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スカンジナビアン・ホンキートンク・ソング

 今回は、在スウェーデンのカントリー・シンガー、Red Jenkinsの最新作をご紹介します。
 この人のバイオはよくわからないのですが、多分テキサス出身のアメリカ人で、スウェーデンに住んでいるのは、スウェーデン女性と結婚したからなんだと思います。


Cheatin' Heart Motel
Red Jenkins

1. Three Chord Country Song (feat. Tony Booth) (Red Steagall, Danny Steagall)
2. The Cheatin' Heart Motel (feat. Johnny Bush) (Red Jenkins, Becky Hobbs)
3. A Texas Honky Tonk (feat. Georgette Jones) (Glenn Sutton)
4. Fallin' Down Ole Beerjoint (feat. Rick Sousley) (Lloyd Goodson, VanBuskirk)
5. Let's Go Dancing (feat. Mona Mccall)  (Buster Doss)
6. Wish I Had a Nickel (feat. Landon Dodd) (Terry Fell)
7. Drink My Wife Away (feat. Miss Leslie) (David Allan Coe)
8. One More Bottle from the End (feat. Norman Wade) (M. Paul, R. Parker)
9. Happiness Is Never Found in Cans (feat. Billy Mata) (Frank Dycus, Max D. Barnes)
10. Dreams of a Dreamer (feat. Darrell Mccall) (David Hugh Brown)
11. World of Make Believe (feat. Bill Green) (Bill Green)
12. Play the Jukebox One More Time (feat. Jake Hooker) (Eemonn Mc Philomey)
13. Glasses of Beer (feat. Amber Digby)  (Joel Mathis, Berrien Sutton)
14. You Can't Get There from Here (feat. Justin Trevino) (David Hugh, Red Jenkins)
15. Private Party (feat. Bobby Flores) (John Lambert)
16. Stay Under Me (´till I Get Over Her) [feat. Miss Leslie] (Red Jenkins, Joe Sun)
17. Heaven Ain't a Honky Tonk (feat. Johnny Bush) (Mark Vickery)
18. Psychedelic Cowboy (Tribute to Doug Sahm) [feat. Augie Meyers] (Brad Piccolo, John Cooper) 

 Red Jenkinsは、本名も不明です。
 ミレニアム以降にCDが4枚出ていて、いずれも同じコンセプトで作られています。
 (本盤が5枚目)
 録音のためアメリカへ赴き、オースチンもしくはナッシュビルで主として友人(?)のカントリー・シンガーとデュエットしています。

 本盤も同様のつくりで、Johnny Bush、Bobby Floresあたりの常連に加え、多くの私の知らないシンガーと共演しています。
 珍しく超大物のGeorge Jones参加かと思った、Georgette Jonesなるややこしい名前の女性シンガーもいます。

 しかし、私が注目したのは、ラスト18曲目に入っている、Augie Meyersとのデュエット曲、"Psychedelic Cowboy"です。

 この曲は、私が以前、本ブログでとりあげたオクラホマのカントリー・ロック(?)バンド、Red Dirt Rangersの作品のカバーで、Doug Sahmのトリビュート・ソングです。
 実は、Red Dirt Rangersのオリジナル・バージョンでも、Augie Meyersがゲスト参加してオルガンやアコーディオンを弾いていたのでした。
 この曲は、Doug Sahmへの憧れを歌ったもので、Dougの作品名を織り込んだ歌詞だけでなく、曲調も含め、Doug讃歌曲として最高の出来だと思います。

 本盤では、歌詞はもちろんそのまま、アコーディオンを効果的に使ったアレンジで、原曲よりもレトロなスタイルでやっています。
 Redの「カモン シンギン オーギー !」という呼びかけに応じ、オーギーの歌声が聴こえてくると、自然と頬が緩みます。

 Red Jenkinsは、完全にホンキートンクのオールド・スクールの人で、例えるなら、本盤にも参加しているJohnny Bushをさらに時代遅れにした感じです(言い過ぎかな?)。
 ワルツもやりますが、レパートリーの多くは、4ビート・スタイル(風)の正調ホンキートンク・カントリーです。

 Johnny Bushをご存じでしょうか。
 Willie Nelsonのレパートリーとして有名な"Wiskey River"のオリジネイターで、がちがちの陶酔系テキサス・ホンキートンク・シンガーです。
 近年の作品を聴いても、バックこそニュー・トラディショナル調ですが、中身は相変わらずのオールド・スタイルで嬉しくなる人です。
 RedとJohnnyは古い友人のようで、類は友を呼ぶをそのままいっています。
 私の聴いた範囲では、Red Jenkinsは、そんなJohnny Bushよりもさらにレトロな印象を受けます。

 Augie Meyersとは、Redが06年にリリースしたアルバム、"Neon Bible"でも共演していて、そこでは"Heartaches By the Number"をデュエットしていました。



 アルバム収録曲は、見事に同じような雰囲気の曲であふれています。
 テキサスではありますが、アウトロー・カントリー風ではありません。
 あくまで正調ホンキートンク・カントリーで、Bob Willsネタの曲もあるため、ウエスタン・スイングが好きな方にも、興味をもって楽しめる1枚だと思います。

 やはり、"Psychedelic Cowboy"が素晴らしいですが、その他では次の2曲が特に耳に残りました。

4. Fallin' Down Ole Beerjoint
5. Let's Go Dancing 

 "Fallin' Down Ole Beerjoint"は、完全にレフティ・フリーゼル調のメロディの曲で、"I Love You A 1000 Ways"や、"Always Late"を連想します。(実際、それ風の歌詞も出てきます。)

 "Let's Go Dancing"は、"Take Me Back to Talsa"、"Bob Wills Is Still the King"などの歌詞が出てくるウエスタン・スイング讃歌で、後者のフレーズは、もちろんウエイロン・ジェニングスのヒット曲のタイトルです。

 私にとっては、Augieとの共演曲が一番ですが、Johnny Bush、Bobby Floresとのデュエットも安定の良さです。
 また、女性シンガーとの共演曲もいい感じでした。

 カントリーに関心がない方、苦手な方にはお奨めしにくいですが、内容はいいアルバムだと思います。
 Redのボーカルは、Johnny Bushに似たジェントルなバリトンなので、古いカントリーからイメージする、鼻にかかったハイ・ロンサムなスタイルではないので聴きやすいと思います。


 追記
 Doug Sahmのディスコグラフィーによれば、82年にRed Jenkinsがリリースしたアルバム、"Redneck In a Rock & Roll Bar"では、Dougがゲスト参加して、アルバム・タイトル曲をデュエットしているらしいです。
 …という情報は以前から知っていますが、私はジャケ写すら見たことがありません。
 スウェーデン盤オンリーということもあり、Redのミレニアム以前のアナログLPは、残念ながら未CD化のまま埋もれようとしています。
 何とかならないものでしょうか。
 



Psychedelic Cowboy by Red Jenkins




関連記事はこちら

Doug Sahm Tribute Songs
サイケデリック・カウボーイ
悲しい知らせに 空が泣いた


ハワイアン・カウボーイ

 今回は、ハワイのカントリー・シンガーをご紹介します。
 ハワイはアメリカの州とはいえ、ちょっと不思議な感じです。
 「マウイのハワイアン・カウボーイ」を自称するこの人、さてどんなテイストなんでしょうか?
 実は、ファースト・コンタクトです。


My 9th Island Paniolo Ranch
Danny Estocado

1. Hook In My Heart (Kevin Wicker)
2. Volcanic Heart (William Nauman)
3. Ring of Fire (June Carter, Merle Kilgore)
4. Long Black Train (Josh Turner)
5. Keeper of the Key (Harlan Howard)
6. Po'o Wai U Makawao Rodeo (Danny Estocado)
7. Heart That You Own (Dwight Yoakam)
8. Wasted Days and Wasted Nights (Huey P. Meaux)
9. My 9th Island Paniolo Ranch (Danny Estocado)
10. It's Only Make Believe (Conway Twity, Jack Nance)
11. Hello Love (Betty Jean Robinson, Aileen Mnich)
12. Daddy's Home (William Henry Miller, James Sheppard)
13. Jesus Hold My Hand (Albert E. Brumley)
14. Pele Pu'uwai (William Nauman)
15. Sweet Spot (Mark May)
16. Pride and Joy (Stevie Ray Vaughan)

 プロフや最近の活動などの詳細は不明ですが、彼のサイトの情報によれば、オアフ島生まれで、94年CDデビュー、これまでに6枚のCDをリリースしています。
 主な活動の拠点は、ラスベガスらしき内容が記載されていました。

 そして、定期的にハワイへ戻って活動しているほか、毎年日本で公演を行っているとの記述がありました。
 実は、日本のカントリー・ファンの間では周知の人なんでしょうか?

 熊本や京都のカントリー・フェスに出ている人なのかな?
 どうも思い切り無知をさらけ出している気がしてきました。 

 本盤は05年のリリースですが、アマゾンのエントリーでは最近作です。
 既にかなり前という感じですが、くだんのサイトの記述ともあっています。

 とにかく、聴いてみましょう。
 
 ……。

 通して聴いて最初に頭に浮かんだのは、「ハワイのフレディ・フェンダー」というワードでした。
 本盤の録音はナッシュビルで、なーんだと拍子抜けする思いですが、70年代のFreddy Fenderの作品を思わせる、輪郭のくっきりしたポップなサウンドが、とても聴きやすいです。

 本盤では、"Wasted Days and Wasted Nights"をやっていますが、Freddy Fenderを連想したのは、それだけが理由ではありません。
 ミディアム、スローのバラードでの泣き節が、Freddy Fenderを思い起こさせるのでした。

 本盤では、さほど顕著には出てはいませんが、そこはかとなく漂うハワイアン・テイスト、ポリネシアン・フレイバーが色々と想像力をかきたててくれます。

 直接的には、"Po'o Wai U Makawao Rodeo"や"Pele Pu'uwai"のような曲ですね。
 とりわけ、"Pele Pu'uwai"です。
 ハワイ語(?)の不思議な懐かしい響き、いかにもな「らしい」音階、旋律を使ったメロに癒されます。
 こういった曲を、もっとバイリンガルでやれば、さらにFreddyっぽく感じることでしょう。

 ハワイ風味探しに気持ちがとられていましたが、何気に、ビッグ・カントリーをやっていて興味深い内容になっています。 

 ジョニー・キャッシュの名作から、ホンキートンク・マイスター、ハーラン・ハワードの作品、ドワイト・ヨーカムのしっとり系バラードまで、バラエティに富んだ選曲です。
 コンウェイの初期の名作ロッカ・バラード、"It's Only Make Believe"には意表を突かれました。

 まあ、意表を突くといえば、ラストのスティーヴィー・レイ・ヴォーン作品、"Pride and Joy"に勝るものはないですね。
 ここでは、ぶっとい迫力のシャッフル・ブルースに果敢に挑戦して、"Sweet Spot"と並んで、ブルージーなDannyが聴けます。

 そんな中、私のお奨めは、オリジナルでは、アルバム・タイトル曲の"My 9th Island Paniolo Ranch"、カバーでは、"Daddy's Home"です。

 "My 9th Island Paniolo Ranch"でいう、9番目の島とはなんでしょう。
 ハワイ州は、8つの島と100以上の小島で構成されています。
 この自作の軽快でポップなナンバーは、「ぼくがほんの子どもだったころ…」という歌詞で始まります。
 ハワイ生まれの気概みたいなことを歌っているのではないでしょうか。
 バックで適時入ってくる「掛け声」「囃子言葉」が雰囲気を盛っています。

 "Daddy's Home"は、ドワイト・ヨーカムのバラードとともに注目のバラードです。
 この曲こそ、最もFreddy Fenderを思わせる歌唱だと思います。
 泣き節が見事に決まったサービス・エース級の1曲でしょう。

 "Daddy's Home"の原曲は、Shep & LimeLitesが61年にリリースした、遅れてきたドゥ・ワップの名作でした。
 時は既にアーリー・ソウルが芽吹き始めていたころです。

 この曲の歌詞の最期は、"〜A Thousand Miles Away"と結ばれています。
 この"A Thousand Miles Away"のフレーズこそ、リーダーで作者のJame Sheppardが、以前に組んでいたグループ、The Heartbeats時代にヒットさせた、もうひとつのワン・ヒット・ワンダー曲のタイトルなのでした。

 Danny Estocadoは、なかなかに面白いアーティストだと思います。
 過去作では、もっとハワイ・ルーツに根差したアルバムもあるようなので、聴いてみたいです。

 ところで、思いつきを書かせてください。
 アメリカのもうひとつの飛び地、アラスカ州には、カントリー・シンガーはいるんでしょうか?
 もちろん、ここでイメージしているのは、エスキモーやカナダのイヌイットのような先住民族出身のシンガーです。
 どうでしょう?

 



Po'o Wai U Makawao Rodeo by Danny Estocado






超絶速弾き男、実はこんな人

 Albert Leeの新譜を聴きました。
 早い時期に発売予定を知ってオーダーしていたのですが、実際に手に取るまでライヴ盤だということに気づいていませんでした。

 実は、私がAlbert Leeのアルバムを買うのは、これが2度目になります。
 伴奏者としてクレジットがあると、確実に購入のフラグがたつ人ですが、さて、本人のリーダー・アルバムとなるとどうでしょう。
 かなり昔、最初期のソロ・アルバムを買って以来です。

 ほとんど初めて聴くような気分です。
 
On The Town Tonight
Albert Lee & Hogan's Heroes

Disc 1
1. Your Boys (Albert Lee, Karen Lee)
2. Restless (Carl Perkins)
3. Song and Dance (Albert Lee)
4. Travellin' Prayer (Billy Joel)
5. Runaway Train (John Stewart)
6. Glory Bound (Gavin Povey)
7. Wheels (Chris Hillman, Gram Parsons)
8. I'll Never Get Over You (John Hiatt)
9. The World Is Waiting For the Sunrise (Eugene Lockhart, Ernest Seitz)
10. Rad Gumbo (Barrere, Clayton, Gradney, Kibbee, Park, Payne)
11. Highwayman (Jimmy Webb)
12. Breathless (Otis Blackwell)
Disc 2
1. Barnyard Boogie (Gray, Wilhelmina, Jordan)
2. Two Step Too (Delbert McClinton)  
3. I'm Coming Home (Charlie Rich)
4. You're Only Lonely (John David Souther)
5. Leave the Candle (Gary Brooker, Peter Sinfield)
6. On the Verge (Hugh Prestwood)
7. Let It Be Me (Becaud, Curtis, Delanoe)
8. Oh Darling (Lennon, McCartney)  
9. Leave My Woman Alone (Ray Charles)
10. 'Til I Gain Control Again (Rodney Crowell) 
11. Country Boy (Lee, Coulton, Smith)
12. Skip Rope Song (Jesse Winchester) 
13. Tear It Up (Burnette, Burnerre, Burlison)

 全体を通して聴いてみて、まず思ったことがあります。
 それは、バラードを歌うAlbert Leeが新鮮で、興味深かったということです。

 Albert Leeのパブリック・イメージは(私の個人的な思いですが)、バンジョーの速弾き奏法を思わせる、カントリー系スーパー・ピッカーというものではないでしょうか。
 あるいは、独創的なロカビリー・ギターリストという感じでもいいです。

 そういったイメージどおりの演奏では、当然安心安定のプレイが聴けますが、一方で鍵盤系の楽器での弾き語りがあって、これがなんともじわじわと効いてくるのでした。

 ただ、ロカビリー系のプレイを得意としている人ではありますが、いわゆるトワンギン・スタイルとは少し違う気がします。
 トワンギンの定義が定かではありませんが、私の勝手な思いでは、ローポジの巻き弦、もっといえば開放弦をぶんぶんいわせる感じが、私の思うトワンギンです。
 もちろん曲にもよりますが、この人の場合、基本はそういったプレイではないですね。
 "Country Boy"での、歌伴での細かいピッキングがこの人の真骨頂でしょう。

 さて、本盤は10年の英国公演です。
 セットリストは、同じメンバー(Hogan's Heroes)で録った既発スタジオ盤での収録曲を中心に、Leeの意外な趣味(?)を垣間見ることが出来る内容ではないでしょうか。

 ビリー・ジョエルが一番のサプライズでしょうか?
 (私は"Travellin' Prayer"という曲は初めて聴きました。) 
 嬉しいカパーという意味では、Louie Jordanの"Barnyard Boogie"です。

 J. D. サウザーの"You're Only Lonely"のカバーも、やはり驚きました。
 メジャー・ヒットをやること自体がサプライズです。
 この曲のみ、エレキをアコギに持ち替えて弾き語っています
 スペクター風のイントロこそありませんが、普通に気持ちよさそうにカバーしています。

 その点、ロカビリー系の曲は安心安全の選曲で、期待を裏切らないグッドロッキンな速弾きが聴けます。

 Albert Leeは、それこそ数えきれないスタジオ・ワークをやっているはずで、本盤で"Let It Be Me"をやっていますが、Everly Brothersのバックもやったのではないでしょうか。
 彼のバラードでの歌い方は、DonだかPhilだか分かりませんが、Everly Brothersの影響大と感じました。

 私がAlbert Leeを知ったのは、Shakin' Stevensの"This Ole House"がきっかけで、初めて聴く種類のギタープレイに驚愕したものでした。

 世間的(ここでは音楽ファン)にはどうだったんでしょう?
 やはり、Emmylou Harrisのホット・バンドに参加したことが、大きく注目されたきっかけでしょうか。
 スタジオ盤でいうと、EmmylouのEpicの3rd、"Luxury Liner"への参加が77年で、ここから81年の"Evangeline"あたりまで連続7作に参加していました。
 当初こそ、James Burtonのセカンドというポジでしたが、すぐに不動のツー・トップとなり、ついにはJames Burtonが抜けてワン・トップになります。

 その間、79年にはShakyの1stソロ、"Take One"に参加、そして81年の2nd、"This Ole House"と、こちらは2作連続で参加しています。
 シングルでは、"This Ole House"のあと、"You Drive Me Crazy"とか、"Green Door"とか、当時リアル・タイムで聴いていました。
 当時は、あとの2曲もLeeのプレイだと思ってました。(正解はMicky Gee)

 そして、Emmylouのあと、Eric Claptonのバンドでセカンド・ギターをやっています。
 "Another Ticket"が81年、次の"Money and Cigarette"が83年です。

 この当時は、やはり想い出がありますね。
 "Money and Cigarette"収録のシングル、邦題「ロックンロール・ハート」"I've Got a Rock 'n' Roll Heart"は、トーナツ盤を今でも持ってます。
 コマーシャル過ぎると思う方もいるかも知れませんが、私は、リラックスした雰囲気の曲調、ギターのプレイともに大好きな曲です。
 "Money and Cigarette"には、ライ・クーダーが参加していましたが、"I've Got a Rock 'n' Roll Heart"では、アコギのサイドがLeeで、リードはEricかRyでしょうか?
 でも、Ericがサイドで、Leeはオルガンという気もします。

 さて、本盤のバック・バンド、Hogan's Heroesですが、リーダーのGerry Hoganは、英国のペダル・スチール・ギタリストで、Albert Leeとは古くからの知り合いのようです。
 Dave Edmundsの78年の"Trax On Wax 4"で、スチール・ギターを弾いている人です。
 また、84年には、Emmylou Harrisのホット・バンドに参加してツアーに同行しています。
 そのころのAlbert Leeは、Hot Bandを出たあとで、Claptonのバンドに在籍中か、そろそろ離れたころかも知れません。

 ちなみに、少しあと、John Fogertyが最初のカンバック(85' Centerfield")を果たしたころのことですが、John Fogerty's All Starsという名のバンドを組んでコンサートをしていた時期がありました。
 Albert Leeは、このAll Starsに参加していました。
 ベースはDuck Dunn、キーボードはBooker T. Jonesでした。

 このころのJohnは、Fantasy Recordsとの係争に終わりが見えなかったころで、自作でありながらCCRナンバーを歌わなかった時期です。
 その分、ハンク・バラードとか、スワン・シルバートーンズとか、今では珍しいレパートリーをやってます。

 脱線しました、軌道修正します。
 Hogan's HeroesのメンバーでピアノのGavin Poveyは、Shakyの82年の4th、"Give Me Your Heart Tonight"から、Geraint Watkinsの後釜として、Shakyのバンドに参加していました。
 87年の"Let's Boogie"まで在籍しています。
 Albert Leeとは、スタジオ盤ベースでは、やはり入れ替わり加入という感じですが、交流があった可能性は高いでしょう。

 Gavin Poveyは、ソロ・アルバムもある人で、私の印象では、乱暴に例えればロックンロール・リバイバリストといったところでしょうか。
 本盤では、自作の"Glory Bound"と、もう1曲でリード・ボーカルをとっています。

 Gavin Poveyは、Stiff所属のKirsty MacColl、Tracey Ullmanらガール・ポップ系シンガーの伴奏をやっているほか、なんと79年のInmatesの!stにケスト参加して、1曲オルガンを弾いています。
 また、Billy Blemnerの84年のソロ、"Bash"では2曲でピアノを弾いているのでした。

 そして、Texas Tornadosの91年作、"Zone Of Our Own"の収録曲、"Did I Tell You"が、Augie MeyersとGavin Poveyの共作とクレジットされていることに、今回気が付きました。
 (演奏には参加していません。)
 ただこの曲は、Texas Tornados盤が初出ではなく、Augieのソロ・アルバム、"Augies Back"が初出だと思うのですが、"Augies Back"ではGavin Poveyの単独クレジットになっています。
 理由は不明です。(ちょっと追及したくなってきました。)

 さて、本盤では、Gavin Poveyのほかにも、数曲でドラムのPeter Baronがリード・ボーカルをとっています。
 John Hiattの"I'll Never Get Over You"が、彼のリード・ボーカルです。
 この曲の原曲は、A&M録音とSanctuary録音の2種類があり、どちらも捨てがたい魅力があります。

 A&M録音は、93年の"Parfectly Good Guitar"の日本盤ボートラとして収録されたので、現在普及しているUS盤では聴くことが出来ません。
 Sanctuary録音は、01年の"The Tiki Bar Is Open"に収録されたもので、Sonny Landrethがギターを弾いています。
 Sonny Landrethは大好きで、素晴らしいです。(私はRyよりも好きです。)

 A&Mでギターを弾いたMichael Wardは、賛否あるかもしれませんが、私は好きです。
 "Buffalo River Home"のプレイが私のツボで、これがある限り多少のことはOKです。
 本盤では、Leeが普段とは違い、Claptonのウーマン・トーンを思わせる優しいソロを弾いていて聴きものです。

 思いつくまま綴ってきましたので、特記すべき点について、ここで整理したいと思います。

 Albert Leeがピアノの弾き語りをしている曲
Disc 1
11. Highwayman
12. Breathless (バンピン・ピアノ !!)
Disc 2
7. Let It Be Me
10. 'Til I Gain Control Again
12. Skip Rope Song

 ピアノのGavin Poveyがリード・ボーカルをとっている曲
Disc 1
6. Glory Bound
9. The World Is Waiting For the Sunrise

 ドラムスのPeter Baronがリード・ボーカルをとっている曲
Disc 1
8. I'll Never Get Over You
Disc 2
5. Leave the Candle
8. Oh Darling

 私は、本盤で、Albert Leeという人を再認識しました。
 超絶速弾き曲、"Country Boy"の人、というベタな固定観念を打ち破ってくれたアルバムになりました。



Country Boy by Albert Lee



Sweet Little Lisa by Albert Lee




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ビー・リアル 〜ダグ・ソング拾遺1

 Doug Sahmが天に召されて、没後10年を機に出されたトリビュート・アルバムのリリースからも、すでに数年が経過しようとしています。

 未CD化アルバムには、未だに動きはないのか?
 新しい編集盤のリリース予定は?
 ライヴ音源は一杯あるだろうに、なぜソフト化しない?
 などなど、こういった思いに激しく同意していただける同志は多いと思います。

 そこで(?)、強引に飛躍しますが、私がDoug Sahm禁断症状を抑えるため、日々張っているセンサーにかかった小ネタを、少しづつ機会をとらえて紹介していきたいと思います。
 (今までから似たようなのやってますが、なぜか突然胸熱く宣言 !)

 今回はその手始めとして、このアルバムを取り上げたいと思います。
 中身はカントリーです。

 全く初めて聴く人ですが、私が注目して入手した理由は、もちろんトラック2の"Be Real"の存在です。


Country To The Bone
Tommy Alverson

1. Country To The Bone (Roy Robinson, Jerri Lynn Robinson, David Oxford)
2. Be Real (Doug Sahm)
3. Got Here Fast As I Could (Tommy Alverson)
4. I Can't Convince My Heart (Clay Blaker)
5. Just Like Hank (Walt Wilkins, Davis Raines)
6. She Found Something In Me (Jerry Max Lane)
7. This Buzz Is For You (Roy Robinson, Jerri Lynn Robinson)
8. Second Hand Love (Tommy Alverson, Charlie Throckmorton Jr.)
9. I'll Still Be Around (Jim Lauderdale)
10. Tequila Rose (Roy Robinson, Jerri Lynn Robinson)
11. She Even Woke Me Up To Say Good Bye (Mickey Newbury)
12. Upside Down (Brain Burns)
13. Welcome To Paradise (Tommy Alverson)
14. Texas Woman (Tommy Alverson, Charlie Throckmorton)

 本盤は、07年にPalo Duro Recordsからリリースされました。
 主人公のTommy Albersonは、95年にアルバム・デビューしたようで、現在まで2〜3年に1枚のペースで新作をリリースしているようです。

 風貌から、テキサス・アウトロー・カントリーを連想します。
 多分、それほど間違ってないんだろうと思いますが、本作を聴くと色々と趣向をこらして一本調子にならないよう、工夫しているように感じました。



 基本的にソングライターでもあり、デビュー当初は、自作中心でやっていたようですが、本盤では、Jim LauderdaleやMickey Newburyなど、定評の高いソングライターの作品を積極的に取り上げています。

 しかし、アタマに書きましたように、私の目的はあくまでDoug Sahm絡みです。
 本盤には、Doug Sahmが書いた本格的(?)なカントリー曲、"Be Real"がカバーされています。

 オリジナルの"Be Real"は、何かの企画ものとして作られたのではないかと思われ、バックを完全ナッシュビル陣営で固めて仕上げられた、どカントリーでした。
 それでも、Dougらしさ満載の名曲で、この曲を気に入ったカントリー・シンガーはかなりいたのではないかと想像しています。

 後にSir Douglas Quintetの伴奏によるバージョンが、Sonetのアルバム、"Midnight Sun"の中で披露されました。

 本盤でのアレンジは、想定範囲の普通のウエスタン・スイング調ですが、やはり曲の良さが光っています。
 …などと、どうしても贔屓目に書いてしまいます。
 Alversonさん、Dougをカバーしてくれてありがとう!
 フィドルのイントロが始まるやいなや、「Ha〜 Coutry Music !」と掛け声をかけていて、その声が嬉しそうです。

 実はこの人、09年リリースの最新ライヴ盤、"Live Again"では、やはりDoug作の"Texas Me"をやっているのでした。
 この人のDoug好きは本物ですね。

 さて、"Be Real"ばかりに注目していましたが、実は他の曲もかなりよいです。
 まず、トラック4の"I Can't Convince My Heart"と、トラック9の"I'll Still Be Around"の2曲が、私好みの王道のウエスタン・スイングの良曲で、イントロの段階で昂まりまくりで胸熱です。

 ホンキートンク・カントリーでは、トラック7の"This Buzz Is For You"が群を抜いて耳を惹かれます。
 中身は、おそらくブルー・ラブ・ソングなのでしょうが、曲調が完全にウキウキ感満載で、いかにも(?)米国人が好きそうな失恋バカ騒ぎ曲です。
 「俺に冷たいビールを2杯くれ」
 「こっちはウィスキーをワン・ショット」みたいな歌詞が聴き取れます。
 背後に聞こえる酒場の喧噪を模したSEの演出が、雰囲気を高めていてグッド・アレンジです。

 そして、女性ボーカルとのデュエットで歌われるトラック10の"Tequila Rose"は、日本人好みのボーダー・ソングで、哀愁のアコーディオンの伴奏がぴったりはまる、これまた良曲です。

 その他、アコギの伴奏が気持ちいい"Upside Down"、トーキング風の歌が楽しいトロピカル調の"Welcome To Paradise"、爽やか系で、かつ往年の70年代カントリー系サザン・ロックを思い起こさせる"Texas Woman"という、トラック12から14への流れが、気持ちよくアルバムを締めてくれています。

 こうやって振り返ると、やはりバラエティに富んだ内容ですね。
 これを、どれを聴いても同じようなカントリーだと感じる方、多分あなたの方が正常です。

 でも私の場合、たった1曲でもDoug Sahmのカバー曲があるだけで、この程度の高揚感はすぐに見出せるのでした。



Be Real by Tommy Alverson



Invitation to The Blues by Tommy Alverson & Ed Burleson


デュエットしているEd Burlesonは、Doug Sahmプロデュースのアルバムを出しているカントリー・シンガー


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Be Real
白夜の国から
テキサス遥か

Ed Burleson
君に捕らわれて


テキサンの心に深く

 数か月前に入手してから、ずっと放置していた廉価版CD10枚組というのがありまして、昨晩何の気なしに1枚聴いてみました。

 それが何とびっくり !
 今の私の気分にぴったりで、すっかり嬉しくなりました。
 中身は、ほとんど興味がない方が大半かと思いますが、今回はこちらです。


American Roadsongs
From Coast To Coast

CD8
1. The Eyes Of Texas : Milton Brown (Sinclair) 36'
2. Texas Boogie : Gene O'Quinn (Kay, Whittaker, Taylor) 51'
3. Deep In The Heart Of Texas : Patsy Montana (Hershey, Swander) 42'
4. Down Texas Way : Rocky Mountain Boys (unknown) 49'
5. Texas Song Of Pride : Light Crust Doughboys (Brown) 39'
6. Yellow Rose Of Texas : Dave Red River (trad.) 39'
7. Texas Boogie : Paul Hawerd (Howerd) 52'
8. There's A Little Bit Of Everything In Texas : Ernest Tubb (Tubb) 45'
9. Heading Back To Houston : Joan Brooks (Franklin, Jordan) 50'
10. Texas Man : Lloyd Glenn (Carter) 47'
11. Waxahachie : Jim Boyd (Montgomery, Boyd) 50'
12. I Got Texas In My Soul : Tex Williams (Tubb, Turner) 46'
13. Goodbye Texas Hello Tennessee : Sheb Wooley (Wooley) 54'
14. I Left My Heart In Texas : Moon Mullican (Mann, Burns) 47'
15. I Can't Get Out Of Texas In My Dreams : Ozie Waters (unknown) 47'
16. Texas Belle : Andy Parker (Parker) 47'
17. Never Ask A Man If He's From Texas : Del Sharbutt (unknown) 48'
18. Texas Blues : Steve Schulte (Gover) 56'
19. T For Texas : Jimmy Rodgers (Rodgers) 28'
20. El Rancho Grande : Tune Wranglers (unknown) 38'

 全200曲入りという大盤振る舞いのセットでして、これはそのDisc8に当たります。
 なぜ、Disc1から順に聴かないのか、という尤もなご意見もあるかと思いますが、私の経験からいって、この手のボリュームのものは、通して聴くとかなり疲れるのが分かっています。
 まだ、コンピですのでましですが、これがコレクション(個人選集)になりますと大変です。

 私が聴いて、過去に疲れ切ったコレクションを例にだしますと、Jimmie Rodgersの10枚組、Carter Familyの10枚組というのがありまして、まじで疲労困憊しました。
 この2組は好きではありますが、20曲入りCDを1枚通して聴くだけで疲れます。

 私はベスト盤はあまり好きではないですが、この2組に関しては何種類もベスト盤を持っています。
 1枚もので、気持ちよく聴ける選曲と並び順を求め続けたのでした。
 私が、このてのパイオニアで、ストレスなく嬉々として聴けるのは、Bob Willsです。
 というわけで、関心が高いDiscから先に聴きました。


 この廉価版10枚組は、主としてヒルビリー・ソング(ブギもの多し!)をコレクトしたもので、年代でいいますと、20年代後半から50年代半ばあたりまでをセレクトしています。
 アーティストでいいますと、Jimmie Rodgers(T For Texas)からElvis(Blue Moon Of Kentuley)までという感じです。

 コンセプトは、アメリカの地名(主として州名)が表題になっている曲を集めるというものです。
 少しイメージがわかれたでしょうか。
 全10枚には、それぞれ副題がつけられていますので、参考に紹介します。

CD1 : Travelling From Coast To Coast
CD2 : Pan American
CD3 : Greetings From…
CD4 : Ridin' Down The Route 66
CD5 : Are You From Dixie ?
CD6 : At The Tennessee Border
CD7 : Leaving Tennessee
CD8 : T For Texas
CD9 : Deep In The Heart Of Texas
CD10 : Blue Hawaii

 CD1と2は、本選集の概要を示したような内容になっていて、様々な州名が入った曲を一望できます。
 まあ、いじわるを言いますと、あまり曲名になっていない(人気うすの)州が集められているとも言えます。

 CD3は、基本的に1,2と同じ流れですが、ケンタッキーが20曲中7曲入っていて、バランス的に若干惜しいです。
 ケンタッキーだけで組めなんかったんでしょうか?
 Bill Monroeに狙いを絞れば可能かなとも思いますが、同一アーティストの集中を避けたのでしょう。

 CD4は、タイトルから想像できる通り、Route 66の沿道の土地名を織り込んだ曲が集められています。
 CD5は、南部特集です。
 ジョージア、ミシシッピ、アラバマ、ルイジアナが収録されています。
 あれ、テネシーは?
 フロリダや両カロライナは?

 何とテネシーは、CD6と7の2枚にわたって特集されているのでした。
 フロリダ他は、あまり題材が少ないのかも知れません。
 それにしても、この人気の格差は凄いです。
 ちなみに、全体の副題には、"From Coast To Coast"とありますが、海岸線のある州だけが対象になっているわけではありません。

 そして、CD8と9はテキサス、CD10はハワイの特集です。
 50州のうち、どれくらいカバーしているのか確認していませんが、おそらくかなり偏っているのだと思います。

 さて、今回聴いたのはCD8のテキサスの1枚目です。
 テネシーと並んで、歌の題材として人気が高いことが分かります。

 収録曲が多いので、今回も注目曲をチョイスします。
 以下の通りです。

1. The Eyes Of Texas : Milton Brown
3. Deep In The Heart Of Texas : Patsy Montana
5. Texas Song Of Pride : Light Crust Doughboys
6. Yellow Rose Of Texas : Dave Red River
19. T For Texas : Jimmy Rodgers (こう表記されていますが、"Jimmie"の表記が一般的です。)
20. El Rancho Grande : Tune Wranglers

 まず、1曲目で目が覚めます。
 "The Eyes Of Texas"という曲ですが、メロディは誰でも知っているあの曲です。
 「線路は続くよどこまでも」です。

 こういう、耳になじんだ唱歌が、実は外国産の全く違う歌詞の曲だったというのは、いつ気付いても新鮮な驚きです。
 この曲は、元々Texas Rangersの曲だったらしいですが、ここでの"The Eyes Of Texas"は、さらに変化したものらしく、テキサス讃歌的な内容で、現在は、テキサス州立大オースティン校の応援歌として知られているらしいです。

 ここで歌っているのは、Milton Brownという人で、Bob Willsと一緒にバンドを組んでいたことがある、ウエスタン・スイングのパイオニアです。
 おそらく、Bob Willsと並んで語られる唯一の存在でしょう。

 早世した人で、Bob Willsほど有名ではありませんが、それでもかなりの録音が残されています。
 ウエスタン・スイング・ファンなら必聴の偉人です。
 私もBoxセットを愛聴しています。
 サウンドとしては、Bob Willsと共通性が高く最高です。
 
 "Deep In The Heart Of Texas"は、わりと有名な曲で、邦題はそれほど普及してないと思いますが「テキサスの心に深く」などが使われているようです。
 私は、この邦題というのが大好きで、センスがいいタイトルには萌えます。
 漣健児さんは、最高ですね。

 歌っているPatsy Montanaは、「カウボーイの恋人になりたいの」で有名な女性シンガーですね。
 レコードから起こしたような、スクラッチ・ノイズが聴こえますが、最高のパフォーマンスです。
 彼女はヨーデルを得意としていて、この曲でも間奏で見事に決めていてます。
 また、一撃集中で使っているハンド・クラッピングが、見事な効果を発揮しています。
 
 "Texas Song Of Pride"のLight Crust Doughboysは、先に出てきたMilton BrownとBob Willsが在籍していたバンドです。
 この曲は、時期からいって二人とも脱退後のものだと思います。
 "Light Crust"というのは「軽い生地」ですから、ブルースでたまにみかける、食品の商品名から、スポンサーが付けたバンド名かも知れません。

 "Yellow Rose Of Texas"は、邦題「テキサス黄色いバラ」、元は古いアメリカ民謡らしいですが、どこかで聴いたメロディです。
 何かの映画やテレビ・ドラマの主題歌とかではないのかな?

 "T For Texas"は、改めて言うような曲ではないですが、この盤唯一のJimmie Rodgers Songなので、やはり注目です。
 Jimmie Rodgersは、TB(肺結核)だったことは有名で、TB Bluesなんて曲もあったはず。

 この曲名のアタマの"T"は、"Train"でしょう。
 「テキサス行列車」ですね。
 曲中には、"T For Texas、T For Tennessee"という歌詞が出てきます。
 Jimmie Rodgersは、シンギング・ブレーキマン(「歌うぽっぽや」?)という愛称を持つシンガーでした。
 この曲は、ベスト盤には必ず入っている代表曲のひとつです。
 彼の得意のブルー・ヨーデルは、一度は聴いていただきたいです。

 "El Rancho Grande"は、やっと出てきました、という感じです。
 テキサスといえば、メキシコとの深い関連は避けて通れません。
 曲はトラッドで、多くの人が様々なアレンジでやっていますが、私は、Freddy Fender盤が大好きです。

 本盤は、冒頭の"The Eyes Of Texas"で、一撃KOされた1枚でした。
 こういうのがあるので、古い音楽はあなどれないのでした。



Milton BrownのThe Eyes Of Texasです。




Patsy MontanaのI Want to be a Cowboy's Sweetheartです。





鞍の上の生活へ帰ろう

 今回は、Alvin Crowのカウボーイ・ソング集を聴きました。
 まあ、ウエスタン・ソング集でも、アメリカーナ集と呼んでもいいと思います。
 収録曲は、古くからの伝承曲と西部劇の劇中歌などが中心だと思われます。 

  
Cowboy 1
Alvin Crow & Pleasant Valley Boys

1. Big Iron  (Marty Robbins)
2. Streets Of Larredo (P.D)
3. Riding Down The Canyon (Gene Autry, Smiley Burnett)
4. El Paso (Marty Robbins)
5. Ghost Riders In The Sky (Stan Jones)
6. High Noon (Dmitri Tiomkin, Ned Washington) 
7. Back In The Saddle Again (Gene Autry, Ray Whitley)
8. Out On The Lonely Prairie (Harry S. Miller)
9. Coming Back To Texas (Kenneth Threadgill)
10. Bright Sherman Valley (P.D.Traditional)
11. Strawberry Roan (Curly Fletcher)
12. Patonia (P.D.Traditional)
13. Ruinning Gun (Tom Glasser, Jim Glasser)

 Alvin Crowは、Takoma時代のSir Douglas Quintetのメンバーで、主にフィドルを弾いていた人です。
 Quintetを離れてからは、ウエスタン・スイング・バンドを率いて活動していました。

 本作は、録音時期は不明ですが、ホンキートンク・バー(?)"Brocken Spoke"でのライヴ録音をもとに、楽器やコーラスのダビングなどがなされているようです。
 参加メンバーは、以下の通りです。

Alvin Crow : vocals, fiddle, guitar, mandocaster
Rick Crow : guitar, vocals
Don Bacoch : bass
John Chandler : drums
Scott Wall : Steel
James M. White : vocal

 今回も、Bobby Earl Smithの参加はないようです。

 私は、さほど西部劇に詳しくないのですが、"High Noon"の名前くらいは知っていました。
 この曲は、邦題「真昼の決闘」のテーマです。
 馬がトロットするような、随分とのどかな曲調です。
 とても「決闘」とは結びつかない感じですね。

 私は、かつてLP数枚組の「スクリーン・テーマ選集」みたいなのを持っていて、この曲も聴いていました。
 (廃棄していないはずですが、所在不明です。)
 
 "Streets Of Larredo"は、邦題「ラレド通り」でしょうか。
 TV西部劇「ラレド」の主題歌らしいです。
 「ラレド」は、メキシコとの国境近くの街で、国境を超えたメキシコには、ダグ・サーム作の曲名にもなった街「ヌエボ・ラレド」があるのでした。

 リオ・グランデ川の流域にあり、ジョン・ウェインの映画「リオ・ブラボー」を連想します。
 このアルバムには選ばれていませんが、「リオ・ブラボー」で、ディーン・マーチンとリッキー・ネルソンが弾き語りするシーンが好きでした。
 特にリッキーの歌が好きで、曲名が思い出せないのが残念です。

 "Ghost Riders In The Sky"は、「天駆けるカウボーイの亡霊」なのでしょうか。
 イ・ピ・ヤー、エー、イ・ピ・ヤーオーのリフレインが耳に残ります。
 ネオロカの(テッズのが正しいですか?)Matchboxのバージョンを思い出します。

 ジーン・オートリーの曲が数曲チョイスされており、さすが歌うカウボーイを代表する存在だと思います。
 私が知っているのは、やはり"Back In The Saddle Again"です。
 多くのコンピにも選曲されている名作です。

 ここでは、原曲よりテンポをあげて、ロッキン度が増したアレンジになっています。
 出典の映画があるのか知りませんが、いろいろとイメージを膨らませてしまいます。

 「また鞍に戻ろう」ですが、かってにストーリーを作ってみました。
 酒浸りの初老のガンマンが、若い流れ者の無法に堪忍袋の緒を切って、一人無謀な闘いを挑む、というストーリーはいかがでしょう?

 全くの思いつきをいってますが、私は、英国の作家、ギャビン・ライアルの「深夜プラス1」や「もっとも危険なゲーム」が大好きで、つい妄想を爆発させてしまうのでした。

 彼が書く物語は、シニカルな面を差し引けば、西部劇の名作に通じるものがあると思います。 
 ライアルが得意としていたのが、「引退したプロと現役最高のアマチュアとの対決」といったシチュエーションでした。

 さて、カウボーイ・ソングを代表するシンガーとして、マーティ・ロビンスの作品も2曲取り上げられケています。

 "Big Iron"は、でっかい銃を指すのだと思いますが、無法者とテキサス・レンジャースの対決を描いた歌だったと思います。
 テキサス・レンジャースは、もともとは自警団的なものだった(?)と聞いたことがあります。
 ダグ・サームには、"Texas Rangers Man"という曲がありました。

 そして、"El Paso"です。
 この曲こそ、マーティのカウボーイ・ソングの代表曲でしょう。 
 美しいメキシコ娘をめぐる、恋のさや当てを描いた歌です。

 思い余って、恋敵を射殺してしまったた主人公は、後ろ髪を引かれながら街を抜け出しますが、恋人への想いを断ちがたく、追手が迫る街へ続く道を引き換えしていくのでした。
 原曲では、メキシカン風味たっぷりのトレモロ・ギターが素晴らしかったです。
 ここでも、その雰囲気をだそうと頑張っています。
 
 ところで、作者名に、P.Dとあるのは、パブリック・ドメイン(public domain)のことで、通常は著作権期限切れの楽曲を指すのだと思います。
 単なるP.D.と、P.D.Traditionalとの区別が興味深いですね。
 伝承曲は、もともと作者不詳だと思うのですが…。
 
 いずれにしても、オールド・タイミーなスタイルの曲には和まされます。



Blues Brothers 2000でのGhost Riders in the Skyです。



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ロッキン・レオンのふるさと




鍵盤弾き、青いイナズマン

 これは凄いです。
 目が覚めます。
 ヒルビリー・ブギの中では一番好きかも知れません。


Berryfull Of Blue Thunder
Merrill E. Moore

1. House Of Blue Lights (Don Raye, Freddie Slack)
2. Rock-Rockola  (Ross)
3. Fly Right Boogie (Moore, Thomas)
4. Corina Corina (Chatman, Parrish, Williams)
5. Hard Top Race (Morgan, Sant, Stogner)
6. Bartenders Blues (Rose)
7. Tuck Me In To Sleep In My Old 'tucky Home (Lewis, Young)
8. Red Light (Adamson, McHug)
9. Bell Bottom Boogie (Moore, Ross, Stokes)
10. Big Bug Boogie (Orr)
11. Barrel House Bessie (Bond)
12. Rock Island Line (Leadbelly)
13. Nursery Rhyme Blues (Ingram, Miller, Tyler)
14. Doggie House Boogie (Gray, Thompson)
15. Buttermilk Baby (Moore, Moore, Ross)
16. Ten Ten A.m. (Moore, Ross)
17. Cow Cow Boogie (Carter, DePaul, Raye)
18. Sweet Jenny Lee (Donaldson)
19. Five Foot Two Eyes Of Blue (Henderson, Lewis, Young)
20. One Way Door
21. Down The Road A Piece (Don Raye)
22. Gotta Gimme Watcha Got (Lee)
23. Nola Boogie (Arndt)
24. King Porter Stomp (Morton)
25. Yes Indeed (Oliver)
26. She's Gone (Duncan, Wills)
27. Snatchin' and Grabbin'
28. Cooing To The Wrong Pigeon (Delroy, Morris)

 プレ・ロカビリー期の白人ブギ・ピアニストとしては、Moon Mullicanが比較的知られていると思います。

 Moon Mullicanは、日本盤CDも何種類か出ていました。
 Kingのリイシューは比較的進んでいると思われますので、所属アーティストは恵まれているかも知れません。

 Moon Mullicanは、ロック畑では、Nick LoweやMoonlightersがカバーした、"Seven Nights To Rock"が有名ですね。

 この曲は、カントリーでは、Asleep At The Wheel盤がありました。
 また、Nick Lowe経由(だと思う)で、パブ・ロック・ヲタのElizabeth McQueen盤、そして、スワンプ・ポップのオールスター・バンド、Lil Band O' Goldもやっていた人気曲です。

 Merrill Mooreは、日本盤CDが出たことはあるんでしょうか?
 Capitolのカントリー・リイシューは、不遇だった時期があると思いますが、今は進んでいると思われます。
 ただ、私はMerrill MooreのCDはあまり見かけません。

 人気曲という意味では、Moon Mullicanに負けない必殺の曲があります。
 "House Of Blue Lights"です。

 この曲は、ロック系では、Commander Cody & His Lost Planet Air Men盤、George Thorogood盤、Flamin' Groovies盤など、カバーが多数あります。
 カントリー系では、Asleep At The Wheel盤があります。
 (Commander Cody盤がお手本だとは思いますが…。)

 私は、この曲はChuck Berry盤で知ったのだと思います。
 More RaritiesというCDだった気がします。

 Chuck Berryは、もちろん自作自演の人ですが、実はカバーの名作も忘れてはいけない人です。
 "Route 66"は、Berry盤こそがオリジナルだと強弁したいくらいです。

 同様に、忘れられないないのが、"Down The Road A Piece"です。
 "Route 66"とともに、Stones盤でBerryバージョンが世界的に有名になりました。
 パブ・ロックでは、Count Bishops盤がありました。

 この曲のオリジネイターは誰でしょう?
 R&Bのブギ・ピアニスト、Amos Millbern盤は、比較的容易にたどり着くことが出来ました。
 Amosがオリジネイターでしょうか。

 今回、このCDを聴いて驚いたのは、"Down The Road A Piece"が収録されていたことです。
 Merrill Mooreもやっていたんですね。
 (しかも、作者が"House Of Blue Lights"と同じ人っぽいです。)
 ちなみに、トラック25の"Yes Indeed"は、Ray Charlesの曲とは同名異曲です。

 私は、これまで代表曲の"House Of Blue Lights"をコンピで聴いていたくらいで、フル・アルバムは初めて聴きました。
 全28曲、全く飽きることなく、聴きとおせます。

 パーソナリティの魅力としては、Moon Mullicanよりも上だと感じました。
 率直な感想として、繰り返しになりますが、凄いです。

 先ほど、Amos Millbernの名前を出しましたが、彼に匹敵する存在だと思いました。
 Amos Millbernが瞬発力と爆発力の人だとすれば、Merrill Mooreは瞬発力と躍動感の人だと思います。

 Amosには、メランコリックなお酒ソングというスローの得意技もありましたが、このCDから受けるMerrillの印象は、ブギウギ一直線という感じです。

 時たま、ミディアム・チューンが入っていますが、他のカントリー・アーティストでいえば、十分にアップ・ナンバーに分類される曲が多いです。

 そして、希少なミディアム曲は、アルバムの中で素晴らしいアクセントになっているのです。
 それこそが、アルバム1枚を、ストレスなく聴きとおせる重要な要素のなのかも知れません。

 白人だと敬遠せず、ブギウギ好きな方には絶対お奨めしたいです。

 Merrill Mooreは、23年L.A.生まれ、00年に天に召されました。



House Of Blue Lightsです。



Down The Road A Pieceです。



Rock-Rockolaです。最高です。
 


追記
"Down The Road A Piece"は、40年代に、ジャズ・ピアニストのFreddie Slack盤というのがあるようです。


夜汽車にゆられてふるさとへ

 私がDoc Watsonを聴いていたのは、多分90年代初め頃だと思います。
 もう20年が経ったわけですが、実感はありません。

 このアルバムは、当時、よく聴いていたものの1枚です。
 当時の私が特に気に入っていたのは、ヴァンガード盤では"Good Deal! Doc Watson In Nashville"、シュガーヒル盤では"My Dear Old Southern Home"と、このアルバムでした。

 
Riding The Midnight Train
Doc Watson

1. I'm Going Back To The Old Home (C.Stanley)
2. Greenville Trestle High (Trad.)
3. Highway Of Sorrow (P.Pyle, B.Monroe)
4. Fill My Way With Love (arr. Doc Watson)
5. We'll Meet Again Sweetheart (L.Flatt, E.Scruggs)
6. Riding That Midnight Train (R.Stanley)
7. Stone's Rag (arr. Doc Watson)
8. Ramshackle Shack (W.Mainer)
9. Midnight On The Stormy Deep (arr. Doc Watson)
10. Baby Blue Eyes (J.Evanes)
11. What Does The Deep Sea Say (J.Mainer)
12. Let The Church Roll On (A.P.Carter)
13. Sweet Heaven When I Die (C.Grant)

 このアルバムは、86年にリリースされたもので、レコーディング・メンバーは以下のとおりです。

Doc Watson : guitar & vocals
Merle Watson : guitar & clowhammer banjo
T.Michael Coleman : bass & harmony vocals
Sam Bush : mandlin
Mark O'Conner : fiddle
Bela Fleck : banjo
Alan O'Bryant : guitar & harmony vocals

 Doc Watsonは、ブルーグラスのギタリスト(当時の)に大きな影響を与えたのは間違いないですが、自身ではブルーグラスに特化して取り組んだアルバムは、当時あまりありませんでした。

 Docといえば、私には、フォーク・ブルース、マウンテン・バラッド、セイクレッド・ソングなどのイメージが強いです。
 
 そんな中、このアルバムは、新しい波ともいうべき奏者たちとともに、初めてブルーグラスに真正面から向き合ったアルバムだったのだと思います。

 レコーディング・メンバーは、当時でも既に一流の評価を得ていた人たちだと思いますが、現在は相当ビッグ・ネームになっているのではないでしょうか。

 私は、ブルーグラスに詳しくないですが、ベラ・フレックの名前は、近年よく目にします。
 マーク・オコーナーは、当時から最高のフィドラーであり、ギタリストだと思っていました。

 サム・ブッシュは、今どうしているんでしょう。
 エミルー・ハリスと一緒にやっていた時期があったように記憶していますが、それももう10年以上前かも知れません。
 また、ここには名前がないですが、ドブロのマイク・オールドリッジも懐かしいです。

 私は、気に入った曲の原曲を探すのが好きですが、ブルーグラスはさほど追っかけてはいません。
 ここでは、スタンレー・ブラザーズや、ビル・モンローなど大御所の曲が演奏されています。
 また、全ての原点ともいうべき、カーター・ファミリーの曲もあります。

 でも、私が初めて本作を聴いたとき、真っ先に夢中になったのは、"We'll Meet Again Sweetheart"でした。
 Flatt & Scruggsの名作です。

 私は、すぐにフラット & スクラッグスのマーキュリー音源を入手したように思います。
 個人的には、この曲は、"Someday We'll Meet Again Sweetheart"という表記で呼びたいです。

 いつかまた ぼくたちは巡り合う
 そして 二度と離れることはないんだ
 だから 泣かないで
 今はお別れだけど ブルーにならないで
 どうか ぼくの言葉を忘れないで
 夜ごとぼくは祈る 恋人よ
 いつかまた、ぼくたちは巡り合う

 最高の演奏と、最高の歌唱がここにあると思います。
 私は、オリジナルより遥かに好きです。

 ドック・ワトソンの新作を追わなくなって、相当たちました。
 最後に買ったのは、"Docabilly"だったと思います。
 調べたところ、何と95年リリースでした。

 おそらくは、きっかけさえあれば、またドック熱がぶり返すのは間違いないと思います。
 今回、本作を聴き返して、胸騒ぎを感じています。

 やはり、「いいものはいつまでもいい」のでした。


Riding The Midnight Trainです。




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ドックが好き



君に捕らわれて

 今回は、Doug Sahmの晩年のプロデュース作を聴きます。
 Ed Burlesonは、いわゆる新伝統派に分類されている人だと思います。
 ただ、エイトビートでやっている曲は、普通のポップスに近く感じられ、真の伝統派なら、ぜひとも4ビートとか、ワルツでやってほしいものです。
 録音は、おそらく98年頃ではないかと思われます。

 
My Perfect World
Ed Burleson

1. Wide Open Spaces (Ed Burleson)
2. My Perfect World (Ed Burleson, Roy Ashley)
3. Clinging to You (Doug Sahm)
4. Dreamworld (Ed Burleson, Doug Sahm)
5. No Closing Time (Ed Burleson)
6. It All Started and Ended with You (Jim Lauderdale)
7. Staring Out the Window (Ed Burleson)
8. No Tears (Ed Burleson)
9. Might Seem Like a Loser (Jim Lauderdale)
10. Going Home to Texas (Clay Blaker)

 本作には、幾人か注目すべきメンバーが参加しています。
 まず、リード・ギターとして、Bill Kirchen、Doug Sahm、Tommy Detamoreの名前がクレジットされています。
 さらに、フィドルには、Alvin Crow、Jason Roberts、Bobby Foloresの名前も記されています。

 ビル・カーチェンについては、もはや元コマンダー・コディ&ヒズ・ロスト・プラネッツ・エア・メンであるとか、ニック・ロウのバックを務めたとか、改めて言う必要はないでしょう。

 ダグ・サームの没後にリリースされた、最後のソロ・アルバム、"The Return Of Wayne Douglas"で、ギターを弾いていたのが彼でした。
 渋いバリトン・ボイスの持ち主でもあります。
 本作では、センスのいいトワンギーなギターが彼でしょう。
  
 アルヴィン・クロウは、タコマ時代のSir Douglas Quintetに参加していたフィドラーで、いくつかの曲でリード・ボーカルも務めた人でした。
 ダグ・サームの覆面バンド、Texas Mavericksにも、ロッキン・レオンの変名で参加していました。

 クインテットを離れてからは、彼のリーダー・バンドでウエスタン・スイングを演奏しています。
 そして、どうやら、Broken Spokeというライヴ・クラブを経営しつつ、同名のレコード会社から自作CDをリリースしているようです。
 もはや、テキサス・フィドルの名手の一人と言いたいです。

 また、ジェイソン・ロバーツは、多分90年代くらいから、Asleep At The Wheelに加入したフィドラーで、現在ではアスリープの中核メンバーとなっている人です。
 公演では、数曲で、レイ・ベンスンに代わってリード・ボーカルも取っています。

 そして、ボビー・フローレスは、レイ・プライスのチェロキー・カウボーイズでフィドルを弾いた人でした。
 名手が揃った感じですね。

 さて、本作には、ダグ・サームが書いた曲が収録されていて、ダグのファンとしては注目です。
 "Clinging to You"と、エド・バーレソンと共作した、"Dreamworld"の2曲です。

 いずれも、これぞホンキー・トンクというべき仕上がりで、さすがダグと言いたいです。
 とりわけ、陶酔のフォー・ビート・カントリー、"Clinging to You"には酔わされます。

 イントロのフィドルが始まるだけで、期待に胸が高まります。
 テンポのいい明るいナンバーです。
 曲は、予想どおりの展開を見せますが、この様式美こそがオールド・カントリーの醍醐味です。
 
 一方、"Dreamworld"は、少しセンチメントなミディアム・カントリー・バラードです。
 こちらも、フィドルの使い方が効果的で、なおかつピアノもいい感じです。
 この少し感傷的なメロディが、バーレソンの持ち味かも知れません。

 アルバム全体を通して、おしゃれなトワンギー・ギターと、メロディックなフィドルの展開が素晴らしいと思います。
 本作全体のフィドル・アレンジは、ダグが担当しました。
 
 本作と"The Return Of Wayne Douglas"は、おそらく録音時期も近いと思われ、参加メンバーも共通するところがあることから、興味深い1枚だと感じました。

 ダグの深く豊かな音楽性から、カントリー・サイドだけを抽出したような1枚でもあります。



Dreamworldです。






エル・パソでブルースを歌おう

 Marty Robbinsは、大物カントリー歌手ですが、どうも苦労した人のようです。
 彼は、成功してからのインタビューで「生活のため、どんな歌でも歌った」と語ったそうです。
 ポップ・カントリーから、ウエスタン(カウボーイ・ソング)、ハワイアン、ポップ・スタンダード、リズム&ブルース、テックス・メックスなど、さまざまな曲を吹き込んでいます。


The Essential 1951-1982
Marty Robbins

Disc: 1
1. Tomorrow You'll Be Gone (M.Robbins)
2. I'll Go on Alone (M.Robbins)
3. I Couldn't Keep from Crying (M.Robbins)
4. Pain and Misery (M.Robbins)
5. That's All Right (A.Crudup)
6. Maybellene (C.Berry)
7. Tennessee Toddy (M.Robbins)
8. I Can't Quit (I've Gone Too Far) (M.Robbins)
9. Singing the Blues (M.Endsley)
10. Knee Deep in the Blues (M.Endsley)
11. Mister Teardrop (M.Robbins)
12. The Story of My Life (H.David, B.Bacharach)
13. A White Sport Coat (And a Pink Carnation) (M.Robbins)
14. She Was Only Seventeen (He Was One Year More) (M.Robbins)
15. Just Married (B.De.Varzon, A.Allen)
16. Ain't I the Lucky One (M.Endsley)
17. Kaw-Liga (H.Williams, F.Rose)
18. The Hanging Tree (M.David, J.Livington)
19. El Paso (M.Robbins)
20. Big Iron (M.Robbins)
21. Song of the Bandit (B.Nolan)
22. Cool Water (B.Nolan)
23. A Little Sentimental (J.Babcock)
24. September in the Rain (A.Dubin, H.Warren)
25. All the Way (S.Cahn, J.Van.Heusen)
26. Unchained Melody (H.Zard, A.North)
27. Don't Worry (M.Robbins)
Disc: 2
1. Devil Woman (M.Robbins)
2. Ruby Ann (R.Bellamy)
3. Smokin' Cigarettes and Drinkin' Coffee Blues   (M.Robbins)
4. I'm Gonna Be a Cowboy   (M.Robbins)
5. (Ghost) Riders in the Sky (S.Jones)
6. San Angelo (M.Robbins)
7. Man Walks Among Us (M.Robbins)
8. Beautiful Dreamer (S.Foster)
9. Beyond the Reef (J.Pitman)
10. The Hawaiian Wedding Song (C.King)
11. Yours (Quiereme Mucho) (A.Gamse, G.Roig)
12. Tonight Carmen (M.Robbins)
13. Ribbon of Darkness (S.Lightfoot)
14. Feleena (From El Paso) (M.Robbins)
15. Hello Heartache (M.Cordell, J.Beard)
16. Begging to You (M.Robbins)
17. I Walk Alone (H.Wilson)
18. You Gave Me a Mountain (M.Robbins)
19. My Woman, My Woman, My Wife (M.Robbins)
20. Among My Souvenirs (E.Leslie, H.Nicholls)
21. Return to Me (C.Lomberdo, Di.Minno)
22. Some Memories Just Won't Die (B.Springfield)
23. El Paso City (M.Robbins)

 マーティ・ロビンスというと、エルヴィスのあとを追って、"That's All Right Mama"を吹き込んだり、デイヴ・エドマンズがカバーした"Singin' The Blues"を最初に録音したりと、ロカビリーにも接近した人でした。

 "Singin' The Blues"は、ガイ・ミッチェルのカバー盤によって広く知られる曲になりました。
 デイヴ盤は、ガイ・ミツチェル盤がお手本かも知れません。

 私にとって、マーティ・ロビンスは、カウボーイ・ソングの人です。
 私は、カウボーイ・ソングとウエスタンは、同義語ではないかと考えていますがどうでしょう。
 カントリーは、カントリー&ウエスタンとも呼ばれますが、もともとこのふたつは別のものでした。

 ウエスタン・ミュージックは、古き西部への郷愁を歌った音楽だと思います。
 いつごろからか、カントリー・ロック周辺で、アメリカーナというサブ・ジャンルが使われるようになったようですが、私は何となく違和感を感じていました。

 私の感覚では、アメリカーナは、ほぼウエスタン(カウボーイ・ソング)と同じです。
 狭義にいえば、ウエスタンのなかでも、ストーリー性が強いものを指していると思っていました。
 このあたりの考えは、保守的かも知れません。

 アメリカは若い国家であり、民衆は自国の神話を持っていませんでした。
 そんな中、開拓時代の古き西部の英雄譚(サーガ)こそが、彼らの神話だったという考えはどうでしょう。

 ヒロイック・ファンタジーの名作、英雄コナン・シリーズの作者、ロバート・アーウィン・ハワードが、西部劇作家として成功したかったという話は、わりと知られています。

 ウエスタンでは、しばしば殺人が歌われます。
 マーダー・バラッドですね。
 そこでは、情熱的な若い娘や、流れ者の荒くれ男がしばしば登場します。

 私は、唐突な比喩ですが、アメリカーナとは、古典落語に対する新作落語ではないかと考えます。
 マーダー・バラッドは、実在した人物や事件が誇張されて、さまざまな形で伝承したものでした。
 対して、アメリカーナは、新たに書き起こされた英雄譚なのではないか、というのが私の考えです。

 もちろん、狭く考えなくてもいいのでしょうが、保守的な私としては、そんな風に整理したいのでした。

 さて、マーティ・ロビンスのアメリカーナとしては、何と言っても"El Paso"が有名だと思います。
 テックス・メックスの香りも漂う、メキシカン・トランペットの響きと、トレモロ・ギターの調べが雰囲気満点の名曲です。

 ここでは、国境近くの町、エル・パソでの情熱的なメキシコ娘をめぐる恋のさや当てが描かれます。
 恋のライバルを射殺した主人公は、町を去り遠く逃れますが、愛した娘への想いは断ちがたく、危険と知りつつも、エル・パソへと戻ってくるのでした。

 この曲は、マーティも思い入れがあったのでしょう。
 メキシコ娘、フェリーナの生い立ちを歌った、"Feleena"が後に歌われます。

 また、現代の主人公が、飛行機の機内から、眼下に望むエル・パソでの古い物語に、思いを巡らせる"El Paso City"という曲も書かれました。
 これは続編の域を超えた素晴らしい仕上がりだと思います。

 ほかでは、でっかい銃を持った男を歌った、"Big Iron"という曲もよいです。
 この曲では、テキサス・レッドという無法者と戦うテキサス・レンジャーのことが歌われます。 
 私の好きな曲のひとつです。
 
 私は、大物カントリー・シンガー、マーティ・ロビンスが、何でも歌えるジュークポックス・シンガーとしてスタートしたということに親近感を持ちました。

 さまざまなヒットを持つビッグ・スターですが、私はやはり、彼の歌うアメリカーナが好きです。


El Pasoです。




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