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WHO 原発事故の被曝推計を公表

2012/05/24 朝日新聞朝刊より抜粋

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被曝見えぬ実態

世界保健機関(WHO)は23日、東京電力福島第一原発事故による国内外の被曝線量の推計結果を公表した。
原発周辺の住民の全身被曝が10〜50mSvと、日本の推計値より商い数字が並んだ。
日本政府は「現実より明らかに高い」と反論する。
この値をどうみたらいいのか。

「大きく乖離」政府反論

WHOから日本政府に対し、線量推計を23日に公表するとの連絡があったのは約1週間前だった。
日本政府関係者に衝撃が走った。
「WHOの推計は実態と大きく乖離しており、数字が独り歩きすると、国民に不安と混乱が広がる」(政府関係者)と心配したためだ。
ジュネーブで聞かれたWHO総会に出席した厚生労働省の事務次官は21日、WHOの事務局長に遺憾の意を伝えた。
それでも、WHOは日本時間の23日午後6時、公表に踏み切った。
日本の関係省庁は急きょ、閣僚向けの想定問答集作りに追われた。


WHOの推計結果は、日本政府が昨年9月までに公表した土壌や大気、食品、飲料水、海水などに含まれる放射性物質の濃度に関するデータを使って計算された。
WHOとロシアの放射線衛生研究所、ドイツ連邦放射線防護局、英健康保護局の研究者が個別に計算。
4種類の結果を専門家委員会がとりまとめた。
委員会には、日本の放射線医学総合研究所と国立保健医療科学院の研究者も参加した。

推計は、安全側に立って、より厳しい前提でまとめられた。
原発から20〜30km圏内の住民は、事故後4ヵ月間、地元にとどまったとの想定で推計されたが、実際には大半の住民が事故後まもなく避難した。
 → この前提が重要! どのような仮定で被ばく線量を推定したかが重要!

食品による内部被曝量の推計では、福島県民は福島産のものだけを食べたと想定して計算された。
しかも、出荷が規制された汚染食品が一部、流通したとの前提だ。
WHOは報告書で「全食品が検査されているわけではなく、規制値を超えた食品が流通した可能性は否定できない。
このため、規制値超えの食品も少数含めた」と説明する。

WHOの推計は、国内の調査結果や推計よりも高めだ。
福島県による県民の内部被曝調査では、3月末までに約32,000人が受け、99%以上の人が1mSv未満だった。
ただし、放射性セシウムしか測定しておらず、放射性ヨウ素は考慮されていない。
外部被曝調査では、個人の行動記録から推計。
約16,000人の6割近くが1mSv未満だった。
一方、71人は10mSvより高かった。

WHOの推計について、広島大原爆放射線医科学研究所教授は「全体的に過大評価だ。とくに外部被曝や食品由来の被曝は、実態よりかなり高く見積もられている」と分析する。
ただし、福島県浪江町の1歳児(乳児)の甲状腺被曝線量は、放射性物質の拡散を予測する「SPEEDI」の推計ではもっと高い数値の地区もあり、「ほぼ実態通りではないか」とみている。

「被害予防」WHO力点
人々の健康管理を担うWHOは、「予防原則」の立場をとっている。
健康に被害を及ぼしかねないことについては、手遅れにならないように、科学的に十分、解明されていない時点でも、旱めに注意喚起する、とのスタンスだ。

たとえば昨年6月には、WHOの国際がん研究機関(IARC)が、携帯電話の電磁波を「発がん性の可能性がある」との報告書をまとめた。
複数の疫学研究が行われているが、がんとの因果関係はまだはっきりしていない。
それでも、コーヒーなどと同様、「科学的な根拠が弱いレベル」に分類しながら、「発がん性の可能性あり」との見解を示した。
発がん性の可能性がまったくないとは言えない点を重視したためだ。
 → WHOは、放射線による発がんの可能性がゼロでないから「発がんの可能性あり」の立場です。
   これは、コーヒーや携帯電話の電磁波と同じ考え方です。
   現代の科学では発がんの可能性がゼロということを証明することが非常に難しいからです。


原発事故の影響でも、WHOは予防原則から推計した。
今後、この推計に基づいて日本だけでなく世界の人々の健康リスクを評価し、長期的な健康調査やフォローアップに関する指針も出す予定だ。
こういった基になる線量推計について、WHOは報告書で「線量の推計が、いかなることがあっても実態より低く出ることがないようにした」と説明している。

線量推計の専門家は「事故の影響がまだよくわからない時点では予防原則にのっとり、最悪のシナリオで推計するのは妥当なアプローチだ。実態が判明してきたら、より正確な推計に修正していけばいい」と話す。


修正重ね数値低く

WHOの線量推計の報告書作りは昨年夏から始まった。
昨年11月に出た最初の草案を目にした日本政府の関係者は目を疑った。

福島県浪江町の乳児の全身被曝腺量は10〜100mSv、東京や大阪の乳児も1〜10mSv。さらに、乳児の甲状腺被曝線量は、浪江町などで300〜1,000mSv、東京や大阪でも10〜100mSv、といった数字が並んでいたからだ。

「あり得ない高い数値。公表されれば、国民の不安をいたずらにあおるだけでなく、風評被害を招く」。
政府は、原労省の参事官を、WHO本部に派遣したり、外交ルートを通じたりして強く訂正を求めた。
食品規制や原発近くの住民の避難状況、国内で実施されている被曝線量の検査や推計に関する情報も積極的に提供。
複数回の修正を経て、今回、公表された数値へと大幅に修正された。
推計に携わったロシア放射線衛生研究所は「推計値が変化したのは使えるデータが増えたからだ。
とくに住民の避難状況など詳しい状況がわかる情報が増えるにつれ、推計はより実態に近くなった」と説明する。

それでも、日本政府は、まだ実態よりかなり高い数字だとみている。
政府の原子力災害対策本部の医療班長は「食品規制などの対策の効果がほとんど考慮されていない。現実と異なる仮定に基づいて推計されている」と主張する。

WHOは現在、今回の報告に基づき、国内外の人々の健康影響を評価する作業に入っており、夏までに報告書をまとめる見通しだ。

健康影響を評価するWHO専門家委員会のメンバーは「健康影響の評価は線量推計の数値が決まるとほぼ自動的に結果が出る仕組みで、健康影響も過大に出る恐れがある。健康影響の報告書の文章は、実態との隔たりに十分配慮してまとめたい」と話す。

国連科学委員会(UNSCEAR)は、来秋までに報告書をまとめる。
政府は、WHOの推計をさらに修正した数値になるよう、働きかけていく方針だ。
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