並行在来線開業物語...その9

 その8では切換えリハーサルまでの話をしました。
 ちょうどそのくらいから、当夜の切換時の備えについても議論されるようになりました。
 具体的には「切換えにスベったらどうするの???」ということ。

○万が一に備えて

 これまでの中でお話したように、開業前日まではJRが運行し、開業日の始発からしな鉄が運行します。
 つまり、開業前夜にそれまでJRの指令につながっていた通信回線をしな鉄の指令につなぎ変えます。
 単純に線をつなぎ替えるだけならまだ良いですが、若干の改修をかけながら切換えていきます。
 また、正常に動くか、試験も行い確認しながら順に切換えていきます。

 ここで整理して置かなければいけないのが「万が一、切換わらなかったらどうする?」ということです。

 もちろん何年もかけて検討し、個別には実際に切換えて接続試験も行い、リハーサルを何度も行って心配事は潰しました。
 しかし、万が一ということは必ずありえます。
 ヒューマンエラーだけではなく、天災もあります。
 まず真っ先に心配されたのは「大雪」でした。

○豪雪線区です。

 信越線の長野〜直江津間、特に牟礼、黒姫あたりから北は豪雪線区です。
 しかし、この大雪に関してはすぐに結論が出ました。
 切換え当日に大雪が降った場合、切換作業自体はできますが、切換えたところで夜間に除雪作業が行われなければ始発からの運行は不可能です。
 かと言って、夜間に除雪作業をすれば、除雪車の運行にも指令設備を使用するので切換え作業ができません。

 大雪が降った場合には切換えと始発からの運行を両立させることは不可能です。
 指令設備の切換え作業が始まれば、JR側は当該区間だけでなく、その周辺まで指令設備が使えず除雪作業ができなくなります。

 大雪、つまり天災の話をし始めると人災、というか事故の心配が出てきます。
 例えば当日に踏切事故でもあったら、車両故障で当該区間に列車が立ち往生したら。
 それこそきりがないのですが、内容はどうであれ大雪のような天災や列車事故の場合は、状況を見ながら切換対策本部で切換を行うかどうかを判断することとしました。

○作業の中止

 作業開始の判断については整理できましたが、さて、切換作業中に何らかの理由で作業の継続が困難になった場合はどうするか。
 元へ戻すのかどうか。

 これも結論から先に言えば、元に戻す方がリスクが大きいという結論になりました。
 作業はすべて手順書とチェックシートに従って進めます。
 間違いを起こさないためには当たり前のことですが、作業を中断して元に戻すにもやはり手順書とチェックシートが必要です。
 が、これは戻しを判断した時点からの手順書が必要ということですから、それこそ無数のパターンの手順書が必要になり、それを事前に想定して用意しておくのは現実には不可能です。
 そもそも、戻したところで、では誰がどのように運行管理を行うのか。
 「すみませんけどJRさん、もう一日だけ指令をお願いします。」とはいきません。
 指令業務を他社に委託する場合は事前に運輸局の認可が必要だからです。
 着手したら後戻りはできません。

 ここまで大枠が決まってしまえば、後はとにかく考えられるリスクを洗い出してそれに備えるだけです。

 「作業員が移動中に事故をおこす」なんていうのから「機器故障の発生」などなど、保安上ここには書けないことまで色々、考えられることにはすべて備えました。
 あとはとにかく天災や事故に見舞われないように祈るだけとなりました。



つづく......

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プロフィール

デンマニ
鉄道会社に転職しました。 鉄道って独特の世界だなぁ... こんなに危険が伴うお仕事とは思わなかった。


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