並行在来線開業物語...最終回

 平成27年3月13日、いよいよ開業を翌日に控え設備の切換え作業が開始になりました。
 順調に見えた切換え作業ですが、全く想定していなかった事が起こりました。

 架線凍結

 トロリー線の表面に氷の膜ができて、パンタグラフを上げても電気が流れず、列車は運行できません。

○疫病神??

 架線凍結は既存路線では過去に何度か経験があります。
 寒冷前線などの通過で雨天から急激に気温が下がった時など、雨が過冷却状態になって物にあたった瞬間に凍ってしまったり、今回のように単純に雨で濡れた部分が凍ってしまったり。
 いずれにしても雨から急に気温が下がった時は注意しないといけない現象です。
 しかし、注意しても凍結そのものを防ぐことは不可能なので、除去をするしかありません。
 結果論ですが今回のように作業員がほぼ全員で切換作業にあったっている中では人員を割くのは不可能でした。

 それはともかく、JRも協力に来てくれました。
 車で移動しながら何箇所か確認した限りでは、それほど酷い凍結でもなさそうとのことでした。

 ところで、後から聞くとJRの方もパートナー会社の方もこの路線での架線凍結は過去に聞いたことがないとのこと。

 なんとも...俺らは疫病神かい...

 そんなこともあって、実のところまだこの時はみんな少し軽く考えていたのは否めませんでした。

○我慢大会

 JRのパートナー会社が軌陸車を準備してくれましたが、「それほど酷い凍結ではない。」そんな判断もあって、除去作業は行わずパンタグラフに霜落とし用のステンレス板をつけた「カッターパン」をつけて運行することを提案しました。
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 また、本来3両編成で運転するはずだった一番列車を3両+2両の5両編成で運転することにしました。
 こうすればパンタグラフは3両と2両のそれぞれに1つずつあるので計2つになり、1本目のカッターパンで氷を落として2本目のパンタで集電して進むことが期待できるとのこと。

 頼もしいなぁ

 と思っていたのですが、北しなの線用にJRから購入した列車はしな鉄がすでに持っている列車とはパンタの形式が違います。
 しな鉄が持っているカッターパンは取り付けることができません。
 で、先に書いたように、この区間では過去に架線凍結が問題になることは無かったため、カッターパンの用意はしてなかったとのこと。
 これも急遽JRが用意してくれたようです。

 何はともあれ、これを取り付けて一番列車が出発しました。
 しかし、パンタグラフのアーク火花がひどくてなかなか速度が上げられない様子。
 また、各駅で止まってはパンタグラフを確認し、溶損がひどければ交換し、少しずつ進みます。
 そうこうしているうちに目の前を通過していきました。

 !!!!

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 パンタは青白いアークどころか、火の玉になっていて人玉のようです。(人玉は見たことはないですが...)
 「よく走ってるなぁ...」
 とにかく空は雲一つない晴天、日が出てくればすぐに解け落ちるはず。

 がまんがまん...

○出発式

 一番列車は牛歩でなんとか終着の妙高高原まで、一時間以上遅れて到着しました。
 結局、その後続の列車は1往復運休となりました。
 しかし、予想通り日が出るとともに架線凍結はほぼ解消し、先程妙高高原に到着した一番列車の折り返しからほぼ所定の速度で運転できるようになりました。

 8時半頃に長野駅で予定されている出発式も無事に行うことができそうです。
 北陸新幹線の出発式に出席した人たちがほぼそのまま来る予定になっていましたし、報道もかなりの数になっていました。
 これで出発式ができないとなれば大変なことになっていたと思います。
 (そうでもないかな???)

○そして開業

 そして開業

 4年間にわたって準備をし、打合せをし、改良工事を進め、時には言い争い、いやな話もしました。
 お金が絡むと嫌な話にもなるもんです。

 その点、技術の話はまだ前向きだったように思います。
 JRとしな鉄の双方の技術者が知恵を出し合い、課題を解決しながら協力して実現しました。
 やっぱり技術屋で良かったと思いました。

 いい思い出ばかりではありませんが、非常に勉強になった4年間でした。

 さて、一年以上かけて、こちらも牛歩で進んできた「並行在来線開業物語」は今回で終了です。
 北陸新幹線は乗降人数が開業から非常に好調に推移しています。
 今年開業した北海道新幹線ともよく比較され、成功として報道されていますが、それに伴ってできた並行在来線は新幹線を光とすれば影の部分として取り上げられます。
 経済の世界では影になるかもしれませんが、地元にとっては生活の重要な足になっていると思います。

 経済の観点では新幹線の方が重要、でも地元の人の生活にとっては在来線の方が重要です。
 それぞれの価値はそれぞれのもの。
 第三者が自分の価値観で決めるものではありません。

 もっとも、私がここで熱弁をふるって決めるものでも当然ありません。
 私たちは日々の安全安定輸送のために努力するだけです。



 さて、この話はこれで終わりです。
 ブログの閲覧者も少ないので気楽に始めたこの話ですが、おかげさまでと言いますが、徐々に閲覧数が増えてきました。
 「こんな事まで書いても良いだろうか?」と思う事もだんだん多くなってきました。

 もし、もし万が一、1日の訪問者が3桁になったら、この話はそっと非公開設定にしようと思います。

 最後までありがとうございました。




おしまい...

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プロフィール

デンマニ
鉄道会社に転職しました。 鉄道って独特の世界だなぁ... こんなに危険が伴うお仕事とは思わなかった。


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