2011年10月22日
にんきょう病院
今野 敏著
出版:実業之日本社
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「人情と任侠の阿岐本組が、傾いた病院の再建に乗り出した」で始まるこの小説「任侠病院」は阿岐本組シリーズ第三弾です。
ただし”阿岐本組シリーズ”とは何処にも書いていません。
きっとあまり続けるつもりはないのかも知れません。
と言うのも、この物語の任侠の阿岐本組だからです。素人衆には手を出さないのが阿岐本組の信念とはいってもやはり一般の人とは違うのが彼らです。
第一弾で永神組から持ち込まれたのは「処分に困ったわけありの倒産寸前の出版社」、第二弾で持ち込まれたのは「処分に困ったわけありのつぶれかかった学園」。それらを見事再生させた阿岐本組は別に経営コンサルタントでも、企業の再生を生業とする再生屋でもなくやくざです。単に組長の気まぐれで引き受けています。それがどういうわけかうまく問題解決して再生していきます。今回の第三弾では「つぶれる寸前のわけありの病院」です。
企業や病院などが傾いていくには理由があります。“人・物・金”この三つのうちどれかに問題が発生し、そのほかのものまで巻き込んで問題が根深くなるからです。今回の場合はと言うと、まずは金です。清掃や食事などを委託していた会社がなんと指定暴力団のフロント企業で、他社よりも明らかに高い費用をその企業に支払っていたことから始まっています。病院に活気がなくなり、薄汚れた概観、患者を拒絶するかのような思いガラス戸の入り口、そして薄暗い待合室。従業員の心もどんどん暗くなっていくのもむべなるかなと言う所です。
そんな所に乗り込んで理事会の監査になった阿岐本組 組長のすることは以前と同じ、まずは掃除をして環境をよくすること。そして病院をきれいに明るくすることでまず従業員の心に火をつけます。やる気になった彼らは委託していたフロント企業の嫌がれせにも負けず全員が一体となって立ち向かいます。そしていつものように暴力団との対決が始まります。ところがこの物語では暴力団同士の抗争と言うような暴力的なところがあまりありません。
組長たちがどのように抗争をせずに問題を解決するのか?阿岐本組の地元を巻き込む対抗勢力とのやり取りは情報戦ともいえるものです。結局は企業同士の経営戦争と同じとも言えるものです。何処まで真剣に命をかけて問題に対処しているのかと言うことなのかも知れません。
心の折れかかった人にもオススメの一冊です
しょうが紅茶は金時しょうがが主成分です
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