の存在でした。
 大好きなSunny Ozunaが、大好きなGene Thomasの曲をやっている、それだけで感激です。

 私は、Doug Sahmのバージョンを聴いて以来、この曲と、その作者、Gene Thomasに強い関心を持つようになりました。
 Doug Sahmは、"Sometimes"と同じ作者の"Cryin' Inside"をメドレーでやっていました。
 これがもう最高で、何度聴いても飽きません。
 同じく、Doug SahmによるSunny Ozunaのカバー、"Golly Gee"とともに、私の特別なフェイヴァリットです。

 さて、"Sometimes"ですが、この曲は、作者のGene Thomasによると、公式には"Sometime"が正しいそうです。
 最期に"s"が付かないらしいのです。
 ただ、作者の意向では、本来は"Sometimes"でなければならず、公式タイトルがなぜそうなったかは不明だそうです。

 そういえば、やっている人によって、表記に揺れがあったように思います。
 ちなみに、Gene Thomasのシングルやアルバムでは、"Sometime"となっているようです。
 
 日本人の感覚からすれば、最期の"s"など、どっちでもいい気はします。
 でも、ベタに直訳で考えるとどうでしょう。
 "Sometime"は、「いつか」ですが、"Sometimes"は、「時々」です。
 これって、この日本語訳のニュアンスが正しいと仮定すると、やはり違いますよね。

 歌の出だしはこうです。

 Sometime(s) I cry when I'm lonely
 Sometime(s) I cry when I'm blue

 これを見る限りでは、"s"付きのほうがしっくりくる気がします。
 いえ、むしろ"s"なしだと微妙な感じがします。

 時々 ひとりぼっちのとき ぼくは泣く
 時々 ゆううつなとき ぼくは泣く

 まあ、自然な感じですよね。
 では、これはどうでしょう。
 
 いつか ひとりぼっちのとき ぼくは泣く
 いつか ゆううつなとき ぼくは泣く

 意味が通らないわけではないですし、訳し方次第かも知れませんが、微妙な気がします。

 何よりも、Gene Thomasの歌い方が、私の耳には、"Sometimes"と歌っているように聴こえます。
 こんな風です。

 サムターイ(ム)ザィ クライ ウェナイ(ム) ロンリー
 サムターイ(ム)ザィ クライ ウェナイ(ム) ブルー

 Gene自身は、歌詞にひっかけて、「いつか」正しく記憶されるだろうと言っています。

 今回は(も)、激しく脱線しました。
 Sunny Ozunaも、Gene Thomasも、引き続き追いかけていきたいと思っています。


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サザン・ロック・ショー・ケース

 南部の顔役、なんて呼ばれている人です。
 確か、レーナードの伝記映画のナレーションとかやってたと思います。
 70年代からの生き残りであり、息の長い活動をしている人です。
 単にサザン・ロックのボスではなく、カントリーに接近した立ち位置にいる人でもあります。


Tailgate Party
The Charlie Daniels Band 

1. The South's Gonna Do It (Charlie Daniels)
2. Pride and Joy (Stevie Ray Vaughan)
3. Can't You See (Toy Caldwell)
4. Let Her Cry (Mark Bryan, Everrett Felber, Darius Rucker, James Sonefeld)
5. Homesick (Buddy Buie, J. R. Cobb)
6. Keep Your Hands to Yourself (Dan Baird)
7. Statesboro Blues (Willie McTell)
8. Peach County Jamboree Lombar (Dru Lombar)
9. Sharp Dressed Man (Frank Beard, Billy F. Gibbons, Dusty Hill)
10. Free Bird (Allen Collins, Ronnie Van Zant)
11. The Legend of Wooley Swamp (Crain, Daniels, DiGregorio, Edwards, Hayward, Marshall)
12. El Toreador (Crain, Daniels, Di Gregorio, Edwards, Hayward, Marshall)
13. The Devil Went Down to Georgia (Crain, Daniels, DeGregorio, Edwards, Hayward, Marshall)

 本作は、99年にリリースされたもので、嬉しい企画盤です。
 カバーもの大好きの私としては、本盤の存在を知ったとき、大好物を前に舌なめずりする気分でした。
 
 本盤は、サザン・ロックの黄金期を内側から見つめ、支え続けた南部の顔役が、ミレニアムを目前に改めて南部音楽シーンへの変わらない熱い思いを、広く世界へ向けて発信したアルバムになっています。

 ここには、オールマンからレーナードなどの黄金期のジョージア勢を中心に、中西部のテキサス勢までを含む広義の南部音楽への愛情あふれるカバーがたっぷり詰まっています。
 曲が進むとともに、聴きなれたイントロや、忘れられないリフなどが次々と出てきて、そのたびに、思わず胸が熱くなります。
 
 アルバムの構成は、冒頭、彼らのオリジナル曲(間違いなく自信作)でガツンと決めて、以降、サザン・ロック(テキサス含む)の名曲の彼らなりの解釈が、これでもかこれでもか、と続く堪らない展開になっています。

 まず、アタマのオリジナル曲、"The South's Gonna Do It"が素晴らしいです。
 このあと続く、黄金期の名作群に見劣りしないよう、全力で取り組む意欲がよく現れている傑作だ感じました。

 曲調は、安易な表現では、アスリープのサザン・ロック版とも言えますが、別の表現をすると、レーナードのサザン・ブギに、フィドルをまぶしたようなスタイルです。
 かといって、カントリーっぽい間延びした感じは全くなく、疾走感あふれるかっこいいロックに仕上がっています。
 まさに、この後の展開へ期待を募らせてくれる名刺代わりの一発です。

 ここから、早速怒涛のカバー集になります。
 取り上げているのは、以下の通りです。

Stevie Ray Vaughanの"Pride and Joy"
Marshall Tucker Bandの"Can't You See"
Hootie & Blowfishの"Let Her Cry"
Atlanta Rhythm Sectionの"Homesick"
Georgia Satellitesの"Keep Your Hands To Yourself"
Allman Brothers Bandの"Statesboro Blues"
Grinderswitchの"Peach County Jamboree"
Z.Z.Topの"Sharp Dressed Man"
Lynyrd Skynyrdの"Free Bird"

 このライン・アップは、素直に嬉しいです。
 ただ、私にはほとんど馴染みがないバンドも含まれていました。

 名前だけは知っていたけれど、一度も聴いたことがなかったのが、Grinderswitchです。
 そして、全く初耳だったのが、Hootie & Blowfishで、「それって南部のバンドですか?」くらいのテンションになってしまいました。

 演奏は、それぞれ原曲に近いものもあれば、少しフェイクしているものもあり、印象は様々です。
 基本的に、原曲を崩しすぎす、しかし個性を出しているものが気に入りました。

 まず、原曲のイメージをかなり忠実になぞっているのが、"Pride and Joy"です。
 イントロのギターの入り方からして、いかにもそれっぽくてかっこいいです。
 強烈なテキサス・シャッフルの魅力を再現しています。
 ぶっといギターの唸りが快感です。

 "Can't You See"は、曲の仕上がりも素晴らしいですが、全体の雰囲気というか、そのなりきりぶりが、まさにMarshall Tucker Band以外ではありえない、という感じで最高です。
 Toy Caldwellの流麗な指弾きギターの再現度は、かなり高いです。
 これを聴いて思ったのですが、Marshall Tucker Bandのサウンドは、ディッキー・ベッツと非常に近いものがあると強く感じました。

 この曲でいえば、間奏でのソロは、容易に"Jessica"を連想させます。
 久しぶりに改めて、Marshall Tucker Bandを(Toy Caldwellのギターを)聴きたくさせてくれた名カバーです。

 私のお気に入りの3曲目は、"Peach County Jamboree"です。
 これは好きなタイプの曲です。
 Grinderswitchの当該曲は、Amazonで試聴した程度ですが、ぜひ全編聴いてみたいと思わせるものがありました。

 このバンドも、カントリー・ブギ風味の味わいが私好みです。
 オールマンのように、黒っぽいオルガンと、カントリー・テイストのスライドのバトルが聴きものです。

 "Statesboro Blues"は、まず、オルガンがそれっぼくて嬉しくなります。
 全体的に、少し冒険を抑えた仕上がりですが、楽しめます。
 
 "Sharp Dressed Man"は、いかにもハード・ブギという感じの曲です。
 なぜ、この曲なのかとも思いましたが、あるいはこの当たりが、Z.Z.Topのパブリック・イメージなのかも知れません。
 ちなみに、私が好きでよく聴いていたのは、"Deguello"や"Tres Hombres"あたりです。

 原曲のイメージが強力すぎて、若干押され気味かなと思ったのが、サテライツとレーナードです。
 まあ、どちらも名曲中の名曲ですから、やむを得ない面はあります。
 "Keep Your Hands To Yourself"は、頑張って雰囲気を出していて、十分合格ラインではありますが、あえて言うなら、もう少しやさぐれ感があってもいいかも知れません。
 歌詞もそんな感じですから…。

 "Free Bird"は、やはり「原曲が完璧すぎるなあ」というのが率直な感想です。
 Charlie Danielsも頑張ってはいますが、ボーカルの色気といいますか、艶みたいなのが及ばないかな、と思います。
 この曲がやりたかったのでしょうが、レーナードには小粋なブギもあるので、そっちの方がよかったかも…。
 ただ、間奏でフィドルが入る箇所は、思いのほかマッチしていて、さすがの仕上がりだと思いました。

 Hootie & Blowfishの"Let Her Cry"は、全く知らない曲ですが、ここでのCharlieのバージョンは良いです。
 曲の良さも光っていると感じました。
 ただ、若干アダルト・オリエンテッドな上品さも感じましたので、手放しで好きとはいいづらいです。

 Atlanta Rhythm Sectionは、"Spooky"くらいしか知らなかったのですが、"Homesick"はなかなかです。
 機会があれば、聴き返したいバンドです。

 そして、最後に3曲、Charlie Daniels Bandのライヴが収録されています。
 なかでは、ラストの"The Devil Went Down to Georgia"「悪魔はジョージアへ」は、バンドの代名詞的な1曲ですね。
 当然盛り上がります。
 でも、私は冒頭の"The South's Gonna Do It"の方が、より好きです。

 本盤は、サザン・ロックの懐メロ集ではありますが、実によく出来たアルバムだと思います。




The South's Gonna Do It です。




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ジョージア、オクラホマ、フロリダ、テネシー



テキサンの心に深く

 数か月前に入手してから、ずっと放置していた廉価版CD10枚組というのがありまして、昨晩何の気なしに1枚聴いてみました。

 それが何とびっくり !
 今の私の気分にぴったりで、すっかり嬉しくなりました。
 中身は、ほとんど興味がない方が大半かと思いますが、今回はこちらです。


American Roadsongs
From Coast To Coast

CD8
1. The Eyes Of Texas : Milton Brown (Sinclair) 36'
2. Texas Boogie : Gene O'Quinn (Kay, Whittaker, Taylor) 51'
3. Deep In The Heart Of Texas : Patsy Montana (Hershey, Swander) 42'
4. Down Texas Way : Rocky Mountain Boys (unknown) 49'
5. Texas Song Of Pride : Light Crust Doughboys (Brown) 39'
6. Yellow Rose Of Texas : Dave Red River (trad.) 39'
7. Texas Boogie : Paul Hawerd (Howerd) 52'
8. There's A Little Bit Of Everything In Texas : Ernest Tubb (Tubb) 45'
9. Heading Back To Houston : Joan Brooks (Franklin, Jordan) 50'
10. Texas Man : Lloyd Glenn (Carter) 47'
11. Waxahachie : Jim Boyd (Montgomery, Boyd) 50'
12. I Got Texas In My Soul : Tex Williams (Tubb, Turner) 46'
13. Goodbye Texas Hello Tennessee : Sheb Wooley (Wooley) 54'
14. I Left My Heart In Texas : Moon Mullican (Mann, Burns) 47'
15. I Can't Get Out Of Texas In My Dreams : Ozie Waters (unknown) 47'
16. Texas Belle : Andy Parker (Parker) 47'
17. Never Ask A Man If He's From Texas : Del Sharbutt (unknown) 48'
18. Texas Blues : Steve Schulte (Gover) 56'
19. T For Texas : Jimmy Rodgers (Rodgers) 28'
20. El Rancho Grande : Tune Wranglers (unknown) 38'

 全200曲入りという大盤振る舞いのセットでして、これはそのDisc8に当たります。
 なぜ、Disc1から順に聴かないのか、という尤もなご意見もあるかと思いますが、私の経験からいって、この手のボリュームのものは、通して聴くとかなり疲れるのが分かっています。
 まだ、コンピですのでましですが、これがコレクション(個人選集)になりますと大変です。

 私が聴いて、過去に疲れ切ったコレクションを例にだしますと、Jimmie Rodgersの10枚組、Carter Familyの10枚組というのがありまして、まじで疲労困憊しました。
 この2組は好きではありますが、20曲入りCDを1枚通して聴くだけで疲れます。

 私はベスト盤はあまり好きではないですが、この2組に関しては何種類もベスト盤を持っています。
 1枚もので、気持ちよく聴ける選曲と並び順を求め続けたのでした。
 私が、このてのパイオニアで、ストレスなく嬉々として聴けるのは、Bob Willsです。
 というわけで、関心が高いDiscから先に聴きました。


 この廉価版10枚組は、主としてヒルビリー・ソング(ブギもの多し!)をコレクトしたもので、年代でいいますと、20年代後半から50年代半ばあたりまでをセレクトしています。
 アーティストでいいますと、Jimmie Rodgers(T For Texas)からElvis(Blue Moon Of Kentuley)までという感じです。

 コンセプトは、アメリカの地名(主として州名)が表題になっている曲を集めるというものです。
 少しイメージがわかれたでしょうか。
 全10枚には、それぞれ副題がつけられていますので、参考に紹介します。

CD1 : Travelling From Coast To Coast
CD2 : Pan American
CD3 : Greetings From…
CD4 : Ridin' Down The Route 66
CD5 : Are You From Dixie ?
CD6 : At The Tennessee Border
CD7 : Leaving Tennessee
CD8 : T For Texas
CD9 : Deep In The Heart Of Texas
CD10 : Blue Hawaii

 CD1と2は、本選集の概要を示したような内容になっていて、様々な州名が入った曲を一望できます。
 まあ、いじわるを言いますと、あまり曲名になっていない(人気うすの)州が集められているとも言えます。

 CD3は、基本的に1,2と同じ流れですが、ケンタッキーが20曲中7曲入っていて、バランス的に若干惜しいです。
 ケンタッキーだけで組めなんかったんでしょうか?
 Bill Monroeに狙いを絞れば可能かなとも思いますが、同一アーティストの集中を避けたのでしょう。

 CD4は、タイトルから想像できる通り、Route 66の沿道の土地名を織り込んだ曲が集められています。
 CD5は、南部特集です。
 ジョージア、ミシシッピ、アラバマ、ルイジアナが収録されています。
 あれ、テネシーは?
 フロリダや両カロライナは?

 何とテネシーは、CD6と7の2枚にわたって特集されているのでした。
 フロリダ他は、あまり題材が少ないのかも知れません。
 それにしても、この人気の格差は凄いです。
 ちなみに、全体の副題には、"From Coast To Coast"とありますが、海岸線のある州だけが対象になっているわけではありません。

 そして、CD8と9はテキサス、CD10はハワイの特集です。
 50州のうち、どれくらいカバーしているのか確認していませんが、おそらくかなり偏っているのだと思います。

 さて、今回聴いたのはCD8のテキサスの1枚目です。
 テネシーと並んで、歌の題材として人気が高いことが分かります。

 収録曲が多いので、今回も注目曲をチョイスします。
 以下の通りです。

1. The Eyes Of Texas : Milton Brown
3. Deep In The Heart Of Texas : Patsy Montana
5. Texas Song Of Pride : Light Crust Doughboys
6. Yellow Rose Of Texas : Dave Red River
19. T For Texas : Jimmy Rodgers (こう表記されていますが、"Jimmie"の表記が一般的です。)
20. El Rancho Grande : Tune Wranglers

 まず、1曲目で目が覚めます。
 "The Eyes Of Texas"という曲ですが、メロディは誰でも知っているあの曲です。
 「線路は続くよどこまでも」です。

 こういう、耳になじんだ唱歌が、実は外国産の全く違う歌詞の曲だったというのは、いつ気付いても新鮮な驚きです。
 この曲は、元々Texas Rangersの曲だったらしいですが、ここでの"The Eyes Of Texas"は、さらに変化したものらしく、テキサス讃歌的な内容で、現在は、テキサス州立大オースティン校の応援歌として知られているらしいです。

 ここで歌っているのは、Milton Brownという人で、Bob Willsと一緒にバンドを組んでいたことがある、ウエスタン・スイングのパイオニアです。
 おそらく、Bob Willsと並んで語られる唯一の存在でしょう。

 早世した人で、Bob Willsほど有名ではありませんが、それでもかなりの録音が残されています。
 ウエスタン・スイング・ファンなら必聴の偉人です。
 私もBoxセットを愛聴しています。
 サウンドとしては、Bob Willsと共通性が高く最高です。
 
 "Deep In The Heart Of Texas"は、わりと有名な曲で、邦題はそれほど普及してないと思いますが「テキサスの心に深く」などが使われているようです。
 私は、この邦題というのが大好きで、センスがいいタイトルには萌えます。
 漣健児さんは、最高ですね。

 歌っているPatsy Montanaは、「カウボーイの恋人になりたいの」で有名な女性シンガーですね。
 レコードから起こしたような、スクラッチ・ノイズが聴こえますが、最高のパフォーマンスです。
 彼女はヨーデルを得意としていて、この曲でも間奏で見事に決めていてます。
 また、一撃集中で使っているハンド・クラッピングが、見事な効果を発揮しています。
 
 "Texas Song Of Pride"のLight Crust Doughboysは、先に出てきたMilton BrownとBob Willsが在籍していたバンドです。
 この曲は、時期からいって二人とも脱退後のものだと思います。
 "Light Crust"というのは「軽い生地」ですから、ブルースでたまにみかける、食品の商品名から、スポンサーが付けたバンド名かも知れません。

 "Yellow Rose Of Texas"は、邦題「テキサス黄色いバラ」、元は古いアメリカ民謡らしいですが、どこかで聴いたメロディです。
 何かの映画やテレビ・ドラマの主題歌とかではないのかな?

 "T For Texas"は、改めて言うような曲ではないですが、この盤唯一のJimmie Rodgers Songなので、やはり注目です。
 Jimmie Rodgersは、TB(肺結核)だったことは有名で、TB Bluesなんて曲もあったはず。

 この曲名のアタマの"T"は、"Train"でしょう。
 「テキサス行列車」ですね。
 曲中には、"T For Texas、T For Tennessee"という歌詞が出てきます。
 Jimmie Rodgersは、シンギング・ブレーキマン(「歌うぽっぽや」?)という愛称を持つシンガーでした。
 この曲は、ベスト盤には必ず入っている代表曲のひとつです。
 彼の得意のブルー・ヨーデルは、一度は聴いていただきたいです。

 "El Rancho Grande"は、やっと出てきました、という感じです。
 テキサスといえば、メキシコとの深い関連は避けて通れません。
 曲はトラッドで、多くの人が様々なアレンジでやっていますが、私は、Freddy Fender盤が大好きです。

 本盤は、冒頭の"The Eyes Of Texas"で、一撃KOされた1枚でした。
 こういうのがあるので、古い音楽はあなどれないのでした。



Milton BrownのThe Eyes Of Texasです。




Patsy MontanaのI Want to be a Cowboy's Sweetheartです。





彗星はアメリカの心に沈む

 今回は、Tom Russellを聴きました。
 私は、ほとんど聴いてこなかった人です。
 ではなぜ、この人のアルバムを選んだのか、それは曲目を見ていただければ分かっていただけると思います。

 実は、私は、これが完全に多数の大物シンガーを招いて作った企画盤だと思っていました。
 しかし、実態は、Track15以下の4曲のみが新録音で、その他は様々なシンガーが、これまでにカバーしたTomの曲を集めてきたアルバムなのでした。


Wounded Heart of America
(Tom Russell Song)
Tom Russell

1. Veteran's Day : Johnny Cash (Tom Russell) 
2. Blue Wing : Dave Alvin (Tom Russell) 
3. Gallo Del Cielo : Joe Ely (Tom Russell) 
4. Acres Of Corn : Iris Dement (Tom Russell) 
5. The Outcastle : Dave Van Ronk (Tom Russell) 
6. Manzanar : Laurie Lewis (Tom Russell) 
7. St. Olva's Gate : Doug Sahm (Tom Russell) 
8. Outbound Plane : Suzy Bogguss (Nanci Griffith, Tom Russell)
9. Canadian Whiskey : Ian Tyson & Nanci Griffith (Tom Russell) 
10. Navajo Rug : Jerry Jeff Walker (Tom Russell, Ian Tyson)
11. The Sky Above And the Mud Below : Ramblin Jack Elliott (Tom Russell) 
12. Haley's Comet : Texas Tornados (Tom Russell, Dave Alvin)
13. Stealing Electricity : Lawrence Ferlinghetti (Tom Russell) 
14. Walking On the Moon : Eliza Gilkyson (Tom Russell) 
Bonus Tracks
15. The Cuban Sandwich : Tom Russell (Tom Russell) 
16. Who's Gonna Build Your Wall : Tom Russell (Tom Russell) 
17. Home Before Dark : Tom Russell (Tom Russell) 
18. The Death Of Jimmy Martin : Tom Russell

 Tom Russellは、一般的にはルーツ・ロック系のシンガー・ソング・ライターに分類されるかと思います。
 さらに踏み込めば、アメリカーナの歌い手だと言えると思います。

 彼は、繰り返し、彼なりのカウボーイ・ソングに取り組んでいるようです。
 また、彼はL.A.の出身ですが、ひとつの特徴として、Tex-Mexに接近した音楽性も持っています。

 私の勝手な解釈では、アメリカーナとは、広義にはアメリカの伝承歌とそこから派生した音楽全てです。
 そして、狭義には、開拓時代の物語を主題に創作された英雄譚だと考えています。

 フォーク・ソングがスタートだと思いますが、主として、多くはカントリー・ミュージックに含まれるものでしょう。
 ロックでいえば、初期のザ・バンドを連想します。

 さらに勝手なことを言いますと、古典落語に対する新作創作落語をイメージしたいです。
 シンプルな連想としては、伝承歌発信ではないカウボーイ・ソングの多くが、私のアメリカーナのイメージです。

 本盤に収録された大物シンガーの顔ぶれを見れば、Tomがいかに錚々たる偉大な歌手の共感を得て、受け入れられているか、何となく垣間見ることができるように思います。

 タイトルからして象徴的なのは、ラストの"The Death Of Jimmy Martin"でしょう。
 Jimmy Martinは、ブルーグラス・ミュージック草創期の偉人の一人です。

 さて、私がこのアルバムに注目したのは、例によってDoug Sahmがらみです。
 ここには、"St. Olva's Gate"と"Haley's Comet"の2曲が収録されています。

 "St. Olva's Gate"は、Doug Sahmの98年作、"Get A Life"(又は"SDQ98"、中身は同じ)が初出です。
 「聖オルヴァの門」とはなんでしょう。
 宗教的なところなど、ますますザ・バンドの最初の2枚を連想してしまいます。

 私が最も注目したのは、"Haley's Comet"です。
 この演奏は、Texas Tornados名義となっていますが、オリジナル・アルバムには未収録です。
 はっきり言えば、私はこの曲を聴くために、このアルバムを手に入れたのでした。

 のちに知ったことですが、これは96年のマキシ・シングル"Little Bit Is Better Than Nada"のドイツ盤にのみ収録されているようです。(私は未入手です。)
 ちなみに、"Little Bit Is Better Than Nada"そのものは、5thアルバム"4 Aces"からのカットでした。

 さて、"Haley's Comet"です。
 この曲は、Tom RussellとDave Alvinが一緒に書いた曲です。
 Dave Alvinは、言うまでもなく元Blastersのギタリストだった人です。

 私は、この曲のTom盤は聴いたことがありませんが、偶然にも、もう一人の作者、Dave Alvinのバージョンを聴いていました。
 ただし、スタジオ録音は持っていず、ライヴ盤"Out In California"のテイクです。


Out In California
Dave Alvin and the Guilty Men
 

 これを聴き返してみて、Texas Tornados盤が、一部原曲の歌詞を変えたり、曲の進行をアレンジしていることに気付きました。

 私は、"Haley's Comet"がどのような曲か、長い間気付いていませんでした。
 "Out In California"で、Dave Alvin盤を早くから聴いていましたが、気付いたのはごく最近です。

 "Haley's Comet"は、何とBill Haleyの最後を歌った曲なのでした。
 驚きです。
 彼のバンド名コメッツと、夜空の彗星にかけられたタイトルなのです。

 Bill Haleyは、ロック・アラウンド・ザ・クロックで大成功を収めましたが、エルヴィスに代表される若いスターの登場で、人気が凋落しました。
 しかし、そんな彼もヨーロッパでは相変わらず大人気で、彼は活動の場を求め、海を渡ります。

 60年代には、リバイバル・ショウで成功した彼ですが、長くは続きませんでした。
 彼が中年のおじさんであることが分かってしまったからです。
 70年代になると、アルコール中毒になって精神的に不安定になっていたらしいです。
 そして、81年に脳腫瘍で天に召されました。

 "Haley's Comet"は、そんなHaleyの最期を歌っています。
 比喩なのか、なにか暗示的な歌詞なのか、判然としない部分がある歌詞です。
 晩年の彼は、しばしば錯乱状態になったとのことですから、そこにひっかけているのでしょう。
 ホテルのベッドで、幻覚を見ているような描写があります。

 ヘイリーの彗星が墜落したとき
 ホテルの寝室で 彼の意識は暗転し
 天井と壁に向かって話しかける
 彼が目を閉じると 1955年のステージ
 こどもたちの叫び声が響いてくる

 Texas Tornadosのバージョンでは、叫んでいるのは女の子になっています。
 また、この曲には、最初と最後にセリフのようなヴァースがありますが、省略しています。
 ジャズでは、しばしば使うアレンジですね。
 作者のDave Alvin盤では、疾走感のあるメロディが始まる前に、このヴァースが歌われます。
 
 リオ・グランデ近くのケーキ屋でのこと
 ビル・ヘイリーが言う
 「俺が誰だか分かるかい」  
 ウエイトレスが答えます
 「さあ あなたは疲れたお年寄りです」

 そして、主題が終わると、最期に再び短いヴァースで締めくくられます。

 ヘイリーの彗星が落ちたとき
 警官は テキサスでウエイトレスに話しかける
 「昔有名だった人の遺体を見つけたよ」

 Dougは、種明かし的なこの部分を省略することで、ある種の効果を狙ったのかも知れません。
 聴きては、比喩的な歌詞を聴きながら、これは何を歌っているのかと考えます。

 そして、原曲にはない独創的なアイデアで曲は締めくくられます。
 Texas Tornados盤では、ラストのメロディに被さって、オフ気味にあの有名なフレーズが、密かに歌われているのでした。
 (聞き逃し注意)
 
 1、2、3時、4時にロック
 5、6、7時、8時にロック
 9、10、11時、12時にロック
 ぼくらは 一晩中ロックするのさ

 さすが、Doug Sahm !


Dave AlvinのHaley's Cometです。




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懐かしのアーケイディア

 シンプルにかっこいいです。
 ケイジャンをクロスオーバーさせて、ポップにした男、それがDoug Kershawではないでしょうか。

 とりあえず、ケイジャンへの入門として最もとっつきやすい人だと思います。
 このCDに収録されている曲の多くは、時にケイジャン・ロックであり、また、ケイジャン・カントリーと呼べるものでしょう。

 
The Crazy Cajun Recordings
Doug Kershaw
  
1. Hey Mae (Kershaw, Kershaw)
2. It Takes All Day (To Get over Night) : Rusty & Doug (Kershaw)
3. Down South in New Orleans
4. Hold Me Tight  (Nash)
5. Mendocino (D.Sahm)
6. Cash on Hand : Rusty & Doug
7. Mama and Papa Waltz
8. Juke Box Songs (T.Mclain)
9. Hipp Tie-O : Rusty & Doug
10. You Done Me Wrong
11. Bad Moon Rising (J.Fogerty)
12. Real Ole Cajun Me
13. Sweet Genevieve
14. The Rains Came (H.P.Meaux)
15. The Town's Romeo : Rusty & Doug
16. We'll Take Our Last Walk Tonight (D.Sahm)
17. Wichita Wildcat Man : Rusty & Doug
18. Louisiana Sun : Rusty & Doug
19. Mistakes by the Numbers : Rusty & Doug
20. The Sooner You Go I Can Cry : Rusty & Doug
21. Slow Cajun Waltz

 とにかく、楽しいパーティー・ソングばかりです。
 ほとんどが普通に英語で歌われているため、ともすればケイジャン音楽であることを意識せずに聴いてしまうほどです。

 しかし、フランス語まじり(あるいはフレンチなまり)で泥臭く歌う曲、とりわけワルツやツー・ステップ調の曲などを聴くと、その実体がフォーク・ソングだということに、改めて気付かされます。

 その代表は、"Mama and Papa Waltz"や、"Slow Cajun Waltz"のような曲で、私は即行でクリフトン・シェニエを連想しました。
 ザディコとケイジャンは、コインの裏表でさえなく、全く同一のものと言ってしまいたいくらいです。

 さて、本CDには、いくつか注目曲が収録されています。
 私が聴く前から注目していた曲は、次のとおりです。

1. Hey Mae
5. Mendocino
11. Bad Moon Rising
14. The Rains Came
16. We'll Take Our Last Walk Tonight

 まず、"Hey Mae"を聴きましょう。
 ケイジャン・ロカビリーと呼びたいかっこいい曲です。
 心なしか、Dougのボーカルがヒーカップ気味に聴こえます。

 この曲は、Shakin' Stevensがカバーしており、私はそちらで親しんでいました。
 原曲を聴くことが出来て嬉しいです。
 Shakyのバージョンは、81年の2ndソロ、"This Ole House"のA面トップに収録されていました。
 Shaky盤は、彼の出世作のスタートを飾るにふさわしい、勢いのある素晴らしいパフォーマンスが記録されていて聴きものです。

 "Bad Moon Rising"は、もちろんCCRの名作ですね。
 フィドルを前面に押し出したアレンジで、個性を強調しています。
 古くからのJohn Fogerty推しの私としては、選曲されている段階で嬉しいです。

 "Mendocino"、"The Rains Came"、"We'll Take Our Last Walk Tonight"は、いずれもDoug Sahmのレパートリーで、最も楽しみにしていた曲です。
 なかでは、意識してケイジャン・アレンジを決めた"Mendocino"が珍品で、聴きものです。

 そして、"The Rains Came"は、確かに名曲ですが、Heuy Meauxは配下のミュージシャンに軒並み吹き込ませているような気がします。

 さて、全くノーマークで聴いて、とても驚いた曲があります。
 それは、"Real Ole Cajun Me"と" Mistakes by the Numbers"の2曲です。

 特に驚いたのは"Real Ole Cajun Me"で、これは歌詞は違いますが、メロディは、Doug Sahmの"Texas Me"そのものです。

 "Texas Me"は、遠く離れた土地から、故郷サン・アントニオに想いを馳せる歌でした。
 主人公は、時にサンフランシスコ湾を臨み、時に霧に煙るヴェニスの街にたたずみ、故郷を想います。
 この曲のサビでは、"That Real Old Old Texas Me 〜"「ほんとに懐かしい 懐かしいテキサス」と謳われています。
 "Real Ole Cajun Me"は、私にはよく聞き取れませんが、おそらくは、同じような歌詞なんじゃないでしょうか?
 このCDをお持ちの方は、ぜひ"Texas Me"と聴き比べていただきたいです。

 最後に、"Mistakes by the Numbers"にも触れたいと思います。
 この曲は、タイトルを見たときから、ある程度予期していましたが、まさかまさかの"Heartaches by the Numbers"でした。
 一般的な邦題は、「恋はつらいね」です。
 ベタに言えば「失恋数え歌」でしょうか。

 Ray Priceのヒット曲ですが、Buck Owensを始め、George Jonesなど多くの大物シンガーに歌われているカントリー・スタンダードです。
 近年(?)では、Dwight Yoakam盤が広く知られています。

 原曲は、"Heartahes Number one was 〜"、"Heartahes Number two was 〜"と数え歌になっています。
 「一番目の心の痛みは〜、二番目の心の痛みは〜」と、辛い恋の想い出を語っていく歌です。
 こちらも全体は聞き取れませんが、「最初の過ちは〜、二番目の過ちは〜」という歌なのでしょう。
 これはもう、替え歌と言ってしまいたいです。

 今回は、全く思いもしない楽しみを得ることが出来た1枚でした。


Hey Maeです。



Shakin StevensのHey Maeです。




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孤高のフィドリン・マン
ジス・オール・ハウス



いにしえの魔術

 もうご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、Nick Loweの4年ぶりの新作がリリースされるようです。

 まだ、本邦では、Amazonほかの大手オンライン・ショップにはエントリーされていず、Amazon USでも同様ですが、Nickの本国のAmazon UKでは、ジャケ写や収録曲がインフォメーションされています。

 同サイトによれば、リリースは9月5日、英盤はProper Recordsから(多分米盤はYap Recordsから)出されるようです。


The Old Magic
Nick Lowe

1. Stoplight Roses
2. Checkout Time
3. House For Sale
4. Sensitive Man
5. I Read A Lot
6. Shame On The Rain
7. Restless Feeling
8. The Poisoned Rose
9. Somebody Cares For Me
10. You Don't Know Me At All
11. 'Til The Real Thing Comes Along

 録音は、ロンドンで行われたのことで、以下のような顔ぶれがインフォされています。
 
Geraint Watkins : keyboards
Steve Donnelly : guitar
Robert Treherne (Bobby Irwinの別名) : drums
co-produced by Lowe, Neil Brockbank, and Treherne.

 収録曲には、3曲のカバー曲が含まれており、その作者は、Elvis Costello、Tom T. Hall、Jeff Westらであるとも伝えられています。

 あとの二人は知らない人たちですが、このうち、Tom T. Hallは、60年代に活躍したカントリー・シンガーで、"Shame On The Rain"がそれに当たるようです。

 また、詳細は不明ですが、Ron Sexsmith、 Paul Carrack、Jimmie Vaughanの名前もあがっていて、ゲスト参加しているのかも知れません。
 個人的には、もしJimmie Vaughanと共演したのなら、T-Bird在籍時以来と思われ(88' Pinker and Prouder Than Previous)、好奇心が高まります。

 近年のNick Loweは、年々渋さが増しており、好々爺然としたイメージがつきつつあります。
 デビュー時には、色々ととんがっていたLoweも、今年62歳、ワイルドにロックしろとは言いませんが、シャープな切れ味は失わないで欲しいものです。

 まだリリースまでかなりありますが、楽しみに待ちたいです。

 
 追記
 詳細は未確認ですが、"Rockpile Live At Montreux 1980"というCDのリリースが計画されているようです。


 以下は、収録予定曲です。 
 
1. Sweet Little Liza
2. So It Goes
3. I Knew The Bride
4. Queen Of Hearts
5. Switchboard Susan
6. Trouble Boys
7. Teacher Teacher
8. Girls Talk
9. Three Time Loser
10. Fine Fine
11. Crawling From The Wreckage
12. Let It Rock
13. I Hear You Knocking
14. They Called It Rock
15. Ju Ju Man
16. Let's Talk About Us

 収録は80年7月で、まだ"Seconds of Pleasure"の発売前です。
 Nickは"Labour Of Lust"、Dave Edmundsは"Repeat When Necessary"を引っ提げてライヴに臨んでいます。
 まあ、この2枚はソロ名義ですが、実質上Rockpileのアルバムですよね。
 
 発売は8月22日、Eagle Recordsからとのことで、実現すれば朗報ですが、ブートでないことを願います。

 参考
 http://www.yourwaytomusic.com/rockpile-live-at-montreux-1980-cd/


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カーリーン・カーター、消されたブレイク・イン
招待客が多すぎる
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