大図鑑に載ってないクワガタたち（主に）

Psalidoremus亜属は本土ノコギリに近縁なグループになります。

Psalidoremus Motschulsky, 1862:13 (type: Lucanus inclinatus Motschulsky, 1857)
=Psalidognathus Motschulsky,1857:29 (nec Gray in Griffith,1832) (type: Lucanus inclinatus Motschulsky, 1857)

よく知られたグループではありますが、
2014年に入ってから少し動きがありました。

P.inclinatusについては種名のみで、
細かいことは以前の記事を参照していただきたいと思います。
[関連記事] 本土ノコギリクワガタのこと

Prosopocoilus inclinatus (Motschulsky,1857):　29, pl.1 [Lucanus inclinatus]
[Type Locality] Japonia
[sny] Cladognathus mandibularis Thomson, 1862:417 [Japon].
Psalidoremus inflexus Harold, 1875:288-289 [-].
Prosopocoilus inclinatus koreanus Li,2003:217-215 (?) unpublished?
Prosopocoilus inclinatus kina unpublished?

Prosopocoilus inclinatus kuchinoerabuensis Shimizu et Murayama,1998:24-28,figs.4c,5,6c,7c,8a,9c,10
[Type Locality] Is. Kuchinoerabu-jima,Kumage-gun,Kamiyaku-chô,Kagoshima Pref.,Japan

Prosopocoilus inclinatus kuroshimaensis Shimizu et Murayama 2004:10-15
[Type Locality] Kuroshima Is., Mishima-mura, Kagoshima-gun, Kagoshima Pref.,southern Kyushu

Prosopocoilus inclinatus mikuraensis Matsuoka et Takatoji,2010:19-22,figs.38-42,51,55,58,61
[Type Locality] Nangou,Mikurajima Is.,Mikurajima-mura,Tokyo

Prosopocoilus inclinatus mishimaiouensis Shimizu et Murayama,1998:22-26,28,figs.2-3,4b,6b,7b,8c,9a
[Type Locality] Is. Iô-jima,Mishima-son,Kagoshima Pref.,Japan

Prosopocoilus inclinatus miyakejimaensis Adachi,2009:34-37,figs.2-11,19,21,23,24
[Type Locality] Miyakejima Island



P.i.yakushimaensis Holotype Adachi,2014より
P.i.kuroshimaensis Adachi,2014より

Prosopocoilus inclinatus yakushimaensis Adachi,2014:1-6,figs.1-6,13,15-17,21,23,25-26,31
[Type Locality] Mt.Aikodake, Koseda, Yakushimacho, Kumagegun, Kagoshima Prefecture, Japan

新しく記載された亜種で、屋久島・種子島に分布する。
特徴は幅広な体形で、光沢が強く、点刻は大きくて浅いとあります。
数を比較しないと確実とは言えないですが、
♀の頭部の拡大図を比較すると 原名亜種に比べて頭楯が突出するようです。



1：P.dissimilis 記載文の絵　Boileau,1898より
2：P.d.elegans　Holotype Fujita,2010より
3：P.d.hayashii Paratype Fujita,2009より
4：P.d.kumejimaensis Holotype Fujita,2009より
5：P.d.makinoi Paratype Ichikawa&Fujita,1985より
6：P.d.okinawanus Holotype　Fujita,2010より
7：P.d.okinoerabuanus　Holotype Ichikawa&Fujita,1985より
　
Prosopocoilus dissimilis (Boileau,1898):95-98,figs. [Psalidoremus dissimilis]
[Type Locality] Liou-Kiou
[sny] Psalidoremus loochoensis Maes,1981:157 (new name for dissimilis Boileau)

奄美大島・加計呂麻島・請島・与路島に分布。
Psalidoremus亜属の最大種でギネスは79.5�o。
D.inclinatusとは頭楯が大きく突出し先端部が二又になることで区別は容易。


Prosopocoilus dissimilis elegans (Inahara,1958):12 [G. Psalidoremus elegans]
[Type Locality] Kuchinoshima (Tokara Is.). Oshima-gun. Kagoshima Pref. Kyushu. Japan

トカラ列島の口之島・中之島・諏訪瀬島・悪石島・臥蛇島に分布。
基本的には体色は明るく、顎は細長くて 体型もやや細身。
上翅の光沢は強い。
島ごとに歯型・頭楯の形状など若干変異が見られる。


Prosopocoilus dissimilis hayashii Fujita,2009:38-39,figs.1-6
[Type Locality] Dana,Ihetajama Is.,Okinawa Pref.

伊平屋島の特産亜種。
久米島亜種に似るが、顎はやや短くて直線的。体型はやや幅広。
頭楯の二又部はやや大きいような感じもします。
大歯型は得にくいそうです。


Prosopocoilus dissimilis kumejimaensis Ichikawa et Fujita,1985:7, 11-12,figs.41-42
[Type Locality] Gushikawa-mura,Kumejima Is.

久米島の特産亜種。
沖縄亜種に似るが、大顎は太短く湾曲が強い。
胴体はぼってりした印象で、頭楯は短い。


Prosopocoilus dissimilis makinoi Ichikawa et Fujita,1985:7, 11-12,fig.36
[Type Locality] Mikyô,Tokunoshima Is.

徳之島に分布。
顎中央部の2本の内歯の間隔が原名亜種より広い。
顎はやや短く、体形はやや幅広な印象。
頭楯の二又部はあまり開かず 先端方向に向く。


Prosopocoilus dissimilis okinawanus Nomura,1962:37 [Prosopocoilus (Metopodontus) dissimilis okinawanus]
[Type Locality] Shuri, Okinawa Is.

沖縄本島・屋我地島・古宇利島に分布。
原名亜種の中大歯程度の歯型で、湾曲した完全大歯は得られていないと思われます。
旧大図鑑にはくの字に湾曲しかかってる個体は見ることができます。
顎は太くて直線的で、顎中央部の内歯の間隔は広い。上翅の光沢はやや強い。

Prosopocoilus dissimilis okinoerabuanus Ichikawa et Fujita,1985:7, 11-12,fig.38
[Type Locality] Mt.Ohyama,Okinoerabujima Is.

沖永良部島の特産亜種。
新大図鑑では徳之島亜種と比較していますが、沖縄亜種に似た印象です。
沖縄亜種と比較すると、顎は短く、体形はやや寸詰まり。
頭楯はやや細く、上翅の光沢はやや弱い。


1：P.motschulskii Type Araya,1999より
2：P.pseudodissimilis Paratype Kurosawa,1976より
3：P.pseudodissimilis Holotype Fujita,2010より
4：P.hachijoensis Holotype Fujita,2010より
5：P.hachijoensis 大歯型の頭部

Prosopocoilus motschulskii (Waterhouse,1869):16-17 [Cladognathu motschulskii]
[Type Locality] Japan? or Indian Archipelago
[sny] Cladognathus inclinatus (nec Motschulsky) Bates,1866:348 [Formosa].

台湾の特産種。通称、タカサゴノコギリ。
頭楯が五角形状なことが最大の特徴。
完全大歯はP.inclinatusに似るが、顎先は内側に向かず 中央の内歯は1本。
複眼下のふくらみは弱くて 前胸前方の幅は狭く台形状。
55�o前後にならないと大歯にならず、大歯は得にくいです。

以前に台北で灯火採集されたP.dissimilisを見たことがあります。
別口ですがその他にヨーロッパオオクワとニジイロクワガタの灯火採集品もありました。
飼育していたものが逃げたものと思われます。
実験をしたことはないのでかかるのかはわかりませんが、
現地で交雑する可能性もあるとは思いますので、
もしも変な特徴の個体を見かけたら注意が必要かもしれません。


Prosopocoilus pseudodissimilis Y.Kurosawa,1976:190-194,figs.1-4 [Prosopocoilus motschulskyi pseudodissimilis]
[Type Locality] Ishigaki-jima I.

八重山諸島の西表島・石垣島に分布。
P.motschulskii の亜種とされたように、頭楯が五角形状で近縁であることがわかります。
歯型は全く異なり、P.dissimilisの沖縄亜種などに似たような形状になります。
その他の特徴としてはP.motschulskii と比較して、
複眼下のふくらみがやや大きい、前胸前方はやや幅広で側面は丸みを帯びる。
上翅の光沢はやや弱い。


Prosopocoilus hachijoensis Nomura,1960:40 [Prosopocoilus (Metopodontus) inclinatus hachijoensis]
[Type Locality] Japan,Hachijô-jima

八丈島の特産種。
P.inclinatusが特化した種類で、
体色は黒味が強くて光沢はやや強い。
胴体は丸みを帯びる。
ほとんど飛ばず歩き回る生態のために脚は短い。

野外では小型個体ばかりで中歯型も得にくいです。
大歯レベルの個体はほとんど見られません。完全大歯は1頭しか当方は見たことはないです。
飼育技術の高い人なら大歯を出すことも可能でしょう。
当方の飼育レベルでは52�oの中歯が限界でした。
大型化する血統を引き当てることも必要かとは思いますが。