アフィリエイト広告を利用しています

広告

この広告は30日以上更新がないブログに表示されております。
新規記事の投稿を行うことで、非表示にすることが可能です。
posted by fanblog

明日に別れの接吻を

 今回は、Cookie & the Cupcakesのサックス・プレイヤー、Lil' Alfredの唯一のソロ・アルバムを聴きました。

 Cookie & the Cupcakesは、Cookieこと、Heuy Thierryを中心とするSwamp Popの代表的グループです。
 多くの人にとって、Swamp Popの魅力にはまるきっかけにして、決め手となるアーティストではないでしょうか。

 私がそうでした。
 P-Vine盤で出会い、輸入盤店で英Acd盤を見つけて更に好きになりました。
 もちろん、LP時代のことです。

  

Dealin' With The Feelin'
Lil' Alfred

1. Dealin' With the Feelin' (A.Babino)
2. Kiss Tomorrow Goodbye (Alfed Reed)
3. The One Thing (Bonnie Hayes)
4. Lie to Me (A. Babino, Don Rollins)
5. She's Looking Good (Collins)
6. Hold on to What You've Got (Joe Tex)
7. I've Got the Wrong Somebody (D.Egan, B.Flett)
8. Flying High (On the Wings of My Music) (A. Babino)
9. I Need Your Love So Bad (J.Mertis Jr.)
10. I Should Have Gone Dancing (C.l.Milburn)
11. It's Too Late (Chuck Willis)
12. Here from Now On (D.Egan, B.Flett)
13. Barefootin' (R.Parker)
14. The Only Girl (A.Babino, G.Khoury)

 Cookie & the Cupcakesは、52年、前身であるBoogie Ramblers時代に、Eddie ShulerのGoldbandと契約します。
 この時、Goldbandで、彼らのプロデューサーを務めたのが、George Khouryでした。
 Goldband時代には、Boogie Ramblers名義で、"Cindy Lou"の小ヒットを出しています。

 彼らが本格的に成功したのは、George Khouryが自らのレーベル、Lyricからリリースした、"Mathilda"を出してからのことです。
 58年のことでした。

 彼らの成功後、GoldbandのEddie Shulerは、Boogie Ramblers時代を含むシングルを集め、Cookie & the CupcakesのLPを作っています。
 その裏ジャケには、自分たちこそ、この偉大なグループを最初に録音したのだと、誇らしげに記していました。

 本盤は、Jin RecordsからリリースされたCDで、私が所有するディスクには95年と記されています。

 普通に95年リリースかなとも思いますが、トラック12〜14がCDボーナス・トラックとなっていて、こういう表記は80年代後半のLP・CD併存期に見られたものなので、再発なのではと考えてしまいます。

 一方、海外では、LPからCDへと素直に交代したわけではなく、プレイヤー価格の低廉化が進行するまでは、カセットのシェアが強かった時期がCD黎明期と重なっていましたので、95年初発もないとは言えない気もします。

 さて、Cookie & the Cupcakesのメイン・リードは、Heuy "Cookie" Thierry(vo.sax)ですが、他にもリード・ボーカルをとっているメンバーがいます。

 初期メンバーのShelton Dunaway(sax, trp)がその代表で、Chuck Willisのカバー(本当はトラッドかも)、"Betty & Dupree"はSheltonのリードでした。
 そして、クラプトンがカバーして有名になった、"Got You On My Mind"は、CookieとSheltonのデュオ曲です。

 グループの年少組だった本盤の主人公、Lil' Alfredは、"Walking Down The Aisle"ほかでリードを担当しています。
 ウエディング・ソング(だと思う)の"Walking Down The Aisle"は、当時10代のAlfred Babino(バービノウ?)少年が、素晴らしいボーイ・テノールを聴かせるDoo Wop調の傑作です。

 Lil' Alferdという愛称は、地元のディスク・ジョッキーが、15才でプロとして歌っていた彼につけたものでした。

 Lil' Alfredは、64年にHuey "Cookie" Thierryが自動車事故の負傷でグループを離れたころから、自然と中心メンバーとなっていったようです。 

 Lil' Alfredのリード曲では、他にも"Even Though"という私の大好きな曲があります。
 こちらも、Doo Wopスタイルのコーラスが入ったボーカル曲でした。

 しかし、今回の盤は、曲目をご覧いただけばお分りのように、ソウルの名曲カバーを中心とした構成です。
 ジョー・テックスの名作サザン・ソウル・バラードから、ロジャー・コリンズ(ピケット盤が有名ですが)のジャンプ・ナンバーまでを果敢に挑戦しています。

 ルイジアナ繋がりで、バラードでは"Kiss Tomorrow Goodbye"、ジャンプでは"Barefootin"もやっています。

 本盤のセッションは、主として(全10曲)以下のメンバーで行われました。 
 これらは、Lil' Alfred自身がプロデュースしています。

Lil' Alfred : vocals
Chet Blackstone : keyboads
Mike Dubroc : guitar, percussion, background vocals
Gerald Romero : bass
Al Allemond : drums
Don Rollins : sax
Kevin Stone : trumpet 

 一方、一部の曲のみ別のセッションでの録音があります。
 以下のとおりです。

"Bearfootin'" + "It's Too Late"の2曲
Wayne Sensat and C.O.Vallet : produce
Lil' Alfred : vocals
Chris Flowers : sax
Walter Allen : keyboads
Jack Johnson : trumpet
Jerry Mouton : bass
Randy Melancon : guitar
Mike Rogers : drums
Tommy Elender :sax

"I've Got the Wrong Somebody" + "Here from Now On" の2曲
David Egan : produce, keyboads
Buddy Flett : produce, guitar
Lil' Alfred : vocals
Ron Eoff : bass
Robert Cardwell : drums

 David Eganの作品2曲の制作に、作者本人が関わっているわけです。
 David Eganは、ルイジアナのピアニスト、シンガー、ソングライターで、つい先ごろ新作をリリースした、Swamp Popのスーパー・グループ、Lil' Band O' Goldのメンバーでもあります。

 本盤の内容は、(ファン目線での補正込ですが)充分楽しめるレベルだと思います。
 ただ、ヴィンテージ期の奇跡的なパフォーマンスの再現を期待するのはやめましょう。

 本盤は、大人になって魔法を失い、奇跡を起こせなくなった、かつての天才少年が、普通に努力して作ったアルバムだと思います。

 Lil' Alfredは、90年代後半にCookie & the Cupcakesを名乗るグループを率い、音楽フェス等に出たらしいです。
 懐かしいメンバーがどれくらい参加したのかは調べられていません。

 出来れば、リユニオンで、スタジオ盤新作を出してほしかったです。
 それが無理なら、ライヴ音源をディスク化してほしいものです。



Kiss Tomorrow Goodbye by Lil' Alfred




Kiss Tomorrow Goodbye by Johnny Winter


私はアリゲーター時代のジョニー・ウインターが好きです。
これは、「ギター・スリンガー」でやったバージョンです。
スワンプ・ポップ風にやっています。



Kiss Tomorrow Goodbye by Danny White


多分、これがオリジナル、63年ニューオリンズ録音だと思います。
Danny Whiteは、1枚ものの英Kent盤CDが出ています。



関連記事はこちら

沼地のハーモニー
ゴールドバンドのカップケーキ
ボーカル・グループとして聴くカップケイクス





リル・ファッツ・オー・ゴールド

 スワンプ・ポップの異世代同居バンド、Lil' Band O' Goldの最新作を聴きました。
 どこかの文章で、「三世代のメンバーからなる」みたいな表現を見た覚えがあります。

 本バンドは、70代のWarren Storm(dr)、Dickie Randry(sax)から、リーダー格の40代、C.C.Adcock(gt)まで、三世代は大げさでも、親子くらいの年齢差があるメンツで構成されているバンドです。


Plays Fats
Lil' Band O' Gold

1. Blue Monday (Warren Storm) 
2. It Keeps Raining (Robert Plant)
3. Let’s Talk It Over (Don’t Lie To Me) (C.C. Adcock) 
4. I'm Ready (Lucinda Williams with Ani DiFranco, Kenny Bill Stinson)
5. I'm In Love Again (David Egan) 
6. Going Home (Warren Storm) 
7. Ain't That A Shame (Jimmy Barnes) 
8. What A Price (Grand Prix) (Steve Riley)
9. 4 Winds Blow (Warren Storm)  
10. Poor Me (C.C. Adcock) 
11. I'm Walkin' (Tim Rogers)
12. Rosemary (Warren Storm)
13. I've Been Around (Robert Plant)

 曲目のあとの( )内は、リード・ボーカルです。
 本盤でのメンツは以下のような感じだと思います。

Warren Storm : drums, vocals
Steve Riley : accordion, vocals
C.C.Adcock : guitar, vocals
David Egan : piano, vocals
Dave Ranson : bass
Richard Comeaux : pedal steel guitar
Dickie Landry : sax
Pat Breaux : sax
Kenny Bill Stinson : keyboad(若しかするとguitarも)
(もう一人、Huston Dereksという人の名前がリーフレットの最終ページに記されているのですが、誰のことなのか分かりませんでした。)

 このバンドは、スワンプ・ポップのオールスターというには、若干むりがあるかも知れません。
 もともとスワンプ・ポップはニッチなサブ・ジャンルです。
 ジャンルを代表するアーティストでも、一般的な音楽ファンには、限りなく無名でしよう。

 この中では、ドラムスのWarren Stormが、スワンプ・ポップ・レジェンドと呼ばれている人です。
 若いころは、J.D. Millerのもと、セッション・ドラマーとして、エクセロのスワンプ・ブルース・マンのセッションに多数参加しています。
 ソロ・シンガーとしては、"Prisoner's Song"(58)ほかのヒットがあり、これまで、Lil' Band O' Goldのアルバムでは、最も多くリード・ボーカルを務めています。

 David Eganは、シンガー、ソングライター、ピアニストで、ソロ作もありますが、他のシンガーへの曲提供で、ライターとしての方が評価が高い人かも知れません。
 Egan作の"First You Cry"(1stに本人バージョン収録)は、パーシー・スレッジのカバーがあるほか、私はリトル・バスターのバージョンが好きです。

 Steve Rileyは、スワンプ・ポップというより、モダンなケイジャン・バンドのアコーディオニストです。
 そして、C.C.Adcockは、スワンプ・ロッカーとベタに言ってしまいましょう。


2ndのころのスナップだと思います。


 さらに本盤には、ロバート・プラントほか数人のゲストが参加しています。
 以下のとおりです。

Robert Plant
Lucinda Williams
Ani DiFlanco (誰ですか?)
Jimmy Barnes (同上)
Tim Rogers

 スワンプ・ポップのスーパー・グループと評されるこのバンドのことは、当ブログにコメントをいただいた二見さんからご教示いただいて知って以来、過去作を愛聴していました。
 バンドは、これまで2枚のアルバムをリリースしていて、本盤は2年ぶり、通算3枚目になります。
 以下のとおりです。

00年 The Lil' Band O' Gold (Shanachie Records)
10年 The Promised Land (Room 609)
12年 Plays Fats (Dust Devil Music)

 1stのあと、2ndまで10年のブランクがありますが、2ndの録音は06年で、4年寝かされていたことになります。
 そして、3枚とも、すべて別の会社からリリースされていますね。
 当初は1回限りの企画ものだったのか、それとも需要がなかったのか(だとすれば寂しすぎる)

 本盤のDust Devil Musicは、オーストラリアの会社のようです。
 2ndのリリース後、オーストラリアやニュージーランドで公演したようなので、その関係でしょうか。
 
 また、ゲストの一人、Tim Rogersというのは、You Am Iというオーストラリア(!)のロック・バンドのメンバーです。
 You Am Iは、音楽的には私の関心外のバンドですが、一度だけ聴くきっかけがありました。
 このバンドには、なんと"Doug Sahm"という題名の自作曲があるのでした。
 この件は、当ブログで過去に触れました。

 さて、本盤は前作同様、ルイジアナのラファイエ(ット)で録音されました。
 プロデュースは、C.C.Adcockが仕切っています。
 前作でC.C.と共同制作した、Tarka Cordellは不参加です。
 (ちなみに、1stはニューオリンズ録音で、C.C.とLil' Band O' Goldの共同制作名義でした。また、Tarka Cordellは、C.C.の2枚のソロ作を制作している人です。)

 1stは、David EganやC.C.のオリジナルを混じえながら、ニューヨーク・ディープから、ニユーオリンズR&B、スワンプ・ポップ、ケイジャンなどを披露したアルバムでした。
 対して、2ndは、引き続き渋いカバー曲をやりつつも、オリジナル曲の比率を上げたアルバムになっていました。
 そして、今作は、ファッツ・ドミノのカバー集です。
 これが、ジャズなら、"Plays Fats"とは、ファッツ・ウォーラーを連想していたでしょう。

 1stと2ndでは、音の印象がかなり違いました。
 2ndは、各パートがそれぞれ個性をうまく出しつつも、出しゃばりすぎないスタンスが気持ち良いサウンドでした。
 大好きなアルバムです。
 一方、1stは、C.C.が大先輩に遠慮したのか、オーバー・プロデュースの真逆という感じで、めいめいが自由にやりましたという印象を受ける緩いガレージなサウンドでした。(と感じました。)

 対して、今作はどうでしょう。
 プロデュースは、C.C.単独です。
 ただ、今作は、多彩なゲストが参加していることもあり、彼らの意見も取り入れながらやったのでしょう。
 1st、2ndとも肌触りの違う印象を持ちました。
 私の好みでは、ロック的なフェイクで味付けしたものより、オリジナルのイメージに近いもの、あるいはデキシー調など別の意味で古いスタイルに仕上げた作品が気に入りました。

 頑固に原曲に近いスタイルでやった、Warren Stormの担当曲、そして独自のアレンジながらセピアな雰囲気を出すことに成功しているDavid Eganの"I'm In Love Again"の仕上がりがとりわけ好きです。
 Warrenの"4 Winds Blow"は、ウキウキ軽快なリズムと、いい味を出しているペダル・スチールの使い方が私にはツボでした。
 そして、Rose Mary"は、誰がやっても悪くなりようがない名作ですね。
 へたにいじるべからずです。

 Steve Rileyは、わが道を行く感じのサウンドで、クリオールなまりっぽい歌いくちがいいです。
 クリフトン・シェニエを連想しました。
 やはりケイジャンとザディコは同じコインの両面ですね。

 C.C.は、当初いまいちかなと思いましたが、"Poor Me"がよいです。
 ここでの仕上げは、ジョン・レノンのアルバム、"Rock and Roll"を連想させる、スペクターっぽいエコーが胸に切なく迫ります。

 ゲストの担当曲では、Jimmy Barnesの、Fatsの歌い方や演奏のギミックをデフォルメした仕上げが痛快でした。
 Tim Rogersも頑張っていて悪くないです。
 まあ、何と言っても原曲が名作ぞろいですからね。

 Robert Plantは、彼の好みの牧歌的スタイルと、得意の艶っぽいウェットなボーカルが決まれば最高ですね。
 2曲ともよいですが、あえて私の好みで1曲あげるなら、ラストの"I've Been Around"がよりセクシーでお奨めです。

 最後に、本盤の収録曲を、英AceのCD、"Fats Domino Imperial Singles"シリーズ(Vol.1〜5)に当てはめて締めたいと思います。 

Fats Domino
The Early Imperial Singles 1950-1952

6. Going Home (Warren Storm)
3. Let's Talk It Over (Don't Lie 2 Me) (C.C.Adcock)

The Imperial Singles Vol.2 1953-1956
7. Ain't That A Shame (Jimmy Barnes)
10. Poor Me (C.C.Adcock)
12. Rosemary (Warren Storm)

The Imperial Singles Vol.3 1956-1958
1. Blue Monday (Warren Storm)
5. I'm In Love Again (David Egan)
11. I'm Walkin (Tim Rogers)

The Imperial Singles Vol.4 1959-1961
2. It Keeps Raining  (Robert Plant)
4. I'm Ready  (Lucinda Williams with Ani Di-franco)
8. What A Price (Grand Prix) (Steve Riley)
9. 4 Winds Blow (Warren Storm)
13. I've Been Around (Robert Plant)

 本盤は、繰り返し聴きこむほど、味わい深さを感じて、さらに好きになっていくアルバムだと思います。



It Keeps Rainin' by Robert Plant & Lil' Band O' Gold




関連記事はこちら

Fats Domino
ヘイ・ラ・バ・ブギ
ふとっちょ登場

Warren Storm
ダーティ・ドッグ・ワルツ
リトル・スワンプ・ドラマー・ボーイ
土曜の夜はあげあげカーニバル

David Egan : First You Cry
ブルーズン・ソウル・ブラザーズ
元祖ヘタウマ
アリゲーターバイユー、クロコダイル・スワンプ

You Am I
この人だれ? プラス1


鷲は舞い降りた かもしれない

 今回のアルバムは、前回取り上げた"Dickie and The Tornadoes"のアルバムと関連があります。
 まず、同じ会社(Great Blues Recordings)からリリースされています。
 次に、収録曲12曲のうち、なんと3曲も同じ曲を取り上げているのです。


Easy Does It Again
Easy

1. Going Back To Louisiana (R. E. Osborn)
2. Baby, I Don't Know (B. Fussell)
3. If You Love Me Like You Say (Little Johnny Taylor)
4. T-Bone Shuffle (A. Walker)
5. I Can't Help Myself (L. Dozier, B. Holland, E. Holland)
6. Everyday Will Be Like a Holiday (W. Bell, B. T. Jones Jr.)
7. Don't Let The Green Grass Fool You (J. AKines, J. Bellmon, V. Drayton, R. Turner)
8. Tee Na Na (C. Chenier)
9. I'm Gonna Find Another You (J. Mayer)
10. Touch a Hand, Make a Friend (H. Banks, C. Hampton, R. Jackson)
11. What Went Wrong (D. J. Richard)
12. In The Mood (J. Garland)

 本盤は、09年にリリースされました。
 前回記事の"Dickie and The Tornadoes"の"Going Back Home"は、04年のリリースでしたので5年後に出されたことになります。

 "Easy"という安易な(?)名前を持つこのバンドは、今作で2枚目になるようです。
 前作のタイトルは、"Easy Does It"で、本盤のタイトルは、この末尾に"Again"をつけただけという安易さ(?)です。
 
 参加メンバーは、以下の通りです。

Dave Show : lead vocals
Steve Champagne : bass
Roy "Pooch" Poche : keyboads
Gerald Hebert : drums
Paul Bonin : lead guitar
George Hernandez : trumpet
Mike Weatbrock : trumpet
Shelby Collins : sax
Ramon Ramos : sax

 前回の"Dickie and The Tornadoes"の記事を参照していただきたいのですが、ある人物の名前が目に留まります。
 ベーシストのSteve Champagne(シャンペイン? シャンパーニュ?)です。
 この人は、"Dickie and The Tornadoes"のベーシストと同姓同名です。
 もちろん、別人という可能性もないとは言えませんが、この特徴ある名前で担当楽器まで同じなのですから、まず同一人物でしょう。

 その他のメンツはかぶっていませんが、やっている音楽は、とてもよく似ています。
 メンフィス・ソウル、モダン・ブルース、ニューオリンズR&B、スワンプ・ポップなどを中心としたアルバム構成は、まるで双生児のようです。

 バンドのサウンドは、私は若干"Dickie and The Tornadoes"の方が好みですが、編成が大差ないこともあり、かなり似ています。
 
 ギターのオブリなどは、"Dickie and The Tornadoes"が良いと思います。
 また、リード・ボーカルは、本盤のDave Shpwより、Dickie Peltierの方が私は好きです。
 全体的な印象として、"Eazy"は、"Dickie and The Tornadoes"の下位互換サウンドに聴こえなくもないです。

 さて、"Dickie and The Tornadoes"の"Going Back Home"と本盤を比較して、まず目をひくのは、モータウン・ナンバーとT-Boneナンバーの存在です。
 T-Boneナンバーがなかなかよいです。
 これらの曲も、"Dickie and The Tornadoes"がやっていても不思議ではない気はします。

 それよりも、両作で共に取り上げている曲に注目しましょう。
 次の3曲です。

1. Going Back To Louisiana
3. If You Love Me Like You Say
6. Everyday Will Be Like a Holiday

 ここまで同じ曲をチョイスしてカバーしているのは偶然ではない気がします。
 ベーシストのシャンパーニュさんにキャプテンシーがあって意向を通しているのか、あるいはプロデューサーの考えなのか…?
 …プロデューサーは、ボーカルのDave Showさんでした。

 さて、私は、"Dickie and The Tornadoes"を聴いてから、Little Johnny Taylorのアルバムを聴き返しました。
 "If You Love Me Like You Say"の原曲を過去に聴いていたか、確認したかったからです。
 結果、ひとつの事実を知りました。

 "If You Love Me Like You Say"には別名があり、日本編集のP-vine盤では、"Zig Zag Lightnin'"と表記されていることです。
 (最初は、手持ちのCDには未収録だと思ってしまいました。)

 久々にLittle Johnny Taylorを聴いて、少し高まりました。
 この人の凄いところ、そして私が夢中になりきれなかった両面を再確認しました。

 さて、その他の曲にも触れておきたいと思います。
 "Touch a Hand, Make a Friend"は、はっきりと本盤だけのサウンドだと言い切れる音づくりになっています。
 これは、完全にザディコで、パーソネルの楽器リストにはありませんが、アコやラブボードを模したような音が聴こえます。
 この曲が始まると、もともとイナタかったサウンドが、さらにディープ・サウスのそれへと誘われた感じを受けます。
 私は、クリフトン・シェニエよりもロッキン・シドニーを連想しました。

 ルイジアナへ帰ろうで始まったアルバムは、グレン・ミラーの大有名曲のインストを、いかにも南部諸州のテーマらしいディキシーランド・スタイルでやってエンディングへと向かいます。
 やはり、私には美味しいアルバムでした。


 (おまけ)
 本盤と"Dickie and The Tornadoes"の"Going Back Home"を比較するため、両盤が共通して取り上げている3曲をメドレーにしてみました。
 曲順は、"Everyday Will Be Like a Holiday"、"If You Love Me Like You Say"、"Going Back To Louisiana"の順で、それぞれジャケット画像が切り替わる箇所で両バンドがチェンジしています。



Everyday Will Be Like a Holiday
〜 If You Love Me Like You Say 
〜 Going Back To Louisiana
by Eazy + Dickie and The Tornadoes




関連記事はこちら

うちへ帰ろう






うちへ帰ろう

 今回は、初めて聴くアーティストです。
 音を聴かなくても、この曲目をみると興味を惹かずにはいられませんでした。
 メインフィス・ソウルで始まり、ニューオリンズR&B、スワンプ・ポップ、テキサス・ブルースなどなどが混在するラインナップが、まさに私好みです。


Going Back Home
Dickie and The Tornadoes

1. Everyday Will Be Like a Holiday (W. Bell, B.T. Jones)
2. C C Rider (C. Willis)
3. Ya Ya (M. Levy, C. L. Lewis)
4. Betty and Dupree (C. Willis)
5. If You Love Me Like You Say (Little Johnny Taylor)
6. Honky Tonk (B. Butler, B. doggett, C. Scott, S. Shepherd)
7. Just a Dream (Jimmy Clanton)
8. Just a Little Bit (Rosco Gordon)
9. Next Time You See Me (E. Forest, B. Harvey)
10. Your Picture (Robert C. Guidry)
11. Back to Louisiana (R. E. Osborn)
12. Goin' Home (A. Domino, A. Young)

 このアーティストについては、ほとんど何も知りません。
 おそらくは、90年代後期かミレニアム以降にアルバム・デビューしたのではないかと推察します。

 つべに、"〜2011 Runion〜"というタイトルのライヴ動画がありましたので、現在は活動しているのかどうかは不明です。 
 フロントマンが、ソロでやっているのかも知れません。

 本盤は、04年にGreat Blues Recordingsという、テキサスはポートアーサーの会社(=スタジオ)からリリースされました。
 多分、同地周辺を拠点にしていたバンドだと思います。 

 ただ、バンド・メンバーを確認すると、どうもフレンチっぽい匂いがして、名前だけみるとルイジアナのバンドかと思ってしまいそうです。
 本盤の参加メンバーは、以下のとおりです。

Dickie Peltier : vocals, guitar, piano
Steve Champagne : bass
Scooter Green : drums
Don E. LeBlanc : keyboads
Johnny Lindow : tenor sax
The Taylor Bayou Horns

 フロント・マンの名前はなんと読むのでしょうか。
 カタカナ表記では、ディッキー・ペルティエかな?

 正式な本名は知りませんが、ファースト・ネームのディッキーは、普通に考えればリチャードですね。
 Dickieは、Richardの愛称(短縮形)のひとつです。
 Richard → Dick → Dickie(又はDickey)
 オールマン・ブラザーズのDickey Bettsの本名は、Forrest Richard Bettsでした。
 (彼のソロ・アルバム、"Highway Callの名義は、"Richard Betts")

 ベーシストの姓シャンペイン(シャンパン)は、本名だとすればおしゃれですね。
 ホーン陣のネーミングには、バイユーの文字が入っています。
 これはもう、ストレートにルイジアナっぽいですね。

 ところで、このバンド名の表記ですが、The Tornadoesと竜巻の語尾が"es"になっています。
 かのオールスター・バンド、Texas Tornadosの語尾は"s"のみでした。
 これって、どうなんでしょう。
 正解、不正解ってあるんでしょうか?
 私の感覚では、"es"の方がしっくりきます。
 例えば、語尾が"o"で終わる単語、トマト(tomato)は、tomaoesです。
 固有名詞は何でもありなのかな。
 (Texas Tornadosを知った当初、よく間違えてタイプしていました。)


 さて、音を聴きましょう。
 冒頭からいい感じに展開していきます。
 曲は、William Bellの名作ですね。

 スタックス・サウンドへの憧憬を素直に表わした、細かい所へもこだわった丁寧な演奏に好感を持ちます。
 イントロのギターから堪りません。
 原曲を意識しつつ、彼らなりのアレンジではありますが、憧れの音への敬意に満ちたサウンドだと思います。
 ロバート・クレイが1stでやったEddie Floydのカバーを連想しました。
 ホーン陣の鳴りの良さ、クリアなギターのトーンが「いかにも」な感じで素晴らしいです。
 ボーカルは、意外にも若干ハイ・トーン気味です。

 Chuck Willisを2曲もやっているのが興味深いです。
 演奏のテイストとしては、一転してニューオリンズR&B風というか、スワンプ・ポップ調です。
 ゆったりしたテンポと、優しいボーカルに和みます。
 三連のピアノが耳に残る"Betty and Dupree"は、オリジナルよりもCookie & the Cupcakes盤がお手本かも知れません。

 リー・ドーシーの"Ya Ya"が聴きものです。
 ここでは、原曲のとぼけた感じは少し残しつつも、バックのリフがゆったりした16ビートで、かっこいい系に仕上げています。
 ホーンによるメイン・リフが全体のテーマになっていて、曲のおしゃれな印象を決定づけています。
 この曲をこういうアレンジでやったのは、初めて聴きました。
 本盤のハイライトの1曲だといいたいです。

 Littlle Johnny Taylorの"If You Love Me Like You Say"は、既聴曲かも知れませんが、記憶にない曲でした。
 切れのあるブルース・ギター、気力充実したホーン陣ともに素晴らしい伴奏です。
 これなどは、黒人ブルース・マンの演奏と言われれば信じそうです。

 サザン・ソウル・ハラード、スワンプ・ポップ、モダン・ブルースと、このバンドの抽斗の多さ、豊かな音楽性を立て続けに披露してくれています。
 実力派バンドだと感じます。
 そういった思いは、インスト曲、"Honky Tonk"を聴くと一層深く感じられました。
 やはりホーン陣のよいバンドは安定していると思います。

 以下、スワンプ・ポップの名作"Just A Dream"、ブルージー・ファンク、"Just a Little Bit"などは無難なアレンジでやっていきます。
 あまりいじらないのは、完成度の高い原曲への敬意でしょうか。

 Junior Parkerの"Next Time You See Me"は、演奏、歌唱とも、再びオリジナルへの強烈な憧憬と敬意を感じる仕上がりです。
 ボーカルは、Parkerの少し鼻にかかったビロード・ボイスを意識していると思います。
 完成度は原曲にかなわなくとも、憧れの曲に対する強い気持ちが伝わってきて、好きにならずにはいられません。

 ボビー・チャールズの" Your Picture"、ファッツ・ドミノの"Goin' Home"ともに、やはり愛情たっぷりにカバーしています。
 本盤収録の三連曲は、いずれもピアノとホーンのアンサンブルが素晴らしいです。

 最後に、"Back to Louisiana"という曲について一言。
 私は、オリジナルは知りませんが、Delbert McClintonのバージョンで知っていた曲で、大好きな曲です。
 この曲をケイジャンぼい姓を持つメンツが歌うのは、なかなか面白いです。
 ブルージーに始まりつつも、次第に調子のいいお祭りソングになっていくのが実に良いです。
 相変わらず、ブラス隊がいい音を出していて、街を練り歩きながらやってほしい、そんな風に思いました。

 よく考えると、最後の2曲が、"Back to Louisiana"、"Goin' Home"ときて、アルバム・タイトルが"Going Back Home"というのは、偶然でしょうか?
 なんとも興味深いです。

 冒頭のスタックス風のサウンドから、最後のクラシックなニューオリンズR&Bスタイルまで、テキサス・ブルース、スワンプ・ポップまでを混じえて、この手の音楽好きには、聴きどころ満載の美味しいアルバムだと思います。




Call Me The Breeze 〜 Sweet Home Alabama
by Dickie and The Tornadoes Reunion 2011


なぜか、レーナードをメドレーでやっています。
バー・バンドっぽくていいですね。






スルー・ザ・ロッキン50s

 久しぶりにこの人を聴きました。
 現役スワンプ・ポップ・シンガーのWayne Foretさんです。

 本盤は、99年にCSP Recordsからリリースされたものですが、当時の新録ではなく、73年初出のLPをCD化したものらしいです。
 この人が70年代にLPデビューしていたとは知りませんでした。

 Wayne Foretは、Clyde McPhattarも得意としている人ですが、スタイルとしては、ほぼFats Dominoマナーの人で、ゆったりしたその歌声にはいつも癒されます。


Rockin' 50s
Through The Years
Wayne Foret

1. I Trusted You
2. No More Loneliness
3. Caldonia
4. I Won't Cry   
5. I Cried Last Night   
6. Margie    
7. Just A Game  
8. Stranger To You
9. Have You Ever Had The Blues
10. Somebody Show Me The Way Home
11. Mr. Sandman  
12. Ready, Willing And Able

 全12曲、ニューオリンズR&B、またはスワンプ・ポップのエッセンスで満たされた温泉にどっぷり浸かる、そんなひと時を過ごせるアルバムになっています。

 全体的にイナタさ満点ですが、思ったほどB級ぽさは希薄です。
 もっとユルイ展開かと予想していたところ、曲のテンポこそほっこりですが、バンドの演奏はタイトでした。

 収録曲は、曲名のみで一切クレジットがありません。
 有名曲も混じっていますが、激渋のナンバーが多数入っています。
 ただ、スワンプ・ポップやニューオリンズR&Bファンなら、どこかで見かけたような曲名を見て心が騒がずにいられないでしょう。

 分かる範囲で書いていきます。
 
 まずは有名曲から

3. Caldonia
4. I Won't Cry
5. I Cried Last Night
11. Mr. Sandman 

 "Caldonia"は、もちろんLouie Jordanの大有名曲です。
 でも、ここでのアレンジは、ルイ盤よりもゆったりとしたテンポで、ニューオリンズR&B版"Caldonia"と言いたいです。
 この曲特有の挑発的なボーカル・スタイルは抑えられ、まったりゆるく歌われています。
 こういうのも、たまにはありでしょう。

 "I Won't Cry"は、何と言ってもDoug Sahmの名唱が忘れられません。
 Doug Sahmの名盤ソロ、"Juke Box Music"のオープニング曲でした。

 原曲は、Johnny Adamsで、彼は二度吹き込んでいます。
 Johnny Adamsは技巧派のソウル・シンガーで、私はDoug盤を初めて聴いたとき、なるほどJohnnyらしい歌い方、フェイクをうまく取り入れてるなあ、そう感じました。
 ところが、Johnny盤を聴き返すと、Dougがやっていたフェイクは、ごくごく控えめにしかやっていず、驚いたことを思い出します。

 Dougは、いかにもJohnnyがやりそうな歌い方をデフォルメしていたんですね。
 さすがDoug Sahmだと言うほかないです。
 Wayne盤は、Doug盤、Johnny盤に比べると若干見劣りしますが、アベレージでしょう。

 "I Cried Last Night"は、すぐには気付きにくいですが、よく聴けばCookie & the Cupcakesの"I Cried"だと分かります。
 Cookie & the Cupcakesのレパートリーの中では、比較的ロックンロール調の曲です。
 Wayne盤は、原曲よりもかなりゆったりしたテンポでやっていて、Fatsスタイルの演奏に仕上げています。

 "Mr. Sandman"は、Jimmy Donleyの"Please Mr. Sandman"ですね。
 この曲の作者クレジットはHeuy P. Meauxですが、Donleyが書いた曲を買い上げた可能性が高いと私は思います。
 この曲は、ガルフコーストの人気曲で、Sunny & Sunlinersもやっていました。
 もちろん、Doug SahmもFreddy Fenderも、ついでにJoe King Carrascoもやっています。

 次に渋い選曲を…。

1. I Trusted You
2. No More Loneliness
6. Margie
7. Just A Game
8. Stranger To You
9. Have You Ever Had The Blues

 "I Trusted You"と"Stranger To You"は、Johnnie Allanのレパートリーです。
 "I Trusted You"は、Jimmy Clantonに同名曲がありますが、こちらは、多分Johnny Allanの方だと思います。

 "No More Loneliness"は、現役スワンプ・ポップ・シンガーのGary Tが息子と組んだユニット、Duece of Heartsのレパートリーだと思います。
 今、手元にアルバムがないのですが、Gary Tは自作曲が多いため、彼の作品だと思います。

 "Margie"は、Fats Dominoのレパートリーですね。
 ただ、元々はエリントン・ナンバーかも知れません。
 Fatsスタイルの曲は、Wayneにとって安心安定の選曲で、至福の和みの時間を提供してくれます。

 "Just A Game"は大好きな曲です。
 Jimmy Donleyのレパートリーで、作者はやはりHeuy P. Meaux名義ですが、これは間違いなくDonleyの作品だと思います。
 共作者がDonleyととても近い人で、二人は他にもいくつか共作しています。
 このパターンの曲は、ほぼDonleyからMeauxが買い上げたケースだと思います。
 本盤は、三連曲のオンパレードですが、この曲は、中でも私が好きな必殺の哀愁三連曲です。

 "Have You Ever Had The Blues"は、Lloyd PriceのABC時代の曲ですね。
 Lloyd Priceは有名曲、佳曲が数ある中、このチョイスは渋いです。
 "Personality"の裏面だったような気がします(?)。

 最後に不明曲を…。

10. Somebody Show Me The Way Home
12. Ready, Willing And Able

 この2曲はよく分かりません。
 "Somebody Show Me The Way Home"は、古いポピュラー曲が元ネタかも知れません。
 でも、完全にニューオリンズR&Bスタイルでやっています。

 本盤は、味のあるWayne Foretのボーカルでほのぼのと和める1枚だと思います。
 ゆるゆるテンポの曲ばかりですが、リズム隊はタイトで、ホーン陣はリフもソロも聞かせます。
 ときおり挿入されるコンパクトなギター・ソロも良いです。

 Wayne Foretは、FatsスタイルのSwamp Popシンガーとして、特段のスリルやサプライズこそ希薄ですが、安心して聴けるアーティストだと改めて感じました。




Irene by Wayne Foret





関連記事はこちら

強く叩き続けろ
スワンプ少年の帰還


 

ルイジアナマン・イン・ブリテン

 唐突ですが、音楽ファンなら、ジャケ買いしたことが一度ならずあると思います。
 私はしょっちゅうです。
 
 そんな私のニッチな「ある ある」を のたまってみます。
 例えばこんな感じです。
 「Swamp Popのアルバムをジャケで買うと、裏をかかれることが多い」

 まあ、分かんないですよね、何言ってるのか。
 つまりは、こんなふうな例です。
 「近影がジャケに使われていたので新録だと思って買ったら、中身はヴィンテージ期の新しいベスト盤だった」
 逆に、「セピアな写真ジャケだったので古い録音を期待していたら、最近のライヴ盤だった」
 「あー あるある」と共感していただけましたか。

 今回は、Swamp Pop Legendの一人、Johnnie Allanの最近再発されたアルバムをご紹介します。


Louisiana Man
Johnnie Allan

1. Rubber Dolly (arr. J. Guillot)
2. Family Rules (Baker, Shuler)
3. What'cha Do (H. Simoneaux)
4. Please Accept My Love (Garlow)
5. Hippy Ti Yo (arr. J. Guillot)
6. Jolie Blon (arr. J.Guillot)
7. Sittin' And Thinkin' (C. Rich)
8. Your Picture (R. Guidry)
9. I Cried (B. Mizzell)
10. Lonely Days, Lonely Nights (J. Guillot)
11. Pardon Mr. Gordon (Bernard, Soileau)
12. Secret Of Love (Shuler, Willridge)
13. South To Louisiana (M. Phillips)
14. Mathilda (Khoury, Thierry)
15. Opelousas Sostan (Graeff, Palmer)
16. Sea Of Love (Khoury, Baptiste)
17. The Promised Land (C. Berry)
18. Sweet Dreams (D. Gibson)

 今回の場合は後者でした。
 アルバム・ジャケは古い写真でしたが、中身は91年のロンドン公演(つまりライヴ盤)だったのです。
 参加したメンツは以下のとおりです。

Johnnie Allan : vocals
Harry Simoneaux : saxophone
Nick Pentelow : saxophone
Gary Rickards : lead guitar
Dave Travis : rhythm guitar
Stuart Colman : bass guitar
Geraint Watkins : piano & accordian
Bobby Irwin : drums

 このメンツを見て反応した方は、私のお友達です。
 Geraint Watkins、Bobby Irwinは、パブ・ロック・ファンなら誰でも知っている存在ですよね。
 二人とも、Dave EdmundsやNick Loweと深くつながっている職人たちです。

 Bobby Irwinは、Martin Belmont(g)、Paul Carrack(key)とともに、Nick LoweのCowboy Outfitsのメンバーだった人で、最近でも、Loweの最新作に参加していました。
 Robert Treherneの名前でクレジットされているのが彼です。

 そして、Stuart Colmanをご存知でしょうか?
 80年代の英国ロカビリー・スター、Shakin' Stevens全盛期のバンドのベーシストで、Shakyのソロ2ndの"This Ole House"から、5thの"The Bop Won't Stopまでを連続してプロデュースしていた人です。

 私の思うところ、Shakyの絶頂期は、1stから4thの"Give Me Your Heart Tonight"あたりまでではないでしょうか。
 ちなみに当時、私が一番聴いていたのは、2ndの"This Ole House"と3rdの"Shaky"です。
 (7thの"Lipstick Powder and Paint"は、Dave Edmunds製作でした。…あまり聴いてない、聴こう。)

 では、ギターリストのGary Rickardはご存じですか?
 この人は、Garaint Watkinsとともに、Cajun Rock'n'Roll band、Balham Alligatorsを組んでい(る?)た人です。
 (Bobby Irwinも近作では参加していたはずです。)

 このように、さすがロンドン公演だけあって、英国の南部音楽好き職人がばっちり参加していて期待大です。
 とりわけ、Cajun好きのBalham Alligators勢の参加がうれしいですね。

 さて、本盤は、92年にDeep Elen Recordsからリリースされたもののリイシューらしいです。
 私は全くの初見で、普通に新譜のような感覚で聴けました。

 アルバムは、ライヴらしくMCによる「Johnnie Allan !」のコールから始まります。
 ただ、観客の反応は、あまり拾われてなくて、曲の途中だけを聴くとスタジオ・テイクと言っても疑わない感じでしょう。
 曲終わりでのざわつきや、曲間でJohnnieが次の曲名を叫んだりするところが、かろうじてライヴだということを思い出させてくれます。

 セット・リストは、過去のJohnnie Allanのレパートリーから、有名曲(代表曲?)を中心にチョイスしていて、ほとんどサプライズなしという印象です。

 ケイジャン・トラッド曲のJohnnieアレンジ版も、想定の範囲内ですね。
 (Johnnie Allanの本名は、John Allen Guillotです。)

 バンド・サウンドの中心は、アコーディオンかと思いきや、ホーン陣がかっちりとした音を出していて、音の厚み、勢いともによくて、とても心地いいです。
 地元ルイジアナのバンド、例えばBoogie Kingsのようなアマチュアっぽさはなく、安心安定のバンド・サウンドです。

 めったに出番がないですが、哀愁曲でのギター・ソロもいい感じですよ。
 スワンプ・ポップ・ファンはもちろん、パブ・ロック・ファンも満足出来ると思います。
 この際、全て必聴と言い切ってしまいましょう。
 
 とはいえ、おせっかいを承知で、いくつか聴きどころを紹介しましょう。

 まずは、Johnnie Allanの代表曲を押えましょう。
 以下の曲たちです。

2. Family Rules
8. Your Picture
10. Lonely Days, Lonely Nights
13. South To Louisiana
17. The Promised Land

 この中で、最もスワンプ・ポップらしいのが、"Lonely Days, Lonely Nights"です。
 原曲は、58年にJinから出されました。
 私は、アナログLP時代に、英Krazy Kat盤、"Johnnie Allan & Krazy Kats 1959-1960's"で初めて聴いた曲です。

 当時、Johnnie Allanを聴く環境は、英Ace盤が入り口だったと思いますが、Jin盤が手に入らなければ、次はもう英Krazy Kat盤だったのです。
 ニッチな品ぞろえの輸入盤店へ入り浸っていたからこそ聴けたのでした。



 Johnnie Allanの曲では、"South To Louisiana"や"Promised Land"の方が有名でしょうが、私はこの曲や、本盤では演っていませんが、"You Got Me Whistling"のような曲が、より好きです。
 やっぱり、スワンプ・ポップは哀愁ですよね。(三連ならなおさら)

 他人のカバーも色々とやっていますが、Charlie Richの"Sittin' And Thinkin'"などは普通にかっこいいです。
 この曲は、RichのSun時代の曲で、Elvis Costelloのカバーが有名(?)ですね。

 スワンプ・ポップ・クラシックのカバーも気になります。
 曲名のあとにオリジネイターを記します。
 中には、ポップ・カントリーが元歌のものもありますが、完全にスワンプ・ポップとして(ファンには)認識されている曲ばかりです。

11. Pardon Mr. Gordon … Rod Bernard
14. Mathilda … Cookie and the Cupcakes
16. Sea Of Love … Phil Phillips
18. Sweet Dreams … Tommy McLain

 そして、Johnnie Allanといえば、ケイジャン・ルーツに根差した曲が出でくるのが特徴です。
 本盤では以下の曲あたりですね。

5. Hippy Ti Yo
6. Jolie Blon 

 "Jolie Blon"は、様々な表記がある曲です。
 例えば"Jole Blon"とか"Jolie Blonde"とか…。

 私は、P-vineから84年に出たDoug Sahmの日本盤LP、"Live! Goin' To San Antone"で初めて聴きました。
 このライヴ音源は、以後色々な形態で、繰り返しソフト化されることになります。
 同音源では、"Cotton Eyed Joe"も印象に残っているトラッド曲です。

 さて、本盤で私が一番反応したのは、"Please Accept My Love"という曲です。
 この曲の演奏前に、Johnnie Allanが人の名前を叫んでいるのです。
 私には「ジミー・ウィリス !」と聴こえたのですが、 これはおそらくJimmy Wilsonだと思われます。

 私は未聴だと思う(多分)のですが、58年にGoldbandから、同曲のシングルを出している人です。
 おそらく、この盤がオリジナルか、あるいはスワンプ・ポップ版のオリジナルだと思います。
 この曲は、2年後にElton Andersonという人も吹き込んでいて、こちらはメジャーのMercuryから出でいます。

 でも、Goldband関連でいうと、作者がGarlowとなっているので、Clarence Garlowの作者盤があるんじゃないでしょうか?
 こちらは、Garlowということでザディコ、ないしはダウンホームなブルースの可能性も高いですが、あるいは意表をついて、T-Bone風だったりしたら嬉しいです。
 (Garlowのギターは、T-Boneの影響も大として知られています。)

 私が初めて聴いたのは、なんとB.B.King盤で、長らくB.B.のオリジナル・レパートリーだと思っていた時期があります。
 今は好きですが、当初はいまいちと感じていた曲です。
 ブルージーではありますが、ブルースではなく、ブルース・バラードだったからです。

 B.B.のブルース・バラードが好きだと思うようになるまで、随分と時間がかかったと思います。
 私も昔は、純で狭義なブルース信者だったのでしょう。

 例によって脱線しまくりで、本盤の収録曲そのものについてばかり書いてしまいました。
 まあ、本盤の仕上がりについては、かなり最初の方で、結論を述べてしまっています。

 繰り返しておきましょう。
 Swamp Popファンはもちろん、Pub Rockファンにもお勧めの1枚です。


You Got Me Whistling by Johnnie Allan




関連記事はこちら

Johnnie Allan
輝きはやまない

Shakin' Stevens
テイク・ワン
ジス・オール・ハウス
やっかいごとはごめんだよ      
終わりだなんて言わないで      
涙はほんの少しだけ



ダーティー・ドッグ・ワルツ

 今回は、Swamp Pop Legendの一人、Warren StormのHuey P. Meaux関連の音源のコレクション、"King Of The Dance Halls 〜 Crazy Cajun Recordings"を聴き返します。
 本CDは、00年に英Edselからリリースされました。


King Of The Dance Halls
Crazy Cajun Recordings
Warren Storm

1. They Won't Let Me In (Wolfe)
2. Jack and Jill (Barry)
3. Daydreamin' (Cantrell, Claunch, Deckelman)
4. Four Dried Beans (Meaux)
5. I Walk Alone (Wilson)
6. Love Me Cherry (Gaines, Willis)
7. Honky Tonkin' (McClinton)
8. Mr. Cupid (Unidentified)
9. Rip It Up (Blackwell, Marascalco)
10. Love Rules the Heart (Thibodeaux)
11. Don't Fall in Love (Love)
12. The Gypsy (Reid)
13. Don't Let It End This Way (Ravett)
14. If You Really Want Me to, I'll Go (McClinton)
15. Tennesse Waltz (King, Stewart)
16. Just a Moment of Your Time (Lewing, Ozuna)
17. Stop and Think It over / Breaking up Is Hard to Do (Graffiano)(Bourgeois, Meaux)
18. The Rains Came (Meaux)
19. The Prisoner's Song (Massey)
20. Think It Over (Meaux)
21. Please Mr. Sandman (Meaux)
22. Blue Monday (Bartholomew, Domino)
23. But I Do (Gayton, Guidry)
24. Things Have Gone to Pieces (Payne)
25. Sometimes a Picker Just Can't Win (Unidentified)
26. King of the Dance Halls (Mayes, Romans)

 最初に通して音を聴いた印象ですが、後半の数曲が明らかに違う時期のものと感じますが、その他については70年代の音源かな、と大した根拠もなく考えました。
 それは、Huey Meauxが70年代後半以降、積極的に50s60sの彼のアイドルをレコーディングしていることを知っていたからです。

 しかし、ライナーを眺めたところ、Warren Stormについてはそんな簡単なストーリーではないようです。
 ライナーは、John BrovenがWarrenから聞き取った数回のインタビューをもとに構成されています。

 簡単にまとめてみるとこんな感じでしょうか。
 
 Warren Stormは、37年にLafayetteから20マイルほど南の町で生まれました。
 今年で75歳になるわけですね。

 58年から63年にかけて、J.D.Millerのもとでスタジオ・ドラマーとして修業したようです。
 この時期、ナッシュビルの綺羅星のようなスタジオ・エースと仕事をし、貴重な経験を積んでいます。
 ニューオリンズでも仕事をし、ドラムのメイン・インフルエンスはアール・パーマーだそうです。

 J.D. Miller発のExcello関連では、Slim Harpo、Lightnin' Slim、Lazy Lester、Lonesome Sundownら、スワンプ・ブルース・マンのバックを務めたようです。
 すごいメンツですね。

 そして、63年にHuey Meauxと契約します。
 ただ当時、Meauxがベースとなるスタジオを持っていなかったため、Miller時代以上に、様々なスタジオで録音に参加したようで、相当の数をこなし、誰が歌うのか知らずにリズム・トラックを録ることは普通にあったようです。

 Huey P. Meauxが、Jacksonにシュガーヒル・スタジオを持ったのは73年のことでした。
 最初は、ヒューストンではなく、ミシシッピのジャクソンにあったんですね。 

 本CDの収録曲では、"The Gypsy"が64年ナッシュビル録音、"Jack and Jill"、"Love Rules The Heart"がジャクソン録音らしいです。
 "The Gypsy"はSir Douglas Quintetもカバーしていました。

 予想に反して、60年代録音がかなりあって少し驚きました。

 その他の収録曲では、Delbert McClintonを2曲もやっているのが眼を惹きます。
 "If You Really Want Me to, I'll Go"は、やはりSir Douglas Quintetがやっています。

 しかし、今回私が一番注目したのは、"Tennessee Waltz"です。
 これは、ライナーによれば67年録音(Tear Drop)らしいのですが、驚くべきことにSam Cookeのバージョン(正確にはOtis Redding盤)を元にしたものになっているのです。
 このサザン・ソウル・スタイルの仕上げはほんとに驚きます。

 テネシー・ワルツといえば、Patti Pageのポピュラー盤が最も有名ですが、オリジナルはヒルビリー(又はウエスタン・スイング)のPee Wee King盤です。
 この州歌にもなった大有名曲は、当初はインストだったところ、歌詞がつけられて広く知られるようになっていきます。

 実は、ヒルビリーのCowboy Copas盤が47年に出され、それが最初のようですが、翌48年に作者のPee Wee King盤、そして50年にPatti Page盤が出て大ヒットします。
 一般的に原曲はPee Wee King、ヒット盤はPatti Pageとして知られています。
 そして、日本では江利チエミ盤ですね。

 パティ・ペイジ盤は、何といってもボーカルの多重録音が印象的でした。
 ビートルズ(とりわけポール)のダブル・トラックを連想しますよね。

 この曲は、あまりにも有名ですが、あえて内容を簡単に言いますと、恋人とダンスを踊っていると、古い友人に出会ったので紹介したところ、二人が恋に落ちてしまい、大切な恋人をとられてしまった。
 あの日流れていたテネシー・ワルツが忘れられない、くらいの歌です。

 この曲の歌詞は、ビル・モンローのケンタッキー・ワルツの影響下に書かれたと言われていて、ケンタッキー・ワルツが聴ける方は、試しに聴き比べてみると面白いと思います。(メロディは全く違います。)
 ケッタッキーでソフトに表現されている部分が、テネシーでは具体的な歌詞になったという感じです。 

 さて、テネシー・ワルツの歌詞は、歌手によって多少の違いがあります。
 基本的には、男性が歌うか女性が歌うかで違います。
 これはHerをHimに変えるという、よくあるパターンで、性別に特化した言葉がない英語では、ごく普通にあることです。

 それよりも、気になるのは出だしで、江利チエミ盤では、一般に知られている"I was dancin'"ではなく、"I was waltzin'"と歌っています。
 これは、カントリーのヒット盤、Paty Cline盤がそうで、江利チエミ盤(日本語まじり盤)を書いた作詞家がパッツィ・クラインが好きだったのかも、なんて思ったりします。
 (ただ、Pee Wee Kingも両方のパターンがあるようです。)  

 さて、サム・クックがテネシー・ワルツを発表したのは、アルバム"Ain't That Good News"で、64年ころだと思います。
 エイトビートのアレンジで、初めて聴いたときは、新鮮というよりフェイクせずにしっとりとバラードで歌えばいいのに、と思いました。
 その後、同じアレンジで、コパのライヴ盤でもやっていて、私はスタジオ盤よりも好きです。

 まず歌の視点ですが、サム盤では「introduced him 〜 (恋人を)彼に紹介した」としているので、男性の立場で歌っています。
 これは、Pee Wee King盤と同じですが、パティ・ペイジもパッツィ・クラインも当然女性視点です。

 また、原曲の「Only You Know 〜 あなたなら分かる」の部分は、パティ・ペイジ盤では「Now I Know 〜 今の私になら分かる」となっていて、大抵その歌詞が使われていると思いますが、サム盤は原曲どおり"Only You Know"です。
 
 でも、今回はそんな程度の話ではありません。

 歌詞の内容は、先述のとおりですが、さっと聴くと「悲しく辛い想い出」くらいのイメージです。
 ところが、サム盤には、原曲にはない歌詞があるのです。
 以下のとおりです。

That dirty dog stole my baby away from me Oh yeah
But I remember that night
And that beautiful Tennessee Waltz
Only you know Just how much, how much I lost Oh yeah
You know that I lost my, lost my baby
That night they kept on playin'
That beautiful
That wonderful
That marvelous
That glorious
That beautiful Tennessee Waltz

 実は、この歌詞を初めて意識したのは、柳ジョージ&レイニーウッド盤(80年:Woman and I...Old Fashioned Love Songs収録)でした。

 初めて聴いたときは、弾むような最高のアレンジに、心底驚いたことを覚えています。
 これが、サム・クックをお手本にしたものだと気づいたのはかなり経ってからでした。
 ("Good News"も"At Copa"もあまり聴いていませんでした。)
 昨年の訃報で一番ショックを受けたのは彼の訃報でした。

 歌詞に戻りましょう。
 まず、印象的なのは、締めの歌詞、"beautiful Tennessee Waltz"にいくまでにタメにタメることです。

 ザット・ビューティフル
 ザット・ワンダフル
 ザット・マーベラス
 ザット・グローリアス

 ときて、ようやく
 ザット・ビューティフル・テネシーワルツ

 と決めの歌詞へ到達するのでした。
 この部分は、何度聴いてもわくわくさせられます。

 さて、最初の印象はそうなんですが、実は何度も聴くうち、耳について離れない歌詞は他にもあることに気付きます。

 "dirty dog stole my baby away from me" です。
 「卑劣な犬が私から彼を盗んで逃げた」

 この歌詞からは、なんとも女性の怨念を感じますね。
 マイ・ベイビーなので、性別は特定できませんが、この言い回しの主は女性じゃないでしょうか?
 日本的な言い回しなら「この泥棒猫 !」なんて言葉を連想します。

 サムは男性視点で歌っているはずなので、私の感じ方が偏っているのでしょうか?
 
 しかし、何よりも気になるのは、この歌詞の出所です。
 アレンジはともかく、この歌詞は、サムのオリジナルなんでしょうか?
 気になります。
 もし、サムのオリジナルではなく、誰かのお手本があるのなら知りたいです。

 分かる範囲の時系列では、こんな感じでしょうか。

47年 Cowboy Copas
48年 Pee Wee king
50年 Patti Page
59年 Bobby Comstock (rock vir.のはしり。ただし歌詞は従来のもの。)

……この間にミッシング・リンクがあるのか? それともサムの独創?

64年 Sam Cooke (歌詞を追加。以下はSam盤の追加歌詞を準用。)
66年 Otis Redding (Sam盤をもとにテンポを落としている。)
67年 Warren Storm (Otis盤を意識している。)
76年? 柳ジョージ (アルバトロス"Take One"の客演。サム盤を意識したアレンジ)
80年 柳ジョージ&レイニーウッド (Woman and I...Old Fashioned Love Songs収録) 

 (補足) 
 柳ジョージは、レイニーウッドのデビュー前、アルバトロスというバンドにゲスト参加した音源が貴重です。
 ここでは、"Change Is Gonna Come"、"You're No Good"、"Tennessee Waltz"の3曲をやっていますが、"Tennessee Waltz"は、既にサムをお手本にやっていて、80年のレイニーウッド盤の原形です。





Tennessee Waltz by 柳ジョージ&レイニーウッド




Tennessee Waltz by Sam Cooke at the Copa









関連記事はこちら

リトル・スワンプ・ドラマー・ボーイ
土曜の夜は あげあげカーニバル
ヒルビリーでワルツ


土曜の夜は あげあげカーニバル

 今回は、64年(?)リリースのアナログLP盤をご紹介します。
 こちらは、昨年入手したもので、サウス・ルイジアナのスワンプ・ポップ・レジェンド、Rod BernardとWarren Stormが組んだバンドの唯一のアルバムです。(多分…。)

 Rod Bernardは、50年代に"This Should Go On Forever"、60年代には"Colinda"などのヒットを持つスワンプ・ポップ・シンガーです。
 そして、Warren Stormは、スタジオのドラマーであるとともに、50年代に"Prisoner's Song"のヒットを持つシンガーでした。

 本盤は、Carol J. Rachouという人の制作で、La Louisianne Recordsから出されたものです。


 
The Shondells At The Saturday Hop
The Shondells

Side One
1. Mountain Of Love (vo. Rod Bernard)
2. Tutti-Fruti (vo. Warren Storm)
3. Hi Heel Sneakers (vo. Skip Stewart)
4. Memphis (vo. Rod Bernard)
5. Teen Age Letter (vo. Warren Storm)
6. Money (vo. Skip Stewart)
Side Two
1. Mule Train (vo. Rod Bernard)
2. Lucille (vo. Warren Storm)
3. Twist And Shout (vo. Skip Stewart)
4. Promised Land (vo. Rod Bernard)
5. Slow Down (vo. Warren Storm)
6. If You Want To Be Happy (vo. Skip Stewart)

 私はよく知らなかったのですが、Wikiを見ると、Carol Rachouなる人は、JinのFloyd Soileau、GoldbandのEddie Shuler、Crazy CajunのHuey Meaux、そしてJ. D. Millerらと並んで併記されるような、スワンプ・ポップの代表的な制作者の一人のようです。

 彼のレーベル、La Louisianne(語尾に注目)ですが、私の知る範囲では、"I Got Roaded"のLil' Bob and the Lollipopsが在籍していました。

 "I Got Roaded"は、酔っ払いを歌った人気曲で、Los LobosやRobert Crayが初期のアルバムでカバーしていましたね。
 Lil' Bob and the Lollipopsは、黒人ボーカル&インスト・グループで、"I Got Roaded"はリーダーのBob Camilleの自作でした。

 アナログ盤で、ほかにLa Louisianne盤を持っていないかと思い、King KarlとGuitar Gableあたりを確認したかったのですが所在不明でした。
 (J. D. Millerのアウトテイク集を精力的に出していたFlyright盤だった気もしますが…。)

 いろいろと棚を探っていたところ、灯台もと暗し、92年リリースの英AceのコンピCD、"Lafayette Saturday Night"の曲目に眼が止まりました。
 どうやら、このCDは、La Louisianne関連の音源をコンパイルしたもののようです。

 私は、今回のLP盤でShondellsを初めて聴いたと思いこんでいたのですが、なんと"Lafayette Saturday Night"に、2曲が収録されていました。
 A4の"Memphis"とB5の"Slow Down"です。
 うーん、全く記憶に残っていませんでした。 
 当該CDをお持ちの方は、よければお聴きください。

 さて、The Shondellsですが、私は、Rod BernardとWarren Stormが組んだバンドだと単純に考えていたのですが、どうもテレビ番組ないしはラジオ番組用の(ためだけの)ハウス・バンドのように思えてきました。

 本盤のジャケにも、KLFY-TVというロゴが描かれたTVカメラが写りこんでいます。
 もうひとり、Skip Stewartという人がメインで参加していますが、全く知らない人です。
 そして、各曲名のあとに、カッコ書きで注記したのが、その曲のリード・ボーカルになります。

 アルバム・タイトルの"At The Staurday Hop"が、Rod Bernardがホストを務めた番組名らしいのですが、おそらくは、当時いくつかあったティーンネイジャーがロックンロールに合わせて踊る番組だと思われ、The Shondellsは、その専属バンドだったのではないかと思います。

 また、私の思うところ、番組の演奏シーンではリップ・シンクでやっていて、本盤の中身は、そのかぶせ用に録られた音源ではないかと推察します。

 さて、番組がオンエアされた(と思われる)64年は、ブリティッシュ・インヴェイジョンの来襲の年であり、やっているレパートリーこそ50sという感じですが、その演奏は英国ビート・バンド風のものになっています。
 サウス・ルイジアナらしさは希薄で、ホーン・リフもなければ、三連のピアノもありません。

 完全なギター・バンド・スタイルですね。
 ただ、英国ビート風とはいいましたが、メロディックなマージー系では全くなく、またR&B系をやっているにも関わらず、ロンドン系のような青くさい黒さも感じられない、そんな印象を受けました。
 このあたりが南部なんでしょうか。

 収録曲で、個性が出ていると私が思ったのは、両面のアタマの曲です。
 A1の"Mountain Of Love"とB1の"Mule Train"は、いずれもRod Bernardのボーカル曲ですが、どこかケイジャン・ルーツを匂わせる一味違うなと感じる曲です。

 カバーでは、Warren StormのLittle Richardものが印象に残りましたが、やはりピアノレスが寂しいです。

 そんな中、選曲のセンスで惹きつけられたのが、Skip Stewartが歌う、Jimmy Soulの"If You Want To Be Happy"です。
 原曲は、ポップで能天気なアーリー・ソウルで、どちらかといえば関心が薄い曲でしたが、こうしてギター・バンド・アレンジで聴くとなかなか新鮮です。

 …とはいっても、サプライズ効果で点数が甘くなっていますので、もし本盤を入手されたなら、ハードルを上げずに虚心で聴いてください。

 多分、番組は短期で終了したのではないかと思います。

 本盤は、スワンプ・ポップ・ファン向けのコレクターズ・アイテムでしょう。




If You Wanna Be Happy by Jimmy Soul





関連記事はこちら

スワンプ・ロッカーの休息
リトル・スワンプ・ドラマー・ボーイ



ブルー・アイド・ハンサム・マン

 これはかっこいい !!
 事前に期待していなかっただけに、嬉しさはひとしおです。
 今回は、スワンプ・ポップ・レジェンドの一人、T. K. Hulinが07年にリリースしたアルバムをご紹介します。

 本CDは、Gulf Coast Soul Recordsなる会社から出されていますが、No.が2001ときれいな番号であり、あるいはこのCDを出すために作られたレーベルかも、などと想像してしまいます。


Larger Than Life
T. K. Hulin

1. Get Up, Get Down (K. Gamble, L. Huff)
2. Hold Me, Thrill Me, Kiss Me (Harry Noble)
3. It's Not Unusual (G. Mills, D. L. Reed)
4. I'll Still Be Your Friend (Eddy Raven)
5. Hard To Be (Dyle Bramhall, Stevie Ray Vaughan)
6. It Turns Me Inside Out (Jan L. Crutchfield)
7. Having A Party (Sam Cooke)
8. Don't Fight It (Steve Cropper)
9. Riding With The King (John Hiatt)
10. I'm Gonna Find Another You (John Mayer)
11. Hallejulah, I Love Her So (Ray Charles)
12. You Raise Me Up (B. J. Thomas, R. U. Lucland)
13. Unconditional (Bryant, Hengber, Rutherford)

 T. K. Hulinは、本名をAlton James Hulin(ヒューラ? 英語風ならヒューリン)といい、T.K.というのはニックネームで、彼のおじさんが付けたらしいです。

 残念なことに、そもそもの意味は明らかにされていません。
 でも、彼の友人たちは、何か理由があってのことか、あるいはT.K.という文字に後付けしたのか不明ですが、"The King"という意味で使っていたらしいです。
 The King Hulinというわけです。 

 ルイジアナ州出身で、おそらくケイジャンだと思いますが、情報があまりなく、どちらかと言えば、シンガーとしてより、ソングライターとして認知されている人なのかも知れません。

 代表作は、63年にリリースした"I'm Not a Fool Anymore"で、Doug Sahmを筆頭に、多くのシンガーにカバーされているスワンプ・ポップの名作のひとつです。
 翌64年には、"As You Pass Me By Graduation Night"を発表し、この2曲が代名詞的な存在になりました。

 さて、T. K. Hulinですが、彼の音源は現在あまり流通していません。
 オリジナルLP(?)では、78年にHuey P. Meauxが制作したCrazy Cajun盤、"As You Pass Me By Graduation Night"があり、編集盤ではStarflite盤(これもMeauxのレーベル)の"Hit Memories By T. K. Hulin Volume One"というものがあります。
 (…Volume Twoが出たかどうか不明です。)

 私は後者は未入手ですが、収録曲は、サイト掲載の裏ジャケ写真から読み取ったところ、70年代以降の録音だろうと思います。
 
 初期のシングルのいくつかは、当初LK(自主制作盤?)から出され、まもなくスマッシュから全国配給されたと思われます。

 こういった60年代のシングルは、LP化されているのでしょうか?
 単独はむりでも、マーキュリー系のレーベル・コンピに収録されている可能性はありますね。

 CDでは、私の知る限り、HulinのオリジナルCDは、07年リリースの本盤だけです。
 編集盤では、99年に英Edselから出された、"I'm Not a Fool Anymore 〜 Crazy Cajun Recordings"があり、現在最も入手しやすいものだと思います。 
 中身は、78年のLP、"As You Pass Me By Graduation Night"の収録曲全てに加え、さらに"Hit Memories By T. K. Hulin Volume One"の一部が含まれています。(…と思います。)

 そろそろ内容に触れていきましょう。
 本盤の参加ミュージシャンは、以下のとおりです。

T.K. Hulin - vocals
Charles Ventre - keyboards, vocals
Tony Ardoin - electric/acoustic guitar
Mike Burch/Larry 'B-Lou' Hulin - drums
Larry Badon - bass
The Bayou Soul Horns ;
Jason Parfait - tenor sax
James Spells - trumpet
Alex Melton - baritone sax
Guests ;
Richard Comeaux - pedal steel
Beau Thomas - violin
Tony Daigle - acoustic guitar, triangle, percussion
Roddie Romero - slide guitar
George Toups - bass

 そのサウンドは、78年のCrazy Cajun盤のイメージ(ゆるいカントリー風の仕上げ)とはまるで違い、タイトで躍動感あふれるバンド演奏がかっこいいです。

 例えて言うなら、Delbert McClintonに近い感じをイメージしていただきたいです。
 スワンプ・ポップというより、ブルージーなロック、またはファンキーなソウル・レビュー風の曲が次から次へと出てきます。
 ベタに言うなら、ブルー・アイド・ソウル・アルバムです。



 1曲目の"Get Up, Get Down"からして、スピード感満点のソウル・ナンバーで、ギャンブル、ハフ作となってますが、私は原曲を知りません。
 フィリーっぽい大甘なストリングスを排除したアレンジで、甘茶系の方には不満かもしれませんが、私は好きです。
 このスリリングなアタマの1曲で、本盤が傑作だろうという予感がしてきて、わくわくしました。

 軽快かつジェントルな" Hold Me, Thrill Me, Kiss Me"で、Hulinの素晴らしい咽喉に痺れます。

 そして、続くのは、Tom Jonesの"It's Not Unusual"です。
 この曲は、何かのTVCFに使われていたので耳になじんでいますね。
 オリジナルの強烈な印象が強いですが、Hulin盤も負けていません。
 アベレージ以上の出来だと思います。
 ただ、この選曲は少しサプライズでした。

 次の"I'll Still Be Your Friend"が、心に染み入るような素晴らしいバラードで、原曲は何でしょう?
 美しいピアノのバックに流れる、流麗なラップ・スチールの調べが隠し味になっています。

 そして、驚きの1曲が登場します。
 Vaughan Brothersが唯一のアルバム、"Family Style"でやっていた"Hard To Be"です。
 これはもう、曲自体が問答無用の名曲のうえ、ここでのカバーも素晴らしいです。
 基本的に、オリジナルのアレンジを生かした仕上げになっていて、かっこいいホーン陣を従えた2本のギターが最高にスイング&ドライヴしていて、言うことなしです。
 これは、ドイル・ブラムホール(息子の方?)とレイ・ヴォーンの共作だったんですね。

 "It Turns Me Inside Out"は、どこかで聴いたようなメロを持つ曲です。
 サッドかつムーディな曲で、サビこそわずかに違いますが、これはElvisで有名な"In The Ghetto"を連想せずにはいられない曲です。
 曲としては、私は"In The Ghetto"よりも好きです。
 ちなみに、"In The Ghetto"は、Bobby Blandもやってましたね。

 "Having A Party"は、説明不要の有名曲ですね。
 彼の唱法からは、特段、サム・クック・フレイバーは感じませんが、次のビケットの"Don't Fight It"と同様、オリジナルを意識しつつも、無理につくろうとはせず、自分らしく歌っているのがとても好感が持てました。
 この力強いソウル名曲の連発は、バラード曲の後を受けて、素晴らしく効果的な配置になったと感じます。

 そして、またまた予想外の選曲が来ます。
 John Hiatt作の"Riding With The King"です。
 Hiattの曲としては、それほどの良曲でもないですが、クラプトンが取り上げたため有名になりましたね。
 まあ、あれはB. B. Kingとの共演盤という意味からチョイスされたんでしょう。
 ここでもバンドの一体感が素晴らしいです。

 Ray Charlesの"Hallejulah, I Love Her So"は、手垢のつくほどの有名曲ですが、Sam Cookeから、Wilson Pickettときて、この曲がくると、改めてT. K. Hulinの音楽人生の原風景みたいなものが感じられます。

 Hulinは、ケイジャンやカントリーに負うところも多いはずですが、本盤は、とりわけブラック・ミュージックへの愛情を強く打ち出した1枚になりました。
 "Hallejulah, I Love Her So"は、イントロを聴いた瞬間から、悪くなりようがない、そう感じさせる力強い仕上がりになっています。

 そして、美しいピアノの伴奏が素晴らしい、ドラマチックなバラード、"You Raise Me Up"が聴き手を厳かにクロージングへと導いていきます。

 ひいき目もありますが、この際、傑作アルバムだと言い切ってしまいましょう。




Hard To Be by T. K. Hulin




関連記事はこちら

スワンプ・レジェンドの帰還







リトル・スワンプ・ドラマー・ボーイ

 今回は、またまたアナログLP盤です。
 去年オークションで入手しました。
 ジャケ・デザインがいまいちなので、本人のスナップも併せて貼っておきます。

 本盤は、78年にCrazy Cajun Recordsからリリースされました。
 まちろん、制作はHuey P. Meauxです。


Family Rules
Warren Storm

Side One
1. Your Kind Of Love (Huey P. Meaux)
2. Honky Tonk (Doggett, Scott, Butler, Shepherd)
3. They Won't Let Me In (Wolfe) 
4. Don't Fall In Love (Huey P. Meaux)
5. Four Dried Beans (Huey P. Meaux) 
Side Two
1. I'll Walk Alone (77-73) 
2. Don't Let It End This Way (Kerney Ravet) 
3. Love Me Cherry (77-74)
4. Jack and Jill (Joe Bernice Jr)
5. Family Rules (Guitar Jr.)

 今回の主人公、Warren Stormについてはあまりよく知りません。

 比較的有名なのは、彼の音楽人生がスタジオ・ミュージシャンとしてスタートしたということです。
 サウス・ルイジアナでは、ちょっとしたセッション・ドラマーだったらしいです。



 他人の伴奏からスタートしましたが、50年代の終わり頃に、シンガーとしてシングルを出します。
 その後、ローカル・レーベルを渡り歩いたのだと思いますが、LPは作られなかったのだ思います。

 そして、90年代以降になり、ソロLPデビューしますが、それ以前のシングル時代は、現在でもまとまったリイシューがなされていません。
 (細かく言えば、LPは、一時期Rod Bernardと組んでいたバンド、The Shondells名義のLP(未CD化)があります。…Tommy Jamesとは無関係です。)

 さて、彼は、ヴィンテージ・スワンプ・ポップ・シンガーの一人として知られていますが、スタジオのドラマーとして、ときどき「おっ」というセッションに参加していたりして驚かされます。
 (Lazy Lesterの50年代のExcello録音、"Suger Coated Love"でドラムを叩いていますので、他にもJ. D. Miller関連のアーティストの伴奏をしていてもおかしくないはず…と推測します。)

 ヴィンテージ期の自身の録音では、58年に"Prisoner's Song"というスワンプ・ポップの佳曲をNasco(NashboroのR&B部門)から出していて、同曲はJohnnie Allanなどもカバーしていたはずです。
 また、Roy Head盤とは同名異曲ですが、"Mama Mama Mama"という曲もあります。

 そのほか、70年代以降にはサザン・ソウル風の伴奏を使った曲もあり、興味深いですが、南部系よりも、むしろBen E.Kingの隠れた(?)名曲、"Seven Letters"のカバーが秀逸でした。
 (お馴染み英Aceの名コンピ、"Louisiana Saturday Night"で聴けます。)

 その後、ソロ・シンガーとして、ミレニアム以降も数枚のアルバムをリリースしており、息の長い活動をしている人です。
 そのスタイルは、若干Rod Bernardに近く、例えて言うならスワンプ・ロックンローラーという印象です。



 また、近年では、ルイジアナのオールスター・バンド、Lil' Band O' Goldにも参加して数曲でボーカルを担当していました。
 Lil' Band O' Goldでは、"Seven Letters"の再演もありましたね。

 Heuy P. Meaux関連の音源では、00年に英EdselからリリースされたCD、"King Of The Dance Halls 〜 Crazy Cajun Recordings"が貴重なソフトです。
(流通しているうちに入手しましょう。)

 ここには、古き良き時代のスワンプ・ポップの空気感と同種の香りが、そこかしこに感じられます。
 このCD収録曲の録音ソースははっきり分かりませんでしたが、今回のLPの収録曲が数曲チョイスされていましたので、70年代後半の音源が加わっていることが判明しました。
(私の思うところ、80年代の音源も混ざっていると思います。)

 本盤の曲のうち、英EdselのCD(26曲入り)に収録されているのは、以下の6曲です。

Side One
3. They Won't Let Me In 
4. Don't Fall In Love
Side Two
1. I'll Walk Alone 
2. Don't Let It End This Way 
3. Love Me Cherry 
4. Jack and Jill 

 "They Won't Let Me In"は、Rod BernardやJohnnie Allanを連想させるギター・ロックンロールで、なかなかかっこいいですが、彼らと同様、どこかほのぼの感を感じます。

 その他の曲は、いずれもミディアム〜スローのバラードで、それぞれ味わい深い魅力があります。
 コーラス入りのおセンチなミディアム・バラード"Don't Fall In Love"、オルガンを伴奏に使ったスワンプ・ポップの"Love Me Cherry"、ピアノの三連バラード" Don't Let It End This Way"あたりの定番感は、保守的な私には、それぞれが安息の1曲です。

 また、"I'll Walk Alone"は、Fats DominoスタイルのニューオリンズR&Bで、ころころと転がるピアノが耳に心地よく、これまた安心して聴けます。
 "Jack and Jill"は、軽快で小粋な良曲で、グッドタイム・ミュージック風のホーン・リフに癒されます。

 そして、未CD化曲では、何といってもA面1曲目の"Your Kind Of Love"が注目です。
 このHeuy P. Meaux作とクレジットされている曲は、ほとんどDoug Sahmの"She's About A Mover"と同じ構成で作られた曲です。
 オルガンの伴奏から、アーリー・ソウル風のグルーヴ、サビ前のタメやブレイクのタイミングまでそっくりです。
 オリジナルのギター・ソロがあるので良しとしましょう。

 ビル・ドゲットの大有名曲、"Honky Tonk"は「?」で、まるで別の曲に聴こえます。
 ここでは、Joey Longぽいブルージーなギター・ソロが聴けます。

 そして、Guitar Junior作とクレジットされているラストの"Family Rules"は、本盤の中では少し残念な出来で、ストリングス入りの大甘のアレンジにしてしまったスワンプ・ポップ・バラードです。
 間奏で、セリフの語りがあるのが面白いです。
 本曲に関しては、Guitar Junoior盤の、ぶっきらぼうながらも愛すべきボーカルと、緊張感のあるバックの圧勝でしょう。

 とはいえ、本盤は、Huey P. Meauxのこの時期のプロデュース作にいくつか散見する、安易なカントリー寄りの制作には陥ることなく、主役のパーソナリティを尊重した仕上げになっていると思います。



Seven Letters by Warren Storm & Willie T.


Ben E.のオリジナルが聴きたくなったでしょ?




関連記事はこちら

70年代 Crazy Cajun LPs

土曜の夜は流れるままに
トミーのお気に入り
土曜の夜のショータイム
スワンプ・レジェンドの帰還
シャーリー&カンパニー、しばしばジェシー
スワンプ・ロッカーの休息
カオスの人、ジョゼフ・ロンゴリア
マーゴはルイジアンナ







    >>次へ
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。