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ν賢狼ホロν
「嫌なことなんて、楽しいことでぶっ飛ばそう♪」がもっとうのホロです。
ザ・タイピング・オブ・ザ・デッド2
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2009年02月12日
『闇に抗う自動人形(オートマタ)』(後編) part6
だが、健三は泣いていた。笑みが張り付いている顔の頬をとうとうと涙が落ちている。
その目に流れる一条の涙は、決して嬉し涙などではない、屈辱と悲憤に彩られた悲しみの落涙。
怨み骨髄にわたる敵の手に落ち、操り人形とされてしまった自分に対する怒りの意思。
それは健三の心の奥底に追いやられた本来の自我が、現在の自分を決して認めていないことの何よりの証左だ。

「………!」

それを見た瞬間、ハクは決断した。
「うわぁぁっ!!」
ハクは全身に渾身の力をこめ、自分を拘束していたさやかの触手をぶちぶちと裂き切り、今にも自分の中に入り込もうとしてたダークサタンの触手をがっしりと掴んだ。
「この……おぉっ!」
両手に力を込めたハクは、手の中で暴れる触手を左右にぎゅぅっと引っ張った。その凄まじい張力に耐えられず、触手はぶちぶちと嫌な音を立てて、粘液を撒き散らしながら先端を引きちぎられてしまった。
『な、なにっ?!』
思いもよらないハクの抵抗に驚くダークサタンだが、次の瞬間目の前に激しい炎が舞い上がる。
「燃えてしまえ!!ダークサタン!!」
ハクが空間転送して取り出した高熱の刃を持つ刀がダークサタンの触手をメチャクチャに切り裂き、その余熱によって触手が激しく燃え出した。
『ぐおおおおっ!!』
真っ赤な炎に撒かれたダークサタンの触手はバタンバタンと暴れまわっていたが、そのうち完全に炭化するとボロリと崩れ落ちてしまった。

一方、コクのほうも何もしていないわけではなかった。
「ぎゃあああぁっ!!」
自分の触手に突如走った激しい痛みにさやかは獣のような声を出して触手をのたうたせたが、そのためにハクだけでなくコクの拘束まで解いてしまった。
「!!さやか!」
母親である純の切迫した声に顔を上げたさやかだが、その時には既に目の前に顔を怒りで真っ赤にしたコクが迫っていた。
「ダーククロスは……、抹殺する!」

ドボォッ

「え……がっ!!」
コクの鉄板をも貫く手刀がさやかの首を捉え、さやかはあっさりと首を跳ね飛ばされた。首から青い血を夥しく噴出させながらさやかの胴体はかくんと膝を折ってその場に倒れ付し、その横に驚きの表情を張り付かせたままのさやかの首がぼとりと落ちた。
「さやか……、き、貴様あぁっ!!」
愛娘の死を目の前で見た純は一気に逆上し、コク目掛けて物凄い速さで飛んでいった。頭の一対の触覚をピンと伸ばし、まるで槍のようにしてコクの胸板を貫こうとしてるようだ。
「死になさいーーっ!!」
一直線に突っ込んでくる純の顔はまるで鬼のように険しい。が、それを迎え撃つコクもまた以前の人形のような無表情ではなく、迫り来る純に対し明確な敵意をもっていた。
「死ぬのは……お前っ!」
コクはさやかを切り裂いた手刀を前に突き出し、純目掛けて突進した。コクもまた、全身を一本の槍と化して純を仕留めようとしている。
そして、互いが衝突するその瞬間!
「死ねーッ!!」
「…死ねっ!」
コクは一瞬身をかがめ、純の突進の下に潜り込む。そして手刀を上に構え、純の顔面にチョップを打つような体型になった。
「………っ?!」
純はコクの意図を察したが気づいた時にはもう遅い。
顔にめり込んだコクの手刀はそのまま純の肉を骨を引き裂いていく。皮肉にも純の突進力が過大だったせいでコクの手刀の威力も数倍になっているのだ。
たちまちのうちに純の体は中心から真っ二つになり、コクを飛び越えてさらに数メートル進んだ後に左右のパーツが同時に床に落っこちた。
「…ダーククロスの淫怪人…抹殺!」
自分の後方に落ちた肉隗を確認し、体を血塗れにさせたコクは凄惨なオーラを纏いながら立ち上がった。

「バ、バカな……。何が起こっているの…?」
秋子には今ここで起こっていることが理解できなかった。
今すぐにも自分の作戦でダーククロスの仇敵が軍門に下ると思っていたのが、次の瞬間にはダークサタンが返り討ちにあっただけでなく手持ちの淫怪人二体が見るも無残な姿で絶命している。
「ね、ねえあなた?!あなたあの二人を改造したんでしょ?!これってどういう……」
秋子は懐にいる健三に事の次第を正そうとしたが、今はそんな場合ではなかった。
ダークサタンを斬り裂いたハクがこっちに向って突っ込んでくるのが見えたからだ。
さやかと純を切り裂いたコクの手刀と同じ威力をもつ手刀が秋子のほう目掛けて迫って来る。
「?!まずっ……」
危険を感じた秋子は健三をハクのほうへと突き出した。いくらなんでも創造主を傷つけるはずは無いだろうからとの秋子の計算だった。
だが、

ズン!

「うがっ……」
ハクは躊躇うことなく、健三の胸板を貫いた。
健三の体から流れてくる血は人間の赤い血ではなくダーククロスの青い血だ。その血がハクの白い体を青々と染めていっている。
「ハ、ハク……」
健三は激しい痛みを堪えながらハクに向って呼びかけた。
「創造主……」
健三を見るハクの目は例えようの無い悲しみを帯びながらも、決して曲げようが無い決意に彩られていた。
「創造主は…、私たちに言いました。私たちをダーククロスの連中を一匹残らず滅ぼすために創造したと。
ダーククロスは例外なく抹殺しろと。そのためなら、創造主の体がどうなろうと構いはしないと」
ハクの瞳から涙が流れてくる。
それは、命令されたからとはいえ自らの手で親を殺さなければならなかったという悲しみからか。
「だから、私は創造主を抹殺します。ダーククロスの手に堕したならば、例え創造主であろうと私の標的。
それが、創造主の意思であるならば……」
「ハクぅ……」
ハクを見る健三の瞳。そこには自分を殺したということに対する非難の意思は見えない。むしろ、安らぎさえ見せている。
まるで、この事態こそが自分が望んでいたと言わんばかりに。
「そうだぁ……それでいいんだ!それでこそ俺の作品だ……!ダーククロスを消すために作った俺の傑作だ!!
いいな、ハク!コク!!殺せ!!
俺の家族を滅茶苦茶にした、俺の世界を滅茶苦茶にした!俺と純とさやかを殺したダーククロスを殺せ!!
ただの一人の例外もなく殺せ!何が何でも抹殺しろ!!地獄に落ちても決して許すな!
だから俺も殺せ!!ダーククロスに堕ちたものは、誰であろうとだ!わかったなぁ!!コクぅっ!!」
健三は自分を貫いているハクだけではなく、後ろのコクへも呼びかけた。
そのコクは涙を流しながら銃の照準を健三へと向けている。
「さあ俺を殺せコク!俺を殺す哀しさをダーククロスへぶつけろ!俺を殺す怒りをダーククロスへ向けろ!
憎め!憎め!!ダーククロスを憎みきるんだ!!」
「「創造主………」」
健三の最後の処置で人間としての感情が生まれたハクとコクは、健三の慟哭をその心ですべて受け止めた。
恐らく感情を持たない人形のままのハクとコクだったら、何の感傷も抱かなかったことだろう。
自分たちが最初に殺した淫妖花ノゾミのように、ただ淫隷人が今際の際に喚いているだけ、としか感じなかったかもしれない。
「俺の無念の心を飲み込み、俺の怒りの心を飲み込み、俺の代わりに必ず全てのダーククロスを滅ぼせ!!
それが俺のお前らへの、最後の命令だーっ!!」
「……創造主…、了解!」

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