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2015年12月21日

23 年下君×私=不倫

年下君と付き合って行く上で、話し合わなければならない事柄が 幾つか有った。

先ず、会う時間帯、場所、頻度について。



「昼間は駄目だよなあ。やっぱり夜になるよね…」

「そうだね、年下君のお仕事が終わってから会うくらいが一番 丁度良いのかもしれないね。場所も、ご飯を食べに行くだとかは絶対に出来ないね…」

「だよなあ。車の中か、完全なる個室か…」

「ねえ、会う頻度は月に一回程度が良いよね?」

「確かに、それくらいが良いと思う。それ以上、やたらと会って油断していたらバレると思うしね…」



これらの決め事は、想像以上に 苦しかった。

だって私は、全てに対して こう返して欲しかったのだもの。

「嫌だ!俺は私ちゃんと、もっと会いたい!どうにかしようぜ!いや、俺がどうにかしてやるぜ!くっそー!」



冗談のようで、本音(笑)

しかし年下君は、至って冷静だった。

それは 有り難いと思うべきなのかもしれない。

だけど我儘な私にとっては、凄く寂しい反応と感じさせられてしまった。



私は、思わず 支離滅裂な質問を年下君に投げ掛けた。

「ねえ、当たり前だけれども…一緒になる事は出来ないんだよね?私、年下君の事が好き過ぎて、ヤバいかも。」と、呟きながら 声が震えてしまった。

本気なんかじゃない、だって私には大切な家族が居る。

けれども どうしようもなくとも、聞いてみたかったのだ。

だって これは、不倫だから。

たわいもない話で構わない、幸せな気持ちを一瞬でも共有出来るのならば、例え それは嘘であっても嬉しい筈なのだ。



でもね 年下君は、嘘を吐かない年下君は、こう返したのだった。

「私ちゃん?冷たく聞こえるかもしれないけれど…私ちゃんと俺が、同じ墓に入る事は無いと思う。もし、私ちゃんに子供が産まれていなかったなら、俺は私ちゃんを旦那さんから奪いに行っていたよ。でも、子供の存在だけは 駄目だ。それは絶対に どうにもならない事なんだよ。だから、一緒になる事は出来ない…それと、」



次いで、究極の一撃を 私は年下君から与えられる事となるのであった。

22 年下君×私=不倫

「ただいまー、遅くなってゴメンね」と、いつもと同じように申し訳無さそうな表情をする旦那。

変わらない、そう、どうしたって 変わらない日常なの。

だけど私の心中は、年下君に対する不安感でいっぱいだった。



(捨てられたのかな…辛い、吐きそう、ううう…)



そして、旦那と子供の間に挟まれ ベッドの上で横になる。

眠れる筈が無かった。

ひたすら失恋の曲を探しては、延々と聴き続けて涙を流していた。(ホラーは続く)



当然に よく眠れないまま、翌日のお昼を迎える。

すると

「ただいまー!今から ちょっと眠るね^^」と、年下君からのメール。

私、その場で泣き崩れてしまった。



(夜勤かよ!聞いていないよ!でも、年下君と繋がっていられた…うっうっ、)



病的過ぎる程、私の心は年下君に奪われてしまっていたんだ。

夕方になって、年下君と電話をした。



「私ね、ヤリ捨てされたのかと思っていたんだよ…」

「えーっ!夜勤って言ったよね?」

「言ってないよお…辛くて辛くて、何度も携帯を見ていたんだよ…うっ、うっ、」

「言ったつもりになっていたのかな…私ちゃん、泣くなよー…ゴメンね。てか、捨てる訳が無いじゃんか。そんなの俺、最低過ぎるでしょ(笑)俺、本気で私ちゃんの事が好きなんだから。俺達、ちゃんと付き合っているんだから…泣かないで?」



神様、私 年下君の事を何処まで好きになってしまうのかな?

怖いです…

21 年下君×私=不倫

朝は当たり前のように、私の元にも訪れる。

いつも通りの日常が、始まるのだ。

そこに私の気持ちを心配する姿だなんて、何処にも見当たらない。



この日、年下君は夜勤であった。

夜勤の日は、連絡が翌日の昼まで取れない。

だが、夜勤で有る事を、年下君は私に言いそびれていたのだ。



実家から我が家へと戻り、子供と遊びながら家事をこなす。

変わらない、変わらない生活だ。

だけど。私の心だけが、完全に年下君に奪われていた。



夜勤で有る時は事前に教えてくれる為、私は日勤で有ると思い込んでいた。



(夕方になれば、年下君から連絡が来る。楽しみだなあ…)



年下君からの連絡を待つ時間が、とてもとても。長く感じた。

もしかすると本当は、昨日の再会で幻滅されているかもしれないとの不安が頭に有ったからだ。

それだけ、年下君に私は夢中だった。



定時を過ぎる。しかし、年下君から連絡は来ない。

十八時、十九時、二十時…

時間の経過と共に、胸が張り裂けそうな思いがしていた。



旦那が帰宅する。

20 年下君×私=不倫

帰宅すると、真っ先に子供の居場所へと向かった。

私の姿を見付けた瞬間、大喜びでヨチヨチと走って来る子供。

抱き締めながら、私の胸中も一緒に、痛い程まで締め付けられた。



(どうしようもないお母さんで、ごめんね…ごめんなさい。ごめんなさい。)



その時、母から、

「私ちゃん。男と会っていたんじゃないでしょうね?」

と言われたのだ。咄嗟に私は、

「そんな訳ないじゃん!結婚しているんだよ?そんな馬鹿馬鹿しい事しないよー(笑)」と返した。



女の勘は、末恐ろしい。

と同時に、何が有っても、年下君との関係は周囲に気付かれないように気を付けなくてはいけないと悟った。



(貴方の娘は、人間の底辺へと成り下がりました。南無。)



子供を寝かせた後、そうっと、お風呂に入った。

衣類を脱ぐ瞬間、ふわあと年下君の匂いが漂ってくる。



(夢じゃないんだ。さっきまでの時間は、これは、現実なんだ。)



体を洗い流しながら、私の心は、どうにも落ち着かなかった。

年下君に会えた喜びと、年下君が私を受け入れてくれた幸せと、家族を裏切っている罪悪感と、後戻り出来ない感情への不安と…。

ぐわんぐわん、どろどろどろどろ。

頭の中では、数え切れない想いが何度も生まれていた。駆け巡っては消え、駆け巡っては消え…。



布団に入ると、それは、完全なる罪悪感へと変わってしまっていた。

自然と涙が伝う。旦那は仕事が忙しいようで、連絡が着ていない。

何も知らず、家族の為に働いてくれている旦那が、変わらず居るんだ。



(もう、年下君に会ってはいけない。それだけは、分かる。だけど…。好きだ。どうしようもなく、年下君の事が好きだよ。馬鹿だ、私、本物の馬鹿だ。辛い、辛いだなんて言える立場じゃないけれど…こんなのって。この気持ち、抑え切れないよ…)



年下君からは、連絡が着ていた。

「会えて幸せだった。また必ず会おうね。でも、絶対にバレないよう、しなくちゃいけないな。これからの事、会う頻度だとか慎重に考えないと。大変だけれど、どうにかなるよ。私ちゃん、好きだよ。」



それは、年下君と私の関係が、この先も続く事を示していた。



(神様、もう少しだけ。年下君を好きで居させて下さい…)



数年振りに味わう感覚だった。

久々で慣れていないせいなのか。それとも。

この恋、私の手に負えないかもしれない。



その日の夜、私は一睡も出来なかった。

音楽を聴きながら、年下君との出来事を思い出しては、延々と泣き続けていた。

19 年下君×私=不倫

「あと少しで、時間だ。」

「そうだよね…親御さんも子供も待っているよね。」



二人、フロントガラスから静かに夜空を眺めていた。

一つだけ。年下君に聞きたい事が、私には有った。



「ねえ、今、良い感じの女の子とか居ないの?」質問をしながら、緊張が走る自分に気付いてしまった。

「正直…一昨日の飲み会で、会社の年下の女の子から連絡先を聞かれた。その子、彼氏が居ないらしくて。話を聞いた先輩達が、酔った勢いで会社の男性の中で誰が好みか質問をしたら、俺の名前が出たみたいで。そのまま俺が先輩達に呼ばれて、連絡先を交換し合う流れになった。…ごめんな?」



(…うっ。ぐ、苦しい。こんなにまでものダメージを喰らうとは。がはあっ)



動悸が止まらなかった。だけど私は、どうにか笑顔で年下君に言葉を返した。

「うわあー…。でも、当たり前だよね。年下君、絶対にモテるもん。モテる人、嫌だわー(笑)…連絡、取り合っているの?」

「やっぱり気にしているんじゃん!(笑)連絡は来るから、少しずつ遣り取りしているけれど…私ちゃんの方が全然多いし。それに、その子とは付き合わないから大丈夫だよ。私ちゃんの方が何百倍も可愛いし、性格も良いし。」

「いやいや!年下君と同じ会社の子なら、しっかりしているだろうし、付き合った方が良いよ!そういう子と結婚すべきだよ!」

「えええっ(笑)まあ、そのまま共働きすればお金は多く入るだろうな…なんて考えたりはするけれど。結婚か…そういうものなのかな…(笑)」



私の言葉は、嘘。いや、本物?自分の気持ちが分からなくなっていた。

何にしても、私に年下君の恋愛を邪魔する権利は無いのだ。



(年下君との未来は無い。当たり前だ。これが現実なんだ。…あーあ、未だ一緒に居たいよ。もう少しだけ、お願い…)



年下君も、それと同じ気持ちだった。

年下君と私、どちらが先に誘ったかは覚えていない。いや、どちらからともなく、後部座席へと移動した。



「帰したくない。」

「私も、もっと一緒に居たいよ。」



気が付けば、年下君の腰辺りを目掛けて抱き付いていた。



(離れたくない、このまま、離れたくない。好き、大好き。神様、ごめんなさい。)



「うわっ。そんな事されたら、俺、止められなくなるよ?」

きっと私は、こうなる事を心の何処かで望んでいた。

気付かない振りをしていただけで、本当は全て、最初から分かっていたのだと思う。

ずるい。あざとい。最低な人間だ。



年下君に抱き起こされ、私達は見つめ合った。
それから直ぐに、ぐっと抱き寄せられ、激しく抱き締められた。

年下君の逞しい腕の感触、厚い胸板…全てが、とても懐かしかった。大好きだった。



お互い、相手の距離を測るかのように、探り探りのキスをし始めていると年下君が、

「もう、駄目だ、止まらない…」そう言って、私のブラウスのボタンを外しに手を伸ばして来た。



私は、結婚をして、子供を産んで…完全なる母親になったと思っていたんだ。

もう二度と、恋なんてしないと本気で信じていた。



それなのに。現実は、意志の弱い女でしか無かった。

だけど。この上なく、幸せだった。泣けてくるくらい、幸せを感じさせてくれた。

頭の中、ふわふわ。心地良くって。



数分後、父からの大きな着信音で現実へと引き戻された。

「時間、過ぎているけれど大丈夫?」

「あっ、ちょっと友達と話し込んじゃって。もう直ぐで帰るから!」思わず大き目な声を出してしまい、慌てて電話を切った。



「ごめんな。急いで送るから。」

「うん、ありがとう。」

「私ちゃん、今日は会ってくれて、嬉しかった。本当に有り難う。私ちゃんと会えて良かった…また、会いに行くからね。」

「…うん。」



私は、どっと疲れ果てていた。

たった一時間半の出来事。でも。経験した事の無いくらい、濃密な時間に思えた。



(今は未だ、何も考えないでいよう。余韻に浸っていよう。問題は、それからだ。)



この先には想像を遥かに超える、地獄のような自分との戦いの日々が待ち受けているだなんて。

私は知る由も無かった。

18 年下君×私=不倫

車内には、年下君の香水の香りが漂っていた。

「あー、私ちゃんの香りがする。やっぱり良い香りだ。…ごめん、俺、やばいわ。止まらなくなりそう…」と、運転をしながら年下君が呟いた。



あまりにも予想外な反応だった為、私は思わず身構えてしまった。



(えええっ。絶対、会って数分で帰られると思っていたのに…嬉しいけれど、これは良くない展開だよ!こんなの…うげええええ)



年下君は、私に話し掛ける度、ちらりと横目で私の顔を覗き込もうとしていた。

「嫌っ!こっち、見ないで下さい。もう、帰りたいです!帰して下さい!」

「えーっ(笑)でも、俺も緊張しているんだよ。あー…これ、言っても良いのかなあ。ダメだよなあ。」

「…何?」

「私ちゃんは、何も言わなくて良いからね。俺…私ちゃんの事が好きだよ。…私ちゃんには家庭が有るから、返事は言わなくて良いから…」



胸が、ぎゅっと掴まれる思いがした。

素直に喜べはしない。だけど。それは、私も…



「好き。」

「言っちゃったー(笑)でも、嬉しい。私ちゃん、ありがとう。」



幸せそうな笑みを浮かべながら、年下君に右手を掴まれた。

力を込められて、だけど優しい強さで、握り締められていたんだ。



(これから、私は、どうなってしまうのだろう。旦那…ごめんなさい。本当に、ごめんなさい。)



数分後、海へと辿り着いた。辺りは真っ暗だった。

車から降りると、年下君が当たり前かのように、手を繋いできた。



「人に見られる事だけは、気を付けないといけないよな。普通のカップルだったら、こんな風に堂々と歩けるのに…切ないね。」

「う、うん。」



(不倫って、こんな感じなんだ。きっと。大変な事ばかりだろうな…)



生憎、人気の多い場所だった為、私達は更に離れた海へと車で移動した。

「此処なら、人も少ないね。もっと奥まで歩いてみようか。」そう言って、年下君は私の手を引っ張って行った。



歩く、歩く、歩く…

先の行き止まりが見えた所で、年下君が立ち止まり、私の右手を離した。



(あ、これって。良くない雰囲気…)



その瞬間、反射的に私は年下君に背を向けた。

すると、年下君に背後から抱き締められてしまった。



「会いたかった…」低い声。年下君が、私の耳元で囁く。

抱き締められる力、どんどん、強くなって。

どう考えてみても、ルール違反。



我に返った私、咄嗟に年下君の両腕を解いて避けた。

しかし、今度は正面から、がっしりと抱き寄せられる。



「逃げないで…?」

男の人は、いつだって、ずるい。

年下君の唇が、私の唇を求めにくる。



(それだけは、それだけは止めて下さい。ご勘弁を、ひええええ)



駄目だった。

「んんっ…」

年下君のキスは、何度か繰り返された。



「ごめんね。俺、駄目だわ。」

「…。体の関係だけは、持たないようにしたい。それだけは、絶対に駄目。」

「そうだよね。正直、私ちゃんと、したいって思うよ。でも、不倫はいけない事だもんな。」



頭が、ぽうっとしながら車へと戻った。

17 年下君×私=不倫

年下君との約束の日が、遂に訪れた。

長かったような、短かったような…いや。そういった感覚は、どうだって良かったのだ。

産後の姿を見て幻滅されないかどうかだけが、私は怖くて怖くて、堪らなかった。



(怖い…だけど。それ以上に、年下君に会いたかった。嫌われたら嫌われたで、潔く諦められるし。もう、どうとでもなっておくれ!)



初めて年下君に会う気持ちで、私は挑んだの。



「今から、出発するよ。やっぱり無理とか言わないでね?(笑)」

「うん。大丈夫!気を付けて来てね!」



猶予は、たったの一時間。母親の宿命。

年下君から、あと数分で着くとの連絡を受けた私は、待ち合わせ場所へと出向いた。



(うわあ。やっぱり会いたくない。怖い、怖い、怖過ぎる!げぼおおおお、げろげろげろげろ)



何度も鏡で前髪を確認したり、携帯を気にしながら泣きそうになっていると、年下君から着信。

「取り敢えず、目の前のコンビニに車を停めた。おっ、私ちゃんが見えた!」



年下君が、電話を繋いだまま歩いて私の方へ向かって来た。

「いっ、嫌だ!来ないで!ひいいいい」

咄嗟に電話を切って、踵を返そうとする私。



(でも。会う!心臓、爆発の兆し。逝って来ます!)



年下君が、私の前に立ちはだかる。

変わらない年下君。いや、更に男らしくなった。

懐かしくって、懐かしくって、胸が詰まりそうになった。



「うわあ!全然、変わってないじゃん!やっぱり私ちゃん、可愛い!ははっ(笑)とっ、取り敢えず車、こっちに持って来るね」



全身の力が抜けそうになった。

そして、大きな車が停まる。緊張から私は、転がり込むように乗り込んだ。

16 年下君×私=不倫

年下君と再会する前に、私は数人程、年下君との事を相談していた。

年下君に会うべきか、会わないべきか…と言った実にくだらない内容を。



合コンメンバーの一員であった元同僚の意見…

「私ちゃんの旦那さんは、仕事で忙しいし…私ちゃんも刺激だって欲しくなるだろうね。だけど、会ってしまえば、年下君の暴走は確実に止められなくなると思うよ(笑)年下君、独身で未だ若いしさ。」


共に男遊びに走っていた大学時代の同級生の意見…

「忘れられない人って居るよね。分かる!でも、年下君と会えば確実に身体を求められちゃうよ。会って喋るだけでは、絶対に済まされないと思うし。私ちゃん、私は止めた方が良いと思う。」


不倫真っ只中に居るふた回り歳上の女性の意見…

「旦那さんが最低な人間だとかの場合であれば、話は別になってくるけれど。本当に良い人だから、裏切らないであげて欲しい。私ちゃんの性格だから止められないかもしれないけれど…年下君の事は芸能人だと思うようにしてみようよ。連絡をして、ときめきを貰える程度で止めておくの。私ちゃんには、不幸になって欲しくない。」



女性が人に相談をする時って、答えは最初から決まっているものなの。

何を言われたって、その声は彼女に届かない。



(皆の意見を聞けなくて、ごめんなさい)

15 年下君×私=不倫

年下君と連絡を取り合うようになると、たちまち過去へと戻った感覚がした。

それは、私が年下君からの連絡を避けるようになった頃と似ていた。



「私ちゃん。会いたい…今から会いに行っても良い?顔を見たら一瞬で帰るから。」

「嫌、無理だよ。妊娠してから色々と変わっているし。数キロも増えたままだし…」

「関係無いよ。どんな私ちゃんも受け止める!俺も最近、外食ばかりで太ったし。良いじゃん、お互い様で!」

「そんなの嘘だ(笑)…じゃあ、私、運動を始めるね!んーと…半年間くらい待ってくれる?」

「会ってくれるんだ!でも長いよ(笑)せめて一ヶ月。俺も、私ちゃんに会えるからダイエットしようっと。」

「無理無理無理!でも。頑張ってみる。」

「一ヶ月後には必ず会ってね!早く会いたい!嬉しい!ありがとう!」



無邪気に大喜びをする年下君とは対照的に、底知れぬ不安を背負う羽目になった私。



(年下君は、妊娠前の私しか知らない…どうしよう。怖過ぎる。げええええ)



心配する点は、そこじゃないでしょうに。

母親になっても。女で在る事には変わりがなかった。



私は、年下君と連絡を取り始めたと同時に運動を開始した。



(たった一ヶ月間で、そこまで変わるかなあ?でも。しないよりはマシだよね。)



毎日、子供が眠っている隙を見計らい、無心で運動をし続けた。

誰かを想う力は偉大です。

お洒落に興味なんて一切持たなくなっていた私が、身形を気にするようになれたのだから。



ある時、会社の飲み会を終えて帰宅した年下君から電話が掛かって来た。

「私ちゃん。会いたい…」

「未だ無理だってば。酔っ払っていますねー?」

「今日ね、二次会でガールズバーに先輩と行ったんだ。それが、不細工ばっかりなの。私ちゃんの事を考えていたら、皆が不細工にしか見えないの。私ちゃんが一番、可愛いんだよ。会いたいよー!」



その瞬間、自分でも驚いたのだけれども。涙が溢れてしまった。

年下君の言葉に感動した訳では無く…真逆の意味で。



(女の人の居るお店に行ったんだ。どうしよう、年下君は私にとって嬉しい言葉を掛けてくれている筈なのに…嫉妬心の方が大きいよ。苦しい、吐きそう。うげええええ)



「私ちゃん?泣いているの?怒った?ごめんね。女の子と喋るだけのお店だからね?」

「うっ、うええええ。だって、私は何も言える立場じゃない。結婚している立場で、年下君に、どうこう言ったりなんて出来ないよ。でも。嫌だった。どうしよう、嫉妬で辛いよ。何これ。うううう」

「私ちゃん?辛いなら怒って良いんだよ?もっと俺に何でも言って良いんだから。行って欲しくないなら行くなって言えよ。俺を縛れよ!」

「縛るって…何それ(笑)」



段々と分かって来た事が有った。年下君は、酔うと感情を露わにするタイプ。

確かに、私の事を好きで居てくれているのだろう。



こんなにも。こんなにまで、か。

この時、私は完全に、年下君に恋をしている自分自身に気が付いてしまった。

そして、また。この恋には難関しか無い事を感じ取った。



(これって、許される筈が無い恋愛だ。不倫と変わらない。年下君に会ってしまえば、後戻りが、出来なくなるかもしれない。でも。会わずに居れば、結局…年下君を余計に想い続けてしまうだろう。一回だけ。一回だけ会って、嫌われなかったら…私は、それだけで幸せになれる。そして終わりにしよう。)



約一ヶ月半後、年下君と私は再会する事となる。

14 年下君×私=不倫

「ご、ごめん(笑)それにしても。久し振りだね。返事、来ないと思っていたよ。」

「本当、久々だね!元気にしてる?今は家で育児中かな?」

「うん。子供が幼稚園に入るまでは、一緒に過ごすんだ。」

「そっかあ…何だか、遠くに行った感じがする(笑)ちゃんと、お母さんをしているんだね。」

「何それ(笑)」



変わらない。

年下君は、あの頃と全然に変わっていなかった。

でも。それが、余計に嬉しくって。

これは…その。

長い間、忘れていた感情だった。

ときめきだとか、そういった類の、そう。とてつもなく大きな希望、ああ、楽しい。

懐かしさと共に、ぐぐぐぐっ。一気に蘇って行く。



(どうしよう、対処し切れません!)



泣きたくなるくらい愛しくて。今でも私は年下君を想っていたという事実に、軽い眩暈がした。

連絡を取らなくなり、実に約二年以上の歳月が経過していたんだ。



私達は、空いた月日を埋め合わせるかのように連絡を取り合った。

「そういえば。結局の所、彼女とは続いていたの?今なら本当の事を言えるでしょう?(笑)」

「本当に別れていたよ。それさ多分、先輩の罠だと思う。先輩、私ちゃんの事を狙っていたからさ。先輩が居なかったら私ちゃんと上手く行っていたかもしれないのに!糞ー!(笑)」



年下君が言う、先輩とは。まさかの、同い年の幹事を指していた。

年下君曰く、幹事が年下君と私の関係を壊す為に、私の同僚に向けて「年下君は彼女と続いている」との嘘を吹き込んだ…との事。



(こんな事って、本当にあるんだ)



これも全て、私が中途半端に幹事と遊んでしまったせいだ。

軽率な行動は慎むべき、ね。



「そうだったんだね。年下君を信じられなくって、本当にごめんなさい。年下君の事を信じていた分、ショックを受けてしまって…何もかもが信じられなくなっていたの。私、年下君の事、凄く好きだったんだよ。実は、忘れられなかった。」

「謝らなくても構わないよ。でも連絡が無くなっていったのは辛かったなあ…。チクチクしていました。あと、好きだと思ってくれていた事、凄く嬉しい。俺、何だかんだ私ちゃんの事が好きなんだよ。もう遅いけれど。」



過ぎた時間は取り戻せないけれど、わだかまりが溶けて良かった、と、思う。多分。

だって。この瞬間から、私の苦悩の日々は始まった訳だから。



「私ちゃんに、会いたい。」

年下君は言った。

何処かで、その言葉を待っていた、筈。

だけど。実際に伝えられる事で、とんでもなく重たい塊を年下君から受け取った気がしたんだ。



此処から先に足を踏み入れたならば、もう二度と平穏な日々に戻れなくなるんじゃないか、って。

途轍もなく大きな恐怖が私を襲った。



(どうしよう、どうしよう…)



年下君と会う約束は出来ないまま、連絡を取り合う日々だけが続くようになっていた。
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