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公爵殿下の棚卸し

 ブートですが、(ここは素直に)嬉しい続編が出たコンピをご紹介します。
 Duke Recordsとその関連レーベルの音源からチョイスされたもので、タイトルにあるとおり、ソウルという切り口でコンパイルされたコンピレーションです。

 正規盤で、Dukeのレーベル・ストーリーものとか、似たような趣旨のコンピは出ていたでしょうか?
 CDでは、1枚もので、チャート・ヒットを集めたものがMCAから出ていましたが、本シリーズのようなものは、私は知りません。

 ディスクはCD-Rで、普通に聴ける音質のものが大半ですが、曲によっては、明らかに45sから起こしたのではと思われるスクラッチ・ノイズが聴こえるものがあります。

 Discによっては、そういった音源が続く箇所もあり、ストレスがたまることもあります。
 でも、本シリーズで初めて気づいた発見もあって、私にとっては刺激的なソフトです。

 シリーズは、先にVol.1〜Vol.3が出ていましたが、今回、Vol.4とVol.5の2枚がリリースされました。
 なるほど、Vol.3のブックレットを見ると、文末に"to be Continued"の文字があります。
 しかし、ブートでもあり、本当に続編が出たのは大きな驚きでした。


Duke Of Soul Vol.5

1. You Got Me (Sure Shot 5018)  Al Haskins & the Mastertones
2. Don't Kick The Teenager Around (Duke 596)  Eddie Wilson
3. You Made Me A Anybody's Woman (Back Beat 623) Jean Ellas
4. It's All Over (Sure Shot 5013) Bobby Williams
5. I Saw You Last Night (Duke 399) Clarence Green & Rhythmaires
6. (Gimme Back) My Love (Duke 451) Paulette Parker
7. When You Love Someone (Peacock 1933) Reuben & the Chains
8. Competition Aint Nothin' (Back Beat 588) Little Carl Carlton
9. Sting Me Baby (Duke 475) Jo Ann Garrett
10. Stroke My Yoke (Peacock 1961) Willie Tomlin
11. Mr. Independent (Back Beat 599) The Soul Twins
12. From Me (Back Beat 561) Tommy Williams
13. Come Let Me Love You (Peacock 1930) Jackie Verdell
14. When You Play (Sure Shot 5013) Bobby Williams
15. Somebody Better Come Here Quick (Duke 365) Clarence & Calvin
16. So Lonely (Since You've Been Gone) (Sure Shot 5036) Bobby Day
17. Don't Make Me Cry (Peacock 1929) Little Frankie Lee & the Saxtons
18. I Still Love You (Peacock 1958) Jean Stanback
19. I'm So Glad (Peacock 1937) Don Fletcher
20. Love Sick Blues (Back Beat 537) Joe Hinton
21. I Have To Laugh (Duke 356) Otis Rush
22. Don't You Know She's Alright (Sure Shot 5012) The Bell Brothers
23. I Won't Let That Chump Break Your Heart (Back Beat 627) Carl Carlton
24. (It Will Have To Do) Until The Real Thing Comes Along (Duke 423) Ernie K-Doe

 シリーズ全体の曲目をご紹介したいところですが、煩雑となるため、ここは代表して最新のVol.5の曲目を記載することに留めます。

 本稿では、本盤のみでなく、シリーズ全体の感想を記したいと思います。
 このシリーズを聴いて、私が驚いたこと、嬉しかったことがいくつかあります。

 まず、Melvin Carterが聴けたことです。
 O. V. Wrightの"Ace Of Spades"の一件で、日本のソウル・ファンの間では知られている人だと思います。
 (私は、"Ace Of Spade"は、O. V.盤よりも、Melvinのデモ盤の方がワイルドで好きです。)
 ライター、コンポーザーの側面の方が強いのでしょうか、名前のみ高く、音源はあまり見かけないの人なので、嬉しかったです。
 収録されているのは、以下の2曲です。

Tired Of Being Fooled By You  (Duke Of Soul Vol.1 - Peacock 1956)
Something Reminds Me (Duke Of Soul Vol.2 - Peacock 1934)

 次に、Otis Rushの"Homework"とそのB面の曲(これはレアでは?)が聴けたことです。
 私は、Rushの"Homework"がDuke録音であることさえ認識していませんでした。
 "Homework"は、J. Geils Bandの1stで知った曲で、大好きな曲です。
 Otis Rushのオリジナルは、ヴァンガード盤だと思い込んでいたのですが、何か全く別の曲と混同していたのかもしれません。
 Rushは、次の2曲が収録されています。

Homework (Duke Of Soul Vol.1 - Duke 356)
I Have To Laugh (Duke Of Soul Vol.5 - Duke 356)

 Rushは、Dukeからのリリースはこの2曲(シングル1枚)だけでしたが、実は少なくとも、もう2曲は未発表曲があるらしいので、今後に期待したいです。
 でも、編者の手持ちの45sシングルから音を起こしているのなら無理ですね。

 次に、Junior Parkerです。
 Vol.2収録の"Wait For Another Day"という曲は、初めて聴きました。
 もしや、未CD化曲ではないでしょうか?
 Junior Parkerは、次の2曲が収録されています。 

Wait For Another Day  (Duke Of Soul Vol.2 - Duke 413)
It's A Pity (Duke Of Soul Vol.3 - Duke 362)

 Jimmy Outlerも、1曲ですが入っていて嬉しかったです。
 私は、"Sir Records Story"で彼の歌唱を聴いて、すっかりファンになったくちです。

It's All Over (Duke Of Soul Vol.3 - Duke 396)



 そして、この間、英KentからFameのシングル集が出たばかりのClarence Carterは、Clarence & Calvin時代の音源の収録が嬉しいです。
 このあたりは、正規でもCD化されているのか、私は知りません。
 とにかく、私は初めて聴いたものばかりで、曲の良し悪しの前に、聴けたそのことに感激しました。
 とりわけ、C and C Boys名義のものが彼らの別名義の録音だと気づいて、嬉しさも倍増しました。
 意外な選曲もあります。
 以下のとおりです。

My Life (Duke Of Soul Vol.1 - Duke 379)  C and C Boys名義
It's All Over Now (Duke Of Soul Vol.3 - Duke 466)  C and C Boys名義 (曲はヴァレンティノスのあの曲)
I Like It  (Duke Of Soul Vol.4 - Duke 365) Clarence & Calvin名義
Somebody Better Come Here Quick (Duke Of Soul Vol.5 - Duke 365) Clarence & Calvin名義

 シリーズ5枚(全120曲)の中で、4曲も収録されているのは中々のものです。
 ちなみに、4曲以上収録されているアーティストは5組でした。(3曲以上だと9組)
 以下のとおりです。

 Ernie K-Doe  10曲
 Buddy Ace  5曲
 Reuben & the Chains  4曲
 Joe Hinton  4曲
 Clarence & Calvin (C and C Boys含む) 4曲

 このリストを見てどう感じられますか?

 Ernie K-Doeの10曲が飛びぬけていますよね。
 そもそも吹き込みの絶対数が多いのでしょうか。
 それとも、編者がErnie K-Doeを特に好んでいるのか?

 答えは分かりませんが、Ernie K-Doeって、ノベルティ・ソングだけの人ではなく、実はディープ・ソウルも歌える人なのでした。
 Vol.3収録の"I'm Sorry"などは、教会風の厚いコーラスをバックにスクリームするディープ・ソウル(ゴスペル・ブルース)です。

 Joe Hintonは、Willie Nelsonのカバー(「時の流れは早いもの」本シリーズ未収録)が有名ですが、Vol.5に収録されている、Hank Williamsの"Love Sick Blues"が珍品です。
 (これもカントリーのカバーですね)

 最後に、大物をチェックしておきましょう。
 Junior Parkerは触れましたので、Bobby BlandとO. V. Wrightの二人です。
 Bobby Blandは2曲です。

Yum Yum Tree (Duke Of Soul Vol.1 - Duke 466)
Call On Me (Duke Of Soul Vol.2 - Duke 360)

 もはや、安心安定の作品ですね。
 貫禄というほかないです。

 そして、O. V. Wrightも2曲です。

Love The Way You Love (Duke Of Soul Vol.1 - Back Beat 611)
Why Not Give Me A Chance (Duke Of Soul Vol.3 - Back Beat 607)

 このなかでは、レアではないですが、やはり"Why Not Give Me A Chance"が耳に残ります。
 これは、Willie Mitchell制作のHi録音ですね。
 どうも、レアなものを有り難がり気味ですが、やはりこの良さは突き抜けています。

 その他、何気に、無名人の中にも良質のディープがあって、また、弾けるノーザンがありまます。
 The Bell Brothers、The Soul Twinsなどは、良質のディープだと思いました。

 珍品では、Vol.4収録のLittle Frankie Lee & the Saxtonsが演奏する"Full Time Lover"って曲があるんですが、替え歌に近いレベルで、メロはまんま"Part Time Love"、雰囲気は"I Pity The Fool"という曲でした。
 
 他にも、歌詞の中にOtis Redding、Sam Cookeの名前が歌われている、Vol.1収録のBobby Conerlyの"A Whole Lot Of Soul Is Gone"が興味深かったです。

 ちなみに、Vol.5まで出た段階で、これまでJohnny Ace、Roscoe Gordonは未収録です。
 (余談ですが、Johnny Aceは、近々Fantastic Voyageから2枚組(半分は他人の伴奏)が出ます。)

 さて、このVol.5のブックレットの文末にも、これまで同様「つづく」の文字が記載されています。
 こうなったら、さらなる続編を期待しましょう。



I'm Sorry by Ernie K-Doe



My Life by C and C Boys




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公爵と孔雀のバックビート
ドナルド・ロビーの試供品






メンフィスへの郷愁

 これ、結構よくないですか?
 私は、全く存在を知りませんでしたが、今年出た新作で、過去に1枚アルバムがあるらしいです。
 私は、Otis Clayが好きなので、そのアンテナに引っかかって知りました。

 このバンドは、基本的にソウル・インスト・バンドなので、ヴォーカル曲は、数人のゲストが参加して務めています。
 私は未聴ですが、前作の1stは全編インストかも知れないです。


Got To Get Back !
The Bo-Keys

1. Hi Roller  (Franklin, Bomar,Pitts)
2. Got To Get Back (To My Baby) (feat. Otis Clay)  (Bomar, Carter, Franklin, Pitts)
3. Just Chillin' (Bomar, Gamble, Franklin, Pitts, Tuner)
4. Catch This Teardrop (feat. Percy Wiggins) (C.Reese, H.Reese)
5. Jack And Ginger (Bomar, Franklin, Pitts)
6. Sundown On Beale (Bomar, Franklin, Pitts)
7. Weak Spot (feat. William Bell) (Bell, Bomar, Franklin, Hall, Pitts)
8. 90 Days Same As Cash (Bomar, Franklin, Hall, Pitts)
9. I'm Going Home (feat. Charlie Musselwhite) (Conley)
10. Cauley Flower (Franklin, Bomar, Pitts)
11. Work That Sucker (feat. Charles "Skip" Pitts)  (Pitts, Bomar, Franklin)
12. Got To Get Back (To My Baby) Pt. 2 (feat. Otis Clay)  (Bomar, Carter, Franklin, Pitts)

 私は、ソウル・ファンのつもりですが、Bar-keysにはほとんど関心を持っていませんでした。
 確かOtis Reddingのツアー・バンドを務めたバンドじゃなかったですか?
 Watstaxのビデオで見た気がします。

 私には、サザン・ソウルより、Albert Kingのバックをやったファンキー・ブルースのアルバムの印象が強いです。

 このBo-Keysは、そのBar-keysの残党をベースに、活きのいい若手を加えたバンドで、ざっくり言えば、60s70sの南部ソウル・サウンドのリバイバル・バンドです。

 ファンキーな曲やジャズ・ソウル的な展開を得意としているようですが、本盤では黄金時代のメンフィス・ソウルを意識した音づくりに挑んでいるようです。
 ゲストのメンツが、より一層、そう感じさせるのかも知れません。

 私は、オリジナル・メンバーにうといんですが、参加メンツは以下のとおりです。

Scott Bomer : bass, percussion
Charles "Skip" Pitts : guitar
Howard Grimes : drums, percussion
Willie Hall : drums, percussion
Archie "Hubbie" Turner : keyboad
Al Gamble : keyboad
Mark Franklin : trumpet
Ben Cauley : trumpet
Kirk Smothers : tenor & baritone sax
Derrick Williams : tenor sax
Floyd Newman : baritone sax
Jim Spake : baritone sax
Spencer Wiggins & John Gary Williams : background vocals on "Catch That Teardrop"

 Howard Grimesに反応してしまいますが、どうやらメインのドラムは、Willie Hallのようです。
 それよりも、最後にチラッと出てくる、Spencer Wigginsの名前が気になりますね。

 この人は、弟のPercy Wigginsがボーカルをとった、4曲目の"Catch This Teardrop"でコーラスとして参加しているようです。
 (声の判別は、言われなけば困難です。)

 Percy Wigginsは、兄貴が偉大すぎて影に隠れていますが、なかなか味のあるいい歌手です。
 本盤でも、いい感じに歌っていて好感が持てます。

 この人のヴィンテージ録音では、ずっと昔にアナログ盤で聴いた、"They Don't Know"が好きでした。
 当時、ワーナーが出していた「ソウル・ディープ」の第2集に入っていたような気が…。(未確認です)
 今なら、英KentのCD、"Sanctified Soul"で聴くことが出来ます。
 (廃盤になっていなければ)

 さて、お目当てのOtis Clayですが、私は現役のサザン・ソウル・シンガーでは、最も好きな人です。
 オリジナル・アルバムこそ、ご無沙汰気味ですが、ときどき色んな企画盤に参加していたりするので、常にアンテナを張っておく必要があります。

 本盤では、2曲に参加していますが、ラスト・ナンバーは同じ曲のPart2なので、実質は1曲ですね。
 Otis Reddingを連想させる南部風ジャンプ・ナンバーで、「ガッタ、ガッタ」ならぬ「ガットゥ、ガットゥ」と連呼しています。
 元気そうで、久しぶりに声が聴けただけでも嬉しかったです。

 それよりも、やはりこのバンドは、インスト・ナンバーですね。
 特に今回は意識してやっているのか、いくつかの曲では、MGsを思わせる曲があり、「おっ」と耳を惹かされます。

 5曲目の"Jack And Ginger"が、出だしからしてMGs風で、これはよいです。
 MGsは、グルーヴィーでねちっこいオルガンに、ギターが鋭くコンパクトに切り込んでくる曲が、ひとつの得意パターンでしたが、こちらはそんな雰囲気をうまく再現していて、嬉しくなります。

 MGsのもうひとつのパターンとしては、イージーリスニング的なリラックス・チューンがあって、そういった要素が感じられる曲も見受けられます。
 6曲目の"Sundown On Beale、"10曲目の"Cauley Flower"が、これまたいい雰囲気に決まっています。

 ボーカル曲では、何といっても、Willam Bellが参加した、"Weak Spot"が素晴らしい出来だと思いました。
 この曲の作者には、Bellの名前が共作者としてクレジットされていますが、メロディがいかにもBell風で、一音目が始まると同時に、一瞬世界がBell色に染まる感じを受けるのは、ひいきが過ぎるでしょうか。

 William Bellは、メンフィス・ソウルのパイオニアであり、優れたソング・ライターでもありました。
 ヴィンテージ期の名曲を、後年再録音するシンガーは少なくないですが、名作の新録音が素晴らしいと感じた人は、William Bellだけです。

 Bell自身の会社、Wilbeから02年リリースされた、"Collectable Edition Greatest Hits"は、Stax時代の代表曲の新録音集で、タイトルが陳腐でジャケもしょぼいですが、中身はお奨めです。
 生き生きとしたバックの演奏にのせて、Bellのジェントルなヴォーカルが、衰えない冴えを聴かせます。

 さて、本盤唯一のカバー曲だと思われるのが、9曲目の"I'm Going Home"です。
 Prince Conleyという無名のシンガーの曲ですが、Staxの9枚組Box、"The Complete Singles 1959-1968"のDisc1に収録されています。
 この渋すぎる選曲は、南部音楽ヲタとしては、にやりとさせられます。

 私は、先ほどから、本盤のテーマともいうべき、冒頭の"Hi Roller"をリピートして聴いています。
 インストなんですが、中盤で出てくるCropper風のフレーズ(Sam & Daveのバックに出てきそうな、Otis Rush風にも聴こえるもの)が気に入って、繰り返し聴いているのです。
 この曲と、"Jack And Ginger"が、特にお奨めです。

 もちろん、Otis Clay、Percy Wiggins、William Bellが参加したヴォーカル曲は、60sソウル・ファンには必聴でしょう。



Got To Get Back by Bo-Keys feat. Otis clay




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愛なき世界で
ゴスペル・イン・マイ・ソウル
ヴァンソロジー


セオドア・テイラー、もう一回

 先だって、英Kentからリリースされた、Ted Taylorのレア音源集は、なかなか楽しめました。
 そのアルバムを聴く前に、一応既発CDで予習していたのですが、予習の候補にしながらも、結局スルーして聴き返さなかったアルバムがありました。

 今回は、そんな1枚を改めて聴いてみたのですが、予習するなら、こちらにすべきだったと強く思いました。


An Introduction To Ted Taylor
Ted Taylor

1. Days Are Dark (Taylor)'65 Jewel 748
2. Everywhere I Go (Taylor)'66 Jewel 774 
3. Without a Woman (Quin Ivy, Drew Miller, Dan Penn)'67 Ronn 25 
4. Strangest Feeling (Spooner Oldham, Dan Penn)'69 Ronn 29
5. I'm Gonna Send You Back to Oklahoma (Taylor)'69 Ronn 33
6. Long Ago (Buddy Killen, Dan Penn)'69 Ronn 33
7. The Road of Love (Clarence Carter)'69 Ronn 34 
8. It's Too Late (Chuck Willis)'69 Ronn 34 R&B#30
9. I Feel a Chill (Maxwell Davis, Day)'69 Ronn 40
10. Something Strange Is Goin' on in My House (McQueen, Williams)'70 Ronn 44 R&B#26
11. It's a Funky Situation (McQueen, Williams)'70 Ronn 46
12. How's Your Love Life Baby (Miles Grayson, Bobby Lexing)'71 Ronn 52 R&B#44
13. Only the Lonely Knows (Taylor)'71 Ronn 57
14. What a Fool (Taylor)'73 Ronn 72 R&B#93 
15. Be Ever Wonderful (Malone, Mtyka,Scott)'77 Ronn 112 

 この編集盤は、米Fuelからリリースされたもので、Jewel、Ronnのシングルからチョイスした内容になっています。
 先に触れた英Kentのレア・リイシュー盤とは関連が深そうです。

 収録曲は、リリース年だけで判断する限り、10年間くらいに渡っていて、多分、様々なスタジオで録音されたものだと思われますが、作者クレジットを見ると、かなり興味深い内容のように思います。

 まず、改めて通して聴いて思ったことは、ブルースの印象が強いことです。
 例えば、冒頭の"Days Are Dark"は、Ted Taylorの自作ですが、まるでJunior Parkerのデューク録音かと思わせるような曲で、アグレッシヴに駆け回るギターもそれ風で、雰囲気満点です。

 "Strangest Feeling"、"How's Your Love Life Baby"、"What a Fool"などは、ひとくくりには出来ませんが、それぞれ聴かせるブルースだと思いました。
 "Strangest Feeling"は、Spooner Oldham、Dan Pennというサザン・ソウルの名ライター・コンビの作品です。

 サザン・ソウルといえば、他にも、作者クレジットだけでそそられる名前が散見しています。
 "Without a Woman"は、作者がQuin Ivy、Drew Miller、Dan Pennとなっていて、色々とディープ・ソウル・シンガーの名前を連想させるメンツです。
 
 "Without a Woman"は、何といっても、Kip Andersonのチェッカー盤が強烈に印象に残っています。
 あのバージョンを収録したP-VineのLPはどこへしまったのでしょう?
 猛烈に聴きたくなりました。
 作者の一人、Drew Millerは、Drew Bakerの別名で、James Carrの"Pouring Water On A Drowing Man"を書いたソングライターの一人らしいです。
 
 "Long Ago"は、Buddy Killen、Dan Pennのコンビが書いたサザン・ソウル・バラードで、ハートワーミングな雰囲気が良く、和まされます。
 Buddy Killenは、ナッシュビル・カントリーの大物です。

 "It's Too Late"は、Chuck Willis作の大有名曲で、多くのカバーがあります。
 ロック・ファンには、デレク&ドミノス盤でしょう。
 私は、洋楽を聴き始めたころに聴いた、バディ・ホリー盤が印象に残っています。
 ソウル・ファンには、Otis Redding盤でしょうか。
 Ted Taylorは、Okeh時代にも、"Don't Deceive Me"とか、Chuck Willisのカバーを好んでやっていました。

 "Something Strange Is Goin' on in My House"は、シカゴっぽい雰囲気に聴こえる曲ですが、モータウンのフォー・トップスがやりそうな曲で好きな曲です。

 ラストの"Be Ever Wonderful"は、Okeh時代にも吹き込んでいる曲ですが、作者がMalone、Mtyka、Scottとなっています。
 Maloneは、デドリック・マローンのことで、Dukeのオーナー、ドン・ロビーの変名です。 
 この曲は、Dukeのシンガーのカバーでしょうか。
 それとも、Ted Taylorには、Okehの前にDuke録音があるのでしょうか?
 ちなみにOkeh盤は、シカゴ録音らしいです。

 というわけで(?)、やはりTed Taylorは、この頃の吹き込みが特によいと改めて思いました。


Days Are Darkです。



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失われた時を求めて
甲高いだけぢゃない



失われた時を求めて

 ハイ・テナー・ソウル歌手、Ted Taylorのレア音源集を聴きます。
 この人は、ドゥワップのJacks(又はCadets、実は同じグループ)からソロになったシンガーで、リズム&ブルースから、ソウルの時代まで域の長い活動をした人という印象があります。

 ソロでの初期の音源は、英エイスの"Ebb Story"などに入っていましたが、私はほとんど関心を持てなかった人でした。


Keep What You Get
The Rare And Unissued
Ronn Recordings
Ted Taylor
 
1. Farewell (2011)
2. Call The House Doctor (Ted Taylor)(1971)
3. Who'S Doing It To Who (Marshall McQueen, Winston Williams)(1971)
4. Sweet Lovin' Pair (Marshall McQueen, Winston Williams, Willie Williams)(1971)
5. Don'T Be Slappin' My Hand (1980)
6. Papa'S Gonna Make Love (Marshall McQueen, Winston Williams, Willie Williams)(1971)
7. I'Ll Be Here (2011)
8. Keep What You Get And Like It (1980)
9. Anytime, Anyplace, Anywhere (Joseph Morris, Lairie Tate)(2011)
10. Fair Warning (Marshall McQueen)(2003)
11. A Lick And A Promise (2011)
12. She'S Got A Munchy Tunchy (1980)
13. Got To Have A Woman (2011)
14. Let Me Fix Up Your Feelings (2011)
15. Why Do I Have To Suffer (2011)
16. (Long As I Got You) I Got Love (2011)
17. Cry It Out Baby - Ted & Little Johnny Taylor (Marshall McQueen, Winston Williams, Miles Grayson)(1973)
18. Funky Ghetto - Ted & Little Johnny Taylor (Ted Taylor, Jonny Taylor)
19. Pretending Love - Ted & Little Johnny Taylor (Ted Taylor)(1974)
20. Walking The Floor - Ted & Little Johnny Taylor (Ted Taylor, Johnny Taylor)(1973)
21. What A Fool (Ted Taylor)(2011)alternate version
22. Make Up For Lost Time (Jerry Strickland, Bobby Patterson)(2011)alternate version
23. How'S Your Love Life Baby (Miles Grayson, Bobby Lexing)(2011)unedited take/alternate mix
24. Cummins Prison Farm (Take 1) (Billy Cole)(2011)alternate take 

 私が、Ted Taylorに注目するようになったのは、日本企画のコンピレーション「The Jewel Deep Soul Story」に収録されていた、"Make Up For Lost Time"を聴いてからです。
 この曲は、モントクレアーズというスイート・ソウル・グループのカバーで、まず曲そのものが素晴らしいということもありますが、それにも増して、Tedの完璧な歌いくちにノックアウトされたのでした。

 ノーマークだった人に「がんっ」と頭を殴られたような衝撃を受けました。
 そもそも古臭いスタイルのバックで、地味な曲をやっているという印象を持っていましたので、このパーフェクトと言いたいボーカル・コントロールには、ひたすら感心しました。

 さて、この英ケントの新しい編集盤は、70年代のRonn Record時代の音源を集めたものですが、収録曲のほとんどが、未発表又は別テイクという凄い内容になっています。

 それにしても、50年代のドゥワップ時代にデヴューして、60年代のリズム&ブルース、アーリー・ソウル時代を何とか生きのび、ついに70年代に華開いたという感じを受けます。

 基本的にノーザン・ソウルの匂いが漂っていますが、ディープ系の人でもあり、ゴスペル・ブルース風の曲にもハマっていたりします。
 本編集盤でも、前半にそういったブルージーなタイプの曲が入っていて、なるほど実力派だな、と改めて思ったりしました。
 しかも、後半には、ゴスペル・ブルースの本家、Little Johnny Taylorとのデュエットが、4曲も入っていたりして驚きます。

 曲名のあとに(2011)とあるのは未発表曲もしくは別テイクです。
 むしろ既発曲のほうが少ないですね。
 単純に凄いです。

 私の眼を開かせてくれた"Make Up For Lost Time"も別テイクが収録されています。
 それほどじっくり聴き比べていませんが、この曲に関しては、私は「The Jewel Deep Soul Story」収録盤のほうが好きです。

 ともかく、バックの音の違い、プロデュースの違い、時代の移り変わりという、様々な要因があるのでしょうが、これ以前の時代と比べ、この70年代の録音集は、はっきりと完成度が高いです。
 すべて必聴の作品集だと思います。

 とは言いつつも、特段この1曲というものが思いつきませんが("Make Up For Lost Time"は別格として)、あえてあげるなら、ラストの"Commins Prison Farm"に注目です。
 他のアーティストで評価の定まっている有名曲、定番曲をテッド・テイラーがどのように料理するのか、関心を持たずにはいられません。
 ここでも、その技巧派の持ち味をフルに発揮しています。

 全然タイプが違いますが、技巧派と言う意味では、ジョニー・アダムスを思い出しました。
 ジョニー・アダムスも、どんな曲でも軽く歌いこなしてしまう人でした。
 彼は、うますぎる事に加え、ファルセットの使い方など、しばしば得意技を多用して、技巧に走り「流して歌っている」という誤解を与えることがありました。

 テッドは、その点真摯な印象があります。
 ジョニーには、ギタリストでいう「手くせ」みたいなものが気になることがありましたが、テッドには感じません。
 例えるなら、ハイ・ポジションからロー・ポジションまで、カポなしで縦横に屈指できる、嫌みのないプレイがこの人の持ち味でもあると思います。
 
 評価の高い名演の数では、ジョニー・アダムスに遥かに及びませんが、隠れた名演がまだまだある人だと思います。

 当分は、この編集盤をじっくりと味わいたいと思います。



Steal Awayです。




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甲高いだけぢゃない



スイート・チャーリー・ベイブ

 私は、マイアミ・ソウルに強い関心をもっていた時期がありました。
 そんな時期に入手して、いまでも愛聴しているアルバムがあります。


Sweet Charlie Babe
Jackie Moore 

1. Sweet Charlie Babe (Hurtt, Sigler)
2. Clean Up Your Own Yard (Hurtt, Bell)
3. If (Hurtt, Sigler)
4. Darling Baby (Holland, Dozier, Holland)
5. Cover Me (Greene, Hinton)
6. Both Ends Against The Middle (Hurtt, Bell)
7. Time (Crawford)
8. Precious, Precious (Crawford, Moore)
9. Willpower (Crawford)
10. Something In A Look (Crawford, Martin)

 このアルバムは、73年にリリースされたもので、私が持っているのは、05年にコレクタブルズからリイシューされたものです。
 ジャッキーの定番アイテムともいうべきもので、時々見かけなくなるときもありますが、何度も繰り返し再発されている1枚だと思います。

 コレクタブルズは、やっつけ仕事が多い印象がある会社ですが、このアルバムは気に入っています。
 オリジナルからそうだったのかも知れませんが、セッション・データが簡潔に掲載されているからです。
 
 それによれば、トラック1から3までと、6の4曲がフィラデルフィアのシグマ録音で、トラック5と、7から10までの5曲がマイアミのクリテリア録音です。
 そして、トラック4のみ、ジャクソンのマラコ録音となっています。
 なんと、意外にも半数近くがシグマ録音なのでした。
 
 いずれも興味深いです。
 シグマ録音では、何と言っても冒頭のSweet Charlie Babeです。
 フィル・ハート&バニー・シグラー作のこの曲は、まず曲そのものの魅力が光っています。
 何と言っても、軽快なリズムに乗って聴こえる、ジャッキーの声がチャーミングです。

 ストリングスが入っていはいますが、いわゆるフィリー録音ぽくはなく、さほど気になりません。
 私は、一部のフィリー・ソウルのごてごてした厚化粧のようなストリングスが好きではありません。

 しかし、ここでは、ジャッキーのハスキーな声がとてもうまく乗っていて、聴きやすいです。
 このアルバムの中でも、ハイライトの1曲だと思います。

 6曲目の同じくシグマ録音、Both Ends Against The Middleは誰がオリジナルでしょう。
 フィル・ハート&アンソニー・ベル作となっていますが、曲のつくりは完全に60年代モータウン風です。
 黄金のホーランド、ドジャー、ホーランド作品を連想させる曲展開になっていて、これはうまくはめられたような、そんな予想外の嬉しさがわいてくる仕上がりになっています。
 この曲も注目の1曲です。

 そして、マイアミ録音ですが、ホーンこそ、メンフィス・ホーンズが参加していて重厚ですが、思いのほかリズム隊が軽い感じがします。
 ギターより、キーボード中心のアレンジが多く、そんな印象を受けます。

 エディ・ヒントン作のCover Meでは、そういった面が気になって、少し残念な出来です。

 オーティス・クレイやO.V.ライトの名唱で有名な、Precious, Preciousは、作者にムーアの名前がありますので、彼女の作品なんですね。
 これは、なにより曲の良さが際立っています。
 マイアミ録音では、本作中のベストでしょう。
 
 そして、マラコ録音のDarling Babyが予想外に良いです。
 曲の良さに、ジャッキーの声が負けていません。

 この曲は、あのホーランド、ドジャー、ホーランドの作品ですが、原曲は誰ですか?
 ノーザンの総本山のようなライター・チームの作品ですが、ブルージーなギターと、メリハリの利いたホーン・リフが、いかにも南部録音らしく決まっていて良いです。

 というわけで、本作の注目曲は、Sweet Charlie Babeと、Darling Baby、Precious, Preciousです。
 おまけとして、Both Ends Against The Middleの名前もあげたいです。
 
 結論としては、フイリー録音の良さが光る1枚でした。



Precious, Preciousです。




マイアミ・ソウルの感傷

 懐かしいコンピレーションが出てきました。
 といっても、偶然ではなくて、実は探していたんです。
 マイアミ・ソウルのコンピと言いたいところですが、いくつかそう呼びにくい音源も含まれています。 
 実は、ロッドのグレイト・ロック・クラシックスのからみで探していたのでした。


Get Down Tonight!
The Best Of T.K.Records

1. Crank It Up (Funk Town)/Peter Brown (Brown, Rans)
2. Why Can't We Live Together/Timmy Thomas (Thomas)
3. Rock Your Baby/George McCrae (Casey, Finch)
4. Rockin' Chair/Gwen McCrae (Reid, Clarke)
5. Get Down Tonight/KC & The Sunshine Band (Casey, Finch)
6. Shoorah! Shoorah!/Betty Write (Toussaint)
7. Party Down PT.1/Little Beaver (Hale)
8. Get Off/Foxy (Driggs, Ledesma)
9. Do You Wanna Party With Me/Peter Brown (Brown, Rans)
10. Tonight Is The Night/Betty Wright (Wright, Clarke)
11. Keep The Home Fire Burning/Latimore (Latimore, Alaimo)*
12. Ring My Bell/Anita Ward (Knight)
13. I'm Your Boogie Man/KC & The Sunshine Band (Casey, Finch)
14. Gimme Some PT.1/Jimmie "Bo" Horne (Casey, Finch)*
15. Dance With Me/Peter Brown (Brown, Rans)
16. Rapp Payback (Where Iz Moses)/James Brown (Brown, Brown, Stallings)
17. It's A Heartache/Ronnie Spector (Scott, Wolfe)*
18. Hot Number/Foxy (Ledesma)*

 このアルバムは、90年にRhinoからリリースされたもので、T.K.とその関連レーベルの音源をコンパイルした内容になっています。
 まだRhinoのロゴが古いタイプの時代のもので、時代を感じます。

 CDとLPが併存していたころですね。
 CDのみ、ボーナス・トラックを4曲追加収録という、懐かしい仕様になっています。

 マイアミ・ソウルを代表するヒット曲、ジョージ・マクレーのRock Your Babyが収録されているほか、リトル・ビーヴァーのParty Downとか、ディスコの定番曲、アニタ・ワードのRing My Bellなどが収録されていて、なかなか楽しめます。

 KC&サンシャン・バンドは2曲収録されていますが、ウルフルズの「ガッツだぜ」の元歌、That's The Wayは、別のレーベルだったのかな?

 私の思うところ、マイアミ・ソウルと言ってイメージするのは、三人の女性シンガーです。
 Clean Up Womanのベティ・ライト、ジョージ・マクレーの奥さん、グウェン・マクレー、そして、Precious Preciousのジャッキー・ムーアです。

 このうち、グウェン・マクレーの代表作、Rockin Chairは、ここに収録されていて、やはりいい曲ですね。
 ペティ・ライトは、2曲収録されていて、アラン・トゥーサン作のShoorah! Shoorah!が面白い曲です。

 後ろで鳴っているホーンが気持ちいいです。
 Clean Up Womanは、別のレーベルでしたっけ?
 あれを始めて聴いたときは、驚きました。
 サム&デイヴの「あの曲」とそっくりだと思ったのです。

 皆さん、当然そう思いますよね。
 そのことに触れている文章を読んだことがないのですが、あまりにも言い尽くされたことで書くまでもないことなんでしょうか。
 それとも、私だけがそう思っているんでしょうか。

 そんなはずはないはず…です。
 久しぶりに同曲を収録したアルバムを再確認しようとしましたが、例によって探すと見つからないのでした。
 別のものを探し始めると、きっとひょっこり出てくると思います。

 ベティとグウェン以外では、ディープ・ソウル・ファンとして、ラティモアが気になります。
 Keep The Home Fire Burningは、ラティモアの最大の特徴である、懐の深いジェントルなバリトンが堪能できないのが残念です。 

 しかし、この曲は、ラティモアとスティーヴ・アレイモが共作しているんですね。
 アレイモさんは、いろいろと顔を出す人です。
 私が、なぜアレイモさんのことが気になるのかは、「サム&デイヴ、イン・マイアミ」の記事をご覧ください。

 私が、ラティモアの歌い方で一番好きなのは、マラコでデニース・ラセールとデュエットした、Right Place Right Timeです。

 さて、キュイーンというギターで始まる、JBのファンキー・ソウルも収録されてまいますが、マイ・ブーム的には、ラスト近くに入っている曲のほうが、私にはサプライズです。

 ロニー・スペクターによる、It's A Heartacheです。
 この曲は、ボニー・タイラーや、ジュース・ニュートン盤の翌年あたりにリリースされたようで、目立ったヒットはしていないようです。

 冒頭で書いた、このアルバムを探した理由こそ、この曲の存在でした。
 とりたてて、名唱、名演といわけではありませんが、ロニーの声が理屈を超えていいです。
 歌い回しといいますか、要所でナチュラルにハスキー気味になるところや、そもそも声質がサッドな雰囲気をたたえていることが魅力的です。

 とりあえず、この歌唱が聴けて満足です。
 収録曲中、キャッチーな魅力としては、マクレー夫妻の2曲が、群を抜いていると感じました。
 ジョージの曲は、ディスコに限りなく接近しつつも、かろうじて踏みとどまっている姿が美しいです。

 ただ、ヒット曲としては、ジョージのつくりが上かもしれませんが、ディープ・ソウル・ファンとしては、夫人のグウェンの方に軍配を上げたいです。



Ronnie Spector のIt's A Heartacheです。




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傷心のヒーロー




サム&デイヴ、イン・マイアミ

 かつて、T.K.レコードという会社がありました。
 ディスコ時代に隆盛したレーベルで、有名なディスコ・ヒットとしては、アニタ・ワードのRing My Bellなんて曲がありました。

 そんなの興味ないよというソウル・ファンでも、ラティモア、ベティ・ライト、グウェン・マクレー、リトル・ビーバーなんかが所属していたといえば、聴いてみようかなと思われるのでは…。

 今回の音源は、オーナーのヘンリー・ストーンがT.K.を設立する前、まだナイトクラブの経営のかたわら、地元のアーティストを録音して、レコード会社へ売り込んでいた頃の仕事です。

 
The Legendary Henry Stone Presents
Sam & Dave

1. It Feels So Nice (Woods, Johnson, Kirkland)
2. I Got a Thing Going On (Jack Corbett)
3. My Love Belongs to You (Moore, Prater, Reid)
4. Listening for My Name (Taylor, Roberts)
5. No More Pain (Steve Alaimo)
6. I Found Out (Steve Alaimo)
7. It Was So Nice While It Lasted (Billy Nash)
8. You Ain't No Big Thing Baby (Grover, Levy)
9. I Need Love (Moore, Prater)
10. She's Alright (Watts, Grover, Levy)
11. Keep A-Walkin' (Steve Alaimo)
12. If She'll Still Have Me (Taylor, Roberts)
13. Lotta Lovin' (Henry Stone)
14. I'll Never Never Never (Henry Stone)
15. Keep My Fingers Crossed (Clarence Reid, Willie Clarke)
16. Love Business (Clarence Reid, Willie Clarke)

 Sam and Daveといえば、ソウル・デュオを代表する存在で、スタックスやアトランティックのイメージがありますが、メンフィス録音で大成功をおさめる前、最初の商業録音は、マイアミのヘンリー・ストーンによって行われました。

 このアルバムは、ストーンによって録音され、ルーレット(及びマーリン)から発売されたシングルをコンパイルしたアルバムをベースに、4曲を追加してリリースされたものです。
 
 私は、ベースになった94年の英エドセルのリイシュー盤で初めて音を聴きました。
 英エドセル盤には、トラック12までが収録されていました。
 この時代には、9枚のシングルがありますので、B面に同じ曲を使い回していなければ、まだ未アルバム化曲が2曲あるということになります。

 このアルバムを手に入れたのは、はっきり覚えていませんが、多分ここ5,6年前くらいのことだと思います。
 あるとき、地元の専門店で見つけて購入したのでした。
 この時は、帰宅して確認するまで、英エドセル盤がベースであることに気が付いていませんでした。
 
 原盤所有権は、ストーンが持ち続けていたのでしょうか?
 若干疑問が残りますが、いつ頃からか、過去の仕事をストーンが自分のサイトで販売し始めていたようで、ニッチなものを仕入れている一部の店舗では流通していたようなのです。 
 (現在は、アマゾンても手に入るようです。)

 私は、このアルバムのほか、同じヘンリー・ストーン・プレゼンツとロゴが入った、J.P.Robinsonというディープ・ソウル系のシンガーのアルバムを入手しています。

 このJ.P.Robinsonのアルバムなんですが、実は私に疑問を抱かせた要因のひとつです。
 それは、CD時代になって、まず体験することがなくなったスクラッチ・ノイズが入っているのです。

 まるで、レコード盤から音を起こしたような、プチプチ・ノイズがしっかりと入っています。
 購入した当時、私は、このブートのような音を聴いて、「ヘンリー・ストーンって、原盤所有者のはずだよなあ」と首をひねったものでした。
 真相は今でも不明です。

 さて、このアルバムは、良く知られているヘイズ、ポーターの制作を受ける前の録音です。
 英エドセル盤を初めて聴いたときには、かなり身がまえたものでした。
 大好きなアーティストの未完成時代の音だとの思いがあったからです。

 しかし、マイナス・イメージを描きつつ、覚悟のうえで聴いたせいでしょうか。
 思いのほか良く感じたのでした。
 今回、久々に聴き返しましたが、当時の印象からほとんど変わらず、好印象を持ちました。 
 
 バックこそ、あの特徴的なMGsの演奏ではありませんが、決して捨てたものではありません。
 そして、二人の熱いデュオ・スタイルが、急に魔法のように出来あがったものではないことを、改めて気付かせてくれます。
 ここには、熱気があります。

 また、楽曲も、二人の力の入った歌唱によって、魅力が引き出されていると感じます。
 収録曲のいくつかは、二人の自作です。
 Moore、Praterというクレジットが二人の作品です。
 既にデュオの特性を生かした、掛け合いによる曲の展開は、完成していると思います。

 作者には、Clarence Riedの名前を見つけることが出来ますし、Groverというのは、おそらくHenry Groverでしょう。
 サムとデイヴがクラレンス・リードと共作した、My Love Belongs to Youなどはなかなかいい感じの曲に仕上がっています。
 ここでさらに、Taylor、Robertsというコンビの正体が「あっ」と驚く人なら面白いのですが…

 そして、Steve Alaimoという人が3曲書いていますが、これが予想外に良かったりします。

 さて、逆にいくつか気になったことを述べたいと思います。
 まず、追加曲のトラック13、Lotta Lovin'なんですが、ここから急に録音レベルが上がります。
 特にこの曲がアップのナンバーなので、少し音量を下げる必要を感じる場合があるかと思います。
 まあ、このあたりは許容範囲としましょう。

 Lotta Lovin'という曲ですが、ヘンリー・ストーン作となっています。
 しかし、これは、50年代のロカビリアン、ジーン・ヴィンセントが吹き込んでいた曲と同じものではないでしょうか?

 私は、これまた20数年ぶりにジーン・ヴィンセントのアナログ盤を聴いてみたところ、悪魔の声に魅了されて思わず当初の目的を忘れてしまいました。
 繰り返しますが、ジーンの声が堪りません。

 そして、エコーの感じも堪りませんし、クリフ・ギャラップのギターには、やはり聴き惚れます。
 ピアノやハンド・クラッピングを効果的に使っていることにも、新鮮な驚きを感じました。

 若かりし頃に夢中になった思い出の音楽は、20数年ぶりに聴いても決して色あせることなどなく、新鮮に心に迫ってくるのでした。
 こうしてたまに聴いてみるものですね。 
 
 そうでした。
 Lotta Lovin'です。
 これはやはり同じ曲です。
 作者は、Bedwellとなっています。
 ロカビリーというより、ロックンロールっぽい曲です。

 さて、つらつらと書いてきましたが、今回このアルバムを取り上げたのには理由があります。
 私は、ついこの間、アーサー・アレクサンダーのEveryday I Have To Cry Someについて触れたときに、フタミさんとMr.Pitifulさんから、この曲のオリジネイターが、Steve Alaimoという人で、これが、アーサーの録音より先に世に出て、アレイモ盤によってヒットしたということを教えていただきました。

 あわせて、Mr.Pitifulさんのブログ記事を拝見して、このスティーヴ・アレイモという、どうもヒスパニック系白人らしい人が、ヘンリー・ストーンと関わりがあったということも知ることが出来ました。

 このことから、私は、「確かヘンリー・ストーン関連のCDを持っていたはずだ」と思い起こし、今回のアルバムを引っ張り出してきたのでした。
 J.P.ロビンソンのスクラッチ・ノイズの件が、くっきりと記憶に残っていて、根気よく探したところ、目的のものを見つけたという訳です。

 先にちらっと書きましたが、このアルバムには、3曲スティーヴ・アレイモが書いた曲が収録されています。
 彼は、ギタリストとしてスタートし、シンガー・デビューした後、プロデューサーや、なんとアクターまで経験している怪人物のようです。
 そして、このアルバムの収録曲は、スティーヴ・アレイモがプロデュースしているのでした。

 Original Songs Produced By Steve Alaimo
 Excutive Producers Henry Stone, Inez Stone としっかり記載されています。

 今回は、一連の気になることを確かめるために、このアルバムを探しだしたわけですが、実は、最も興奮したのは、ジーン・ヴィンセントを久々に聴いて感激したことでした。

 … こんなオチですみません。



Steve Alaimo作のNo More Painです。




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オー・マイ・ゴータマ・シッダルタ

 昨日に引き続き、CD棚の整理をしています。
 こういうことは、連休の初日などにやるのが一番で、これが最終日などになると、とたんに意欲がうせて、やれ、あのDVDを観ておきたいとか、あのCDを聴かなくちゃとか、あの文庫本を読まないと、などなど、気ばかりあせって結局たいして進まなかったりします。
 わかってはいるのですが…。


Buddah Deep Soul
Yes My Goodness Yes!

1. You Gotta Believe/Joe Anderson(Jordan, Smith)74:Buddah BDA436
2. Mr.Me Mrs.You/The Eboneys(Yung, Barnum)75:Buddah LP
3. I'll Cry/Judy White(Goldberg)68:Buddah BDA79
4. Yes My Goodness Yes/Al Perkins(Womack, Butler, Holiday)77:Buddah BDA575
5. Baby Baby Please/Timothy Wilson(Poindexter, Poindexter, Lewis)67:Buddah BDA19
6. She'll Throw Stones At You/Auther Aexander(Cartee, Soule, Dana)76:Buddah BDA522
7. Bullding A World For Two/Judy White(Simpson)68:Buddah BDA62
8. I Had A Dream/The Futures(Akines, Bellman, Drayton, Turner)75:Buddah LP
9. It's Too Late/Tony Lamar(Williams)67:Buddah BDA10
10. So Much To Give/Curtis Blandon(Blandon, Jones)68:Buddah BDA94
11. String Bean/Jimmy Lewis(Lewis)71:Buddah BDA255
12. Running Out/Judy White(Pinz, Leka)67:Buddah BDA16
13. Everybody Needs Somebody To Love/Arthur alexander(Cartee, Soule)78:Buddah BDA492
14. Mr.Dream Mcrchant/New Birth(Weiss, Ross)75:Buddah BDA470
15. Girls Can't Do What The Guys Do/Judy White(Reid, Clarke)68:Buddah BDA62
16. If I Could Make Magic/Henry Lumpkin(Bateman, Mosley, Hollon)67:Buddah BDA22
17. Standing At The Crossroads/Eddie & Ernie(Campbell, Johnson, James)71:Buddah BDA250
18. Satisfaction Guaranteed/Judy White(Hinton, Greene)68:Buddah BDA79
19. Sharing/Vitamin E(Smith)77:Buddah BDA574
20. I Don't Want Nobody But My Baby/Tony Owens(Bolden)75:Buddah BDA470

 未整理のコンピレーションのいくつかをチョイスし、プラケース解体、ビニールパッケージへの移し替えという作業をやっています。
 今回は、そんな作業の中、思わず手を止めて、プレーヤーのトレイに載せてしまった1枚です。
 
 購入した当初のことはまるで覚えていません。
 収納箇所からいっても、あまり重視していなかったCDであるのは間違いありません。
 しかし、実はいくつかの点で、注目すべきコンピであることに気が付きました。
 うーむ、当時はどういう観点でこれを買ったのでしょうか?

 単なるタイトル買いの可能性もあります。
 Deep Soulというタイトルは、私を惹きつけるキラー・ワードのひとつだからです。

 収録アーティストは、あまり知らない人たちが多いです。
 また、ディープ・ソウルといっても、日本のソウル・ファンがダイレクトに連想するサザン・ソウルや、ニューヨーク・ディープ・ソウルといったものばかりではなく、フィリー・ソウルなども含む内容になっています。

 私は、フィリーとかにうといのですが、スイート・ソウルと同意語でしょうか?
 やはり、ニュージャージー・ソウル(?)とかも含めての言葉なんでしょうね。

 実は、最近このあたりの音が気になりだしています。
 それには理由があって、最近の私のマイ・ブームである、60s-70sチカーノ・ソウル(R&B)が、ドリーミーなドゥワップから、シカゴ・ソウル、そしてスイート・ソウルあたりまでの強い影響下にあると気付いたからです。

 もちろん、それだけではなくて、JBのファンキー・ソウルとか、いわゆるレア・グルーヴとかからの影響も強いようです。
 ただ、そのへんは苦手なため、現在にんじんやグリーンピースが食べられない子どものような心境だったりします。
 ファンキーの前のJBは好きなんですが…。

 さて、本作収録曲です。
 フィリーのエボニーズ、ディープ系のジミー・ルイス、エディ&アーニー、モダン系(?)のトニー・オーウェンスは、それぞれ単独アルバムを入手している人たちで、なかではエボニーズが印象に残っているアーティストです。

 エディ&アーニーは、ディープ・ファンとしては、当然好きというべきでしょうが、案外衝撃が薄かった人たちで、近いうちにしっかり聴き返そう、と宿題にしておきます。

 そして、わざと後回しにしていましたが、アーサー・アレクサンダーが2曲収録されています。
 もしかしたら、この人の存在が、当時、このアルバムを買った理由かも知れません。

 アーサーと言う人は、ワーナーのあと、ブッダに吹き込んでいたんですね。
 それとも、ワーナーとかの音源がブッダに買われただけでしょうか?

 ただ、ライナーを睨んでいると(睨んでも意味はわかりませんが)、どうもアラバマ録音のようなニュアンスが感じられます。
 ブッダというのは、ニューヨークの会社ですよね。
 ワーナーでは、多分ナッシュビル( またはメンフィス) 録音ではないかと思います。

 アーサーの曲を書いている、作者のSouleさんこと、George Souleという人は、南部(アラバマ?)のプロデューサーではないでしょうか。 
 ただ、曲はアーサーのオリジナルそっくりの雰囲気の曲に仕上がっていて、狙って制作したのか、あるいはどういじろうが、アーサーはこうなるのか、興味深いところです。

 ところで、ライナーには、アーサーのブッダでのシングルは2枚だというような記述があるように思うのですが、読み間違いでしょうか。
 それともこのアルバムに、2枚のシングルを収録したといってるのでしょうか。
 もし前者だとすると、収録曲のどちらかのフリップ・サイドが、あの名曲、Everyday I Have To Cry Someだということになります。

 かつて、レイザー&タイから93年にリリースされた、The Urtimate Arthur Alexanderには、60年代の代表曲に混じって、1曲のみブッダ録音のEveryday I Have To Cry Someが入っていて、ライナーには自身のリメイクであると記されていたと思います。

 どなたかEveryday I Have To Cry Someのオリジナル・バージョンを収録した編集盤をご存知ないですか。
 やはり、Golden Age Of Rock n Rollシリーズとか、あのての45sのコンピレーションを地道に探すしかないのかな。

 ちなみに、Everybody Needs Somebody To Loveは、作者をみればわかるように、有名なソロモン・バークの曲とは同名異曲です。
 こちらは、若干レゲエっぽいリズムのミディアム・チューンです。

 さて、単独アルバムを持っていない人では、スモーキー・ロビンスンみたいな、ティモシー・ウイルソンと、フィリー系ではフューチャーズが、なかなか聴かせます。

 また、スイート系のヘンリー・ランプキンも、やはりスモーキー・チルドレンと言う感じでよいです。
  
 しかし、ディープ系でいうと、5曲も収録されているジュディ・ホワイト嬢が、何といっても聴きものです。
 曲によっては、雰囲気満点の南部風の伴奏で、I'll Cryなどは、ギターのイントロの段階で期待が高まってきて、しびれます。
 
 それもそのはずで、なぜかこの人のみ、録音データが記載されている曲があるのですが、I'll CryとSatisfaction Guaranteedの2曲は、クインヴィ・スダジオ録音なのです。

 そして、Satisfaction Guaranteedは、エディ・ヒントンとM・グリーンの作品なのでした。
 こちらは、サイケなギターのオブリと、教会風のハモンド・オルガンのアンサンブルが胸に迫ります。
 うーむ、興奮してきました。

 ちなみに、この曲のヒントン盤は、Playin' Around: The Songwriting Sessions, Vol. 2に収録されています。
 ギターは、どちらもエディかも知れません。

 エディ盤では、随所にプリーチ風の語りがとつとつと入る展開が素晴らしく、ソロモン・バークか、ウイルソン・ピケット、またはジョー・テックスでもいいですが、そのあたりのプリーチャーに吹き込んでほしかった曲です。
 ジュディ盤は、プリーチの部分が軽くメロにのっていて、どちらが好きかは好みでしょう。

 先ほどから、アルバムを通して繰り返し聴いているのですが、サザンだけでなく、スイートもいいなあと、心を揺らしてくれる1枚なのでした。

 そして、こちらも久々に聴いたヒントンのPlayin' Aroundが、胸に沁みまくって眠れそうにありません。
 ここに入っている、Help Me To Make It(Power Of A Woman's Love)という曲が、サム・クックを連想させる歌い回しで堪りません。




Judy WhiteのSatisfaction Guaranteedです。





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エディ・ヒントンが好き
本家ヘタウマ


ジョゼフ説教師の童心

 今回は、Joe Texを聴き返しました。
 選んだのは、英Kentの編集盤で、94年にリリースされたものです。
 ジョン・ブローヴンがコンパイルし、クリフ・ホワイトがライナーを書いています。(読めませんが…)

 
Skinny Legs And All
The Classic Early Dial Sides
Joe Tex

1. S.Y.S.L.J.F.M. (The Letter Song)
2. The Love You Save (May Be Your Own)
3. Show Me
4. Hold What You've Got
5. Heep See Few Know
6. Someone To Take Your Place
7. One Monkey Don't Stop No Show
8. If Sugar Was As Sweet As You
9. Meet Me In The Church
10. You Got What It Takes
11. I Had A Good Home But I Left (Part 1)
12. Don't Let Your Left Hand Know
13. A Woman Can Change A Man
14. Skinny Legs And All
15. I Want To (Do Everything For You)
16. A Sweet Woman Like You
17. I Believe I'm Gonna Make It
18. Men Are Gettin' Scarce
19. I'm A Man
20. I've Got To Do A Little Bit Better
21. Papa Was Too
22. Watch The One (That Brings The Bad News)
23. The Truest Woman In The World
24. Chicken Crazy
 

 いきなり脇道へそれてしまいますが、英Aceでは、AceとKentの振り分けをどのようにしているんでしょう。
 Aceは、ブルース、R&B、ロックンロール、そしてKentはソウルでしょうか?

 いちいち現物に当たってはいませんが、何となく感覚的にはそんなイメージですね。
 まあ、前提として、そもそもなぜ分ける必要性があるのかという問題が残りますが…。

 さて、ジョー・テックスです。
 ウィキペディアによれば、彼の本名は、ジョゼフ・アーリントン・ジュニアというらしいです。
 テックスというのは、出身地がテキサスだからというのが自然な発想ですが、正解でしょうか?

 私がジョー・テックスに持っているイメージは、プリーチ、説教です。
 それも切々と語るというのではなく、言葉をたたみ掛けていく、そんな印象です。

 ところが今回、この初期ダイアル録音集を聴いて、案外、プリーチ、プリーチしてないなあ、勝手な刷り込みというか、思い込みは怖いなあと思いました。 

 じっくり聴いてみるものですね。
 彼には、サム・クック・フレイバーを感じさせる歌い方のものがあるということを知りました。 
 冒頭のS.Y.S.L.J.F.M. (The Letter Song)などは、いきなりそんな感じですね。

 でも、それだけじゃありません。
 彼にはソロモン・バークのような側面もまた、確実にあります。
 ここで私が感じたのは、バークが持っていたジェントルな雰囲気です。

 バークの場合、特にそれは、カントリーを取り上げた作品に顕著でした。
 ジョー・テックスは、比較的南部録音が多いようですが、南部のバックでも、バーク節とでも呼びたい、懐の深い歌い口を持っていると思いました。

 とりあえず、A Woman Can Change A Manあたりを上げておきたいです。
 この曲では、間奏でゆったりしたモノローグが入り、私が従来持っていたイメージに近いパフォーマンスです。
 これで、徐々にボルテージが高まって、頂点に達したところで爆発すれば、などと思いますが、実際はオスカー・トニーのように、熱さは深く静かに潜行します。

 このアルバムには、主に64年から66年までのシングルのA面が収録されているようです。
 録音は、ナッシュビル、メンフィスが中心で、それにニューヨーク録音が少し混ざっているようです。

 この人の場合、あまり出来不出来が少ないように感じます。
 ヒット曲も、その他の曲もそれほど大きな違いがあるようには思えません。
 それぞれが魅力的だと思います。 

 ただ、先入観でしょうか?
 やはりメンフィス録音がいいように思ってしまいます。
 A Sweet Woman Like Youなんかは特に好きですね。

 ところで、このメンフィスというのは、どこのスダジオでしょう。
 アメリカン・スタジオは、67年からと72年までらしいですからそれ以前ですね。

 私は、サザン・ソウル好きにも関わらず、このあたりにうといので、Obinさんの「Songs」のスタジオ相関図(?)のページに付箋を貼ったりしていました。

 ナッシュビル録音というのは、ダイアル・レコードの自社スタジオかな。 
 
 そういえば、マッスルショールズ録音のHold What You've Gotは、フェイム・スタジオのようですが、B面が収録されていないので、このアルバム唯一のアラバマ録音です。
 ダイアルのオーナーは、ヒット曲が出たのに、テックスのファイム詣では1回こっきりでやめちゃったんですかね。
 
 まあ、私の耳は、情けないことにさほど音の違いが分かりません…。
 ここからは、スタックスやハイのような個性を聴きとれないのです。

 スタジオだけ借りて、ツアー・メンバーで録音したということはないですよね。
 何の意味もないし。

 ただ決してくさしている訳ではなくて、むしろ私には、平均より上の曲ばかりのように感じます。
 その分、この1曲という決定打に欠けるきらいがありますが。
 それは、Hold What You've Gotを含めてそう思います。

 この曲は、もっとディープにやっている人がいたとも思います。

 ウーム、こういう話の展開にするつもりはなかったのです。
 私は、基本的に好みじゃないアルバムは取り上げません。

 気を取り直すため、全く別方面の話題に切り替えて、平和に終わりたいと思います。

 このアルバムには、If Sugar Was As Sweet As Youという曲が入っています。
 曲名だけでピンと来た方は偉いです。

 そうです。
 ロックパイルがやっていた曲のオリジナルです。
 66年のメンフィス録音のようです。
 パブ・ロック・ファンは、このバージョンを聴くだめだけでも、このアルバムを手に入れましょう。

 オリジナルなんて関心がないよ、という人にはごめんなさい。




If Sugar Was As Sweet As Youです。
歌心を感じさせるギターがいい感じです。





ブルーズン・ソウル・ブラザーズ

 私は、ディープ・ソウルが好きです。
 そして、ブルースもまた、大好きです。
 このふたつが、1個の人間の中に昇華されたようなシンガーが、私の最も好むタイプです。
 別の言葉に言い換えるなら、ブルーズン・ソウルが好みなのでした。


Right On Time !
Little Buster And The Soul Brothers

1. What Can I Do (Somebody Tell Me)
2. Engines And Wings : Kenn Chipkin
3. First You Cry : David Egan, Buddy Flett
4. Ever Since
5. Whatever It Takes : Dan Penn, Gary Nicolson
6. That's What I Want To Do
7. I've Been Watching You
8. I'm So Lonesome
9. Broken Hearted Man
10. What Do I Have To Do (To Make You Love Me)
11. My Darling
12. Baby Couldn't Be Found


 このアルバムは、95年にリリースされたもので、発表当時は、その優れた内容が評判になった1枚でした。

 どうやら、盲目のシンガー、ギタリストらしい、バスター・フォアハンドは、60年代に素晴らしくディープなシングルを吹き込んでいながら、ヒットに恵まれず、計画がありながらも、ついにアルバムを出せなかった人で、90年代に再発見された人でした。
 このあと、もう1枚アルバムが出ていました。

 ヴィンテージ期の録音は、このアルバムの発売を契機にコンプリート集が編まれ、Sequelからリリースされました。

 そちらでは、サム・クック・フレイバーを感じさせる曲から、ニューヨーク・ディープ風のつくりの作品まで、素晴らしい曲をたくさん聴くことが出来ました。
 久しく聴いていませんが、どディープ・スタイルのAll I Could Do Was Cryが印象に残っています。

 この人は、ディープ・ソウル系のシンガーであるとともに、ギタリストでもあり、自ら弾くブルージーなリード・ギターは達者なものです。
 
 ブルース・ギタリストで、ソウルが歌えるシンガーといえば、リトル・ミルトンが代表ですが、私は、ミルトンの何倍もこのリトル・バスターが好きです。

 少しタイプは違いますが、ロバート・ウォードと似た匂いが感じられる人です。

 このアルバムでは、リード・ギターの技が冴えまくっていて、シンプルにカッコイイと言いたいです。

 まず、冒頭の What Can I Do (Somebody Tell Me)で、がつんと頭を殴られるような衝撃を受けます。

 気力満タンのホーン陣(サックス2本、トランペット1本)がまず聴かせます。
 そして、太い声と少し高い声を使い分けながら、どディープな歌声を聴かせる、リトル・バスターが登場すると、たちまちその世界に惹きこまれます。

 さらに、曲の並びがまた良くて、次のブルース、Engines And Wingsのリード・ギターのイントロが耳に入ってくると、もはや虜状態です。
 最高にブルージーで、最高にディープな歌世界に酔わされます。

 そして、続くメンフィス・ソウル風のスロー・バラード、First You Cryが、これまた素晴らしいのでした。
 静かに、荘厳に進行するこの曲は、実はルイジアナの白人ピアニスト、デイヴィッド・イーガンの作品なのでした。

 作者イーガンのバージョンは、スワンプ・ポップのスーパー・グループ、Lil' Band O' Goldの演奏で聴くことが出来ます。
 イーガンのヴィンテージ期の作品があれば聴いてみたいです。
 また、First You Cryは、94年のパーシー・スレッジ盤もあります。

 このアルバムでは、O. V.ライトか、ボビー・ブランドか、というような、リトル・バスターの素晴らしい歌唱を聴くことが出来ます。

 私は、さきほど太い声と高い声を使い分けて、と表現しましたが、実は一時期、曲によっては、もう一人のシンガーがいるのではと思ったことがあります。
 二つの声の入り方に、まるでソウル・デュオの掛け合いのような、そんな感じを受けていたからです。
 おそらくは、リトル・バスターが、多重録音で声をかぶせているんでしょう。

 ただ、その声の入れ方は、ビートルズや、パティ・ペイジのような、ダブル・ヴォーカルではなく、まるでもう一人のシンガーが合いの手をいれるかのような感じに仕上がっています。

 クレジットには、バンド・メンバーの名前が記されていますが、楽器のみで、コーラスのクレジットはありません。
 唯一バスター本人が、バッキング・コーラスをいれたと記されているのみですから、そういうことなんでしよう。

 アタマの3曲でノックアウトされ、もはや一気にアルバム1枚をき通すほか、この世界から脱することはできないのでした。

 ダン・ペン作のWhatever It Takesも、もちろん良いです。
 しかし、ここでの相方、ゲイリー・ニコルソンさんは、どういう人なんでしょう。
 なにしろ、色んな人とパートナーを組んでいる、気の多いダニエル・ペニントンさんなのでした。

 この人は、本作でこそ元気ハツラツな印象の録音を残しましたが、内実はダークな面を持った人ではないかと、私は思っています。

 このあとに出たアルバムは、同じようなブルーズン・ソウル路線の選曲でありながら、どこかダークな雰囲気が感じられ、このアルバムほど入れ込めなかったと記憶しています。

 とにかく、本作は最高のブルーズン・ソウル・アルバムでした。



What Can I Do (Somebody Tell Me)てす。



Engines and Wingsです。




 First You Cryです。
 http://www.youtube.com/watch?v=x_JPAfDYHTg



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