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被ばく隠し「誰でも知ってる」

被ばく隠し「誰でも知ってる」


朝日新聞 2012.08.06 朝刊より抜粋

福島第一原発の駐車場で線量計「APD」が放置されているのを目撃した30代男性は約10年前、同原発1〜6号機の原子炉格納容器の中で作業した。
この時は原子炉建屋内に用意されていたティッシュペーパーの箱ほどの大きさの鉛の箱にAPDを入れておくよう、下請け会社の責任者からしばしば指示されたという。

作業は毎回1時間ほど。
APDに表示される被ばく線量は、鉛の箱に入れたらほぼゼロ、身につけて作業すると0.3〜0.4mSvだった。
こうした指示は、元請け会社が定めた年間被ばく線量20mSv程度に近づく年度末に出ることが多かったという。

男性は繰り返し取材を受けるなかで「まともにAPDをつけていると、線量が高くてアラームが鳴り、仕事ができなくなる。鉛の箱に入れておくのは当たり前だと思っていた」と振り返った。
原子炉建屋内の操作盤の裏に隠し、下請け会社の放射線管理者から「見つからないようにね」と声をかけられたこともあった。

「本当はどのくらいの放射線を浴びたのか、わからない。会社はがん検診も受けさせてくれない。健康がすごく心配です」

取材班に寄せられた被ばく隠しの手法は様々だ。

西日本にある複数の原発で働いた70代男性は十数年前の現役時代、作業員が線量の低い場所で待機する同僚に線量計を預ける場面を何度も見た。
「電力会社やプラントメーカーの社員も見て見ぬふり。現場で長年働いた人なら、誰でも知っていることだ」と語る。

被ばく隠しをめぐって裁判中の人もいる。
下請け作業員だった福岡市の梅田隆亮さんは、1979年に島根原発と敦賀原発で線量計や防護マスクを外して働かされたなどと主張。
被ばくが原因で心筋梗塞を患ったとして、労災を認めなかった国の処分の取り消しを求めて今年2月に福岡地裁に提訴した。
「作業員は会社の圧力が怖くて証言しにくい。国にも問題を繰り返し訴えてきたが、調査もしてくれない」と言う。

福島第一原発に定期的な立ち入り調査をしたことがある厚生労働省幹部は「原発は限られた人しか入れない密室。線量計を外したといううわさを聞いても証拠をつかむことは難しい」と明かす。





作業員一人ひとりが必ず持つことになっている放射線管理手帳には、働いた原発や期間、被ばく線量が記入される。
64歳男性はたびたび線量計を外したため、記録に残るのは実際より低い数字だ
放射線管理手帳
→ 誰のための管理なのか?


数十年来の常識引退後に悔やむ

神奈川県に住む男性(64)は「被ばく隠し」報道を読み、「こんなのは前からあります」と家族を通して取材班に連絡してきた。
20代後半から約30年間、各地の原発で下請け作業員として働いてきた。
被ばく隠しは「常識」だったという。

初めて線量計を外したのは、原発で働き始めて5年ほどの頃。
周りの作業員の見よう見まねだった。
当時はわずかな作業時間でも日給は約2万円だった。
鉛を糸状にした「鉛毛」で線量計をぐるぐる巻きにしている作業員もいた。
原子炉建屋内で各下請け業者に割り当てられる工具入れの中に線量計が何個も入っているのを見つけたこともある。

強く記憶に刻み込まれているのは、約15年前に東日本のある原発で、原子炉圧力容器内で循環させる水の量を調整する制御弁の点検をしたときのことだ。
1日あたりの作業時間が約15分に制限されるほど線量の高い場所での作業だった。

「うまく線量浴びないようにしてくれ≒あんまり線量食わないようにやれよ」
→ 完全に法律違反!

作業直前、下請け会社の責任者から原発構内の事務所で言われた。
経験豊かな男性を長期間働かせるため記録上の被ばく線量を小さく抑えるよう、暗に求めているとすぐに察した。
制御弁がある部屋の前で線量計を胸ポケットから取り出し、近くの通風管に隠した。
10日間ほどの日程のうち、5〜6日は線量計を身につけずに作業したという。

制御弁の周りの璧や床にはビニールが何重にも張ってあった。
「汚染水が漏れないようにするため。線量が高かったんでしょう」

放射線の怖さは知っていた。
けれども、「真面目に線量計をつけたら、すぐに(被ばく限度に達して)原発で働けなくなる。食べていくためには仕方なかった」。
当時の被ばく線量が記録された放射線管理手帳を開きながら、唇をかんだ。

男性は視力が著しく弱い。
8年前に仕事を引退した直後に患った炎症が原因だ。
被ばくとの関係は不明だが、「ちゃんと線量計をつけていたら良かった」と悔やむ日々。
それでも[自分みたいに命を削る人がいないと、原発は動かない]との自負もある。



失業を恐れる本音直視を

被ばく線量をごまかす土壌は、原発事故の前から労働現場に広がっていた。
その悪習を引きずったまま、国家主導で事故処理は進められてきた。
鉛カバーを使った被ばく隠しは、そうした流れの中で必然的に起きた。

「よりによって1F(福島第一原発)に来てさ、自分だけこういうふうにやるよって言われても困る。(あなたたちは)原発に向いてない」
鉛カバー装着を指示した建設会社ビルドアップの役員は昨年12月、装着を拒んだ作業員にこう言った。
その録音テープに残る肉声を聞き返すと、日当の高い原発労働を続けたいのなら安全を犠牲にしてでも線量をごまかすのは業界の常識......との意識が伝わってくる。
役員はそれ以前に鉛カバーを使ったことはないと今も主張するが、とっさの判断で思いついた偽装工作とは到底思えない。

作業員たちが様々な手口で被ばく隠しに走るのは、自分に残された線量が明日の生活を左右するという、構造的な不安定さがあるからだ。
東電が再発防止策として胸部が透明な防護服の導入を掲げたのは一歩前進だが、被ばく限度を超えて職を失うことを恐れる作業員の本音にしっかり目を向けない限り、安全対策はかけ声倒れになる。
→ こういう高線量の作業場が事故前から存在していたことを初めてメディアが報じたことが驚きである。
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