大図鑑に載ってないクワガタたち（主に）

今回はPogonodorcusグループです。
Huang&Chen,2013ではFalcicornisに統合されています。

基準種はD.elegantulusでD.bisignatusなどが本グループに含まれます。
前胸前方がえぐれる形状の種類が多く、
Hemisodorcusとして記載されている種類も多数見られます。

※中国の種類はHuang&Chen,2013とは同定が異なる種類が結構ありますが、
見解の相違ということでご了承ください。

1:D.axisopsis S.Vietnam
2:D.axisopsis S.Laos
3:D.cuongi　Holotype Maeda,2009より
4:D.mellianus Maeda,2009より
5:H.perroti　記載文の絵　Lacroix,1972より
6:D.pseudaxis 記載文の絵　Didier,1926
7:D.pseudaxis N.Vietnam
8:D.pseudaxis ChinHills　Fukinuki,2000より
9:D.ruficurs Holotype Huang&Chen,2013より
10:D.ruficurs？ N.Vietnam
11:D.negrei　記載文の絵　Lacroix,1978より
12:D.negrei　
13:D.neolucanoides Holotype Huang&Chen,2013より
14:D.seguyi
15:D.virginiae　Fujita,2010より

Dorcus axisopsis (Séguy,1954):190,fig.10 [Pogonodorcus axisopsis]
S.Vietnam,S.Laos,C.-S.Thailand,S.Myanmar [Annam:Kon Tum].

内歯は産地により上下するようです。
頭楯は中央が緩く湾曲し両端が鋭く突出する。前胸側面は直線的。


Dorcus cuongi Maeda,2009:37-40,figs.14-17,26
C.Vietnam [Contum Province,Virtnam].

中央ベトナム南部のコンツムではD.axisopsisも得られます。
頭楯は突出したV字状で、先端付近にギザギザの内歯が出るので区別は容易。


Dorcus mellianus (Kriesche,1920):98-99 [Hemisodorcus mellianus]
中国(広東省,湖北省,福建省,広西壮族自治区,四川省,海南島),N.-C.Vietnam,N.Laos [Tscha-jiu-san,Norden der Prov. Kuang-tung,Süd-China].
=Macrodorcus lasiodontus De Lisle,1964:44-45,fig.3 [Chapa,Tonkin(North Viet-Nam)].
=Hemisodorcus perroti Lacroix,1972:64-67,figs.13-14 [Tonkin, Tam Dao, N.E. Hanoï].

広域分布ですが変異に乏しいようです。
D.cuongiに似るが顎は細くて裏に毛が生える。
頭楯のV字は鈍角で、前胸側面はやや丸みを帯びる。


Dorcus pseudaxis (Didier,1926):178-180,fig. [Hemisodorcus pseudaxis]
N.Vietnam,N.Thailand,W.Myanmar,中国(雲南省) [Ban Nam Mo et de Tuycn Quang(Tonkin) ].

タイ以外の産地では極めて得にくいです。空白地帯のラオス北部にも分布しているとは思います。
種名の通りD.elegantulusに似ていますが、顎先端部の形状を見るとD.axisopsisに近縁のようです。
内歯の位置がより先端で、頭楯の突出は弱く、前胸側面中央部がやや膨らむ違いが見られますが、
D.axisopsisとは亜種関係程度のものかもしれません。

チンヒル産は頭楯が突出し、腹部はややぼってりしている。亜種？（もしくは代置種？）


Dorcus ruficrus (DeLisle,1970):108-109,fig.15 [Macrodorcus ruficrus]
中国(雲南省) [Chine,Sud Yunnan,Montagne de Mengtzu].

D.negreiに似るが、頭楯の中央部は尖らない。
図示した北ベトナムの個体群はD.negreiに混ざっていて、
顎は太短く、内歯は大きき、頭部は小さく、光沢は弱いなど違いが見られる。
頭楯の形状はD.ruficrusと一致し、複眼縁は角ばる違いが見られるものの
亜種か地域変異ではないかと思われます。


Dorcus negrei (Lacroix,1978):283-286,fig.15 [Hemisodorcus negrei]
N.Vietnam [Tonkin,région de Hoah-Binh].

D.ruficursに似るが、頭楯の中央部は小さく尖り、頭部はやや大きい。


Dorcus neolucanoides (Huang et Chen,2013):261-262,pl.43,44,121-figs.48(1-3) [Falcicornis neolucanoides]
中国(雲南省),N.Vietnam [Yunnan Province,Honghe Pref. Hekou County, Nanxi Township, Huayudong].

顎が細くて上反りするのが特徴的。
頭楯は長方形で、前胸は丸みを帯びて後方は突出する。

新大図鑑のソリアゴコクワは、顎先端に端歯があり、内歯がやや発達し、
頭部がやや大きく、前胸がやや幅広、などの違いが見られるが、
亜種か地域変異と思われます。


Dorcus seguyi (DeLisle,1955):6 [Macrodorcus seguyi]
N.Vietnam,N.-C.Laos,中国(福建省,広東省,湖北省,海南島) [Tonkin:environs de Hoa-Binh].

歯型が独特なので多種との区別は容易。
先端付近に出る内歯は顎と重なるように生え、内歯の顎先端側には小さな内歯が出る。頭楯は中央部が湾曲する。
小型ではD.t.hagiangensisに似た雰囲気にパッと見は紛らわしいです。


Dorcus virginiae (Bomans,1991):364-366,figs.2-3 [Hemisodorcus virginiae]
N.Thailand [Thailand: Doi Pui, région de Chiangmai].

D.negreiに似るが、内歯は小さく、頭楯は平坦で、前胸は丸みを帯びる。


1:D.elegantulus
2:D.e.akaishii Mizunuma,2000より
3:D.e.acudentatus　記載文の絵　Bomans,1979より
4:D.axis　記載文の絵　Boileau,1904より
5:D.e.rufus
6:D.debatissei 記載文の絵　Bomans,1979より
7:D.e.ssp. S.E.Myanmar　Fujita,2010より
8:Mizunuma&Nagai,1994より

Dorcus elegantulus (Albers,1891):76-77 [Prosopocoelus elegantulus]
Jawa [montes Tenggar Javae orient. ].

赤みの強い小型種。原名亜種はあまり採集されません。
顎は短く、頭楯中央部は湾曲する。


Dorcus elegantulus akaishii Mizunuma,1994:27-28, 261, fig. 82(a, c-d), pl. 88, fig. 344(20)
Philippines;Palawan I. [Brroke's Point,Palawan I.].

パラワン島の珍品。
顎は細く、首は細く、前胸の幅はやや狭い。


Dorcus elegantulus acudentatus Bomans,1979:242,fig.2 [Hemisodorcus acudentatus]
Sumatra,Borneo [Lebong Tandal,W.Sumatra].
=Hemisodorcus axis Boileau,1904:284,fig. [Sumatra,Pulenbang].

1番大型になる亜種。
顎は長く、大型個体では内歯が大きく鋭くなる。
前胸後方は幅広。

D.acudentatusはD.axisとは歯型の違いで記載され他っぽいです。
D.axisの方が記載が早いですが、D.bucephalusのシノニムに先取されていて使えません。（Dejean,1837）
二次ホモニムなのでMacrodorcasとSerrognathusを分ければD.axis Boileauは有効になります。


Dorcus elegantulus rufus (Boileau,1911):439-441 [Hemisodorcus rufus]
Malay Peninsula [Perak].
=Hemisodorcus debatissei Bomans,1979:239-242,fig.1 [Malaysia,Pahang,Cameron Highlands].

原名亜種に比べ、顎は長くて内歯が大きい。
前胸前方はえぐれず、むしろ逆に膨らむ。
D.debatisseiは歯型で分けられたっぽいです。


Dorcus elegantulus ssp.
SE.Myanmar

顎は細くてD.axisopsisっぽい歯型になります。
頭楯はやや突出し、前胸は丸みを帯びる。


1:D.bisignatus　Schenk,2009より
2:D.b.elsiledis　Fujita,2010より
3:D.b.giselae Paratype Websiteより
4:D.b.rufonotatus
5:D.b.ssp.　C.Vietnam　模写
6:D.dierli　Fujita,2010より
7:D.fulvonotatus　Fujita,2010より
8:D.himalayae　Holotype Schenk,2009より
9:D.prasobsuki　Holotype Baba,2005より
10:D.valgipes 記載文　Kriesche,1940より

Dorcus bisignatus (Parry,1862):111 [Cladognathus bisignatus]
NE.India,Assam,N.Myanmar,中国(チベット,雲南省) [Ind.Or.].

黒色で上翅に光沢があり、上翅先端に紋が出る。
頭楯は平坦で両端が突出する。前胸は前方が緩くえぐれる。


Dorcus bisignatus elsiledis (Séguy,1954):186, 188 [Hemisodorcus elsiledis]
N.-C.Vietnam,中国(広西壮族自治区,福建省,四川省) [Chine:Sseu-the'ouan]

Huang&Chen,2013ではD.songianusと同種としていますが、それについての見解は後述します。
明るい褐色の体色で、前胸は中央部が幅広くてオニギリ型。


Dorcus bisignatus giselae (Bomans,1991):142-144, 145, 152,figs.2,3B [Hemisodorcus giselae]
N.Thailand [Nord Thailande:Chiang Mai].
=Hemisodorcus steinkea (Bomans,1988)Bomans,1991:144 [nomen nudum]

原名亜種に比べ、頭部はやや小さく、前胸のえぐれはやや大きく、上翅の紋は大きい。


Dorcus bisignatus rufonotatus (Pouillaude,1913):336,fig.6 [Hemisodorcus rufonotatus]
N.Vietnam;Sapa, N.Laos,中国(雲南省) [Tonkin].

採集量の少ない亜種。
Ssp.giselaeに似るが、顎の付け根は張り出し、頭部はやや大きく、頭楯の突出は強い。
前胸のえぐれはより大きく、上翅の光沢はやや強い。


Dorcus bisignatus ssp.
C.Vietnam

上翅に紋が無く、パッと見はSsp.elsiledisっぽいが形状的にはSsp.rufonotatusに近い。
Ssp.rufonotatusと比べると、前胸のえぐれは弱く、上翅の光沢は弱い。


Dorcus dierli Endrödi,1968:51-52,fig.1
Nepal,NE.India [Nepal,Prov. Nr. 2 East Bhandar,unter Thodung].

D.bisignatusに似るが、顎は短く、上翅の光沢はやや強い。
頭楯中央部はゆるく湾曲し、前胸前方はえぐれない。


Dorcus fulvonotatus (Parry,1862):111 [Cladognathus fulavonotatus]
NE.India,Nepal,Bhutan,中国(チベット) [Ind.Or.].
=Hemisodorcus fulvonotatus var. bilineatus Bomans,1971:76 [ ].(Bhoutan)

D.bisignatusに似るが、やや細身で、前胸前方は幅広で丸みを帯びる。
頭楯は平坦。
上翅脇側や前胸の縁にも紋が出る傾向にある。


Dorcus himalayae (Schenk,2009):3-4,figs.1-3 [Macrodorcas himalayae]
Arunachal Pradesh,中国(チベット) [Nord-Indien,Arunachal Pradesh,Distrikt Along,nahe Raoun].

D.bisignatusによく似ていて、同所で得られる。
顎付け根はやや張り出し、頭部・前胸前方の幅は広く、上翅の光沢は強い。
上翅先端に小さな紋が出る個体も見られる。


Dorcus prasobsuki Baba,2005:44-48,figs.1-6
N.Myanmar [Ransei,Chudo Razi,Kachin State,Burma].

独特なギザギザの内歯が特徴的な種類。
やや幅広で寸詰まりな体型。
頭楯の中央部は緩く湾曲し、前胸は幅広。


Dorcus valgipes (Kriesche,1940):40 [Prosopocoilus valgipes]
NW.India;Punjab, Uttar Pradesh [NW Indien:Bhagwantpur(Dehra Dun) ].

♀のみで記載された正体不明の種類。他の研究者にしたがってMacrodorcasに分類しました。
記載文からの同定は難しいと思われますが、
場所からいえばD.dierliと同種かもしれません。
もしかしたらPrismognathus属なのかもしれません。



1:D.bomansi　記載文の絵　Lacroix,1981より
2:D.bomansi　Huang&Chen,2013より（D.tenuecostatus pieli）
3:D.b.ssp.　Huang&Chen,2013より（D.tenuecostatus）
4:D.mochizukii
5:D.mochizukii　記載文の絵　Miwa,1937より
6:D.moellenkampi　N.Myanmar Fujita,2010より
7:D.moellenkampi　雲南省 Taroni,1998より
8:D.pieli Fujita,2010より
9:Didier et Séguy,1953より
10:D.songianus　Holotype　Huang&Chen,2013より
11:D.songianus？　Huang&Chen,2013より（D.moellenkampi bomansi）
12:D.sanchea Holotype　Fujita,2010より
13:D.s.ssp.　陝西省　模写
14:D.sp.　模写
15:D.motschulskyi Lacroix,1981より

Dorcus bomansi (Lacroix,1981):69-70,figs.6(a-b) [Hemisodorcus bomansi]
中国(浙江省,福建省) [Chine: Ouy-Sy].
=Hemisodorcus pieli Didier et Séguy,1953:46 [Chekiang : Chusan]. (female)

D.mochizukiiに似るが、幅広で前胸前方は大きくえぐれる。
腿節は赤い。
D.pieliの♀は本種と同種と思われます。


Dorcus bomansi ssp.中国(北京市,天津市)

Huang&Chen,2013ではD.tenuecostatusと同定されていますが、
D.tenuecostatusがいまいち正体不明なのでD.bomansiの亜種として扱ってます。関連記事参照。
[関連記事] Dorcus　＆　Sinodorcus

D.bomansiと比べ、体型はやや細身で、顎は細く、頭楯両端はやや突出し、前胸前方のえぐれは小さい。


Dorcus mochizukii (Miwa,1937):164-166,figs.1 [Macrodorcus mochizukii]
台湾 [Formosa,Rarasan].

D.bomansiによく似るが、頭楯はやや平坦で、前胸前方のえぐれは小さいかほとんどない。
腿節は黒い。


Dorcus moellenkampi (Nagel,1924):402-404 [Hemisodorcus moellenkampi]
中国(雲南省,四川省,チベット),N.Myanmar [Süd-China, Pe-yen-tsin (Yünnan) ].

明るい体色の種類。
頭楯は平坦で中央はやや湾曲する。
ミャンマー産と中国産は前胸の形状がやや異なり、
前者は前胸前方が幅広でえぐれ、後者は丸みを帯びる。


Dorcus pieli (Didier et Séguy,1953):45-46,fig.18 [Hemisodorcus pieli]
中国(江西省,雲南省,四川省,貴州省,山西省,安徽省),N.Myanmar [Chine: Ku-ling].

Huang&Chen,2013では今回D.bomansiとした個体群を本種としています。
記載文の絵では頭部と歯型のみで前胸の形状がわかりません。
記載文の前胸の項を訳しても特徴がつかみにくいです。
基準産地もちょうど境界であろう付近です。

記載文の絵の複眼縁の形状は今回D.bomansiとした個体群より角ばり方がなだらかで、
新大図鑑などで同定されている個体群が近い形状をしているので、
今回はそちらをD.pieliとします。

歯型・頭楯はD.bomansiに似るが、前胸前方は幅広でえぐれない。


Dorcus songianus (Didier et Séguy,1953):46,fig.19 [Hemisodorcus songianus]
中国(四川省,山西省,宁蒗彝族自治県) [Chine:Kweitschou].

Huang&Chen,2013ではD.bisignatus elsiledis と同種としています。
が、ホロタイプを見る感じではやや違和感があり、
D.bisignatus elsiledisにしては前胸の幅が狭くて、頭楯中央がはっきりと突き出ています。

個人的にはHuang&Chen,2013でD.moellenkampi bomansiとしている種群が本種ではないかと考えます。
D.pieliに似てますが、頭楯は平坦で、全体的に幅広な体型。


Dorcus sancha Fujita,2010:18,237,figs.698(1-2)
中国(広東省,福建省,浙江省) [Nanling,Guangdong,China].

D.bomansiに似るが、細身で体型は瓢箪型。
前胸は台形。
頭楯の形状がやや特殊で平坦で両端がやや突出して中央部が少し凹みます。
D.titanusの頭楯の中央を融合させたような感じでしょうか。


Dorcus sancha ssp.
中国(陝西省,四川省)

少し離れた場所で得らます。
内歯はやや大きく、体型は俵型。
前胸前方は若干えぐれます。


Dorcus sp.
中国(四川省、雲南省、重慶市)

D.pieliによく似るが、顎は短く、頭楯中央部の突出はかなり弱い。
中型個体では前胸前方の幅がかなり狭くなる。


Dorcus motschulskyi (M.)(Lacroix,1981):71 [Hemisodorcus motschlskyi] [nomen nudum].
Loc.?

Lacroix,1981の文献中に名前が出てきますが、Macrodorcasのようですがどんな種類なのか不明です。
ふと思ったのですが、もしかしたらD.mochizukii Miwaの種名間違い？